医工連携推進活動

4.事業創出活動
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事業創出活動
❏産業振興分野
医工連携推進活動
1.医工連携の推進
滋賀県は全国屈指のものづくり県である一方、高齢化が急速に進展している県でもある 1)。また、滋賀県南部地域
は、医療機関が集積していることから、これまで医工連携への取り組みにより蓄積された「地域の力」があり、健康づ
くりのための地域連携が可能な地域となっている。
このような中で、『滋賀健康創生』特区を構成している守山市は、過年に筆者が医療分野への産業支援について
提言して以来、医工連携懇談会の設立(2012/4)を端緒として、健康器具、健康管理機器の開発・事業化支援を行っ
てきた。実績としては、A 社のリハビリ機器(荷重計測器)の上市をはじめ、無呼吸症候群治療用途のヘッドギア、歯
科医療における歯質接着材や患者支援機器などの開発が挙げられる。「守山市医療・環境・健康産業技術・新製品
開発等支援事業補助金」の交付では、市や産業支援プラザと共に筆者も審査委員として参画し、年々その実績を上
げているところである。
2.治療から予防への転換
国は、年々拡大する医療費予算を抑制すべく、「治療から予防」へと転換しようとしている。超高齢化社会への対
応は勿論、国民の 70%を占める健康無関心層に対しその行動変容喚起を図るなど、健康寿命を延伸し、生き生きと
健康に暮らす社会の実現を目指しているところである。
こうしたことから、「治療から予防への転換」に寄与するための、医療健康管理機器の開発・事業化や健康支援サ
ービスの提供は、地域連携をとおしたモデルとして、地域住民の生活習慣病予防と健康づくりへの取り組みを促進さ
せることとなり、地域経済の持続的発展と健康社会の実現とって、まさに必要な取り組みであるといえる。
そこで、守山市が行う、医療・健康・環境に軸足を置いた産業フェアの開催は、「からだ」と「こころ」の健康をはかり
「安心・安全・快適」に暮らせるまちづくり構築を推進する上において、時機を得たものと考えられる。
3.守山市医療・健康・環境産業フェアの開催
今年で 2 年目を迎える当該産業フェアは、守山市に事業所を置いている企業、および周辺自治体や滋賀県内に
活動拠点持つ企業・大学等が、医療・健康・環境に関する自社製品や活動内容を展示することによって、販路開拓・
技術提携・共同開発の展開促進をはかり、以て地域経済の活性化を図ろうとするものである。
滋賀大学社会連携研究センターも、人文系の側面から、健康・環境・農業振興をテーマに出展したところである。
産業フェアの実績としては、出展が 38 企業・4 大学・5 自治体と規模は小さいものの、マッチング効果や滋賀県産業
アピールに寄与・貢献できたものとの評価がなされている。次年度も継続開催の予定である。
4.今後の検討課題
健康に対する国や市民の関心は、高まりこそすれ衰えない昨今にあっては、治療と予防、および健康増進の観点
から、滋賀県や各自治体においても、『ヘルスツーリズム』の可能性について、一段と検討が深められるべきと考え
1)
滋賀大学社会連携センター報 No.2
P57 脚注参照
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4.事業創出活動
る成長産業分野である医療・健康分野においては、治療・療養のほかに、高齢介護者の健康管理を含めた介護家
族のレスパイト
2)
や心の健康に留意したシステムづくりが必要である。そうした中では、医療に隣接する、理美容・体
力増強など健康増進を目的とした分野でのサポートが必要であり、さらには、思い切った気分転換のためのツーリズ
ムも検討の対象とならなければならない。
今後は、「近畿観光まちづくりコンサル事業」などと共に、守山市でできるカテゴリーの研究や、グリーンツーリズム
との連携による滞在型観光の実践に向けた提言、それに伴う具体的プログラムのフィージビリティースタディーが視
野に入ってこよう。これらは次年度の課題として、さらに検討が加えられることが期待される。
(文責 特任教授 中井 光男)
【守山市医療・健康・環境産業フェアのチラシ】
2)
レスパイト(respite);休息、息抜き。 要介護者を在宅ケアしている家族の精神的疲労を軽減するための一時的ケア代理や家
族の休息支援といったレスパイトケアや、被介護者を一時的に預かるレスパイトサービスなどがあり、介護保険法(2000 年施行)
により法整備がなされた
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