資料4-3

資料4-3
■利用者名:中外製薬
■課題名:血管新生調節因子を用いた
Bevacizumab
効果予測因子の同定
【概要】
(1)  本課題で得られた具体的な成果
臨床データにおける HDXB9 の発現
約 70 例の大腸癌臨床凍結検体について、HDXB9 発現を解析し、約 67% の大腸癌で高発現が確認された。
中でも高・中分化型と比べ、低分化型大腸癌で有意に HDXB9 の発現が高かった。さらに3 年無病生存期間
(DFS)および全生存期間(OS)は HDXB9 高発現群で予後不良であった。
HDXB9 の発現確認
HDXB9 発現量と大腸癌患者の予後との関係を解明するために、HDXB9 の発現を促進あるいは抑制誘導し、機
能解析を行った。HDXB9 低発現の大腸癌細胞株である HT29、HCT116 に対して tetracycline(tet)誘導
発現による HDXB9 過剰発現細胞株を作製し、tet存在下でHT29で約 250 倍、HCT116 で約 20 倍の mRNA発
現量の上昇を確認した。一方、HDXB9 高発現の大腸癌細胞株である SW480、WiDr に対して HDXB9 の発現を
抑制する shHDXB9 株を作り、Stable clone を作製した。これらの細胞では Control に比して SW480で約
0.2 倍、WiDrで約 0.002 倍に HDXB9 の mRNA 発現が抑制されていた。さらに蛍光免疫染色により、HT29と
HCT116 の両細胞株において、tet存在下で HDXB9 が核内に強く集積していることを確認した。
TGFβ経路の遺伝子発現
乳癌細胞では HDXB9 は TGFβ経路を介して癌転移や血管新生に関与しているため、大腸癌細胞における両
者の関係を検討した。HDXB9過剰発現系 (HT29、HCT116) と発現抑制系(WiDr、SW480)における TGFβファ
ミリー(TGFβ、Col1A1、CTGF、FN1、serpinel)の mRNA 発現量を調べた。過剰発現系では、いずれの mRNA
発現量も増加した。一方、発現抑制系では、ほぼ全ての mRNA 発現が抑制された。大腸癌細胞においても
HDXB9 は TGFβ経路を活性化していることが示された。
Angiogenic Factor の発現
乳癌細胞では HDXB9 が血管新生に関わっているため、大腸癌
細胞での影響を確認した。HDXB9 を過剰発現系(HT29 tet+、HCT116 tet+)と発現抑制系 (WiDr、SW480) に
お け る 血 管 新 生 因 子(ANGPLG2、ERG、bFGF、PDGFC、VEGF、IL8)の mRNA 発現量を調べた。過剰発
現系では、いずれの mRNA 発現量も増加した。一方、発現抑制系では、ほぼ全ての mRNA 発現が抑制され
た。以上からHDXB9 は大腸癌細胞においても血管新生因子を誘導することが示された。
MTT assay
大腸癌細胞株における HDXB9 と腫瘍増殖能の関係を調べるために、MTT により増殖能を評価した。その結
果、HDXB9 高発現株(HT29 tet+、HCT116 tet+)で増殖能が抑制され、HDXB9 発現抑制系(SW480、WiDr)で
は有意な増殖を認めた。これらの結果は乳癌細胞における HDXB などの EMT marker の発現が in vitro
における腫瘍増殖を抑えるという結果と一致した。
Xenograft mode1
これらの結果をふまえ、生体内でのHDXB9 の役割を確認するため、nude mouse にヒト由来の大腸癌細胞
(HT29 tet+)皮下移植モデルを作成した。皮下移植モデルでは tetracycline 投与群で非投与群に比して腫
瘍体積、腫瘍重量共に有意な増加を示した。これらの腫瘍組織を抗血管内皮細胞抗体(抗 CD31 および抗
HDXB9 抗体)で免疫染色し、血管の新生および HDXB9 の発現を調べた。
その結果、HT29 細胞では CD31 および HDXB9 が著しく発現していることが確認され、HDXB9 により血管
新生が誘導されていることが示唆された。