平成27年度 第9回 救急部カンファレンス 脳腫瘍(転移性脳腫瘍) 平成27年7月3日 松山赤十字病院 脳神経外科 梶原 佳則 脳腫瘍 とは? 頭蓋内組織 に発生する 新生物 (新生物=腫瘍) 脳腫瘍 の頻度 脳腫瘍全国集計調査報告 (2009年版) 人口10万人あたり、年間 原発性脳腫瘍 12.76人 人口10万人あたり、 胃癌 男性139.1人、女性59.3人 肺癌 男性118.3人、女性 51.0人 大腸癌 男性109.2人、女性77.5人 前立腺癌 104.2人 乳癌 103.6人 (国立がん研究センター) 松山市だと 原発性脳腫瘍 65.84人/年 発症 年齢 子供にも 発生 中高年に 多い 症状 ①頭蓋内圧亢進症状 ②脳局所症状・巣症状 ③てんかん 慢性頭蓋内圧亢進症状 頭痛(早朝頭痛) 腫瘍が大きくなる →頭蓋内容量が増える →圧の逃げ道がない (頭蓋骨で覆われているため) 嘔吐(噴射性嘔吐) うっ血乳頭 この段階で放置すると 意識障害(入眠傾向、昏睡) 最終的には、脳ヘルニア 脳局所症状・巣症状 脳組織や神経が 圧迫、破壊、浸潤を受けて起こる症状 角回、縁上回 (ゲルストマン症候群) てんかん( 症候性てんかん) ・頭蓋内圧亢進でおこる ・腫瘍部位が焦点となり、局所脳症状としておこる 「けいれん」と「てんか ん」 どうちがうのか? けいれん・てんかん をみたら、脳腫瘍? 「けいれん」と「てんかん」 自分の意志とは無関係に、 勝手に筋肉が強く収縮する状態 けいれん てんかん 原因 発熱(高熱)、感染症 代謝性(水・電解質異常、低血糖など) 中毒性(薬物、尿毒症、肝不全、鉛・水銀中 毒 など) 頭蓋内病変 (腫瘍、外傷、低酸素脳症など) など 「脳のニューロンの過剰な発作」 によって引き起こされた発作 初発けいれん発作の原因 ≧60y.o. < 59y.o. C.V.A = cerebrovascular accident, C.N.S. = central nerve system 川上 臨床神経2012 脳卒中患者 急性期24時間以内のてんかん発症率 Szaflarski et al. Epilepsy 2008 けいれん発作後の麻痺 = Todd’s Paralysis てんかん発作後に、片側の手足の脱力・麻痺が発生 持続時間:数分〜数時間(なかには数日かかるものもあり) てんかん発作=脳のある部分の過剰な電気的興奮=電気の放電 興奮した細胞は疲労状態→回復をするまで時間がかかる 過剰な興奮を起こした場所が、脳の運動に関係している場所であれ ば、運動の麻痺がおこる。 脳卒中との鑑別 が必要 脳腫瘍 の種類 診断 頭部の ・CT検査(単純, 造影) ・MRI検査(単純, 造影, MRS) ・PET など *脳波ではわかりません *血液検査(腫瘍マーカー)はMLなどごく一部 確定診断は 病理 治療 良性 手術 放射線(定位) *内服 原発性 脳腫瘍 転移性 下垂体腺腫 の一部 悪性 手術 放射線 化学療法(抗がん剤) 悪性 手術 放射線 *分子標的薬 肺癌、乳癌など の、ごく一部 転移性脳腫瘍 metastatic brain tumor 転移性脳腫瘍(metastatic brain tumor) 他臓器の悪性腫瘍が頭蓋内に転移したもの。 全脳腫瘍の 17.6% 約20%は、原発巣より先、あるいは同時に発見される。 肺癌(50%)>乳癌(10%)大腸/直腸(10%) >腎/膀胱(5%)、胃(5%) >頭頸部癌(3%)>肝(2%)、子宮癌(2%) 症状 ① 頭蓋内圧亢進症状(頭痛、頭重感など) ② 局所症状 片麻痺、失語、視力障害など ③ てんかん 頭蓋内転移のパターン ・脳実質転移 ・髄膜転移(髄腔内転移、髄膜癌腫症、脊髄播種) ・硬膜転移 ・骨転移、脊椎転移 脳実質転移 $% 転移のパターン • 脳実質転移! # " 手術! 定位照射! ガンマナイフ、ノバリス! 全脳照射! • 脳実質転移! 髄膜転移 • 髄膜転移(髄腔内転移、髄膜癌腫症、脊髄播種) # " 転移のパターン • 骨転移、脊椎転移! ゾメタ、デノスマブなどで! 硬膜転移 脳実質転移! 骨転移の増殖抑制 髄膜転移(髄腔内転移、髄膜癌腫症、脊髄播種)! 硬膜転移! 骨転移、脊椎転移! ゾメタ、デノスマブなどで! # 骨転移 骨転移の増殖抑制 )* 骨転移! ' #(! 硬膜転移! " 脳実質への転移性脳腫瘍の画像の特徴 患者① 患者② $0 患者③ # " , - 造影後*. 強調画像 • 画像上 多発 することが多い! 皮髄 • 境界、すなわち 皮質 と 髄質/ 白質の境界部に多い! • 増強効果、または結節状増強! リング状 !!!!!!!!!!!!!!!!(周辺)の形は比較的整っている! リング • 脳浮腫を伴う! 12 転移性脳腫瘍と鑑別を要する疾患 # " , - 造影後*. 強調画像 リングの内部が拡散強調画像で高信号! (造影されない部分)! 拡散強調画像 脳膿瘍 転移性脳腫瘍と鑑別を要する疾患 1. " # , - 造影後*. 強調画像 不規則な形のリング! 膠芽腫! , 345637895: 7 , - 造影後*. 強調画像 拡散強調画像 多発のことが多く、均一に造影され、! 内部の壊死は少ない。! 造影部が拡散強調画像で高信号! 脳悪性リンパ腫!' 734; <7<9!3=: >?5: 7! @) AB"!C>D4: 7D=!EF<9D73!<FDG5H8!8=89F: !3=: >?5: 7I 脳腫瘍の治療 良性 手術摘出 放射線治療(定位) *内服 原発性 脳腫瘍 転移性 特殊例 悪性 手術 放射線 化学療法(抗がん剤) 悪性 手術摘出 放射線治療 *分子標的薬 肺癌・乳癌のご く一部 手術治療 手術により、数ヶ月でも QOLの改善が期待できる ・腫瘍径が3cmを越えるもの ・単発性か、多発性でもそのなかの1個が大きく生命危機 に直結する可能性がある場合 ・癌の進行状況から半年以上の生存が期待できる ・手術により重篤な後遺症を残さない部位にある ・原発巣が十分にコントロールされている ・頭蓋外転移があっても直接生命に影響がない場合 ・確定診断が困難な場合 放射線治療 全脳照射 v.s. 定位照射 腫瘍の数が多いか少ないか? だいたい 5個 2015年6月末で登録 終了 3cm 以上の腫瘤 転移性脳腫瘍 3cm未満 5個以上 手術 3cm未満 4個以下 全脳照射 定位放射線 新病巣・再増大 3cm 以上の腫瘤 手術 3cm未満 短期間に多発 全脳照射 3cm未満 長期間に少数 定位放射線 モグラた たき戦法 $% 転移のパターン • 脳実質転移! # " 手術! 定位照射! ガンマナイフ、ノバリス! 全脳照射! 44 y.o. M けいれん ガンマナイフ 3ヶ月後 12ヶ月後 17ヶ月後 2回目のガンマナイフ 3回目のガンマナイフ 27ヶ月後 同時に多発病巣 全脳照射 3Gy x 10回 脳照射後、5ヶ月で再び多発 37ヶ月後、原発巣増悪で死亡 44歳 発症時 48歳 最終画像 全脳照射前 全脳照射後 7ヶ月 70歳 女性 肝細胞癌治療中。 運動性失語 70歳 女性 入院翌日明朝より、右上下肢脱力 肝臓癌の脳転移は出血しやすい(急変することもあり) 47歳 女性 肺扁平上皮癌治療中 脳転移の有無精査 76日後(2ヶ月半)、けいれん 化学療法 体部の腫瘍に有効でも、脳転移には無効 血液脳関門(Blood-Brain Barrier) 脳への物質の侵入を制限し、脳を守るための機能 内皮細胞がtight junctionによって強固に連結 通過する条件 ・分子サイズが小さい物質 ・物質の蛋白結合率や脂溶性など 体部腫瘍と脳転移は、別々のものとしてそれぞれ治療 転移性脳腫瘍に効果が期待できる化学療法(分子標的薬) ゲフィチニブ(Gefitinib) イレッサ 非小細胞肺癌(NSCLC) EGFR遺伝子変異型 エルロチニブ(Erlotinib) タルセバ 非小細胞肺癌(NSCLC) EGFR遺伝子変異型 ラパチニブ(Lapatinib)タイケルブ 乳癌(HER2+) ベムラフェニブ(Vemurafenib) ゼルボラフ メラノーマ BRAF V600E変異 がんの脳転移に効く分子標的薬 悪性黒色腫! 脳転移 MF: HD7NF<46 BRAFV600E 遺伝子変異 乳癌! 脳転移 OP#$!遺伝子増幅 "7>7J <46 1% がんの脳転移に効く分子標的薬 肺癌! 脳転移 PD35J <46 EGFR 遺伝子変異 : Ex19 E746-A750 del(2236-2250) 肺癌! 脳転移 QFG7E4RH: 76 1& FLAIR Gd-DTPA Bevacizumab 投与中は、増強効果が弱まる 造影MRI では判らないことがあるので、要注意 脳腫瘍 手術 術中ナビゲーションシステム 術後MRI 神経機能検査装置 Neuromaster (ニューロマスター) 運動誘発電位モニタリング :MEP(motor evoked potential) 体性感覚誘発電位モニタリング :SEP(somatosensory evoked potential) MEE-1200シリーズ MEE-1216 運動路 を障害 運動野 SEP/MEP により、術中に運動路の評価を行うことができる 術後の運動麻痺を予防 まとめ ・脳腫瘍は決して多くはないが、誰にもいつでも起こりえる。 ・初回けいれんがあれば、脳腫瘍も疑うこと。 ・転移性脳腫瘍の治療はどんどん進歩している。患者の状態 や組織型により選択。 ご静聴ありがとうございま した
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