河川工作物の取扱い及びサケマスの

資料3
河川工作物の取扱い及びサケマスの遡上状況調査について
1
魚類のモニタリング調査について
知床世界自然遺産長期モニタリング計画等に基づき、サケマスの遡上状況とオショロコマを
始めとした淡水魚の生息状況調査を、北海道森林管理局と北海道が分担して実施しています。
(1)サケマスの遡上調査
今年度は、ルシャ川、イワウベツ川(赤イ川、ピリカベツ川)、サシルイ川、チエンベツ
川においてダム改良の効果を検証するための調査を行っています。今年度については現在調
査が始まったばかりですので、昨年度までの調査結果の一部をご紹介します。
①イワウベツ川
2006~2010 年度に行ったダム改良により、上流域でも産卵が行われるようになりまし
た。河口で捕獲事業が行われていることなどから年変動が大きいですが、改良の効果は確
実に持続しています。
改良ダム上流域で確認された産卵床の比率
60%
カラフトマス
シロザケ
40%
20%
0%
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
注:産卵床数比率は、各調査日のうち最大数であった日をその年の産卵床数とした。
他のグラフについても同じ。
治山ダムの切り下げ
治山ダムのスリット化
1
②サシルイ川
2007 年度に行ったダム改良後、産卵床のほとんどはダムより上流部で観測されるように
なり、効果が確実に発揮・持続しています。改良後の 2009 年秋には、ダムの約3キロ上流
でもカラフトマスの産卵が確認されました。
改良ダム上流域で確認された産卵床の比率
100%
カラフトマス
80%
シロザケ
60%
40%
20%
0%
2007
2008
2009
改良前
2010
2013
改良後(既設魚道の改良)
③ルシャ川
2006 年度に行ったダム改良後、上流域での産卵床の割合が高くなりました。ただし、2012
年に開催されたユネスコ世界遺産委員会においてさらなるダム改良を求める決議が採択され
たことから、その方法について検討を重ねているところです。
2
改良ダム上流域で確認された産卵床の比率
80%
カラフトマス
シロザケ
60%
40%
20%
0%
2005
2006
2007
2008
2009
2012
2013
注:2010 年・2011 年は調査未実施、シロザケの 2012 年・2013 年は調査未実施。
3 基の治山ダム
遡上するカラフトマス
(2)淡水魚の生息等調査
①水温調査
知床半島を代表する淡水魚であるオショロコマは水温の上昇に弱いため、世界遺産地
域の外側の河川も含めた 37 河川(斜里町側 15 河川、羅臼町側 22 河川)で夏季の水温調
査を実施しています。昨年度の調査結果からは、ダムの多い河川の区間は、少ない河川
よりも 8 月の平均水温が高い傾向が見られました。
水温測定機器の設置状況
水温機器
3
②淡水魚生息調査
昨年度の調査では、8 月の平均水温が高い河川ではオショロコマの生息密度がかなり低
いことがわかりました。
また、シマトッカリ川(斜里町側)、チニシベツ川(羅臼町側)において外来種である
ニジマスが採捕されています。
今年度は、チャラッセナイ川、オライネコタン川、オショコマナイ川、フンベ川、オシ
ョパオマブ川、
(以上 斜里町側)、ルサ川、マツノリ川、オッカバケ川(以上 羅臼町側)
の 8 河川で実施中です。
2013 年度の河川別推定生息密度一覧表(100m2 当たり)
魚種
河川名
オ シ ョ
ロコマ
イダシュベツ
71.5
ホロベツ
45.5
チトライ
51.8
糠真布
11.0
金山
0.5
シマトッカリ
2.6
精進
5.3
エゾハナ
カジカ
カンキョ
ウカジカ
サクラ
マス
シマウ
キゴリ
トミヨ
ニジ
マス
1.2
14.0
フ ク ド
ジョウ
1.9
6.2
チニシベツ
7.6
1.4
2.2
6.2
4.9
49.5
生息調査の実行状況
1.0
56.0
オショロコマの計測状況
なお、モニタリング調査の詳細な結果は、知床データセンター(調査研究>行政機関事業
報告書)http://shiretoko-whc.com/research/report.html に掲載しています。
4
2
河川工作物改良の第2次検討
2005~2007 年度にかけて知床世界自然遺産地域科学委員会河川工作物ワーキンググループ
が科学的に影響評価(第1次検討)した100基の河川工作物のうち、要改良となった13基
については 2012 年度までに改良工事を完了し、サケ科魚類の生息環境等の改善が図られてい
ます。
今後は、当時、改良すればサケ科魚類の生息環境等の改善が図られる可能性はあるものの、
改良に伴う防災機能等への全体的な影響が大きいため「現状維持」とされた35基について、
改良の可能性を再度検討することとし(第2次検討)、まず今年度は、羅臼町側のオッカバケ
川2基(林野庁設置)とモセカルベツ川1基(北海道設置)について、現地検討を行いながら
具体的な改良手法の検討を進めています。
オッカバケ川の治山ダム(林野庁)
モセカルベツ川の治山ダム(北海道)
5
6