630第10章

14.6.22
栽培イネの起源
第4編
食材各論
第10章
河姆渡文化(水稲)!
(紀元前数千年)
米と小麦
江西省 湖南省(陸稲) (1万2千年前)
栽培稲のDNA解析:東南アジアイネ(ジャバニカ系)が
もっとも古い
日本への伝来:陸稲・縄文時代中期(紀元前4千年)
水稲・縄文時代末期(2500年前)
生物としては1種類(Oryzae sativa)
熱帯に存在する栽培イネ(Oryzae sativa)の原種
米の分類
・インディカ(長粒種):いわゆるタイ米
タイ米
・ジャポニカ(短粒種):
日本米
ジャバニカ:インドネシアなどで栽培
中粒種:カリフォルニア米
それぞれについて、ウルチとモチが存在する
国産米
これらは同じ生物種であるので
容易に交配(=品種改良)が
可能
Oryzae rufipogon
加州米
インディカとジャポニカの違い
ジャポニカはインディカよりも粘りが強い
米入りのサラダ
欧米では、米をイモや野菜。または
菓子の素材として扱う
ジャポニカを好むのは東 東南アジアのみ、世界的には
インディカが主流
ライスプディング
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米の粘りの正体はデンプン
直鎖状・らせん構造のアミロース
インディカとジャポニカの違い、そしてモチとウルチの違いは
アミロースとアミロペクチンの存在比
枝分かれ構造のアミロペクチン
粘るのはアミロペクチンである (溶けるのではなく水と混和すると粘る)
インディカであっても
モチであれば粘りは強い
アミロースは水に溶けず、サラサラしている
インディカのモチ米
(ほとんど栽培されていない)
デンプンの糊化(α化)
デンプンは水を加えて加熱すると糊状になり溶けたように見える
水
加熱
粘るアミロペクチンは外側、
膨らみ溶けたアミロースは
内側に
アミロースは
らせんの隙間に
水が入り、らせんが
崩壊し、溶ける
→加熱によって粘りが出
現・増加したように見える 水を加え熱したときにデンプン粒はどのように変化するか
(糊化のときのデンプン粒)
高デンプン食品(穀物・イモ)を加熱することの意味は?
含まれているデンプン粒中の
アミロースを溶かすことによって
デンプン粒を膨潤させ、粘りを
表面に集める
(ふっくらとした粘りを生じさせる)
ただし、冷えればこれらの特性は
消失する
麦類栽培の開始
小麦は生物として異なる植物種
の集合体=栽培の起源も同時多発
小麦栽培の伝播
メソポタミア: 紀元前数千年
北アフリカ・欧州:紀元前3千年
中国:紀元前1世紀
日本:弥生時代
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小麦の分類(1) 生物種としての違い
小麦の原種
パン小麦(多粒系)
染色体は42
もっとも普通の小麦
スペルト小麦
Triticum spelta
クラブ小麦(多粒系)
染色体42
小麦粉にすると白さが際立ち
高級菓子用
小麦の分類(2)
商品としての分類
マカロニ小麦(二粒系)
染色体は28
パスタ用としての特性大
小麦の用途はタンパク質含量(=ブランド)ごとに決まっている
・色または透明度による分類(色素量とタンパク質量)
レッド、アンバー、ホワイト
(タンパク質が多いと透明(硝子質)となり、褐色色素が強調
タンパク質が少ないとデンプン粒のため白濁)
・透明度(硬度)による分類(タンパク質量)
・等級
ハード、セミハード、オージナリー、ソフト 高品質のものには
(タンパク質が多いと硬い) No. 1またはプライム
・栽培時期
春に播種、秋に収穫=春小麦(スプリング)
秋に播種、初夏に収穫=冬小麦(ウィンター)
(春小麦の方が食味など品質は一般に良い)
・小麦のブランド
ASW(Australian standard white) WW(Western white)
HRW(Hard red winter) APH(Australian prime hard)
DNS(Dark northern spring) 1CW(No.1 Canadian western red spring)
・高タンパク質(ハード)
強力粉
1CW:高級パン
DNS:一般のパン、廉価なパスタ
セモリナ粉
Durum:高級パスタ
・準高タンパク質(セミハード)
準強力粉
APH:中華麺
・中タンパク質(オージナリー)
中力粉
ASW:うどん
・低タンパク質
薄力粉
WW:菓子類 日本は小麦消費の95%以上を米国、カナダ、豪州より輸入
国産小麦の大半はあまり品質がよくない(米の裏作=冬小麦)
一部、高品質のものもあるが大量生産できない
外国のブランド小麦は常に品質が一定している
グルテンタンパク質の一部を
構成するアミノ酸配列
SH
SH
SH
SH
SH
SH
SH
SH
粘りというよりも弾力性といっ
た方がよい
酸化
S
S
S
S
S
S
小麦の粘りはデンプンではな
くタンパク質によるもの
S
S
図10-3.酸化によるグルテンタンパク質内で
の架橋形成!
形成されたS-S架橋がバネのように作用する
ことで小麦生地特有の粘り(コシ)が発生す
します。 讃岐うどんの強いコシはしっかりと捏ねた後、十分ねかせ(=放置し)、
空気中の酸素によってグルテン分子内に十分にS-S架橋を形成する
ことで生じる
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小麦粒
小麦と米の食べ方の違いは?
米は粒食 小麦は粉食
小麦が粉食になった理由
米
粒溝
麦飯に使う押し麦は大麦の外皮を除き、圧縮したもの
(溝の部分に外皮が筋状に残っている)
小麦
外皮
胚乳
胚芽
米(玄米)と小麦(玄麦)の断面図
小麦にはコメには存在しない粒溝があるため、外皮などを除こうとしても溝の周囲は覗け
ません。また外皮が硬く、胚乳部が軟らかいため無理に除こうとすると粒が崩壊してしまい
ます。
粉食となった小麦には調理にバリエーションが生じた
そして小麦粉製造は大企業を生んだ
昭和産業
小麦粉製造業は発展した
日清製粉
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一方、米には調理のバリエーションが少なく米産業は規模が小さい
100%米粉パンは製造されているが……
グルテンが含まれていない米粉ではパンのふっくらした弾力性は
得にくい。また、冷えた場合、デンプンに由来する「ふっくら感や粘り
は失われる
ゴパンでは、小麦ゼロ(グルテン
無添加パンも作れるが....
・小麦ゼロ米食パンは上部の焼き色が白
いのが特徴です。
・あまりふくらみません。
・白米以外の米では作れません。・こね工
程終了後、ドロッとした生地ですが、異常
ではありません。
ゴパンも標準レシピではグルテンを加えることになっている
バイオエタノールの
原料
米余りの日本
飼料転用
みんなで知恵を出して食糧としての米の新たな展開を考えよう
食べてもらえないのは悲し過ぎる
米は100%自給可能な食糧
水田は環境上の意義も大きい
米需要を増やすために
米を使った新たな献立・食品の創出が
期待される
食糧自給率の上昇
日本農業の再生
自然環境の保全
日本文化の継承
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