九州支部合同熊本大会 2014年11月

日本農業気象学会・日本生物環境工学会九州支部合同熊本大会 2014.11 月
イ チ ゴ 高 設 栽 培 に お け る CO 2 局 所 施 用 の 効 果 に つ い て
佐伯由美1・藤原慶太2・柴戸靖志1(1福岡県農林業総合試験場
豊前分場
2(株)テヌート)
Effect of CO 2 local application for strawberry in the high bench culture.
SAIKI Y.、 K. Fujiwara、 Y. Shibato.
[目
的]
近年、施設栽培の果菜類において、増収技術の一つで
あ る 炭 酸 ガ ス ( CO 2 ) の 新 し い 施 用 方 法 と し て 、 局 所 施
用 が 注 目 さ れ て い る 。 CO 2 局 所 施 用 は ピ ン ポ イ ン ト の 施
用 が 可 能 で あ る た め 、従 来 の ハ ウ ス 内 へ の 充 満 施 用 よ り 、
少 量 で 効 率 的 に CO 2 を 供 給 で き る メ リ ッ ト が あ る 。ま た 、
多 孔 質 チューブ
換気の有無に関わらず効率的に施用でき、ハウス内の
CO 2 が 低 下 し や す い 日 中 に も 施 用 で き る と 考 え ら れ て い
図1
局所施用の模式
る 。こ の よ う に 有 用 な 局 所 施 用 だ が 、実 際 の ハ ウ ス 内 CO 2
濃 度 推 移 や イ チ ゴ の 栽 培 期 間 を 通 し て 効 果 を 調 査 し た 事 例 は 少 な い 。 そ こ で 、 CO 2 局
所 施 用 を 実 施 し た‘ あ ま お う( 福 岡 S6 号 )’ に お い て 、ハ ウ ス 内 CO 2 濃 度 の 推 移 、 生
育や収量性に対する効果を明らかとしたので報告する。
[材料および方法]
高設栽培方式のイチゴ‘あまおう(福岡
S6 号 )’ を 、 株 冷 処 理 に よ る 早 期 作 型 ( 定
植 H25 年 9 月 17 日 ) で 栽 培 し た 。 液 化 炭
酸 ガ ス を 2013 年 11 月 20 日 ~ 2014 年 3 月
12 日 の 6 時 ~ 16 時 ま で 、畝 面 の 条 間 に 設 置
し た 多 孔 質 チ ュ ー ブ で 供 給 し( 図 1 )、畝 面
よ り 10cm 上 に 設 置 し た セ ン サ ー で
1000ppm と な る よ う に ( 株 ) テ ヌ ー ト 社 製
機器で流量を調節した。
株 の 生 育 は 、草 高 、新 生 第 3 葉 の 葉 柄 長 、
葉 身 長 、葉 幅 を 11 月 ~ 4 月 ま で 毎 月 1 回 測
定し、各花房の第1番花の開花日、収穫日
を 併 せ て 調 査 し た 。果 実 は 11 月 か ら 5 月 末
ま で 、 週 2~ 3 回 収 穫 し 、 奇 形 果 を 除 い た
6g 以 上 を 商 品 果 と し 、 g 重 量 、 個 数 お よ び
Brix 値 を 調 査 し た 。 試 験 規 模 は 10 株 3 反
復とした。
図2
ハウス開放時および閉鎖時における
高 さ 別 CO 2 濃 度 推 移
(上:サイド開放
下:サイド閉鎖)
1) 畝 面 (0cm)か ら 2L/分 で 20 分 間 施 用
2) 植 物 体 な し 。
3) 上 : 2014 年 6 月 12 日
下 : 2014 年 6 月 13 日
日本農業気象学会・日本生物環境工学会九州支部合同熊本大会 2014.11 月
[結果および考察]
1 . ハ ウ ス 内 CO 2 濃 度 の 推 移
ハ ウ ス 内 で の CO 2 濃 度 の 推 移 を 明 ら か と
す る た め 、T&D 社 製 RTR-576 で 1 分 毎 に 調
査した。
植 物 体 が な い 状 態 で 、畝 面 か ら CO 2 を 供
給 し 、そ の 垂 直 方 向 の 濃 度 推 移 を 調 査 し た 。
ハ ウ ス 開 放 条 件 で は 、 畝 か ら 10cm の 位 置
図3
で一部濃度上昇が確認されるものの、ほと
ん ど 全 て が 拡 散 し 、400ppm 程 度( 大 気 条 件 )
と な っ た ( 図 2 上 )。 ハ ウ ス 閉 鎖 条 件 で は 、
施 用 に よ り 濃 度 は 上 昇 し 、400ppm 以 上 を 維
ハウス開放時のイチゴ群落内
高 さ 別 CO 2 濃 度 推 移
1)畝 面 (0cm)か ら 2 L/分 で 20 分 間 施 用
2)草 高 約 33cm
3) 2014 年 6 月 3 日
持 し 、ガ ス の 供 給 源 に 近 い 高 さ 10cm、25cm
が 35cm、 45cm よ り も 高 濃 度 で 推 移 し た ( 図 2 下 )。
一 方 、ハ ウ ス 開 放 時 の 栽 培 条 件 下 に お け る CO 2 濃 度 の 推 移 を 調 査 し た 結 果 、植 物 群
落 内 部 ( 10cm、 25cm) の CO 2 濃 度 は 高 さ に 関 わ ら ず 同 程 度 で あ り 、 群 落 外 部 (35cm、
45cm)で は 内 部 に 比 べ 低 く 推 移 し た が 、 400ppm 以 上 を 維 持 し た ( 図 3 )。 ま た 、 垂 直
方向と同様に水平方向の濃度推移を調査した結果、横方向に比べ下方向の濃度は低く
推 移 し た ( デ ー タ 略 )。
こ れ ら の 結 果 か ら 、畝 面 か ら CO 2 を 供 給 す る と 、ハ ウ ス サ イ ド 開 放 時 で も 植 物 体 が
遮 へ い 物 と な り 、 ハ ウ ス 閉 鎖 条 件 と 同 様 に CO 2 を 維 持 で き る こ と が 示 唆 さ れ た 。
2.局所施用の効果
株の生育は、調査した 4 項目
全てにおいて施用区が大きくな
る 傾 向 が あ っ た( デ ー タ 略 )。開
花および収穫日は、頂花房~第
二次腋花房の全てにおいて、施
用区が早まる傾向があり、特に
厳寒期である第一次腋花房では
開花日で 5 日、収穫日で 9 日早
ま っ た( デ ー タ 略 )。収 量 は 、厳
寒期の2月、年内から 2 月およ
び 3 月までの積算収量が増加して多
収 と な っ た ( 図 3 )。
以上の結果から、イチゴの高設栽
培 で は 畝 面 か ら の CO 2 局 所 施 用 に よ
り 群 落 内 部 の CO 2 濃 度 は 高 ま り 、増
収効果のあることが明らかとなった。
図3
CO 2 局 所 施 用 が 収 量 に 及 ぼ す 影 響
( 2013-2014 年 )
1) t 検 定 に よ り 、 * * 、 * お よ び † は 、 そ れ ぞ
れ 1%、、5%お よ び 10% 水 準 で 有 意 差 あ り 、n.s.
は有意差なし。