平成 27 年 6 月 24 日放送 夏野菜と健康 茨城西南医療センター病院 栄養部 栄養主任 佐々木貴子 司会者:最近は多くの野菜や果物が一年中店頭に出回っていますね。 中でも、 「旬の野菜」と言いますが、 「旬」とは何ですか? 佐々木: 「旬」とは、一番多く収穫される時期をいいます。栄養価も美味しさも一番の時期 です。旬の野菜には、その季節に体が必要としている栄養成分が含まれています。 司会者:これから暑くなってきますが、夏に旬を迎える野菜を教えて下さい。 佐々木:夏野菜の代表といえば、トマトやピーマン、きゅうり、茄子を思い浮かべる方も 多いと思います。 他にもオクラ、モロヘイヤ、とうもろこし、南瓜などがあります。 司会者:確かに夏になると「朝採りのとうもろこし」が店頭に並びますね。甘くてとても 美味しいです。 ところで、冬至に南瓜を食べる風習がありますから、南瓜は冬野菜と思っている 方もいらっしゃると思います。 佐々木:南瓜は生のままであれば、比較的長い期間保存しておけます。 昔は、冬に新鮮な野菜が少なく、ビタミンが不足しがちであったのを、夏から保 存してきた南瓜を食べることで風邪予防に役立てていたのだと思います。 司会者:その他に馴染みのある夏野菜はありますか? 佐々木: 「ゴーヤ」と呼ばれている苦瓜、さやいんげん、枝豆などがあげられます。 夏野菜は全般的に、原色で濃い色をした野菜が多く、暑い夏を乗り切るために必 要な栄養素がたっぷりとつまっています。 司会者:たくさんの種類があるのですね。 では、それぞれの野菜の特徴を具体的に教えて下さい。 佐々木:トマトはβ‐カロテンやビタミンC、赤みの色素であるリコピンの他、毛細血管 に働くルチン、肌荒れを防ぐビオチン、余分な塩分を排出するカリウムなどが含 まれていて、栄養成分が豊富です。 ピーマンはビタミンCが多く、トマトの約4倍の含有量です。β‐カロテン、ビ 1 タミンE、カリウムなども多く含まれています。 きゅうり、茄子は成分の90%以上が水分ですが、どちらもカリウムを多く含ん でいます。カリウムには利尿作用がありますので、むくみやだるさの解消に効果 があります。また、茄子の皮にはポリフェノールの一種ナスニンを含んでいて、 抗酸化作用があります。 オクラには食欲をそそる、独特の粘り成分である水溶性食物繊維のペクチンと、 山芋やレンコンのぬめりと同じ成分である複合たんぱく質ムチンが含まれていま す。ペクチンには血中のコレステロールを減らし、血圧を下げる効果があります。 ムチンは胃の粘膜を保護し、たんぱく質の消化促進、整腸といった働きがありま す。 アラビア語で「王家の野菜」を語源にするモロヘイヤは、主な栄養素をあげるの も大変なほど栄養価が高い、無敵の健康野菜です。β‐カロテン、ビタミンC、 E、カルシウム、ビタミンK、鉄、葉酸、ムチンを含有しています。 とうもろこしは野菜の中では高カロリーで、主成分は糖質とたんぱく質です。胚 芽の部分には、リノール酸、ビタミンE、B1、B2、カリウム、亜鉛、鉄など の栄養素が詰まっています。また、不溶性食物繊維のセルロースが豊富なので、 腸をきれいにする効果もあります。 南瓜の栄養価の高さは、野菜の中でもトップクラスです。β‐カロテン、カリウ ム、ビタミンC、B1、B2、E、カルシウム、鉄などが含まれています。 独特の苦みが特徴の苦瓜は、苦味成分のモモルデシンを含んでいるからです。モ モルデシンは胃液の分泌を促して食欲を増進させるだけでなく、肝機能を高め、 血糖値を下げる効果があるといわれています。その他にビタミンC、カリウム、 カルシウム、マグネシウムなども豊富で、夏バテ解消にはうってつけの野菜とい えるでしょう。 さやいんげんにはβ‐カロテン、ビタミンCが多く、カリウム、ビタミンB群や カルシウムも含まれています。特に若いさやにはアスパラギン酸やリジンといっ たアミノ酸が含まれているので、疲労回復や新陳代謝を促進します。 夏のビールの友である枝豆は、大豆が熟す前の未熟な種子です。良質のたんぱく 質、脂肪、糖質、ビタミンB1、B2、E、食物繊維や鉄を含む大豆のいいとこ ろと、大豆にはないビタミンCもたっぷり含んでいます。葉酸も多いので、体の 成長促進や貧血予防などに効果があります。たんぱく質にあるアミノ酸の一種メ チオニンが、アルコールの分解を促し、肝臓への負担を軽くします。 司会者:ビールを飲むときに「とりあえず、枝豆」と注文するのは、身体にとっても合理 的な組み合わせだったのですね。 それぞれの野菜に素晴らしい効能があることが分かりました。 2 佐々木:夏は暑さのために新陳代謝が乱れ、体調が狂いがちになります。一方で暑さのた め水分をとり過ぎたり、汗をかき、つい塩分も取り過ぎになります。すると身体 がむくみ、心臓に負担がかかるばかりか、塩分の中に含まれるナトリウムの害と して高血圧を引き起こす可能性が高くなります。 そんな時に、カリウムを多く含む野菜を食べると、カリウムの持つ心臓強化の作 用にナトリウムの排泄を促進する作用が重なって、心臓を守り、高血圧を防いで、 むくみの解消にもなります。 司会者:まもなく本格的な夏を迎えます。健康的に過ごせるアドバイスをお願いします。 佐々木:夏野菜は自然の夏バテ予防薬だと思います。 たくさん水分を含んでいるので体温を下げる働きをしてくれます。 また、いろいろなビタミンやミネラル類を含んでおり、身体の調子を整える働き をしてくれます。暑さで食欲の無いときでも、苦味が食欲を刺激したり、ネバネ バ野菜類はとろとろした食感で喉を通っていきやすいです。このネバネバ野菜類 は整腸作用や疲労回復効果もあります。 夏が旬の野菜は、夏の強い紫外線や暑さから逃げられない植物たちだからこそ、 それに対処する自然の力を身につけているのだと思います。 夏野菜には生で食べられるものも多いので、不足しがちな栄養素を簡単に補給し やすい利点もあります。 旬の夏野菜を積極的に食べることで、これから迎える暑い夏を元気に乗り切って いただきたいと思います。 3
© Copyright 2024 ExpyDoc