オーストラリアにおけるハイテク温室・視察レポート

個別企業/研究機関への取材記事例(海外)
オーストラリアにおけるハイテク温室・視察レポート
今回はビクトリア州・メルボルン近郊にある施設園芸をいくつか訪問したので、視察企
業の取り組み・栽培の様子について報告する。
そもそも、ビクトリア州はオーストラリアの中でも肥沃な土地に恵まれ、国内ではクイー
ンズランド州に次ぐ農産物生産量を誇るエリアである。同州における生産量は、国内全体
の 24%を占めており、農産物の輸出量ではトップの 31%となっている1。
例えば、露地栽培ではメルボルン市内より電車で 50 分程の所にある Werribee が一大産地
であり、キャベツ・白菜・ブロコッリー・カリフラワーなどのアブラナ科の生産量では国
内トップを誇る2。
広大なキャベツ畑
土壌はオーストラリア特有の赤土であるが、肥沃
な土壌で露地野菜に適している。
露地栽培においても、灌漑設備が整備されており、
点滴灌漑チューブ、スプリンクラーが各圃場に導
入されている。
視察1「直売所を併設したパプリカ温室栽培」GATEWAY
GATEWAY 社3は、メルボルン市内より電車で一時間程のリリデール(Lilydale)にて、直売
所を併設したパプリカ温室栽培を行っている農業生産法人である。同社では農作物の生産
の他、肉の加工やワインの製造も行っている。
約 5000 平方メートルの温室ハウス内では、年間 100 トンのパプリカを周年栽培している。
品種としては「緑、赤、黄色」のカラフルなパプリカとなっており、温室ハウスに併設す
る直売所では、$7.95/kg (2013 年 1 月現在)にて販売されていた。
その他として、ビクトリア州で最も大きな卸売市場である Footscray 市場やメルボルン近
郊の大型マーケット4に毎週、卸している。
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詳細は以下のウェブサイト(Department of Environment and Primary Industries, Victoria,
Australia)をご参照下さい
http://www.dpi.vic.gov.au/agriculture/horticulture/vegetables/victorias-vegetable-industry
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http://www.anra.gov.au/topics/agriculture/pubs/national/brassicas.html
http://www.gatewayestate.com.au/
http://www.melbournemarkets.com.au/
約 5000 平方メートルの連棟温室ハウスの外
観(左)とパプリカ栽培内部(右)の様子
店内・直売所の様子
店内には新鮮野菜の他、加工したジャムやドライフルーツも販売されている。こうした商
品の中には、周辺の農家より取り寄せて販売しているものもある。
温室ハウス内部の様子
栽培レーンでは、スティック式点滴潅水システ
ムを利用しながら、上段はロックウール、下段
はココピートを採用(全て Cultilene 社製5)。
ロックウールは廃棄する際に環境に負荷がか
かってしまうため、下段ベッド部分にはココピ
ートを採用し、ロークウールの使用量を減らし
ている。
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参考 URL:http://www.cultilene.com/show/en/producten/1,28/Slabs
視察2「ハイテク農業技術の専門学校」Chisholm Institute of TAFE
メルボルン市内より電車で一時間半程にあるクランボーン(Cranbourne)では、Chisholm
Institute of TAFE6が、1500 平方メートルのハイテク温室ハウスを稼働させている。同機
関は、ハイテク農業技術を習得することができる学校である。
ハイテク温室ハウスでは、オランダ Priva 社のシステムを活用しながら、パプリカ・トマ
トなどの周年栽培が行われている。環境制御技術により、収穫作業以外の全工程が自動管
理されている。施設の管理責任者である Tony Bundock 氏は、本施設が建設される前にオラ
ンダの Priva 社にて研修トレーニングを受けた、という。
同機関にて稼働させているガラス温室ハウス外観(左)と施設内部の様子(右)
培地にはグロダン社のロックウール「Plantop Delta」7を採用している。Plantop は水分や
EC 等の環境条件を培地全体に均一に維持できる高品質ロックウールである。また栽培レー
ンには、グロダン社の WCM-Continuous meter が導入されていた。同製品は 24 時間の水分
量・温度・養分濃度を測定・最適環境を自動管理できる装置である8。
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http://www.chisholm.edu.au/
http://www.grodan.com/solutions/propagation+products/plantop+delta
http://www.grodan.com/solutions/water+content+meter/wcm-+continuous
自動温度管理ヒーティングシステム@AIS Greenworks 社を採用9
液肥混入器(左)10と消毒装置(右)11はオーストラリアの Powerplants 社を採用している。混
入器では液肥タンクを変えずに、作物ごとに調整した液肥を正確に作り出すことができる。
また、消毒装置によって、使用後の排液中の病原体を完全に取り除き、リサイクルするこ
とができる。
排水管にはイスラエル・アーカル社製 12 のスピンクリン(Spin
Klin)<右写真>を導入していた。
同製品はフィルターが汚れた場合、自動で洗浄することができる
ディスクフィルターであり、フィルター部分の清掃の手間を省く
ことができる装置である。
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http://www.aisgreenworks.com/Home.aspx
http://www.powerplants.com.au/directJet-fertigation
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http://www.powerplants.com.au/priva-vialux/
12
http://www.arkal-filters.com/
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その他「ハウス管理ソフト」
温度(外気、ハウス内、培地)、光量、二酸化炭素量、換気率などを 24 時間モニタリング・
データ化し、自動管理制御を行っている。例えば、設定値を外れた場合など、問題発生時
には即時、スマートフォンなどにアラート・データが転送される。