判 定 A : 異常ありません B : ほぼ異常ありません(日常生活に支障ありません) C1 : 経過観察を要します (年に 1 回の健診で経過をみましょう) C2 : 再検を要します(3 ヵ月を目途に再検してください、ま たは念のため精査してください) D1 : 要治療(医療機関を受診して治療を受けて下さい) D2 : 要精査(精密検査を受けてください) E : 治療中 目 次 総合結果・指示事項 身体計測 呼吸器系 循環器系 2 脂質代謝 3 消化器系 上腹部超音波検査 肝機能検査 4 糖代謝 腎機能検査 5 血液一般 血清反応 眼 科 聴力検査 乳がん検診 6 オプション検査 7 上腹部超音波用語解説 9 10 胃透視用語解説 11 12 索 引 13 1 総合結果・指示事項 今回の人間ドックで発見された問題点や疾患のまとめで、一番大事なところです。じっくり読まれ、内容 とそれに対する指示をよく理解してください。そして、指摘された問題点や疾患について、指示にしたがい 生活習慣の改善、再検査、精密検査、治療などをうけて下さい。 身体計測 メタボリックシンドローム(代謝症候群、いわゆるメタボです)は内臓脂肪 型肥満によって、 様々な病気が引き起こされやすくなった状態を言います。糖尿病、 高血圧、高脂血症などの生活習慣病はメタボリックシンドロームという氷山の一 角に当たります。メタボ対策において、もっとも大切なのは体重のコントロール です。個人差も考慮に入れなければなりませんが、 一応 BMI(ボディマスインデッ 2 クス:体重(kg)/身長(m) )が 18.4 ∼ 24.9 が正常です。体脂肪率は体の電 気抵抗から体の中の全ての脂肪が体重にしめる割合を示しますが、内臓脂肪と皮 下脂肪の区別はできません。2008 年度からは内臓脂肪の目安として、 全国的に 「腹 囲」が健診項目に加わりました。 呼吸器系 胸部 X 線検査 主に肺と心臓の形態をみます。肺に関しては、肺がん、肺結核、胸膜炎、肺炎などのスクリー ニング(病気の可能性のある人を選びだすこと)を行います。その他、心臓の大きさ(心拡大など) 、大動脈瘤、 縦隔腫瘍などの発見にも役立ちます。ただし、これだけで診断がつくことは少ないので、要精密検査という判 定がでた場合には必ず CT、超音波検査その他の詳しい検査をお受け下さい。 肺機能検査 肺活量が低下している場合は拘束性障害、1 秒率が低下している場合は閉塞性障害と言います。喫煙 者は年と共に肺活量、1 秒率ともに著明に低下してきます。2008 年度から喫煙による慢性閉塞性肺疾患(COPD) の早期発見のため% 1 秒量という項目が加わりました。 喫煙者は、大まかに言って非喫煙者に比べて、肺がんは 4.5 倍、食道がんは 2.2 倍、喉頭がんは 32 倍、心筋梗塞 は 2 倍に増えます。最近は禁煙するためにニコチン・パッチやガム、内服薬などを利用して楽にやめる方法が開発 されていますので、 タバコを吸っておられる方はぜひ禁煙にチャレンジしてください。 循環器系 血圧 収縮期血圧は 140mmHg まで、拡張期血圧は 90mmHg までがほぼ正常で、そのどちらかまたは両方 が異常に高くなる状態を高血圧といいます。少なくとも日をあけて計三回以上測定し、やはり高ければ高血 圧と診断することになっています。最近では自動血圧計による家庭血圧の測定が普及していますが、正しく 使用すると大変役に立ちます。特に、医者の前にでると血圧があがる、いわゆる“白衣高血圧”の方には、 自宅で落ち着いてそっと測ってみることが有用です。 心電図 体に電極をつけて心臓からの電気をひろいあげる検査です。主にリズムの乱れ(不整脈)や心肥大、 狭心症、心筋梗塞などの診断に用いられ、胸部 X 線検査とならんで簡単ですが大切な検査です。これで異常 がでれば、次に心エコー(心臓超音波)ホルター心電図(24 時間モニター心電図)トレッドミル(ベルトコ 2 ンベアーの上を走る負荷心電図)などの精密検査が必要になります。 負荷心電図 当施設では自転車エルゴメーターによる軽い運動負荷試験を行っています。安静時だけでな く運動時の心電図を見ることによって狭心症の変化や不整脈をより詳しく知ることが出来ます。ただし、健 診での負荷心電図では最大負荷は行っていませんので、狭心症の疑いがあるとしてピックアップされた方は、 さらに詳しい負荷試験を行い初めて診断がつきます。 脂質代謝 脂質異常症は動脈硬化の三大危険因子の一つです。 コレステロールは血管の壁の中にたまって、動脈硬化とくに狭心症や心筋梗塞をひきおこす原因となります。 総コレステロールは、善玉、悪玉その他の“ 総和”ですので、当センターでは、悪玉の LDL コレステロールと 善玉 HDL コレステロールを分けて測定します。LDL コレステロールは 140mg/dl 以上(閉経期以降の女性は 160 以上)が高いと考えられます。それに対し、善玉 HDL コレステロールはコレステロールを血管から引き抜 く作用があり、高い方が良く、低い方(40mg/dl 未満)が動脈硬化になりやすいといわれています。HDL コレ ステロールの値は、ほとんど生まれつき の素因で決まりますが、運動不足、喫煙 肝 臓 などでも低下しますので生活習慣の注意 が大切です。 動脈壁 中性脂肪は主に糖分と関係のある脂肪で、食事でとりすぎた 栄養分が中性脂肪に変えられ、脂肪組織にたくわえられます。 正常値は 150mg/dl 未満ですが、中性脂肪の高い方はカロリー オーバーやアルコールをたくさん飲まれる方が多く、また糖尿 病などでも高くなります。中性脂肪のみ高い方は、あまり動脈 硬化に悪い影響はないといわれていますが、600mg/dl をこえ ると非常に危険な急性膵炎をおこす可能性がありますので注意 が必要です。また、コレステロールが高くて中性脂肪も高い人 脂質異常症の診断基準 ① LDL コレステロール(悪玉) 140 以上 ②中性脂肪 150 以上 ③ HDL コレステロール (善玉) 40 未満 は、さらに動脈硬化が起こりやすくなります。 脂質異常症の治療法には、食事療法、運動療法、薬物療法な の方は要注意!! どがありますが、特に食事療法は大切で、早い時期からの正し い指導が望まれます。運動療法も大切ですし、やはり効果的に 行うためには、専門医の指導が必要でしょう。 3 消化器系 便潜血反応 この検査の一番の目的は大腸がんのスクリーニングです。当センターでは、2 回法を採用し ていますが、2 回のうち 1 回でも陽性なら陽性と判定します。痔や生理時の出血で陽性に出ることもありま すが、大まかに言って、陽性の方 30 人を全員精密検査すると 1 人の割合で大腸がんが見つかります。その他、 良性の大腸ポリープや潰瘍などが見つかることがありますので、陽性と判定された方は全大腸内視鏡で精密 検査をされることをお勧めします。 上部消化管検査 当センターのドックコースでは、胃透視と胃内視鏡のどちらかを選択することができま す。ドックのなかで一番“しんどい”検査ですが、最も大切な検査の一つです。一般には、胃透視はスクリー ニングで胃内視鏡は精密検査ですが、どちらが適しているかは人により違いますので、迷う場合は事前にご相 談ください。これらを行う最大の目的は胃がんの早期発見です。早期がんで発見された場合は、幸い 95%位の 人は完全に治ります。40 才を過ぎたらできれば毎年ドックでチェックされることをお勧めします。その他、よ くみつかるのは、胃・十二指腸潰瘍とその瘢痕です。潰瘍は、現在では薬物療法でほとんど手術せずに治ります。 ただこの中にはがんが隠れていることがありますので、要精密検査と判定された場合は、指示にしたがって検 査を受けて下さい。胃内視鏡で疑わしい個所があれば組織をとる胃生検を行う場合があります。グループⅠと Ⅱは正常で、Ⅲ∼Ⅴはがんの疑いがありますので、再検ないしは精密 検査が必要です。 成績表に出てくる用語でわかりにくいものは後述の胃透視用語解説 集を参考にしてください。 上腹部超音波検査 上腹部の臓器の形や性状を見る検査で、肝臓、胆のう、胆管、腎臓、膵臓、脾臓、大動脈などを見ます。ただし、 膵臓に関しては、おなかの一番奥(背中より)のほうにあるので見えにくいことがあり、完全に異常なしとも 判定しにくい臓器です。何か指摘された所見があれば、後述の上腹部超音波用語解説集を参考にされ、必要な 再検や精密検査を受けて下さい。 肝機能検査 肝臓というのは、おなかの右上にある大きな臓器で、いろいろなものを造ったり、分解したり、貯めたり と大切な役目をはたしています。肝機能の代表は AST(GOT)と ALT(GPT)という酵素で、何かの原因 で肝臓の細胞が壊れたときに血液中に増えてきます。個人差がありますが、AST、ALT が 100 をこえるとだ るさやムカムカなどの症状があらわれることがあり、300 をこえると入院した方がよいと考えられます。γ -GP(γ -GTP)はアルコールの飲みすぎによる肝障害の指標です。これはかなり変動しやすい敏感な指標で すのでアルコールをたしなまれる方は注目して下さい。ChE(コリンエステラーゼ)は、肝臓に脂肪がたま る脂肪肝のときに上昇します。これはカロリーオーバーや太り過ぎでおこってきます。 HBs 抗原は B 型肝炎ウイルスの有無をみる検査です。陽性であれば B 型肝炎ウィルスを持っているとい うことになりますので、さらに精密検査を行い指導を受けて下さい。 HCV 抗体が陽性の場合、過去に一過性に C 型肝炎にかかったことがあるか、または現在 C 型肝炎の感染 4 状態にあるということを示します。ただし、人間ドックで行なう HCV 抗体はあくまでスクリーニング検査で すので、陽性と出た方は、さらに詳しく調べる必要があります。 アルコールは、一方では“百薬の長”ともいわれ、一日一合のアルコールを飲んでいる人がいちばん長生 きするというデータもあります。しかし、アルコール性肝障害はも ちろん、その他どんな原因にせよ肝障害がある場合は、肝臓に負担 がかかりますので、アルコールは控えめにしたほうがよいでしょう。 本日休肝日 また、毎日アルコールを飲んで肝臓を酷使すると肝臓もバテてしま いますので“休肝日”をつくることをお勧めします。今は週休二日 が普通ですので、肝臓にも週休二日制を導入されてはいかがでしょ うか。 糖代謝 糖尿病の名前の由来は、血液中の糖分(ブドウ糖)が高くて糖が尿にでるということですが、その本体は 高血糖です。通常、血糖が高いだけでは特に症状はありませんが、将来、神経症、腎症、網膜症、心筋梗塞、 脳卒中などをおこしてくるこわい病気です。 空腹時の血糖が 126mg/dl をこえるか、糖負荷試験で 2 時間値が 200mg/ dl をこえた場合は、糖尿病と診断します。正常は空腹時 110 未満、2 時間値 140 以未満で、その間が境界型糖尿病ということになります。境界型糖尿病 の方は、将来糖尿病になる可能性がありますので充分に気をつけてください。 HbA1C(ヘモグロビンエーワンシー)は、最近 1 ∼ 2 カ月の平均血糖値が 高かったかどうかをみる指標で、一応、5.6%以上が高いと考えられます。 糖尿病は肥満や運動不足で食べ過ぎの人に多くみられます。メタボリック シンドロームの代表格ですので、適切な指導のもとでカロリー、糖分をひかえ、 適度な運動を行ない、標準体重を維持するよう心がけましょう。 腎機能検査 尿検査 腎炎、腎盂腎炎、膀胱炎、腎腫瘍などのスクリーニングに用いられます。腎臓が悪い人は尿にタ ンパクや赤血球がでることが多いのですが、逆に尿に少しタンパクや赤血球がでるからといって必ずしも腎 臓が悪いとはかぎりません。発熱時、運動後、起立性のタンパク尿は、通常良性です。検尿をするたびにタ ンパクが出る持続性タンパク尿では慢性腎臓病(CKD)のことが多く、時々しかでない間歇性タンパク尿で は CKD でないことが多いようです。尿潜血だけが陽性の場合は尿路結石、遊走腎(やせた人に多い)などで もありますが、調べても特に原因のわからない場合は、心配せず定期的に検診を受けて下さい。 、クレアチニンは腎機能の指標で、腎機能が低下して正常の約半分以下になってくると 尿素窒素(BUN) クレアチニンが上昇してきます(腎不全) 。CKD の早期発見のため、2008 年度からさらに敏感な eGFR(推 算糸球体濾過量)を追加しました。尿素窒素だけの上昇の場合は、脱水や消化管出血の可能性もあります。 尿酸が高くなると、関節にたまって痛風発作をおこしたり、腎結石ができやすくなります。食事で気をつ けることは、レバーや肉類などプリン体の多いものやアルコールをひかえること、また太りぎみの方はやせ ることです。 5 血液一般 血液型、貧血の有無、白血病などの血液疾患、炎症の存在などを調べます。 貧血は、特に若い女性に多く、ほとんどは生理出血や鉄分摂取不足による鉄欠乏性貧血です。しかし、貧 血の裏に、消化性潰瘍、がん、子宮筋腫、甲状腺機能障害などが隠れていることがありますので、貧血を指 摘された方は、一度原因の精密検査をされてから程度によっては治療を受けてください。 白血球は、主に感染に対する防御反応をつかさどります。普段は少なめの方も少なくなく、また喫煙だけ でも 10,000/mm3 程度の増加はあります。個人差が大きく、健康なときの自分の値を知っておくことが重要 です。 血清反応 血清梅毒反応(ガラス板法)は、一応梅毒の検査ですが、梅毒でなくても陽性にでることがあるので、陽 性の場合は、さらに詳しい TPLA 検査を追加し確かめています。TPLA が陰性の場合は梅毒とは関係なく(生 物学的偽陽性) 、陽性の場合は活動性の評価(治療がいるかどうか)が必要ですので、皮膚科を受診され相談 してください。 CRP は、特にどこが悪いということは特定できませんが、とにかく体のなかで炎症がある時に敏感に陽性 にでる指標です。 RA は関節リウマチのスクリーニングの検査です。関節痛などの症状がある場合は、さらに精密検査を受 けてください。 眼 科 視力は矯正視力で 0.7 以上見えていれば異常ではありません。眼圧が高い時には緑内障の疑いが あり、放置すると視野が欠けたり視力障害をきたすことがありますので、眼科を受診し精密検査を うけてください。 眼底カメラ 眼底の網膜動脈は体の中で直接みえる唯一の血管です。網膜動脈の動脈瘤や出血 などの糖尿病性の変化や、高血圧や動脈硬化による変化などを見ます。白内障などの中間透光体混 濁があれば、ぼやけてしまって見えませんので、眼科で精密検査を受けてください。 聴力検査 一般に難聴というのは、とくに悪い病気ではなく、また逆にとくに有効な治療法もありませんが、急に出 現した場合や進行する場合は、念のため耳鼻科を受診して精密検査されることをおすすめします。 乳がん検診 乳房の触診は、 乳がんをはじめとする乳房の異常があるかどうかをみる検査です。乳がんは日本人女性では、 罹患率(病気になる率)が胃がんを抜いて一位となっています。手技的に限界がありますので、最近では後 述の乳房 X 線(マンモグラフィ)を併用することで、乳がんの発見率を高めるようお勧めしています。また、 今回異常がなくても、毎年人間ドックや検診などにて検査されることをお勧めします。 6 オプション検査 オプション検査というのは、標準のドック検査項目に加えて個人の希望や心配な部分に対し自由に選択して同時に 受けることができる追加検査です。 婦人科 婦人科検診でとくにターゲットとしているのは子宮頚がんです。がんの中でも子宮頚がんはごく初期に発見するこ とができ、また早期に発見すれば完全に治すことができるがんです。しかし手おくれになって発見されえることも多 いのが現実です。ですから、この婦人科細胞診は、女性にとって大切なオプション検査です。 また内診検査では、子宮筋腫や卵巣腫瘍の有無についても見ます。その結果、異常の疑いがある場合は、婦人科を 再度受診し、精密検査をうけて下さい。 頭部 CT と MRI・MRA 頭部の CT は、脳血管障害(脳梗塞、脳内出血) 、脳腫瘍などのスクリーニングのために行われます。さらに詳しく は、オプション検査や脳ドックで受けることができる頭・頚部 MR・ I MRA 検査があります。MRI(磁気共鳴画像)とは、 強い磁石と電波を使って画像をつくり、MRA(磁気共鳴血管造影)では、同じ手法を用いて血管に造影剤を入れずに 血管を造影し、脳動脈瘤、頭・頚部血管の狭窄・閉塞の発見などに威力を発揮します。MRI でよく見つかるのは無症 候性脳梗塞(ラクナ)で、症状がなくてもある程度脳の動脈硬化の程度を推測することができます。MRA は、くも膜 下出血の原因となる動脈瘤や脳梗塞の原因となる脳動脈の狭窄を見ることができ、それらの病気の予防に役立ちます。 肺ヘリカル CT 主に肺を 3 次元的にスキャンして径 5mm 以下の小さな影もとらえるのが肺のヘリカル CT です。肺がんの早期発 見に威力を発揮しますが、その他、古い炎症の傷跡や肺気腫などが見つかります。ドックで行うヘリカル CT は毎年 受けていただいてもよいように被爆線量を下げていますが、異常を指摘された場合は、更に精密モードのヘリカル CT が必要になることがあります。喫煙者にお勧めのオプションですが、肺がんは最も予後の悪いがんですので、やはり 予防(禁煙)が大事です。 腹部 CT 肝臓、胆のう、膵臓、腎臓、脾臓などをコンピュータ断層撮影で、超音波とは違った角度から検査します。 マンモグラフィ(乳房 X 線) 乳がん検診として世界的に標準化が一番進んだ検査です。当センターはマンモグラフィの認定施設であり、読影も 認定医の完全二重読影となっています。40 歳以上の女性、脂肪やコレステロールを多く取る方、血縁者に乳がんになっ た方がおられる方、初産年令が高い、または出産回数が少ない方にお勧めです。 乳房超音波 X 線を使わず超音波で検査しますので、圧迫による痛みもありません。特に乳腺の発達した 30 歳台の女性や妊娠の 可能性がありマンモグラフィを受けることができない方にお勧めです。 超音波骨密度 しょうこつ こつそしょうしょう 超音波を用いて踵骨(かかとの骨)で骨の密度を測る、骨粗鬆症に対する検査です。閉経期以降の女性では急激に 骨量が低下しますので、特に女性にお勧めのオプションです。低い方は精密検査を受け、食事、運動、場合によって はお薬の治療が必要になります。 ファットスキャン(内臓脂肪量測定) CT 法で腹部の内臓脂肪量を皮下脂肪量と区別して計測する検査です。メタボリックシンドロームの元になる内臓脂 肪の量を直接測ることができる検査です。これはメタボリックシンドロームの基準を作るゴールドスタンダードとなっ た検査ですので、この値を知ることにより、食事、運動などのより細かい指導を受けることが可能になります。減量 に成功すると、内臓脂肪、皮下脂肪の順に減ってきます。 腫瘍マーカーセット 腫瘍マーカーといっても、現状ではどれも一つの検査でがんを診断したり否定したりできるものはなく、がん発見 のきっかけとなる検査です。従って、当センターでは男性用、女性用、消化器用、呼吸器用などのセットを用意しま した。 ピロリ菌検査 血中のピロリ菌(ヘリコバクター)の抗体を測定します。ピロリ菌は胃内に感染しますが、消化性潰瘍、胃炎、 胃がんとの関係が報告されています。 7 喀痰細胞診(蓄痰法) 3 日間の痰をためて肺がんを主とする上気道のがんのスクリーニング検査です。クラスⅠ、 Ⅱは正常、 Ⅱ Rep で要再検、 クラスⅢ以上は精密検査が必要です。 メンタルヘルス 現代社会はストレスにあふれています。問診表(SDS)を入り口として専門の心理療法士のカウンセリングを受け ていただき、必要な場合は、その後の外来受診やフォローなどの橋渡しもいたします。 脳ドック 脳ドックとは人間ドックのコースの一つで、脳 MRI・MRA などの画像検査と高次脳機能検査、専門医による診察、 説明がセットされている午後からの半日コースです。くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤、脳梗塞の原因となる脳動 脈の狭窄や微小脳梗塞などのチェックができ、症状についての専門医のアドバイスを当日受けることができます。 8 この項は、消化器系の主な病名や所見を解説したものです。なお、当センターでは、最終的には消化器の 専門医が総合的に判定していますので、再検や精密検査については、 「検査成績表」の総合結果コメントの方 を優先して下さい。 ■上腹部超音波用語解説 肝 臓 臓に比べて)肝臓が白っぽく見える場合を脂肪肝と しています。脂肪肝は、肥満、高脂血症、高血圧、 糖尿病といった生活習慣病と関連がありますので、 肝のう胞 カロリーやアルコールをひかえ、運動を心がけて下 肝臓実質の中に“水のたまった袋”ができている さい。また、比較的まれですが、単純な脂肪肝では 状態をいいます。先天性の形成異常(生まれつきのも なく脂肪肝炎を合併している場合があり、特に肝機 の)といわれていますが、通常は肝のう胞のために症 能異常が目立つ場合は肝硬変に進行する可能性もあ 状がでたり肝機能が悪くなることはありません。ただ りますので注意が必要です。 し、多発性のものや、大きめのもの(直径 50mm 以上) では年 1 回の定期的チェックは受けて下さい。 脂肪肝(脂肪沈着の不均一を伴う) 肝臓のエコー輝度が脂肪化のムラのため不均一に 肝内石灰化 見えるという所見です。この所見だけなら特に病気 肝臓実質の中にカルシウムが沈着していると推定さ とはいえませんが、肝臓の腫瘤とまぎらわしいこと れる所見であり、超音波検査では、 “ポツッと白く”う もありますので 1 年に 1 回は超音波検査をお勧めし つります。肝臓の何らかの炎症後の変化としてできる ています。 ことが多いと考えられていますが、通常はほとんど問 題ありません。 肝血管腫 胆のう・胆道 できる原因はわかっていませんが、異常血管からでき 胆のう結石 る肝臓の良性腫瘍です。とくに大きなものでなければ いわゆる“胆石”のことです。胆石自体は良性です 通常は放っておいてもよいでしょう。初めての指摘でも、 が、胆道で詰まって、いわゆる胆石発作(腹痛)を起 明らかに血管腫とわかるときは、経過観察のみで結構 こすことがあります。通常は痛みなどの症状がなけれ ですが、本当に血管腫かどうか診断がつかない場合に ば経過観察で十分ですが、将来少しがんができやすい は、念のため精密検査等をお勧めしています。 傾向があるため、1 年に 1 回は超音波検査が必要です。 また、胆のうの中に石が多数充満してよく見えないと 肝内高エコー腫瘤・低エコー腫瘤・その他腫瘤 きは、胆のうがんが隠れている可能性がありますので、 肝臓実質の中に腫瘤様の所見を認めるものです。超 念のため精密検査を受けて下さい。 音波検査で白いものは高エコー腫瘤、黒いものは低エ コー腫瘤、白黒混在している場合はその他腫瘤として コメットサイン います。これらの所見があっても腫瘍ではなく限局性 エコー上、胆のう壁に彗星のように尾をひく“コメッ の低脂肪化である場合や、良性の肝血管腫であること トサイン”を呈する場合をいいます。多くは、胆のう も多いのですが、肝がんとまぎらわしいものもあります。 壁の中にうまった胆石(壁内結石)です。これは、動 特に B 型や C 型肝炎の方で腫瘤様所見が出てきた場 かず痛みもなく、通常心配ありません。 すいせい 合は要注意です。指示に従って精密検査を受けて下さ い。 胆のう萎縮、描出不能 胆のうが非常に小さい(萎縮)か、全く見えない(描 脂肪肝(軽度・中等度) 出不能)場合です。慢性胆のう炎や、胆石や胆のうが 栄養が良すぎたりアルコール飲量が多くて、肝臓 んで内腔が詰まっている場合などがあります。指示が の細胞に脂肪化がおこっている状態で、 エコー上(腎 あれば、再検・精密検査を受けて下さい。 9 管は多少拡張しますので、その場合は異常ではなく、 胆のう壁肥厚像 術後の変化と考えて良いでしょう。 多くは良性の胆のう腺筋症や慢性の胆のう炎による ものですが、胆のうがんによるものの可能性もありま すので、指示に従って精密検査を受けて下さい。 胆のうポリープ 膵 臓 胆のうの中にできる“小さな盛り上がった病変”の 膵管拡張像 ことです。最も多く見られるのは良性のコレステロール 膵臓のなかの消化液(膵液)を集める“くだ”が拡 ポリープですが、ポリープの直径が大きいほど、がん 張している所見です。慢性膵炎や膵がんによる膵管の の可能性があります。直径が 10mm を越すとがんの可 圧迫による拡張の可能性や、粘液を産生する膵腫瘍に 能性が大きく、精密検査や治療が必要です。指示に従っ よる拡張の可能性がありますので、精密検査を受けて て、再検・精密検査を受けて下さい。 ください。 胆のう腺筋症 膵のう胞 “胆のうアデノミオマトーシス”ともいいます。胆の 膵臓にできた“水のたまったふくろ状のもの”です う壁が肥厚している(厚くなっている)もので、良性で が、単なるのう胞や慢性膵炎の炎症に伴うものの他に、 す。通常は症状をおこすこともなく治療の必要もあり 粘液を産生するような腫瘍性のものの可能性もありま ません。しかし、胆のう炎や胆のうがんでもよく似た す。また、膵がんが炎症性のう胞を形成している場合 所見が見られることがありますので、指示があれば再 もあります。膵臓は内臓のなかでも最も見えにくく診 検・精密検査を受けて下さい。 断しにくい臓器の一つですので、指示があれば再検や 精密検査を受けるようお勧めします。 胆のう結節性病変・胆のう腫瘍疑い 胆のうの内腔へ結節性に隆起しているものや胆のう 膵腫大 の腫瘤様病変をいいます。通常は胆のうポリープより 膵臓が通常より大きく見える場合も、やはり膵炎や も大きく、良性病変の胆のう腺腫や胆のう腺筋症だ 膵がんを合併している可能性がありますので、精密検 けでなく胆のうがんも考えられますので指示に従って、 査が必要です。 再検・精密検査を受けて下さい。 たんでい 膵内部エコー粗 胆泥(デブリ) 膵臓のエコー輝度がまばらに見えるということです。 胆石よりもっと細かい砂や泥状のものが詰まってい この所見だけならば特に病気ではありませんのでご心 ることをいいます。胆のうがんが隠れていることもあり 配にはおよびません。 ますので、念のため精密検査を受けて下さい。 膵内石灰化 肝内・肝外胆管拡張像 膵臓の中に白い点状のエコー像が見える場合です。 胆管が拡張している場合、その先で胆石やがんなど 炎症性の変化に伴うカルシウムの沈着が疑われますが でつまったり、細くなったりしている可能性があります この所見のみなら経過観察で十分です。 ので、再検や精密検査が必要です。ただし、軽度の 拡張の場合は、個人差があり異常とはいえないことも 10 あります。また、胆のうの手術の既往がある方では胆 膵脂肪浸潤 ■胃透視用語解説 脂肪肝と同じように、膵臓に脂肪化がおこって白く 胃透視病名解説 見える場合ですが、あまり病的な意義はありません。 膵描出不能 食道・胃・十二指腸ポリープ(の疑い) 膵臓は、皮下脂肪が厚かったり消化管のガスが多 粘膜が“いぼ”のようにもりあがった病変を一般に いと超音波が通りにくく見えにくくなります。場合によっ ポリープといいます。良性のものがほとんどですが、 てはほとんど見えない場合もあります。そのこと自体 内視鏡検査での診断の確定が必要な場合があります。 は異常ではありませんが、膵臓の評価が十分にはでき ませんということですので、腹部の症状(特に上腹部 「疑い」の場合はポリープが実際にはない場合もあり ます。 痛や背部痛)がある場合は精密検査を受けてください。 食道・胃・十二指腸隆起性病変・陥凹性病変(の疑い) 粘膜がもりあがった病変で、大きめのものや形がい 腎 臓 びつな場合にはポリープではなく隆起性病変と呼んで 腎のう胞 います。陥凹性病変とは粘膜面がへこんでいる病変で 腎臓の中にできた“水のたまった袋”で、年齢とと すが、形が通常の潰瘍とは異なっている場合にそう呼 もに指摘される頻度は増えますが、普通は症状もなく、 んでいます、いずれの病変も悪性である可能性が否定 精密検査や治療の必要はありません。ただし、直径 できないため内視鏡検査が必要です。 「疑い」の場合 が 50mm 以上の大きいものやのう胞壁に結節がある はヒダやバリウムのむらによる陰影のみの可能性もあ 場合や多発性でのう胞腎を疑う場合は、再検や精密 ります。 検査が必要になります。 食道・胃・十二指腸腫瘍(の疑い) 腎盂拡張と水腎症 比較的大きい“しこり”がある場合“腫瘍”と呼ん 腎臓で作られた尿がたまる場所が“腎盂”です。腎 でいます。悪性の病変であることが疑われるため内視 盂が拡張しているということは、その出口の方が詰まっ 鏡検査が必要ですが、 「疑い」の場合はヒダやバリウ ているか狭くなっていることを示します。これがひどく ムのむらによる陰影のみの可能性もあります。 なると“水腎症”です。尿路結石や腫瘍がある場合が ありますので、指示があれば精密検査を受けて下さい。 食道潰瘍瘢痕(の疑い) 食道の潰瘍が治った“きずあと”のことです。悪性 腎石灰化と腎結石 の病変の合併が否定できない場合があり内視鏡検査 腎結石は尿路結石の発作をおこすことがあります が必要です。 が、症状がなければ一応様子を見ていただいてよいで しょう。ただし、直径が 1cm 以上の大きい場合は症 食道・胃・十二指腸粘膜下腫瘍(の疑い) 状がなくても ESWL(体外衝撃波結石破砕術)での 正常な粘膜の下に存在する“こぶ”のことを“粘膜 治療をお勧めする場合があります。腎石灰化は小さな 下腫瘍”といいます。良性のものがほとんどですが、 点状の高エコー像で結石とはいえない程度のものです 大きさや形態によっては治療が必要となる場合もあり、 ので、症状がなければまずは放置可能でしょう。 内視鏡検査での診断の確定を行います。 「疑い」の場 合は粘膜下腫瘍が実際にはない場合もあります。 11 はまれですが、潰瘍があれば治療が必要であり診断確定 のために内視鏡検査で確認します。 胃透視所見解説 ニッシェ 陥凹(くぼみ)を意味する言葉で、胃透視においては バリウムがたまっている所見のことです。胃潰瘍や胃陥 凹性病変(胃がんを含む)の存在を示します。 アレア不同 胃の粘膜面には分泌腺の配列による胃小区とよばれ 胃潰瘍(の疑い) る構造があり、胃透視検査では粘膜の面の細かな模様 胃潰瘍とは胃壁の組織の欠損のことですが、慢性 として描出されアレアと呼ばれます。アレア不同とはアレ に経過している胃潰瘍の多くは良性です。しかし、悪 アがめだっていて大小不同であるという所見であり、慢 性の可能性もありますので、組織検査を含めた内視鏡 性胃炎の存在を示します。通常は経過観察で十分です 検査での診断の確定が必要です。潰瘍があれば良性 が、悪性病変の合併が否定できない場合などは内視鏡 でも治療が必要となります。 「疑い」の場合はバリウム での精査をお勧めしています。 のむらによる陰影のみの可能性もあります。 とうりょう 陰影欠損・透亮像 胃潰瘍瘢痕(の疑い) 隆起がある場合にバリウムの“はじき”として抜けて 胃潰瘍の治った“きずあと”のことです。良性の瘢 見えるのを陰影欠損、隆起の輪郭がみえている所見を透 痕が多いのですが、早期胃がんが合併していたり、進 亮像といいます。ポリープや隆起性病変の存在を示しま 行胃がんが瘢痕に似ている場合もありますので内視鏡 す。 検査が必要です。 「疑い」の場合は慢性胃炎のための 変形の可能性もあります。 へき 粗大すう襞 ひだ 胃の襞が太いもののことです。胃炎のための変化で 胃炎・慢性胃炎 あることがほとんどですが、悪性病変の合併が否定で 胃粘膜のただれや慢性の炎症がおこっている状態の きない場合は内視鏡での精査をお勧めしています。 ことです。症状がない場合も多く、必ずしも治療が必 へき 要な状態ではありません。悪性病変の合併が否定で すう襞集中 きない場合は、内視鏡検査をお勧めしています。 胃の襞 が集中しているように見える所見です。潰瘍 ひだ 瘢痕や胃陥凹性病変(胃がんを含む)の存在を示しま へき 胃炎・胃巨大すう襞(の疑い) ひだ 胃の襞 が太くなっている胃炎のことです。ほとんど は良性ですが、悪性の可能性が否定できない場合に は内視鏡検査での診断の確定が必要となります。 十二指腸潰瘍(の疑い) 12 十二指腸壁の組織の欠損のことです。悪性の可能性 す。
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