若年層雇用 ~フリーターの増加~ 神野ゼミ D 垂見 淳 沖梨々香 内田守勅 目次 1章 1. 新卒採用の抑制 2. 成果主義のメリット・デメリット 3. 年功序列のメリット・デメリット 2章 若者側から見たフリーター増加原因 1章 私たちは企業側からの視点でフリーターの増加に関して述べていく。 はじめに新卒採用の抑制を続けている日本企業からみていくことにする。日銀短観による と、2010 年度の企業部門(企業産業)の新卒採用は、2009 年度のマイナス 7.6%に、続き、 マイナス 23.6%もの大幅圧縮計画となっている。さらに、2011 年度もマイナス 5.5%と圧 縮継続の方針が示されている。しかし、新卒採用計画 2010 年 6 月時点の調査(2011 年度計 画についての 2010 年 6 月調査)からそれほど大きく変動していない。したがって、2011 年 度計画も大きく修正されることもないだろう。だからこそ小さなふり幅もインパクトは大 きいのである。なぜ新卒採用がここまで抑制されるのだろう。 ここで、新卒採用のメリットを考えることにする。まず一つ目均質な若年労働力の確保で ある。日本の新卒者は、3 月に大学を卒業して、4 月から働き始めるというパターンが定着 している。そのため、新卒採用を行うことで、年齢・学歴・社会経験などの面でほぼ均質 な人材を、同時期にまとめて迎え入れることができる。採用、受け入れ手続き、教育など を一括して実施できるため、一人当たりのコストダウンも図れるからである。二つ目は、 コア人材、リーダー候補の確保である。優秀な人材の新卒者を採用し、社内で育成するほ うが確実性は高いと考えられているからである。三つ目組織の活性化・強化である。若い 社員が入ってくることで、組織全体がリフレッシュされ、今いる会社員は新入社員に教え ることによりまた自分の復習となり一緒に成長することができる。四つ目企業文化の継承 である。特定の色に染まっていないので会社の色に染めやすいということである。新卒採 用を抑制しすぎたところではベテランと若者のコミュニケーションが取れていないことに 悩まされていた。五つ目採用活動が企業広報にもなる。メディアや会社説明会などを通じ て、企業側の生の姿を広く告知することになり、将来の従業員を生み出す PR 活動ともなる。 このように新卒採用には多くのメリットがあるにも関わらず、なぜ抑制するのだろうか。 それは、新卒採用が大きな先行投資である企業側にとって新卒社員は就業経験がなく、入 社後しばらくは戦力化しないのである。将来の有望な会社員を育てるためとはいえ教育期 間中は純粋なコストになってしまうのだ。このコストには新卒者にかかる経費のほかに、 OJT も含めると教育を担当する社員の人件費や時間も計算していかなければいけない。ゆ えに新卒採用は、こうした先行投資の負担を吸収する体力を持った企業が行える採用だと いえる。よって、先の利益よりも今の利益をとるということで新卒採用が抑制されている。 次に成果主義と年功序列の違いについて述べていく。成果主義とは、ある一定の課題の評 価について、最終的にその課題がどうなったかを重視する考え方のことである。メリット として挙げられているのは社員に労働力の向上であり、社員同士競争することにより、会 社の中が活性化されるようになる。成果主義により、向上心がある人は、より自分を高め ようとして頑張って努力をする。結果を出した人が結果を出していない人に対して、給与 の差があまりないために、不満につながっていき結果として高い生産性が落ちていくが、 結果、給与の査定をすることによって、高い生産性を維持できるということになる。デメ リットとして挙げられているのは、結果は、売上以外だと品質向上の度合いや社員の技術 力など、数値では表せないものが多いため、査定基準がわからなくなってしまう。なので、 売上が下がれば成果が下がったとみなされやすくなり、そのためリスクが高い新商品など にだれも手をつけたがらなくなり、安定感のある商品にしか人が集まらなくなり挑戦意欲 の低下が挙げられている。そのため、長期的な貢献や、意欲や途中経過が評価されないこ とが多い。ゆえに、自主目標を設定できたとしても短期的なものであって、かつ達成しや すい内容になっている。また、後輩や同僚に技術を教えるということはその相手が成長す るということになり自分自身が蹴落とされていくかもしれないために、技術の継承が希薄 になっていてしまう。では、次に年功序列についてである。メリットはチームワークが保 たれやすいことである。成果主義だと後輩が上司になることもあるので、心理的につらい ものがあるかもしれないが先輩が上司のほうが受け入れやすいのはたしかである。次に、 組織への忠誠心(ロイヤリティ)を高めやすいことである。今、きつい仕事をしていても 長く会社に勤めていたら将来自分にも出世することができるかもしれないという期待で会 社に忠誠を誓うことがある。デメリットは転職者や非正規雇用に不利である。同一企業へ の勤続が重視される事や、賃金が高くつくために、特に高年齢の転職者が制度的に不利に なる。また、派遣社員などの非正規雇用者は年功序列制度の対象外とされ、賃金を相対的 に低く抑えられてしまう。次に、既卒(就職先がないまま卒業した学生)の就職が不利で ある。年齢が上がるほど企業内の年齢による賃金モデルから外れてしまうため、企業は既 卒や博士をあまり採用したがらない。従って、団塊ジュニアのような人数の多い世代が不 況の時期に就職活動を始めると、採用の厳選化によって大量の学生が内定を得られなくな り、その後も全く採用されないため、フリーターの急増を招く。その後景気が回復しても その時の新卒を大量に採る為世代間による雇用機会の不均衡が生じることになる。 この為、成果主義と年功序列を組み合わせるのが適切である、 2章 1 章では企業側からのフリーター増加の起因を述べた。2 章では若者側からフリーター・ニ ートの増加原因を述べていく。 若者の就業率の低下には就業意識の変化や企業とのミスマッチなどがあり、また七・五・ 三転職という新規学卒就職者のうち3年以内に会社を辞めて転職するものの割合が、中卒 で7割、高卒で5割、大卒で3割に達するという現象も発生している。失業率が高く、労 働市場の需給環境が悪化している年の就職は、望まない仕事に就くことを余儀なくされる ことが多く、その結果若者が会社を辞めやすくなり転職が増えてしまう。 日本労働研究機構によるフリーター分類において、①「モラトリアム型」 、②「夢追求型」 、 ③「やむを得ず型」の3つに分類される。 ① モラトリアム型:職業を決定するまでの猶予期間としてフリーターを選択、フリ ーターをしている間に自分のやりたいことを探そうとするタイプや、先の見通しがはっき りしないまま学校や職場を離れた者など ② 夢追求型:公務員試験や芸能関係の職業等、 「明確な目標を持ったうえで、生活の ために、あるいは一種の社会勉強の手段としてフリーターを選んだ者など」 ③ やむを得ず型:正規雇用を志向しながらも、なんらかの理由によりそれが得られ ない者や家族の事情等でやむなく学費を稼ぐ必要が生じたためにフリーターをせざるを得 なくなった者など ・若者の意識の変化 在学中に自分の進路を決定し、卒業を同時に進学あるいは就職するというのが従来の典 型的な就業意識であったが、近年その意識は変わってきている。では、最近の若者たちは 就職についてどのように考えているのだろうか。2000 年の日本労働研究機構における高校 生の就業意識・進路意識の調査によると、多様な職業を選択する中で自分のやりたいこと を絞りこもうという意識が表れていると述べている。フリーターに多く見られる、長期間 にわたって 1 つの仕事にとどまることに対する慎重な姿勢も現代の若者の特徴である。加 えて、自由で気楽な労働を求める若者が増加傾向にあり、若者は仕事において、時間や人 間関係などの拘束を受けることを嫌っていることも指摘される。 このような意識から「やりたいこと」が定まらず、進路決定を先延ばしする若者たちへ の手厳しい批判がある。 「仕事に就くつもりなのであれば、学生時代のうちに分の進路を決 めておくべきではないか」 、 「若者の社会人として自立して生きていこうという意識が希薄 になっている」といった批判である。このような、モラトリアム期間の延長を望む意識が 若者の間で広まってきたことがフリーター増加の最も大きな原因である、という見解が若 者側に原因を求める見方の代表例である。心理学上、モラトリアムとは、自己決定できる 大人になるための準備期間を意味し、思春期に起こるとされていた。学生のうちに「やり たい仕事」が見つからないといって、正社員として就職することを拒み、 「なんとなく」学 生のときのように「気楽な」フリーターになってしまう。つまりモラトリアムをなかなか 離脱できない若者ンが近年増えてきており、このような若者がフリーターになっていると している。日本労働研究機構がフリーター予定の高校生対象に行った調査によると、確か に、若者の就業観が希薄であり、モラトリアム期間が長期にわたっているという意見を頭 ごなしに否定することはできそうもない。 「やりたいこと」が見つからないためにフリーターを志向する若者が存在する一方で、 「や りたいこと」があると主張しフリーターになる者もいる、との指摘がある。 「夢追求型」を 呼ばれるフリーターがそれだ。ところで、彼らのいう「やりたいこと」とはどのようなこ となのだろうか。やりたいころの具体内容を自由記述で求めた日本労働研究機構の調査結 果によると、音楽・ダンス、勉強・習い事、芸能・プロスポーツ関係の順に人気が集中し ている。とはいえ、 「やりたいこと」が決まっているという点で、このような「夢追求型 」は「モラトリアム型」に比べ、周囲の理解を得やすい。「やりたいこと」があるフリータ ーは共感できる、いいフリーターであるが、それがなくてフリーターを続けるのは悪いフ リーターであるといった、 「やりたいこと」の有無でフリーターを二分するとらえ方は多く の若者に共通してみられる。しかし、「無回答」が全体の 27.3%で最も多い。「やりたいこ と」という言葉を使いさえすれば社会的に許されるであろうフリーターの甘えが見えてく る、という指摘も間違いではないだろう。遊び・趣味・ボランティアなども進路決定の先 延ばしともとれる。 「夢の追求」がモラトリアムの「隠れ蓑」となっているケースも存在す ることは確かであろう。 パラサイト・シングル パラサイト・シングルとは学卒後も親と同居し、基礎的生活条件を依存している未婚者 であるとされている。親との同居は、親から住居や食事の提供を受けているだけでなく、 冷蔵庫や洗濯機などの生活用品も家族と強要していると考えられ、経済的に親に依存して いるといえる。親に経済的に依存してパラサイト・シングルになることで、低収入のフリ ーターとしてモラトリアム期間を謳歌できているのではないか、という認識がその背後に はある。また、豊かな親が子供を甘やかすことが若年失業の問題を隠蔽しているとも指摘 されている。 若者が自ら積極的にフリーターを選択し、モラトリアム期間を謳歌しているという。こ こからはネガティブなイメージでフリーターをとらえられる。これが若者側に原因を求め る見方でありフリーター問題に対する見解は圧倒的にこちら側にたつのが多いのが現状で ある。 参考文献 城繁幸『若者はなぜ 3 年でやめるのか?年功序列が奪う日本の未来』光文社新 書、2006 年 橘木俊昭『脱フリーター社会』東洋経済新報社、2004 年 乾彰夫『不安定を生きる若者たち』大月書店、2006 年
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