臨時レポート ブラジル:S&Pの国債格下げについての当社の見方 市場は格下げをほぼ織り込み済み、バリュエーションは割安感強まる HSBC投信株式会社 2015年9月15日 S&Pの指摘通りブラジル経済は予想以上に悪化、財政再建が計画通り進んでいないが、14日(月) に政府は新たな財政緊縮策を発表 対外債務は低水準、外貨準備も潤沢で外的ショックに対する耐性は比較的強い 今回の格下げを市場は既に相応に織り込み、ブラジル債券のバリュエーションは割安と見る。通貨 も悪材料を幅広く織り込み割安感が強まっている 図表1 対外債務の対GDP比各国比較 S&Pによるブラジル国債の格下げ 0% 9月9日(水)、米大手格付会社スタンダード・アンド・プ 英国 アーズ(S&P)は、ブラジル国債の格付けを引き下 ドイツ げ、外貨建長期債務を「BBB-」から非投資適格級 日本 の 「BB+」、自国通貨建長期債務を「BBB+」から 「BBB-」としました。見通しは「ネガティブ(弱含み)」 南アフリカ としています(詳細は9月10日付け臨時報「ブラジル: インドネシア S&Pが国債の格付けを引き下げ」参照)。 ブラジル 足元の景気は予想以上に悪化、税収 減から財政目標を下方修正 S&Pでは、今回の格下げの理由の一つに経済の低 迷を挙げています。ブラジル経済はリセッション下に あり、2015年4-6月期の実質国内総生産(GDP)成長 率は前年同期比-2.6%と1-3月期の-1.6%からさ らに減速、前年比では5四半期連続のマイナスとなっ ています。当社では、今年の実質GDP成長率は -2.5%、来年もマイナス成長が続き、2017年にプラ スに転じると予想しています。 予想を上回る景気低迷は税収減をもたらし、昨年赤 字に転落したプライマリーバランスの改善を遅らせて います。政府は、7月に下方修正したプライマリーバ ランスの目標値(対GDP比2.0%から0.7%の黒字へ) を、2016年度予算案でさらに引き下げ0.3%の赤字と しました。これも今回の格下げの理由です。 他方、対外債務は低水準、外貨準備 は潤沢で外的ショックへの耐性強い しかし他方で、ブラジル経済には注目すべきプラ ス面も見られます。 まず、ブラジルの対外債務は対GDP比で30%程 度と主要国との比較でみると低水準にあります (図表1参照)。また、ブラジルの外貨準備高 (2015年9月10日現在で3,709億米ドル)は潤沢 で、特に外貨準備高に対する短期対外債務の比 率は16.1%(2015年3月末)と危険水域とされる 100%を大幅に下回っています(図表2参照)。 1 当資料の「留意点」については、巻末をご覧ください。 インド 50% 100% 150% 200% 250% 300% 350% 313% 145% 59% 41% 33% 30% 22% 出所:世界銀行、2014年12月末現在 図表2 ブラジル対外債務の外貨準備高に対する比率 (%) 350 対外債務 短期対外債務 300 250 200 150 100 50 0 05年 1Q 07年 1Q 09年 1Q 11年 1Q 13年 1Q 出所:ブラジル中央銀行、2015年3月末現在 15年 1Q (年/期) これは外的ショックに対する耐性の強さを示すも のであり、深刻な債務危機は想定し難いものと 思われます。また、同国は資本市場からの資金 調達がなお可能であり、さらに経常収支赤字は 対内直接投資及び証券投資でほぼ埋め合わさ れる比較的健全なバランスシートを有していま す。 臨時レポート 来年はインフレ収束で利下げ余地拡大、 14日には政府が新たな緊縮策発表 図表3 米ドル建ブラジル国債利回りの対米国債スプレッド (%) 6.0 一方、足元のインフレ指標は悪く、8月の拡大消 費者物価指数(IPCA)は前年同月比+9.53%と中 央銀行の目標レンジ(4.5%±2.0%)の上限を大 幅に上回っています。しかしながら、来年以降は インフレ率の低下が見込まれます。これは、①今 年の公共料金引き上げによるベース効果で、来 年は前年比上昇率が低下する見込み、②これま での金融引き締め効果の顕現化、③低調な国内 需要の継続、などが理由として挙げられます。 来年はインフレ率が低下する中で、政策金利は 現行の14.25%から計1%引き下げられ、2016年 末は13.25%になると当社では予想しています。 さらに、9月14日(月)、政府は財政赤字解消に向 けた約650億レアル(約2.1兆円)規模の歳出削 減・歳入拡大策を発表しました。レビ財務相は、 歳出削減では社会保障やインフラ向け投資、農 業向け補助、公務員の給与調整などを削減対象 に挙げており、また歳入拡大ではかつてのCPMF (通称:小切手税)の復活が必要と述べています。 今回の格下げに対する市場の反応 今回のS&Pによる格下げについては、市場では、 格下げ自体は既に相応に織り込んでおり、実際、 S&Pが7月に見通しを「ネガティブ」にして以来、ブ ラジル国債の対米国債スプレッドは大幅に上昇し ています(図表3参照)。 しかし、S&Pは7月28日に見通しを「ネガティブ」に 引き下げたばかりであったため(通常、「ネガティ ブ」は12~18ヶ月の間に改善がなければ、格下げ の可能性があるとみなされる)、今回の格下げの 時期については予想外に早かったとの印象を与 えました。また、格下げ後の見通しが「ネガティブ」 とされたこともややサプライズでした。 格下げ後の市場の反応を見ると、債券・株式及び 通貨レアルは発表後に下落、しかし、その後、政 府が14日(月)に新たな緊縮策を発表したことを 受けて値を戻しています。 9月10日(木)、11日(金)、14日(月)の3営業日で 見ると、5年物国債利回りは0.31%上昇の15.07%、 また、通貨レアルは対米ドルで0.9%の下落となっ ています。一方、株式市場は格下げ発表後も反 応は比較的薄く、ボベスパ指数は3営業日で 1.3%の上昇となりました。 2 当資料の「留意点」については、巻末をご覧ください。 (%) 3.5 対米国債スプレッド(右軸) ブラジル10年国債利回り(左軸) 5.5 米国10年国債(右軸) 3.0 5.0 4.5 2.5 4.0 2.0 3.5 3.0 2015/1 2015/3 出所:ブルームバーグ 1.5 2015/5 2015/7 2015/9 (年/月) 2014年12月23日~2015年9月13日までの10日移動平均 今後の見通し~バリュエーションは債 券、通貨ともに割安感強まる ブラジル債券市場は目先ではなお売り圧力を受 ける可能性がありますが、バリュエーションは割 安な水準にあると考えます。 現在の金利水準は、ブラジルの景気及びインフレ リスクのバランスからみて妥当な水準にあり、政 策金利はしばらく現水準で据え置かれると見られ ます。来年以降は、インフレ率が低下する中で金 融緩和への転換が見込まれます。 ブラジルレアルは年初来、対米ドルで約30%下落 しましたが、これは商品市況の下落や米国の利 上げ観測、ブラジル経済の悪化などの悪材料を 幅広く織り込んだものです。通貨についても割安 感が強まっています。 今後のリスクとしては、他の大手格付会社による 格下げの可能性が挙げられます。通常、S&P1社 による非投資適格への格下げのみでは大量の売 却はさほど見られません。しかし、3大格付会社 の他2社(ムーディーズ及びフィッチ)がブラジルを 非投資適格とした場合には、投資適格債のみを 対象とした主要市場指数の構成銘柄からブラジ ルが外され、機関投資家などの売りが広がる恐 れがあります。 留意点 投資信託に係わるリスクについて 投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象としており、当該資産の市場に おける取引価格の変動や為替の変動等により基準価額が変動し損失が生じる可能性があります。従いまし て、投資元本が保証されているものではありません。投資信託は、預金または保険契約ではなく、預金保険機 構または保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入の投資信託は投 資者保護基金の保護の対象ではありません。購入の申込みにあたりましては「投資信託説明書(交付目論見 書)」および「契約締結前交付書面(目論見書補完書面等)」を販売会社からお受け取りの上、十分にその内 容をご確認頂きご自身でご判断ください。 投資信託に係わる費用について 購入時に直接ご負担いただく費用 購入時手数料 上限3.78%(税込) 換金時に直接ご負担いただく費用 信託財産留保額 上限0.5% 投資信託の保有期間中に間接的に ご負担いただく費用 運用管理費用(信託報酬) 上限年2.16%(税込) その他費用 上記以外に保有期間等に応じてご負担頂く費用があります。 「投資信託説明書(交付目論見書)」、「契約締結前交付書面(目論 見書補完書面等)」等でご確認ください。 ※上記に記載のリスクや費用につきましては、一般的な投資信託を想定しております。 ※費用の料率につきましては、HSBC投信株式会社が運用するすべての投資信託のうち、ご負担いただく それぞれの費用における最高の料率を記載しております。 ※投資信託に係るリスクや費用はそれぞれの投資信託により異なりますので、ご投資される際には、かならず 「投資信託説明書(交付目論見書)」をご覧ください。 HSBC投信株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第308号 加入協会 一般社団法人投資信託協会/一般社団法人日本投資顧問業協会 ホームページ www.assetmanagement.hsbc.com/jp 電話番号 03-3548-5690 (受付時間は営業日の午前9時~午後5時) 【当資料に関する留意点】 当資料は、HSBC投信株式会社(以下、当社)が投資者の皆さまへの情報提供を目的として作成したものであり、特定の金 融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。 当資料は信頼に足ると判断した情報に基づき作成していますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。また、 データ等は過去の実績あるいは予想を示したものであり、将来の成果を示唆するものではありません。 当資料の記載内容等は作成時点のものであり、今後変更されることがあります。 当社は、当資料に含まれている情報について更新する義務を一切負いません。 3
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