2P35 Temperature dependence of ion mobility of small carbon cluster cations (Tohoku Univ.) KOYASU Kiichirou, OHTAKI Tomohiro, MISAIZU Fuminori 【序】 気相におけるイオンの分離手法としてイオン移動度分析法が確立され,クラスターイオンの異 性体分離に対しても多くの適用例が報告されている[1– 3]。また,得られたイオン移動度と構造の関 2 係を示す理論構築も発展している。イオン移動度(K)は,クラスターイオンがドリフトセル中を通過す る速度[ドリフト速度(vd)]とセルに印加した電場(E)を用いて,K = vd / E として定義される値である。 我々は異性体分離種に対する光解離分光法の適用を目指しており,イオン強度の減少を抑制しつ つ分離能を向上させる条件を探索している。異性体を効率よく分離するためには,クラスターイオン と He の衝突回数の増加が必要である。そのため He の数密度を増加させる必要があり,これは He の圧力一定のまま温度を低下させることによって達成できる。そこで本研究では,炭素クラスターを 対象としてイオン移動度の温度依存性について検討した。 【実験方法】 炭素クラスター正イオンは,レーザー蒸発法を用いて生成させ,ドリフトセルで異性体 を分離してからリフレクトロン型質量分析計で質量選別を行った。ドリフトセルには静電場(E = 7.17 V / cm)を印加し,緩衝気体として He(よどみ圧: p = 0.8 Torr)を満たして異性体分離を行った。ドリフト セルの前に設置したイオンゲートに 400 V, 100 µs のパルス電場を印加して,クラスターイオンをドリフ トセルに入射した。このパルス電場印加から,加速用パルス電場印加までの時間を到達時間とし,こ Low の値から vd を見積もって K を算出した。 【結果と考察】 測定した各クラスターの到達時間と飛行時 から,n = 7–10 程度のサイズで構造変化が起こっているこ とがわかり,以前の報告[2]を再現している。イオン移動度 (a) 2D plot 200 150 n=7 の有効温度(Teff)に対する依存性として K = C・(Teff) の形 α 40 うな依存性は,クラスターイオンと He の衝突断面積が有効 温度に依存しない,つまり剛体球近似を適用した場合(α = 0.5)に近い。これは,今回用いた実験条件で得られた有効 温度の範囲(180–440 K)では,引力ポテンシャルよりも,ク ln (K) / arb. unit 測結果から α ≈ 0.6 が得られた(Fig. 1b, C8+の場合)。このよ 8 9 10 50 70 High 60 Time of flight / µs 式を仮定すると,直線および環状構造の各クラスター(n = 6–25)における,温度範囲: 170–300 K での到達時間の観 Ring Linear Intensity 間(質量)とを二次元プロットしたものを Fig. 1a に示す。図 Arrival time / µs 250 0.1 (b) C8+ Linear 0.0 α = 0.6 -0.1 -0.2 5.4 5.6 5.8 6.0 ln (Teff) / K of arrival time vs. time ラスターイオンの核と He の斥力ポテンシャルの影響が大き Figure 1a. 2D plot + of flight of Cn (n = 4–14). Positions of くなり,衝突断面積が有効温度にほとんど依存しなかった C8+–C10+ are shown by lines and numbers. 1b. Plot of ion mobility (K) vs. effective ためと考えられる。 + temperature (Teff) of C8 linear isomer with logarithmic scale. [1] D. E. Clemmer and M. F. Jarrold, J. Mass Spectrom., 1998, 32, 577. [2] G. von Helden, M.-T. Hsu, N. Gotts, and M. T. Bowers, J. Phys. Chem., 1993, 97, 8182. [3] E. Oger, N. R. M. Crawford, R. Kelting, P. Weis, M. M. Kappes, and R. Ahlrichs, Angew. Chem. Int. Ed., 2007, 46, 8503. 【参考文献】
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