2015 年 3 月 18 日 障害者施策推進本部 本部長 内閣総理大臣 安倍

2015 年 3 月 18 日
障害者施策推進本部 本部長 内閣総理大臣 安倍晋三 様
DPI女性障害者ネットワーク(代表者 南雲君江)
障害者基本法改正のための意見書
前回改正法の施行後3年経過が目前となっています。障害者基本法の見直し改正のために、障害のあ
る女性の人権を高める法制度を求めてきているDPI女性障害者ネットワークから提言します。
前回改正では、第 10 条(施策の基本方針)と第 14 条(医療、介護等)
、第 26 条(防災および防犯)
に、
「性別」という言葉が初めて追加されましたが、障害のある女性の複合差別について明確な記述は
取り入れられませんでした。この点において、当時の「内閣府障がい者制度改革推進会議」および私
たちの提言が反映されなかったことに遺憾を表し、障害のある女性の複合差別の実態を可視化し課題
とするために調査をおこない、調査報告、発表、提起を続けてきました。
この3年の経過のなかで大きく変わってきたことがあります。
2013 年6月、障害者差別解消法が障害のある女性にかかわる国会審議のうえに「条約の趣旨に沿う
よう、障害女性や障害児に対する複合的な差別の現状を認識し、障害女性や障害児の人権の擁護を図
ること」という附帯決議とともに成立しました。
同年9月に閣議決定した、障害者基本法に基づく第3次障害者基本計画には、
「特に、女性である障
害者は障害に加えて女性であることにより、更に複合的に困難な状況に置かれている場合があること、
障害児には、成人の障害者とは異なる支援の必要性があること、に留意する」と記述されました。す
でに第3次男女共同参画基本計画には、複合的に困難な状況におかれている女性として障害のある女
性の課題も述べられていましたが、障害分野では初めて記述されたことになります。
続いて権利条約批准の承認を審議した国会でも、改めて障害のある女性の権利について議論され、
2014 年に日本政府は障害者権利条約を批准しました。そして、今年2月に閣議決定された障害者差別
解消法の基本方針にも、その「第2 行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消
するための措置に関する共通的な事項 」の「法の対象範囲」の項で、上に引用の障害者基本計画とほ
ぼ同文の記述がされたところです。
総じて、障害のある女性の複合差別は、障害者権利条約に沿って課題として取り組まなければなら
ないことであるという認識が、計画や方針では明記されてきたことが大きな進展だったと言えます。
障害者権利条約を批准した今、次になすべきことは、この認識を法律に明記すること、そして条約
にのっとった制度・政策を具体的に進めていくことです。
上の認識にたって、次のことを提言します。
[1]総則
1)施策の基本方針
第 10 条「施策の基本方針」の第1項の次に、下記の2のように、項目を追加すること。
1 (現在の第1項)障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策は、障害者の性別、年齢、
障害の状態及び生活の実態に応じて、かつ、有機的連携の下に総合的に、策定され、及び実施され
なければならない。
2 【例文】前項をふまえ、特に、女性である障害者は障害に加えて女性であることにより、更
に複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障害児には、成人の障害者とは異なる支援
の必要性があることに留意して、その人権の擁護のために必要な施策を講じなければならない。
1
2)調査研究について
調査研究については、個別分野の一部および機関の単位で書かれているが、本来は総論が必要な事
項と言える。このことをふまえて調査研究に関する条項を設けること。それと同時に、これまで空白
のまま推移してきたものが多い性別にかかわる調査研究も、課題のなかに記述すること。
【例文】
1.国および地方公共団体は、障害者施策を適切に講ずるため、社会的障壁が障害者の社会参画に
及ぼす影響に関する調査研究その他の共生社会の形成の促進に関する施策の策定に必要な調査研究
を推進するとともに、これをふまえた施策の推進に努めなければならない。
2 調査研究においては、障害者施策の適切な企画、実施、評価および見直しの観点から、障害者
の性別、年齢、障害種別の観点に留意し、情報・データの充実を図るとともに、適切な情報・デー
タの収集・評価のありかた等を検討しなければならない。
[2]各則
1)相談について
第 18 条(職業相談等)に「個々の障害者の特性に配慮した職業相談、職業指導、職業訓練及び職業
紹介の実施その他必要な施策を講じなければならない」とある。
「個々の障害者の特性に配慮するとと
もに、性別、年齢、障害種別の観点に留意して、
(以下同)
」とすること。
第 23 条(相談等)にも、同趣旨の条文を追加すること。
【例文】国及び地方公共団体は、相談業務等において、個々の障害者の特性に配慮するとともに、
性別、年齢、障害種別の観点に留意しなければならない。
2)第3章「障害の原因となる傷病の予防に関する基本的施策」
(第 31 条)について
障害者基本法にいう社会的障壁の除去を進めることは、障害や疾病そのものを問題とする見方、
「あ
ってはならないもの」とする見方から転換することでもある。この法律からみて第3章は不要である
ため、削除すること。
3)委員構成について
第 33 条の 2、第 36 条の 2 の「政策委員の構成」
「都道府県等における合議制の機関の構成」につい
て、共通して、
「委員の構成については、様々な障害者の意見を聴き障害者の実情を踏まえた調査審議
を行うことができることとなるよう、配慮されなければならない」とある。どちらについても、この
条文に続けて、性別の比率についてもつりあいがとれるように配慮しなければならないという趣旨の
条文を加えること。
【例文】それと同時に、性別の釣合いがとれた構成となるよう配慮されなければならない。
以上
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