学芸室長のご挨拶 - 川崎市市民ミュージアム友の会WEB

平成 27(2015)年
3月 31 日
第 56 号
友 の 会
会 報 56
川崎市市民ミュージアム
KAWASAKI CITY MUSEUM
学芸室長のご挨拶
川﨑市市民ミュージアム
学芸室長
望月 一樹
プロフィール
昭和 63 年(1988)に市民ミュージアム学芸員となる。以後、歴史担当として資料収集
や調査研究、展示等に従事する。これまで、「木簡展」「東海道展」「弘法大師信仰
展」「池上幸豊展」「郡の役所と寺院展」「わが家の宝物 わたしの宝物展」「メイ
ド・イン・カワサキ展」「近代川崎人物伝展」ほかの企画展を担当した。また友の会と
は、開館以来20年近くにわたり、会員諸氏と『続日本紀』の講読を行ってきた。
昨年4月に、学芸室長に就任しました望月一樹で
そのような中で、地域博物館と現代美術館、さら
す。中田会長より、就任にあたっての挨拶の原稿を
に映像センターとしての要素をあわせ持つこの市民
依頼されましたが、ご承知のとおり開館以来27年
ミュージアムが、その特徴を活かし、人々のニーズ
間学芸員として市民ミュージアムに勤務してきまし
に応え、川崎市内外にいかに情報発信していくのか、
たので、あらためて友の会会員の皆さまにご挨拶も
今後に向けた学芸業務の大きな課題といえるでしょ
ないとは思いますが、拙文を寄稿させていただきま
う。そしてその課題に対し、また何よりも多くの方
した。
に市民ミュージアムの活動を理解してもらい来館し
市民ミュージアムが開館した昭和63年、世の中
てもらえるよう、学芸員たちは日々の業務にあたっ
はのちに「バブル景気」と評される好景気にありま
ています。そんな学芸員たちが、いかんなく力を発
した。しかしバブルが崩壊し経済は低迷、失われた
揮し仕事ができるよう学芸室の環境を作り、これま
10年、20年とも言われる時代に突入します。ま
での経験を若い職員に少しでも伝えることが私の仕
たその間、阪神大震災や東日本大震災など未曾有の
事かな、といま思っているところです。現場からは
自然災害に見舞われるとともに、原発の安全神話も
少し遠ざかりますが、なお学芸員として限られた中
崩れ、大きな社会不安の中で私たち日本人の価値観
で活動していきたいと思いますので、今後とも宜し
も大きく変わったと感じます。その一つに、人々が
くお願いいたします。
物質的な豊かさの追求から、より精神的な心の豊か
27年度は、「渡辺豊重展」「木村伊兵衛写真賞
さ、人と人との関係の重要性に目を向けるようにな
40周年記念展」「古鏡展」「江口寿史展」「くら
ったことが挙げられるでしょう。そのような変化が、
しの道具展」といった企画展を開催します。現在、
あらためて地域に対し熱いまなざしを向けさせ、ま
各担当学芸員は日夜奮闘努力をしているところです。
た芸術活動などに表れているのではないかと思いま
友の会会員の皆さま方には、是非ご高覧くださいま
す。そうした現代社会のなかで、あらためて博物館
すよう、末筆ながら重ねてお願いをしまして擱筆す
の存在意義、その重要性が問われているところです。
ることとします。
しかし一方で全国の博物館も、この20数年で大き
く変化しました。景気悪化に伴う予算や人員の削減
などといった厳しい状況が続き、また地方自治法の
一部改正に伴いできた指定管理制度を導入する館も
増え、試行錯誤の中で活動しているのが現状といえ
ます。
4/4 から「渡辺豊重展」
10/10 から「古鏡 その神秘と力」
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