腹部超音波検査で描出可能であった悪性中皮腫の1例

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腹部超音波検査で描出可能であった悪性中皮腫の1例
◎杉山 健一 1)、加藤 利佳 1)、下平 弘樹 1)、秋城 京子 1)
社会医療法人 栗山会 飯田病院 1)
【はじめに】
病変認めた。また両肺に多発結節認めた。(転移疑い)
悪性中皮腫とは胸膜、腹膜の表面を覆っている中皮細胞が
腹水(+)、縦隔にリンパ節腫大(-)、肝内に SOL(-)
がん化した稀な腫瘍であり、発症の約 80%にアスベストが
3.病理所見(針生検)
関与している。ほとんどが胸膜に発生するため超音波検査
組織所見 炎症細胞が見られる中に、多稜形の細胞質に核不
で見つかることは少ない。我々は腹部超音波検査時に描出
整の見られる異型細胞が少数見られた。
することができた悪性中皮腫を経験したので報告する。
免疫染色 CK7;(+)、CK20;(-)、CAM5.2;(+)
【症例】
カルレチニン;(+)、WT-1;(+)
82 歳男性 発熱、咳、上腹部不快感で近医を受診し当院紹介
免疫染色の結果から悪性中皮腫、上皮型が考えられ最終診
【来院時現症及び検査所見】
断は悪性胸膜中皮腫の腹腔内進展及び多発肺転移。
体温 36.7℃ 両肺野に胸部ラ音(+)
【考察・まとめ】
会話中、喘鳴あるも呼吸困難感など自覚症状無し。
腹部超音波検査では腹膜由来の腫瘤である事は示唆できた
1.超音波所見
が、胸腔内の詳細な観察は行われず胸腔内へ続く腫瘤を描
肝臓右葉と腹膜の間に径 25×65㎜程の充実性腫瘤を認めた。
出することができなかった。アスベストの輸入ピーク期間
腫瘤は腹膜に接していて肝臓実質を圧迫。内部 echo は不均
と発症平均潜伏時 40 年から推測すると 2010 年以降今後、
一で明らかな血流はない。周囲には腹水と思われる少量の
患者数の増加が予想される。約 80%が胸膜に発生するため、
液体が貯留していた。腹膜由来の腫瘤が疑われた。
咳、発熱、特に胸水貯留の所見を認めた場合は胸膜の肥厚
2.胸腹部造影 CT 所見
等、胸腔内の観察をすることが重要であると思われた。
右胸膜沿いに長径 85㎜大の腫瘤及び肝表の腹膜に結節性
0265-22-5150