XMCD を用いた FeNi 交互積層膜の層分解磁気異方性解析 酒巻 真粧子 高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所 Layer-resolved magnetic anisotropy analysis of alternately layered FeNi films by means of XMCD Masako Sakamaki High Energy Accelerator Research Organization, Institute of Materials Structure Science (KEK, IMSS) L1 0 型 FeNi 規則合金は垂直磁化膜の候補として期待されている。本研究では Fe や Ni と整 合性の高い Cu(001)単結晶基板を用い、磁気異方性と構造の in situ 観察を行った。 これまでに、Fe と Ni を交互に積層しながら XMCD スペクトルを得ることで、Fe と Ni 各層の磁気 異方性エネルギーを見積もった。深さ分解 XMCD 法[1]を適用した解析の結果、表面の Fe は Ni に覆われることで垂直磁気異方性が弱まることがわかってきた[2]。しかしながら、この解析は積層 に伴 う構 造 変 化 は考 慮 されておらず、応 用 上 重 要 な繰 り返 し数 の多 い多 層 膜 に対 して信 頼 性 に 欠 ける。そこで RHEED 解 析 もあわせて磁 気 異 方 性 と構 造 の関 係 について調 べた。その結 果 、 FeNi 交互積層膜において垂直磁気異方性を実現するためには、Fe 層の磁気異方性を歪みによ って制御することが有効であることが明らかになってきた[3]。しかし FeNi 層の歪みを制御する下地 層として Ni を用いてきたため、XMCD 以外の手法で磁気異方性を調べようとすると、下地層自身 の影響が含まれてしまう。そこで純粋な歪みの効果を調べるため、下地層として非磁性の NiCu 層 を用いることで FeNi 層に与える歪みを制御し、それが Fe 層と Ni 層の磁気異方性に与える影響に ついて調べた。 実験は KEK Photon Factory BL-7A および 16A において試料作製と測定を同じ超高真空チ ェンバー内で行った。Fe、Cu および Ni は電子衝撃加熱法によって蒸着した。NiCu 層は Ni と Cu の同時蒸着により作製した。Cu(001)基板上に NiCu(124 ML)と wedge 状の Cu(0-88 ML)を順々 に作製し、その上に Fe と Ni を交互に積層した(図 1)。NiCu 上の Cu は膜厚の増加に応じて面内 格子定数が広がることが知られている。従って異なる Cu の厚さにおいて FeNi 層の構造と磁気異 方性を調べることで、同じ試料においてそれらの関係を知ることが出来る。 当日はこれまでの実験結果を概観した後、最近得られたデータを使って Fe 層と Ni 層の磁気異 方性と面内格子歪みの関係について議論したい。 参考文献 [1] K. Amemiya et al., Appl. Phys. Lett., 84, 936 (2004). [2] M. Sakamaki and K. Amemiya, Appl. Phys. Express, 4, 073002 (2011). [3] M. Sakamaki and K. Amemiya, Phys. Rev. B, 87, 014428 (2013). Ni (1ML) Fe (1ML) n ML Cu spacer layer NiCu buffer layer Cu(001) substrate 図 1: 試料の構成 0-88 ML 124 ML
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