資料 - 広島大学理学研究科 高エネルギー宇宙・可視赤外線天文研究室

Probing the Structure of Ultra-fast Outflows in
Active Galactic Nuclei with X-ray Spectroscopy!
!
X線分光を用いた活動銀河核における!
超高速噴出流の構造の研究
萩野浩一!
東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻!
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所!
高橋研究室!
!
2015.03.09 第14回高宇連研究会「今後10年の宇宙観測」@広島大学
活動銀河核
•
活動銀河核(Active Galactic Nuclei; AGN)!
ジェットや電磁放射などの強烈な活動を示す銀河の中心領域
AGNの構造の概略図
狭輝線領域
光電離
(Narrow Line
ガス
Region; NLR)
広輝線領域
(Broad Line
Region; BLR)
ジェット
•
AGNのエネルギー源!
銀河中心の超大質量ブラックホール
(106−1010太陽質量(M⦿))への降着円盤によ
る重力エネルギー解放!
降着物質の静止質量エネルギーの
ブラック
ホール
降着円盤
UV, X線放射
トーラス
(中性ガス or ダスト)
©Urry & Padovani
~10−50%もの重力エネルギーを解放!
→宇宙で最も効率的なエネルギー変換機構
•
ジェットや放射によって莫大なエネルギー
を周辺環境へ供給!
→銀河や銀河団の進化に影響!
“銀河とブラックホールの共進化”
➡ AGNは宇宙の構造進化やエネルギー解放機構を探る上で重要な天体
2 / 28
超高速アウトフロー
•
ジェットを持たない(電波で暗い)AGNの一部で、光速の数10%もの速度で
blue-shiftした吸収線が発見(Chartas+ 2002; Reeves+ 2003; Pounds+ 2003a,b)!
•
放射源(ブラックホール)から観測者に向かって超高速で動いている吸収体の存
在を示唆 超高速アウトフロー(Ultra-fast outflow)!
•
ジェットや放射とは異なる重力エネルギー解放過程
超高速アウトフローのスペクトル
2×10−3
v~0.3c
8 keVのエネルギー帯域は現在の検
10−3
FeXXV Lyα
@6.7 keV
出器では観測しづらいため、明らか
な検出はわずか数天体
FeXXVI Heα
@7.0 keV
5×10−4
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
PDS 456
Hagino+ 2015
4
6
8
Energy (keV)
10
3 / 28
超高速アウトフローの描像
現在までの研究により、超高速アウトフローについて以下のことがわかっている
•
電離状態!
•
主にFeXXV, XXVIの吸収線で観測される→鉄より軽い元素は完全電離した状態!
場所!
-
吸収線の電離度・柱密度や時間変動から、 104Rg(トーラスやBLRより内
側)(e.g., Chartas+2002; Tombesi+2012) ※重力半径Rg=GMBH/c2!
-
速度 0.3cで脱出できる半径→ 20Rg(>降着円盤内縁~6Rg)!
➡ 降着円盤風(降着円盤からのガス流)である可能性大!
•
放出エネルギー!
-
v~0.3c, NH~1023 cm-2, r~100Rg, MBH=109M⦿, Ω/4π~0.15とすると、
Ṁwindv2/2 ΩmpNHrv3/2 1046 erg/s!
➡ ジェットに匹敵するエネルギー (電波ローブ観測から~10
Cavagnolo+ 2010)
4 / 28
42−46
erg/s,
超高速アウトフローの加速メカニズム
•
•
加速メカニズムは不明だが、UV-line drivingが超高速アウトフローの有力候補!
“UV-line driving”:電離ガスが、束縛-束縛遷移によってUV光子を吸収するこ
とで光子の運動量(放射圧)を受け取り加速!
•
束縛-束縛遷移の断面積はトムソン散乱断面積の103−104倍にもなるので、効率
よく加速できる!
•
“UV-line driving”にもとづいた理論研究が盛んに行われている(Proga+ 2000; Risaliti+
2010; Nomura+ 2013)
電離ガス
•
AGNでは、降着円盤の最内縁付近で
UVを放射し、ブラックホールごく近
遠心力
傍からX線が放射される!
•
X線放射
UV放射
UV-line drivingに基づいて運動方程式
を解くと左のような形状になる
降着円盤
(Risaliti+ 2010; Nomura+ 2013)
ブラックホール
•
吸収線構造を使ってアウトフローの物理状態を調べることができる
5 / 28
吸収線スペクトルの多様性
•
超高速アウトフローは、天体によって異なる、また同じ天体でも時期によっ
て異なる多様な吸収線スペクトルを示す!
•
ほとんどの超高速アウトフローで、吸収線スペクトルが時間変動(最短で数日
5×10−4
10−3
PDS 456の2007年、2013年に観測されたスペクトル
blue-shift:0.30c→0.22c!
2×10−4
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
2×10−3
スケール)(Chartas+ 2009; Behar+ 2010; Reeves+ 2014)
吸収線幅:30 eV→150 eV!
10−4
FeXXV, FeXXVIの吸収線
•
6
7
8
等価幅(~吸収線の面積):200 eV→400 eV
9
Energy (keV)
10
11
何が吸収線スペクトルの違いを作り出しているのか?
6 / 28
X線観測研究の現状
•
現在のX線観測によるアウトフロー研究では、輝線と吸収線を別々のモデル
コンポーネントとして足し合わせてスペクトルフィットするという方法が主
流となっている
498
REEVES ET AL.
10−3 1.5×10−3 2×10−3
5×10−4
Flux (keV cm−2 s−1)
実際の超高速アウトフローのモデルフィッティング結果の例
1.5×10−3 2×10−3
➡
PDS 456
吸収線モデル!
(1次元放射輸送計算)
輝線のモデル
Reeves+ 2009
(Gaussian)
4.2. Ph
We furt
xstar (v2
K-shell tre
輝線と吸収線のモデルで得られた物理量がself-consistentかどうかは自明で
(b) vout=0.26c, 0.31c
(Grevesse
はないため、アウトフローの物理量を正確に評価することは簡単ではない!
from 1 to
turbulence
吸収線と輝線をself-consistentに評価できる新しいモデルが不可欠
Fe K abso
7 / 28
( ∼ 100 eV
keV cm−2 s−1)
•
(a) vout=0.30c, vturb=10000 km s−1
from this
very weak
undetectab
local (z =
absorption
PDS 456,
outflowing
4
6
8
Observed Energy (keV)
10
本研究の目的
目的!
•
超高速アウトフローの示す多様なスペクトルを統一的に説明
する物理的描像を得る!
•
得られた描像はUV-line drivingで説明できるか検証
方法!
•
UV-line drivingによる降着円盤風で予想される3次元形状と速
度・密度分布の仮定のもとでスペクトルをself-consistentに
計算できるシミュレーションコードを新たに開発し、スペク
トルモデルを構築する!
•
このモデルを超高速アウトフローの観測データに適用し、ス
ペクトルの多様性を作る本質的なパラメータを探る
8 / 28
スペクトルモデル構築の方法 (§4.1)
例) 球対称なアウトフローの場合
•
Owocki (2000)
吸収線に寄与
する物質
放射源
随(P-Cygni profile)!
•
re観測者
vresbO
consistentに計算する必要がある!
+
=
detfihS-eulB
noitprosbA
0=Vエネルギー
∞V
•
ingyC-P
eliforP eniL
cirtemmyS
+v noissimE
-v
v=0
0=V
→モンテカルロ法による放射輸送
xulF
}
}
輝線→red/blue-shift
v=0
現実的な形状、速度・密度分布の
もとで、輝線と吸収線をself-
吸収線→blue-shift!
-v
アウトフローによる吸収線には視
線方向以外の物質からの輝線が付
計算が最適
+v
V
∞
エネルギー
htgnelevaW ; yticoleV
降着円盤風のスペクトルモデル構築の流れ!
1. 流線方向の電離状態の計算によって円盤風内の電離構造(電子温度、イオン
の存在比の空間分布)を決定!
2. 得られた電離構造の中でモンテカルロ法により3次元放射輸送計算
9 / 28
モンテカルロ法による放射輸送計算 (§4.2)
•
光子の輸送と物質との相互作用をモンテカルロ法により計算すること
で、円盤風内での放射輸送を計算!
•
モンテカルロ計算には、我々が様々な天体への適用を通じて開発を進
めているソフトウェア“MONACO”(Odaka+ 2011)を用いる
ime
etni
r
a
c
t
i
o
n
, 1 E(
し吸収or再放出
noiss
t
③相互作用を起こ
tsal eh
yar-X
s
o
u
r
c
e
tini
i
a
l
c
o
①入射光子の生成
noitidn
,
) 0 x , 0t 0
Ω , 0 E(
ウ
超
高
ト 速で
フ
ロ !
ー
, 1Ω
t
,
1
x
)1
ア
②乱数を振って次
の相互作用の種類
と位置を計算
a ot
n
④系から脱出
o
b
s
revre
se(
c
a
p
i
n
し観測者へ
)g
円盤風内
の物質
duolc
超高速アウトフローにおける主要
な物理素過程!
•
•
•
Photoionization!
Photoexcitation!
Compton scattering!
+超高速流による相対論
的効果(ドップラーシフ
Odaka+ (2011)
10 / 28
ト、ドップラーブースト)
円盤風のジオメトリ (§4.3)
•
双円錐(biconical)形状を採用 (激変星における円盤風の研究で初めて用いられた
4
(Knigge+ 1995))
z (Rmin)
円盤風
3
降着円盤
X線源
θmin
2
Source
1
focal 0
point
-1
(Rmin,θmin,Ω)の3パラメータで形状を記述
•
Ω
-2
0
ℓ
R0
Rmin
Rmax
d
Disk
R
1
2
3
4
x (Rmin)
円盤風の占める立体角Ωと角度θminは、Ω/4π=0.15 (45°−56.3°)とする(UVline drivingの流体計算(e.g., Proga+ 2000)の結果を用いた)!
•
•
5
Rminについては後述 (実際のデータに適用する際に決定)!
モンテカルロ、電離構造の計算では、シェル状のボリュームに分割
11 / 28
6
into 100 shells.2010a).
Each shell
an equal
width on
logarithmic
scale.All st
Thishas
geometry
is defined
by athree
parameters.
Radial velocity
is defined
as point,
a function
alongdthe
streamline
converge
at a focal
whichof
is length
at a distance
below
the sourc
"βthat d = Rmin
from Rmin to Rmax on(§4.3)
the disc,!We first assume
Rmin
This means
vr (l)that
= v0the
+ wind
(v∞ −fills
v0 )a cone
1 −between θmin =
. 45◦ and θm
Rmin + l
密度・速度分布
•
angle Ω/4π = 0.15. We define a mean launch radius R0 from the
円盤風ジオメトリ内での密度・速度分布は以下のように指定!
makes
anacceleration
angle of θ0 ≡law,
(θminwhile
+ θmax
R0an
=d
tan θ0rad
. T
β determines the
wind
v0)/2.
andThus,
v∞ are
initial
into
100 shells.
hasequation
an equal is
width
on a(Castor+1975)
logarithmic
l = 0 and radial
velocity
at l Each
= ∞.shell
This
an extension
of the! s
アウトフロー速度:UV-line
drivingの運動方程式から得られる速度分布
RadialThe
velocity
is defined
as a function
of length along
theRst
model (section 2.2.5).
azimuthal
velocity
at the launching
point
0
#
初速度v0は乱流と同じ値(v0=vt)とし、加速指数β=1とする!
!
"β
be the Keplerian velocity vφ0 = GM/R0 .
Rmin
vr (l) = v0 + (v∞ − v0 ) 1 −
.
According to angular momentum conservation, vφ is written
Rminas
+ la func
!
-
-
回転速度:角運動量保存に従う!
β determines the wind accelerationRlaw,
while v0 and v∞ are an
0
vφ (R) = vφ0 .
l = 0 and radial velocity
at l = ∞.RThis equation is an extensio
!
model (section 2.2.5). The azimuthal velocity at the launching
The
turbulent
velocity vt turb
is composed of #
intrinsic
turbulent
v
乱流速度:円盤風内で一定の乱流v
+ 各シェル間のvelocity
shear
(Schurch &velocity
Done
be the Keplerian velocity vφ0 = GM/R0 .
shear (Appendix A4 of Schurch & Done 2007).
2007)!
According to angular momentum conservation, vφ is written
vr (i) vr (i 1)
vtの値はデータに適用する際に決定(後述)!
v
(i)
−
v
(i
− 1)R
r = vt +r total
v
(i)
turb
According
to
mass
conservation,
mass
outflow rat
0
√
vturb (i) = vt +
,
vφ (R)
= vφ0 12
.
12
R
density n is written as
!
The turbulent
velocity
vturb and
is composed
of intrinsic
turbulent v
where index i refers
to the shell
number
vr is a radial
velocity.
密度分布:円盤風内での質量保存に従う
Ω
2
Ṁ
=
1.23m
nv
4πD
wind
p
r
shear (Appendix A4 of Schurch
& Done 2007).
4π
2
= 1.23m
nv−
(cos
r 4πD
vrp(i)
vr (i −
1) θmin −
終端速度v∞, 初速度v0, 加速指数β, 乱流速度vt, v質量放出率Ṁ
√
,
turb (i) = vt + windの5
12
Here, D = R/(vsin
is the
distance from the focal point, 1
パラメータで密度・速度分布を指定
Ṁ0 wind
はフリーパラメータ)
∞, θ
where index i refers to the shell number and vr is a radial veloci
12angle
/ 28 of the wind including both sides of the dis
the solid
電離構造計算 (§4.4)
•
円盤風における電離状態(電子温度、各イオンの存在比)の分布を決定するため、X
線源近傍から外側へ、流線方向の放射輸送と電離状態を逐次的に計算して各シェ
ルでの電離状態を求めた→モンテカルロ計算への入力!
鉄イオンの電離状態はほとんどX線によって決まる→円盤風のガスを電離させる
光子のスペクトル(13.6eV−13.6keV)はX線観測で得られるべき関数を仮定
dN
= N0 E
X線源
dE
直接光
透過光+
内側の
シェル
電離状態
計算
・・・
E
各イオンの存在比、
電子温度
電離状態
計算
E
各イオンの存在比、
電子温度
外側の
シェル
EFE
E
再放出光
EFE
電離状態
計算
EFE
EFE
•
E
・・・
各イオンの存在比、
電子温度
光度L, べき指数Γの2パラメータ
で電離光子のスペクトルを指定
13 / 28
↑これらのパラメータは観測から求まる
速度、密度、電離構造分布
•
超高速アウトフローの典型的なパラメータ(PDS 456に適用する値; 後述)
で、アウトフロー速度、密度、電離状態分布を計算した
←v∞=0.3c
θincl=46°
θincl=58°
に漸近
θincl=70°
X線源
1/r2で減少
θincl=58°
θincl=70°
1×1017 cm
アウトフロー速度は、外側でv∞に漸近!
FeXXVI/FeXXV分布
密度は1/r2で減少!
θincl=46°
電離状態はほぼ一定 (電離パラメータ
電離状態は
ほぼ一定
θincl=58°
ξ=L/nr2=一定だから)
視線方向(θincl)が変わると、円盤風内の見てい
る場所が変わり、見かけ上の物理状態が変化
14 / 28
θincl=70°
FeXXVI/FeXXV
•
•
•
θincl=46°
密度 (cm-3)
外側でv∞
1×1017
cm
密度分布
アウトフロー速度 (km/s)
アウトフロー速度分布
アウトフローを通してみられるX線スペクトル
•
観測者の視線方向の光子イベントからスペ
クトルを作成
高速・低密度
θincl=46 deg
θincl=58 deg
Normalized
flux flux
Normalized
45 47 deg
降着円盤
blue-shiftした吸収線と幅の広い輝線構造が
見られる!
•
θinclが大きくなると、!
-
透過+再放出
1
0.5 透過光
0.4
0.5
0.3
再放出光
0.4
0.2
0.3
0.1
0.05
0.04
0.05
0.04
密度が高くなる→吸収線が深く!
Normalized
fluxflux
Normalized
•
2
1
45 47 deg
θincl=46 deg (Δθ=1 deg)
0.2
0.1
低速・高密度
X線源
2
blue-shiftし
た吸収線
広がった
輝線
6
8
10
12
6
8
10
57 59 deg
14
Energy (keV)
12
14
Energy (keV)
deg)
2 θincl=58 deg (Δθ=1
57 59 deg
2
低エネルギーにシフト
透過+再放出
1
1
0.5
0.4
0.5
0.3
0.4
吸収エッジ
透過光
0.3
0.2
速度が遅い部分も見える→幅広くなる
観測する方向θinclによって吸収線
の幅・深さ・位置が大きく変わる
15 / 28
0.2
0.1
0.1
0.05
0.04
0.05
0.04
再放出光
広く深い吸収線
6
8
10
12
14
Energy (keV)
モンテカルロ計算のパラメータ
•
11個のパラメータを用いてモンテカルロ計算を行い降着円盤風からの放射スペ
クトルを得る
電離光子
光度L
速度・密度
終端速度
光子指数Γ 質量放出率
加速指数β
ジオメトリ
立体角Ω
観測者
視線方向
内縁半径
円盤風方向
初速度
乱流速度
•
終端速度v∞, 質量放出率Ṁwind, 視線方向θinclをフリーパラメータとする (それぞ
れ吸収線の位置, 深さ, 幅に影響する)!
•
•
観測から決定:L, Γ, vt!
仮定:β, v0, Ω, Rmin, θmin
16 / 28
観測データへの適用 (§4.7)
•
超高速アウトフローが確実に検出されている+複数回の観測で超高速アウトフロー
が見つかっている天体に、新たに構築したモンテカルロ計算による降着円盤風の
スペクトルモデルを適用する!
-
-
PDS 456 (Chapter5)!
‣
‣
‣
超高速アウトフローによる吸収線が最も顕著!
最もPowerful(v~0.3c, NH~1024cm-2)な超高速アウトフロー!
速く大きな時間変動!
APM 08279+5255 (Chapter6)!
‣
‣
PDS 456に次いで超高速アウトフローの吸収線が顕著な天体!
PDS 456と比べるとより広がった吸収線構造!
➡ モンテカルロ計算を使ったスペクトルモデルにより、この2天体の超高速アウトフ
ローの多様なスペクトルを統一的に理解する
17 / 28
観測装置 (Chapter 3)
©ESA
すざく (2005−)!
•
XMM-Newton (1999−)!
•
4台のX線CCDカメラ(XIS FI/BI)
MOS1,2/PN)を搭載!
を搭載(2006年11月以降は3台)!
•
•
超高速アウトフローが観測され
鉄バンド(~7 keV)より低エネル
ギー側ではすざくより大きな有効
面積!
る~7 keV以上の帯域で優れた
エネルギー分解能+大きな有効
面積+低バックグラウンド!
➡ PDS 456の観測
3台のX線CCDカメラ(EPIC
➡ 吸収線が~2 keV(赤方偏移z~4)に
見られるAPM 08279+5255の観測
18 / 28
PDS 456の超高速アウトフローのモデル化
すざく衛星により2007年から2013年の間に計5回観測
•
2×10−4
10−4
5×10−4
10−3
2007.02.24 (190.6 ks)!
2011.03.16 (125.5 ks)!
2013.02.21 (182.3 ks)!
2013.03.03 (164.8 ks)!
2013.03.08 (108.3 ks)
~4 keV以下の連続成分の変動と~5 keV以
上の吸収構造の変動の2つが見られる
5×10−5
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
2×10−3
•
吸収構造
連続成分
1
2
Energy (keV)
5
10
~4 keV以下の連続成分の大きな変動を吸収で再現するには、低電離ガス(ξ=L/
nr2 102)でなければならない。(intrinsicなべきの変動で説明した場合、2013
年のスペクトルではΓ=1.0にもなり不自然)!
• ~5 keV以上の吸収構造はアウトフローの高電離ガスで説明できる!
➡ 連続成分の変動は、吸収線を作る吸収体とは異なるもの(or 異なる場所)によ
る吸収と考える→吸収線のみを円盤風モデルで再現し、連続成分の吸収は既
存の電離部分吸収モデルを適用
19 / 28
吸収を受けていない本来の連続成分が見えてい
ると考えられる2007年の観測データをもとにモ
ンテカルロ計算への入力パラメータを決める
• 連続成分:べき関数!
• 輝線:Gauss関数!
• 吸収線:Voigt関数
でフィットし、得られた
値から入力パラメータを
決める
2×10−3
10−3
5×10−4
2×10−4
2007
輝線↓
←吸収線
10−4
2
0
−1
−2
•
↑連続成分
Gaussian emission and kabs
1
χ
•
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
モンテカルロ計算への入力パラメータの導出 (§5.2)
4
6
8
Energy (keV)
10
連続成分:L2−10 keV=(3.53+0.10-0.11)×1044 erg/s, Γ=2.32+0.06-0.05 L2−10 keV=4×1044 erg/s, Γ=2.5!
•
吸収線のblue-shift:v=0.294+0.004-0.004c(FeXXV), 0.310+0.007-0.006c(FeXXVI) v∞=0.3c,
•
2
v
v
=
esc
Rmin=20Rg (Rminでの脱出速度vescがv∞と同程度になる値 )!
Rmin /Rg
吸収線の幅:σ=1300(<6000) km/s vt=1000 km/s
質量放出率Ṁwindの導出!
•
Ṁwindの値を振ってモンテカルロ計算し吸収線部分と比較した結果、Ṁwind=8M⦿/yr
前後で全ての観測データを説明できる(§5.4.2) Ṁwind=8M⦿/yrで固定
20 / 28
終端速度と放出角度による変動の理解
•
•
終端速度v∞と放出角度θminを振ってモンテカルロ計算し観測データをフィット!
v∞/c=0.22,0.24,0.26,0.28,0.30,0.31,0.32、θmin=36,38,40,42,44,45,46°
2007
2011
2007
0.32
v
v /c
v /c
θ
0.32
0.31
0.31
0.3
2013a
0.31
45
0.26
46 (>45.4)
0.24 (<0.254)!
68%(~1σ)!
90%!
99%
0.29
0.28
0.27
0.26
0.25
2013b
40
0.28
0.24
2013c
38
0.26
0.22
36
2007
0.23
37
38
39
40
42
43
0.27
0.26
放出角度
0.23
0.22
36
45 46
(degree)
min
0.26
0.28
0.27
0.26
0.23
0.23
放出角度
0.22
36
45 46
(degree)
37
38
39
40
41
42
43
放出角度
44
45 46
(degree)
min
2013c
0.26
0.23
45 46
(degree)
min
min
0.27
0.24
44
44
0.28
0.24
43
43
0.29
0.24
42
42
v /c
0.29
0.25
41
41
0.3
0.25
40
40
0.31
0.25
39
39
2013c
2007
終端速度
0.27
38
38
放出角度
2013b
0.3
終端速度
0.28
37
37
0.32
0.31
2013a
0.29
0.22
36
2011
0.24
44
v /c
v /c
θincl=48°に固定
終端速度
θmin=45°となるように
41
0.32
0.3
0.28
2013b
2007
0.32
0.31
0.29
0.25
2013a
2007
※2007年のデータで
終端速度
2011
45 (>44.2)
終端速度
2007
0.3
0.22
36
∞,
21 /データを良く再現するv
28
37
38
39
40
41
42
43
放出角度
44
45 46
(degree)
min
θminの値が得られた
終端速度と放出角度のみを変えたスペクトル
•
終端速度v∞と円盤風角度θminだけを観測ごとに変え、それ以外のパラメータは変え
2×10−3
10−3
5×10−4
2007
χ2ν=127.9/107
2×10−4
10−4
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
ずにfitしたbest fitの結果
2×10−3
10−3
5×10−4
2011
χ2ν=89.7/96
2×10−4
10−4
2
2
0
0
−2
−2
10−3
2013a
5×10−4
2×10−4
χ2ν=103.2/101
10−4
2
10
5
Energy (keV)
2×10−3
10−3
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
2×10−3
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
5
Energy (keV)
2013b
5×10−4
2×10−4
χ2ν=106.6/95
10−4
2
5
Energy (keV)
10
10−3
2013c
5×10−4
2×10−4
χ2ν=88.5/89
10−4
2
0
−1
−2
−2
2×10−3
1
0
0
10
5
Energy (keV)
10
−2
5
Energy (keV)
➡ 円盤風の速度と放出角度を変えるだけで全ての観測データを再現することに成功
22 / 28
10
角度変化による影響の考察
•
得られた角度パラメータの変化が結果のスペクトルにどのように影響しているのか?
2013a
高速・低密度
2013b
θincl=48°(fix)
θmin=46°
2013c
θincl=48°(fix)
θmin=40°
θmin=38°
2013a
5×10−4
2×10−4
2×10−3
10−3
2013b
5×10−4
2×10−4
10−4
2
10−4
2
5
Energy (keV)
10
高速部分のみ観測 細い吸収線!
低密度部分のみ観測 浅い吸収線
細く浅い
吸収線
10−3
2013c
5×10−4
2×10−4
10−4
2
0
−1
−2
−2
2×10−3
1
0
0
低速・高密度
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
10−3
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
低速・高密度
2×10−3
θincl=48°(fix)
5
Energy (keV)
10
−2
5
Energy (keV)
低速部分から高速部分まで観測 広い吸収線!
高密度部分も観測 深い吸収線
広く深い
吸収線
23 / 28
10
APM 08279+5255のモデル化
•
•
PDS 456と同様に、視線方向と円盤風の角度が変動しているのか?!
APM 08279+5255はXMM-Newton衛星により2001年から2007年の間に計4回観測
5
10
Energy (keV)
2×10−4
5×10−5
2001.10.30 (16.7/16.7/12.3 ks)!
2002.04.28 (76.4/77.2/63.2 ks)!
2007.10.06 (68.0/68.6/39.3 ks)!
2007.10.22 (75.8/75.8/57.9 ks)
10−4
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
2×10−4
10−4
5×10−5
2×10−5
10−5
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
5×10−4
広がった吸収+エッジ?構造
20
連続成分は中性の吸収×べき関数でよく表せる
中性吸収モデル × 円盤風モデル × べき関数
6
8
10
Energy (keV)
12
14
PDS 456ほど時間変動は大きくないが、
吸収線の位置がわずかに変化!
→この変化も視線方向と円盤風の角度の
でモデル化
24 / 28
変化で説明できるか?
異なる観測時期のデータのモデル化 (§6.3)
•
2002年の観測データを良く再現する値 (質量放出率Ṁwind=70M⦿/yr, 終端速度
v∞=0.4c) で固定し、観測者の視線方向θinclだけを観測ごとに変えた!
5×10−4
2001
2×10−4
10−4
5×10−5
2×10−5
10−5
2
χ2ν=95.1/81!
θincl=71.7° (69.2−75.6)
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
➡ 円盤風の放出角度に対する視線方向の角度を変えるだけで全ての観測データを再現
5×10−4
2002
2×10−4
10−4
5×10−5
2×10−5
10−5
2
1
0
0
−2
−1
5×10
2×10
−4
10
Energy (keV)
2007a
10−4
5×10−5
2×10−5
−2
20
χ2ν=210.5/202!
θincl=79.8° (78.7−80.4)
10−5
2
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
keV2 (Photons cm−2 s−1 keV−1)
5
−4
χ2ν=175.7/208!
θincl=72.7° (71.2−73.9)
5×10
−4
2×10
−4
5×10−5
2×10−5
χ2ν=261.5/251!
θincl=76.4° (75.5−77.3)
10−5
2
−2
−2
20
20
10−4
0
10
Energy (keV)
10
Energy (keV)
2007b
0
5
5
5
25 / 28
10
Energy (keV)
20
➡ PDS 456と同様に
円盤風の放出角度
の変動でスペクト
ルの変化を説明可
能
超高速アウトフローの統一描像
•
従来の研究(Gofford+ 2014)では、超高速アウトフローの変動の物理
的な解釈は定まっていなかった!
•
本研究では、円盤風の速度と放出角度だけが変化するという新た
な描像が得られた
高速・低密度
θincl=48°(fix)
θincl=48°(fix)
細く浅い吸収線
θmin=46°
広く深い吸収線
θmin=40°
低速・高密度
•
この描像では超高速アウトフローが定常的に存在すると考えられ
る→周辺環境へ莫大なエネルギーを供給
26 / 28
円盤風形状の不安定性 (§7.1)
•
モンテカルロ計算によるスペクトルモデルを用いることで、PDS 456, APM
08279+5255ともに、円盤風の放出角度の変化によって、異なる観測時期の全て
のスペクトルを説明できる!
•
UV-line drivingによる降着円盤風の流体計算においても、Kelvin-Helmholtz不安
定性により円盤風が波打つことが予想されている
UV-line drivingによる降着円盤風の流体計算結果 (Proga+2000)
13.3 yr
14.6 yr
➡ 降着円盤風の不安定性を観測的に初めて示唆
27 / 28
16.47 yr
結論
•
超高速アウトフローのX線スペクトルモデルを新たに構築した!
✓
吸収線スペクトルの変動は、終端速度と円盤風の角度の変化のみによって説
明できる。これは、円盤風の不安定性を、観測データから示唆する初めての
結果である。!
✓
質量放出率は変動しないとしても吸収線スペクトルの変動を説明できる。得
られた質量放出率はUV-line drivingの理論計算で予想される値とコンシステン
トであることがわかった。(§7.2)!
✓
円盤風の速度と放出角度だけが変動するという新たな描像が得られた。この
描像では、超高速アウトフローが定常的に存在すると考えられるため、周辺
環境へ莫大なエネルギーを供給していることが示唆される。!
!
•
奇妙なスペクトル構造を持つ1H 0707-495への適用 (Chapter 8)!
✓
超高速アウトフローとして解釈できることを初めて示した。
28 / 28