70周年記念式 式辞

創立70周年記念式
式辞
1946年(昭和21年)5月15日を本校創立の日とし、70年の歳月が流れま
した。本日、秋の朝霧に洗われる清き学舎に、愛媛県知事代理三好伊佐夫様、西予市
長三好幹二様をはじめ、今日に至るまでご支援いただきましたご来賓の皆様、愛媛県
教育委員会、同窓会、PTAなど多数の方々のご臨席を賜り、愛媛県立野村高等学校
創立70周年記念式を挙行できますことは、生徒教職員にとって大きな喜びであり、
衷心より厚く御礼申し上げます。
本校の創立については、明治40年頃に地元で熱心な学校誘致運動がありました。
地域の人々は早くから地域の主産業である農業の担い手を育てる必要に気が付き、学
校の設置を強く望みました。しかし、すぐには実現せず、昭和20年の太平洋戦争の
終結を待たねば本校は生まれませんでした。約40年の長い時間にも学校創立への灯
火を絶やさず、やっとの想いで創立にこぎつけました。その経緯をひもとくと、与え
られたのではなく地域自らの手で生み出した学校であることがわかりました。学校創
立に向けた人々の熱い想いは、校歌に謳う「うち拓く心を継ぎし」の原点と言えるの
ではないでしょうか。
その後、普通科・農業科・畜産科・家庭科・生活科を置いて、人材育成と地域貢献
の役割を果たしてまいりました。かつては3つの分校と定時制を擁し、学校全体では
生徒が1,000名を超えるも時期ありました。現在261名と小さくなりましたが、
70年の歴史の中でもひときわ光る活躍を見せています。相撲部は昨年度全国高校総
体で団体5位に入り、今年度は全国高校総体をはじめとする3つの全国大会で田中大
介選手が準優勝を獲得しました。女子バレーボール部が3年連続県ベスト4に入り四
国大会に出場していることも小さな学校では稀なことであります。箏曲部は昨年全国
10位以内に相当する文化連盟賞を受け、地域独自の文化を守る強い力になっていま
す。また一昨年、日本学校農業クラブ全国大会の研究発表において、最優秀・日本一
を受賞し、地域産業へ貢献するための研究に衰えはありません。これらすべては生
徒・教職員の頑張りはもちろんですが、創立から現在に至るまで、本校を愛し本校に
尽くされた多くの皆様あっての成果であります。
昨年“野村地域教育活性化連絡協議会”が発足し、西予市からも学校教育の充実に
つながる支援をいただいております。この会において、学校や地域を思う熱い議論が
なされていることを有難く思うとともに、創立時の熱意は、歴代本校に関係してきた
皆様を通じて、今にしっかり受け継がれていることを感じます。
本校は緑ヶ丘と呼ばれる小高い場所に建っています。「野村の町の子供たちは大き
くなると、奥まった所の高みにある学校に行くのだ、と幼心に思う時代があった」と
古い卒業生から聞きました。これは、地形の高みだけでなく子供自身の成長をいざな
う目標としての高みをも意味し、学舎はその象徴として高く佇んでいたのではないか
と推察します。地域の象徴とも言える本校に多くの若者が学び、これまでに14,6
15名の優れた人材が巣立ち、各界各地で活躍しています。
節目の年に当たり、創立時の地域の熱い想いに応えられているか私は自問していま
す。自らが生み出した歴史を持つ学校であるなら、本校ならではの教育があるべきで
す。純情で天真爛漫な生徒の気質を生かさなくてはなりません。私は、生徒の皆さん
が地域や社会のために持てる力を惜しみなく尽くす人になってもらいたいと願いま
す。単なる成績優秀生徒や部活動に優れた生徒は世に溢れています。地方や弱者に目
が向き、経済競争だけでなく真に豊かな社会の実現に必要とされる人材を育てる学校
でありたいと考えます。すでに本校はこのような人材を多数生み、独自の光りを放っ
ています。後に続く皆さんも、勉強や部活動で自分を厳しく鍛え、うち拓く心を継い
で行かなくてはなりません。
本日ご臨席の皆様の本校に対する想いを、生徒・教職員一同改めて心に刻み、永く
受け継ぎ発展させて行く所存であります。今後とも本校の充実発展のため、一層のご
支援・ご指導を賜りますようお願い申し上げます。
平成27年10月30日
愛媛県立野村高等学校
校長
米森美智夫