平成 27 年 6 月 子育て情報 6月号 椙山女学園大学附属幼稚園 “返事べっぴん”になりたいな 園長 横尾 尚子 「 “おはよう”で元気!」というタイトルで、正門や西門での朝のお迎え風景を 昨年の 6 月号に、 書かせていただきました。 「園長せんせ~い!」「おはよう!」「おはようございます!」のたくさん の声に、子ども達や保護者のみなさんの晴れやかな笑顔に、今年も元気をもらっています。しかも、 昨年より更に“あいさつ”が上手になったように思います。気持ちの良い朝を、ありがとうござい ます。“あいさつ”は,社会生活を円滑に営むためのマナーの一つであり、潤滑油とも言えます。気 持ちの良いあいさつは、他者との人間関係を滑らかにつむぎ出すとともに、自分自身のやる気や活 力さえも引き出してくれることがあります。この元気の源である“あいさつ”を、どうか大きくな っても続けてくださいね。 “あいさつ”が潤滑油だとすれば、 “返事”はスパイスかもしれませんね。小気味良い「はいっ!」 の返事は、その場の雰囲気をパッと明るく引き締めてくれます。その人の存在を瞬時に際立たせて くれます。まさにひとふりのスパイスが、料理の味を格段に引き上げてくれるように。 小学校の国語の教科書に、 『パン屋のしろちゃん』というお話が載っていました。女優の沢村貞子 さんが、東京の下町で育った頃の日常を、抒情豊かに綴った著書からの抜粋だったと記憶していま す(小学生時代の記憶なので、間違っていたら、ごめんなさい)。パン屋がまだ珍しい時代のお話だっ たようで、せっかく焼いたパンがちっとも売れなかったことと、パン屋の娘のしろちゃんが「返事 べっぴんだね」と褒められる場面が、今も心に残っています。そしてあの頃、私も「返事べっぴん」 を秘かに目指していたことを思い出します。昨今、病院などで名前を呼ばれても、返事をしない人 をよく見かけます。寂しい光景ですね。子どもには元気な返事を求めながら、大人は黙って動くだ け。よいモデルとは言えませんね。 “返事”だけでなく、 “あいさつ” “笑顔”、“姿勢”や“しぐさ” 、 更には“優しさ” “思いやり”、さまざまな「べっぴん」さんが街にあふれたら、もっと住みよい、 子育てが楽しい街になることでしょう。 小学校の国語の教科書つながりで、もう一つ。 「夏みかん」という作品を低学年で学習しました。 (妊娠中ですっぱいものを食べたい)お母さんのために、きょうだいで夏みかんを買いに行くお話だっ たと思います。その道中での言葉遊びだったでしょうか。 「いいこと ことこと こんぺいとう」「な かわったら うどんのこ」のフレーズを二人が交互に言い合うのです。フレーズのリズム感と掛け合 いの面白しさが気に入って、早速、私も弟との合言葉にしました。しばらくの間、「いいこと こと こと こんぺいとう」と突然私が言い出すと、何をおいても「なかわったら うどんのこ」と応じな ければならなかった弟には、もしかしたら迷惑な遊びだったかもしれません。でも、私にとっては、 幼かった弟との貴重な思い出のひとこまです。 「さようなら」。子ども達が帰っていきます。 「園長せんせ~い!」 「は~い! また明日、いっぱ い遊ぼうね」。初夏の日差しはまだとても高くて、お家に帰るまでに、まだひと遊びできそうです。 ゆるやかに流れる親子の時間を見送りながら、私はまた、秘かに「返事べっぴん」 「あいさつべっぴ ん」を目指そうと、心に誓うのでした。
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