麹菌発現系を利用した抗腫瘍性物質 ophiobolin 類の全生合成研究 Total biosynthetic study of antitumor antibiotic ophiobolins using by Aspergillus oryzae heterologous expression system 成田興司、千葉諒太、南篤志、五味勝也、及川英秋(北大総合化学院) 天然には糸状菌由来の生理活性物質が数多く存在し、これらの生産には糸状菌の持つ二次代謝 産物生合成遺伝子が関与している。近年我々は、糸状菌ゲノム公開株 Aspergillus clavatus から、 ophiobolin F 合成酵素 AcOS を見出した 1)。ophiobolin F は ophiobolin 類縁化合物の前駆体であ り、抗腫瘍活性を示す ophiobolin A は ophiobolin F が計 6 段階の酸化修飾を受けることで生合成 されると予想される 2)。そこで AcOS の周辺遺伝子を探索したところ、2 つの酸化酵素遺伝子が 存在していた。また、ophiobolin A, K の生産菌である Bipolaris maydis, Emericella variecolor からも 類似の遺伝子クラスターが見つかったことから、これらが ophiobolin F の酸化修飾に関 与していると考えられる。我々はこれら酸化酵素遺伝子の機能解析による ophiobolin 類の全生合 成経路解明を目標としており、本発表では特に oblB (P450)の機能解析について報告する。 麹菌異種発現系を用いて、まず oblBAc について機能解析を行った。麹菌 Aspergillus oryzae NSAR1 株において AcOS と oblBAc を共発現させ、その代謝産物を解析したところ、新規化合物 1~4 の生 産が確認された。構造解析の結果、これらは ophiobolin F が酸化修飾を受けることで生成したもの であることがわかった。続いて、oblBBm, oblBEv について同様に機能解析を行ったところ、これら の発現株からは ophiobolin C とその立体異性体の生産が確認された。以上の結果から oblBAc と oblBBm, oblBEv は、同じ基質の同じ部位を酸化するにも関わらず、異なる生成物を与えることがわ かった。 <参考文献> 1)Chiba, R.; Minami, A.; Gomi, K.; Oikawa, H. Org. Lett. 2013, 15, 594. 2)Nozoe, S.; Morisaki, M.; Tsuda, K.; Okuda, S. Tetrahedoron Lett, 1967, 35, 3365. 発表者紹介 氏名 成田興司(なりたこうじ) 所属 北海道大学大学院総合化学院 学年 博士 1 年 研究室 有機反応論研究室
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