田んぼまわりの生きもの調査アドバイザー 意見交換会報告書

平成 27 年度多面的機能支払交付金に係わる
田んぼまわりの生きもの調査アドバイザー
意見交換会報告書
栃木県農地水多面的機能保全推進協議会
平成27年度
田んぼまわりの生きもの調査アドバイザー意見交換会 次第(案)
栃木県農地水多面的機能保全推進協議会
日
時:平成27年5月20日(水)13:30~
場
所:栃木県土地改良事業団体連合会
宇都宮市平出町1260番地
1 開
会
2 あいさつ
栃木県農地水多面的機能保全推進協議会
栃木県土地改良事業団体連合会
栃木県農村振興課 環境対策担当
3 内
専務
穐野 和人
主幹(GL)明瀬 敏
容
1).栃木県の多面的機能支払制度の取組について
生態系保全活動について
2).アドバイザーによるワークショップ
ア)生きもの調査から、どんなことが分かったか
イ)生きもの調査の結果は、どう利用できるか
ウ)生きもの調査ではどんな工夫をしたか、今後どんな改善が必要か
3). その他
4 閉
会
ワークショップのテーマ
コーディネーター:宇都宮大学 水谷名誉教授
1.生きもの調査から、どんなことが分かったか
生きものの生態や環境、子どもと生きものの関係、
現代の農業のすがた、遊びの伝承・・・
2.生きもの調査の結果は、どう利用できるか
生育・生息環境の改善、農業のあり方、啓発、世代間交流・・・
3.生きもの調査ではどんな工夫をしたか、今後どんな改善が必要か
原体験、説明(伝えるべき知識)、小学校との協力、結果のとりまとめ(マップ
づくり)・・・
A班
1.生きもの調査から、どんなことが分かったか
(場)
・ 生きもの調査を行える場所が少ない、範囲が限られている。
(伝承)
・ 昔の環境を思い出せる場所になった。
・ 若い世代が知らないことが多いことから、今
まで、年長者が伝えられていないことを伝え
られた。
・ 魚を食べる文化を伝えられた。
・ 昔の遊びを実践的に実施できた。
(子ども)
・ 生きものを見て、子供たちの目が輝いていた。
・ 親も子も生きものと触れ合える場を提供ができた。
(その他)
・ 次世代の育成の大きな課題
・ 外来種の駆除をどうしたらいいか?命の問題について、どのように取組めば良いか。
2.生きもの調査の結果は、どう利用できるか
(農業)
・ 生きものが農業にどのようにかかわっているかの説明ができた。
・ 年間の水路維持の必要性が伝えられた。
(環境)
・ 今と昔の環境の違いが生きものの生息に影響を与えている。
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(データ)
・ データ化することによって地域の指標となる。
・ データがあることにより、保全対策の提案をすることができる。水田魚道、ビオト
ープなどの提案。
・ データがあることで、各自に考えさせることができる。生きものがいなくなった理
由を説明ができる。
(提案)
・ 生きものを増やしたいという心がビオトープづくりなどの生態系保全につながって
いる。
・ ホタルを増やしたいということであれば、カワニナを放流することではなくて、周
辺の環境を整える必要性を提案できた。
・ コミュニティの絆、団結力につながる
3.生きもの調査ではどんな工夫をしたか、今後どんな改善が必要か
(活用)
・ 調査結果の同定を子供たちに調べさせる。
・ パソコン・デジカメ・タブレット等の電子機器を使って解説する。
・ 田んぼ周りだけではなく、畑の生きもの調査を実施。
(連携「学校」)
・ 総合学習や理科の授業で取り上げていただいている。
・ その総合学習が発展し、土曜学校による地域活性化に繋がっている。
(連携「地域・文化」)
・ 地域の自然環境マップ作成が重要である。マップを作ることで住民の情報共有につ
ながっている。
・ 地元のお年寄りに昔話をしてもらい、伝える場になっている。
・ タモロコ・ドジョウなどの食文化を伝える場になっている。
2
B班
1.生きもの調査から、どんなことが分かったか
(子どもと生きものの関係)
・ カエルを触ったことがない小学生が半分以
上であった。
・ 魚取りをやったことのない小学生が6~7
割以上であった。
・ ゲームしかしていないような子供が、水路
に入って生きもの調査をするこで、生きも
のが大好きになり、自然に対する意識が芽
生えること。子供の意識が変わることがわ
かった。
(生きものの生態や環境)
・ 生物多様性の必要性がわかっていない。なぜ生きものを守るのか理由がわかってい
ない。(外来種が存在するなか、本当に守るべきものは何か?)
・ U 字溝の構造的な問題で、魚類が激減する。しかし、U字溝でも10年ぐらい経つ
と魚が戻ってくることがわかった。
(その他)
・ 子供より大人のほうが関心があったこと。
・ 田んぼまわりの魚は農薬漬けで食べられないと思っている人が多いこと。
2.生きもの調査の結果は、どう利用できるか
(農業と環境のつながり)
・ 農業と環境を知ってもらえる。
・ 生きものを守るためには、稲作りが必要であるという啓発につなげる。(稲作りが
生きものを育んでいることを伝えられる。)
・ 無農薬とまではいかないが、農薬を減らす必要性(減減農業)
・ 生きものを守るために農業は欠かせないことを知ってもらえる。
・ スナヤツメなどがいる水路の水はきれいであることを伝えられた。
・ タガメが棲めるような田んぼのお米は、おいしいと伝えられた。
・ 人も生きものであること。→生態系と自分の係わりを知ってもらう。
・ 40年前の生きものと今の生きものの違いが何かを説明できた。
・ ふゆみずたんぼ・なつみずたんぼの必要性を伝えられた。
(データを活用することで)
・ 生きものマップから、採取する場所(田んぼ、水路、土手)によって生きものに違
いがあることを伝えられた。
・ 現在の環境状態を知り、今後、向上させる楽しみを伝えられた。
・ データベース、生きものマップの精度向上が必要である。
・ データを活用することで、生きものを増やすための工夫・方法につなげる。
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3.生きもの調査ではどんな工夫をしたか、今後どんな改善が必要か
(工夫)
・ 「気持ち悪い」という言葉を禁止した。
・ レッドデータブックから意識をはずした(希少かどうかではなくそこにいる生きも
のが大切である)。
・ 40 年前と現在の生きものの違いを説明した。
・ 小学校低学年には対しては、生きものに触れたり、捕まえたりする楽しさを伝えた。
(改善)
・ 生きもの調査では、小学校高学年の参加者がすくないことが残念である。
・ 低学年以下の参加だけではもったいない(説明して理解できるのは高学年以上)
・ 生きものマップの充実
・ 将来、エコツーリズムにつなげていく。
・ 生きもの大好き人間を養成していきたい。
C班
1.生きもの調査から、どんなことが分かったか
(生きもの生態や環境)
・ 農家の人は生きもののことをよく知っていた。
・ 地域の変化が気になった。
・ 水田が畑になったり、宅地が建ったりと、今まで
気にしていなかったことに目を向けることができ
た。
・ 今までいなかった生きものがいた。生きものの分
布変遷・実態がわかった。タニシ・カワニナが復
活した。外来種が増えてきた。生きものが減少し
たなどの地域の生きものの層が把握できるようになった。
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(子どもと生きものの関係)
・ 子供は生きものを追いかけるのが好き。
・ 子供たちが生きものに興味を持ち始めた。
・ 大人は子供に生きものについて教えるのが好き。
・ 子どもたちが野生児にもどるチャンス。
2.生きもの調査の結果は、どう利用できるか
(農業と環境のつながり)
・ 今後の農業のあり方について考えるきっかけに
なる(農薬の使用による影響等)
・ 農家に農薬使用の影響を考えてもらう材料にな
る。
・ 生きもの調査をきっかけに、農家同士も自分た
ちの環境について話し合う機会が増えた。
・ 農薬や環境の変化による生物種や数の増減がわ
かる。
・ 生きものが生息する農地について学ぶきっかけ
になる。
・ どうして生きものが減ってきたか考え、今後ど
うしていくか考えるきっかけとなる。
・ 水路や畦畔の共同管理の必要性の理解につながっている。
・ 非農家の方が農業に目を向けるきっかけになり、地域の農業を元気にする。
・ エコアップ活動推進など環境改善の意識へつながっている。
(世代間、地域交流)
・ 親子の交流につながっている。
・ 地域の世代間交流に役だっている。
3.生きもの調査ではどんな工夫をしたか、今後どんな改善が必要か
(工夫)
・ 展示の仕方など、生きものの見せ方を工夫した。
・ マップづくりに工夫した。
・ 農業と生きものとの関係について説明した。
・ 図鑑を作って小学校に配布した。
(改善)
・ アドバイザーのレベルアップのため、アドバイザー同士の情報交換会が必要である。
・ 農地・水で生きもの調査が始まったとき、生きもの調査を行う意義をアドバイザー
に対して説明して欲しかった。
・ アドバイザー研修、現地見学会等の開催があればよかった。
・ 小学校との連携→事前に小学校の先生と役員、アドバイザーと話し合いをすること
で、学校側の理解促進につながる。(話合いを行わないと、学校側がアドバイザ
ー・組織に任せっきりになってしまう。)
・ 直接生きものを触らせる。また、新しい発見ができるようにする。
・ 外部からではなく、地域アドバイザーの育成が必要である。
・ 地域の人々が、生きもの調査の結果をまとめるのが望ましい。
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・ 大人は、自分が持っている知識をひけらかしすぎる。子供たちに自分で調べさせる
ことが重要である。
D班
1.生きもの調査から、どんなことが分かったか
(生きものの生態や環境)
・ 地域の人はなぜ生きものが減ったのかわか
っている。
・ 農家自身が一番生きものが減少した理由を
よく知っている。
・ 生きものの隠れ場などの環境を整備をする
ことで生きものが戻ってきたことがわかっ
た。
・ 生きものが増えたが、元々いた生きものではなく、新しい生きものが多い。
・ 小山市の事例になるが、関東以西に生息していたヌマガエルが爆発的に増えている。
(特に在来のカエルが棲みにくい場所に生息している。)
・ 外来種をどう認識して、どのように付き合っていくかが大切。
・ 外来種の駆除だけではなく在来種が棲める環境づくりをしていく。
・ 農薬の多い、少ないで生物量が違うことがわかる。
・ 水が有るか無いかで、生物層が異なることがわかる。
(子どもと生きものの関係)
・ 子供たちの目の色が違う、興味を持って参加している。
・ 子供が楽しんで参加している。
・ 大人は地域の環境への眼差しの復活、子供は眼差しが生まれた。
・ 同定時の子どもたちの相談・話合いが大切であると感じた。
・ 生きもの調査を継続していくと、子供たちが多くの魚の名前をわかるようになって
きた。
2.生きもの調査の結果は、どう利用できるか
(データの活用)
・ データ整理が大切。結果を「見える化」し、次に活
用していく。
・ マップ作成を必ず行う。生きものがいる場所、いな
い場所を把握する。
・ 毎年、同じ場所で調査を行うことで、経年変化を確
認する。
・ 調査結果をまとめて農業委員会、土地改良区に報告
書を提出し情報を共有する。
・ 教育関係機関にも情報提供できるとより一層良い。
・ 生物暦を農業暦へ組み入れる。
(交流)
・ 地域の交流につながる。
・ 親と子の会話が弾んでいる。
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3.生きもの調査ではどんな工夫をしたか、今後どんな改善が必要か
(工夫)
・ 生きものの命をどう守るか、どう育むか、昔いた生きものをどう再生するかが大切。
・ アドバイザーだけではなく地域の人とディスカッションして進めていく。
・ 環境配慮活動を行っている組織を参考にする。
・ 生きものと付き合うルール、田んぼや水辺遊びのルールを伝えている。
・ おじいちゃんは物知りなので、いろいろと話していただく。
・ 大人の声掛けがポイント(子どもに恐怖心をなくさせるなど)
(抱負・エコ農業とちぎへ)
・ 地域の年中行事として生きもの調査を行う。マンネリなんて言わせない。
・ 組織の役員は、毎年同じ生きもの調査をしているので、マンネリ化しているかもし
れないが、子どもたちは毎年楽しみにしている。
・ 地域の農業が地域の環境を育んでいると理解できる→生きもの調査の意義を伝えて
いく
・ 除草剤の抑制・機械除草の拡大等、普及啓発活動の強化
(PR)
・ 広報誌やマスメディアでPR。
・ 地域の生きものの生息環境を向上するために、啓発普及の強化を図っていく。
意見要望について
質疑 発表者:NPO法人オリザネット S氏
・ 現場での外来種(侵略的外来種)の扱いについて
・ 現場では、ウシガエル、アメリカザリガニ、ブルーギルが出てくるが、そのような
外来種をどう扱うか?
・ 子供たちの目の前で駆除するのは心苦しい。そのため、アドバイザーの皆様はどの
ような対処されているのか教えて欲しい。
A1.
・ 現在、中山間地域で生きもの調査をすると8割、9割の魚がカワムツである。
・ 在来種であったウグイが見られなくなっている。
・ カワムツについて、子供たちに説明したあと、そのカワムツを川に戻せるのか?そ
れとも、子供たちの目の前で、穴を掘って殺すことができるのか?その両方ができ
ない。
・ 私の場合は、何人かの役員に持ち帰って食べてくださいとお願いしている。(役員
が本当に食べているかどうかはわからない。)
・ 子供たちには役員のおじいちゃんたちが、家で食べるのだと説明している。
・ 臨機応変に駆除していかなければならないと考えている。
A2.
・ 「持ち帰って食べる」ということを伝えている。「命をいただく」ということを伝
えていきたいと考えている。
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要望 自然ふれあい指導者、生物多様アドバイザー U氏
・ 生きものマップコンテストの有無を早めに通知していただきたい。(昨年度、コン
テストが無いことがわからなかった。)
・ マップ作成をどういう観点で取り組めばいいのか、手引き等があれば教えてほしい。
A.協議会
・ 昨年26年より多面的機能支払交付金制度となり、生きもの調査が必須項目から選
択項目となった。
・ そのことにより、どれくらいの組織が生きもの調査を活動計画に盛り込むのかわか
るのが、夏以降になってしまった。そのため、コンテストを開催することができな
かった。
・ 審査ポイントについては、コンテスト実施要領を参考に作成していただきたい。
要望 メダカ里親の会 N氏
・ 以前と比べ生きもの調査関係の研修会が少なくなった気がするので、研修を増やし
て欲しい。
・ 組織の構成員に、生きもの調査がなぜ必要性やエコアップの方法をPRできるのは
アドバイザーである。是非ともアドバイザーの研修会を土日に開催してほしい。
意見 下野市自然に親しむ会 S氏
・ アメリカザリガニを食べることで外来種駆除の啓発活動につなげようとの意見があ
ったが、アメリカザリガニを食べることはとても危険なことである。
・ アメリカザリガニの体内にはクリプトスポリジウムという寄生虫がいて、ヒ
トに感染する。
・ サワガニやザリガニを唐揚げにしたとき、中までよく火が通っていないこ
とがあるので、絶対にやめていただきたい。
・ 食べる場合は、30分くらい茹でるなどして、中まで熱を通す必要がある。
意見
・ 県協議会や市町が実施している活動組織説明会等に、組織の役員だけでは
なく、アドバイザーを呼んだらどうか?
・ アドバイザーは、組織の方から生きもの調査報告書作成などをお願いされ
る。その報告書の書き方などについて知りたいことがある。
・ 県の方から市町を通じて、活動組織の役員に「アドバイザーの説明会参加
を促している」と伝えていただきたい。
A.協議会
・ 今後、「特定外来生物」「アドバイザー研修」「研修会の土日開催」につ
いて考えていく。
講評 水谷先生
・ 外来生物については生態学・生物学の立場ではなく、私どもの多面的機能
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支払活動の視点として、どう取り組んでいくか考えていく必要があるかと
思う。
以上
生きものアドバイザーのみなさま
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県協議会 穐野専務挨拶
栃木県農村振興課 明瀬主幹挨拶
ワークショップの様子(A班)
ワークショップの様子(B班)
ワークショップの様子(C班)
ワークショップの様子(D班)
ワークショップの様子
記念写真
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生きもの調査は、参加者・活動組織にどのように受けとめられたか
(アンケート調査結果などから)
全体の概要(H22年度)
参加者:22,561人(うち子ども8,517人、38%)、アドバイザー259組織
調査場所:水路41%、田25%、土手25%
他機関との連携:学校35組織、PTA・子供会169組織
生きものマップづくり:114組織
生態系保全活動:機会除草の拡大81組織、生きものだまり33組織
H21年度のアンケート調査(対象375組織)
田んぼまわりの環境への関心:全員が関心2%→38%
地域の変化:子どもが生きものを意識90%、世代間交流62%
生きもの調査を契機とした環境保全の取組::除草剤使用の抑制
43%、生きもの図鑑・マップの作成37%、減農薬・無農薬農業27%
生きもの調査の評価:やって良かった89%、大変だった52%、また
やりたい63%
<引用文献> 水谷・南斎・小堀(2012):非農家や子どもたちが参加する生きもの調査の取組と成果, 水土の知80, 11-14.