佐渡の観光振興とスポーツツーリズム (現代文化学部准教授 天野宏司) 15 時から、 「佐渡の観光振興とスポーツツーリズム」と題する講演が行われた。この講演は,本学の教 養文化研究所と,現代文化学部の共催であったため,学生諸君だけでなく,地域の方々も来聴されてい た。 坂下善英 氏 坂下氏は,長く佐渡観光協会にお勤めになり,佐渡の観光振興に尽力された方である。氏は,佐渡の 観光業界が抱えていた問題点として,冬場に日本海地域特有の荒天により,旅行需要が限り無くゼロに 近づき,結果として観光業自体が夏場だけの季節産業になりがちであること。離島であるがゆえに情報 発信力に乏しく,エージェントに頼った PR や集客に過度に依存してきたこと,時間距離・運賃距離が相 対的に高く集客困難である上に,リピータ率が低いことなどを挙げていた。 ご講演の前半部分は,これらの問題点を解決するために,JR とタイアップした「佐渡冬紀行」の販売 による冬の佐渡観光を商品化した事例や,地元の方々自身による「ふれあいガイド」の実施による情報 発信などの具体例を示されながら,旅客誘致をはかってきた半生を振り返られていた。後半部分では, 観光協会をご退職後に就任した,佐渡国際トライアスロン事務局長として, 「スポーツツーリズム」とい う,新しい観光形態について,DVD・パワーポイントを用いて紹介された。 「佐渡国際トライアスロン」 は,今年で 22 回目を迎え,1,500 名を超える参加者が来島する日本で最大規模のトライアスロン競技で ある。同事務局では,これに加え, 「佐渡ロングライド 210」 ・ 「佐渡ヒルクライム」 「佐渡トキマラソン」 など,次々とスポーツイベントを企画・運営し,その経済効果は合計で 10 億円程度になることを概算と して示されていた。 熱心に聞き入る聴衆 一方で,これらのイベントを実現するにあたり,いかにして地域の理解と協力を取り付けるか,その 困難さを実体験に基づき語られ,その上で, 「来訪者に対するもてなしを尽くすことが,観光振興の切り 札にして唯一の術である」と力説され講演が締めくくられた。 佐渡は,2011 年度に開講される「国内観光研修(4単位)」の研修先ということもあり,学生諸君は熱 心に聞き入っていたようである。 末尾ながら,遠路お越しいただいた坂下氏にお礼申し上げる。
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