ダウンロードする - 聖書配布協力会

神のことば すべての人に
聖書配布協力会
「私が道であり、真理であり、
いのちなのです。」 イエス・キリスト
ヨハネによる福音書14章 6 節
オリーブ山のふもとから見たエルサレムの城壁。
ま
えが き
本 書 「 コ ン サ イ ス ・ バ イ ブ ル 福 音 」 は 、 す べ て 聖 書 か ら 抜 粋 し た も
の で、 聖 書 の こ と ば そ の も の で す。 お も に、 ま だ 聖 書 を 読 ん だ こ と の な
い 方 の た め に、 あ る い は、 キ リ ス ト へ の 信 仰 の 要 点 を 知 り た い 方 の た め
に読み易くまとめたものです。
聖 書 全 体 は、 イ エ ス・ キ リ ス ト と、 神 の 新 し い 御 国 の 奥 義 を 中 心 と
し て い ま す。 そ れ を 悟 り、 理 解 す る た め に、 子 ど も の よ う に 素 直 な 心 で
読 ん で く だ さ い。 隠 さ れ た 宝 を 探 し 求 め る よ う な 気 持 ち で 神 の こ と ば を
読めば、「あなたは、だれにも教えられる必要はない。」と書いてある聖
書のことばが、必ずあなたの上に実現するでしょう。
「聖書は救われるための知恵を、
私たちに与える書物である。
そのすべては神の霊感によって書かれ、
私たちに、真理を教え、また悪を示し、
私たちを正し、義の道に導くために役立つ。
」
・十六
テモテへの手紙第Ⅱ 三
なお、本書を読み終えたあと、ぜひ聖書そのものを、お読みください。
目
次
悪魔の誘惑 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
罪と死に呪われて ・・・・・・・・・・・
七
八
はじめの人 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 四
エデンの園 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 六
天地創造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 一
種類に従って
二
・・・・・・・・・・・・・・・
種の起源 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 三
第一章 天地万物の創造
ノアと箱船 ・・・・・・・・・・・・・・・・・一三
大洪水 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一五
神の祝福 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一八
第二章 すべてを滅ぼす
永遠なる神 ・・・・・・・・・・・・・・・・・二九
無力な偶像 ・・・・・・・・・・・・・・・・・三一
なぜ悪を続けるのか ・・・・・・・・・二二
悪者の災い ・・・・・・・・・・・・・・・・・二五
第三章 新しい約束
神の慰め
三四
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
よみがえりの朝 ・・・・・・・・・・・・・三
七
メシアはダビデの家系から ・・・六
〇
主の来臨の日 ・・・・・・・・・・・・・・・六三
ダリヨス王のことば ・・・・・・・・・五七
平和の王国 ・・・・・・・・・・・・・・・・・五八
神の救い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・五三
世の終わりのさばき ・・・・・・・・・五五
世の罪を担うメシア ・・・・・・・・・四八
メシアのよみがえり ・・・・・・・・・五〇
「インマヌエル」
四四
・・・・・・・・・・・
公平なさばき主 ・・・・・・・・・・・・・四
六
第四章 メシアの前ぶれ
イエスの誕生 ・・・・・・・・・・・・・・・七二
羊飼いと天使 ・・・・・・・・・・・・・・・七三
神が人となった
六
・・・・・・・・・・・・・
九
ヨセフとマリヤ ・・・・・・・・・・・・・七
〇
第五章 救い主、イエス
実行しなさい ・・・・・・・・・・・・・・・九八
ピリポとナタナエル ・・・・・・・・・八四
弟子になった四人の漁師 ・・・・・八五
イエス、洗礼を受ける ・・・・・・・八
一
試練を受ける ・・・・・・・・・・・・・・・八一
神の小羊 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・八三
神殿での少年イエス ・・・・・・・・・七八
洗礼者ヨハネ ・・・・・・・・・・・・・・・七九
皆殺しにする
七
・・・・・・・
七
エジプトから帰国 ・・・・・・・・・・・七
七
ヘロデ、子どもを
すべてを捨てる人 ・・・・・・・
一一二
イエス、自分の死と
福音のために
第六章 力ある教え、奇跡
伝道、病気を治す ・・・・・・・・・・・八
六
幸いな人 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・八七
東方の学者たち ・・・・・・・・・・・・・七
四
エジプトへ避難 ・・・・・・・・・・・・・七
六
哀れな人 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・八八
愛と憐れみ ・・・・・・・・・・・・・・・・・八九
地の塩、世の光 ・・・・・・・・・・・・・九
〇
神は心を見る ・・・・・・・・・・・・・・・九一
イエスとニコデモ ・・・・・・・・・・・
一二〇
神は世を愛された ・・・・・・・・・・・
一二一
子どもと神の国 ・・・・・・・・・・・・・
一一八
盲人バルテマイ ・・・・・・・・・・・・・
一一九
受け入れる人の報い ・・・・・・・・・
一一六
自分のいのちを失う ・・・・・・・・・
一一七
人を恐れるな ・・・・・・・・・・・・・・・
一一四 平和ではなく剣を ・・・・・・・・・・・
一一六
復活を予告する ・・・・・
一一三
十二弟子の派遣 ・・・・・・・・・・・・・
一一四
天の国と地獄 ・・・・・・・・・・・・・・・
一〇八
金持ちの議員 ・・・・・・・・・・・・・・・
一一一
信仰でいやされた婦人 ・・・・・・・
一〇六
ヤイロの娘、生き返る ・・・・・・・
一〇七
嵐を静める ・・・・・・・・・・・・・・・・・
一〇四
湖畔でのいやし ・・・・・・・・・・・・・
一〇五
罪を赦す権威 ・・・・・・・・・・・・・・・
一〇一
私の母、私の兄弟 ・・・・・・・・・・・
一〇三
祈るときには ・・・・・・・・・・・・・・・九二
天に宝を ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・九四
神の国を求めよ
九
・・・・・・・・・・・・・
四
狭い門より入りなさい ・・・・・・・九
六
にせ者に用心しなさい ・・・・・・・九
七
にせ信者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・九七
御子は天から来た方 ・・・・・・・・・
一二二
「先生」と呼ばれるな
一二七
・・・・・・・
宗教の指導者たちを批判 ・・・・・
一二八
人々の言伝え ・・・・・・・・・・・・・・・
一二五
人を汚すもの ・・・・・・・・・・・・・・・
一二六
第七章 拒否される
イエスを殺す計画 ・・・・・・・・・・・
一五一
エルサレムに迎えられる ・・・・・
一五二
生き返らせる ・・・・・
一五〇
イエス、ラザロを
ユダ、イエスを裏切る
一五四
・・・・・・・
イエスを信じない者たち ・・・・・
一五四
死 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一七四
埋 葬 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一七五
番 兵 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一七六
十字架 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一七二
ひとりの犯罪人 ・・・・・・・・・・・・・
一七三
ピラトの努力 ・・・・・・・・・・・・・・・
一六九
死 刑 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一七一
ペテロの否定 ・・・・・・・・・・・・・・・
一六六
ピラトの審問 ・・・・・・・・・・・・・・・
一六七
ペテロのつまずきを預言
一六二
・・・・・
捕 縛 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一六三
最高議会の審問 ・・・・・・・・・・・・・
一六五
聖霊を与える約束 ・・・・・・・・・・・
一六〇
世の憎しみと迫害 ・・・・・・・・・・・
一六一
最後の晩餐 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
一五七
道、真理、いのち ・・・・・・・・・・・
一五九
第八章 人類の罪を背負って
私の教えは
一三八
自分のものではない ・・・・・・・
この人はメシアか ・・・・・・・・・・・
一三九
指導者たちの不信仰 ・・・・・・・・・
一四〇
パリサイ派の人と
イエスに対するたくらみ
一三〇 ・・・・・
金持ちと貧しい人 ・・・・・・・・・・・
一三二
一三四
取税人のたとえ
・・・・・
子どものようにへりくだれ ・・・
一三五
イエスの兄弟たちの不信仰
一三六
・・・
仮庵祭でのイエス ・・・・・・・・・・・
一三七
世の終わりのしるし
一四一
・・・・・・・・・
大きな苦難 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
一四三
人の子の再臨 ・・・・・・・・・・・・・・・
一四四
すべての民族をさばく ・・・・・・・
一四五
ベタニアのラザロの死 ・・・・・・・
一四七
イエス、涙を流す ・・・・・・・・・・・
一四八
新しいエルサレム ・・・・・・・・・・・
二〇七
いのちの川 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
二〇八
時は近い
二〇九
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
主イエスよ、来てください ・・・
二一〇
終わりの時代の人々の有様 ・・・
二二四
耐え忍びなさい ・・・・・・・・・・・・・
二二五
ある人は死なない
二二一
・・・・・・・・・・・
にせキリスト信者の出現 ・・・・・
二二三
にせキリストの出現
二一八
・・・・・・・・・
新しいからだでよみがえる ・・・
二二〇
永遠への希望 ・・・・・・・・・・・・・・・
二一六
神の報い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二一七
終わりの時代 ・・・・・・・・・・・・・・・
二一四
主の日は突然来る ・・・・・・・・・・・
二一五
第十一章 世の終わり、希望
弟子たちへの出現 ・・・・・・・・・・・
一八四
全世界へ出て行きなさい ・・・・・
一八五
幸いなのは見ずに信じる人 ・・・
一八六
昇 天 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一八七
番兵と祭司長たち
一八一
・・・・・・・・・・・
エマオへの道 ・・・・・・・・・・・・・・・
一八二
復活の朝 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一七九
婦人たちへの出現 ・・・・・・・・・・・
一八〇
第九章 よみがえり
時は迫っている ・・・・・・・・・・・・・
一九二
人の子の出現 ・・・・・・・・・・・・・・・
一九三
正しい人はいない ・・・・・・・・・・・
二三二
信仰による義 ・・・・・・・・・・・・・・・
二三三
人の罪 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二三〇
神を甘くみるな ・・・・・・・・・・・・・
二三一
福音の力 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二二七
罪の根源 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二二九
第十二章 キリストの救い
天使のラッパ ・・・・・・・・・・・・・・・
一九九
第五のラッパ ・・・・・・・・・・・・・・・
二〇一
第六のラッパ ・・・・・・・・・・・・・・・
二〇二
第七のラッパ ・・・・・・・・・・・・・・・
二〇三
最後のさばき ・・・・・・・・・・・・・・・
二〇五
すべてを新たに ・・・・・・・・・・・・・
二〇六
天変地異 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一九七
白い衣を着た大群衆 ・・・・・・・・・
一九八
勝利を得る者には ・・・・・・・・・・・
一九四
天の王座 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一九六
第十章 時は迫っている
神の恩恵 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二三四
欲を捨てなさい ・・・・・・・・・・・・・
二三五
聖霊の導き ・・・・・・・・・・・・・・・・・
二三六
希 望 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二三八
将来の栄光 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
二三九
神の愛の絶対 ・・・・・・・・・・・・・・・
二三九
愛は永遠に ・・・・・・・・・・・・・・・・
二・五八
愛は神から来る ・・・・・・・・・・・・・
二五九
恐れることはない ・・・・・・・・・・・
二六〇
キリスト、神の愛 ・・・・・・・・・・・
二六一
この世を愛するな ・・・・・・・・・・・
二六二
この世に打ち勝つ ・・・・・・・・・・・
二六三
第十五章 知恵の泉
キリストの模範
二四六
・・・・・・・・・・・・・
「古い自分」を捨てなさい ・・・
二四七
悪に勝ちなさい ・・・・・・・・・・・・・
二四四
キリストはすべての上 ・・・・・・・
二四五
神のわざ、神のことば
二九二
・・・・・・・
私の牧者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二九四
悔い改めの祈り ・・・・・・・・・・・・・
二九六
あけぼのの賛歌 ・・・・・・・・・・・・・
二九九
御ことばを慕う ・・・・・・・・・・・・・
三〇二
若い人の祈り ・・・・・・・・・・・・・・・
三〇四
全知全能の神
三〇五
・・・・・・・・・・・・・・・
王なる神への賛美 ・・・・・・・・・・・
三一〇
三一四
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
聖書との対照 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
三一六
新約聖書関係地図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
三二〇
聖書について
人の道 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二八七
神を思う ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二八九
第十六章 詩と祈り
新たな人、家庭 ・・・・・・・・・・・・・
二四八
見えないものが永遠 ・・・・・・・・・
二四九
天の国へのあこがれ ・・・・・・・・・
二五〇
信仰に生きる ・・・・・・・・・・・・・・・
二五一
キリストのために生きる
二五二
・・・・・
信者はキリストの使者 ・・・・・・・
二五二
真の礼拝 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二四三
善を行いなさい ・・・・・・・・・・・・・
二四四
第十三章 主イエスを信じる者へ
イエスのことば ・・・・・・・・・・・・
二五五
二五六
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
愛
第十四章 愛
天にあるものも、地にあるものも・・・・万物はすべてキリストによって造られた。
アンドロメダ星雲
コロサイの信者への手紙 1 : 16
かみ
て ん
てん
ち
ち
ば ん ぶ つ
そうぞう
そ う ぞ う
第一章 天地万物の創造
てん ち そうぞう
天地創造
ち
かたち
こんとん
やみ
おお
はじめに、神は天と地とを創造された。
かみ
い
かみ
ひかり
み
よ
かみ
れい
みず
うえ
うご
ひかり
やみ
地 は 形 な く、 混 沌 と し て い て、 闇 で 覆 わ れ、 神 の 霊 が 水 の 上 を 動 い て
ひかり
いた。神は言われた。
ひかり
「光あれ。」
ひかり
ひる
な
やみ
よる
な
ゆう
あさ
す る と、 光 が あ っ た。 神 は 光 を 見 て、 良 し と さ れ た。 そ し て 光 と 闇 を
わ
だい
にち
分 け、 光 を「 昼 」 と 名 づ け、 闇 を「 夜 」 と 名 づ け ら れ た。 夕 と な り、 朝
かみ
い
がきた。第一日である。
神は言われた。
1
くうかん
くうかん
かみ
みず
つく
なか
した
みず
みず
うえ
わ
みず
「空間よ。水の中にあれ。水と水を分けよ。」
かみ
くうかん
そら
な
わ
ゆう
あさ
だい
神 は 空 間 を 造 り、 そ の 下 と そ の 上 と に 水 を 分 け ら れ た。 そ の よ う に
にち
い
した
みず
ところ
あつ
かわ
かわ
ち
ち
あらわ
りく
な
みず
あつ
な っ た。 神 は 空 間 を「 空 」 と 名 づ け ら れ た。 夕 と な り、 朝 が き た。 第
かみ
二日である。
そら
神は言われた。
かみ
「空の下の水は一つ所に集まれ。乾いた地が現れよ。」
ところ
うみ
な
は
かみ
み
よ
たね
くさ
たね
す る と 、そ の よ う に な っ た 。神 は 乾 いた 地 を「 陸」と 名 づ け、水の 集 ま っ
しょくぶつ
しゅるい
た所を「海」と名づけられた。神はこれを見て、良しとされた。
しゅるい
い
種類にしたがって
かみ
ち
神は言われた。
み
しょくぶつ
は
き
ち
は
しゅるい
たね
くさ
しゅるい
「 地 は 植 物 を 生 え さ せ よ。 そ の 種 類 に し た が っ て 種 の あ る 草 と、 種 の
ある実をつける木とを、地に生えさせよ。」
ち
すると、そのようになった。
地 は 植 物 を 生 え さ せ、 そ の 種 類 に し た が っ て 種 の あ る 草 と、 そ の 種 類
2
い
たね
ゆう
ぶったい
み
あさ
き
よる
は
だい
わ
にち
ひ
かみ
とし
く
ぎ
み
き せつ
よ
に し た が っ て 種 の あ る 実 を つ け る 木 を 生 え さ せ た。 神 は こ れ を 見 て 、 良
かみ
ひか
ひる
しとされた。夕となり、朝がきた。第三日である。
てん
神は言われた。
てん
ひか
ぶったい
ち
おお
て
ひか
もの
つく
おお
「 天 に 光 る 物 体 が あ っ て、 昼 と 夜 を 分 け よ。 日 や 年 の 区 切 り、 季 節 の
かみ
しるしとなれ。天に光る物体があって、地を照らせ。」
ひる
し はい
ちい
ほう
よる
し はい
ほしぼし
つく
す る と、 そ の よ う に な っ た。 神 は 二 つ の 大 き な 光 る 物 を 造 り、 大 き な
ほう
かみ
てん
お
ち
て
ひる
よる
し はい
方 に 昼 を 支 配 さ せ、 小 さ な 方 に 夜 を 支 配 さ せ ら れ た。 ま た 星 々 も 造 ら れ
ひかり
やみ
く べつ
かみ
み
よ
ゆう
た。 神 は そ れ ら を 天 に 置 き、 地 を 照 ら さ せ、 ま た、 昼 と 夜 を 支 配 さ せ、
あさ
だい
もの
にち
み
とり
ち
うえ
そら
と
光 と 闇 を 区 別 さ せ ら れ た。 神 は こ れ を 見 て、 良 し と さ れ た。 夕 と な り、
き げん
い
む
朝がきた。第四日である。
しゅ
い
種の起源
かみ
みず
神は言われた。
かみ
おお
きょじゅう
みず
むら
い
もの
しゅるい
「水が生き物の群れで満ち、鳥は地の上、空を飛べ。」
神 は 大 き な 巨 獣、 水 に 群 が る 生 き 物 を そ の 種 類 に し た が っ て、 ま た、
3
とり
ふ
あさ
しゅるい
うみ
しゅくふく
み
だい
にち
そうぞう
い
とり
ち
ふ
かみ
か ちく
は
み
よ
ち
す べ て の 鳥 を そ の 種 類 に し た が っ て 創 造 さ れ た。 神 は こ れ を 見 て、 良 し
う
とされた。そしてそれらを祝福して言われた。
ゆう
い
もの
しょう
「生めよ、増えよ、海に満ちよ。鳥は地に増えよ。」
かみ
しゅるい
い
夕となり、朝がきた。第五日である。
ち
神は言われた。
けもの
しゅるい
しょう
ち
けもの
か ちく
ち
は
「 地 は、 そ の 種 類 に し た が っ て 生 き 物 を 生 ぜ よ。 家 畜、 這 う も の、 地
かみ
の獣をその種類にしたがって生ぜよ。」
ひと
そうぞう
かみ
み
ひと
つく
よ
うみ
さかな
す る と、 そ の よ う に な っ た。 神 は 地 の 獣、 家 畜、 地 を 這 う も の を そ
しゅるい
に
われわれ
の種類にしたがって創造された。神はこれを見て、良しとされた。
い
はじめの人
かみ
われわれ
神は言われた。
とり
か ちく
ち
けもの
ち
は
い
もの
し はい
「 我々 に 似る よ う に、我 々 に か た ど っ て、人を 造ろ う。 そ し て海の 魚、
そら
かみ
じ ぶん
ひと
そうぞう
空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべての生き物を支配させよう。」
神はご自分にかたどって人を創造された。
4
かみ
おとこ
おんな
そうぞう
そうぞう
神にかたどって創造された。
う
ふ
ち
み
男と女を創造された。
かみ
ひと
しゅくふく
い
神は人を祝福して言われた。
うご
い
い
もの
し はい
や さい
か
じつ
したが
うみ
がた
さかな
あた
そら
とり
ち
「 生 め よ、 増 え よ、 地 に 満 ち て そ れ を 従 わ せ よ。 海 の 魚、 空 の 鳥、 地
かみ
は
こくもつ
に動く生き物すべてを支配せよ。」
ぜん ち
神は言われた。
けもの
がた
そら
しょくもつ
とり
ち
うご
い
もの
かくしゅ
あおくさ
た
「 全 地 に 生 え る 穀 物 と 野 菜、 果 実 を、 す べ て あ な た 方 に 与 え よ う。 そ
ち
れがあなた方の食物となる。
かみ
そうぞう
らん
地の獣、 空の鳥、 地に動くすべての生き物には各種の青草を食べさせ
よう。」
ひじょう
よ
ゆう
あさ
だい
にち
すると、そのようになった。神は創造されたすべてのものをご覧になっ
てん ち ば ん ぶ つ
だい
にち
かみ
じ ぶん
かんせい
た。それは非常に良かった。夕となり、朝がきた。第六日である。
かみ
だい
にち
しゅくふく
せいべつ
ひ
天 地 万 物 は で き あ が っ た。 第 七 日 に、 神 は ご 自 分 の わ ざ を 完 成 さ れ、
あんそく
そうぞう
お
やす
安息なさった。神はその第七日を祝福して、これを聖別された。この日に、
そのすべての創造のわざを終わって休まれたからである。
5
*主(しゅ)天の神の御名。ヘブ
ライ語で「ヤーウェ」。
その
エデンの園
てん ち そうぞう
かみ
てん
ち
ゆ らい
つく
これが天地創造の由来である。
* しゅ
ちじょう
あめ
ふ
ちじょう
き
つち
くさ
は
たがや
ひと
主 な る 神 が 天 と 地 を 造 ら れ た と き、 地 上 に は ま だ 木 も、 草 も 生 え て い
みず
ち
わ
で
つち
ぜんめん
うるお
かみ
な か っ た。 地 上 に 雨 を 降 ら せ な か っ た か ら で あ る。 ま た 土 を 耕 す 人 も い
つち
ひと
かたち
はな
いき
ふ
なかった。しかし、水が地から湧き出て、土の全面を潤していた。神は、
ひと
い
かみ
ひがし
その
もう
ひと
土 の ち り で 人 を 形 づ く り、 そ の 鼻 に い の ち の 息 を 吹 き こ ま れ た。 こ う し
お
み
うつく
た
き
は
て 人 は 生 き る も の と な っ た。 神 は、 エ デ ン の 東 に 園 を 設 け、 人 を そ こ に
その
ちゅうおう
き
ぜんあく
し
き
は
置かれた。また、見て美しく、食べるによいすべての木をそこに生えさせ、
しゅ
かみ
ひと
その
す
ひと
かん り
園の中央には、「いのちの木」と「善悪を知る木」を生えさせられた。
かみ
ひと
めい
き
い
じ ゆう
と
た
ぜんあく
し
主 な る 神 は 人 を エ デ ン の 園 に 住 ま わ せ、 人 が そ こ を 管 理 す る よ う に さ
その
れた。神は人に命じて言われた。
き
た
た
かなら
し
「 園 の す べ て の 木 か ら 自 由 に 取 っ て 食 べ な さ い 。 た だ し、『 善 悪 を 知
る 木 』 か ら は食 べ て は な ら な い 。 そ れ を食 べ る と あ なた は 必ず死 ぬ。」
6
*蛇 聖書の中で悪魔(サタン)
はよく「蛇」と呼ばれる。
あく ま
ゆうわく
悪魔の誘惑
しゅ
へび
かみ
おんな
その
つく
はな
なか
い
もの
き
み
* へび
た
もっと
がしこ
い
さ て、 主 な る 神 が 造 ら れ た 生 き 物 の う ち で、 蛇 が 最 も ず る 賢 い も の
であった。
かみ
あるとき蛇は女に話しかけた。
へび
こた
か じつ
た
ゆる
「神さまが、『園の中にあるすべての木の実を食べてはいけない』と言
おんな
その
き
われたのは、ほんとうでしょうか。」
わたし
女は蛇に答えた。
ちゅうおう
は
き
か じつ
かみ
た
「 私 た ち に は 園 の 木 の 果 実 を 食 べ る こ と が 許 さ れ て い ま す。 で も、
その
ふ
し
『食べてはいけない、
園の中央に生えている木の果実について神さまは、
へび
おんな
い
た
め
ひら
触 れ て も い け な い 。 死 ぬ こ と の な い よ う に 』 と お っ し ゃ い ま し た 。」
ぜったい し
蛇は女に言った。
かみ
ぜんあく
し
もの
かみ
「 絶 対 死 ぬ と い う わ け で は な い。 そ れ を 食 べ る と、 目 が 開 け、 あ な
ぞん
き
み
た
み
うつく
たたちが神さまのようになり、善悪を知る者となることを神さまはご
おんな
存 じ な の だ 。」
す る と女 は 、な る ほ ど そ の木 の 実が 食べ て も お い し く、見 て も美 しく 、
7
*アダム ヘブライ語で「アダム」
は人、「アダマ」は土の意。
かしこ
と
た
た
ね
う
おも
おとこ
だ
た
けっきょく
おとこ
み
賢 く な る た め に 食 べ る 値 打 ち が あ る と 思 う よ う に な り、 結 局 そ の 実 を
し
のろ
かぜ
ふ
*
つま
しゅ
かみ
その
なか
取っ て 食 べ た 。そ し て 、い っ し ょ に い た男 に も さ し出 す と 、男 も食 べ た。
つみ
ひ
罪と死に呪われて
あゆ
き
ふた り
かみ
さ
その
き
あいだ
かく
そ の 日、 そ よ 風 の 吹 く こ ろ、 ア ダ ム と そ の 妻 は、 主 な る 神 が 園 の 中
かみ
よ
はだか
おそ
を 歩 ま れ る の を 聞 い た。 そ こ で 二 人 は、 神 を 避 け て、 園 の 木 の 間 に 隠
き
じ ぶん
れた。すると、神はアダムを呼ばれた。
その
「 あなたはどこにいるのか。」
かれ
こた
彼は答 えた。
かみ
い
おし
た
めい
「 あ な た が 園 に い る の を 聞 き 、 自 分 が 裸 な の で 、 恐 ろ し く な り 、
かく
隠 れ ま し た 。」
はだか
神は言われた。
こた
「 おまえが裸であることをだれが教えたのか。食べてはいけないと命
き
た
じた木から食べたのか。」
アダムは答えた。
8
かみ
おんな
い
わたし
わたし
た
おんな
き
と
あた
「 あなたが私といっしょにしてくださった女が、その木から取って与
た
えたので、食べてしまいました。」
なん
神は女に言われた。
へび
「 何ということをしたのか。」
おんな こた
女は答えた。
こ
う
おお
くる
「 あの蛇が私をだましたので、食べてしまいました。」
かみ
おんな
い
神は女に言われた。
こ
う
くる
「 おまえが子を産むとき、大いに苦しませる。
かれ
し はい
お
まえは、子を産むのに苦しまねばならない。
おっと した
そ
れでも、おまえは夫を慕い、
つま
のろ
き
彼
はおまえを支配する。」
かみ
い
神はアダムに言われた。
つち
「 おまえは妻のことばを聞いて、
と
た
めい
き
た
取
って食べるなと命じた木から食べた。
そ
れで、土は呪われたものとなった、おまえのゆえに。
いっしょう くる
しょく
え
お
まえは、一生 苦
しんで食を得なければならない。
9
*エバ ヘブライ語で「命あるも
のの母」の意。
つち
いばら
お
ま え の た め に 、
かお
あせ
は
なが
かて
え
土
は茨とあざみを生えさせる。
の
しょくぶつ
た
お
まえは、野の植物を食べる。
つち
と
お
まえは顔に汗を流して糧を得る、
つち
土
にもどるときまで。
*
な
かのじょ
お
まえは、土から取られたから、
かえ
ち
りにすぎないおまえは、ちりに返る。」
つま
しゅ
かみ
かれ
つま
い
かわ
ころも
つく
はは
き
アダムはその 妻をエ バと名 づけた。彼 女がすべて生 きたものの母 と
な っ た か ら で あ る。 主 な る 神 は、 ア ダ ム と 彼 の 妻 に 皮 の 衣 を 作 り、 着
せてくださった。
10
エリコ付近の荒地
「おまえは、土から取られたから、ちりにすぎないおまえは、ちりに返る。」
11
創世記 3:19
コラジンの廃墟
「私は人類を滅ぼそうと決心した。人のゆえに地は不法に満ちている。」
創世記 6:13
12
ひと
ふ
はじ
ほ ろ
第二章 すべてを滅ぼす
はこぶね
ちじょう
ノアと箱船
はか
わる
かみ
ひと
あく
らん
ぞうだい
ひと
かみ
さ て、 地 上 に 人 が 増 え 始 め た。 し か し、 神 は 人 の 悪 が 増 大 し、 人 の
おも
ひと
つく
こうかい
こころ
いた
かみ
い
思い 計 る こ と す べ て が 、悪 い こと ばか りで ある のを ご覧に な った 。神 は 、
わたし
そうぞう
ひとびと
ちじょう
け
さ
にんげん
人を造ったことを後悔し、心を痛められた。神は言われた。
か ちく
は
とり
わたし
つく
こうかい
「私が創造したこの人々を地上から消し去ろう。人間だけではなく、
せ だい
なか
かみ
したが
ただ
ひと
かれ
家畜、這うもの、鳥のすべてを。私は、これらを造ったことを後悔す
る 。」
しゅ
こう い
え
しゅ
みち
あゆ
にん
むす こ
し か し 、 そ の 世代の 中で、 ノ ア は 神に 従う 正し い 人で あ っ た の で、彼
は主の好意を得た。ノアは主の道に歩んだ。ノアには三人の息子、セ ム 、
13
* キ ュ ビ ト 一 キ ュ ビ ト は 約
四十五センチ。したがって、箱舟
はおよそ長さ一三五メートル、幅
二 二 ・五 メ ー ト ル 、 高 さ 一 三 ・五
メートル。
よ
かみ
まえ
だ らく
ハム、ヤペテがいた。
い
ひと
ほろ
ちじょう
ふ ほう
だ らく
み
せいかつ
ひと
かみ
ち
ち
ふ ほう
らん
み
この世は神の前で堕落し、不法に満ちていた。神は地をご覧になった。
み
かみ
じんるい
けっしん
見よ、すべての人は地上で堕落した生活をしていた。
わたし
神はノアに言われた。
ちじょう
かれ
ほろ
はこぶね
つく
はこぶね
へ
や
いく
つく
「私は人類を滅ぼそうと決心した。人のゆえに地は不法に満ちている。
わたし
き
私は地上から彼らを滅ぼしつくす。
うちがわ
そとがわ
き
ぬ
つぎ
つく
はこぶね
あ な た は い と す ぎ の 木 で 箱 船 を 造 り な さ い。 箱 船 に は 部 屋 を 幾 つ も 造
なが
*
はば
たか
り、 内 側 も 外 側 も 木 の や に で 塗 り な さ い。 次 の よ う に 造 り な さ い。 箱 船
や
ね
つく
そくめん
と ぐち
つく
かい
かい
かい
つく
の 長 さ を 三 百 キ ュ ビ ト、 幅 を 五 十 キ ュ ビ ト、 高 さ を 三 十 キ ュ ビ ト に し、
ちじょう
だいこうずい
ちじょう
ほろ
屋 根 を 造 り、 ま た 側 面 に は 戸 口 を 造 り、 一 階 と 二 階 と 三 階 に そ れ を 造 り
わたし
なさい。
わたし
けいやく
むす
さい し
よめ
私 は こ れ か ら 地 上 に 大 洪 水 を も た ら し、 地 上 の す べ て の も の を 滅 ぼ
はこぶね
はい
い
もの
はこぶね
つ
はい
す。ただし、私はあなたと契約を結ぶ。あなたは妻子や嫁たちといっしょ
い
のこ
とり
か ちく
ち
は
に 箱 船 に 入 り な さ い。 ま た、 す べ て の 生 き 物 を 二 つ ず つ 箱 船 に 連 れ て 入
しゅるい
おす
めす
はい
さら
り、 あ な た と い っ し ょ に 生 き 残 る よ う に し な さ い。 鳥、 家 畜、 地 を 這 う
もの、すべての種類の雄と雌があなたといっしょに入れるように。更に、
14
かくしゅ
た
もの
かみ
あつ
かみ
い
めい
どうぶつ
はい
しょくりょう
おこな
せ だい
各種の食べ物を集め、あなたと動物たちの食糧としなさい。」
しゅ
はこぶね
ノアは、すべて神が命じられたとおりに行った。
か ぞく ぜ ん い ん
主なる神はノアに言われた。
わたし
したが
ひと
なの か
わたし
にち
や
ち
なか
あめ
ふ
「 さ あ、 あ な た と 家 族 全 員 で 箱 船 に 入 り な さ い。 こ の 世 代 の 中 で あ な
わたし
つく
い
もの
ち
おもて
け
さ
た だ け が 私 に 従 う 人 だ。 あ と 七 日 た つ と、 私 は 四 十 日 四 十 夜 地 に 雨 を 降
こうずい
のが
さい し
よめ
はこぶね
はい
らせ、私が造ったすべての生き物を地の面から消し去るからだ。」
とり
ち
は
はこぶね
き
ノアは洪水を逃れるため、妻子や嫁たちといっしょに箱船に入った。
どうぶつ
はこぶね
はい
かみ
めい
おす
めす
動物も、鳥も、地を這うものもすべて、二つずつ箱船のノアのもとに来
かみ
うし
ちじょう
と
お
と
だい
つき
にち
ひ
て箱船に入った。それは神がノアに命じられたとおりに、雄と雌であっ
こうずい
た。そして神はノアの後ろで戸を閉ざされた。
だいこうずい
す
大洪水
なの か
しんえん
みなもと
やぶ
てん
すいもん
ひら
あめ
にち
七 日 が 過 ぎ て、 洪 水 が 地 上 に 起 こ っ た。 第 二 の 月 の 十 七 日、 こ の 日、
おお
や
ふ
つづ
みず
し だい
ふ
はこぶね
お
あ
はこぶね
だい
大いなる深淵の源がことごとく破れ、天の水門が開かれた。雨は四十日
四 十 夜 降 り 続 い た。 水 は 次 第 に 増 え、 箱 船 を 押 し 上 げ た の で、 箱 船 は 大
15
ち
ただよ
はな
みず
う
みず
くわ
いきお
せいりょく
ま
てん
おお
した
たか
やま
はこぶね
おお
すいめん
地 を 離 れ て 浮 か ん だ。 水 は 勢 い を 増 し、 大 い に み な ぎ り、 箱 船 は 水 面 を
みず
さら
い
うえ
もの
とり
たっ
か ちく
やまやま
けもの
かんぜん
ち
おお
ぐんせい
にんげん
漂 っ た。 水 は ま す ま す 勢 力 を 加 え、 天 の 下 の 高 い 山 は す べ て 覆 わ れ た。
ちじょう
水は更にその上十五キュビトに達し、山々を完全に覆った。
いき た
だい ち
さ
かれ
地 上 の 生 き 物 は す べ て、 鳥 も 家 畜 も 獣 も 地 に 群 生 す る も の も 人 間 も、
ぜん ぶ
はこぶね
い
のこ
にち
あいだ
みず
いきお
うしな
全部、息絶えた。それらは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼といっしょ
はこぶね
けもの
い
もの
わす
に 箱 船 に い た も の だ け が 生 き 残 っ た。 百 五 十 日 の 間、 水 は 勢 い を 失 わ な
かみ
かった。
ち
うえ
かぜ
ふ
みず
へ
はじ
神 は、 ノ ア と 箱 船 に い た す べ て の 獣 と す べ て の 生 き 物 を お 忘 れ に な
しんえん
みなもと
てん
すいもん
と
てん
おおあめ
みず
ら な か っ た 。 そ こ で 、地 の 上 に 風 を 吹 か せ ら れ る と 、水 が 減 り 始 め た 。
ちじょう
ひ
い
にち
のち
みず
へ
はこぶね
だい
ま た 、深 淵 の 源 と 天 の 水 門 が 閉 じ ら れ た の で 、天 か ら の 大 雨 は や み 、水
つき
にち
やま
うえ
と
みず
へ
つづ
だい
は地上から引いて行った。百五十日の後には水が減って、箱船は第七の
つき
だい
つき
ついたち
はこぶね
まど
やまやま
ひら
いただき
あらわ
からす
はな
からす
と
た
月の十七日にはアララテ山の上に止まった。水はますます減り続け、第
にち
十の月になり、第十の月の一日には山々の頂が現れた。
ちじょう
みず
かわ
い
き
つぎ
四 十 日 た っ て、 ノ ア は 箱 船 の 窓 を 開 き、 烏 を 放 し た。 烏 は 飛 び 立 っ
はと
はな
ち
みず
ひ
たし
はと
た が、 地 上 の 水 が 乾 い て い な か っ た の で、 行 っ た り 来 た り し た。 次 に、
ノ ア は 鳩 を 放 し て 、地 の 水 が 引 い た か ど う か を 確 か め よ う と し た が 、鳩
16
ち
と
ぜんめん
ところ
み
みず
ま
おお
ふたた
はと
はこぶね
はこぶね
はな
かえ
はと
ゆうがた
き
は 留 ま る 所 が 見 つ か ら な か っ た の で、 箱 船 の ノ ア の も と に 帰 っ て 来 た。
なの か
地の全 面 が ま だ 水 に 覆 わ れ て い た か ら で あ る 。
かれ
かえ
き
み
はと
わか ば
それから七日待って、ノアは再び鳩を箱船から放した。鳩は夕方になっ
みず
ちじょう
ひ
し
さら
なの か
ま
て 彼 の も と に 帰 っ て 来 た。 見 よ、 鳩 は く ち ば し に オ リ ー ブ の 若 葉 を く わ
はと
はな
はと
かえ
こ
え て い た! ノ ア は 水 が 地 上 か ら 引 い た こ と を 知 っ た。 更 に 七 日 待 っ て、
さいしょ
つき
ついたち
ちじょう
みず
かわ
はこぶね
おお
と
はず
また鳩を放したが、鳩はもうノアのもとに帰って来なかった。
そと
なが
み
ち
おもて
かわ
だい
つき
にち
最 初 の 月 の 一 日 に、 地 上 の 水 は 乾 い た。 箱 船 の 覆 い を 取 り 外 し て、 ノ
ち
かんぜん
い
かわ
みな
はこぶね
で
アは外を眺めた。見ると地の面は乾いていた。第二の月の二十七日になっ
かみ
て、地は完全に乾いていた。
か ぞく
神はノアに言われた。
き
かくしゅ
どうぶつ
とり
か ちく
ち
は
つ
だ
「 さ あ、 あ な た と 家 族 は、 皆 い っ し ょ に 箱 船 か ら 出 な さ い。 あ な た の
ち
むら
ち
うえ
う
ふ
も と に 来 た 各 種 の 動 物、 鳥、 家 畜、 地 を 這 う も の、 す べ て を 連 れ 出 し な
むす こ
つま
よめ
そと
で
さい。そして、地に群がり、地の上で生み、増えるようにしなさい。」
は
とり
ち
むら
みな
しゅるい
はこぶね
そ こ で、 ノ ア は 息 子 や 妻 や 嫁 と い っ し ょ に 外 へ 出 た。 す べ て の、
けもの
で
獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、皆、その種類にしたがって箱船
から出た。
17
かみ
しゅくふく
しゅ
神の祝福
しゅ
ささ
けっ
もの
よろこ
に
ど
さいだん
い
ひと
きず
うえ
だい ち
ぜんしょう
のろ
ひと
こころ
ノアは、主のために祭壇を築き、その上で全焼のいけにえをささげた。
わたし
主は献げ物を喜ばれ、言われた。
おさな
わる
わたし
たび
に
ど
「 私 は 決 し て 二 度 と、 人 の ゆ え に 大 地 を 呪 う こ と は し な い。 人 が 心 に
おも
い
もの
つづ
ふ
ほろ
ち
たね ま
み
かり い
ち
けもの
そら
とり
ち
は
うみ
思 う こ と は、 幼 い と き か ら 悪 い か ら だ。 私 は、 こ の 度 し た よ う に 二 度 と
ち
よる
生き物をすべて滅ぼすことはしない。
ひる
地の続くかぎり、種蒔きも刈入れも
さむ
あつ
なつ
ふゆ
寒さも暑さも、夏も冬も
う
昼も夜も、なくなることはない。」
かみ
かれ
むす こ
しゅくふく
い
また、神はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。
さかな
がた
まえ
おそ
わたし
がた
「 生 め よ、 増 え よ、 地 に 満 ち よ。 地 の 獣、 空 の 鳥、 地 に 這 う も の、 海
て
がた
のち
し そん
けいやく
むす
の 魚 す べ て は、 あ な た 方 の 前 に 恐 れ お の の く。 私 は こ れ ら を あ な た 方 の
わたし
手にゆだねる。
はこぶね
で
どうぶつ
けいやく
むす
に
ど
こうずい
私 は、 あ な た 方 と、 そ し て 後 の 子 孫 と、 契 約 を 結 ぶ。 ま た、 あ な た
と箱船から出たすべての動物と契約を結ぶ。それは、二度と洪水によっ
18
い
けっ
もの
くも
ぜんめつ
なか
にじ
お
わたし
こうずい
だい ち
あいだ
ち
ほろ
わたし
て 生 き 物 が 全 滅 す る こ と は な く、 ま た、 洪 水 に よ っ て 地 を 滅 ぼ す こ と
わたし
は決してないと。
うえ
くも
お
にじ
あらわ
わたし
けいやく
おも
19
私 は 雲 の 中 に 虹 を 置 く。 そ れ は 私 と 大 地 と の 間 の し る し と な る。 私 が
ち
いのちの水を飲みたい人は、
それをただでいただきなさい。
ヨハネの黙示録 22:17
地の上に雲を起こすとき、虹が現れ、私はこの契約を思うのである。」
ピリポ・カイザリヤ バニアス の滝
「ああ、罪を犯す人々、罪深い民、 ・・・・なぜ、おまえたちは反逆を重ねるのか。」
イザヤ書 1:4 ,5
20
のち
あたら
なが い
や く そ く
し
第三章 新しい約束
こうずい
う
そだ
ふ
ご
ちじょう
にんげん
ふたた
おお
だ
洪 水 の 後、 長 生 き し た ノ ア は 死 に、 そ の 後 も 地 上 に は 再 び 多 く の
にんげん
らく
しゅうきょう
ぐうぞう
だ
こうずい
すう
ねん ご
人 間 が 生 ま れ 育 ち、 増 え て い き ま し た。 し か し、 人 間 は ま た も や 堕
ちじょう
つみ
み
つみぶか
あんこく
にんげん
ばっ
せ かい
よ げんしゃ
けいこく
落し、いろいろな宗教や偶像をつくり出しました。洪水の数百年後、
かみ
地上はすでに罪に満ちた、暗黒の世界になっていました。
ひとびと
く
あらた
かみ
こえ
つた
よ げんしゃ
にく
そ こ で 神 は、 罪 深 い 人 間 を 罰 す る と 預 言 者 を と お し て 警 告 さ れ ま
はくがい
ころ
すく
し た。 人 々 に、 悔 い 改 め る よ う 神 の 声 を 伝 え た 預 言 者 た ち は、 憎 ま
にんげん
あい
かみ
じ だい
よ げんしゃ
せ かい
おく
つづ
れ、迫害され、殺されたことも少なくはありませんでした。しかし、
人 間 を 愛 し て お ら れ る 神 は、 あ ら ゆ る 時 代 に 預 言 者 を 世 界 に 送 り 続
けられたのです。
21
*イザヤ 紀元前七六〇~六九八
年ころ。預言者。詩人。迫害さ
れ、最後にはのこぎりで二つに切
られて死んだという。
**幻 神の霊感を受けた人に示
される異象。この世に存在しない
ものや、異常な現象をとおして与
えられる神の啓示。
よ げん
イザヤの預言より
こ *
かみ
おう
けい じ
アモツの子イザヤが神から啓示されたことば。
み
**
まぼろし
ち せい
こ れ ら は ユ ダ ヤ の 王、 ウ ジ ヤ、 ヨ タ ム、 ア ハ ズ、 ヒ ゼ キ ヤ の治 世 の こ
あく
つづ
ろに見た幻である。
き
ち
みみ
かたむ
なぜ、悪を続けるのか。
てん
しゅ
かみ
かた
天よ、聞け。地よ、耳を傾けよ。
こ
わたし
やしな
そだ
主なる神が語られるからだ。
かれ
わたし
さか
「子どもたちは私が養い育てた。
うし
じ ぶん
か
ぬし
し
しかし、彼らは私に逆らった。
しゅじん
かい ば おけ
し
牛は自分の飼い主を知り、
ひと
し
ろばは主人の飼葉桶を知っている。
たみ
さと
しかし、人は知らず、
わが民は悟らないのだ。
22
あく
つみ
おこな
もの
おか
ひとびと
し そん
つみぶか
だ らく
たみ
ああ、罪を犯す人々、罪深い民、
かれ
しゅ
かた
かみ
あなど
す
せ
む
はな
こ
さ
悪を行う者どもの子孫、堕落した子たち。
せい
彼らは主なる神を捨て、
はんぎゃく
かさ
聖なる方を侮り、背を向けて離れ去った。
う
なぜ、おまえたちは反逆を重ね、
あたま
や
こころ
よわ
は
なおも打たれるのか。
あたま
あし
さき
頭は病み、心は弱り果てているのに。
う
きず
なまきず
頭から足のつま先まで、
きずぐち
か のう
ただ打ち傷と生傷だらけで、
おこな
きよ
わたし
まえ
と
のぞ
傷口はひどく化膿しているではないか。
あら
わる
洗って、清くなりなさい。
あく
悪い行いを私の前から取り除きなさい。
悪をやめ、
23
ただ
こうへい
もと
まな
正しいことを学び、
むじょう
こ
公平を求めよ。
み ぼうじん
はな
あ
べん ご
こ
しゅ
じ
まも
かみ
い
無情なものを懲らし、孤児を守り、
き
未亡人のために弁護せよ。
おお
さあ、もどって来なさい。
がた
つみ
ひ
あか
大いに話し合おう、と主なる神は言われる。
ゆき
しろ
たとえ、あなた方の罪が緋のように赤くても、
くれない
雪のように白くなる。
きよ
ひつじ
け
たとえ、紅のようであっても、
がた
こころよ
したが
清らかな羊の毛のようになるのだ。
だい ち
ゆた
みの
あた
もしあなた方が快く従うなら、
わたし
わたしじ しん
大地の豊かな実りを与えられる。
そむ
つみ
と
け
私こそ、私自身のために、
つみ
おも
だ
あなたの背きの罪を取り消し、
もうあなたの罪を思い出さない。」
24
わるもの
わざわ
わざわ
悪者の災い
よ
つよ
あさ
さけ
さけ
お
ひとびと
ああ、災いだ。朝から酒を追ってはしり、
かれ
えんかい
夜ふけまで、強い酒をあおっている人々は。
おんがく
しゅ
彼らの宴会には、
かみ
はたら
こころ
と
音楽とぶどう酒がそろえてある。
み
て
み
しかし、神の働きに心を留めず、
かれ
い
いそ
み
御手のなされたことを見ようともしない。
かみ
彼らは言う。
「神を急がせよ。
ばつ
はや
ぜん
ぜん
あく
い
さばきがあるなら、それを見たいものだ。
なっとく
あく
い
罰するなら、早くしてみよ。
わざわ
そうすれば納得しよう。」
かれ
くろ
しろ
しろ
くろ
もの
ああ、災いだ。悪を善と言い、善を悪と言う者たちは。
彼らは黒を白とし、白を黒とし、
25
にが
あま
あま
じ ぶん
にが
ち
え
苦みを甘み、甘みを苦みとしている。
わざわ
さと
み
おも
もの
ああ、災いだ。自分には知恵があると思い、
うぬぼれて、悟りがあると見せかける者たち。
ただ
ひと
ただ
しりぞ
わざわ
わい ろ
と
あくにん
べん ご
ああ、災いだ。賄賂を取って悪人を弁護し、
けん り
もの
正しい人の正しさを退け、
わざわ
こうまん
ふ じょ
その権利をふみにじる者は。
かのじょ
いろ め
つか
ああ、災いだ。高慢な婦女たちは。
き
こ
ある
彼女たちは、色目を使い、
ひ
と
のぞ
かみ
けしょう
みみかざ
かのじょ
そうしょくひん
うで わ
かざ
おび
気どって小またで歩きまわる。
こうまん
その日には、神は彼女たちの
かのじょ
高慢を取り除かれる。
くびかざ
彼女たちの化粧や装飾品、
首飾り、耳飾り、腕輪、飾り帯、
26
こうすい
ほうせき
かみかざ
は
ぎ
まも
や かいふく
ふだ
ゆび わ
がいとう
香水、髪飾り、お守り札、指輪、
さい ふ
てかがみ
うつく
はだ ぎ
のぞ
宝石、晴れ着、夜会服、外套、
よ
かお
あくしゅう
財布、手鏡、美しい肌着を除かれる。
おび
あ
かみ
ぬ
お
こうして、良い香りは、悪臭となり、
ゆ
帯はかわって、ひも、
ゆう が
ふく
ぼ
ろ
結い上げた髪は、抜け落ち、
うつく
ちじょく
あた
優雅な服はかわって、粗布になり、
さか
あくにん
おこな
わざわ
おう
むく
う
美しさにかわって、恥辱が与えられる。
かみ
かれ
神に逆らう悪人は災いだ。
ひ
や
つ
彼らはその行いに応じて報いを受ける。
ほのお
か
くさ
つ
火がわらを焼き尽くし、
かれ
ね
ちり
くさ
ふ
さ
炎が枯れ草をなめ尽くすように、
はな
彼らの根は腐り、
かれ
てん
かみ
おし
こば
その花は塵のように吹き去られる。
彼らは天の神の教えを拒み、
27
せい
あなど
かた
聖なる方のことばを
じ ごく
侮ったからだ。
くち
かぎ
ひろ
それゆえ、地獄はのどを広げ、
こう き
もの
ぐんしゅう
その口を限りなくあける。
い こう
そうおん
高貴な者たちも、群衆も、
かんせい
その威光も、その騒音も、
い
た
お
もの
こ
かれ
や
ひ
みな
そのどよめきも、その歓声も、皆、
かみ
そむ
し たい
そこになだれ落ち込む。
てん
わたし
天の神は言われる。
「私に背いた者らの死体は
うじ
さらしものとなる。
き
その蛆は絶えず、彼らを焼く火は
ひと
消えることがない。
すべての人にとって、
28
かれ
ぞう お
かみ
まと
彼らは憎悪の的となる。」
えいえん
し
永遠なる神
はじ
かみ
つ
おおぞら
き
うえ
み
ざ
つ
あなたは知らないのか、聞いたことがないのか。
しゅ
初めから告げられてはいなかったのか。
ち
す
てん
ひとびと
おお
むし
ひろ
ひと
てんまく
は
主なる神は大空のはるか上にある御座に着かれる。
しゅ
地に住む人々は虫けらに等しい。
しゅ
よ
けんりょくしゃ
主は天を覆いのように広げ、天幕のように張られる。
ち
おさ
もの
主は世の権力者をむなしくし、
かれ
う
ま
地を治める者をうつろなものとされる。
ち
ね
は
彼らが、やっと植えられ、やっと蒔かれ、
しゅ
かぜ
ふ
か
やっと地に根を張ろうとするとき、
あらし
ち
主はそれに風を吹きつけて枯らす、
がた
わたし
くら
嵐がわらを散らすように。
あなた方は私をだれに比べ、
29
なら
あお
せい
む
かぞ
な
ひ
よ
だ
き
かた
かた
かみ
い
だれと並べようとするのか、と聖なる神は言われる。
ほしぞら
つく
星空を仰いでみなさい。
ほし
これらすべてを造られたのはだれか。
ほし
星の群れを数えて、引き出された方。
し
星一つひとつの名を呼ばれる方。
しゅ
は
かみ
そうぞう
かた
あなたは知らないのか、聞いたことがないのか。
ち
主はとこしえの神、
よわ
つか
地の果てまで創造された方。
えい ち
ひと
ちから
あた
し
おお
あた
弱ることなく、疲れることなく、
よわ
ひと
ちから
その英知ははかり知れない。
らくたん
弱った人に力を与え、
落胆している人に大きな力を与えられる。
30
むりょく
ぐうぞう
つく
無力な偶像
ぐうぞう
かれ
たっと
じ しん
あかはじ
ぐうぞう
つく
しょうにん
もの
つく
ぐうぞう
もの
みな
なん
かみ
かみ
やく
にんげん
つく
まえ
はじ
もの
た
う
つよ
ひと
た
はじ
とき
うで
みな む
う
ち
はたら
偶像を造り、それを神とする人は皆無知である。
かれ
み
し
彼らの尊ぶものは何の役にも立たない。
ぐうぞう
彼ら自身が証人だ。
かれ
偶像は、見ることも、知ることもない。
むりょく
た
い
彼らは赤恥をかくのである。
やく
無力な偶像を造り、
しん
役に立たない偶像を鋳る者はすべて、
ぐうぞう
それを信じる者といっしょに恥を受ける。
みなあつ
おそ
すみ び
ふ
偶像を造る者も皆、人間にすぎないのだ。
かれ
やがて皆集まって神の前に立つ時、
かなづち
彼らは恐れおののき、恥を受ける。
しょくにん
はら
ちから
へ
職人は金槌と炭火を造り、強い腕を振るって働くが、
腹がすくと力も減り、
31
みず
の
ちょうこくし
すんぽう
はか
つか
ふで
水を飲まなければ疲れる。
けず
かたち
つく
にんげん
せん
うつく
ひ
すがた
すがた
し
あ
彫刻師は寸法を計り、筆でその姿をあらがきし、
ひと
のみで削り、コンパスで線を引き、
みや
お
人の形に造り、人間の美しい姿に仕上げて
き
いち ぶ
お宮に置く。
ひと
み
あたた
や
人は木の一部をとってたきぎとし、
も
これで身を温め、
き
た
いち ぶ
かみ
つく
これを燃やしてパンを焼く。
ぐうぞう
はんぶん
まんぷく
あたた
ひ
つく
も
おが
木の他の一部をとって神を造り、
ふ
それを偶像に造りあげ、
き
それにひれ伏して拝む。
にく
木の半分を火に燃やし、
た
それで肉をあぶり、
み
食べて満腹する。
身が温まると、
32
のこ
あたた
はんぶん
すく
ほのお
ぐうぞう
おが
み
つく
いの
かみ
い
い
わたし
かみ
「ああ、温かい、炎が見えた。」と言う。
ふ
残りの半分で偶像を造って神とし、
わたし
それにひれ伏して拝み、祈って言う、
「私を救ってください。あなたは私の神です。」と。
み
め
ひとびと
し
さと
この人々は知ることも悟ることもない。
さと
こころ
にぶ
見ることができないように、目はふさがれ、
かんが
き
いち ぶ
や
ひ
も
にく
た
悟ることができないように、心は鈍くされているから。
はんせい
考えてみることもなく、
わたし
どんな反省もしないので、
ひ
「私は、木の一部を火に燃やし、
のこ
き
い
もの
つく
その火でパンを焼き、肉もあぶって食べた。
き
き
はし
まえ
ふ
残りの木でこの忌むべき物を造って、
い
その木の切れ端の前にひれ伏すことができるのか。」
とさえ言わない。 かれ
まよ
こころ まど
じ ぶん
すく
だ
彼は迷った心に惑わされ、自分を救い出すことができない。
33
い
ぐうぞう
そして「これ(偶像)はごまかしにすぎないのではないか。」
なぐさ
とすら言わない。
かみ
しゅ
神の慰め
わたし
わたし
かみ
私は主である。
わたし
し
つよ
のぼ
ひ
しず
私のほかに神はない、ひとりもない。
わたし
あなたが私を知らなくても、
ひ
私はあなたを強くする。
わたし
かみ
つく
し
だ
やみ
そうぞう
わざわ
そうぞう
わたし
わたし
それは、日の昇るところから日の沈むところまで、
ひとびと
私のほかは、むなしいものだと、
わたし
人々が知るようになるためである。
ひかり
私は神であって、ほかにはいない。
しあわ
光を造り出し、闇を創造するのは、私。
わたし
かみ
な
幸せをもたらし、災いを創造するのも、私。
私、神が、これらすべてを為すのである。
34
わたし
ち
す
つく
にんげん
私が、地を造り、
じ ぶん
て
し
ひとびと
き
てん
わたし
ひろ
き
わたし
みみ
つく
む
そこに住む人間をも造った。
うちゅう
自分の手で天を広げ、
たみ
宇宙を指揮している。
わたし
わたし
私の民よ、私に聞け。
さと
みち
わたし
で
くにぐに
ひかり
私の人々よ、私に耳を向けよ。
わたし
悟りは私から出、
わたし
ぎ
すく
で
私の道が、国々の光となる。
わたし
私の義はちかく、
わたし
ちから
くにぐに
たみ
私の救いはすでに出ている。
しまじま
わたし
ま
のぞ
わたし
ちから
私の力は国々の民をさばく。
み
あ
ひろ
だい ち
よ
たの
み わた
島々は私を待ち望み、私の力に拠り頼む。
てん
した
天を見上げなさい。
それから、その下に広がる大地を見渡せ。
35
おおぞら
ち
す
けむり
ひと
き
さ
ち
し
ころも
は
ぎ
き
おとろ
ころも
すく
むし
わたし
く
おし
つ
く
つづ
ふる
大空は煙のように消え去り、地は衣のように古びる。
わたし
地に住む人も、はえのように死に果てる。
わたし
こころ
たみ
しかし、私の救いはとこしえに続き、
し
私の義は衰えることがない。
せい ぎ
わたし
ひ なん
おそ
正義を知り、心に私の教えをおく民よ、
ひと
私に聞け。
人の非難を恐れるな。
かれ
ののしられてもくじけるな。
ようもう
彼らは衣のように、しみに食われ、
わたし
ぎ
つづ
羊毛のように、虫に食い尽くされるものにすぎない。
わたし
すく
よ
よ
なが
しかし、私の義はとこしえに続き
わたし
がた
なぐさ
私の救いは代々に永らえる。
わたし
おそ
私、私こそ、あなた方を慰めるものだ。
なぜ、あなたは恐れるのか、
36
し
ひと
わす
くさ
ひと
ひと
やがては死ぬ人、草にも等しい人を。
しゅ
つ く り ぬし
なぜ、あなたは忘れたのか、
あさ
主なるあなたの創造主を。
て
つよ
よみがえりの朝
よわ
弱った手を強め、
ぜつぼう
ひとびと
い
よろめくひざをしっかりさせよ。
げん き
だ
あく
おそ
がた
むく
かみ
かみ
こ
絶望した人々に言いなさい。
み
「元気を出せ。恐れるな。
ふくしゅう
見よ、あなた方の神を。
かみ
き
がた
すく
復讐し、悪に報いる神が来られる。
あら の
あれ ち
よろこ
たの
神は来て、あなた方を救われる。」と。
さ ばく
よろこ
はな
さ
そのとき、荒野と荒地は喜び楽しむ。
砂漠は喜び、花を咲かせる。
37
いちめん
さ
みだ
さ
サフランが一面に咲き乱れ、
よろこ
うた
し しゃ
い
クロッカスがいっせいに咲きこぼれ、
がた
喜び歌う。
わたし
「あなた方のうちの死者は生きかえり、
め
ざ
よろこ
私もよみがえる。
ちり
なか
目覚めよ、喜びいさめ、
ひかり
かがや
つゆ
塵の中によこたわるものよ。
あさ
あなたは、
だい ち
し しゃ
朝の光に輝く露のようだ。
もうじん
め
ひら
大地から、死者がよみがえってくる。」
き
ひと
みみ
そのとき、盲人の目が開かれ、
聞こえない人の耳はあけられる。
そのとき、
38
ある
くち
き
ひと
しか
ひと
よろこ
うた
おど
あ
歩けなかった人が鹿のように躍り上がり、
あら の
みず
わ
口の利けなかった人が喜び歌う。
あれ ち
お がわ
なが
荒野に水が湧き、
や
すな じ
みずうみ
荒地に小川が流れる。
かわ
ち
いずみ
焼けた砂地は湖となり、
やまいぬ
乾いた地は泉となる。
みどり も
はな
かお
かつて、山犬がうずくまったところには、
おお じ
緑 萌え、花が薫る。
みち
せい
みち
よ
そこに大路ができる。
けが
もの
みち
とお
その道は聖なる道と呼ばれ、
すく
ひと
汚れた者がその道を通ることはない。
おろ
もの
まよ
こ
そこは救われた人たちのものだから。
もうじゅう
愚か者もそこに迷い込むことはない。
すく
ひとびと
あゆ
もはや、猛獣もおらず、
救われた人々がそこを歩み、
39
しゅ
あがな
よろこ
ひとびと
うた
かみ
かえ
みやこ
かえ
く
つ
主に贖われた人々が、そこに帰って来る。
よろこ
かんむり
そして、喜び歌いつつ神の都に帰り着き、
たの
よろこ
かれ
むか
とこしえの喜びを冠としていただく。
なげ
かな
に
さ
楽しみと喜びが彼らを迎え、
嘆きと悲しみは逃げ去る。
40
嘆きの壁にて — 祈り
救われた人々がそこを歩み、主に贖われた人々がそこに帰って来る。
41
イザヤ書 35:9 , 10
主なる神は自ら世の人々にしるしを与えられる。
ひとりの子が私たちのために生まれる。
イザヤ書 7:14
エルサレム ダマスコ門
42
*メシア ヘブライ語。「神が選ら
んだ王」の意。ギリシア語では「キ
リスト」。
よ げんしゃ
ま え
わたし
やくそく
第四章 メシアの前ぶれ
かみ
し はい
せい ぎ
おうこく
う
た
ひ
く
ひと
あく
かみ
神 が 預 言 者 た ち を と お し て 私 た ち に 約 束 さ れ た こ と は、 や が て 神
きよ
すく
く
の 支 配 す る 正 義 の 王 国 が 打 ち 立 て ら れ る 日 が 来 る、 ま た、 人 が 悪 か
かた
よ
つか
すく
ぬし
あと
ぬし
ら 清 め ら れ、 救 わ れ る と き も 来 る、 と い う こ と で す。 さ ら に、 ひ と
おう
こ
よ げんしゃ
つた
かれ
り の 方 が こ の 世 に 遣 わ さ れ、 は じ め は 救 い 主、 後 に は さ ば き 主、 ま
く
すく
ぬし
ぬし
おう
かた
た 王 と し て 来 ら れ る、 と い う こ と を 預 言 者 た ち は 伝 え た の で す。 彼
*
よ
た ん じょう
い
ら は、 こ の や が て 来 る 救 い 主、 ま た さ ば き 主、 王 で も あ ら れ る 方 を
ぜん
かた
よ げん
メ シ ア と 呼 び ま し た。 そ し て、 イ エ ス・ キ リ ス ト の 誕 生 の は る か 以
前から、この方について預言をしていたのです。
43
よ げん
イザヤの預言より
かみ
い
「インマヌエル」
てん
み
天の神が言われる。
わたし
えら
かれ
くにぐに
さけ
よろこ
こうせい
よ
もの
れい
わたし
さず
し
じ
こえ
まち
ひび
「見よ、わがしもべ、私が支持するメシアを。
わたし
私が選び、喜ぶ者を。
かれ
私は彼に、わが霊を授けた。
かれ
彼は国々に公正をもたらす。
お
あし
お
彼は叫ばず、呼ばわらず、声を街に響かせない。
とうしん
け
折れかけた葦を折ることなく、
ちゅうじつ
しん り
つ
し
くすぶる灯心を消すことなく、
かれ
よわ
忠実に、真理を告げ知らせる。
ぜん ち
みち
かくりつ
彼は弱らず、くじけない、
とお
しまじま
おし
のぞ
全地にその道を確立するまでは。
遠い島々もその教えに望みをおく。」
44
てん
ち
そうぞう
しょう
ひろ
く
天を創造して、これを広げ、
ひとびと
いき
かみ
いのち
あた
い
ひろ
よ
地とそこに生ずるものを繰り広げ、
しゅ
人々に息と命を与えられる、
わたし
主である神はこう言われる。
て
と
「メシアよ。私は、あなたを呼び、
ひとびと
けいやく
しょこく
ひかり
あなたの手を取った。
まも
た
人々の契約、諸国の光として
もうじん
め
ひら
とら
びと
くさり
あなたを守り、あなたを立てる。
き ぼう
盲人の目を開き、
やみ
す
ひとびと
ざ
すく
だ
と
はな
希望もない捕われ人を、その鎖から救い出し、
かみ
ひとびと
みずか
あた
おとこ
こ
う
闇に住む人々を、その座するところから解き放つために。」
しゅ
よ
主なる神は自ら
み
世の人々にしるしを与えられる。
すなわち、おとめが身ごもって、男の子を産む。
45
*インマヌエル 「 神 、我 らととも
におられる」の 意 。ヘブライ 語 。
** ダ ビ デ イ ス ラ エ ル の 二 代 目
の王(在位紀元前一〇一〇年~
九 七 一 年 こ ろ )。 神 に 従 い 、神 に
愛された。その家系より、やがて
メシアが生まれると約束されてい
た。預言者。詩人。
な
*
こ
わたし
う
その名はインマヌエルとよばれる。
おとこ
こ
わたし
あた
ひとりの子が私たちのために生まれる。
とう ち けん
な
かれ
かた
ふ
し
ぎ
し どうしゃ
ぜんのう
かみ
ひとりの男の子が私たちに与えられる。
かれ
統治権が彼の肩にある。
えいえん
ちち
へい わ
きみ
とな
彼の名は、「不思議な指導者、全能の神、
**
おう ざ
つ
くに
おさ
永遠の父、平和の君」と唱えられる。
へい わ
せいけん
いきお
ま
お
ダビデの王座に着いてその国を治め、
いま
せい ぎ
かた
たも
その平和の政権は勢いを増し、終わることがない。
こうへい
今よりとこしえに、
ぜんのう
かみ
あい
な
と
公平と正義によってこれを堅く保つ。
ぬし
全能の神のもえる愛がこれを成し遂げるのだ。
こうへい
うえ
しゅ
れい
公平なさばき主
かれ
ち
え
さと
れい
彼の上に主の霊がとどまる。
知恵と悟りの霊、
46
し どう
ゆう き
しゅ
し
れい
指導と勇気の霊、
かれ
しゅ
おそ
うやま
おそ
うやま
れい
よろこ
また、主を知り、畏れ敬う霊である。
うわ
彼は主を畏れ敬うことを喜びとし、
みみ
はんけつ
くだ
ことの上べだけで、さばかず、
よ
ひと
せいとう
耳にきくことだけで、判決を下さない。
ひとびと
み くだ
ひと
こうへい
べん ご
おこな
また、寄るべのない人のために正当なさばきを行い、
かれ
めいれい
わるもの
人々に見下された人を公平に弁護する。
あくにん
しょけい
彼の命令で悪者はさばかれ、
かれ
せい ぎ
しん り
み
そのことばで悪人は処刑される。
みず
うみ
み
彼は正義と真理を身にまとう。
かみ
し
ち しき
だい ち
そして、水が海を満たしているように
さか
神を知る知識が大地にあふれる。
み
めい よ
あた
たっと
たか
「見よ。わがしもべは栄える。
おお
ひと
かれ
み
おどろ
名誉を与えられ、尊ばれ、高くあげられる。
かつて、多くの人が彼を見て驚いたように、
47
ひと
み
すがた
きず
ひと
そこ
おもかげ
――その姿は傷つき、損なわれ、
かれ
おお
かれ
こくみん
み
おどろ
くち
り かい
人とは見えず、人の面影もなかった――
おう
彼は多くの国民を驚かし、
おし
王たちも彼を見て口をつぐむ。
いち ど
き
さと
だれにも教えられなかったことを理解し、
つみ
にな
しん
一度も聞かされなかったことを悟るからだ。」
よ
い
世の罪を担うメシア
わたし
しゅ
ちから
さと
ああ、私たちの言うことを、だれが信じたか。
かみ
まえ
かれ
ちい
くさ き
だれが主の力を悟ったろうか。
あれ ち
で
ね
わたし
み
そだ
よう し
神の前に、彼は小さな草木のように、
かれ
荒地に出る根のように育った。
い げん
した
がいけん
彼には、私たちが見とれるような容姿も、
わたし
威厳もなく、
私たちが慕うような外見はない。
48
かれ
かな
けいべつ
ひと
ひとびと
やまい
し
もの
彼は軽蔑され、人々からのけ者にされ、
ひと
かお
悲しみの人で、病を知っていた。
わたし
かれ
お
む
し
わたし
やまい
人が顔をそむけるほどさげすまれ、
かれ
私たちも彼を無視した。
じつ
かれ
にな
わたし
いた
実に、彼が負ったのは私たちの病、
かみ
わたし
ばっ
おも
う
彼が担ったのは私たちの痛みであったのに。
かれ
それでも、私たちは思った、
くる
「彼は神に罰せられているから、打たれ、
かれ
さ
とお
苦しんでいるのだ。」と。
わたし
つみ
しかし、彼が刺し通されたのは
かれ
う
くだ
私たちの罪のためであり、
わたし
とが
彼が打ち砕かれたのは
かれ
う
こ
私たちの咎のためであった。
彼の受けた懲らしめによって
49
わたし
かれ
う
へい わ
きず
あた
わたし
私たちに平和が与えられ、
わたし
ひつじ
彼の打ち傷によって、私たちはいやされた。
じ ぶんかっ て
みち
む
私たちはみな、羊のようにさまよい、
かみ
わたし
つみ
おのおの、自分勝手な道に向かっていた。
かれ
お
しかし、神は、私たちの罪をすべて、
彼に負わせられた。
ひ どう
メシアのよみがえり
かれ
くる
だま
つづ
彼は非道にあつかわれた。
と さつ ば
ひ
ゆ
こ ひつじ
苦しめられたが、黙り続けていた。
け
か
もの
まえ
だま
ひつじ
屠殺場へ引かれて行く小羊のように
だま
つづ
う
かれ
うば
さ
毛を刈る者の前に黙っている羊のように
ぼうぎゃく
黙り続けていた。
かれ
じ だい
おも
暴虐なさばきを受けて、彼は奪い去られた。
彼の時代のだれが思ったであろうか、
50
わたし
い
つみ
ひとびと
ち
た
かれ
う
私たちの罪のゆえに、彼は打たれ、
し
わるもの
生きた人々の地から断たれていったことを。
はか
と
もの
おな
その死は悪者たちとともにされ、
ふ ほう
おこな
その墓は富む者と同じであった。
くち
いつわ
不法を行わず
かれ
くだ
いた
その口に偽りもなかったのに。
かみ
み こころ
しかし、彼を砕いて、痛めることは
じ ぶん
つぐな
ささ
もの
神の御心であった。
つみ
自分のいのちを
かれ
すえなが
し そん
つづ
み
罪の償いの献げ物とするとき、
しゅ
のぞ
彼は、末永く子孫が続くのを見、
かれ
な
と
主の望まれることは
たましい
おお
くる
彼によって成し遂げられるのだ。
かれ
ひかり
み
まんぞく
魂 の多くの苦しみのあと、
彼はいのちの光を見て、満足する。
51
わたし
わたし
まえ
む ざい
おお
つみとが
はこ
さ
ひと
「私のしもべは多くの人を、
かれ
私の前に無罪とする。
わたし
かれ
い だい
しょうりしゃ
彼らの罪咎を運び去るからだ。
えい よ
すす
あた
じ ぶん
たましい
そそ
それゆえ私は彼を偉大な勝利者としての
かれ
栄誉を与える。
し
つみ
かぞ
彼は進んで自分の魂を注ぎだし、
かれ
おお
ひと
あやま
お
死んで、罪びとのひとりに数えられたから。
そむ
もの
と
な
彼は多くの人の過ちを負い、
もの
もの
背いた者のために執り成しをするのである。」
きら
ひとびと
「嫌われた者よ。
し はいしゃ
人々にさげすまれ、
おう
み
た
あ
支配者らのしもべとされた者よ。
けんりょくしゃ
ふ
王たちはあなたを見て立ち上がり、
権力者たちはあなたにひれ伏す。」
52
かみ
すく
かわ
神の救い
かね
じ ゆう
はら
もの
た
もの
き
みな
かね
みず
はら
き
「さあ、渇いている者は皆、いのちの水に来なさい。
しょくもつ
お金のない者も、来なさい。
かね
ちち
え
食物を自由に食べなさい。
しゅ
お金を払わずに
かて
ぶどう酒と乳を得なさい。
まんぞく
え
もの
ほね お
はたら
なぜ、糧にならないもののために金を払い、
わたし
き
したが
た
しょくもつ
ゆた
あじ
満足を得られない物のために骨折って働くのか。
よ
私に聞き従って
たましい
まんぞく
良いものを食べなさい。
がた
そうすれば、
き
わたし
く
あなた方は魂を満足させる食物を豊かに味わう。
き
したが
たましい
がた
え
けいやく
むす
よく聞いて、私のもとに来るがよい。
わたし
聞き従って、魂にいのちを得よ。
私はあなた方ととこしえの契約を結ぶ。
53
やくそく
もと
か
あい
す
あた
ダビデに約束した変わらぬ愛を与える。」
しゅ
よ
もと
ちか
主をたずね求めなさい、おそ過ぎないうちに。
かみ
さか
もの
みち
はな
呼び求めなさい、近くにいますうちに。
あく
おこな
もの
おも
す
神に逆らう者はその道を離れ、
しゅ
かえ
しゅ
あわ
悪を行う者はその思いを捨てよ。
わたし
かみ
た
かえ
主に帰れ、主は憐れんでくださるから。
しゅ
かんだい
ゆる
私たちの神に立ち帰れ、
主は寛大に赦してくださるから。
54
* ダニエル 紀 元 前 六 一 五 年 ~
五二 〇 年ころ 。預 言 者 。
少 年 のこ ろ
イスラエルで捕えられ、バビロン
へ送られたユダヤ人。後にバビロ
ンの王の高官となった。
よ げん
ていこく
ダニエルの預言より
とこ
うえ
まぼろし
み
かれ
ち せい が ん ね ん
き ろく
つぎ
*
か
バ ビ ロ ン 帝 国 の ベ ル シ ャ ツ ァ ル 王 の 治 世 元 年 の こ と で あ る。 ダ ニ エ
お
お
まぼろし
もの
み
み
ざ
つ
ル は 、床 の 上 で 幻 を 見 た 。 彼 は そ れ を 記 録 す る こ と に し 、次 の よ う に 書
お
き起こした。
よ
わたし
世の終わりのさばき
よ
おう ざ
ある夜、私は幻 を見た。
ひ
いくつかの王座がおかれ、
ころも
ゆき
しろ
「日の老いたる者」がその御座に着いておられた。
はくはつ
きよ
ひつじ
け
その衣は雪のように白く、
おう ざ
も
も
ひ
かわ
ほのお
ひ
なが
で
その白髪は清らかな羊の毛のようであった。
しゃりん
その王座は燃える炎、
まえ
その車輪は燃える火、
その前から火の川が流れ出ていた。
55
*人の子 イエス・キリストはご自
分のことを「人の子」と呼ばれた。
八五ページの注釈を参照。
いくせん
いくまん
かれ
かれ
まえ
まえ
つか
た
幾千のものが彼の前に仕え、
ぬし
せき
き
幾万のものが彼の前に立っていた。
まきもの
ひろ
さばき主は席に着き、
まぼろし
み
かずかずの巻物が広げられた。
よる
み
* ひと
こ
夜の幻をなお見ていた。
ひ
お
もの
まえ
き
かた
てん
くも
すす
の
すると、見よ、「 人の子 」のような方が天の雲に乗り、
し はいけん
あた
えいこう
しょこく
う
しょげん ご
ひとびと
みな
かれ
おが
かれ
つか
「日の老いたる者」の前に来て、そのみもとに進み、
おうこく
支配権、光栄を受け、
しょみん
王国を与えられた。
かた
し はい
ほろ
えいえん
つづ
ぜんおうこく
おうけん
し はい
ちから
けん い
諸民、諸国、諸言語の人々は皆、彼を拝み、彼に仕えた。
おうこく
この方の支配は永遠に続き
せ かい
その王国は滅びることがない。
かみ
せい
たみ
あた
そのとき、世界の全王国の王権、支配の力、権威は
神の聖なる民にも与えられる。
56
み くに
ひと
えいえん
かれ
つづ
つか
その御国は永遠に続き、
ち
ちり
なか
ねむ
かれ
ふくじゅう
おお
ひと
すべての人は、彼らに仕え、彼らに服従する。
し
ひと
ひとびと
えいえん
はじ
おおぞら
せい ぎ
せいめい
えいえん
つづ
ひかり
みちび
はい
ぶじょく
ひとびと
はい
ていこく ぜん ち
ほし
す
め
しょこく
さ
しょぞく
死んだ、地の塵の中に眠っている、多くの人が目を覚ます。
ひと
ある人は永遠の生命に入り、
かしこ
もの
よ ぞら
ある人は恥と、永遠の侮辱に入る。
おお
賢い人々は大空の光のように、
かがや
おう
多くの者を正義に導いた人々は、夜空の星のように、
とこしえに輝き続ける。
おう
ていこく
ダリヨス王のことば
つぎ
へいあん
せいめいぶん
か
おく
よ
い
か
さだ
しょげん ご
ペ ル シ ャ 帝 国 の ダ リ ヨ ス王 は、 帝 国 全 地 に 住 む 諸 国、 諸 族、 諸 言 語 の
ひとびと
しょこくみん
人々に、次のような声明文を書き送った。
おうこく
たみ
かみ
おそ
うやま
「諸国民に平安があるように。余は以下のとおりに定める。
わが王国の民はすべて、ダニエルの神を恐れ敬わなければならない。
57
*ゼカリヤ 紀元前五四〇年~
四七〇年ころ。預言者。メシアの
到来や神のさばきについての預言
が多い。
*
かた
くに
ほろ
い
かみ
し はい
えいえん
か
つづ
この方こそ生ける神、とこしえに変わることなく、
かた
ひと
すく
かいほう
たす
その国は滅びず、その支配は永遠に続く。
てん
ち
き せき
おこな
かみ
この方は人を救って解放し、助けをなし、
おお
おど
天にも地にも、しるしと奇跡を行う神なのである。」
よ げん
おうこく
ゼカリヤの預言より
へい わ
平和の王国
しょうじょ
むすめ
よろこ
こえ
シオンの少女よ、大いに踊れ。
み
ただ
かた
おう
すく
こ
あた
もの
エルサレムの娘よ、喜びの声をあげよ。
かれ
見よ、あなたの王が来られる。
けんきょ
かた
の
こ
彼は正しい方で、救いを与えられた者。
わか
こ
の
く
謙虚な方で、ろばに乗って来られる。
若い、子ろばに乗って来る。
58
かれ
くに
たみ
ぐん ば
せんしゃ
た
彼は民から戦車を
たたか
ゆみ
た
国から軍馬を絶やし、
かれ
しょこく
たみ
へい わ
戦いの弓をも断たれる。
し はい
は
うみ
およ
うみ
ひ
つ
ひとびと
すく
彼は諸国の民に、平和を告げ、
ち
その支配は海から海へ
しゅ
地の果てにまで及ぶ。
かみ
たみ
ひつじ
やしな
神なる主は、その日、人々を救い、
しゅ
ち
かれ
おうかん
ほうせき
その民を羊のように養われる。
かれ
けが
わたし
あら
うつく
たみ
きよ
いずみ
ひら
かがや
主の地で、彼らは王冠の宝石のように輝く。
うるわ
彼らはなんと美しいことか!
ひ
なんと麗しいことか!
つみ
「その日、私の民のために、
ひ
く
てん
かみ
い
罪と汚れを洗い清める、一つの泉が開かれる。
その日が来る。」と天の神は言われる。
59
*ダビデ 四六ページの注釈を参
照。
わたし
ふたた
ぐうぞう
おう
ち
よ げん
とな
れい
お
ち
はら
と
か けい
私はこの地から追い払う。」
わたし
また、汚れた霊をも、
けが
のぞ
その名が再び唱えられることはない。
な
「私は偶像をこの地から取り除く。
*
ダビデ王の預言より
しゅ
わたし
くち
メシアはダビデの家系から
しゅ
れい
わたし
かた
主の霊は私をとおして語り
ちから
かみ
かた
主のことばは私の口にある。
せい ぎ
ひと
おさ
かた
イスラエルの力、神がこう語られる。
かみ
おそ
おさ
かた
く
「正義によって人を治める方、
かれ
あさ
あさ
ひかり
かがや
たいよう
神を畏れて治める方が来る。
くも
彼は、朝の光、
雲のない朝に輝きでる太陽、
60
ち
あめ あ
も
で
わかくさ
ようこう
ふ
そそ
地に萌え出た若草に降り注ぐ
かみ
な
と
雨上がりの陽光のようだ。」
わたし
か けい
えら
神はこれを成し遂げるために、
えいえん
けいやく
わたし
たまわ
私の家系を選ばれた。
わたし
つ
おこ
お
ねむ
永遠の契約を私に賜った。
しゅ
いえ
主は私に告げた。
しょうがい
「あなたの家を興す。
せん ぞ
あなたが生涯を終え、
し そん
た
先祖たちといっしょに眠ったあと、
おうこく
ゆ
あなたの子孫のひとりを立てて、
かた
わたし
な
いえ
た
その王国を揺るぎないものとする。
わたし
かれ
おうこく
おう ざ
かくりつ
この方が私の名のために家を建て、
わたし
かれ
ちち
かれ
わたし
こ
私は彼の王国の王座をとこしえに確立する。
私は彼の父となり、彼は私の子となる。
61
わたし
かれ
て
てき
かれ
あざむ
ささ
もの
かれ
なや
つよ
私の手は彼を支え、強める。
あ
彼は敵に欺かれず、
わたし
かれ
まえ
あだ
う
くだ
悪しき者が彼を悩ますことはない。
かれ
にく
もの
う
たお
私は彼の前でその仇を打ち砕き、
わたし
しんじつ
じ あい
かれ
彼を憎む者を打ち倒す。
わたし
な
かれ
しょうり
あた
私の真実と慈愛は、彼にあり、
かれ
わたし
よ
私の名によって、彼に勝利が与えられる。
わたし
ちち
彼は私に呼びかけるであろう。
わたし
かみ
わたし
すく
『あなたは私の父、
私の神、私の救い。』」と。
62
*マラキ 紀元前四〇〇年ころの
預言者。
*
よ げん
らいりん
ひ
マラキの預言より
しゅ
わたし
し しゃ
主の来臨の日
み
かれ
さき だ
つか
まえ
みち
「見よ、私は使者を遣わす。
がた
こ
たいぼう
そな
かた
彼は先立ってわが前に道を備える。
とつぜん
やくそく
あなた方が待望しているメシアは
がた
突然、来られる。
み
しゅ
く
てん
かみ
い
あなた方があこがれている約束の方、
しゅ
く
ひ
た
見よ、主が来る。」と天の神は言われる。
かれ
あらわ
た
だが、主の来る日にだれが耐えられよう。
わたし
がた
ところ
い
彼の現れるとき、だれが立っていられよう。
うらな
もの
かんいん
もの
いつわ
ちか
「さばきのために、私はあなた方の所に行く。
ふ せい
ちんぎん
やと
にん
あっぱく
もの
もの
そして、占いをする者、姦淫する者、偽り誓う者、
不正な賃金で雇い人を圧迫する者、
63
み ぼうじん
よ
こ
じ
まず
ひと
もの
未亡人や孤児をいじめる者、
わたし
おそ
もの
わたし
こくはつ
てん
かみ
もの
い
寄るべのない貧しい人をのけものにする者、
かれ
私を畏れぬ者らをすべて、告発する。
しゅ
わたし
か
そして彼らを、私はさばく。」と天の神は言われる。
じつ
せん ぞ
さだ
じ だい
き
はな
がた
まも
「実に、主である私は変わることがない。
わたし
先祖の時代から、あなた方は、
わたし
た
かえ
がた
かえ
私が定めた決まりを離れ、それを守らなかった。
わたし
私に立ち帰れ。
てん
かみ
い
そうすれば、私もあなた方に帰る。」
がた
い
と、天の神は言われる。
かみ
つか
「あなた方は言っている。
いまし
まも
なん
い
み
『神に仕えることはばかばかしい。
つみ
はんせい
かみ
したが
なん
えき
その戒めを守っても、何の意味があろうか。
いま
こうまん
もの
しゅくふく
あく
おこな
ひと
さか
罪を反省して神に従っても、何の益があろうか。
今は、高慢な者が祝福され、悪を行う人が栄え、
64
かみ
さか
おそ
うやま
き
もの
ひと
ばつ
たが
まぬか
おそ
かた
あ
うやま
もの
き ろく
神に逆らっても、人は罰を免れているからだ。』と。」
かみ
そのとき、
しゅ
み まえ
しゅ
神を畏れ敬う者たちが互いに語り合っていた。
しゅ
主はそれを聞かれた。
か
しる
しょ
そして、主の御前で、主を畏れ敬う者についての記録の書が、
てん
かみ
い
書き記されていた。
かれ
わたし
天の神は言われる。
わたし
て
くだ
ひ
「彼らは、私のものとなる。
かれ
わたし
たから
私が手を下すその日に、
ひと
じ ぶん
こ
あわ
彼らは私にとって宝となる。
わたし
かれ
ひと
したが
わるもの
もの
したが
ふたたび
もの
人が自分のいとしい子を憐れむように、
がた
私は彼らをあわれむ。
ただ
そのとき、あなた方は再び、
かみ
正しい人と悪者、
神に従った者と従わなかった者との
65
むく
み
ちが
も
み
ひ
く
ひ
き
報いの違いを見るであろう。」
ろ
「見よ、その日が来る。
こうまん
もの
あく
ひ
おこな
もの
かれ
や
炉のように燃える日が来る。
高慢な者、悪を行う者は、
とうらい
すべてわらのようになる。
ね
は
のこ
てん
かみ
つ
い
到来するその日に、彼らは焼き尽くされ、
な
うやま
がた
根も葉も残さない。」と天の神は言われる。
せい ぎ
たいよう
つばさ
のぼ
うし ご
や
ちから
まき ば
と
はな
「しかし、わが名を畏れ敬うあなた方には
かれ
正義の太陽が昇る。
がた
彼の翼にはいやす力がある。
こ うし
と
よろこ
あなた方は牛小屋から牧場へ解き放された
がた
かみ
さか
もの
ふ
小牛のように跳びはねて喜ぶ。
わたし
て
くだ
がた
ひ
あし
した
はい
あなた方は神に逆らう者を踏みにじる。
かれ
私が手を下すその日に、
てん
かみ
い
彼らはあなた方の足の下で灰になるのだ。」
と天の神は言われる。
66
メシアよ。あなたは・・・・盲人の目をひらき、希望もない捕われ人を
その鎖から救い出し、闇に住む人々をその座するところから解き放つ・・・・
イザヤ書 42:7
イエスはガリラヤ地方全体を巡って、天の国の福音を宣べ伝えた。
マタイによる福音書 4:23
ベテ・シャン地方
67
ベツレヘム イエス・キリストの降誕の地
「この方こそご自分の民をすべての罪から救うのです。」
マタイによる福音書 1:21
68
*ことば ギリシア語で「ロゴ
ス」。実体化されて宇宙、万物を
支配する理法。また、理性、言
語、意味、理由、根拠などの意味
をもつ。
弟子ヨハネはここで、キリスト
が、天地万物を創造された神であ
ることを強調している。
ひと
す く
ぬ し
第五章 救い主、イエス
かみ
神が人となった
*
かみ
じ しん
かた
かみ
かみ
はじめに「ことば」があった。「ことば」は神とともにあり、
かた
そうぞう
そうぞう
「ことば」は神ご自身であった。この方ははじめに神とともに
かた
なに
あった。すべてはこの方によって創造された。創造されたもの
にんげん
ひかり
ひかり
やみ
なか
かがや
やみ
で、この方によらずにできたものは何一つない。「ことば」にい
ひかり
う
か
て
まこと
ひかり
よ
こ
のちがあり、いのちは人間の光であった。光は闇の中に輝き、闇
ひと
は光に打ち勝たなかった。
よ
よ
かた
つく
よ
かた
すべての人を照らすこの真の光が世に来られた。「ことば」
は世におられ、世はこの方によって造られたが、世はこの方を
69
* キリスト ヘブライ語のメシア
(神が選んだ王)のギリシア語訳。
イエスが「キリスト」であるの
で、イエスの呼び名となった。
し
ひとびと
う
い
じ ぶん
ひとびと
こ
じ
知らなかった。「ことば」はご自分の人々のところに来られた
ぶん
う
い
ひと
しん
ひとびと
かみ
こ
とっけん
あた
の に 、 人 々 は 受 け 入 れ な か っ た。しかし、「ことば」は、ご自
にくたい
わたし
あいだ
やど
わたし
分を受け入れた人、信じた人々には、神の子とされる特権をお与
えになった。
えいこう
み
ちち
かみ
ひと
ご
えいこう
「ことば」は肉体となって、私たちの間に宿られた。私たちは
めぐ
しん り
み
かみ
つか
ふくいん
はじ
ち ほう
まち
その栄光を見た。それは父なる神の独り子としての栄光であて、
*
恵みと真理とに満ちていた。
こ
ヨセフとマリヤ
かみ
てん し
神の子イエス、「キリスト」の福音の初め。
き
おとこ
こんやく
天 使 ガ ブ リ エ ル が、 神 か ら 遣 わ さ れ て ガ リ ラ ヤ 地 方 の ナ ザ レ と い う 町
おとこ
け
かのじょ
で
き
な
い
めぐ
かた
しゅ
へ 来 た。 そ れ は ヨ セ フ と い う 男 と 婚 約 し た お と め の と こ ろ へ で あ っ た。
てん し
男はダビデ家の出で、おとめの名はマリヤといった。
おどろ
なん
天 使 は、 彼 女 の と こ ろ に 来 て 言 っ た。「 恵 ま れ た 方、 お め で と う。 主
が あ な た と ご い っ し ょ で す。」 こ の こ と ば に マ リ ヤ は 驚 き、 何 の こ と か
70
おも
かみ
てん し
めぐ
い
う
おそ
み
と 思 い め ぐ ら し た。 す る と、 天 使 は 言 っ た。「 マ リ ヤ よ、 恐 れ る こ と は
おとこ
こ
う
こ
な
かれ
い だい
ひと
あ り ま せ ん。 あ な た は 神 か ら 恵 み を 受 け た の で す。 あ な た は 身 ご も っ て
かみ
こ
よ
かみ
しゅ
かれ
せん ぞ
おう ざ
あた
男 の 子 を 産 み ま す。 そ の 子 を イ エ ス と 名 づ け な さ い。 彼 は 偉 大 な 人 と な
かれ
えいえん
おさ
おうこく
お
り、神の子と呼ばれます。神である主は、彼に先祖ダビデの王座を与え、
てん し
い
彼は永遠に治め、その王国は終わることがありません。」
わたし
おっと
てん し
こた
せいれい
くだ
マ リ ヤ は 天 使 に 言 っ た。「 ど う し て、 そ の よ う な こ と が あ り え ま し ょ
かみ
ちから
つつ
う
こ
せい
かた
かみ
う。私にはまだ夫もいませんのに。」天使は答えた。「聖霊があなたに降
こ
よ
かみ
い
り、 神 の 力 が あ な た を 包 み ま す。 そ れ で、 生 ま れ る 子 は 聖 な る 方 で、 神
わたし
しゅ
つか
み
な
の子と呼ばれます。神にできないことはありません。」マリヤは言った。
てん し
はな
さ
まえ
「私は主に仕えるものです。おことばどおり、この身に成りますように。」
こんやく
こうして、天使は離れ去った。
せいれい
み
おっと
ただ
ひと
さ て、 マ リ ヤ は ヨ セ フ と 婚 約 し て い た が、 ふ た り が い っ し ょ に な る 前
おもて
のぞ
かのじょ
わか
に、 マ リ ヤ は 聖 霊 に よ っ て 身 ご も っ た。 夫 ヨ セ フ は 正 し い 人 で あ っ た の
おも
かれ
かんが
しゅ
てん し
ゆめ
あらわ
い
で、 マ リ ヤ の こ と を 表 ざ た に す る の を 望 ま ず、 ひ そ か に 彼 女 と 別 れ よ う
こ
わす
つま
むか
い
と 思 っ た。 彼 が こ の こ と を 考 え て い る こ ろ、 主 の 天 使 が 夢 に 現 れ て 言 っ
た。「 ダ ビ デ の 子 ヨ セ フ よ、 恐 れ ず に あ な た の 妻 マ リ ヤ を 迎 え 入 れ な さ
71
*イエス「主は救う」の意味。
* * イ ン マ ヌ エ ル 四 六 ペ ー ジ の
注釈を参照。
***皇帝アウグストス ローマ
帝 国 の 第 二 の 皇 帝( シ ー ザ ー ) 。
在位紀元前三〇~後一四年。
かのじょ
こ
*
こ
せいれい
な
やど
かれ
じ ぶん
たみ
おとこ
こ
う
つみ
すく
い。彼女の子は聖霊によって宿ったのです。マリヤは男の子を産みます。
お
い ぜん
かみ
よ げんしゃ
い
そ の 子 を イ エ ス と 名 づ け な さ い。 彼 こ そ ご 自 分 の 民 を す べ て の 罪 か ら 救
うからです。」
じょうじゅ
み
おとこ
こ
う
こ れ ら す べ て が 起 こ っ た の は、 以 前、 神 が 預 言 者 を と お し て 言 わ れ た
み
ことが成就するためである。
な
**
よ
「見よ、おとめが身ごもって男の子を産む。
ねむ
さ
かみ
てん し
めい
つま
むか
い
その名はインマヌエルと呼ばれる。」 な
かみ
い み
この名は、「神、われらとともにいます。」という意味である。ヨセフは
こ
う
かのじょ
ふ
じんみん
とうろく
眠りから覚めて、神の天使が命じたとおりにし、妻マリアを迎え入れた。
ていこく ぜんたい
そして、子どもが生まれるまで彼女に触れなかった。
たんじょう
***こうてい
イエスの誕生
で
しゅう
そうとく
さいしょ
じゅう
そのころ、皇帝アウグストスから帝国全体の人民を登録せよとのおふ
みんとうろく
ひとびと
みな
とうろく
じ ぶん
まち
い
れ が 出 た。 こ れ は、 ク レ ニ オ が シ リ ア 州 の 総 督 で あ っ た と き の 最 初 の 住
民登録である。人々は皆、登録するためにめいめい自分の町へ行った。
72
まち
のぼ
い
かれ
まち
け
ぞく
ち
ひ
ヨ セ フ も ガ リ ラ ヤ の ナ ザ レ の町 か ら ユ ダ ヤ の ベ ツ レ ヘ ム と い う ダ ビ デ
かれ
あいだ
つき
み
の 町 へ 上 っ て 行 っ た。 彼 は ダ ビ デ 家 に 属 し、 そ の 血 を 引 い て い た か ら で
おとこ
うい ご
う
ぬの
かい ば おけ
ね
やど や
かれ
あ る。 と こ ろ が、 彼 ら が ベ ツ レ ヘ ム に い る 間 に、 マ リ ヤ は 月 が 満 ち て、
ば しょ
のじゅく
ひつじ
む
よ ばん
男 の 初 子 を 産 み、 布 に く る ん で 飼 葉 桶 に 寝 か せ た。 宿 屋 に は 彼 ら の い る
てん し
なんにん
場所がなかったからである。
ひつじか
ひつじか
羊飼いと天使
ち ほう
かみ
てん し
かれ
た
かみ
えいこう
まわ
て
そ の 地 方 で 羊 飼 い た ち が 何 人 か 野 宿 を し て、 羊 の 群 れ の 夜 番 を し て い
かれ
ひじょう
おそ
てん し
い
わす
た。 す る と、 神 の 天 使 が 彼 ら の と こ ろ に 立 ち、 神 の 栄 光 が 周 り を 照 ら し
わたし
ひと
あた
よろこ
し
き
「恐れることはありません。
たので、彼らは非常に恐れた。天使は言った。
きょう
まち
がた
すく
ぬし
う
私 は、 す べ て の 人 に 与 え ら れ る す ば ら し い 喜 び を 知 ら せ に 来 た の で す。
かた
しゅ
がた
ぬの
かい ば おけ
なか
ね
今 日 ダ ビ デ の 町 で、 あ な た 方 の た め に 救 い 主 が お 生 ま れ に な り ま し た。
み
がた
こ の 方 こ そ 主 メ シ ア で す。 あ な た 方 は、 布 に く る ま っ て 飼 葉 桶 の 中 に 寝
か
てん
だいぐんぜい
あらわ
かみ
さん び
い
て い る み ど り ご を 見 つ け ま す。 そ れ が あ な た 方 へ の し る し で す。」 す る
てん し
とたちまちその天使に加わって天の大軍勢が現れ、神を賛美して言った。
73
* ヘロデ大王 ローマ帝国のもとで
ユダヤを治めていた残忍な王。
みこころ
たか
ところ
ひとびと
えいこう
かみ
「
いと高き所では、栄光が、神にあるように!
ち
へい わ
地では、平和が、
てん し
てん
さ
ひつじか
御心にかなう人々にあるように!」
し
で
き ごと
み
はな
い
あ
天使たちが天に去ると、羊飼いたちは、「さあ、ベツレヘムに行って、
しゅ
いそ
い
かい ば おけ
ね
さが
あ
主が知らせてくださったこの出来事を見ようではないか。」と話し合い、
こうけい
み
ひつじか
こ
てん し
はな
急 い で 行 っ て、 マ リ ヤ と ヨ セ フ と、 飼 葉 桶 に 寝 て い る み ど り ご を 探 し 当
し
き
もの
みな
ひつじか
はなし
ふ
し
ぎ
て た。 そ の 光 景 を 見 て、 羊 飼 い た ち は、 こ の 子 に つ い て 天 使 が 話 し て く
おも
むね
ひ
こころ
なか
かんが
れ た こ と を 知 ら せ た。 そ れ を 聞 い た 者 は 皆、 羊 飼 い た ち の 話 を 不 思 議 に
ひつじか
み
き
てん し
はな
思 っ た。 し か し、 マ リ ヤ は こ れ ら す べ て を 胸 に 秘 め て、 心 の 中 で 考 え て
かみ
さん び
かえ
い
おう
じ だい
う
い た。 羊 飼 い た ち は、 見 聞 き し た こ と が す べ て 天 使 の 話 し た と お り だ っ
がくしゃ
*
たので、神をあがめ、賛美しながら帰って行った。
とうほう
東方の学者たち
ひがし
くに
がくしゃ
き
い
う
イ エ ス は、 ユ ダ ヤ の ベ ツ レ ヘ ム で ヘ ロ デ 王 の 時 代 に お 生 ま れ に な っ
た。 そ の こ ろ、 東 の 国 か ら 学 者 た ち が エ ル サ レ ム に 来 て 言 っ た。「 お 生
74
* 祭司長 エルサレムの神殿で仕え
たユダヤ教のかしら。
** 律 法 学 者 当 時 の 聖 書 学 者
で 、聖 書 を 筆 写 し 、聖 書 に 通 じ 、
これを解釈して人々に教えた。ユ
ダヤ人の社会で大きな影響力を持っ
ていた。
ほし
とうほう
み
じん
おう
かれ
おが
わたし
き
かた
ま れ に な っ た ユ ダ ヤ 人 の 王 は、 ど こ に お ら れ ま す か。 私 た ち は そ の 方 の
おう
ひとびと
みな
どうよう
おう
星 を 東 方 で 見 た の で、 彼 を 拝 み に ま い り ま し た。」 そ れ を 聞 い て、 ヘ ロ
たみ
*さいしちょう
* * りっぽうがくしゃ
みな あつ
う
デ 王 は う ろ た え た。 エ ル サ レ ム の 人 々 も 皆、 同 様 で あ っ た。 そ こ で 王 は
かれ
こた
民 の 祭 司 長 た ち や 律 法 学 者 た ち を 皆 集 め て、「 メ シ ア は ど こ に 生 ま れ る
よ げんしゃ
もっと
ちい
あらわ
ぼくしゃ
か
がくしゃ
よ
よ
ほし
あらわ
じ
ことになっているのか。」とたずねた。彼らは答えた。「ユダヤのベツレ
ち
なか
ヘムです。預言者によってこう書かれています。
くんしゅ
『ユダの地、ベツレヘムよ、
けっ
おまえはユダの君主たちの中で
くんしゅ
決して最も小さいものではない。
たみ
おまえからこそ君主が現れて、
とうほう
わが民イスラエルの牧者となるからである。』」
き
かれ
おく
だ
い
そ こ で、 ヘ ロ デ は ひ そ か に 東 方 の 学 者 た ち を 呼 び 寄 せ、 星 の 現 れ た 時
き
で
こ
くわ
しら
み
し だい し
期 を 聞 き た だ し た。 そ し て、 彼 ら を ベ ツ レ ヘ ム へ 送 り 出 し て、 こ う 言 っ
わたし
おが
い
おう
き
がくしゃ
で
た。「出かけて、その子のことを詳しく調べ、見つけ次第知らせてくれ。
とうほう
み
ほし
かれ
さき だ
すす
おさなご
ば
私 も 拝 み に 行 く か ら。」 と。 王 の こ と ば を 聞 い て 学 者 た ち は 出 か け た。
す る と、 東 方 で 見 た あ の 星 が 彼 ら に 先 立 っ て 進 み、 つ い に 幼 子 の い る 場
75
しょ
うえ
と
おさなご
はは
かれ
ほし
み
うえ
かれ
よろこ
いえ
ふ
はい
おさな
所 の 上 に 止 ま っ た。 彼 ら は そ の 星 を 見 て こ の 上 も な く 喜 ん だ。 家 に 入 っ
ご
おが
たから
はこ
ひら
おうごん
にゅうこう
もつやく
おく
もの
ささ
て み る と、 幼 子 は 母 マ リ ヤ と い っ し ょ に お ら れ た。 彼 ら は ひ れ 伏 し て 幼
のち ゆめ
なか
かえ
かみ
つ
う
子 を 拝 み、 宝 の 箱 を 開 い て、 黄 金、 乳 香、 没 薬 を 贈 り 物 と し て 献 げ た。
べつ
みち
じ ぶん
さ
くに
た
かみ
さ
てん し
ゆめ
なか
あらわ
その後夢の中で、「ヘロデのところへ帰るな。」との神のお告げを受けた
ひ なん
かえ
ので、別の道から自分たちの国へと立ち去った。
がくしゃ
エジプトへ避難
とうほう
い
お
こ
ははおや
つ
に
東 方 の 学 者 た ち が 帰 り 去 っ た と き、 神 の 天 使 が 夢 の 中 で ヨ セ フ に 現 れ
わたし
つ
て 言 っ た。「 起 き て、 子 ど も と 母 親 を 連 れ て、 エ ジ プ ト に 逃 げ な さ い。
こ
さが
ころ
お
よる
おさなご
そ し て、 私 が 告 げ る ま で、 そ こ に と ど ま っ て い な さ い。 ヘ ロ デ が、 こ の
はは
つ
た
さ
し
子 を 探 し て 殺 そ う と し て い る。」 ヨ セ フ は 起 き て、 夜 の う ち に 幼 子 と そ
わたし
わたし
こ
よ
だ
かみ
の 母 を 連 れ て エ ジ プ ト へ 立 ち 去 っ た。 そ し て ヘ ロ デ が 死 ぬ ま で そ こ に と
よ げんしゃ
い
じょうじゅ
ど ま っ た。 そ れ は、「 私 は、 エ ジ プ ト か ら 私 の 子 を 呼 び 出 し た 」 と、 神
が預言者をとおして言われたことが成就するためであった。
76
* エレミヤ 紀 元 前 六 五 〇 年 ~
五八〇年ころ。預言者。
こ
みなごろ
がくしゃ
す どお
ヘロデ、子どもを皆殺しにする
ひと
おく
きんぺん
し
さい い
おお
か
いか
おとこ
こ
さ て、 ヘ ロ デ は 学 者 た ち に 素 通 り さ れ た と 知 っ て、 大 い に 怒 っ た。 そ
のこ
ころ
ねんれい
がくしゃ
つ
と
じ
き
し て、 人 を 送 り、 ベ ツ レ ヘ ム と そ の 近 辺 に い た 二 歳 以 下 の 男 の 子 を、 ひ
わ
だ
かみ
よ げんしゃ*
い
と り 残 ら ず 殺 さ せ た。 そ の 年 令 は 学 者 た ち か ら 突 き 止 め て お い た 時 期 か
じょうじゅ
なげ
き
さけ
こえ
な
ゆめ
なか
あらわ
ら 割 り 出 し た の で あ る。 こ う し て、 神 が 預 言 者 エ レ ミ ヤ を と お し て 言 わ
こえ
れたことが成就した。
おお
「声がラマに聞こえた。
こ
大きな嘆きと叫びの声だ。
なぐさ
ラケルは子どもたちのために泣き、
こ
慰められようともしない。
てん し
子どもたちがもういないのだから。」
き こく
かみ
エジプトから帰国
し
ヘ ロ デ が 死 ぬ と、 神 の 天 使 が、 夢 の 中 で エ ジ プ ト に い る ヨ セ フ に 現 れ
77
* 過越の祭り ユダヤ教の三大祭り
の一つ。子羊がこのときほふられる。
一五七ページの注釈を参照。
い
お
こ
いのち
こ
ははおや
もの
はは
つ
つ
し
ち
ち
い
かえ
て 言 っ た。「 起 き て、 子 ど も と そ の 母 親 を 連 れ、 イ ス ラ エ ル の 地 に 行 き
こ
なさい。この子の命をねらっていた者どもは、死んでしまった。」
ちち
あと
つ
し はい
そ こ で、 ヨ セ フ は、 子 ど も と そ の 母 を 連 れ て、 イ ス ラ エ ル の 地 に 帰 っ
き
い
おそ
ゆめ
つ
う
ち ほう
た。 し か し、 ア ケ ラ オ が 父 ヘ ロ デ の 跡 を 継 い で ユ ダ ヤ を 支 配 し て い る と
た
さ
まち
い
す
おさなご
聞 い て、 そ こ に 行 く こ と を 恐 れ、 夢 で お 告 げ を 受 け て、 ガ リ ラ ヤ 地 方 に
せいちょう
つよ
ち
え
み
まつ
かみ
めぐ
みやこ
かれ
うえ
たび
かれ
立 ち 去 っ た。 そ し て、 ナ ザ レ と い う 町 に 行 っ て 住 ん だ。 幼 子 イ エ ス は そ
しょうねん
まいとし
* すぎこし
こで成長して強くなり、知恵に満ち、神の恵みが彼の上にあった。
しんでん
りょうしん
神殿での少年イエス
さい
りょうしん
まつ
かんしゅう
したが
みやこ
のぼ
まつ
イ エ ス の 両 親 は 毎 年、 過 越 の 祭 り に 都 エ ル サ レ ム へ 旅 を し た。 彼 が
き かん
お
かえ
しょうねん
のこ
十 二 歳 に な っ た と き も、 両 親 は 祭 り の 慣 習 に 従 っ て 都 へ 上 っ た。 祭 り の
りょうしん
き
みち づ
なか
おも
こ
期間が終わって帰るとき、少年イエスはエルサレムに残っておられたが、
にちぶん
みち
い
しんせき
ち じん
あいだ
さが
まわ
両 親 は そ れ に 気 づ か な か っ た。 イ エ ス が 道 連 れ の 中 に い る も の と 思 い 込
み
さが
ひ
かえ
ん で、 一 日 分 の 道 の り を 行 っ た。 そ れ か ら 親 戚 と 知 人 の 間 を 捜 し 回 っ た
が、 見 つ か ら な か っ た の で、 捜 し な が ら エ ル サ レ ム ま で 引 き 返 し た。 す
78
*神殿 エルサレムの都にあった
天の神の神殿のこと 。ユダヤ 教の
お宮。
** 洗 礼 者 ヨ ハ ネ メ シ ア の 前 ぶ
れをした最後の預言者。最後にヘ
ロデ王に首をはねられた。イエス
の弟子ヨハネとは別人。 みっ か
しつもん
のち
* しんでん
み
きょうし
き
ま
なか
すわ
ひとびと
みな
はなし
き
ち
る と 三 日 の 後、 イ エ ス が 神 殿 で 教 師 た ち の 真 ん 中 に 座 ら れ、 話 を 聞 い た
え
う
こた
おどろ
りょうしん
み
おどろ
はは
り 質 問 し た り し て い る の を 見 つ け た。 聞 い て い る 人 々 は 皆、 イ エ ス の 知
い
らん
とう
恵 や 受 け 答 え に 驚 い て い た。 両 親 は こ れ を 見 て 驚 き、 母 マ リ ア が イ エ ス
わたし
しんぱい
さが
い
に 言 っ た。「 な ぜ こ ん な こ と を し て く れ ま し た か。 ご 覧 な さ い。 お 父 さ
わたし
さが
わたし
かなら
じ ぶん
ちち
いえ
まも私も心配して捜していたのです。」すると、イエスは言われた。「ど
ぞん
りょうしん
い
み
う し て 私 を お 捜 し に な っ た の で す か。 私 が 必 ず 自 分 の 父 の 家 に い る こ と
さと
くだ
かえ
りょうしん
つか
を、 ご 存 じ な か っ た の で す か。」 し か し、 両 親 は イ エ ス の こ と ば の 意 味
を悟らなかった。
こころ
おさ
ち
そ れ か ら、 イ エ ス は い っ し ょ に 下 っ て、 ナ ザ レ に 帰 り、 両 親 に 仕 え て
え
せ たけ
ま
かみ
ひと
あい
さい
お ら れ た。 マ リ ヤ は こ れ ら の こ と す べ て を 心 に 納 め て い た。 イ エ ス は 知
はじ
恵も背丈も増し、また、神と人とに愛された。
せんれいしゃ
洗礼者ヨハネ
せんきょう
** せんれいしゃ
あらわ
あら の
く
あらた
イエスが宣教を始められたのは、およそ三十歳のときであった。
そ の こ ろ、 洗 礼 者 ヨ ハ ネ が 現 れ て、 ユ ダ ヤ の 荒 野 で、「 悔 い 改 め よ。
79
*洗礼 バプテスマともいう。罪
を悔いて、神を信じ従う新しい生
活に入るために行う儀式。
てん
くに
ちか
ぜん ど
おし
がわ ぞ
の
つた
ち ほう い っ た い
ひとびと
天 の 国 は 近 づ い た。」 と 教 え を 宣 べ 伝 え て い た。 そ こ で、 エ ル サ レ ム と
で
き
じ ぶん
つみ
こくはく
がわ
かれ
*せんれい
う
ユ ダ ヤ 全 土 と、 ヨ ル ダ ン 川 沿 い の 地 方 一 帯 か ら、 人 々 が ヨ ハ ネ の と こ ろ
じん
さい し
つか
に出かけて来て、自分の罪を告白し、ヨルダン川で彼から洗礼を受けた。
しつもん
かれ
おおやけ
わたし
ユダヤ人たちが、エルサレムから祭司たちをヨハネのもとに遣わして、
く
あらた
い
がた
みず
せんれい
さず
わたし
「 あ な た は、 ど な た で す か。」 と 質 問 さ せ た と き、 彼 は 公 に、「 私 は メ シ
わたし
アではない。」とはっきり言った。
あと
こ
かた
わたし
ちから
かた
わたし
はきもの
「 私 は、 悔 い 改 め の た め に、 あ な た 方 に 水 で 洗 礼 を 授 け て い る が、 私
ぬ
ね
う
ほう
こ
み
い
み
よ
の 後 か ら 来 ら れ る 方 は、 私 よ り も 力 の あ る 方 で す。 私 は、 そ の 履 物 を お
じ ぶん
脱がせする値打ちもありません。」
つみ
と
のぞ
かみ
こひつじ
わたし
あと
わたし
かた
こ
ヨ ハ ネ は、 自 分 の 方 へ イ エ ス が 来 ら れ る の を 見 て 言 っ た。「 見 よ、 世
わたし い ぜん
わたし
い
かた
の 罪 を 取 り 除 く 神 の 小 羊! こ れ こ そ『 私 の 後 か ら、 私 に ま さ る 方 が 来 ら
わたし
み
かた
かみ
こ
あか
き
れ る。 私 以 前 か ら お ら れ た か ら で あ る。』 と 私 が 言 っ た 方 の こ と で す。
私 は そ れ を 見 た の だ か ら、 こ の 方 こ そ 神 の 子 で あ る と 証 し し て 来 た の で
す。」
80
*聖霊 神の霊の別名。神ご自身。
せんれい
せんれい
う
う
イエス、洗礼を受ける
こ
ち ほう
がわ
イ エ ス は 洗 礼 を 受 け る た め、 ガ リ ラ ヤ 地 方 か ら ヨ ル ダ ン 川 の ヨ ハ ネ の
い
わたし
せんれい
う
と こ ろ へ 来 ら れ た。 と こ ろ が、 ヨ ハ ネ は、 そ れ を し き り に と め よ う と し
わたし
こ
いま
う
て言った。「私こそ、あなたから洗礼を受けるべきですのに、あなたが、
こた
私のところへ来られたのですか。」
ただ
じっこう
わたし
し か し、 イ エ ス は お 答 え に な っ た。「 今 は、 受 け さ せ て も ら い た い。
い
す べ て の 正 し い こ と を 実 行 す る の は、 私 た ち に ふ さ わ し い こ と で す。」
せんれい
う
みず
あ
てん
ひら
そ こ で、 ヨ ハ ネ は イ エ ス の 言 わ れ る と お り に し た。 こ う し て、 イ エ ス は
かみ
れい
はと
うえ
くだ
く
み
てん
洗礼を受け、すぐに水から上がられた。すると、天が開いた。ヨハネは、
わたし
あい
こ
わたし
こころ
もの
こえ
神 の 霊 が 鳩 の よ う に イ エ ス の 上 に 降 っ て 来 る の を 見 た。 そ の と き、 天 か
う
みちび
あら の
い
あく ま
ため
ら、「これは私の愛する子、私の心にかなう者」という声がした。
し れん
試練を受ける
かみ * せいれい
さて、イエスは神の聖霊に導かれて荒野に行かれた。悪魔に試される
81
*誘惑する者。悪魔のこと。
** 聖 書 現 在 の 「 旧 約 聖 書 」 を
ユダヤ人は「聖書」と呼ぶ。巻 末
の「聖書について」を参照。
***サタン 悪魔の別名。
* ゆうわく
もの
にち
ちか
や だんじき
のち
い
くうふく
おぼ
かみ
こ
ためである。そして四十日四十夜断食した後、ついに空腹を覚えられた。
いし
めい
こた
す る と、 誘 惑 す る 者 が 近 づ い て、 イ エ ス に 言 っ た。「 も し 神 の 子 な ら、
ひと
くち
で
い
い
つ
い
しんでん
や
ね
こ れ ら の 石 が パ ン に な る よ う に 命 じ て ご ら ん。」 イ エ ス は お 答 え に な っ
た。
かみ
「『人はパンだけで生きるものではない。
か
みやこ
神の口から出る一つ一つのことばで生きるのである。』
**せいしょ
あく ま
と聖書に書いてある。」
い
あし
いし
めい
う
かみ
い
ささ
こ
と
お
しゅ
ため
そ こ で、 悪 魔 は イ エ ス を エ ル サ レ ム の 都 に 連 れ て 行 き、 神 殿 の 屋 根 に
た
てん し
か
かみ
立たせて、言った。「もしあなたが神の子なら、飛び降りてみなさい。
かみ
『あなたの足が石に打ちつけられないように、
せいしょ
神は天使たちに命じて、あなたを支えさせる。』
あく ま
か
ひじょう
たか
やま
つ
い
よ
くにぐに
と 聖 書 に 書 い て あ る。」 イ エ ス は 言 わ れ た。「『 あ な た の 神 で あ る 主 を 試
つぎ
してはならない』とも書いてある。」
はんえい
み
ふ
わたし
おが
ぜん ぶ あた
次 に、 悪 魔 は イ エ ス を 非 常 に 高 い 山 に 連 れ て 行 き、 世 の す べ て の 国 々
い
い
***
しりぞ
と そ の 繁 栄 を 見 せ て、「 も し、 ひ れ 伏 し て 私 を 拝 む な ら、 こ れ を 全 部 与
えよう」と言った。すると、イエスは言われた。「サタンよ、退け!
82
*小 羊 当時のユダヤ人は、罪を取
り除き天の神の怒りをのがれるため
小羊を犠牲としてささげた。後にイ
エスご自身は全人類の罪のために
犠牲となる。
き
かみ
つか
しゅ
く
おが
あらた
しゅ
てん
つか
くに
ちか
い
『あなたの神である主を拝み、ただ主だけに仕えよ』 せいしょ
か
あく ま
はな
さ
てん し
と 聖 書 に 書 い て あ る。」 そ こ で、 悪 魔 は 離 れ 去 っ た。 そ し て、 天 使 た ち
こひつじ
が来てイエスに仕えた。
かみ
神の小羊
ご
の
つた
はじ
で
し
その後、イエスは、
「悔い改めなさい。天の国は近づいた。」と言って、
ふくいん
福音を宣べ伝え始められた。
ある
み
み
かみ * こひつじ
い
き
あ る と き、 ヨ ハ ネ は ふ た り の 弟 子 と い っ し ょ に い た。 そ し て、 イ エ
で
し
したが
ふり
かえ
かれ
「見よ、神の小羊。」と言った。それを聞
スが歩いておられるのを見て、
く
み
なん
よう
い
かれ
せんせい
い て 、ふ た り の 弟 子 は イ エ ス に 従 っ た 。 イ エ ス は 振 り 返 り 、彼 ら が つ い
とま
い
き
て 来 る の を 見 て、「 何 の 用 で す か。」 と 言 わ れ た。 彼 ら が、「 先 生、 ど こ
い
かれ
い
とま
「来なさい。そうすればわかる
にお泊りですか。」と言うと、イエスは、
ところ
み
ひ
とま
ご
ご
じ
で し ょ う。」 と 言 わ れ た。 そ こ で、 彼 ら は つ い て 行 き、 イ エ ス が 泊 っ て
お ら れ る 所 を 見 、そ し て そ の 日 は 、イ エ ス の も と に 泊 っ た 。 午 後 四 時 ご
ろのことである。
83
*ペテロ ギリシア語 。「石」とい
う意 味 。ヘブライ語で「ケパ」。
「あなたは神の子です。」
きょうだい
き
かれ
したが
じ ぶん
きょうだい
あ
ヨ ハ ネ の こ と ば を 聞 い て、 イ エ ス に 従 っ た ふ た り の う ち の ひ と り は、
わたし
で
あ
い
シモンの兄弟アンデレであった。彼は、まず自分の兄弟シモンに会って、
つ
い
かれ
み
こ
「私たちはメシアに出会った。」と言った。そして、シモンをイエスのと
*
よ
い
い
で
あ
こ ろ に 連 れ て 行 っ た。 イ エ ス は 彼 を 見 つ め て、「 あ な た は ヨ ハ ネ の 子 シ
ち ほう
モンです。ペテロと呼ぶことにします。」と言われた。
ひ
ピリポとナタナエル
したが
い
まち
あくる日、イエスは、ガリラヤ地方へ行こうとされ、ピリポに出会って、
わたし
しゅっしん
あ
い
わたし
「私に従いなさい。」と言われた。ピリポは、アンデレとペテロの町、ベッ
よ げんしゃ
か
かた
で
あ
ひと
「私たちは、
サイダの出身であった。ピリポはナタナエルに会って言った。
よ
で
い
預 言 者 た ち が 書 い て い る 方 に 出 会 っ た。 ナ ザ レ の 人 イ エ ス だ。」 ナ タ ナ
き
み
い
ほう
く
み
かれ
エルが、「ナザレから良いものが出るのだろうか」と言うと、ピリポは、
じ ぶん
「来て、見なさい。」と言った。
み
ひと
しん
じん
ひと
イ エ ス は、 ナ タ ナ エ ル が ご 自 分 の 方 へ 来 る の を 見 て、 彼 の こ と を こ う
い
言 わ れ た。「 見 な さ い。 こ の 人 こ そ、 真 の イ ス ラ エ ル 人 だ。 こ の 人 に は
84
*人の子 イエスはよく「私」の代
りに自分のことを「人の子」と呼ん
だ。五六ページの注釈を参照 。
いつわ
よ
わたし
まえ
ぞん
わたし
い
偽 り が な い。」 ナ タ ナ エ ル が、「 ど う し て 私 を ご 存 じ な の で す か。」 と 言
き
した
み
こた
う と 、 イ エ ス は 、「 ピ リ ポ が あ な た を 呼 ぶ 前 に 、 私 は あ な た が い ち じ
せんせい
かみ
こ
おう
く の 木 の 下 に い る の を 見 ま し た。」 と 答 え ら れ た。 す る と、 ナ タ ナ エ ル
い
い
き
した
み
は、「 先 生、 あ な た は 神 の 子 で す! あ な た は イ ス ラ エ ル の 王 で す!」 と
い
しん
おお
み
「いちじくの木の下にあなたがいるのを見た、
言った。イエスは言われた。
い
がた
い
てん
と 言 っ た の で 信 じ る の で す か。 こ れ よ り 大 き な こ と を あ な た は 見 る こ と
ひら
かみ
てん し
*ひと
こ
うえ
のぼ
お
がた
になります。」また言われた。「よくよくあなた方に言っておきます。天
み
ちから
み
かえ
かれ
ひょうばん
まわ
ち
が 開 け て、 神 の 天 使 た ち が 人 の 子 の 上 に 昇 り 降 り す る の を、 あ な た 方 は
せいれい
見ることになります。」
ひろ
しょかいどう
おし
ひとびと
そんけい
う
イ エ ス は 聖 霊 の 力 に 満 ち て ガ リ ラ ヤ に 帰 ら れ た。 彼 の 評 判 は 周 り の 地
ほういったい
にん
りょうし
ある
あみ
う
方一帯に広まった。イエスは諸会堂で教え、人々から尊敬を受けられた。
で し
弟子になった四人の漁師
こ
ふたた
で
あ
りょうし
イ エ ス が、 ガ リ ラ ヤ 湖 の ほ と り を 歩 い て お ら れ た と き、 網 を 打 っ て い
る ペ テ ロ と ア ン デ レ に 再 び 出 会 っ た。 ふ た り は 漁 師 だ っ た の で あ る。 イ
85
わたし
い
い
き
かれ
べつ
がた
あみ
す
にんげん
きょうだい
りょうし
したが
ちち
エ ス は、「 私 に つ い て 来 な さ い。 あ な た 方 を、 人 間 を と る 漁 師 に し て あ
すす
げよう。」と言われた。彼らはただちに網を捨ててイエスに従った。
ふね
なか
あみ
て
い
らん
そ こ か ら 進 ん で 行 く と、 別 の ふ た り の 兄 弟、 ヤ コ ブ と ヨ ハ ネ が、 父
まね
かれ
ふね
ちちおや
のこ
ゼ ベ ダ イ と い っ し ょ に、 舟 の 中 で 網 の 手 入 れ を し て い る の を ご 覧 に な っ
したが
なお
ち ほう ぜ ん た い
めぐ
しょかいどう
おし
てん
くに
ふくいん
た。 そ こ で ふ た り を 招 か れ た。 彼 ら も た だ ち に、 舟 と 父 親 と を 残 し て イ
びょうき
エスに従った。
でんどう
伝道、病気を治す
の
つた
みんしゅう
びょうき
わずら
イ エ ス は ガ リ ラ ヤ 地 方 全 体 を 巡 っ て、 諸 会 堂 で 教 え、 天 の 国 の 福 音
ひょうばん
ち ほう い っ た い
ひろ
ひとびと
を 宣 べ 伝 え、 ま た、 民 衆 の あ ら ゆ る 病 気 と あ ら ゆ る 患 い を い や さ れ た。
びょうき
くる
なや
ひとびと
あくれい
と
そ こ で、 イ エ ス の 評 判 は シ リ ヤ 地 方 一 帯 に ま で 広 ま っ た。 人 々 が イ エ ス
もの
もの
ちゅうぶ
もの
びょうにん
つ
き
の と こ ろ へ、 い ろ い ろ な 病 気 や 苦 し み に 悩 む 人 々、 悪 霊 に 取 り つ か れ た
ひとびと
みな
者、 て ん か ん の 者、 中 風 の 者 な ど、 あ ら ゆ る 病 人 を 連 れ て 来 た。 イ エ ス
がわ
む
がわ
おおぜい
ぐんしゅう
き
は こ れ ら の 人 々 を 皆 い や さ れ た。 こ う し て、 ガ リ ラ ヤ、 デ カ ポ リ ス、 エ
ル サ レ ム、 ユ ダ ヤ、 ヨ ル ダ ン 川 の 向 こ う 側 か ら、 大 勢 の 群 衆 が 来 て イ エ
86
したが
ぐんしゅう
スに従った。
み
き
やま
のぼ
くち
ひら
こし
お
おし
で
し
こ の 群 衆 を 見 て、 イ エ ス は 山 に 登 ら れ た。 腰 を 下 ろ さ れ る と、 弟 子 た
ひと
ひとびと
ちがみもとに来た。そこで、イエスは口を開き、教えられた。
さいわ
幸いな人
さいわ
てん
くに
かれ
「幸いなのは、こころのくだかれた人々、
さいわ
にゅうわ
うれ
かな
ひとびと
の国は彼らのものだから。
天
さいわ
ひとびと
幸
いなのは、愁い悲しむ人々、
かれ
なぐさ
らは慰められるから。
彼
さいわ
あわ
ぎ
した
もと
ひとびと
幸
いなのは、柔和な人々、
かれ
ち
そうぞく
らは地を相続するから。
彼
さいわ
ぶか
ひとびと
幸
いなのは、義を慕い求める人々、
かれ
み
た
らは満ち足りるから。
彼
幸
いなのは、憐れみ深い人々、
かれ
らはあわれまれるから。
彼
87
*預言者 神の啓示を受け、神の
名によって神のことばを語る人 。
さいわ
かみ
こ
み
こころ
かれ
かみ
きよ
ひとびと
幸
いなのは、心の清い人々、
かれ
よ
らは神を見るから。
彼
さいわ
へい わ
ひとびと
幸
いなのは、平和をつくる人々、
てん
くに
かれ
らは神の子と呼ばれるから。
彼
さいわ
ぎ
はくがい
ひとびと
幸いなのは、義のゆえに迫害される人々、
わるぐち
い
がた
さいわ
よろこ
おお
よろこ
の国は彼らのものであるから。
天
わたし
ひとびと
はくがい
私 の た め に、 人 々 に の の し ら れ、 迫 害 さ れ、 ま た、 あ り も し な い こ と
てん
おお
むく
い ぜん
* よげん
で 悪 口 を 言 わ れ る と き、 あ な た 方 は 幸 い で す。 喜 び な さ い。 大 い に 喜 び
しゃ
はくがい
な さ い。 天 に あ な た の た め に、 大 き な 報 い が あ る の だ か ら。 以 前 の 預 言
ひと
と
う
がた
者たちも、そのように迫害されたのです。
あわ
哀れな人
あわ
なぐさ
哀
れなのは、富んでいるあなた方、
めを、すでに受けているから。
慰
あわ
た
あ
がた
哀
れなのは、いま食べ飽きているあなた方、
88
*にせ預言者 神の啓示を受けて
い る と い い 、神 の 名 を 使 い 、 人 を
惑わす者のこと。金銭や名誉を目
的とした預言者。
う
かな
な
がて、飢えるようになるから。
や
あわ
わら
がた
哀
れなのは、いま笑っているあなた方、
あわ
せん ぞ
き
*
よ げんしゃ
がた
い
てき
あい
にく
彼
らの先祖は、にせ預言者たちをそのようにほめたからです。
かれ
がて、悲しみ泣くようになるから。
や
ひと
がた
あわ
もの
す
べての人にほめられるとき、あなた方は哀れな者です。
あい
愛と憐れみ
わたし
もの
よ
あっこう
い
もの
しゅくふく
ぶじょく
もの
私 の こ と ば を 聞 く あ な た 方 に 言 っ て お き ま す。 敵 を 愛 し、 あ な た を 憎
いの
ほお
う
もの
いっぽう
ほお
む
む 者 に 良 く し な さ い。 悪 口 を 言 う 者 を 祝 福 し、 あ な た を 侮 辱 す る 者 の た
うわ ぎ
うば
と
もの
した ぎ
こば
もと
もの
め に 祈 り な さ い。 あ な た の 頬 を 打 つ 者 に は、 も う 一 方 の 頬 を も 向 け な さ
あた
もの
うば
もの
と
もど
い。 上 着 を 奪 い 取 る 者 に は、 下 着 を も 拒 ん で は い け ま せ ん。 求 め る 者 に
ひと
おも
ひと
じ
は、 だ れ に で も 与 え な さ い。 あ な た の 物 を 奪 う 者 か ら 取 り 戻 そ う と し て
ぶん
あい
ひと
あい
すぐ
は い け ま せ ん。 人 に し て も ら い た い と 思 う こ と を、 人 に も し な さ い。 自
い
つみ
あい
ひと
あい
分 を 愛 し て く れ る 人 を 愛 し た か ら と い っ て、 ど ん な に 優 れ た こ と だ、 と
言 う の で し ょ う か。 罪 び と で さ え も、 愛 し て く れ る 人 を 愛 し て い る の で
89
すぐ
じ ぶん
い
ひと
よ
つみ
おな
す。 ま た、 自 分 に よ く し て く れ る 人 に 善 い こ と を し た か ら と い っ て、 ど
かえ
か
すぐ
ん な に 優 れ た こ と だ、 と 言 う の で し ょ う か。 罪 び と で も 同 じ こ と を し て
い
つみ
かえ
つみ
い る の で す。 返 し て も ら う つ も り で 貸 し た と こ ろ で、 ど ん な 優 れ た こ と
か
がた
てき
あい
ひと
よ
だ、 と 言 う の で し ょ う か。 罪 び と さ え、 返 し て も ら お う と し て、 罪 び と
なに
じょうけん
か
むく
に貸すのです。しかし、あなた方は敵を愛しなさい。人に善いことをし、
かみ
こ
かみ
おん
し
もの
あくにん
あわ
何 も 条 件 を つ け ず に 貸 し な さ い。 そ う す れ ば、 す ば ら し い 報 い が あ り、
ぶか
がた
ちち
じ
ひ ぶか
がた
じ
ひ ぶか
あ な た は 神 の 子 と な り ま す。 神 は、 恩 を 知 ら な い 者 に も 悪 人 に も、 憐 れ
よ
ひかり
しお
しお
しお け
しお
なに
み 深 い か ら で す。 あ な た 方 の 父 が 慈 悲 深 い よ う に、 あ な た 方 も 慈 悲 深 く
しお
ありなさい。
ち
ち
地の塩、世の光
がた
しお け
と
なん
やく
た
そと
あ な た 方 は 地 の 塩 で す。 し か し、 塩 が 塩 気 を な く し た ら、 そ の 塩 は 何
な
す
ひとびと
ふ
に よ っ て 塩 気 を 取 り も ど す の で し ょ う。 も は や、 何 の 役 に も 立 た ず、 外
がた
よ
ひかり
やま
うえ
まち
かく
に投げ捨てられ、人々に踏みつけられるだけです。
あなた方は世の光です。山の上にある町は、隠れることができません。
90
あか
ひと
て
ます
した
お
ひと
しょくだい
がた
うえ
お
ひかり
ひとびと
いえ
まえ
ま た、 明 り を つ け て 升 の 下 に 置 く 人 は い ま せ ん。 燭 台 の 上 に 置 い て、 家
かがや
ひとびと
がた
ぎ
おこな
み
がた
てん
に い る 人 す べ て を 照 ら す の で す。 こ の よ う に、 あ な た 方 の 光 を 人 々 の 前
ちち
み
ひと
まえ
ぜんこう
き
に 輝 か し な さ い。 人 々 が、 あ な た 方 の 義 の 行 い を 見 て、 あ な た 方 の 天 の
こころ
父をあがめるようになるためです。
かみ
み
神は心を見る
ひと
ひと
こま
てん
ちち
ひと
むく
ほどこ
ぎ ぜんしゃ
ほ か の 人 に 見 て も ら お う と し て、 人 の 前 で 善 行 を し な い よ う に 気 を つ
まず
けなさい。そうでないと、天の父から報いをいただけません。
ひと
かいどう
まち かど
まえ
だ か ら、 貧 し い 人 や 困 っ て い る 人 に 施 し を す る と き に は、 偽 善 者 た ち
ふ
い
かれ
むく
う
が 人 か ら ほ め ら れ よ う と 会 堂 や 街 角 で す る よ う に、 み ん な の 前 で ラ ッ パ
ほどこ
みぎ
て
ひだり
て
を 吹 い て は い け ま せ ん。 よ く 言 っ て お き ま す が、 彼 ら は す で に 報 い を 受
し
ほどこ
かく
け て い る の で す。 あ な た は 施 し を す る と き、 右 の 手 の す る こ と を 左 の 手
かく
み
てん
ちち
むく
に 知 ら せ て は い け ま せ ん。 あ な た の 施 し が 隠 さ れ る た め で す。 そ う す れ
ば、 隠 れ た こ と を 見 て お ら れ る 天 の 父 が、 あ な た に 報 い て く だ さ る の で
す。
91
いの
祈るときには
いの
ぎ ぜんしゃ
かいどう
おおどお
かど
た
いの
だい す
かれ
ひと
み
祈 る と き に も、 偽 善 者 の よ う で あ っ て は い け ま せ ん。 彼 ら は、 人 に 見
い
かれ
むく
う
いの
て も ら お う と、 会 堂 や 大 通 り の 角 に 立 っ て 祈 る の が 大 好 き で す。 は っ き
おく
へ
や
はい
と
し
かく
り 言 い ま す が、 彼 ら は す で に そ の 報 い を 受 け て い る の で す。 あ な た が 祈
ちち
かみ
いの
かく
み
る と き は、 ひ と り で 奥 ま っ た 部 屋 に 入 り、 戸 を 閉 め、 隠 れ た と こ ろ に お
かみ
むく
いの
かみ
し
もの
ら れ る 父 な る 神 に 祈 り な さ い。 そ う す れ ば、 隠 れ た こ と を 見 て お ら れ る
む
だ
かれ
神 が 報 い て く だ さ い ま す。 ま た、 祈 る と き は、 神 を 知 ら な い 者 た ち の よ
かず
おお
き
い
おも
かれ
う に、 な が な が と 無 駄 な こ と を と な え て は い け ま せ ん。 彼 ら は、 こ と ば
ちち
かみ
ねが
まえ
がた
ひつよう
ぞん
数 が 多 け れ ば、 聞 き 入 れ ら れ る と 思 っ て い ま す。 彼 ら の ま ね を し て は い
いの
け ま せ ん。 父 な る 神 は、 願 う 前 か ら、 あ な た 方 に 必 要 な も の を ご 存 じ な
てん
わたし
ちち
のです。だから、こう祈りなさい。
み
な
『天にいます私たちの父よ、
み くに
き
御名があがめられますように。
みこころ
てん
おこな
御国が来ますように。
御心が天で行われるとおり、
92
*アーメン 「真実に」
「確かに」
「そのとおり」という意 味 。 祈
りにつかわれる言 葉 。
ち
わたし
おこな
ひ
び ひつよう
かて
地でも行われますように。
わたし
もの
ちから
つみ
ゆうわく
えいこう
あやま
すく
ゆる
あ
ゆる
きょう
てん
ちち
あた
あやま
私たちが日々必要な糧を、今日もお与えください。
わたし
あやま
ひと
私たちの罪をお赦しください。
わたし
私たちも、
ゆる
私たちに過ちのある人を
わたし
赦しましたから。
わる
私たちを誘惑に遭わせず、
くに
悪い者からお救いください。
*
国と力と栄光は、とこしえに
ひと
あなたのものだからです。アーメン。』
ひと
ゆる
てん
ちち
ゆる
あやま
ゆる
も し 人 の 過 ち を 赦 す な ら、 天 の 父 も あ な た の 過 ち を お 赦 し に な り ま
す。 し か し、 も し 人 を 赦 さ な い な ら、 天 の 父 も あ な た の 過 ち を お 赦 し に
なりません。
93
てん
たから
がた
天に宝を
むし
く
じ ぶん
つ
ちじょう
ざいほう
たくわ
ぬすびと
しの
こ
ぬす
あ な た 方 は 自 分 の た め に、 地 上 に 財 宝 を 貯 え て は い け ま せ ん。 そ こ で
だ
がた
てん
ざいほう
たくわ
むし
く
は、 虫 が 食 っ た り、 さ び 付 い た り す る し、 ま た、 盗 人 が 忍 び 込 ん で 盗 み
つ
ぬすびと
しの
こ
と
出 し た り し ま す。 あ な た 方 は 天 に 財 宝 を 貯 え な さ い。 そ こ で は、 虫 が 食
ざいほう
しゅじん
つか
こころ
いっぽう
にく
う こ と も、 さ び 付 く こ と も な く、 ま た、 盗 人 が 忍 び 込 ん で 取 る こ と も な
どう じ
い。あなたの財宝のあるところに、あなたの心もあるのです。
た ほう
あい
いっぽう
した
た ほう
かろ
だ れ も、 同 時 に ふ た り の 主 人 に 仕 え る こ と は で き ま せ ん。 一 方 を 憎 ん
がた
かみ
とみ
りょうほう
つか
で 他 方 を 愛 す る か、 一 方 に 親 し ん で 他 方 を 軽 ん じ る か、 ど ち ら か で す。
くに
もと
がた
い
じ ぶん
いのち
なに
た
あなた方は、神と富の両方に仕えるということはできないのです。
かみ
神の国を求めよ
の
おも
なや
じ ぶん
からだ
なに
き
しんぱい
それゆえ、あなた方に言います。自分の命のことで、何を食べようか、
なに
いのち
た
もの
からだ
い ふく
たいせつ
何 を 飲 も う か と 思 い 悩 ん だ り、 自 分 の 体 の こ と で、 何 を 着 よ う か と 心 配
す る こ と は や め な さ い。 命 は 食 べ 物 よ り も、 体 は 衣 服 よ り も 大 切 で は あ
94
*ソロモン イスラエルの王 。在位
紀元前九七一年~前九三二年。ダビ
デ王の子。
「ソロモンの栄華」とう
たわれるほど彼の輝かしい治世はイ
スラエル王朝の黄金時代であった。
そら
とり
み
たね
ま
がた
てん
か
ちち
い
とり
やしな
くら
おさ
り ま せ ん か。 空 の 鳥 を 見 な さ い。 種 も 蒔 か ず、 刈 り 入 れ も せ ず、 倉 に 納
がた
とり
か
ち
め る こ と も し ま せ ん。 け れ ど も、 あ な た 方 の 天 の 父 は 鳥 を 養 っ て い て く
しんぱい
がた
じゅみょう
すこ
の
だ さ る の で す。 あ な た 方 は、 鳥 よ り も 価 値 あ る も の で は あ り ま せ ん か。
い ふく
しんぱい
の
そだ
心 配 し た と こ ろ で、 あ な た 方 の だ れ が 寿 命 を 少 し で も 延 ば せ ま す か。 な
かんが
はたら
つむ
えい が
きわ
ぜ、 衣 服 に つ い て 心 配 す る の で す か。 野 の ゆ り が ど の よ う に 育 つ の か、
*
はな
き かざ
考 え て み な さ い。 働 き も せ ず、 紡 ぎ も し ま せ ん。 し か し、 栄 華 を 極 め た
きょう
の
は
あ
す
ろ
な
こ
くさ
かみ
と き の ソ ロ モ ン で さ え、 こ の 花 の 一 つ ほ ど に も 着 飾 っ て は い ま せ ん で し
よそお
がた
た。 今 日 は 野 に 生 え、 明 日 は 炉 に 投 げ 込 ま れ る と い う 草 で さ え、 神 は こ
うす
ひと
なに
た
なに
の
の よ う に 装 っ て く だ さ る の で す か ら、 あ な た 方 に は な お さ ら の こ と で は
しんこう
ありませんか。
き
い
しんぱい
かみ
『何を飲もうか』
ああ、信仰の薄い人たちよ。だから、『何を食べようか』
なに
しん
ひとびと
せつ
もと
てん
ちち
『 何 を 着 よ う か 』 と 言 っ て、 心 配 す る の は や め な さ い。 そ れ は み な、 神
ひつよう
ぞん
なに
かみ
を 信 じ な い 人 々 が 切 に 求 め て い る も の で す。 あ な た の 天 の 父 は、 こ れ ら
くに
かみ
ぎ
もと
くわ
の も の が み な あ な た に 必 要 で あ る こ と を ご 存 じ で す。 何 よ り も ま ず、 神
あた
あ
す
しんぱい
あ
す
あ
す
じ しん
の国と神の義を求めなさい。そうすれば、それらのものも加えて、みな、
与 え て く だ さ い ま す。 明 日 の こ と を 心 配 す る な。 明 日 の こ と は 明 日 自 身
95
*律法 神の意志による教えと戒
めのこと 。一般 に「 十戒 」とその
他の戒めをいう。
しんぱい
もん
にち
はい
ろう く
ひ
あた
じゅうぶん
さが
が心配します。一日の労苦はその日だけで、十分です。
せま
つづ
狭い門から入りなさい
もと
み
もん
つづ
つづ
ひら
求 め 続 け な さ い。 そ う す れ ば、 与 え ら れ ま す。 探 し 続 け な さ い。 そ
もと
ひと
う
さが
ひと
み
だ
もん
ひと
う す れ ば 、見 つ か り ま す 。 門 を た た き 続 け な さ い 。 そ う す れ ば 、開 か れ
ひら
い
じ ぶん
こ
いし
あた
ひと
ま す 。 だ れ で も 、求 め る 人 は 受 け 、探 す 人 は 見 つ け 出 し 、門 を た た く 人
さかな
い
へび
あた
には開かれます。パンをくださいと言う自分の子どもに、石を与える人
がた
わる
もの
じ ぶん
こ
よ
もの
あた
が い ま す か。 魚 を く だ さ い と 言 う の に、 蛇 を 与 え ま す か。 そ の よ う に、
し
がた
てん
ちち
もと
ひと
よ
あなた方は悪い者であっても自分の子どもには良い物を与えることを
た にん
知 っ て い る な ら ば 、ま し て 、あ な た 方 の 天 の 父 は 、求 め る 人 に 良 い も の
おも
がた
た にん
おこな
* りっぽう
よ げんしゃ
をくださらないことがありましょうか。それゆえ、他人からしてほしい
おし
もん
はい
ほろ
いた
もん
おお
みち
ひろびろ
と思うことを、あなた方も他人に行いなさい。これこそ律法と預言者の
せま
教えです。
はい
もの
おお
いた
もん
せま
みち
狭い門から入りなさい。滅びに至る門は大きく、その道も広々として、
そ こ か ら 入 る 者 が 多 い 。 し か し 、い の ち に 至 る 門 は な ん と 狭 く 、そ の 道
96
ほそ
ようじん
けいかい
み
もの
かれ
やさ
ひつじ
も細いことか。それを見いだす者はまれです。
もの
よ げんしゃ
にせ者に用心しなさい
く
うちがわ
ごうよく
おおかみ
がた
み
み
かれ
み
わ
に せ 預 言 者 を 警 戒 し な さ い。 彼 ら は 優 し い 羊 の よ う に 見 せ か け て や っ
いばら
みの
て 来 る が、 内 側 は 強 欲 な 狼 で す。 あ な た 方 は、 そ の 実 で 彼 ら を 見 分 け ま
よ
き
よ
み
むす
わる
き
わる
み
むす
よ
き
わる
す。 茨 に ぶ ど う が、 あ ざ み に い ち じ く が 実 る で し ょ う か。 そ の よ う に す
み
わる
き
よ
み
べ て 良 い 木 は 良 い 実 を 結 び、 悪 い 木 は 悪 い 実 を 結 び ま す。 良 い 木 に 悪 い
よ
み
むす
き
き
たお
ひ
な
こ
実がなることはできず、また、悪い木に良い実がなることもできません。
がた
み
かれ
み
わ
良 い 実 を 結 ば な い 木 は み な、 切 り 倒 さ れ て 火 に 投 げ 込 ま れ ま す。 こ う い
しんじゃ
しゅ
しゅ
い
もの
みな
てん
くに
はい
うわけで、あなた方はその実で彼らを見分けることができます。
む
にせ信者
わたし
わたし
てん
ちち
みこころ
おこな
もの
はい
よ
お
私 に 向 か っ て、『 主 よ、 主 よ 』 と 言 う 者 が 皆、 天 の 国 に 入 る わ け で は
あ り ま せ ん。 私 の 天 の 父 の 御 心 を 行 う 者 だ け が 入 る の で す。 世 の 終 わ り
97
な
ひ
せっきょう
おおぜい
もの
な
わたし
しゅ
あくれい
しゅ
お
だ
わたし
な
の さ ば き の 日 に は、 大 勢 の 者 が 私 に、『 主 よ、 主 よ、 私 た ち は あ な た の
き せき
おこな
い
名 に よ っ て 説 教 し、 あ な た の 名 に よ っ て 悪 霊 を 追 い 出 し、 あ な た の 名 に
わたし
い
わたし
がた
まった
し
ふ ほう
よって奇跡をいろいろ行ったではありませんか。』と言います。そのとき、
おこな
もの
わたし
はな
さ
き
じっこう
もの
みな
いわ
私 は き っ ぱ り と こ う 言 い ま す。『 私 は あ な た 方 を 全 く 知 ら な い。 不 法 を
行う者ども、私から離れ去れ!』
じっこう
わたし
実行しなさい
じ ぶん
いえ
た
かしこ
ひと
に
あめ
ふ
こうずい
お
よ
そ こ で、 私 の こ れ ら の こ と ば を 聞 い て、 そ れ を 実 行 す る 者 は 皆、 岩 の
うえ
かぜ
ふ
いえ
おそ
たお
いわ
ど だい
上に自分の家を建てた賢い人に似ています。雨が降って洪水が押し寄せ、
わたし
き
じっこう
もの
みな
すな
うえ
いえ
風 が 吹 い て そ の 家 を 襲 っ て も、 倒 れ ま せ ん。 岩 を 土 台 と し て い る か ら で
た
おろ
ひと
に
あめ
ふ
こうずい
お
よ
かぜ
ふ
す。 私 の こ れ ら の こ と ば を 聞 く だ け で、 実 行 し な い 者 は 皆、 砂 の 上 に 家
いえ
おそ
たお
たお
かた
を 建 て た 愚 か な 人 に 似 て い ま す。 雨 が 降 っ て 洪 水 が 押 し 寄 せ、 風 が 吹 い
かた
お
ぐんしゅう
おし
ひじょう
て そ の 家 に 襲 い か か る と、 倒 れ て し ま い ま す。 そ し て、 そ の 倒 れ 方 が ひ
どいのです。」
イ エ ス が こ れ ら の こ と ば を 語 り 終 え ら れ る と、 群 衆 は そ の 教 え に 非 常
98
イエスは神の聖霊に導かれて荒野に行かれた。
悪魔に試されるためである。
マタイによる福音書 4:1
おどろ
おし
りっぽうがくしゃ
けん い
もの
に 驚 い た。 そ れ は イ エ ス が、 律 法 学 者 の よ う に で は な く、 権 威 あ る 者 と
99
して教えられたからである。
マサダの要塞
その日の夕方になると、イエスは弟子たちに、
「湖の向こう岸へ渡ろう」と言われた。
マルコによる福音書 4:35
ガリラヤ湖(ティベリアのうみ)
100
ゆる
けん い
ちから
お
お し
おお ぜい
き
せ き
ぐんしゅう
第六章 力
ある教え、奇跡
つみ
罪を赦す権威
やま
びょう わずら
ひと
き
したが
ふ
い
ひと り
イ エ ス が 山 か ら 下 り ら れ る と、 大 勢 の 群 衆 が 従 っ た。 す る と、 一 人 の
の
ひと
き
い
ら い 病 を 患 っ て い る 人 が イ エ ス の み も と に 来 て、 ひ れ 伏 し て 言 っ た。
しゅ
みこころ
わたし きよ
て
「主よ、御心ならば、私を清くすることができるのですが。」イエスが手
びょう
きよ
ふたた
まち
い
いえ
を伸ばしてその人にさわって、
「よろしい。清くおなり。」と言われると、
すう じつ ご
たちまち、らい病は清くなった。
し
わた
おお ぜい
ひと
あ
と ぐち
数 日 後、 イ エ ス は 再 び カ ペ ナ ウ ム の 町 に 行 か れ た。 イ エ ス が 家 に お ら
み
かた
れ る こ と が 知 れ 渡 り、 大 勢 の 人 が 集 ま っ た。 も は や 戸 口 の あ た り ま で す
きまもないほどになった。イエスは御ことばを語っておられた。そこへ、
101
にん
ちか
おとこ
ちゅうぶ
はこ
き
ぐんしゅう
や
ね
あな
四 人 の 男 が 中 風 の 人 を 運 ん で 来 た。 し か し、 群 衆 の た め に、 イ エ ス の も
ちゅうぶ
ひと
ね
とこ
お
と に 近 づ け な い の で、 イ エ ス が お ら れ る と こ ろ の 屋 根 を は が し て 穴 を あ
しんこう
み
ちゅうぶ
ひと
こ
けた。そして、中風の人を寝かせたままその床をつり降ろした。
つみ
ゆる
い
なんにん
すわ
こころ
なか
ひと
イ エ ス は そ の 人 た ち の 信 仰 を 見 て、 中 風 の 人 に、「 わ が 子 よ、 あ な た
りっぽうがくしゃ
の罪は赦された。」と言われた。
い
かみ
ぼうとく
かみ
「この人は、
ところが、そこに律法学者が何人か座っていて、心の中で、
つみ
ゆる
こころ
なか
かんが
かんが
れい
ちから
し
なぜこういうことを言うのか。神を冒瀆することだ。神おひとりのほか、
かれ
だれが罪を赦せるか。」と、あれこれ考えた。
い
かんが
こころ
いだ
ちゅうぶ
ひと
イ エ ス は、 彼 ら が 心 の 中 で 考 え て い る こ と を、 霊 の 力 で す ぐ に 知 っ
つみ
ゆる
い
お
ある
い
て 言 わ れ た。「 な ぜ、 そ ん な 考 え を 心 に 抱 く の か。 中 風 の 人 に『 あ な た
やさ
ひと
こ
ちじょう
つみ
ゆる
けん い
も
の 罪 は 赦 さ れ た 』 と 言 う の と、『 起 き て、 歩 き な さ い 』 と 言 う の と、 ど
し
ちゅうぶ
ひと
い
い
お
ち ら が 易 し い か。 と に か く、 人 の 子 が 地 上 で 罪 を 赦 す 権 威 を 持 っ て い る
あ
とこ
も
いえ
かえ
ひと
お
あ
ことを知らせよう。」そして、中風の人に言われた。「あなたに言う。起
い
み
い
かみ
き上がり、床を持ち、家に帰りなさい。」 その人は起き上がり、すぐに
とこ
かつ
みな
まえ
で
い
ひとびと
ひじょう
おどろ
床を担いで、皆の前を出て行った。人々は非常に驚き、「こんなことは、
今まで見たことがない」と言って、神をあがめた。
102
わたし はは
わたし
きょうだい
で
し
私 の母、私の 兄 弟
き
おおぜい
ぐんしゅう
みずうみ ほう
い
た
さ
さ て、 イ エ ス は 弟 子 た ち と と も に 湖 の 方 へ 立 ち 去 ら れ た。 す る と、 ガ
かわ
おおぜい
ぐんしゅう
リラヤから来た大勢の群衆がついて行った。また、ユダヤ、エルサレム、
き
あつ
イ ド マ ヤ、 ヨ ル ダ ン 川 の か な た、 ツ ロ や シ ド ン あ た り か ら も 大 勢 の 群 衆
で
し
こ ぶね
よう い
い
ぐんしゅう
お
が、 イ エ ス の な さ る こ と を 聞 い て、 み も と に 集 ま っ て 来 た。 そ こ で、 イ
おお
びょうにん
エ ス は 弟 子 た ち に 小 舟 を 用 意 し て お く よ う に と 言 わ れ た。 群 衆 に 押 し つ
びょうき
なや
ひと
みな
お
よ
ぶ さ れ な い た め で あ っ た。 そ れ は、 イ エ ス が 多 く の 病 人 を い や さ れ た の
かえ
ぐんしゅう
あつ
き
いちどう
しょくじ
で、 病 気 に 悩 む 人 た ち が 皆、 イ エ ス に さ わ ろ う と し て、 み も と に 押 し 寄
いえ
せたからである。
ひま
み うち
ひと
き
つ
もど
イ エ ス が 家 に 帰 ら れ る と、 ま た 群 衆 が 集 ま っ て 来 た の で、 一 同 は 食 事
き
おとこ
き
へん
い
を す る 暇 も な か っ た。 身 内 の 人 た ち は こ れ を 聞 い て、 イ エ ス を 連 れ 戻 し
はは
きょうだい
き
そと
た
ひと
よ
に来た。「あの男は気が変になっている。」と言われていたからである。
おおぜい
ひと
まわ
すわ
かれ
らん
イ エ ス の 母 と 兄 弟 た ち が 来 て 外 に 立 ち、 人 を や っ て イ エ ス を 呼 ば せ た。
ははうえ
きょうだい
そと
ま
い
大 勢 の 人 が、 イ エ ス の 周 り に 座 っ て い た。 彼 に、「 ご 覧 な さ い。 あ な た
の母上とご兄弟が外であなたを待っておられます」と言うと、イエスは、
103
わたし
はは
ひとびと
わたし
み まわ
きょうだい
い
み
こた
わたし
まわ
はは
わたし
すわ
きょうだい
「 私 の 母、 私 の 兄 弟 と は だ れ の こ と で す か。」 と 答 え、 周 り に 座 っ て い
かみ
み こころ
おこな
ひと
わたし
きょうだい
し まい
はは
る 人 々 を 見 回 し て 言 わ れ た。「 見 な さ い。 こ こ に 私 の 母、 私 の 兄 弟 た ち
ゆうがた
で
し
みずうみ
む
ぎし
わた
が い ま す。 神 の 御 心 を 行 う 人 は だ れ で も、 私 の 兄 弟、 姉 妹、 ま た 母 な
のです。」
あらし しず
ひ
嵐 を静める
い
かれ
ぐんしゅう
あと
のこ
ふね
の
こ
その日の夕方になると、イエスは弟子たちに、「湖 の向こう岸へ渡ろう」
だ
ふね
どうこう
はげ
とっぷう
お
ふね
なみ
と 言 わ れ た。 そ こ で、 彼 ら は 群 衆 を 後 に 残 し、 イ エ ス を 舟 に 乗 せ て 漕 ぎ
みず
とも
ほう
出 し た。 ほ か の 舟 も 同 行 し た。 す る と 激 し い 突 風 が 起 こ り、 舟 は 波 を か
ねむ
で
し
お
い
せんせい
ぶ っ て、 水 で い っ ぱ い に な る ほ ど で あ っ た。 し か し、 イ エ ス は 艫 の 方 で
お
あ
かぜ
しか
みずうみ
眠 っ て お ら れ た。 弟 子 た ち は イ エ ス を 起 こ し て 言 っ た。「 先 生、 お ぼ れ
だま
しず
い
かぜ
おおなぎ
ます!かまわないのですか。」イエスは起き上がって、風を叱り、湖に、
い
しんこう
「黙れ。静かにせよ。」と言われた。すると、風はやんで、大凪になった。
で
し
ひじょう
おそ
たが
い
かた
イ エ ス は 言 わ れ た。「 な ぜ そ ん な に お く び ょ う な の か。 ま だ 信 仰 が な い
のか。」弟子たちは非常に恐れ、互いに言った。「この方はいったいどな
104
かぜ
みずうみ
したが
たなのだろう。風も湖も従うとは。」
こ はん
みずうみ
わた
湖畔でのいやし
いっこう
あ
ひとびと
と
ち
し
つ
ふね
ち ほう
かれ
はし
一 行 は 湖 を 渡 り、 ゲ ネ サ レ と い う 土 地 に 着 き、 舟 を つ な い だ。 彼 ら が
ふね
まわ
き
びょうにん
たん か
はこ
舟 か ら 上 が る と、 す ぐ に 人 々 は イ エ ス と 知 っ て、 そ の 地 方 を く ま な く 走
はじ
むら
まち
さと
い
びょうにん
ひろ ば
お
り 回 り、 ど こ で も イ エ ス が お ら れ る と 聞 く と こ ろ に、 病 人 を 担 架 で 運 び
ふく
ねが
もの
みな
始めた。村でも町でも里でも、イエスが行かれると、病人を広場に置き、
おおぜい
ぐんしゅう
らん
かれ
ぼくしゃ
ひつじ
服 の す そ に で も さ わ ら せ て く だ さ い と お 願 い し た。 さ わ っ た 者 は 皆 い や
された。
ふか
あわ
おお
の
おし
ふたた
む
ぎし
わた
イ エ ス は、 大 勢 の 群 衆 を ご 覧 に な り、 彼 ら が 牧 者 の な い 羊 の よ う な の
ふね
を深く憐れみ、多くのことを教えられた。
あつ
き
みずうみ
さ て、 イ エ ス が 舟 に 乗 っ て 再 び 向 こ う 岸 に 渡 ら れ た。 す る と、 ま た、
ぐんしゅう
かいどう
かん り にん
き
あし
ふ
群 衆 が み も と に 集 ま っ て 来 た。 イ エ ス は 湖 の ほ と り に お ら れ た。 そ こ へ
いっ しょうけんめい ねが
わたし
ちい
むすめ
し
ヤ イ ロ と い う あ る 会 堂 の 管 理 人 が 来 て、 イ エ ス の 足 も と に ひ れ 伏 し て、
一生懸命 願った。「私の小さな娘が死にそうです。どうか、いらしてお
105
て
むすめ
たす
で
い
手をのせてください。そうすれば、娘は助かるでしょう。」
お
せま
い
ねんかん しゅっけつしょう
わずら
ふ じん
おおぜい
おお
ぐんしゅう
そ こ で、 イ エ ス は ヤ イ ロ と い っ し ょ に 出 か け て 行 か れ た。 大 勢 の 群 衆
ふ じん
も押し迫りついて行った。
しんこう
なか
信仰でいやされた婦 人
ぐんしゅう
ぜんざいさん
つか
は
なん
やく
た
こ の 群 衆 の 中 に、 十 二 年 間 出 血 症 を 患 っ て い る 婦 人 が い た。 多 く の
い しゃ
わる
いっぽう
き
ぐんしゅう
まぎ
こ
医 者 に な や ま さ れ、 全 財 産 を 使 い 果 た し た が、 何 の 役 に も 立 た ず、 む し
うし
ふく
き もの
おも
ろ悪くなる一方であった。イエスのことを聞いて、群衆の中に紛れ込み、
しゅっけつ
まった
と
びょうき
後ろからイエスの服にさわった。「お着物にさわればなおる。」と思った
からだ
かん
じ ぶん
なか
ちから
で
い
かん
ふ
かえ
か ら で あ る。 す る と、 す ぐ 出 血 が 全 く 止 ま っ て 病 気 が い や さ れ た こ と を
わたし
ふく
い
で
し
体 で 感 じ た。 イ エ ス は、 自 分 の 中 か ら 力 が 出 て 行 っ た の を 感 じ、 振 り 返
い
ぐんしゅう
お
り、「だれが私の服にさわったのですか。」と言われた。そこで、弟子た
わたし
ちは言った。「ごらんのとおり、群衆があなたに押しよせているのに、
『だ
おんな
み
み
かのじょ
じ ぶん
み
お
れ が 私 に さ わ っ た か 』 と お っ し ゃ る の で す か。」 イ エ ス は こ の こ と を し
た 女 を 見 よ う と あ た り を 見 ま わ し て お ら れ た。 彼 女 は 自 分 の 身 に 起 こ っ
106
し
はな
おそ
い
ふる
すす
むすめ
で
ふ
しんこう
た こ と を 知 っ て 恐 ろ し く な り、 震 え な が ら 進 み 出 て ひ れ 伏 し、 す べ て を
すく
あんしん
かえ
かえ
すこ
ひとびと
き
あ り の ま ま 話 し た。 イ エ ス は 言 わ れ た。「 娘 よ、 あ な た の 信 仰 が あ な た
い
いえ
を救ったのです。安心してお帰り。いつも健やかで。」
むすめ
はな
ヤイロの娘、生き返る
い
じょう
な
せんせい
イ エ ス が ま だ 話 し て お ら れ る と き に、 ヤ イ ロ の 家 か ら 人 々 が 来 て ヤ イ
はなし
き
おそ
ロ に 言 っ た。「 お 嬢 さ ま が 亡 く な り ま し た。 ど う し て な お 先 生 を わ ず ら
しん
い
わされるのですか。」イエスはその話をそばで聞いて、「恐れることはな
きょうだい
じ ぶん
い
い。ただ信じなさい。」とヤイロに言われた。そして、ペテロ、ヤコブ、
ゆる
いえ
つ
ひとびと
な
さけ
さわ
らん
ま た ヤ コ ブ の 兄 弟 ヨ ハ ネ の ほ か は、 だ れ も 自 分 と い っ し ょ に 行 く こ と を
いっこう
お許しにならなかった。
なか
はい
ひとびと
い
なに
さわ
な
一 行 は ヤ イ ロ の 家 に 着 い た。 人 々 が ひ ど く 泣 き 叫 ん で い る 騒 ぎ を ご 覧
こ
し
ねむ
ひとびと
に な る と、 イ エ ス は 中 に 入 り、 人 々 に 言 わ れ た。「 何 を 騒 い で 泣 く の で
わら
す か。 子 ど も は 死 ん だ の で は な い。 眠 っ て い る の で す。」 し か し、 人 々
はイエスをあざ笑った。
107
こ
みな
そと
だ
ところ
こ
はい
い
りょうしん
こ
き
で
て
し
と
イ エ ス は 皆 を 外 に 出 し、 子 ど も の 両 親 と、 い っ し ょ に 来 た 弟 子 だ け を
つ
い
やく
しょうじょ
お
い
み
連れて、子どものいる所へ入って行かれた。そして、子どもの手を取って、
しょうじょ
お
あ
ある
かのじょ
「 タ リ タ、 ク ミ 」 と 言 わ れ た。 訳 す と、「 少 女 よ、 起 き よ。」 と い う 意 味
さい
み
ひとびと
おどろ
われ
わす
で あ る。 す る と、 少 女 は す ぐ に 起 き 上 が っ て、 歩 き だ し た。 彼 女 は 十 二
し
きび
めい
歳 で あ っ た。 そ れ を 見 る な り、 人 々 は 驚 き の あ ま り 我 を 忘 れ た。 イ エ ス
しょうじょ
た
もの
あた
じ ごく
い
わたし
き
わたし
は、このことをだれにも知らせないようにと、厳しくお命じになり、また、
くに
い
少女に食べ物を与えるようにと言われた。
てん
天の国と地 獄
い
がた
イエスは言われた。
かた
しん
もの
えんえん
も
「 よ く よ く あ な た 方 に 言 っ て お き ま す。 私 の こ と ば を 聞 い て、 私 を お
つか
し
うつ
い
遣 わ し に な っ た 方 を 信 じ る 者 は、 永 遠 の い の ち を 持 ち、 ま た、 さ ば か れ
し
もの
かみ
こ
こえ
き
とき
き
いま
とき
る こ と が な く、 死 か ら い の ち へ と 移 っ て い る の で す。 は っ き り 言 っ て お
き
もの
い
き ま す。 死 ん だ 者 が 神 の 子 の 声 を 聞 く 時 が 来 ま す。 今 が そ の 時 で す。 そ
して、聞く者は生きるのです。
108
はか
で
おどろ
とき
き
ぜん
はか
おこな
なか
もの
もの
みな
う
ひと
こ
こえ
こ の こ と に 驚 い て は な り ま せ ん。 墓 の 中 に い る 者 が 皆、 人 の 子 の 声 を
き
あく
おこな
もの
う
く
聞 き、 墓 を 出 る 時 が 来 ま す。 善 を 行 っ た 者 は、 い の ち を 受 け る た め に よ
あつ
ひ
や
よ
お
み が え り、 悪 を 行 っ た 者 は、 さ ば き を 受 け る た め に よ み が え っ て 来 る の
どくむぎ
です。
ひと
こ
てん し
つか
つみ
ふ ほう
おこな
毒 麦 が 集 め ら れ て 火 で 焼 か れ る よ う に、 世 の 終 わ り に も そ う な り ま
もの
かれ
おうこく
あつ
かれ
ひ
も
さか
ろ
す。 人 の 子 は 天 使 た ち を 遣 わ し、 す べ て 罪 の も と に な る も の、 不 法 を 行
なか
な
こ
かれ
な
は
う 者 ど も を 彼 の 王 国 か ら 集 め さ せ ま す。 そ し て、 彼 ら を 火 の 燃 え 盛 る 炉
ただ
ひとびと
てん
ちち
み くに
たいよう
かがや
みみ
の 中 に 投 げ 込 む の で す。 彼 ら は、 そ こ で 泣 き わ め い て 歯 ぎ し り す る の で
もの
き
す。 そ の と き、 正 し い 人 々 は 天 の 父 の 御 国 で 太 陽 の よ う に 輝 き ま す。 耳
てん
くに
つぎ
のある者は聞きなさい。
はたけ
かく
たから
ひと
かく
天の国は次のようにたとえられます。
み
畑に隠された宝がある。
おおよろこ
もの
で
ぜん ぶ
う
はら
それを見つけた人は、そのまま隠しておき、
も
大喜びで出かけ、
はたけ
か
持ち物を全部売り払って、
その畑を買う。
109
しょうにん
てん
よ
くに
しんじゅ
つぎ
さが
しんじゅ
み
また、天の国は次のようにたとえられます。
ね
商人が良い真珠を捜している。
で
い
すばらしい値うちの真珠を一つ見つけると、
ぜんざいさん
う
はら
出かけて行って
か
くに
つぎ
全財産を売り払い、
てん
それを買う。
あみ
みずうみ
み
お
な
ひ
な
お
あつ
あ
す
い
てん し
また、天の国は次のようにたとえられます。
さかな
網が湖に投げ降ろされ、
あみ
きし
よ
うつわ
いろいろな魚が集められる。
ひとびと
網が満ちると、
すわ
人々は岸に引き上げ、
わる
座りこんで、良いものは器に入れ、
よ
悪いものは投げ捨てる。
わる
もの
わ
わる
もの
も
さか
ろ
き
なか
な
ただ
こ
ひとびと
世 の 終 わ り に も そ の よ う に な り ま す。 天 使 た ち が 来 て、 正 し い 人 々
かれ
な
は
と 悪 い 者 ど も を よ り 分 け、 悪 い 者 ど も を 燃 え 盛 る 炉 の 中 に 投 げ 込 む の で
す。彼らは、そこで泣きわめいて歯ぎしりするのです。」
110
かね も
ぎ いん
で
金 持ちの議 員
たび
よ
せんせい
えいえん
ひと
う
は
つ
よ
なに
イ エ ス が 旅 に 出 よ う と さ れ る と、 ひ と り の 人 が 走 り 寄 っ て、 ひ ざ ま ず
わたし
よ
い
かみ
い て た ず ね た。「 善 い 先 生、 永 遠 の い の ち を 受 け 継 ぐ に は、 何 を す れ ば
い
よいでしょうか。」
よ
かた
ころ
かんいん
イ エ ス は 言 わ れ た。「 な ぜ、 私 の こ と を『 善 い 』 と 言 う の で す か。 神
ぬす
ぎ しょう
ふ せい
ちち
はは
うやま
おきて
し
おひとりのほかに、善い方はいません。あなたは、
『殺すな、姦淫するな、
ひと
い
せんせい
盗 む な、 偽 証 す る な、 不 正 を す る な、 父 と 母 を 敬 え 』 と い う 掟 を 知 っ て
こ
とき
まも
ひと
み
いつく
いるはずです。」すると、その人は言った。「先生、そういうことはみな、
い
か
い
も
みな う
子 ど も の 時 か ら 守 っ て お り ま す。」 イ エ ス は そ の 人 を 見 つ め、 慈 し ん で
言われた。
まず
ひとびと
あた
てん
たから
つ
「 あ な た に 欠 け て い る も の が 一 つ あ り ま す。 行 っ て 持 ち も の を 皆 売 り
はら
き
わたし
したが
ひと
かお
くも
払 い、 貧 し い 人 々 に 与 え な さ い。 そ う す れ ば、 天 に 宝 を 積 む こ と に な り
かな
た
さ
おお
ざいさん
も
ま す。 そ れ か ら、 来 て 私 に 従 い な さ い。」 そ の 人 は こ の こ と ば に 顔 を 曇
らせ、悲しそうに立ち去った。多くの財産を持っていたからである。
111
ふくいん
し
す
み まわ
ひと
い
福音のためにすべてを捨てる人
で
むずか
で
し
ざいさん
もの
かみ
くに
おどろ
はい
イ エ ス は 弟 子 た ち を 見 回 し て 言 わ れ た。「 財 産 の あ る 者 が 神 の 国 に 入
さら
い
こ
かみ
くに
はい
むずか
るのは、なんと難しいことでしょう。」弟子たちはこのことばに驚いた。
はり
あな
とお
ほう
かね も
かみ
くに
はい
イ エ ス は 更 に 言 わ れ た。「 子 た ち よ、 神 の 国 に 入 る の は、 な ん と 難 し い
やさ
で
し
おどろ
すく
こ と で し ょ う。 ら く だ が 針 の 穴 を 通 る 方 が、 金 持 ち が 神 の 国 に 入 る よ り
たがい
い
かれ
み
い
もっと易しい。」弟子たちはますます驚いて、「それでは、だれが救われ
ひと
かみ
かみ
るでしょうか。」と互いに言った。イエスは彼らをじっと見て言われた。
わたし
なに
す
「 人 に は で き な い が、 神 に は で き ま す。 神 は ど ん な こ と も で き る か ら で
す。」
まい
い
わたし
ふくいん
い
いえ
きょうだい
し まい
ちち
ペ テ ロ が イ エ ス に、「 こ の と お り、 私 た ち は 何 も か も 捨 て て あ な た に
したが
き
従って参りました。」と言いだした。イエスは言われた。
こ
はたけ
す
いま
よ
はくがい
「 よ く 聞 き な さ い。 私 の た め、 福 音 の た め に、 家、 兄 弟、 姉 妹、 父、
はは
いえ
きょうだい
し まい
ふ
ぼ
こ
はたけ
ひゃくばい
う
らい せ
えいえん
母、 子、 畑 を 捨 て た も の は だ れ で も、 今 こ の 世 で は、 迫 害 と と も に で は
う
さいしょ
さい ご
さい ご
あ る が、 家、 兄 弟、 姉 妹、 父 母、 子、 畑 の 百 倍 を 受 け、 来 世 で は、 永 遠
の い の ち を 受 け ま す。 し か し、 最 初 の も の が 最 後 に な り、 最 後 の も の が
112
*異邦人 天の神を知らない外国人。
さいしょ
おお
し
ふっかつ
最初になることが多いのです。」
じ ぶん
のぼ
い
よ こく
とちゅう
イエス、自分の死と復活を予告する
いっこう
よ
じ ぶん
み
お
のぼ
い
はな
はじ
ひと
こ
で
し
よ
さい し ちょう
一 行 が エ ル サ レ ム へ 上 っ て 行 く 途 中 で あ っ た。 イ エ ス は 十 二 弟 子 を 呼
わたし
び寄せて、ご自分の身に起ころうとすることを話し始められた。
りっぽうがくしゃ
ひ
わた
かれ
し けい
せんこく
* い ほうじん
「 い よ い よ、 私 た ち は エ ル サ レ ム へ 上 っ て 行 き ま す。 人 の 子 は 祭 司 長
ひ
わた
かれ
ひと
こ
ぶ じょく
つば
むち う
ころ
た ち や 律 法 学 者 た ち に 引 き 渡 さ れ ま す。 彼 ら は 死 刑 を 宣 告 し て 異 邦 人 に
し
ひと
こ
みっ か
のち
なにひと
かれ
引 き 渡 し ま す。 彼 ら は 人 の 子 を 侮 辱 し、 唾 を か け、 鞭 打 ち、 つ い に 殺 し
で
ます。しかし、人の子は三日の後によみがえります。」
い
み
かく
い
り かい
十 二 弟 子 は こ れ ら の こ と が 何 一 つ わ か ら な か っ た。 彼 ら に は こ の こ と
ば の 意 味 が 隠 さ れ て い て、 イ エ ス の 言 わ れ た こ と が 理 解 で き な か っ た の
である。
113
で し
は けん
し
十二弟子の派 遺
で
わずら
よ
けん い
あた
れい
お
だ
い
びょう
イ エ ス は 十 二 弟 子 を 呼 び よ せ て、 け が れ た 霊 を 追 い 出 し、 す べ て の 病
き
わたし
がた
つか
ひつじ おおかみ
む
おく
こ
気、すべての患いをいやす権威を与えられた。そして、言われた。
へび
かしこ
はと
す なお
ひとびと
「 私 は あ な た 方 を 遣 わ す。 そ れ は、 羊 を 狼 の 群 れ に 送 り 込 む よ う な も
ようじん
かれ
がた
ち ほう ほう いん
ひ
わた
かいどう
むち う
のです。ですから、蛇のように賢く、鳩のように素直でありなさい。人々
がた
わたし
そうとく
おう
まえ
れんこう
に は 用 心 し な さ い。 彼 ら は あ な た 方 を 地 方 法 院 に 引 き 渡 し、 会 堂 で 鞭 打
かれ
い ほうじん
あか
ひ
わた
つ か ら で す。 あ な た 方 は、 私 の た め に 総 督 や 王 の 前 へ 連 行 さ れ ま す。 そ
なに
い
しんぱい
い
れ は、 彼 ら や 異 邦 人 た ち に 証 し を す る た め で す。 引 き 渡 さ れ た と き は、
しめ
じつ
がた
はな
何 を ど う 言 お う か と 心 配 す る こ と は あ り ま せ ん。 言 う べ き こ と は そ の と
がた
かみ
れい
こ
かた
し
わた
こ
おや
はんこう
し
き に 示 さ れ ま す。 と い う の は、 実 に あ な た 方 が 話 す の で は な く、 あ な た
おそ
ちち
方をとおして、神の霊が語るからです。
ひと
きょうだい
人を恐れるな
きょうだい
兄弟は兄弟を、父は子を死に渡し、子は親に反抗して死なせます。また、
114
わたし
しん
た
しの
ひと
はくがい
すく
がた
た
まち
ひと
に
にく
い
たし
さい ご
私 を 信 じ る た め に、 あ な た 方 は す べ て の 人 に 憎 ま れ ま す。 し か し、 最 後
まち
まで耐え忍ぶ人は救われます。
い
がた
まち
まわ
お
ひと
あ る 町 で 迫 害 さ れ た と き は、 他 の 町 へ 逃 げ て 行 き な さ い。 確 か な こ と
こ
もど
き
ころ
たましい
ころ
もの
おそ
を 言 っ て お く。 あ な た 方 が イ ス ラ エ ル の 町 を 回 り 終 わ ら な い う ち に、 人
からだ
の子は戻って来ます。
たましい
からだ
じ ごく
ほろ
かた
おそ
あ な た の 体 を 殺 し て も、 魂 を 殺 せ な い 者 ど も を 恐 れ て は な り ま せ ん。
わ
すずめ
う
すずめ
わ
む し ろ、 魂 も 体 も と も に 地 獄 で 滅 ぼ す こ と の で き る 方 を 恐 れ な さ い。 二
がた
てん
ちち
ゆる
ち
お
羽 の 雀 が 一 ア サ リ オ ン で 売 ら れ て い る で し ょ う。 し か し、 そ の 雀 の 一 羽
がた
かみ
け
かぞ
おそ
さ え、 あ な た 方 の 天 の 父 の お 許 し が な け れ ば、 地 に 落 ち る こ と は あ り ま
かた
すずめ
せ ん。 あ な た 方 の 髪 の 毛 さ え も す べ て 数 え ら れ て い ま す。 で す か ら、 恐
わたし
しん
ひとびと
まえ
せんげん
れ る こ と は あ り ま せ ん。 あ な た 方 は、 た く さ ん の 雀 よ り も ま さ っ て い ま
す。
ひと
わたし
てん
ちち
まえ
ひと
わたし
せんげん
だれであろうと、『私はイエスを信じています。』と人々の前で宣言す
ひとびと
まえ
わたし
かんけい
い
る人を、私も天の父の前で、『この人は私のものです。』と宣言します。
ひと
たい
わたし
てん
ちち
まえ
ひと
し
い
しかし、だれでも人々の前で、『私はイエスと関係がありません。』と言
う人に対しては、私も天の父の前で、
『この人は知らない。』と言います。
115
* 十 字 架 当 時 、死 刑 因 は み な 自
分がはりつけれる十字架を刑場ま
で背負うことになっていた。十字
架は「死の宣告」を象徴。
へい わ
へい わ
つるぎ
平 和ではなく剣を
ちじょう
つるぎ
わたし
き
き
おも
わたし
ひと
ちち
わたし
地上に平和をもたらすために、私が来たと思ってはなりません。私は、
へい わ
むすめ
はは
よめ
はな
き
平和ではなく、剣をもたらすために来たからです。私は人をその父から、
か ぞく
はは
ひとびと
わたしいじょう
あい
てき
もの
わたし
むす こ
むすめ
わたし
娘 を 母 か ら、 嫁 を し ゅ う と め か ら 離 す た め に 来 た の で す。 こ う し て、 あ
ちち
なたの家族の人々があなたの敵となります。
あい
もの
わたし
じ ぶん * じゅうじ か
お
父 や 母 を 私 以 上 に 愛 す る 者 は、 私 に ふ さ わ し く な い。 息 子 や 娘 を 私
いじょう
わたし
したが
こ
もの
わたし
じ ぶん
たも
以上に愛する者も、私にふさわしくない。また、自分の十字架を負わず、
もの
うしな
わたし
うしな
もの
私 に 従 っ て 来 な い 者 は、 私 に ふ さ わ し く な い の で す。 自 分 の い の ち を 保
え
う
ひと
い
むく
ひと
わたし
う
い
わたし
う
い
ひと
わたし
と う と す る 者 は、 そ れ を 失 い、 私 の た め に い の ち を 失 う 者 は、 か え っ て
い
それを得るのです。
う
がた
受け入れる人の報い
つか
かた
う
い
よ げんしゃ
よ げんしゃ
う
い
あ な た 方 を 受 け 入 れ る 人 は、 私 を 受 け 入 れ、 私 を 受 け 入 れ る 人 は、 私
を 遣 わ さ れ た 方 を 受 け 入 れ る の で す。 預 言 者 を 預 言 者 と し て 受 け 入 れ る
116
「私について来たい人は、『自分』を捨てなさい。」
ひと
ひと
よ げんしゃ
ただ
もの
おな
おな
むく
むく
う
う
ただ
もの
わたし
ただ
したが
もの
ちい
う
もの
い
人 は、 預 言 者 と 同 じ 報 い を 受 け、 正 し い 者 を 正 し い 者 と し て 受 け 入 れ る
で
し
つめ
みずいっぱい
あた
ひと
たし
い
人 は、 正 し い 者 と 同 じ 報 い を 受 け ま す。 私 に 従 う こ の 小 さ な 者 の ひ と り
かなら
むく
う
いの
で
し
に、弟子として、冷たい水一杯でも与える人は、確かに言っておきますが、
うしな
必ずその報いを受けます。」
じ ぶん
自分のいのちを失う
かれ
ぐんしゅう
わたし
さ て、 イ エ ス が ひ と り で 祈 っ て お ら れ た と き、 弟 子 た ち が い っ し ょ に
い
で
し
こた
せんれいしゃ
い
い た。 イ エ ス は 彼 ら に お た ず ね に な っ た。「 群 衆 は、 私 の こ と を だ れ だ
むかし
よ げん しゃ
い
かえ
い
と言っていますか。」弟子たちは答えた。「洗礼者ヨハネだと言っていま
ひと
い
がた
わたし
い
す。 ほ か に エ リ ヤ だ と か、 昔 の 預 言 者 の だ れ か が 生 き 返 っ た の だ、 と 言
こた
かみ
で
し
う人もいます。」イエスが言われた。「では、あなた方は私をだれだと言
いまし
ひと
こ
はな
かなら
おお
くる
めい
う
ちょうろう
さいしちょう
い ま す か。」 ペ テ ロ が 答 え た。「 神 か ら の メ シ ア で す。」 イ エ ス は 弟 子 た
い
ちを戒め、このことをだれにも話さないように命じられた。
こば
ころ
みっ か
め
そして言われた。「人の子は必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、
りっぽうがくしゃ
律法学者たちから拒まれ、殺され、そして三日目によみがえることになっ
117
ぶん
すく
みな
おも
い
もの
わたし
うしな
き
わたし
もの
じ
て い ま す。」 そ れ か ら、 皆 に 言 わ れ た。「 私 に つ い て 来 た い 者 は、『 自
ぶん
す
ひ
じ ぶん
じゅうじか
せ お
わたし したが
じ
分 』 を 捨 て、 日 ご と に、 自 分 の 十 字 架 を 背 負 っ て、 私 に 従 い な さ い。 自
うしな
もの
すく
ひと
ぜん せ かい
て
い
分 の い の ち を 救 い た い と 思 う 者 は、 そ れ を 失 い ま す が、 私 の た め に い の
じ ぶん
たましい
ほろ
くに
なん
とく
こ
つ
き
ちを失う者は、それを救うのです。人が、たとえ全世界を手に入れても、
かみ
ひとびと
自分の魂を滅ぼせば、何の得がありましょう。」
こ
子どもと神の国
で
し
ひとびと
み
さ て、 イ エ ス に さ わ っ て い た だ こ う と、 人 々 が 子 ど も た ち を 連 れ て 来
で
し
い
こ
さまた
かみ
た。しかし、弟子たちはこの人々をとがめた。これを見てイエスはなげき、
わたし
弟子たちに言われた。
くに
ひと
き
こ
「 子 ど も た ち を 私 の と こ ろ に 来 さ せ な さ い。 妨 げ て は い け ま せ ん。 神
す なお
かみ
くに
う
い
ひと
けっ
はい
の国はこのような人たちのものです。よく聞きなさい。子どものように、
こ
だ
て
お
しゅくふく
素 直 に 神 の 国 を 受 け 入 れ る 人 で な け れ ば、 決 し て そ こ に 入 る こ と は で き
ません。」そして、子どもたちを抱き、手を置いて祝福された。
118
もうじん
し
盲人バルテマイ
で
おおぜい
ぐんしゅう
もうじん
みち
まち
すわ
で
イ エ ス が 弟 子 た ち や 大 勢 の 群 衆 と い っ し ょ に、 エ リ コ の 町 を 出 よ う
かれ
き
さけ
み
こ
と さ れ た と き、 バ ル テ マ イ と い う 盲 人 の こ じ き が 道 ば た に 座 っ て い た。
わたし
あわ
ひとびと
しか
だま
かれ
彼はナザレのイエスだと聞くと、叫びだした。「ダビデの御子イエスよ、
おお
私を憐れんでください!」
み
こ
わたし
ど
あわ
ひと
よ
さけ
き
つづ
い
ひとびと
多 く の 人 々 が 叱 り つ け て 黙 ら せ よ う と し た が、 彼 は ま す ま す、「 ダ ビ
た
デの御子よ、私を憐れんでください!」と叫び続けた。
もうじん
よ
い
よろこ
た
よ
もうじん
イエスは立ち止まって、「あの人を呼んで来なさい。」と言われた。人々
うわ ぎ
ぬ
す
おど
い
あ
なに
き
もうじん
は盲人を呼んで言った。「喜びなさい。立ちなさい!お呼びだ。」盲人は
かれ
上着を脱ぎ捨て、踊り上がってイエスのところに来た。
め
み
い
イ エ ス は 彼 に 言 わ れ た。「 何 を し て ほ し い の か。」 す る と 盲 人 は、
せんせい
い
い
しんこう
すく
「先生、目が見えるようになりたいのです。」と言った。そこで、イエス
もうじん
め
み
したが
は言われた。
「さあ、行きなさい。あなたの信仰があなたを救ったのです。」
盲人はすぐ、目が見えるようになり、イエスに従った。
119
*パリサイ派 ユダヤ教の中で
も、最も厳格な保守派。この派の
教師や聖書学者は多くの会堂で神
の道を説き、民衆の間で尊敬され
ていた。
*
イエスとニコデモ
かれ
よる
は
ひと
き
い
じん
せんせい
ぎ いん
わたし
ニ コ デ モ と い う パ リ サ イ 派 の 人 が い た。 ユ ダ ヤ 人 た ち の 議 員 で あ っ
かみ
こ
きょうし
し
かみ
た。 彼 が あ る 夜、 イ エ ス の と こ ろ に 来 て 言 っ た。「 先 生、 私 ど も は、 あ
き せき
おこな
な た が 神 の も と か ら 来 ら れ た 教 師 で あ る こ と を 知 っ て い ま す。 神 が と も
い
い
ひと
に お ら れ る の で な け れ ば、 あ な た の な さ る よ う な 奇 跡 を、 だ れ も 行 う こ
あら
う
かみ
とし
くに
み
ひと
う
とはできません。」イエスは言われた。「あなたに言っておきます。人は、
い
新たに生まれなければ、神の国を見ることはできません。」
いち ど
ははおや
たいない
はい
う
ニ コ デ モ は 言 っ た。「 年 を と っ て か ら、 人 は ど の よ う に し て 生 ま れ る
い
ひと
みず
れい
こ と が で き ま し ょ う。 も う 一 度、 母 親 の 胎 内 に 入 っ て 生 ま れ る こ と が で
こた
きましょうか。」
う
かみ
くに
はい
にく
う
イ エ ス は お 答 え に な っ た。「 は っ き り 言 っ て お き ま す。 人 は、 水 と 霊
にく
れい
う
れい
がた
あら
と に よ っ て 生 ま れ な け れ ば、 神 の 国 に 入 る こ と は で き ま せ ん。 肉 か ら 生
う
い
おどろ
ま れ た も の は 肉 で す。 霊 か ら 生 ま れ た も の は 霊 で す。『 あ な た 方 は 新 た
かぜ
おも
ふ
おと
き
き
に生まれなければならない』と言ったからとて、驚くことはありません。
風 は 思 い の ま ま に 吹 く。 あ な た は そ の 音 を 聞 い て も、 そ れ が ど こ か ら 来
120
い
れい
う
もの
て、 ど こ へ 行 く か は わ か ら な い。 だ れ で も 霊 か ら 生 ま れ る 者 は そ の と お
りです。」
こた
い
きょうし
するとニコデモは、「どうして、そんなことがありえましょうか。」と
い
言った。
き
わたし
し
イエスは答えて言われた。「あなたはイスラエルの教師でありながら、
はな
み
あか
がた
わたし
こ う い う こ と が わ か ら な い の で す か。 よ く 聞 き な さ い。 私 た ち は 知 っ て
あか
う
い
わたし
よ
はな
がた
い る こ と を 話 し、 見 た こ と を 証 し し て い ま す、 し か し、 あ な た 方 は 私 た
しん
てん
あい
あた
はな
ば あい
あい
しん
ひと
ご
しん
ち の 証 し を 受 け 入 れ ま せ ん。 私 が こ の 世 の こ と を 話 し た の に あ な た 方 が
よ
ご
よ
信じなければ、天のことを話した場合、どうして信じるでしょうか。
かみ
ひと
神は世を愛された
かみ
もの
ほろ
えいえん
え
かみ
み
こ
神 は、 独 り 子 を お 与 え に な っ た ほ ど、 世 を 愛 さ れ ま し た。 独 り 子 を 信
よ
つか
よ
よ
み
こ
すく
じ る 者 が ひ と り も 滅 び な い で、 永 遠 の い の ち を 得 る た め で す。 神 が 御 子
かれ
しん
もの
つみ
と
け
しん
もの
を 世 に 遣 わ さ れ た の は、 世 を さ ば く た め で は な く、 世 が 御 子 に よ っ て 救
わ れ る た め で す。 彼 を 信 じ る 者 は 罪 が 取 り 消 さ れ ま す。 信 じ な い 者 は す
121
つみ
り ゆう
さだ
ひかり
よ
き
かみ
ひと
ご
しん
ひとびと
ひかり
やみ
あい
で に 罪 び と と 定 め ら れ て い ま す。 神 の 独 り 子 を 信 じ て い な い か ら で す。
ひとびと
おこな
わる
あく
おこな
もの
そ の 理 由 は こ れ で す。 光 が 世 に 来 た の に、 人 々 は 光 よ り も 闇 を 愛 し た、
ひかり
にく
ひかり
ほう
き
おこな
あか
だ
おそ
と い う こ と で す。 人 々 の 行 い が 悪 い た め な の で す。 悪 を 行 う 者 は だ れ で
しん り
おこな
もの
ひかり
き
おこな
かみ
も 光 を 憎 ん で、 光 の 方 に 来 ま せ ん。 そ の 行 い が 明 る み に 出 さ れ る の を 恐
みちび
き
かた
あき
い
たいざい
れ て い る か ら で す。 し か し、 真 理 を 行 う 者 は 光 に 来 ま す。 そ の 行 い が 神
てん
し
ち ほう
に導かれてなされたということが、明らかにされるために。」
み こ
で
御子は天から来た方
ご
さず
た ほう
ちか
せん
そ の 後、 イ エ ス は 弟 子 た ち と ユ ダ ヤ 地 方 に 行 か れ、 そ こ に 滞 在 し て
せんれい
れい
さずけ
みず
おお
ひとびと
き
せんれい
洗 礼 を 授 け て お ら れ た。 他 方、 ヨ ハ ネ は、 サ リ ム の 近 く の ア イ ノ ン で 洗
う
で
し
じん
あいだ
きよ
礼 を 授 け て い た。 そ こ に は 水 が 多 か っ た か ら で あ る。 人 々 は 来 て、 洗 礼
ろんそう
かれ
き
い
せんせい
を 受 け て い た。 さ て、 ヨ ハ ネ の 弟 子 た ち と、 あ る ユ ダ ヤ 人 と の 間 で、 清
がわ
む
ぎし
あか
めについて論争があった。彼らはヨハネのところに来て言った。「先生、
ひと
せんれい
さず
かれ
ほう
い
ヨ ル ダ ン 川 の 向 こ う 岸 で あ な た と い っ し ょ に い て、 あ な た が 証 し さ れ た
あの人が、洗礼を授けています。そしてみんなが彼の方へ行っています。
122
「あの方は栄え、私は衰える。」
こた
わたし
ひと
てん
あた
かた
まえ
つか
なに
う
もの
わたし
ヨ ハ ネ は 答 え た。「 人 は、 天 か ら 与 え ら れ な け れ ば、 何 も 受 け る こ と が
い
しょうにん
がた じ しん
かた
さか
わたし
おとろ
で き ま せ ん。『 私 は メ シ ア で は な く あ の 方 の 前 に 遣 わ さ れ た 者 だ 』 と 私
こ
かた
うえ
よ
で
もの
が 言 っ た こ と の 証 人 は あ な た 方 自 身 で す。 あ の 方 は 栄 え、 私 は 衰 え ね ば
うえ
なりません。
よ
ぞく
よ
かた
てん
こ
かた
ばんぶつ
うえ
上 か ら 来 ら れ る 方 は、 す べ て の も の の 上 に お ら れ ま す。 世 か ら 出 る 者
かた
み
き
あか
は 世 に 属 し、 世 の こ と を 語 り ま す。 天 か ら 来 ら れ る 方 こ そ、 万 物 の 上 に
あか
う
う
あか
う
い
もの
かみ
しん
お ら れ る の で す。 こ の 方 は、 見 た こ と、 聞 い た こ と を 証 し さ れ ま す が、
じつ
みと
かみ
つか
かた
かみ
だ れ も そ の 証 し を 受 け 入 れ ま せ ん。 そ の 証 し を 受 け 入 れ た 者 は、 神 が 真
はな
ちち
み
こ
かみ
せいれい
あい
む げん
ばんぶつ
あた
かれ
て
み
こ
しん
実 で あ る こ と を 認 め た こ と に な り ま す。 神 が 遣 わ さ れ た 方 は、 神 の こ と
てん
ばを話します。神が聖霊を無限にお与えになるからです。
ひと
えいえん
え
み
こ
したが
もの
み
天 の 父 は 御 子 を 愛 し て、 万 物 を 彼 の 手 に ゆ だ ね ら れ ま し た。 御 子 を 信
かみ
いか
もの
うえ
じ る 人 は 永 遠 の い の ち を 得 て い る が、 御 子 に 従 わ な い 者 は、 い の ち を 見
ることがないばかりか、神の怒りがその者の上にとどまります。」
123
イエスはユダヤ地方で洗礼を授けておられた。
ヨハネによる福音書 3:22
ヨルダン川
124
い
つた
き ょ
ひとびと
ひ
りっぽうがくしゃ すうにん
第七章 拒
否される
ひとびと
は
人々の言い伝え
あつ
で
し
なか
けが
き
て
パ リ サ イ 派 の 人 々 と 律 法 学 者 数 人 が、 エ ル サ レ ム か ら 来 て、 イ エ ス の
て
あら
しょくじ
ひとびと
もの
じん
み
みな
せん ぞ
い
つた
かた
と こ ろ に 集 ま っ た。 そ し て、 イ エ ス の 弟 子 た ち の 中 に 汚 れ た 手、 す な わ
は
ち手を洗わないで食事をする者がいるのを見た。
て
あら
しょくじ
いち ば
かえ
( パ リ サ イ 派 の 人 々 を は じ め ユ ダ ヤ 人 は 皆、 先 祖 の 言 い 伝 え を 固 く
まも
み
きよ
しょくじ
さかずき はち
どう
守 っ て、 手 を よ く 洗 わ な い で は 食 事 を せ ず、 ま た、 市 場 か ら 帰 っ た と き
うつわ
あら
まも
つた
に は、 身 を 清 め て か ら で な い と 食 事 を し な い。 そ の ほ か、 杯、 鉢、 銅 の
は
ひとびと
りっぽうがくしゃ
器を洗うことなど、守るように伝えられたしきたりがたくさんある。)
それで、パリサイ派の人々と律法学者たちが、イエスにたずねた。
125
で
し
せん ぞ
よ げん しゃ
でんとう
したが
けが
がた ぎ ぜ ん し ゃ
て
しょくじ
じつ
「 な ぜ、 あ な た の 弟 子 た ち は 先 祖 の 伝 統 に 従 わ ず、 汚 れ た 手 で 食 事 を す
い
るのですか。」
よ げん
おし
くちさき
わたし
わたし
おが
ひと
とお
わたし
わたし
はな
い
うやま
む
だ
さだ
よ
よ
き
さと
い
そと
ひと
はい
イ エ ス は 言 わ れ た。「 預 言 者 イ ザ ヤ は、 あ な た 方 偽 善 者 に つ い て、 実
たみ
によく預言したものです。
こころ
『この民は、口先では私を敬うが、
かれ
その心は、私から遠く離れている。
かれ
彼らが、私を拝んでも、無駄なことである。
けが
ぐんしゅう
彼らの教えは、人のつくった定めにすぎないから。』」
ひと
人を汚すもの
い
ひと
こう言って、イエスは群衆を呼び寄せてまた言われた。
ひと
けが
なに
ひと
うち
で
「 す べ て の 人 よ、 私 の 言 う こ と を 聞 い て、 悟 り な さ い。 外 か ら 人 に 入
く
ひと
けが
はな
いえ
はい
で
し
る も の で、 人 を 汚 す こ と が で き る も の は 何 も あ り ま せ ん。 人 の 内 か ら 出
ぐんしゅう
て来るものが人を汚すのです。」
イ エ ス が 群 衆 を 離 れ て 家 に 入 ら れ る と、 弟 子 た ち は こ の た と え に つ い
126
そと
ひと
い
はい
ひと
がた
けが
て た ず ね た。 イ エ ス は 言 わ れ た。「 あ な た 方 ま で も、 そ れ ほ ど わ か ら な
ひと
こころ
はい
はら
はい
はいせつ
い の で す か。 外 か ら 人 に 入 る も の は 人 を 汚 せ な い と い う こ と が わ か ら な
しょくもつ
い の で す か。 そ れ は 人 の 心 に 入 る の で は な く、 腹 に 入 り、 そ し て 排 泄 さ
い
ひと
で
ひと
けが
ひと
うち
れます。」イエスは、このように、すべての食物をきよいとされた。
にんげん
こころ
わる
おも
わ
で
せいてき ふ どうとく
ぬす
さつ
ま た 言 わ れ た。「 人 か ら 出 る も の こ そ、 人 を 汚 す の で す。 人 の 内、 す
い
かんいん
よく
ふ せい
こうしょく
わるぐち
こうまん
な わ ち 人 間 の 心 か ら、 悪 い 思 い が 湧 き 出 ま す。 性 的 不 道 徳、 盗 み、 殺
あく
ひと
うち
で
き
ひと
けが
意、 姦 淫、 欲 ば り、 不 正、 う そ、 好 色、 ね た み、 悪 口、 高 慢、 ふ し だ ら
よ
で
し
はなし
い
など、これらの悪はみな人の内から出て来て、人を汚すのです。」 せんせい
「先生」と呼ばれるな
ぐんしゅう
は
ひとびと
い
おこな
まも
またあるとき、イエスは群衆と弟子たちに話をして、こう言われた。
りっぽうがくしゃ
かれ
おこな
かれ
い
「 律 法 学 者 た ち や パ リ サ イ 派 の 人 々 の 言 う こ と は、 す べ て 行 い、 ま た 守
じっこう
かれ
おも に
ひとびと
かた
お
じ ぶん
り な さ い。 し か し、 彼 ら の 行 い は、 ま ね て は い け ま せ ん。 彼 ら は 言 う だ
うご
ゆび
ぽん
かれ
おこな
け で、 実 行 し な い か ら で す。 彼 ら は 重 荷 を 人 々 の 肩 に 負 わ せ る が、 自 分
は そ れ を 動 か す た め に 指 一 本 も か そ う と し ま せ ん。 彼 ら の 行 い は す べ て
127
*経札 ユダヤ人の間で、聖書の
ことばを記した皮などを身につけ
る風習があった。おもに祈りの時
につけた。
**先生 学校の教師・医師など
の敬称である「先生」を意味して
いない。宗教の指導者としての先
生、例えば「牧師先生」。
***父 父親が子どもに「父」
と呼ばれてはならぬ、の意味では
ない。「神父」などを意味する。
****教師 あるいは「指導
者」。
ひと
み
とくべつ
き
* きょうふだ
えんかい
はば
ひろ
じょうざ
かいどう
い ふく
ふさ
じょうせき
すわ
なが
だい
人 に 見 ら れ る た め で す。 経 札 の 幅 を 広 く し た り、 衣 服 の 房 を 長 く し た り
す
ひろ ば
あいさつ
せんせい
よ
し て 特 別 の も の を 着 ま す。 宴 会 で は 上 座、 会 堂 で は 上 席 に 座 る こ と が 大
よろこ
がた
** せんせい
よ
好 き で、 ま た、 広 場 で 挨 拶 さ れ た り、『 先 生 』 と 呼 ば れ た り す る こ と を
がた
せんせい
みなきょうだい
ち
喜 び ま す。 し か し、 あ な た 方 は『 先 生 』 と 呼 ば れ て は な り ま せ ん。 あ な
じょう
*** ちち
よ
がた
ちち
た 方 の『 先 生 』 は お ひ と り で あ っ て、 あ と は 皆 兄 弟 な の で す。 ま た、 地
てん
かみ
がた
****きょうし
よ
上 の だ れ を も『 父 』 と 呼 ん で は い け ま せ ん。 あ な た 方 の『 父 』 は た だ ひ
がた
きょうし
と り で す。 天 に お ら れ る 神 だ け で す。 あ な た 方 は、『 教 師 』 と 呼 ば れ て
がた
い だい
ひと
みな
つか
もの
も い け ま せ ん。 あ な た 方 の『 教 師 』 は た だ ひ と り で す。 メ シ ア ひ と り だ
じ ぶん
たか
ひく
じ ぶん
ひく
け な の で す。 あ な た 方 の う ち で い ち ば ん 偉 大 な 人 は、 皆 に 仕 え る 者 に な
たか
ひ はん
がた ぎ ぜん
りっぽうがくしゃ
は
り ま す。 だ れ で あ ろ う と、 自 分 を 高 く す る も の は 低 く さ れ、 自 分 を 低 く
い
宗 教 の指導 者たちを批 判
しゅうきょう し どうしゃ
するものは高くされます。
ほんとう
がた
ひとびと
はい
じゃ ま
てん
くに
本当に忌まわしいものだ。あなた方偽善の律法学者、パリサイ派の
ひとびと
人々は。あなた方は、人々が入れないように邪魔をして、天の国をさ
128
*律法学者 七五ページの注釈
を参照。
い
じ ぶん
はい
はい
がた
み ぼうじん
ざいさん
ひとびと
く
はい
えぎっているのです。自分も入らず、入ろうとしている人々をも入ら
ほんとう
せません。
み
え
なが
いの
がた
ひといちばい
本 当 に 忌 ま わ し い も の だ。 あ な た 方 は 未 亡 人 の 財 産 を 食 い つ く し、
ばつ
う
は
ひとびと
がた ぎ ぜんしゃ
い
また、見栄のために長いお祈りをします。だから、あなた方は人一倍
*りっぽうがくしゃ
きびしい罰を受けます。
かいしゅうしゃ
うみ
りく
まわ
かいしゅうしゃ
律法学者たちとパリサイ派の人々、あなた方偽善者は忌まわしいも
じ ぶん
ばい
わる
じ ごく
こ
のだ。改宗者ひとりをつくるために海と陸をとび回り、改宗者ができ
りっぽうがくしゃ
は
ひとびと
がた ぎ ぜ ん し ゃ
い
ると、自分より倍も悪い地獄の子にしてしまうからです。
さかずき
さら
そとがわ
うちがわ
ごうよく
み
律法学者たちとパリサイ派の人々、あなた方偽善者は忌まわしいも
み
は
ひとびと
さかずき
うちがわ
のだ。杯や皿の外側はきれいにするが、内側は強欲とわがままで満ち
きよ
は
そとがわ
きよ
ひとびと
がた ぎ ぜんしゃ
い
ているからです。ものの見えないパリサイ派の人々、まず、杯の内側
りっぽうがくしゃ
を清めなさい。そうすれば、外側も清くなる。
がた
しろ
ぬ
はか
に
そとがわ
うつく
み
律法学者たちとパリサイ派の人々、あなた方偽善者は忌まわしいも
うちがわ
し にん
ほね
けが
み
がた
そと
の だ。 あ な た 方 は 白 く 塗 っ た 墓 に 似 て い る。 外 側 は 美 し く 見 え て も、
がわ
ひと
ただ
み
うちがわ
ぎ ぜん
ふ ほう
み
内側は死人の骨やあらゆる汚れたもので満ちている。あなた方も、外
側は人に正しく見えるが、内側は偽善や不法で満ちている。
129
へび
こ
わたし
よ げんしゃ
ち しゃ
がくしゃ
じ ごく
けいばつ
つか
まぬか
蛇 よ、 ま む し の 子 ら よ。 ど う し て お ま え た ち は 地 獄 の 刑 罰 を 免 れ る こ
もの
ころ
じゅうじ か
もの
かいどう
むち う
と が で き よ う か。 私 は 預 言 者、 知 者、 学 者 を お ま え た ち に 遣 わ す が、 お
まち
まち
はくがい
い
さ
ま え た ち は そ の あ る 者 を 殺 し、 十 字 架 に つ け、 あ る 者 を 会 堂 で 鞭 打 ち、
た
町から町へと迫害して行くのです。」
たい
ひとびと
イエスに対するたくらみ
は
そうだん
りっぽう
せんもん
そ こ で、 パ リ サ イ 派 の 人 々 は 立 ち 去 っ て、 ど の よ う に し て イ エ ス を こ
か
ため
せんせい
りっぽう
もっと
と ば の わ な に か け る か 相 談 を ま と め た。 そ の う ち の ひ と り、 律 法 の 専 門
じゅうよう
つ
おも
つ
い
し
つ
かみ
しゅ
家 が、 イ エ ス を 試 そ う と し て た ず ね た。「 先 生、 律 法 の う ち、 ど れ が 最
い
も重要でしょうか。」
こころ
イエスは言われた。
あい
さいだい
だいいち
おきて
だい に
おな
「『心を尽くし、思いを尽くし、意志を尽くして、あなたの神である主
じゅうよう
じ ぶん
あい
おきて
りっぽう ぜんたい
よ げんしゃ
を 愛 し な さ い。』 こ れ が 最 大 で 第 一 の 掟 で す。 第 二 も、 こ れ と 同 じ よ う
となりびと
に重要です。
『隣人を自分のように愛しなさい。』この二つの掟に律法全体と預言者
130
おし
で
し
い
の教えのすべてがかかっているのです。」
かく
し
こ
は
ひとびと
ぎ ぜん
おお
ちゅうい
イ エ ス は、 弟 子 た ち に 言 わ れ た。「 パ リ サ イ 派 の 人 々 の 偽 善 に 注 意 し
あらわ
ひとびと
ころ
そうだん
な さ い。 隠 さ れ て い る も の で 知 ら れ て 来 な い も の は な く、 覆 い か ぶ さ れ
は
ているもので、現れないものはありません。」
し
た
さ
おお
ひとびと
パ リ サ イ 派 の 人 々 は、 ど の よ う に し て イ エ ス を 殺 そ う か と 相 談 し た。
き
よ げんしゃ
かみ
い
じょうじゅ
イ エ ス は そ れ を 知 っ て、 そ こ を 立 ち 去 ら れ た。 す る と ま た 多 く の 人 々 が
つ い て 来 た。 そ れ は、 預 言 者 イ ザ ヤ を と お し て 神 が 言 わ れ た こ と が 成 就
み
わたし
えら
するためであった。
わたし
よろこ
もの
「見よ、私の選んだしもべ。
かた
わたし
れい
さず
私の喜ぶいとしい者。
かれ
しょこく
たみ
せい ぎ
し
この方に私の霊を授ける。
かれ
あらそ
さけ
かれ
こえ
き
彼は諸国の民に正義を知らせる。
とお
彼は争わず、叫ばず、
かれ
あし
お
だれも通りで彼の声を聞くまい。
とうしん
け
彼はいたんだ葦を折らず、
くすぶる灯心を消さない、
131
*アブラハム ユダヤ人の始祖、
また神を信じる者の信仰の模範。
せい ぎ
とお
しょうり
しょこく
たみ
みちび
かれ
な
正義を勝利に導くまでは。
まず
ひと
はなし
のぞ
かね も
遠い諸国の民も、彼の名に望みをかける。」
かね も
つぎ
金 持ちと貧しい人
ほそいと
ぬの
き
もん
まいにち
まえ
せいかつ
まず
たの
ひと
むらさき
よこ
イ エ ス は 次 の よ う な 話 を な さ っ た。「 あ る 金 持 ち が い た。 い つ も 紫 の
ころも
かね も
衣や細糸の布を着て、毎日ぜいたくな生活を楽しんでいた。
しょくたく
お
もの
う
おも
いぬ
こ の 金 持 ち の 門 の 前 に、 ラ ザ ロ と い う 貧 し い 人 が で き も の だ ら け で 横
き
ひと
し
てん し
*
た わ り、 そ の 食 卓 か ら 落 ち る 物 で 飢 え を し の げ れ ば と 思 っ て い た。 犬 も
まず
やって来ては、そのできものをなめていた。
つ
い
し
ほうむ
かね も
じ ごく
くる
め
あ
や が て、 そ の 貧 し い 人 は 死 ん で、 天 使 た ち に よ っ て ア ブ ラ ハ ム の も と
かね も
に連れて行かれた。
み
金 持 ち も 死 ん で 葬 ら れ た。 金 持 ち は 地 獄 で 苦 し み の う ち に 目 を 上 げ
こえ
い
ちち
わたし
あわ
る と、 は る か か な た に、 ア ブ ラ ハ ム と そ の す ぐ そ ば に い る ラ ザ ロ と が 見
ゆび さき
みず
ひた
わたし
した
ひ
え た。 そ こ で、 声 を あ げ て 言 っ た。『 父 ア ブ ラ ハ ム よ、 私 を 憐 れ ん で く
だ さ い! ラ ザ ロ を よ こ し、 指 先 を 水 に 浸 し て 私 の 舌 を 冷 や さ せ て く だ さ
132
わたし
ほのお
い
なか
こ
くる
おも
だ
い。私はこの炎の中でもだえ、苦しくてたまりません。』
あいだ
よ
う
わる
う
い
ア ブ ラ ハ ム は 言 っ た。『 子 よ、 思 い 出 し て み な さ い。 あ な た は 生 き て
いま
かれ
なぐさ
くる
わたし
い る 間 に 良 い も の を 受 け て い た。 し か し、 ラ ザ ロ は 悪 い も の を 受 け て い
あいだ
おお
ふち
ほう
た。 今、 こ こ で 彼 は 慰 め ら れ、 お ま え は 苦 し み も だ え る。 そ の う え、 私
わた
わたし
ほう
こ
く
た ち と お ま え た ち の 間 に は 大 き な 淵 が あ る。 こ こ か ら お ま え た ち の 方 へ
い
ちち
ねが
わたし
ちち おや
いえ
おく
渡 ろ う と し て も で き な い し、 そ こ か ら 私 た ち の 方 へ 越 え て 来 る こ と も で
かね も
きない。』
わたし
きょうだい
にん
かれ
くる
ば しょ
金 持 ち は 言 っ た。『 父 よ、 お 願 い で す。 ラ ザ ロ を 私 の 父 親 の 家 に 送 っ
く
かれ
けいこく
きょうだい
よ げん
てください。私には兄弟が五人います。彼らまで、この苦しみの場所に
い
来ることのないように、彼らに警告してください。』
おし
い
い
ちち
き
し
ひと
し か し、 ア ブ ラ ハ ム は 言 っ た。『 お ま え の 兄 弟 た ち に は モ ー セ と 預 言
しゃ
かね も
者の教えがある。その言うことを聞けばよい。』
かれ
い
く
あらた
よ げんしゃ
おし
き
金 持 ち は 言 っ た。『 い い え、 父 ア ブ ラ ハ ム よ、 も し、 死 ん だ 人 の だ れ
い
かが彼らのところに行けば、悔い改めるでしょう。』
し にん
い
き
ア ブ ラ ハ ム は 言 っ た。『 も し、 モ ー セ と 預 言 者 の 教 え を 聞 こ う と し な
い の な ら、 た と え 死 人 の だ れ か が よ み が え っ て も、 そ の 言 う こ と を 聞 き
133
*取税人 ローマ政府から税金の
取り立てを委託された役人。外国
人( ロ ー マ 帝 国 )の た め に 働 く ば
かりではなく、割り当てられた税
額以上の金を取り立てて私腹をこ
やすという理由で、ユダヤ人から
憎まれ、
「罪びと」と見なされた。
**断食 宗教的な動機で一定の
期間、食事を断つこと。
い
は
ひと * しゅぜいにん
入れはしないだろう。』」
ただ
にんげん
おも
パリサイ派の人と取税人のたとえ
じ ぶん
つぎ
いの
はな
しんでん
のぼ
た にん
み
さ
ひとびと
は
たい
ひと
自分は正しい人間だと思いこんで、他人を見下げている人々に対して
ひと
も、イエスは次のたとえを話された。
しゅぜいにん
は
ひと
た
こころ
なか
「ふたりの人が祈るために神殿に上った。ひとりはパリサイ派の人で、
いの
かみ
わたし
ひとびと
さ
ぎ
もの
ふ せい
も う ひ と り は取税 人で あ っ た。 パ リ サ イ派 の 人は 立っ て、心 の 中で こ う
もの
かんいん
もの
しゅぜいにん
もの
祈 っ た。『 あ あ 神 よ、 私 は ほ か の 人 々 の よ う に、 詐 欺 を す る 者、 不 正 な
かんしゃ
わたし
しゅう
ど ** だんじき
ぜんしゅうにゅう
ぶん
者、 姦 淫 す る 者 で な く、 ま た、 こ の 取 税 人 の よ う な 者 で も な い こ と を、
ささ
とお
はな
た
かお
てん
む
感 謝 い た し ま す。 私 は 週 に 二 度 断 食 し、 全 収 入 の 十 分 の 一 を あ な た に
しゅぜいにん
献げております。』
むね
う
い
かみ
つみ
わたし
ところが、取税人は遠く離れて立ち、顔を天に向けようともせず、た
あわ
わたし
い
かみ
ただ
いえ
だ 胸 を 打 ち な が ら 言 っ た。『 神 さ ま。 ど う か、 罪 び と で あ る、 こ の 私 を
かえ
しゅぜいにん
は
ひと
憐 れ ん で く だ さ い。』 と。 私 は 言 う、 神 に 正 し い も の と み な さ れ て 家 に
帰ったのは、この取税人であって、あのパリサイ派の人ではありません。
134
じ ぶん
し
たか
もの
ひく
き
じ ぶん
い
ひく
てん
もの
くに
たか
だ れ で も、自 分 を 高く す る者は 低く さ れ、自分 を 低く す る者は 高く さ れ
るからです。」
こ
で
子どものようにへりくだれ
えら
こ
よ
あ る と き、 弟 子 た ち が イ エ ス の も と に 来 て 言 っ た。「 天 の 国 で い ち ば
よ
かれ
ま
なか
た
い
き
こころ
い
ん 偉 い の は だ れ で し ょ う か。」 そ こ で、 イ エ ス は ひ と り の 子 ど も を 呼 び
か
こ
てん
くに
はい
こ
寄 せ、 彼 ら の 真 ん 中 に 立 た せ て、 言 わ れ た。「 よ く 聞 き な さ い。 心 を 入
みずか
ひと
てん
くに
えら
れ替えて子どものようにならなければ、天の国には入れません。この子
わたし
こ
う
い
もの
わたし
う
い
ど も の よ う に 、自 ら へ り く だ る 人 こ そ 、天 の 国 で い ち ば ん 偉 い の で す 。
わたし
しん
ちい
ひと
しんこう
私のためにこのような子どものひとりを受け入れる者は、私を受け入れ
るのです。
もの
おお
いしうす
くび
うみ
ふか
ほう
し か し、 私 を 信 じ る こ れ ら の 小 さ な 人 の ひ と り の 信 仰 を つ ま ず か せ
る 者 は 、大 き な 石 臼 を 首 に か け ら れ て 、海 の 深 み に お ぼ れ た 方 が ま し で
す。」
135
まつ
きょうだい
ふ しんこう
じん
イエスの兄弟たちの不 信 仰
かりいお
い
いわ
うつ
ひ
ちか
い
きょうだい
で
し
仮 庵 の 祭 り と い う ユ ダ ヤ 人 の 祝 い の 日 が 近 づ い て い た。 イ エ ス の 兄 弟
み
おおやけ
ば
で
た ち が イ エ ス に 言 っ た。「 こ こ か ら 移 っ て ユ ダ ヤ へ 行 き、 あ な た の 弟 子
おも
かく
ところ
こうどう
もの
おこな
た ち に も あ な た が し て い る わ ざ を 見 せ て や り な さ い。 公 の 場 に 出 た い と
じ ぶん
よ
あらわ
きょうだい
しん
思 う の に、 隠 れ た 所 で 行 動 す る 者 は あ り ま せ ん。 こ れ ら の わ ざ を 行 う の
い
わたし
とき
き
な ら、 自 分 を 世 に 現 し な さ い。」 兄 弟 た ち も、 イ エ ス を 信 じ て い な か っ
かれ
たのである。
がた
とき
そな
よ
がた
にく
イ エ ス は 彼 ら に 言 わ れ た。「 私 の 時 は ま だ 来 て い ま せ ん。 し か し、 あ
わたし
にく
わたし
よ
おこな
わる
あか
なた方の時はいつも備わっている。世はあなた方を憎みません。しかし、
がた
まつ
い
わたし
い
わたし
とき
き
私 を 憎 ん で い ま す。 私 が、 世 の 行 い が 悪 い と 証 し し て い る か ら で す。 あ
い
な た 方 は 祭 り に 行 き な さ い。 私 は ま だ 行 き ま せ ん。 私 の 時 が 来 て い な い
からです。」こう言って、イエスはガリラヤにとどまられた。
136
かりいおさい
仮 庵 祭でのイエス
きょうだい
い
まつ
い
じん
ひと め
ひと
さ
兄 弟 た ち が エ ル サ レ ム に 行 っ た あ と、 イ エ ス は 人 目 を 避 け、 ひ そ か に
のぼ
い
さが
ぐんしゅう
あいだ
上って行かれた。祭りのときユダヤ人たちは「あの人はどこにいるのか」
よ
ひと
い
もの
ぐんしゅう
と 言 っ て、 イ エ ス を 捜 し て い た。 イ エ ス に つ い て、 群 衆 の 間 で は、 い ろ
まど
い
もの
し どうしゃ
おそ
いろとささやかれていた。「良い人だ」と言う者もあり、「いや、群衆を
こうぜん
なか
かた
もの
しんでん
けいだい
はい
おし
はじ
惑わしている」と言う者もいた。しかし、ユダヤ人の指導者たちを恐れて、
まつ
イエスについて公然と語る者はひとりもいなかった。
じん
おどろ
い
ひと
なに
べんきょう
祭 り が す で に 半 ば の こ ろ、 イ エ ス は 神 殿 の 境 内 に 入 っ て 教 え 始 め ら
せいしょ
し
こた
い
わたし
おしえ
れた。ユダヤ人たちは驚いて言った。「この人は何も勉強してないのに、
じ ぶん
わたし
つか
かた
おし
かみ
どうして聖書を知っているのか。」イエスは答えて言われた。「私の教え
みこころ
おこな
おし
かみ
わたし
じ ぶん かっ て
は、 自 分 の も の で は な く、 私 を 遣 わ さ れ た 方 の 教 え で す。 だ れ で も 神 の
はな
御 心 を 行 お う と す る な ら、 こ の 教 え が 神 か ら の も の か、 私 が 自 分 勝 手 に
話しているのか、わかるはずです。
137
わたし おし
しん
もの
じ ぶん
わたし
わたし
私 の教えは自分のものではない
わたし
み
もの
わたし
つか
かた
み
つか
かた
わたし
しん
ひかり
き
わたし
私 を 信 じ る 者 は、 私 で は な く、 私 を 遣 わ さ れ た 方 を 信 じ る の で す。 私
わたし
しん
もの
くら やみ
なか
わたし
を 見 る 者 は、 私 を 遣 わ さ れ た 方 を 見 る の で す。 私 が 光 と し て 来 た の は、
き
まも
ひと
わたし
ひと
私 を 信 じ る 者 が、 だ れ も 暗 闇 の 中 に と ど ま ら な い た め で す。 私 の こ と ば
わたし
き
よ
よ
すく
を 聞 い て、 そ れ を 守 ら な い 人 が い て も、 私 は そ の 人 を さ ば い て は い ま せ
わたし
こば
わたし
う
い
もの
たい
ん。 私 が 来 た の は、 世 を さ ば く た め で は な く、 世 を 救 う た め で あ る か ら
わたし
はな
お
ひ
ひと
で す。 私 を 拒 み、 私 の こ と ば を 受 け 入 れ な い 者 に 対 し て は、 さ ば く も の
わたし
じ ぶんかっ て
はな
わたし
つか
てん
ちち
があります。私の話したことばが、終わりの日にその人をさばくのです。
わたし
なに
い
なに
かた
めい
わたし
し
なぜなら、私は自分勝手に話したのではなく、私を遣わされた天の父が、
てん
ちち
めいれい
えいえん
わたし
かた
私 に 何 を 言 い、 何 を 語 る べ き か を お 命 じ に な っ た か ら で す。 私 は 知 っ て
ちち
わたし
めい
かた
い ま す、 天 の 父 の 命 令 は 永 遠 の い の ち で あ る こ と を。 そ れ ゆ え、 私 が 語
ることは、父が私に命じられたとおりに語っているのです。」
138
ひと
この人はメシアか
もの
ひと
い
ひと
かれ
こうぜん
ころ
はな
そ こ で、 エ ル サ レ ム の あ る 人 た ち が 言 っ た。「 こ の 人 は、 彼 ら が 殺 そ
なん
い
ひと
ぎ いん
う と ね ら っ て い る 者 で は な い か。 そ れ な の に、 あ の よ う に 公 然 と 話 し て
ほんとう
みと
わたし
ひと
い て も、 だ れ も 何 と も 言 わ な い。 こ の 人 が メ シ ア だ と い う こ と を、 議 員
しゅっしん
し
こ
かれ
く
た ち は 本 当 に 認 め た の で は な い だ ろ う か。 し か し、 私 た ち は、 こ の 人 が
けいだい
おし
おお ごえ
い
がた
わたし
ど こ の 出 身 だ か 知 っ て い る。 メ シ ア が 来 ら れ る と き、 彼 が ど こ か ら 来 る
しんでん
のかは、だれもわかるはずがない。」
し
き
し
わたし
じ
神 殿 の 境 内 で 教 え て い た イ エ ス は、 大 声 で 言 わ れ た。「 あ な た 方 は 私
ぶん かっ て
き
わたし
つか
かた
しんじつ
を 知 っ て お り、 ま た、 ど こ か ら 来 た か も 知 っ て い ま す。 し か し、 私 は 自
がた
かた
し
わたし
かた
し
わたし
分 勝 手 に 来 た の で は あ り ま せ ん。 私 を 遣 わ さ れ た 方 は 真 実 で す が、 あ な
かた
き
かた
わたし
つか
た 方 は そ の 方 を 知 り ま せ ん。 私 は そ の 方 を 知 っ て い ま す。 な ぜ な ら、 私
ぐんしゅう
なか
おお
しん
い
こ
はその方のもとから来たのであり、その方が私を遣わされたのです。」
ひと
おお
ほんとう
き せき
い
もの
い
群 衆 の 中 の 多 く が イ エ ス を 信 じ て 言 っ た。「 メ シ ア が 来 ら れ て も、 こ
ひと
の人よりも多くの奇跡をなさるだろうか。」
「 こ の 人 は 本 当 に メ シ ア だ 」 な ど と 言 う 者 も い た が、 こ の よ う に 言 う
139
もの
し そん
で
せいしょ
むら
で
者もいた。「メシアはまさかガリラヤから出ないだろう。聖書に、『メシ
か
ぐんしゅう
あいだ
ぶんれつ
ア は ダ ビ デ の 子 孫 か ら、 ま た ダ ビ デ の い た ベ ツ レ ヘ ム の 村 か ら 出 る。』
お
ふ しんこう
は
ひとびと
と 書 い て あ る で は な い か。」 こ う し て、 イ エ ス の こ と で 群 衆 の 間 に 分 裂
が起きた。
し どうしゃ
指導者たちの不 信 仰
ぐんしゅう
みみ
さいしちょう
は
ひとびと
やくにん
つか
群 衆 が イ エ ス に つ い て こ の よ う に う わ さ す る の を、 パ リ サ イ 派 の 人 々
とら
て
もの
が 耳 に し た。 そ こ で 祭 司 長 た ち と パ リ サ イ 派 の 人 々 は、 役 人 た ち を 遣 わ
とき
もど
き
き
さいしちょう
は
ひとびと
してイエスを捕えようとした。しかし、イエスに手をかける者はいなかっ
やくにん
た。イエスの時がまだ来ていなかったからである。
ひ
こ
い
やくにん
こた
役 人 た ち が 戻 っ て 来 た と き、 祭 司 長、 パ リ サ イ 派 の 人 々 は「 な ぜ、 あ
ひと
はな
はな
ひと
れを引っぱって来なかったのか。」と言った。役人たちは答えた。「あの
は
ひとびと
い
まど
ぎ
人 が 話 す よ う に 話 し た 人 は、 い ま だ か つ て あ り ま せ ん。」 す る と、 パ リ
いん
は
ひとびと
なか
おとこ
しん
もの
サ イ 派 の 人 々 は 言 っ た。「 お ま え た ち ま で も 惑 わ さ れ た で は な い か。 議
員 や パ リ サ イ 派 の 人 々 の 中 に、 あ の 男 を 信 じ た 者 が ひ と り で も い る か。
140
りっぽう
かれ
し
ぐんしゅう
まえ
のろ
き
律法を知らないこの群衆は、呪われている。」
ほんにん
ちょくせつ き
ひと
なに
し
い
われわれ
りっぽう
彼 ら の ひ と り で、 前 に イ エ ス の と こ ろ に 来 た ニ コ デ モ が 言 っ た。「 ま
こた
い
しゅっしん
しら
ず 本 人 か ら 直 接 聞 き、 そ の 人 が 何 を し た の か 知 ら な け れ ば、 我 々 の 律 法
かれ
ではさばけないではないか。」
よ げんしゃ
ある
あらわ
し
し
ちか よ
き
彼 ら は 答 え て 言 っ た。「 あ な た も ガ リ ラ ヤ の 出 身 な の か。 よ く 調 べ て
お
で
で
みて、ガリラヤからは預言者が現れないことを知りなさい。」
よ
しんでん
世の終わりのしるし
しんでん
たてもの
ゆび
い
イ エ ス が 神 殿 を 出 て 歩 い て お ら れ る と、 弟 子 た ち が 近 寄 っ て 来 て、 イ
もの
み
いま
い
いし
エ ス に 神 殿 の 建 物 を 指 さ し た。 す る と、 イ エ ス は 言 わ れ た。「 こ れ ら す
くず
つ
のこ
みな
べ て の 物 が 見 え る か。 今、 は っ き り 言 っ て お く。 一 つ の 石 で も、 こ こ で
やま
すわ
で
し
崩されずに積まれたまま残ることはない。皆こわされます。」
い
おし
お
イ エ ス が オ リ ー ブ 山 で 座 っ て お ら れ る と、 弟 子 た ち が ひ そ か に や っ て
き
よ
お
ふたた
こ
とき
ぜんちょう
来 て 言 っ た。「 教 え て く だ さ い。 い つ、 そ の よ う な こ と が 起 こ る の で す
か 。 ま た、 世 の 終 わ り と あ な た が 再 び 来 ら れ る 時、 ど ん な 前 兆 が あ る の
141
ですか。」
わたし
こた
な
な
い
もの
おおぜい あらわ
まど
わたし
い
き
おお
イ エ ス は 答 え て 言 わ れ た。「 だ れ に も 惑 わ さ れ な い よ う に 気 を つ け な
ひと
まど
せんそう
さわ
せんそう
き
あわ
さ い。 私 の 名 を 名 の る 者 が 大 勢 現 れ、『 私 が メ シ ア だ 』 と 言 っ て、 多 く
き
かなら
お
の 人 を 惑 わ し ま す。 ま た、 戦 争 の 騒 ぎ や 戦 争 の う わ さ を 聞 き ま す が、 慌
よ
お
たみ
たみ
くに
くに
たたか
かく ち
て な い よ う に 気 を つ け な さ い。 そ れ は 必 ず 起 こ り ま す。 し か し、 そ れ は
き きん
じ しん
お
く なん
はじ
ま だ 世 の 終 わ り で は あ り ま せ ん。 民 は 民 と、 国 は 国 と 戦 い、 ま た、 各 地
わたし
したが
がた
はくがい
う
ころ
に 飢 饉 や 地 震 が 起 こ り ま す。 し か し、 こ れ ら す べ て は 苦 難 の 始 ま り な の
わたし
な
がた
くに
ひとびと
にく
で す。 そ の と き、 私 に 従 う あ な た 方 は 迫 害 を 受 け、 殺 さ れ ま す。 そ し て
おお
ひと
わたし
しんこう
す
たが
うら ぎ
にく
あ
私 の 名 の ゆ え に、 あ な た 方 は す べ て の 国 の 人 々 に 憎 ま れ る の で す。 そ の
おお
でんどうしゃ
あらわ
おおぜい
ひと
まど
ふ ほう
と き、 多 く の 人 が 私 へ の 信 仰 を 捨 て、 互 い に 裏 切 り、 憎 み 合 う よ う に な
おおぜい
しんじゃ
あい
ひ
さい ご
た
しの
り ま す。 多 く の に せ 伝 道 者 も 現 れ、 大 勢 の 人 を 惑 わ し ま す。 ま た、 不 法
ひと
すく
くに
ふくいん
ぜん せ かい
の
つた
こくみん
が は び こ る の で、 大 勢 の 信 者 の 愛 が 冷 え ま す。 し か し、 最 後 ま で 耐 え 忍
かみ
ぶ人こそ救われるのです。
あか
お
く
そ し て、 こ の 神 の 国 の 福 音 は 全 世 界 に 宣 べ 伝 え ら れ て、 す べ て の 国 民
に証しされ、それから、終わりが来るのです。
142
おお
く なん
ひ
大きな苦 難
はじ
いま
おお
く なん
き
けっ
かみ
てん ち
つく
そ れ ら の 日 に は、 大 き な 苦 難 が 来 ま す。 そ れ は 神 が 天 地 を 造 ら れ た
そうぞう
かみ
き かん
ちぢ
すく
もの
創 造 の 初 め か ら 今 ま で に な く、 こ れ か ら も 決 し て な い ほ ど の も の で す。
かみ
じ ぶん
えら
ひと
神 が そ の 期 間 を 縮 め て く だ さ ら な け れ ば、 ひ と り と し て 救 わ れ る 者 は な
き かん
ちぢ
み
い
もの
い で し ょ う。 し か し、 神 は ご 自 分 の も の と し て 選 ん だ 人 た ち の た め に、
み
その期間を縮めてくださったのです。
しん
よ げんしゃ
あらわ
そのとき、『見よ、ここにメシアがいる』『見よ、あそこに』と言う者
き せき
ふ
し
ぎ
おこな
かみ
えら
ひと
まど
がいても、信じてはいけません。にせメシア、にせ預言者たちが現れて、
き
わたし
がた
まえ
はな
奇 跡 や 不 思 議 な わ ざ を 行 い、 神 が 選 ば れ た 人 た ち を 惑 わ そ う と す る か ら
ひ
く なん
あと
たいよう
くら
つき
ひかり
はな
で す。 だ か ら、 気 を つ け て い な さ い。 私 は あ な た 方 に 前 も っ て 話 し ま し
た。
ほし
てん
お
てん
ばんしょう
ゆ
うご
そ れ ら の 日 に は、 こ の よ う な 苦 難 の 後、 太 陽 は 暗 く な り、 月 は 光 を 放
たず、星は天から落ち、天の万象は揺り動かされます。
143
ひと
こ
さいりん
ひとびと
人の子の再臨
み
ひと
こ
ひと
おお
こ
てん し
ちから
えいこう
つか
お
ち
くも
は
の
く
てん
そ の と き、 人 々 は、 人 の 子 が 大 い な る 力 と 栄 光 を 帯 び て 雲 に 乗 っ て 来
は
ほう
かれ
えら
ひと
よ
あつ
る の を 見 ま す。 そ の と き、 人 の 子 は 天 使 た ち を 遣 わ し、 地 の 果 て か ら 天
てん
ち
す
さ
わたし
けっ
す
さ
の果てまで、四方から、彼によって選ばれた人たちを呼び集めます。
ひ
とき
し
てん
天 と 地 は 過 ぎ 去 り ま す。 し か し、 私 の こ と ば は 決 し て 過 ぎ 去 る こ と が
し
かみ
こ
し
ちち
かみ
ぞん
き
あ り ま せ ん。 そ の 日、 そ の 時 が い つ で あ る か は、 だ れ も 知 り ま せ ん。 天
め
さ
ちゅうい
がた
さだ
とき
使 た ち も 神 の 子 も 知 り ま せ ん。 父 な る 神 だ け が ご 存 じ で す。 気 を つ け な
ひと
こ
く
とき
おな
さ い。 目 を 覚 ま し て、 注 意 し て い な さ い。 あ な た 方 に は そ の 定 め の 時 が
こうずい
まえ
はこ ぶね
はい
ひ
ひとびと
た
の
い つ だ か、 わ か ら な い か ら で す。 人 の 子 が 来 る の は、 ノ ア の 時 と 同 じ で
とつ
こうずい
おそ
き
す。 洪 水 の 前、 ノ ア が 箱 船 に 入 る そ の 日 ま で、 人 々 は 食 べ た り、 飲 ん だ
のこ
なに
さと
ひと
こ
く
り、 め と っ た り、 嫁 い だ り し て い ま し た。 そ し て、 洪 水 が 襲 っ て 来 て ひ
とり残らずさらうまで、何も悟らなかったのです。人の子が来るときも、
このようです。
144
こ
みんぞく
えいこう
かがや
すべての民族をさばく
ひと
えいこう
ざ
つ
てん し
くにぐに
したが
たみ
さいりん
み まえ
あつ
人 の 子 は、 栄 光 に 輝 い て、 す べ て の 天 使 た ち を 従 え て 再 臨 す る と き、
かれ
ひつじか
ひつじ
や
ぎ
わ
ひとびと
わ
ひつじ
そ の 栄 光 の 座 に 着 き ま す。 そ し て、 す べ て の 国 々 の 民 が そ の 御 前 に 集 め
みぎ
や
ぎ
ひだり
お
みぎがわ
わたし
ちち
ひと
しゅくふく
い
ひと
よ
ら れ ま す。 彼 は 羊 飼 い が 羊 と 山 羊 を 分 け る よ う に、 人 々 を よ り 分 け、 羊
おう
を右に、山羊を左に置きます。
き
そのとき、王は右側にいる人たちに言います。
がた
そな
くに
う
つ
わたし
う
がた
『 さ あ、 来 な さ い、 私 の 父 に 祝 福 さ れ た 人 た ち。 世 の は じ め か ら あ な
た
もの
あた
かわ
の
もの
あた
わたし
もの
た 方 の た め に 備 え ら れ た 国 を 受 け 継 ぎ な さ い。 私 が 飢 え た と き あ な た 方
むか
い
はだか
き もの
あた
びょうき
み
ま
とら
は 食 べ 物 を 与 え、 の ど が 渇 い た と き 飲 み 物 を 与 え、 私 が よ そ の 者 で あ っ
おとず
わたし
ひと
おう
こた
う
み
た
もの
さ
た と き 迎 え 入 れ、 裸 の と き 着 物 を 与 え、 病 気 の と き 見 舞 い、 捕 わ れ の と
ただ
き訪れてくれた。』
しゅ
すると、正しい人たちが王に答えます。
あ
かわ
み
の
もの
さ
あ
『 主 よ、 私 た ち は い つ、 あ な た が 飢 え て お ら れ る の を 見 て 食 べ 物 を 差
もの
み
むか
い
はだか
み
き もの
あた
し上げ、のどが渇いておられるのを見て飲み物を差し上げたでしょうか。
い つ あ な た を よ そ の 者 と 見 て 迎 え 入 れ、 裸 で お ら れ る の を 見 て 着 物 を 与
145
こた
びょうき
わたし
きょうだい
とら
もっと
ちい
み
もの
おとず
え ま し た か。 い つ、 病 気 を な さ っ た り、 捕 わ れ て い る の を 見 て、 訪 れ ま
おう
したか。』
き
王は答えます。
もの
わたし
ひだりがわ
わたし
もの
はな
さ
い
あく ま
つか
よう
『 聞 き な さ い。 こ れ ら の 私 の 兄 弟 た ち、 し か も 最 も 小 さ い 者 た ち の ひ
おう
とりにしたのは、私にしたのです。』
のろ
それから、王は左側にいる者たちに言います。
い
えいえん
ひ
はい
わたし
う
た
もの
あた
『 呪 わ れ た 者 ど も、 私 か ら 離 れ 去 れ。 悪 魔 と そ の 使 い た ち の た め に 用
かわ
の
もの
あた
もの
むか
い
意 さ れ た、 永 遠 の 火 に 入 れ。 私 が 飢 え た と き お ま え た ち は 食 べ 物 を 与 え
はだか
き もの
あた
びょうき
とら
おとず
ず、のどが渇いたとき飲み物を与えず、よそ者であったとき迎え入れず、
かれ
こた
しゅ
わたし
う
かわ
裸 の と き 着 物 を 与 え ず、 病 気 で あ り 捕 わ れ て い る と き 訪 れ て く れ な か っ
た。』
もの
はだか
びょうき
とら
み
せ
わ
すると、彼らも答えます。『主よ、いつ私たちはあなたが飢え、渇き、
おう
こた
い
よ そ の 者 で あ り、 裸 で、 病 気 で、 捕 わ れ て い る の を 見 て、 お 世 話 を し な
もっと
ちい
もの
わたし
かったでしょうか。』そこで、王は答えます。『はっきり言っておく。お
もの
えいえん
けいばつ
はい
ま え た ち が、 こ の 最 も 小 さ い 者 の ひ と り に し な か っ た の は、 私 に し て く
れなかったことなのである。』こうして、この者どもは永遠の刑罰に入り、
146
*スタディオン 一スタディオン
は約二〇〇メートル。したがっ
て、約三キロメートル。
ただ
ひと
えいえん
はい
し まい
正しい人たちは永遠のいのちに入るのです。」
し
ベタニヤのラザロの死
びょうにん
こう ゆ
ぬ
かみ
け
むら
かれ
あし
ラ ザ ロ と い う 病 人 が い た。 マ リ ヤ と そ の 姉 妹 マ ル タ の 村、 ベ タ ニ ヤ の
ひと
おんな
きょうだい
し まい
ひと
人 で あ っ た。 こ の マ リ ヤ は イ エ ス に 香 油 を 塗 り、 髪 の 毛 で 彼 の 足 を ふ い
しゅ
あい
もの
びょうき
い
た 女 で あ る。 ラ ザ ロ は そ の 兄 弟 で あ っ た。 姉 妹 た ち は イ エ ス の も と に 人
で
し
い
し
はか
い
ほうむ
よっ か
をやって、
「主よ、あなたの愛しておられる者が病気です」と言わせた。
こ
イエスは、弟子たちに「行きましょう。」と言われた。
ちか
*
はな
イエスが来られると、ラザロは死んで墓に葬られてもう四日もたって
おお
じん
なぐさ
いた。ベタニヤはエルサレムに近く、十五スタディオンほど離れたとこ
き
こ
き
ろにあった。それで多くのユダヤ人がラザロのことで、慰めるためにマ
むか
で
いえ
すわ
い
しゅ
ルタとマリヤのところに来ていた。マルタは、イエスが来られると聞い
わたし きょうだい
し
て、
迎えに出、
マリヤは家に座っていた。マルタはイエスに言った。
「主よ、
いま
わたし
し
かみ
ねが
なん
もしあなたがここにおられたなら、私の兄弟は死ななかったでしょうに。
し か し 今 で も、 私 は 知 っ て い ま す。 あ な た が 神 に お 願 い な さ る こ と は 何
147
かみ
きょうだい
でも、神はかなえてくださることを。」
お
ひ
ふっかつ
とき
ぞん
い
イ エ ス が、「 あ な た の 兄 弟 は よ み が え り ま す。」 と 言 わ れ る と、 マ ル
い
い
わたし
わたし
タは、「終わりの日の復活の時によみがえることは存じております。」と
しん
もの
し
い
い
わたし
しん
ひと
言 っ た。 イ エ ス は 言 わ れ た。「 私 は よ み が え り で す。 い の ち で す。 私 を
し
しゅ
しん
しん
かみ
こ
信 じ る 者 は、 死 ん で も 生 き ま す。 ま た、 生 き て い て 私 を 信 じ る 人 は い つ
い
までも死にません。このことをあなたは信じますか。」
き
かた
わたし
しん
かえ
し まい
よ
マルタは言った。「はい、主よ、信じます。あなたはメシア、神の子、
よ
なが
いえ
世に来たるべき方であると私は信じております。」
なみだ
イエス、涙を流す
い
せんせい
よ
き
こ う 言 っ て か ら、 マ ル タ は 家 に 帰 っ て 姉 妹 の マ リ ヤ を 呼 び、 そ っ と
い
た
あ
い
むら
はい
言った。「先生がいらして、あなたをお呼びです。」これを聞くとマリヤ
で むか
ば しょ
は す ぐ に 立 ち 上 が っ て、 イ エ ス の と こ ろ へ 行 っ た。 イ エ ス は ま だ 村 に 入
いえ
なぐさ
じん
かの じょ
いそ
た
あ
で
ら ず、 マ ル タ が 出 迎 え た さ っ き の 場 所 に お ら れ た。 マ リ ヤ と い っ し ょ に
家 に い て、 慰 め て い た ユ ダ ヤ 人 た ち は、 彼 女 が 急 い で 立 ち 上 が っ て 出 か
148
み
はか
な
い
き
おも
み
あし
い
ふ
け る の を 見 る と、 墓 に 泣 き に 行 く の だ ろ う と 思 い、 つ い て 行 っ た。 マ リ
しゅ
わたし
きょうだい
し
ヤ は イ エ ス の お ら れ る と こ ろ に 来 て、 イ エ ス を 見 る な り 足 も と に ひ れ 伏
な
き
な
し て 言 っ た。「 主 よ、 あ な た が こ こ に お い で で し た ら、 私 の 兄 弟 は 死 な
かのじょ
なかったでしょうに。」
み
こころ
こころ
どうよう
かん
い
かれ
お
イ エ ス は、 彼 女 が 泣 き、 い っ し ょ に 来 た ユ ダ ヤ 人 た ち も 泣 い て い る の
き
らん
かれ
い
を 見 て、 心 に な げ き、 心 の 動 揺 を 感 じ て 言 わ れ た。「 彼 を ど こ に 置 い た
しゅ
のですか。」
なみだ
なが
らん
なん
あい
「主よ、来て、ご覧ください。」と彼らは言った。
じん
イエスは涙を流された。
い
なか
もうじん
め
あ
ひと
し
「ご覧なさい。何とラザロを愛しておられたことか。」
ユダヤ人たちは、
と言った。
い
もの
こころ
し か し、 中 に は、「 盲 人 の 目 を 開 け た こ の 人 さ え も、 ラ ザ ロ が 死 な な
はか
い
い よ う に は で き な か っ た の か。」 と 言 う 者 も い た。 イ エ ス は、 ま た も 心
になげき、それから、墓に行かれた。
149
ほらあな
いりぐち
い
いし
かえ
た
イエス、ラザロを生き返らせる
はか
いし
と
い
墓は洞穴で、入口に石が立てかけてあった。
しゅ
よっ か
くさ
し
くさ
し
イエスが、「石を取りのけなさい。」と言われると、死んだラザロの姉
まい
い
しん
かみ
えい
妹マルタが、
「主よ、四日もたっていますから、もう腐りかけて臭くなっ
こう
み
いし
い
と
てん
あお
い
い
ちち
わたし
ております。」と言った。イエスは、「もしあなたが信じるなら、神の栄
ひとびと
光を見る、と言ったではありませんか。」と言われた。
き
かんしゃ
わたし
ねが
人 々 は 石 を 取 り の け た。 イ エ ス は 天 を 仰 い で 言 わ れ た。「 父 よ。 私 の
ねが
き
わたし
し
もう
願 い を 聞 い て く だ さ っ た こ と を 感 謝 し ま す。 あ な た が 私 の 願 い を、 い つ
まわ
ひとびと
わたし
つか
も 聞 い て く だ さ る こ と を、 私 は 知 っ て お り ま し た。 し か し、 こ う 申 し ま
かれ
しん
おおごえ
で
き
さけ
す の は、 周 り に い る 人 々 の た め で す。 あ な た が 私 を 遣 わ さ れ た こ と を、
い
彼らが信じるためです。」
し
ひと
て あし
ぬの
ま
で
き
かお
かお
こう言われると、大声で、「ラザロよ、出て来なさい。」と叫ばれた。
つつ
ひとびと
い
す る と、 死 ん で い た 人 が、 手 足 を 布 で 巻 か れ た ま ま 出 て 来 た。 顔 は 顔
おお
い
覆いで包まれていた。イエスは人々に、
「ほどいてやり、行かせなさい。
と言われた。
150
*最高会議 (サンヘドリン)当時
ローマ帝国から許されていたユダヤ
国民の自治機関 。議会は、行政と司
法の権限を持ち、祭司、サドカイ派
の者、パリサイ派の者、聖書学者、
長老たちなど七十人の議員から成っ
た。大祭司が議長。
ころ
けいかく
き
イエスを殺す計画
しん
なか
は
み
ひとびと
じん
マ リ ヤ の と こ ろ に 来 て い て、 イ エ ス の な さ っ た こ と を 見 た ユ ダ ヤ 人 の
おお
い
つ
は
もの
ひとびと
*さ い こ う ぎ かい
しょうしゅう
い
多 く は、 イ エ ス を 信 じ た。 し か し 中 に は、 パ リ サ イ 派 の 人 々 の と こ ろ へ
さいしちょう
行って、イエスのなさったことを告げる者もいた。
おとこ
おお
き せき
おこな
われわれ
なに
そ こ で、 祭 司 長 た ち と パ リ サ イ 派 の 人 々 は 最 高 議 会 を 召 集 し て 言 っ
ほう
みな
かれ
しん
じん
た。「あの男は多くの奇跡を行っているのに、我々は何をしているのか。
き
われわれ
しんでん
すぎこし
こくみん
まつ
うば
ま ぢか
おお
ひと びと
み
きよ
こ の ま ま 放 っ て お け ば、 皆 が 彼 を 信 じ る よ う に な る。 そ し て、 ロ ー マ 人
じん
が来て、我々の神殿も国民も奪ってしまうだろう。」
かく ち
まつ
まえ
のぼ
かれ
さが
しん
ユ ダ ヤ 人 の 過 越 の 祭 り が 間 近 で あ っ た。 多 く の 人 々 が 身 を 清 め る た め
でん
けいだい
たが
い
おも
ひと
まつ
く
に、 各 地 か ら 祭 り の 前 に エ ル サ レ ム へ 上 っ た。 彼 ら は イ エ ス を 捜 し、 神
さい し ち ょ う
は
ひとびと
い
殿 の 境 内 で 互 い に 言 っ た。「 ど う 思 う か。 あ の 人 は こ の 祭 り に は 来 る だ
とど
で
だ
とら
ろ う か。」 そ れ は 祭 司 長 た ち と パ リ サ イ 派 の 人 々 が、 イ エ ス の 居 ど こ ろ
まつ
むい か まえ
ふたた
い
が わ か れ ば 届 け 出 よ、 と お ふ れ を 出 し て い た か ら で あ る。 イ エ ス を 捕 え
すぎこし
るためであった。
さ て、 過 越 の 祭 り の 六 日 前 に、 イ エ ス は 再 び ベ タ ニ ヤ に 行 か れ た。 そ
151
ばんさん
し にん
よう い
なか
きゅうじ
こ に は、 イ エ ス が 死 人 の 中 か ら よ み が え ら せ た ラ ザ ロ が い た。 イ エ ス の
しょくじ
せき
つ
ひとびと
なか
おおぜい
ぐんしゅう
た め に そ こ で 晩 餐 が 用 意 さ れ た。 マ ル タ は 給 仕 し、 ラ ザ ロ は イ エ ス と と
き
き
かれ
し
も に 食 事 の 席 に 着 い た 人 々 の 中 に い た。 大 勢 の 群 衆 が イ エ ス が そ こ に お
にん
なか
み
ら れ る こ と を 聞 い て、 や っ て 来 た。 そ れ は イ エ ス だ け で は な く、 彼 が 死
さいしちょう
ころ
そうだん
人の中からよみがえらせたラザロを見るためでもあった。
じん
はな
さ
しん
祭司長たちはラザロをも殺そうと相談した。それは、ラザロのことで、
おお
まつ
むか
き
おおぜい
ぐんしゅう
こ
多くのユダヤ人が離れ去って、イエスを信じるようになったからである。
ひ
エルサレムに迎えられる
き
は
て
かれ
むか
で
さけ
つづ
あ く る 日、 祭 り に 来 て い た 大 勢 の 群 衆 は、 イ エ ス が エ ル サ レ ム に 来 ら
み
な
ばんざい
しゅくふく
こ
み
かた
の
おう
よ げん
しょ
れ る と 聞 い て、 し ゅ ろ の 葉 を 手 に し て 彼 を 迎 え に 出 た。 そ し て、 叫 び 続
けた。
かみ
「ホサナ(万歳)! 祝福があるように。
こ
神の御名によって来られる方、イスラエルの王に。」
イ エ ス は 子 ろ ば を 見 つ け て、 そ れ に 乗 ら れ た。 ゼ カ リ ヤ の 預 言 の 書 に
152
か
むすめ
おそ
書いてあるとおりである。
み
おう
こ
「シオンの娘よ、恐れることはない。
こ
の
見よ、あなたの王が来られる。
で
し
はじ
ろばの子に乗って。」
かえ
か
えいこう
う
ひとびと
弟 子 た ち は 初 め こ の こ と が わ か ら な か っ た が、 イ エ ス が 栄 光 を 受 け、
てん
おも
だ
あか
天 に 帰 ら れ て か ら、 こ れ が イ エ ス に つ い て 書 か れ た こ と で あ っ て、 人 々
おおぜい
ひとびと
はか
よ
し にん
なか
が こ の と お り に イ エ ス に し た と い う こ と を、 思 い 出 し た。 証 し し た の は
ひとびと
ぐんしゅう
で むか
大 勢 の 人 々 で あ っ た。 イ エ ス が ラ ザ ロ を 墓 か ら 呼 ん で 死 人 の 中 か ら よ み
き せき
ひとびと
き
が え ら せ た と き、 い っ し ょ に い た 人 々 で あ る。 群 衆 が イ エ ス を 出 迎 え た
は
ひとびと
たが
い
み
の も、 イ エ ス が こ の よ う な 奇 跡 を な さ っ た と、 こ れ ら の 人 々 か ら 聞 い て
なに
む
だ
よ
かれ
い
い た か ら で あ る。 そ こ で、 パ リ サ イ 派 の 人 々 は 互 い に 言 っ た。「 見 た こ
と か、 何 を し て も 無 駄 だ。 あ の と お り、 世 を あ げ て 彼 に つ い て 行 っ て し
まった。」
153
うら ぎ
りっぽうがくしゃ
ユダ、イエスを裏切る
さい し ち ょ う
おそ
し
ころ
ほうほう
よ
かんが
みんしゅう
なか
祭 司 長 た ち や 律 法 学 者 た ち は、 イ エ ス を 殺 す 方 法 を 考 え て い た。 民 衆
で
を恐れていたからである。
はい
で
い
さい し ち ょ う
しんでん
しゅえいちょう
そのとき、十二弟子のひとりで、イスカリオテと呼ばれるユダの中に、
あく ま
ひ
わた
そうだん
かれ
よろこ
悪 魔 が 入 っ た。 ユ ダ は 出 か け て 行 っ て、 祭 司 長 や 神 殿 の 守 衛 長 た ち と、
かね
わた
き
しょうだく
ぐんしゅう
ど の よ う に し て イ エ ス を 引 き 渡 そ う か と 相 談 し た。 彼 ら は 喜 ん で、 ユ ダ
ひ
わた
よ
き かい
ひとびと
め
まえ
おこな
に 金 を 渡 す こ と に 決 め た。 ユ ダ は 承 諾 し た。 そ し て、 群 衆 の い な い と き
もの
き せき
にイエスを引き渡そうと、良い機会をねらっていた。
しん
おお
イエスを信じない者たち
しん
よ げんしゃ
つぎ
じょう
さ て、 イ エ ス が こ れ ほ ど 多 く の 奇 跡 を 人 々 の 目 の 前 で 行 わ れ た の に、
かれ
じゅ
し
しん
彼 ら は イ エ ス を 信 じ な か っ た。 こ れ は、 預 言 者 イ ザ ヤ の 次 の こ と ば が 成
わたし
就するためであった。
「ああ、だれが私たちの知らせを信じたか。
154
しゅ
かみ
ちから
かれ
め
み
め
さと
み
こころ
さと
主の力を、だれが悟ったろうか。
こころ
神は彼らの目を見えなくし、
かれ
その心をかたくなにされた。
それは、彼らが目で見、心で悟り、
く
あらた
わたし かれ
い改め、そして私が彼らをいやす、
悔
ぎ いん
なか
しん
もの
おお
ということがないためである。」
い
えいこう
み
かれ
かた
こ う イ ザ ヤ が 言 っ た の は、 イ エ ス の 栄 光 を 見 て、 彼 に つ い て 語 っ た か
は
ひとびと
おそ
こくはく
かいどう
ついほう
ら で あ る。 し か し、 議 員 の 中 に も イ エ ス を 信 じ る 者 は 多 か っ た。 た だ パ
かれ
かみ
みと
にんげん
リ サ イ 派 の 人 々 を 恐 れ て そ れ を 告 白 し な か っ た。 会 堂 か ら 追 放 さ れ な い
みと
ほう
だい じ
た め で あ っ た。 彼 ら に と っ て、 神 に 認 め て い た だ く こ と よ り も、 人 間 か
ら認めてもらう方が大事だったのである。
155
エルサレム
ヴィア・ドロロサ(悲しみの道)
イエスが十字架を背負って刑場へ
向かったといわれる道。
「もし人々が私を迫害するなら、あなた
方をも迫害します。」イエス・キリスト
ヨハネによる福音書 15:20
156
*過越の祭り イスラエルの民が
神によってエジプトから救い出
されたことを祝う祭り。エジプ
ト人の長子と家畜の初子を滅ぼし
た神の使いが、イスラエル人の家
を「過ぎ越し」たことに基づいた
名称。この日に子羊をほふって焼
き、種(ふくらし粉)なしのパン
とともに食して祝った。後に、キ
リスト信者はイエス自身をこの犠
牲の小羊と見なし、これは、神が
イエスを信じる者の罪を赦す(過
越す)ことの象徴とした。八三
ページの注釈を参照。
ばんさん
にち
じ ん る い
つ み
* すぎこし
せ
こひつじ
お
第八章 人
類の罪を背負って
さい ご
だい
最 後の晩餐
じょこうさい
すぎこし
しょくじ
よう い
い
ひ
で
し
除 酵 祭 の 第 一 日、 す な わ ち 過 越 の 子 羊 を ほ ふ る 日、 弟 子 た ち が イ エ ス
つぎ
い
で
し
つか
だ
に、「過越の食事の用意は、どこへ行ってしましょうか。」とたずねた。
みやこ
い
みず
はこ
おとこ
で
あ
そこで、イエスは次のように言って、弟子ふたりを使いに出された。
い
ひと
いえ
はい
いえ
しゅじん
あんない
「 都 へ 行 き な さ い。 す る と、 水 が め を 運 ん で い る 男 に 出 会 う の で、 つ
かい
ひろ ま
わたし
じゅんび
で
し
まち
い
い て 行 き な さ い。 そ の 人 は あ る 家 に 入 る の で、 そ の 家 の 主 人 の 案 内 で、
い
すぎこし
しょくじ
じゅんび
二 階 の 広 間 に 私 た ち の た め に 準 備 を し な さ い。」 弟 子 た ち が 町 に 行 っ て
み る と、 イ エ ス が 言 わ れ た と お り だ っ た の で、 そ こ で 過 越 の 食 事 を 準 備
した。
157
ゆう
じ ぶん
よ
さ
で
し
ちち
かみ
い
とき
夕ぐれになって、イエスは十二弟子といっしょにそこへ行かれた。
さと
よ
じ ぶん
あい
かれ
さい ご
あい
き
イ エ ス は、 ご 自 分 が こ の 世 を 去 っ て、 父 な る 神 の も と へ う つ る 時 が 来
せき
つ
しょくじ
い
き
た こ と を 悟 り、 世 の 自 分 の も の た ち を 愛 し て、 彼 ら を 最 後 ま で 愛 し つ く
いちどう
された。
がた
わたし
ひ
わた
わたし
一 同 が 席 に 着 い て 食 事 を し て い る と き、 イ エ ス は 言 わ れ た。「 よ く 聞
いま
しょくじ
がた
で
し
かな
き な さ い。 あ な た 方 の ひ と り が、 私 を 引 き 渡 し ま す。 私 と い っ し ょ に、
わたし
い
だ
今、 食 事 を し て い る あ な た 方 の う ち の だ れ か で あ る。」 弟 子 た ち は 悲 し
い
にん
わたし
おな
うつわ
くなって、
「まさか、私ではないでしょう。」とかわるがわる言い出した。
ひた
もの
ひと
こ
せいしょ
か
さ
イ エ ス は 言 わ れ た。「 十 二 人 の ひ と り で、 私 と い っ し ょ に、 同 じ 器 に パ
い
のろ
ひと
こ
うら ぎ
ひと
ひと
ン を 浸 し て い る 者 で す。 人 の 子 は、 聖 書 に 書 い て あ る と お り に、 去 っ て
う
ほう
行 き ま す。 し か し、 呪 わ れ た の は 人 の 子 を 裏 切 っ た そ の 人 で す。 そ の 人
う
で
い
よる
に と っ て は、 む し ろ 生 ま れ な か っ た 方 が よ か っ た の で す。」 ユ ダ は そ の
パンを受けると、すぐ出て行った。夜であった。
158
みち
しん り
しょくじ
道・真理・いのち
いちどう
さ
で
し
あた
と
しゅ
しょくふく
さかずき
と
いの
かんしゃ
一 同 が 食 事 を し て い る と き、 イ エ ス は パ ン を 取 り、 祝 福 し て 祈 り、 そ
いの
かれ
い
わた
みな
さかずき
しん
の
わたし
しん
わたし
れ を 裂 い て、 弟 子 た ち に 与 え ら れ た。 ま た、 ぶ ど う 酒 の 杯 を 取 り、 感 謝
さわ
かみ
して祈り、彼らに渡された。皆がその杯から飲んだ。
こころ
イエスは言われた。
いえ
す
がた
「 心 を 騒 が し て は な り ま せ ん。 神 を 信 じ、 ま た 私 を 信 じ な さ い。 私 の
ちち
い
わたし
がた
ば しょ
そな
い
父 の 家 に は 住 ま い が た く さ ん あ り ま す。 も し な け れ ば、 あ な た 方 に そ う
い
がた
よう い
もど
き
がた
わたし
言 っ て お い た は ず で す。 私 は、 あ な た 方 の た め に 場 所 を 備 え に 行 く の で
むか
わたし
ところ
がた
わたし
す。 行 っ て あ な た 方 の た め に 用 意 し た ら、 戻 っ て 来 て、 あ な た 方 を 私 の
い
みち
しゅ
がた
し
い
わたし
し
も と に 迎 え ま す。 私 の い る 所 に、 あ な た 方 も い ら れ る よ う に。 ど こ へ 私
い
が行くのか、またその道をあなた方は知っています。」
みち
ト マ ス が 言 っ た。「 主 よ、 あ な た が ど こ へ 行 か れ る の か、 私 た ち は 知
い
わたし
みち
しん り
りません。どうして、その道がわかるでしょう。」
ちち
い
イ エ ス は 言 わ れ た。「 私 が 道 で あ り、 真 理 で あ り、 い の ち な の で す。
わたし
私によらないでは、だれも父のもとに行くことができません。」
159
い
しゅ
てん
ちち
い
わたし
しめ
なが
あいだ
まんぞく
ピ リ ポ が、「 主 よ、 天 の 父 を 私 た ち に お 示 し く だ さ い。 そ れ で 満 足 し
わたし
わたし
み
ひと
てん
ちち
み
ます。」と言うと、イエスは言われた。「これほど長い間いっしょにいる
わたし
てん
ちち
しめ
い
の に、 私 が わ か ら な い の で す か、 ピ リ ポ よ。 私 を 見 た 人 は、 天 の 父 を 見
わたし
ちち
ちち
わたし
しん
たのです。どうして、『私たちに天の父をお示しください。』と言うので
あた
ねが
やくそく
ちち
べつ
たす
ぬし
がた
あた
すか。私が父におり、父が私におられることを、信じないのですか。
せいれい
ちち
聖霊を与える約束
わたし
たす
ぬし
がた
私 は 父 に お 願 い し ま し ょ う。 父 は 別 の 助 け 主 を あ な た 方 に お 与 え に な
かた
しん り
れい
よ
れい
み
し
り ま す、 そ の 助 け 主 が い つ ま で も、 あ な た 方 と い っ し ょ に い る よ う に。
う
い
がた
れい
し
こ の 方 は、 真 理 の 霊 で す。 こ の 世 は、 こ の 霊 を 見 も 知 り も し な い の で、
れい
がた
がた
うち
受 け 入 れ る こ と が で き ま せ ん。 し か し、 あ な た 方 は こ の 霊 を 知 っ て い ま
わたし
がた
みなしご
ふたた
がた
す。 こ の 霊 が あ な た 方 と と も に お り、 こ れ か ら、 あ な た 方 の 内 に い る か
もど
ぬし
く
ちち
わたし
な
つか
せいれい
ら で す。 私 は、 あ な た 方 を 孤 児 に は し て お き ま せ ん。 再 び あ な た 方 の と
たす
ころに戻って来るのです。
こ の 助 け 主、 す な わ ち、 父 が 私 の 名 に よ っ て 遣 わ さ れ る 聖 霊 は、 あ な
160
がた
わたし
おし
あい
わたし
ひと
はな
わたし
まも
おも
だ
わたし
ちち
た方にすべてを教え、私が話したことすべてを思い出させます。
ちち
わたし
ひと
い
す
わたし
あい
ひと
だ れ で も 私 を 愛 す る 人 は、 私 の こ と ば を 守 り ま す。 私 の 父 も そ の 人 を
あい
もの
わたし
まも
がた
はな
いま
愛 し、 父 と 私 は そ の 人 の と こ ろ に 行 き、 と も に 住 み ま す。 私 を 愛 さ な い
わたし
者は、私のことばを守りません。
た
ちから
しん り
せいれい
く
私 に は、 あ な た 方 に 話 す こ と が ま だ た く さ ん あ り ま す が、 今、 あ な た
がた
かた
がた
しん り
みちび
い
方 は そ れ に 耐 え る 力 が あ り ま せ ん。 し か し、 真 理 の 聖 霊 が 来 る と き、 こ
にく
にく
はくがい
わたし
よ
わる
おこな
し てき
の方はあなた方をすべての真理へ導き入れます。
よ
わたし
世の憎しみと迫害
よ
がた
にく
がた
さき
わたし
にく
おぼ
世 は 私 を 憎 ん で い ま す。 私 が 世 の 悪 い 行 い を 指 摘 し て い る か ら で す。
よ
がた
よ
ぞく
よ
がた
み うち
あい
世 が あ な た 方 を 憎 む と き、 あ な た 方 よ り 先 に 私 を 憎 ん で い る こ と を 覚 え
がた
よ
ぞく
わたし
がた
な さ い。 あ な た 方 が 世 に 属 し て い た な ら、 世 は あ な た 方 を 身 内 と し て 愛
よ
えら
だ
わたし
はくがい
よ
がた
がた
にく
はくがい
じ じつ
わたし
し た は ず で す。 し か し、 あ な た 方 は 世 に 属 し て い な い。 私 が あ な た 方 を
ひとびと
世から選び出したのです。それで、世はあなた方を憎むのです。
も し、 人 々 が 私 を 迫 害 す る な ら、 あ な た 方 を も 迫 害 し ま す。 事 実、 私
161
な
かれ
つか
ひとびと
わたし
かた
し
わたし
き
よ
ひとびと
の 名 の ゆ え に、 人 々 は こ れ ら の こ と を す べ て す る よ う に な り ま す。 そ れ
かた
かれ
つみ
いま
かれ
は、 彼 ら が、 私 を 遣 わ さ れ た 方 を 知 ら な い か ら で す。 私 が 来 て 世 の 人 々
じ ぶん
つみ
い
わけ
わたし
にく
もの
わたし
ちち
に 語 ら な か っ た な ら、 彼 ら に 罪 は な か っ た で し ょ う。 し か し、 今 は、 彼
にく
おこな
わたし
かれ
あいだ
おこな
ら は 自 分 の 罪 に つ い て 言 い 訳 が で き ま せ ん。 私 を 憎 む 者 は、 私 の 父 を も
かれ
つみ
いま
わたし
おこな
み
憎 み ま す。 だ れ も 行 っ た こ と の な い わ ざ を、 私 が 彼 ら の 間 で 行 わ な か っ
わたし
わたし
ちち
にく
ひとびと
り ゆう
わたし
にく
た な ら、 彼 ら に 罪 は な か っ た で し ょ う。 し か し、 今 は、 私 の 行 い を 見 た
かれ
りっぽう
か
じょうじゅ
やま
で
うえで、私と私の父を憎んでいます。
『人々は理由もなく、私を憎んだ』と、
彼らの律法に書いてあることばが成就するためです。」
うた
よ げん
さん び
ペテロのつまずきを預 言
で し
で
し
い
がた
みな
イエスと弟子たちは賛美の歌をうたってから、オリーブ山へ出かけた。
せいしょ
ひつじか
か
う
そ の と き、 イ エ ス は 弟 子 た ち に 言 わ れ た。「 あ な た 方 は 皆 つ ま ず き ま
わたし
ぢ
す。聖書にこう書いてあるからです。
ち
『私は羊飼いを打つ。
ひつじ
すると、羊は、散り散りになる。』 162
わたし
がた
さき
い
わたし
しかし、私はよみがえり、あなた方より先にガリラヤへ行きます。」
い
い
い
す る と ペ テ ロ が、「 み ん な が つ ま ず い た と し て も、 私 は つ ま ず き ま せ
きょう
こん や
にわとり
な
まえ
わたし
し
さん ど
い
ん。」 と 言 っ た。 イ エ ス は 言 わ れ た。「 よ く 言 っ て お き ま す が、 あ な た
ちから
こ
し
は、 今 日、 今 夜、 鶏 が 鳴 く 前 に、 私 を 知 ら な い と 三 度 言 い ま す。」 ペ テ
し
けっ
もう
い
ロ は 力 を 込 め て、「 た と え、 ご い っ し ょ に 死 な な け れ ば な ら な く な っ て
は
た
で
し
おな
い
たに
む
い
も、 あ な た の こ と を 知 ら な い と は、 決 し て 申 し ま せ ん。」 と、 な お も 言
し
い張った。他の弟子たちも同じことを言った。
ほ ばく
捕縛
で
えん
はい
うら ぎ
ば しょ
さ て、 イ エ ス は 弟 子 た ち と い っ し ょ に ケ デ ロ ン 谷 の 向 こ う へ 行 き、 そ
し
たびたび で
し
あつ
こ に あ る オ リ ー ブ 園 に 入 ら れ た。 イ エ ス を 裏 切 っ た ユ ダ も、 そ の 場 所 を
いったい
へい し
さいしちょう
は
て した
ひ
つ
知 っ て い た。 イ エ ス が 度 々 弟 子 た ち と こ こ に 集 ま っ て お ら れ た か ら で あ
る。
き
かれ
び
ぶ
き
て
ユ ダ は、 一 隊 の 兵 士 と、 祭 司 長 や パ リ サ イ 派 の 手 下 を 引 き 連 れ て、 そ
こにやって来た。彼らはたいまつやともし火や武器を手にしていた。
163
ひと
こ
ひ
わた
くち
し
い
ちか
つるぎ
ぬ
だいさい し
て した
き
くち
ユ ダ は、 イ エ ス に 口 づ け し よ う と 近 づ い た。 イ エ ス は、「 ユ ダ、 口 づ
で
けで人の子を引き渡すのか。」と言われた。
かたほう
みみ
き
お
い
つるぎ
すると、イエスの弟子のひとりが剣を抜き、大祭司の手下に切りかかっ
おさ
つるぎ
もの
つるぎ
ほろ
わたし
ちち
ねが
て、 片 方 の 耳 を 切 り 落 と し た。 そ こ で、 イ エ ス は 言 わ れ た。「 剣 を も と
ぐんだん いじょう
てん し
いま
おく
おも
に 納 め な さ い。 剣 を と る 者 は、 剣 に 滅 び る。 私 が 父 に お 願 い し て、 十 二
かなら
お
か
せいしょ
軍 団 以 上 の 天 使 を 今 す ぐ 送 っ て い た だ け な い と 思 う の か。 し か し そ の よ
じょうじゅ
ひと
みみ
う な こ と を す れ ば、 必 ず 起 こ る と 書 い て あ る 聖 書 の こ と ば が、 ど う し て
ぐんしゅう
い
ごうとう
む
成就されますか。」そして、その人にさわって、耳をいやされた。
ぼう
も
わたし
き
わたし
まいにち
しんでん
けいだい
そのとき、イエスは群衆に言われた。
「まるで強盗にでも向かうように、
つるぎ
すわ
おし
がた
わたし
とら
剣 や 棒 を 持 っ て 私 を つ か ま え に 来 た の で す か。 私 は 毎 日、 神 殿 の 境 内 に
お
よ げんしゃ
か
じょうじゅ
座 っ て 教 え て い た の に、 あ な た 方 は 私 を 捕 え ま せ ん で し た。 こ れ ら す べ
で
し
みな
み
す
に
さ
てが起こったのは、預言者たちの書いたことが、成就するためなのです。」
ここで、弟子たちは皆、イエスを見捨てて逃げ去った。
164
*最高議会 ユダヤ教の律法に関
する最高法廷として、死刑を含む
判決を下す権限を持っていたが、
最終的にはローマ総督の裁断を必
要とした。一五一ページの注釈を
参照。
* さいこう ぎ かい
しんもん
とら
最 高 議会の審問
ひとびと
りっぽうがくしゃ
ちょうろう
だいさい し
あつ
つ
とお
い
人 々 は イ エ ス を 捕 え る と、 大 祭 司 カ ヤ パ の と こ ろ へ 連 れ て 行 っ た。 そ
したが
だいさい し
や しき
い
こと
な
ゆ
み
なかにわ
こ に は、 律 法 学 者、 長 老 た ち が 集 ま っ て い た。 ペ テ ロ は 遠 く か ら イ エ ス
はい
やくにん
さいこ う ぎ かい
すわ
ぜんいん
し けい
うった
に つ き 従 い、 大 祭 司 の 屋 敷 ま で 行 き、 事 の 成 り 行 き を 見 よ う と、 中 庭 に
さいしちょう
入って役人たちといっしょに座っていた。
さが
つづ
おお
ぎしょうにん
で
しょうこ
え
祭 司 長 た ち と 最 高 議 会 の 全 員 は、 死 刑 に し よ う と し て イ エ ス を 訴 え る
こうじつ
もの
すす
で
い
ひと
かみ
しんでん
う
たお
口 実 を 探 し 続 け た。 多 く の 偽 証 人 が 出 た が、 証 拠 は 得 ら れ な か っ た。 つ
みっ か
た
なお
た
あ
い
い
なに
こた
い に ふ た り の 者 が 進 み 出 て 言 っ た。「 こ の 人 は、『 神 の 神 殿 を 打 ち 倒 し、
だいさい し
三日のうちに建て直すことができる』と言いました。」
ひと
ふ
り
しょうげん
だま
つづ
そこで、大祭司は立ち上がり、イエスに言った。「何も答えないのか、
だいさい し
い
い
かみ
わたし
めい
かみ
こ の 人 た ち が お ま え に 不 利 な 証 言 を し て い る の に。」 イ エ ス は 黙 り 続 け
ちか
われわれ
こた
かみ
こ
い
さら
わたし
て お ら れ た。 大 祭 司 は 言 っ た。「 生 け る 神 に よ っ て 私 は 命 ず る。 神 に
い
誓って我々に答えよ。おまえは神の子、メシヤなのか。」
イ エ ス は 言 わ れ た。「 は い、 あ な た の 言 う と お り で す。 更 に、 私 は
い
言っておきます。
165
ひと
こ
がた
ぜんのう
かみ
あなた方はやがて、
てん
くも
の
みぎ
く
すわ
人の子が全能の神の右に座り、
いじょう
しょうこ
いま
み
がた
ぼうとく
き
そして天の雲に乗って来るのを、見ます。」
だいさい し
じ ぶん
ころも
ひ
さ
さけ
かみ
ぼうとく
そ の と き、 大 祭 司 は 自 分 の 衣 を 引 き 裂 い て 叫 ん だ。「 神 を 冒 瀆 し た!
おも
こた
し けい
かお
つば
は
これ以上なんの証拠がいろう。今、あなた方は、冒瀆のことばを聞いた。
ひとびと
どう思うか。」
なぐ
もの
ぼう
い
い
人 々 は 答 え た。「 死 刑 に す べ き だ!」 そ し て、 イ エ ス の 顔 に 唾 を 吐 き
う
じょちゅう
き
い
かけ、殴り、ある者は棒でたたきながら言った。「メシヤよ、言ってみよ。
すわ
おまえを打ったのはだれだ。」
ひ てい
なかにわ
ペテロの否 定
そと
みな
ペテロは外で中庭に座っていた。そこへひとりの女中が来て言った。
まえ
う
け
なに
い
わたし
「 あ な た も ガ リ ラ ヤ の イ エ ス と い っ し ょ に い ま し た ね。」 ペ テ ロ は 皆 の
い
前 で そ れ を 打 ち 消 し て、
「 何 を 言 っ て い る の か、 私 に は わ か ら な い。」
と言った。
166
*ピラト 紀元後二十六~三十六
年にユダヤ駐在のローマ総督で
あった。死刑宣告の権限は彼にし
かなかった。
ひとびと
いりぐち
ほう
ひと
い
じょちゅう
かれ
め
と
い
ペ テ ロ が 入 口 の 方 に 行 く と、 も う ひ と り の 女 中 が 彼 に 目 を 留 め、 そ こ
ふたた
う
け
ちか
い
わたし
ひと
にいた人々に、「この人はナザレのイエスといっしょでした。」と言った。
し
た
ひとびと
ちか よ
き
い
そ こ で、 ペ テ ロ は 再 び そ れ を 打 ち 消 し、 誓 っ て 言 っ た。「 私 は そ の 人 を
知らない。」
たし
なか ま
し ば ら く し て、 そ こ に 立 っ て い た 人 々 が 近 寄 っ て 来 て、 ペ テ ロ に 言 っ
ひと
し
い
のろ
ちか
はじ
た。「 確 か に、 あ な た も あ の 仲 間 だ。 こ と ば の な ま り で そ れ が わ か る。」
にわとり
な
ふ
む
み
そこで、ペテロは、
「そんな人は知らない。」と言い、呪って誓い始めた。
きょう
にわとり
な
まえ
ど わたし
し
い
すると、鶏が鳴いた。イエスは振り向き、ペテロをじっと見つめられた。
い
しゅ
おも
だ
そと
で
い
な
ペ テ ロ は、「 今 日、 鶏 が 鳴 く 前 に、 あ な た は 三 度 私 を 知 ら な い と 言 う。」
しんもん
さいしちょう
たみ
ちょうろう
いちどう
し けい
と 言 わ れ た 主 の こ と ば を 思 い 出 し た。 そ し て 外 に 出 て 行 き、 泣 き く ず れ
た。
*
あ
ピラトの審問
よ
きょうぎ
しば
つ
だ
そうとく
ひ
夜 が 明 け る と、 祭 司 長 た ち、 民 の 長 老 た ち 一 同 は、 イ エ ス を 死 刑 に す
る た め 協 議 し た。 そ し て、 イ エ ス を 縛 っ て 連 れ 出 し、 総 督 ピ ラ ト に 引 き
167
わた
渡した。
かれ
かれ
で
き
い
ひと
わる
ひと
たい
なん
うった
ピ ラ ト が 彼 ら の と こ ろ へ 出 て 来 て 言 っ た。「 こ の 人 に 対 し て 何 の 訴 え
ひと
ひ
わた
ひ
と
こた
じ ぶん
りっぽう
したが
を す る の か。」 す る と 彼 ら は、「 こ の 人 が 悪 い こ と を し て い な か っ た ら、
がた
この人をあなたに引き渡しはしません。」と答えた。
い
じん
わたし
ひと
し けい
さだ
ピ ラ ト が、「 あ な た 方 が 引 き 取 っ て、 自 分 た ち の 律 法 に 従 っ て さ ば き
けんげん
い
はい
よ
だ
なさい。」と言うと、ユダヤ人たちは、「私たちには、人を死刑に定める
かんてい
権限がありません。」と言った。
じん
おう
い
い
じ ぶん
そ こ で、 ピ ラ ト は 官 邸 に 入 り、 イ エ ス を 呼 び 出 し て、「 あ な た は ユ ダ
かんが
ひと
わたし
つ
ヤ人の王なのか。」と言った。イエスは、「あなたがそう言うのは、自分
こた
い
かえ
わたし
じん
の 考 え か ら で す か。 そ れ と も、 ほ か の 人 が 私 の こ と を そ う 告 げ た の で す
くに
ひと
さいしちょう
わたし
ひ
「私がユダヤ人だというのか。
か。」と答えられた。ピラトは言い返した。
なに
わたし
くに
よ
お ま え の 国 の 人 と 祭 司 長 た ち が、 お ま え を 私 に 引 き 渡 し た の だ。 い っ た
わたし
くに
よ
わたし
ぶ
か
わたし
い何をしたのか。」するとイエスは、「私の国は、この世のものではあり
じん
わた
たたか
じっさい
わたし
くに
よ
ま せ ん。 も し、 私 の 国 が こ の 世 の も の で あ っ た ら、 私 の 部 下 は 私 を ユ ダ
こた
ヤ 人 に 渡 さ な い よ う に、 戦 っ た で し ょ う。 実 際、 私 の 国 は こ の 世 の も の
ではないのです。」と答えられた。そこでピラトが、「それなら、やはり
168
おう
わたし
い
う
しん り
あか
い
わたし
おう
よ
き
王なのか。」と言うと、イエスは、「あなたの言うとおり、私は王です。
しん り
ひと
みな
わたし
こえ
き
こた
私 は こ の た め に 生 ま れ、 ま た 真 理 に つ い て 証 し を す る た め に、 世 に 来 た
い
しん り
なに
い
いち ど
のです。真理につく人は皆、私の声を聞きます。」と答えられた。
まえ
で
い
わたし
ひと
なに
つみ
み
い
ピラトは言った。「真理とは何か。」こう言ってからもう一度、ユダヤ
じん
かれ
おおごえ
だ
さわ
むち
う
へい し
いばら
人たちの前に出て行き、「私はこの人に何の罪も見いだせない。」と言っ
つ
た。すると、彼らは大声でののしり騒いだ。
かんむり あ
あたま
の
むらさき
ころも
き
そ こ で、 ピ ラ ト は イ エ ス を 連 れ 出 し て、 鞭 で 打 た せ た。 兵 士 た ち は 茨
き
じん
おう
ばんざい
い
ひら て
う
で 冠 を 編 ん で イ エ ス の 頭 に 載 せ、 紫 の 衣 を 着 せ た。 そ し て そ ば に や っ て
で
き
い
み
ひと
がた
まえ
ひ
だ
わたし
来ては、「ユダヤ人の王よ、万歳。」と言って平手で打った。ピラトはま
かれ
なん
つみ
み
た 出 て 来 て、 言 っ た。「 見 よ、 こ の 人 を あ な た 方 の 前 に 引 き 出 す。 私 は
せき
つ
かれ
つま
でんごん
彼に何の罪も見いだせないことをわかってもらいたい。」
どりょく
さいばん
ピラトの努力
ただ
ひと
かんけい
わたし
さく や ゆめ
ひと
ピラトが裁判の席に着いているときに、彼の妻から伝言があった。「あ
の 正 し い 人 に 関 係 し な い で く だ さ い。 私 は 昨 夜 夢 で、 そ の 人 の こ と で、
169
ずいぶんくる
いばら かんむり
随分苦しみました。」
み
ひと
むらさき
さいしちょう
ころも
き
で
やくにん
こ
み
イ エ ス は 茨 の 冠 を か ぶ り、 紫 の 衣 を 着 て 出 て 来 ら れ た。 ピ ラ ト は、
い
じゅうじ か
じゅうじ か
さけ
言っ た 。「見 よ 、こ の 人 だ 。」祭司 長た ち や役 人 た ち は 、イ エ スを 見 る と 、
がた
ひ
と
じゅうじ か
わたし
おとこ
なん
つみ
みと
「 十 字 架 に つ け ろ 。 十 字 架 に つ け ろ ! 」 と 叫 ん だ 。 ピ ラ ト は 、「 あ な た
い
じん
こた
わたし
かみ
りっぽう
方 が 引 き 取 っ て、 十 字 架 に つ け る が よ い。 私 は こ の 男 に 何 の 罪 も 認 め
りっぽう
ひと
し ざい
あ
じ ぶん
かみ
こ
な い 。」 と 言 っ た 。 ユ ダ ヤ 人 た ち は 答 え た 。「 私 た ち に は 神 の 律 法 が あ
き
おそ
そ う と く かん
り ま す。 律 法 に よ れ ば、 こ の 人 は 死 罪 に 当 た り ま す。 自 分 を 神 の 子 と
し た の で す か ら 。」
はい
き
い
ピ ラ ト は こ の こ と ば を 聞 く と、 ま す ま す 恐 れ た。 そ し て ま た 総 督 官
てい
こた
わたし
なに
い
邸に入ってイエスに、「おまえはどこから来たのか」と言った。しかし、
しゃくほう
けんげん
じゅうじ か
けんげん
わたし
イ エ ス は 答 え よ う と さ れ な か っ た。 そ こ で、 ピ ラ ト は、「 私 に 何 も 言 わ
し
い
こた
てん
あた
な い の か。 お ま え を 釈 放 す る 権 限 も、 十 字 架 に つ け る 権 限 も、 こ の 私 に
わたし
たい
なん
けんげん
あることを知らないのか。」と言った。イエスは答えられた。「天から与
わたし
ひ
わた
もの
つみ
おも
え ら れ て い な け れ ば、 あ な た は 私 に 対 し て 何 の 権 限 も あ り ま せ ん。 そ れ
き
しゃくほう
どりょく
ゆ え、 私 を あ な た に 引 き 渡 し た 者 の 罪 は、 あ な た の よ り も っ と 重 い。」
そ れ を 聞 い て、 ピ ラ ト は イ エ ス を 釈 放 し よ う と 努 力 し た。 そ し て イ エ ス
170
ふたた
そと
つ
す ぎ こ し さい
だ
じゅんび
しきいし
ひ
よ
しょうご
ば しょ
さいばん
せき
つ
じん
を再び外に連れ出し、「敷石」と呼ばれる場所で、裁判の席に着いた。
し けい
死刑
い
み
がた
おう
かれ
はげ
さけ
そ れ は 過 越 祭 の 準 備 の 日 で、 正 午 ご ろ で あ っ た。 ピ ラ ト が ユ ダ ヤ 人 た
ころ
ころ
じゅうじ か
がた
おう
わたし
じゅうじ
ちに言った。「見よ、あなた方の王だ。」すると、彼らは激しく叫んだ。
か
い
さいしちょう
こた
わたし
こうてい
「殺せ。殺せ!十字架につけろ!」ピラトが、「あなた方の王を私が十字
おう
ひとびと
ひ
架につけるのか。」と言うと、祭司長たちは答えた。「私たちには、皇帝
わた
いじょう い
( シ ー ザ ー) の ほ か に 王 は あ り ま せ ん!」 ピ ラ ト は、 人 々 が イ エ ス を 引
む
だ
こ
そうどう
ぐんしゅう
まえ
て
み
あら
い
ひと
き 渡 し た の は、 ね た み の た め だ と わ か っ て い た が、 そ れ 以 上 言 っ て も
みず
無駄なばかりか、かえって騒動になりそうなのを見た。
し
わたし
なん
せきにん
せきにん
みんしゅう
そ れ で、 水 を も っ て 来 さ せ、 群 衆 の 前 で 手 を 洗 っ て 言 っ た。「 こ の 人
こた
し
せきにん
われわれ
し そん
の死について、私には何の責任もない。おまえたちの責任だ。」民衆はいっ
かれ
ひ
わた
せいに答えた。「その死の責任は、我々と子孫にかかれ!」
そこで、ピラトは、イエスを彼らに引き渡した。
171
じゅうじ か
十 字架
かれ
ち
ひ
と
ご
じ ぶん
じゅうじ か
ところ
で
せ
い
お
彼らはイエスを引き取った。イエスは、ご自分で十字架を背負い、
「さ
かれ
じゅうじ か
ごう
れ こ う べ の 地 」、 ヘ ブ ラ イ 語 で「 ゴ ル ゴ タ 」 と い う 所 へ 出 て 行 か れ た。
とう
じゅうじ か
みぎ
ひだり
彼 ら は、 そ こ で イ エ ス を 十 字 架 に つ け た。 そ の と き、 イ エ ス と と も に 強
ざいじょうが
か
じゅうじ か
うえ
かか
盗がふたり十字架につけられた。ひとりは右にひとりは左に。
じん
おう
か
じゅうじ か
ピ ラ ト は 罪 状 書 き を 書 き、 十 字 架 の 上 に 掲 げ さ せ た。 そ れ に は、「 ユ
ば しょ
みやこ
ちか
ざいじょうが
よ
じん
おお
ダ ヤ 人 の 王、 ナ ザ レ の イ エ ス。」 と 書 い て あ っ た。 イ エ ス が 十 字 架 に つ
ご
ご
ご
か
け ら れ た 場 所 は 都 に 近 か っ た の で、 そ の 罪 状 書 き を 読 ん だ ユ ダ ヤ 人 は 多
じん
さいしちょう
い
じん
おう
か っ た。 そ れ は、 ヘ ブ ラ イ 語、 ラ テ ン 語、 ギ リ シ ア 語 で 書 い て あ っ た。
ひと
じん
おう
じしょう
か
「『ユダヤ人の王』でなくて、『こ
ユダヤ人の祭司長たちがピラトに言った。
わたし
か
か
こた
の人はユダヤ人の王と自称した』と書いてください。」しかし、ピラトは、
い
ちち
かれ
ゆる
「私が書いたことは、書いたままにしておけ。」と答えた。
じ ぶん
なに
ひ
じ ぶん
ふく
わ
あ
みんしゅう
あたま
ふ
そ の と き、 イ エ ス は 言 わ れ た。「 父 よ、 彼 ら を お 赦 し く だ さ い。 彼 ら
ひとびと
は自分が何をしているのか自分でわからないのです。」
人 々 は く じ を 引 い て、 イ エ ス の 服 を 分 け 合 っ た。 民 衆 は 頭 を 振 り な
172
じゅうじ か
お
じ ぶん
い
すく
しんでん
う
たお
みっ か
た
もの
がらイエスをののしって言った。「神殿を打ち倒して、三日で建てる者、
さいしちょう
りっぽうがくしゃ
十字架から降りて自分を救ってみろ。」
わら
い
ひと
すく
じ ぶん
すく
祭 司 長 た ち も 律 法 学 者 た ち と い っ し ょ に な っ て、 か わ る が わ る イ エ
おう
いま じ ゅ う じ か
お
み
しん
スを笑って言った。「あれは人を救ったのに、自分を救えない。メシア、
ちか よ
す
しゅ
つ
い
イ ス ラ エ ル の 王、 今 十 字 架 か ら 降 り て も ら お う か。 そ れ を 見 た ら 信 じ よ
へい し
う。」
じん
おう
じ ぶん
すく
兵士たちも近寄り、酸いぶどう酒を突きつけながらあざけって言った。
はんざいにん
「ユダヤ人の王なら、自分を救え。」
はんざいにん
ひとりの犯罪人
じゅうじ か
ほう
かれ
おな
けい
う
かみ
「お
十字架にかけられていた犯罪人のひとりが、イエスをけなした。
じ ぶん
われわれ
すく
ま え は メ シ ヤ で は な い か。 自 分 と 我 々 を 救 っ て み ろ。」 す る と、 も う ひ
おそ
われわれ
じ ぶん
むく
う
と り の 方 が 彼 を た し な め た。「 お ま え は 同 じ 刑 を 受 け な が ら、 ま だ 神 を
あた
まえ
かた
なん
恐 れ な い の か。 我 々 は、 自 分 の し た こ と の 報 い を 受 け て い る の だ か ら、
当り前だ。しかし、この方は何のまちがいもなさらなかった。」そして、
173
い
おう
い
わたし
やくそく
おも
だ
「 イ エ ス さ ま、 あ な た が 王 と し て お い で に な る と き に は、 私 を 思 い 出 し
きょう
わたし
くら
てんごく
じ
つづ
じ
おお
てください。」と言った。するとイエスは言われた。「約束する。あなた
ぜん ち
は今日、私といっしょに天国にいます。」
し
死
しょうご
さけ
正 午 か ら 全 地 は 暗 く な っ て、 三 時 ま で 続 い た。 三 時 ご ろ、 イ エ ス は 大
ごえ
かみ
かみ
わたし
み
す
い
み
声 で、「 エ リ、 エ リ、 レ マ、 サ バ ク タ ニ。」 と 叫 ば れ た。 こ れ は、「 わ が
た
ひとびと
き
かれ
よ
神、わが神、なぜ私をお見捨てになったのですか。」という意味である。
い
ひと
こと
かんせい
さけ
いき
ひ
と
そ こ に 立 っ て い た 人 々 の う ち、 こ れ を 聞 い て、「 彼 は エ リ ヤ を 呼 ん で い
おおごえ
る。」と言った人もいた。
しんでん
た
まく
うえ
した
さ
ち
ふる
いわいわ
そ の と き、 イ エ ス は 大 声 で「 事 は 完 成 さ れ た!」 と 叫 び、 息 を 引 き 取
さ
ひゃくにんたいちょう
み
は
ひと
られた。すると、神殿の垂れ幕が上から下まで二つに裂け、地が震え、岩々
じ しん
み
ひじょう
おそ
ほんとう
ひと
かみ
み
こ
が 裂 け た。 百 人 隊 長 や い っ し ょ に イ エ ス の 見 張 り を し て い た 人 た ち は、
い
おお
ふ じん
とお
み まも
地震やこれらのことを見て、非常に恐れ、「本当に、この人は神の御子だっ
た。」 と 言 っ た。 ま た、 そ こ で は、 多 く の 婦 人 た ち が 遠 く か ら 見 守 っ て
174
なか
したが
き
せ
わ
はは
ひとびと
い た。 ガ リ ラ ヤ か ら イ エ ス に 従 っ て 来 て 世 話 を し て い た 人 々 で あ る。 そ
こ
はは
しゅっしん
ゆうりょく
ぎ いん
き
ゆう き
の 中 に は、 マ グ ダ ラ の マ リ ヤ、 ヤ コ ブ と ヨ セ フ の 母 マ リ ヤ、 そ し て ゼ ベ
ダイの子たちの母がいた。
まいそう
埋葬
ゆう
い
い たい
わた
夕 ぐ れ に な っ た。 ア リ マ タ ヤ 出 身 で 有 力 な 議 員 ヨ セ フ が 来 て、 勇 気 を
だ
ねが
で
かれ
かみ
くに
ま
のぞ
ひと
出 し て ピ ラ ト の と こ ろ へ 行 っ た。 そ し て、 イ エ ス の 遺 体 を 渡 し て く れ る
し
ふ
し
ぎ
おも
ひゃくにんたいちょう よ
ようにと願い出た。彼も神の国を待ち望んでいた人であった。ピラトは、
ほんとう
し
たず
ひゃくにんたいちょう
イ エ ス が も う 死 ん だ の か と 不 思 議 に 思 い、 百 人 隊 長 を 呼 ん で、 イ エ ス が
たし
きょか
あ
ま ぬの
か
じゅうじ
本 当 に 死 ん で し ま っ た か ど う か を 尋 ね た。 そ し て、 百 人 隊 長 か ら そ う と
か
お
ぬの
ま
いわ
ほ
ぬ
はか
よこ
はか
確 か め て か ら ヨ セ フ に 許 可 し た。 ヨ セ フ は 亜 麻 布 を 買 い、 イ エ ス を 十 字
いりぐち
いし
ころ
はは
架 か ら 降 ろ し て そ の 布 で 巻 き、 岩 を 掘 り 抜 い て あ っ た 墓 に 横 た え、 墓 の
い たい
おさ
ば しょ
み とど
入口には石を転がしておいた。マグダラのマリヤとヨセフの母マリヤは、
イエスの遺体が納められた場所を見届けた。
175
ばんぺい
番兵
ひ
い
さいしちょう
かっ か
は
ひとびと
い
あつ
わたし
みっ
あくる日、祭司長たちとパリサイ派の人々は、ピラトのところに集まっ
か
のち
い
わたし
おも
だ
て、こう言った。「閣下、あのうそつきがまだ生きていたとき、『私は三
みっ か
め
はか
まも
めいれい
で
日 の 後 に よ み が え る 』 と 言 っ て い た の を、 私 た ち は 思 い 出 し ま し た。 で
し
き
し たい
ぬす
みんしゅう
し にん
なか
す か ら、 三 日 目 ま で 墓 を 守 る よ う に 命 令 し て く だ さ い。 さ も な い と、 弟
い
ひとびと
まえ
まど
子たちが来て死体を盗み、民衆に、
『イエスは死人の中からよみがえった』
ばんぺい
だ
い
み
は
な ど と 言 い ふ ら す で し ょ う。 そ う な る と、 人 々 は 前 よ り も ひ ど く 惑 わ さ
い
れることになります。」
い
はか
いし
ふういん
ばんぺい
はか
まも
ピ ラ ト は 言 っ た。「 番 兵 を 出 し て や る か ら、 行 っ て で き る だ け 見 張 ら
かれ
せるがよい。」
そこで、彼らは行って墓の石に封印をし、番兵が墓を守った。
176
岩にくり貫かれた墓
彼(メシア)は進んで自分の魂を注ぎ出し、死んで、罪びとのひとりに数えられた。
177
イザヤ書 53:12
山上の垂訓の丘(ガリラヤ湖畔)
「・・・・しかし、私は三日の後によみがえります。」イエス・キリスト
マルコによる福音書 10:34
178
あさ
しゅう
はじ
第九章 よ
みがえり
ふっかつ
お
復活の朝
あんそくにち
お
はか
かみ
ひ
あ
てん し
がた
てん
くだ
ちか よ
はか
いり
安 息 日 が 終 わ っ て、 週 の 初 め の 日 の 明 け 方、 マ グ ダ ラ の マ リ ヤ と も う
だい じ しん
ひとりのマリヤが、イエスの墓をおとずれた。
いし
ころ
うえ
すわ
かお
いなずま
かがや
ころも
す る と、 大 地 震 が 起 こ っ た。 神 の 天 使 が 天 か ら 降 っ て 近 寄 り、 墓 の 入
ぐち
ゆき
しろ
おそ
ばんぺい
ふる
あ
し にん
口 か ら 石 を 転 が し て、 そ の 上 に 座 っ た。 そ の 顔 は 稲 妻 の よ う に 輝 き、 衣
ふ じん
い
おそ
じゅうじ か
は 雪 の よ う に 白 か っ た。 そ の 恐 ろ し さ で、 番 兵 た ち は 震 え 上 が り、 死 人
てん し
のようになった。
さが
かた
天 使 は 婦 人 た ち に 言 っ た。「 恐 れ る こ と は あ り ま せ ん。 十 字 架 に つ け
ら れ た イ エ ス を 捜 し て い る こ と は わ か っ て い ま す。 あ の 方 は、 も う こ こ
179
き
い たい
お
まえ
い
み
はや
い
にはおられません。前から言われていたとおり、よみがえられたのです。
で
し
つ
し にん
なか
来 て、 遺 体 の 置 い て あ っ た と こ ろ を 見 て ご ら ん な さ い。 そ し て 早 く 行 っ
がた
さき
い
め
て弟子たちにこう告げなさい。
『イエスは死人の中からよみがえられた。
がた
おそ
つ
ち
き
かお
ふ
てん し
い
たし
そして、あなた方より先にガリラヤに行かれ、そこでお目にかかれる。』
ふ じん
これをあなた方に告げに来ました。」
かた
婦 人 た ち が 恐 れ て 地 に 顔 を 伏 せ る と、 天 使 は ま た 言 っ た。「 確 か に あ
はな
おも
だ
ひと
こ
かなら
の方は、ここにはおられません。よみがえられたのです。まだガリラヤ
つみ
て
わた
じゅうじ か
みっ か
め
ふっかつ
に お ら れ た こ ろ、 お 話 し に な っ た こ と を 思 い 出 し な さ い。『 人 の 子 は 必
い
ふ じん
ず 、罪 び と ど も の 手 に 渡 さ れ 、十 字 架 に つ け ら れ 、三 日 目 に 復 活 し な け
おも
だ
よろこ
はか
はし
さ
で
し
れ ば な ら な い 』 と 言 わ れ た で は あ り ま せ ん か。」 婦 人 た ち は イ エ ス の こ
しゅつげん
とばを思い出した。
ふ じん
おそ
婦人たちへの 出 現
ふ じん
し
いそ
い
い
て
た
婦 人 た ち は 恐 れ な が ら も、 あ ふ れ る 喜 び で 墓 を 走 り 去 り、 弟 子 た ち
に知らせるために急いで行った。すると、イエスが行く手に立っていて、
180
おが
い
い
ふ じん
おそ
ちか よ
まえ
い
ふ
わたし
「 お は よ う 」 と 言 わ れ た。 婦 人 た ち は 近 寄 っ て、 イ エ ス の 前 に ひ れ 伏 し
きょうだい
い
い
わたし
あ
て 拝 ん だ。 イ エ ス は 言 わ れ た。「 恐 れ る こ と は あ り ま せ ん。 行 っ て、 私
はか
かえ
にん
し
の兄弟たちに、ガリラヤへ行くように言いなさい。そこで私に会えるの
ふ じん
です。」
かれ
はなし
ごと
おも
ふ じん
婦 人 た ち は 墓 か ら 帰 っ て、 十 一 人 と ほ か の み ん な に す べ て を 知 ら せ
しん
た
あ
はか
はし
ゆ
み
た。 と こ ろ が、 彼 ら に は こ の 話 が た わ 言 の よ う に 思 わ れ た の で、 婦 人 た
なか
こ
あ
ま ぬの
なに
み
ち を 信 じ な か っ た。 し か し、 ペ テ ロ は 立 ち 上 が っ て 墓 へ 走 り 行 き、 身 を
で
かえ
き ごと
おどろ
はか
で
いえ
かえ
き ごと
さいしちょう
つ
か が め て 中 を の ぞ き 込 ん だ。 そ こ に は 亜 麻 布 の ほ か に、 何 も 見 あ た ら な
さいしちょう
みやこ
かったので、ペテロはこの出来事に驚いて家に帰った。
ばんぺい
ばんぺい
番兵と祭司長たち
すうにん
さいしちょう
ちょうろう
あつ
きょうぎ
へい し
た
さ て、 数 人 の 番 兵 は 都 に 帰 り、 墓 で の 出 来 事 を す べ て 祭 司 長 た ち に 告
がく
かね
あた
い
で
し
よ なか
き
われわれ
ねむ
あいだ
げ た。 そ こ で、 祭 司 長 た ち は 長 老 た ち と 集 ま っ て 協 議 し、 兵 士 た ち に 多
し たい
ぬす
い
い
そうとく
みみ
はい
額の金を与えて言った。「『弟子たちが夜中に来て、我々の眠っている間
に 死 体 を 盗 ん で 行 っ た 』 と 言 い な さ い。 も し こ の こ と が 総 督 の 耳 に 入 っ
181
*約十二キロメートル。
へい し
われわれ
う
そうとく
かね
せっとく
と
おし
がた
めいわく
はなし
きょう
たら、我々が総督を説得して、あなた方には迷惑をかけないようにする。」
じん
あいだ
つた
し
*
兵 士 た ち は 金 を 受 け 取 っ て、 教 え ら れ た と お り に し た。 こ の 話 は、 今 日
で
までユダヤ人の間に伝わっている。
みち
エマオへの道
ひ
むら
む
ある
かれ
で
き
ち ょ う ど こ の 日、 ふ た り の 弟 子 が、 エ ル サ レ ム か ら 六 十 ス タ デ ィ オ ン
はな
ごと
はな
あ
み ち み ち はな
ろん
じ しん
離 れ た エ マ オ と い う 村 へ 向 か っ て 歩 い て い た。 彼 ら は こ の す べ て の 出 来
ちか
き
かれ
つ
だ
ある
はじ
事 を 話 し 合 っ て い た。 道 々 話 し た り 論 じ た り し て い る と、 イ エ ス ご 自 身
め
なん
が 近 づ い て 来 て、 彼 ら と 連 れ 立 っ て 歩 き 始 め ら れ た。 し か し、 ふ た り の
ある
かた
あ
い
目 は さ え ぎ ら れ て い て、 イ エ ス だ と は わ か ら な か っ た。 イ エ ス は、「 何
かな
かお
た
ど
ひと
こた
の こ と で す か、 歩 き な が ら 語 り 合 っ て い る の は。」 と 言 わ れ た。 ふ た り
たいざい
ちか
お
は 悲 し い 顔 を し て 立 ち 止 ま り、 そ の ひ と り の ク レ オ パ と い う 人 が 答 え
ぞん
い
た。「 エ ル サ レ ム に ご 滞 在 な の に、 あ な た だ け が 近 ご ろ そ こ で 起 こ っ た
こた
かた
かみ
ことをご存じないのですか。」イエスが、「どんなことですか」と言われ
る と、 ふ た り は 答 え た。「 ナ ザ レ の イ エ ス の こ と で す。 こ の 方 は、 神 と
182
みんしゅう
さいしちょう
まえ
おこな
ぎ いん
かた
ちから
ひ
わた
よ げんしゃ
し けい
さだ
じゅうじ か
民 衆 の 前 で、 行 い に も こ と ば に も 力 の あ る 預 言 者 で し た。 そ れ な の に、
わたし
かた
すく
祭 司 長 た ち や 議 員 た ち は、 こ の 方 を 引 き 渡 し て、 死 刑 に 定 め、 十 字 架 に
のぞ
きょう
みっ か
め
なか
つ け て し ま い ま し た。 私 た ち が、 こ の 方 こ そ イ ス ラ エ ル を 救 っ て く だ さ
るのだ、と望みをかけていましたのに。
ふ じん
わたし
おどろ
かのじょ
はや
はか
い
そ れ ば か り か、 そ の こ と が あ っ て か ら 今 日 で 三 日 目 に な り ま す が、 仲
ま
み
あ
もど
き
間 の 婦 人 た ち が 私 た ち を 驚 か せ ま し た。 彼 女 た ち は、 け さ 早 く 墓 へ 行 き
てん し
あらわ
い
つ
い
ましたが、イエスのからだが見当たらないので戻って来ました。しかも、
なか ま
なんにん
はか
い
み
ふ じん
い
天使たちが現れて、
『イエスは生きておられる』と告げたと言うのです。
み
あ
もの
わる
こころ
にぶ
もの
そ れ で、 仲 間 の 何 人 か が 墓 へ 行 っ て 見 ま す と、 婦 人 た ち が 言 っ た と お り
い
で、イエスは見当たりませんでした。」
よ げんしゃ
と
しん
す る と、 イ エ ス は 言 わ れ た。「 あ あ、 物 わ か り が 悪 く、 心 の 鈍 い 者 た
くる
う
えいこう
はい
ち よ、 預 言 者 た ち が 説 い た こ と す べ て を 信 じ ら れ な い と は。 メ シ ア は そ
よ げんしゃ
はじ
せいしょぜんたい
なか
の よ う な 苦 し み を 受 け て、 栄 光 に 入 る は ず で は な か っ た の で す か。」 そ
じ ぶん
ざ
むら
ちか
か
こと
せつめい
さき
い
よう す
して、イエスは、モーセやすべての預言者から始めて、聖書全体の中で、
め
ご自分について書かれている事がらを説明された。
目 指 す 村 に 近 づ い た が、 イ エ ス は な お も 先 へ 行 こ う と さ れ る 様 子 だ っ
183
ゆうがた
くら
わたし
い
とま
ねっしん
たの
た。 そ れ で、 ふ た り が、「 私 た ち の と こ ろ に お 泊 り く だ さ い。 そ ろ そ ろ
かれ
いえ
はい
かれ
しょくたく
つ
夕 方 に な り、 じ き に 暗 く な り ま す か ら 」 と 言 っ て、 熱 心 に 頼 ん だ の で、
と
かんしゃ
いの
さ
わた
しゅんかん
イ エ ス は 彼 ら の 家 に 入 ら れ た。 彼 ら と 食 卓 に 着 か れ た と き、 イ エ ス は パ
め
ひら
どう じ
すがた
ン を 取 り、 感 謝 の 祈 り を し、 パ ン を 裂 い て お 渡 し に な っ た。 そ の 瞬 間、
き
み
みち
はな
せいしょ
せつめい
ふ た り の 目 が 開 か れ、 イ エ ス だ と わ か っ た。 そ れ と 同 時 に、 イ エ ス の 姿
しゅ
は消えるように見えなくなった。
わたし
こころ
も
かた
あ
ふ た り は、「 主 が 道 で 話 し て お ら れ た と き も、 ま た 聖 書 を 説 明 し て く
しゅっぱつ
かえ
で
し
だ さ っ た と き も、 私 た ち の 心 は 燃 え た で は な い か。」 と 語 り 合 っ た。 そ
なか ま
あつ
ほんとう
しゅ
あらわ
し て、 す ぐ さ ま 出 発 し て、 エ ル サ レ ム に 帰 っ た。 す る と、 十 一 弟 子 と そ
はな
みち
お
の 仲 間 が 集 ま っ て い て、「 本 当 に 主 は よ み が え っ て、 シ モ ン に 現 れ た。」
さ
せつめい
と つ ぜ ん かれ
ま
なか
た
と話しているところであった。そこで、ふたりも、道で起こったことや、
しゅつげん
じ しん
パンをお裂きになってイエスとわかったことを説明した。
で し
弟子たちへの 出 現
はな
こ う 話 し て い る と こ ろ へ、 イ エ ス ご 自 身 が 突 然 彼 ら の 真 ん 中 に 立 ち、
184
*モーセの律法、預言者の書、詩
篇はどれも旧約聖書の一部。
み
がた
へいあん
おも
い
かれ
い
おどろ
おそ
ゆうれい
「あなた方に平安があるように。」と言われた。彼らは驚き恐れて、幽霊
こころ
うたが
お
わたし
て
あし
み
を 見 て い る の だ と 思 っ た。 そ こ で、 イ エ ス は 言 わ れ た。「 な ぜ、 お じ け
わたし
み
ゆうれい
にく
ほね
る の か。 ど う し て 心 に 疑 い を 起 こ す の か。 私 の 手 や 足 を 見 な さ い。 ま さ
わたし
い
て
あし
み
し く 私 で す。 さ わ っ て、 よ く 見 な さ い。 幽 霊 に は 肉 も 骨 も な い が、 ご ら
かれ
しん
ふ
し
ぎ
ん の と お り、 私 に は そ れ が あ る の で す。」 こ う 言 っ て、 手 と 足 を お 見 せ
なに
た
もの
い
や
に な っ た。 彼 ら が う れ し さ の あ ま り ま だ 信 じ ら れ ず、 不 思 議 が っ て い る
さかな
ひと き
さ
あ
う
と
みな
まえ
た
と、イエスは、「ここに何か食べ物がありますか。」と言われた。焼いた
い
わたし
がた
はな
魚を一切れ差し上げると、イエスは受け取って、皆の前で食べられた。
*
りっぽう
よ げんしゃ
しょ
し へん
か
わたし
イ エ ス は 言 わ れ た。「 私 が ま だ あ な た 方 と い っ し ょ に い た と き に 話 し
こと
かなら
じょうじゅ
た こ と ば は こ う で す。 モ ー セ の 律 法 と 預 言 者 の 書 と 詩 篇 に 書 い て あ る 私
で
い
かれ
こころ
め
ひら
い
についての事がらは、必ずすべて成就するということでした。」
ぜん せ かい
さと
全 世界へ出て行きなさい
せいしょ
しる
く なん
う
みっ か
め
し にん
なか
聖 書 を 悟 ら せ る た め に、 イ エ ス は 彼 ら の 心 の 目 を 開 い て、 言 わ れ た。
つぎ
「次のように記されています。『メシアは苦難を受け、三日目に死人の中
185
し
な
つみ
ゆる
くに
え
ひとびと
く
の
あらた
つた
か ら よ み が え る。 そ し て、 そ の 名 に よ っ て 罪 の 赦 し を 得 さ せ る 悔 い 改 め
がた
しょうにん
の 知 ら せ が、 エ ル サ レ ム か ら は じ ま っ て、 す べ て の 国 の 人 々 に 宣 べ 伝 え
わたし
てん
ち
けん い
あた
られる。』と。あなた方はこれらのことの証人です。
い
くに
ひとびと
わたし
で
し
かれ
ちち
こ
私 に は 天 と 地 の す べ て の 権 威 が 与 え ら れ て い ま す。 そ れ ゆ え、 あ な た
がた
せいれい
な
せんれい
さず
がた
めい
まも
方 は 行 っ て、 す べ て の 国 の 人 々 を 私 の 弟 子 に し な さ い。 彼 ら に 父 と 子 と
おし
わたし
よ
お
がた
聖 霊 の 名 に よ っ て 洗 礼 を 授 け、 ま た、 あ な た 方 に 命 じ た こ と を す べ て 守
ど
い
がた
へいあん
る よ う に 教 え な さ い。 私 は 世 の 終 わ り ま で、 い つ も、 あ な た 方 と と も に
ちち
わたし
つか
わたし
がた
つか
いますから。」イエスはもう一度言われた。「あなた方に平安があるよう
せいれい
う
み
しん
い
ひと
かれ
いき
ふ
こ
に。 父 が 私 を 遣 わ さ れ た よ う に、 私 も あ な た 方 を 遣 わ し ま す。」 そ し て
し
よ
「聖霊を受けなさい。」と言って、彼らに息を吹きかけられた。
さいわ
で
幸 いなのは見ずに信じる人
かれ
で
し
わたし
しゅ
十 二 弟 子 の ひ と り で デ ド モ と 呼 ば れ る ト マ ス は、 イ エ ス が 来 ら れ た と
め
い
い
かた
て
くぎあと
み
き、 彼 ら と い っ し ょ に い な か っ た。 ほ か の 弟 子 た ち が、「 私 た ち は 主 に
お目にかかった」と言うと、トマスは言った。「あの方の手に釘跡を見、
186
て
ゆび
い
くぎあと
い
わたし
けっ
しん
ばら
きずあと
こ の 指 を 釘 跡 に 入 れ、 ま た、 そ の や り で さ さ れ た わ き 腹 の 傷 跡 に、 こ の
よう か
のち
で
し
いえ
なか
手を入れてみなければ、私は決して信じません。」
かぎ
とつぜん
き
ま
なか
た
い
八日の後、弟子たちはまた家の中にいた。トマスもいっしょであった。
と
がた
へいあん
い
戸 に は み な 鍵 が か け て あ る の に、 突 然、 イ エ ス が 来 て 真 ん 中 に 立 ち、 言
ゆび
あ
わたし
て
み
て
だ
わたし
われた。
「あなた方に平安があるように。」そして、トマスに言われた。
「あ
ばら
い
ふ しん
かみ
しん
もの
こた
い
な た の 指 を こ こ に 当 て、 私 の 手 を 見 な さ い。 あ な た の 手 を 出 し、 私 の わ
しゅ
き腹に入れなさい。不信はやめて、信じる者になりなさい。」
わたし
み
しん
さいわ
み
しん
ト マ ス は、「 わ が 主 よ。 わ が 神 よ!」 と 答 え た。 イ エ ス は ト マ ス に 言
ひと
う
のち
じ ぶん
い
わ れ た。「 私 を 見 た か ら 信 じ る の で す か。 幸 い な の は 見 な い の に 信 じ る
人です。」
しょうてん
昇天
く なん
しょうこ
しんじゃ
しめ
にち
たびたびあらわ
かれ
イ エ ス は 苦 難 を 受 け た 後、 こ の よ う に、 ご 自 分 が 生 き て い る こ と を、
かず おお
かみ
くに
かた
かれ
めい
ぜん せ かい
で
数 多 く の 証 拠 を も っ て 信 者 た ち に 示 し、 四 十 日 に わ た っ て 度 々 現 れ、 彼
ら に 神 の 国 の こ と を 語 ら れ た。 ま た、 彼 ら に 命 じ ら れ た。「 全 世 界 に 出
187
う
い
もの
すく
つく
しん
ほろ
ふくいん
もの
の
つた
せんこく
う
しん
かれ
つ
い
て
あ
しゅくふく
せんれい
て 行 き、 す べ て の 造 ら れ た も の に 福 音 を 宣 べ 伝 え な さ い。 信 じ て 洗 礼 を
のち
受ける者は救われるが、信じない者は滅びの宣告を受ける。」
み
たか
あ
くも
むか
かれ
め
み
イエスは、その後、彼らを連れて行き、手を上げて祝福された。そして、
かれ
い
かれ
てん
み
しろ
彼 ら の 見 て い る う ち に 高 く 上 げ ら れ、 雲 に 迎 え ら れ て 彼 ら の 目 か ら 見 え
のぼ
なくなった。
ころも
き
かた
とつぜん
た
い
イ エ ス が 昇 っ て 行 か れ る と き、 彼 ら は 天 を 見 つ め て い た。 す る と、 白
ひと
そら
み
あ
た
がた
い衣を着たふたりの方が、突然、そばに立っていた。そして、言った。「ガ
てん
あ
てん
い
おな
よう す
リ ラ ヤ の 人 た ち、 な ぜ 空 を 見 上 げ て 立 っ て い る の で す か。 あ な た 方 の と
しんじゃ
やま
もど
こ ろ か ら 天 に 上 げ ら れ た イ エ ス は、 天 に 行 か れ た 同 じ 様 子 で、 ま た お い
き
やま
しんじゃ
で
い
ちか
いた
かみ
くに
ふくいん
の
つた
で に な り ま す。」 信 者 た ち は、 そ の オ リ ー ブ 山 か ら エ ル サ レ ム に 戻 っ て
のち
来た。この山はエルサレムに近いところにある。
しゅ
かれ
はたら
かれ
でんどう
ともな
き せき
そ の 後、 信 者 た ち は 出 て 行 っ て、 至 る と こ ろ で 神 の 国 の 福 音 を 宣 べ 伝
たし
しめ
かず おお
き せき
えた。主は彼らとともに働き、彼らの伝道のことばに伴う奇跡によって、
しる
そのことばが確かなものであることを示された。
しょもつ
こ の 書 物 に は 記 さ れ て い な い が、 ほ か に も 数 多 く の 奇 跡 を、 イ エ ス は
188
ギルボア山にて
で
し
がた
まえ
かみ
こ
しん
とく
か
弟 子 た ち の 前 で な さ っ た。 し か し、 こ れ ら の こ と を 特 に 書 い た の は、 あ
しん
な
う
ヨハネによる福音書 20:29
189
な た 方 が イ エ ス は 神 の 子、 メ シ ア で あ る と 信 じ る た め で あ り、 ま た そ う
信じてイエスの名によっていのちを受けるためである。
「幸いなのは、見ないのに信じる人です。」
イエスキリスト
イチジクの実 (ピリポカイザリヤ)
いのちの木への権利を与えられ、また都への門を通る特権を得るために、
自分の衣を洗い清める人は幸いである。
ヨハネの黙示録 22:14
190
*幻 二二ページの注釈を参照。
と き
せ ま
第十章 時
は迫っている
しょうてん
しんじゃ
はげ
はくがい
う
せい き
もく し ろく
こうはん
「ヨハネの黙示録」より
き げん
で
し
イ エ ス・ キ リ ス ト が 昇 天 さ れ た あ と、 紀 元 一 世 紀 の 後 半、 キ リ
あか
かみ
の
つた
ス ト 信 者 は 激 し い 迫 害 を 受 け て い ま し た 。 イ エ ス の 弟 子 ヨ ハ ネ も、
ちちゅうかい
しま
なが
かみ
イ エ ス を キ リ ス ト で あ る と 証 し し、 神 の こ と ば を 宣 べ 伝 え た た め、
ぜ ん せ かい
お
*まぼろし
なか
けい じ
いま
地中海のパトモスという島に流されました。神はヨハネに、これから
しんじゃ
くる
め
あ
かなら
むく
全 世 界に 起こることを 幻 の中で 啓示して くださっ たのです 。今は、
とき
く
かな
くる
あたら
せ かい
く
はげ
キリスト 信者であるために苦しい目に会わされていても 、必 ず 報わ
よろこ
あた
かみ
み
れる時が来る 、悲しみも苦しみもない新しい世界が来ると 、励まし
もく し ろく
て 喜 び を 与 え て く だ さ っ て い る の で す 。 こ の 神 の 御 こ と ば が 「ヨ ハ
ネの黙示録」です。
191
とき
せま
時は迫っている
しんじゃ
しめ
もく し
もく し
ま
あた
お
イ エ ス・ キ リ ス ト の 黙 示。 こ の 黙 示 は、 間 も な く 起 こ る べ き こ と を、
かみ
てん し
つか
で
し
しめ
神がその信者たちに示すように、キリストにお与えになったものである。
じ ぶん
み
かみ
あか
キ リ ス ト は 天 使 を 遣 わ し て、 弟 子 ヨ ハ ネ に お 示 し に な っ た。 ヨ ハ ネ は、
さいわ
よ げん
ひとびと
よ
き
ひと
き
自分に見せられた神のことばとイエス・キリストの証しをしたのである。
か
まも
ひと
とき
せま
幸 い な の は、 こ の 預 言 の こ と ば を 人 々 に 読 み 聞 か せ る 人 と、 こ れ を 聞
かみ
あい
つみ
おうこく
つか
じ ぶん
かいほう
あた
ち
かた
いて、ここに書いてあることを守る人たちである。時が迫っている。
わたし
イエス・キリストは、
わたし
私たちを愛し、ご自分の血によって
わたし
私たちを罪から解放してくださった。
ちち
私たちに王国を与え、
父なる神に仕えるものとしてくださった方、
えいこう
ちから
とこしえ
とこしえ
イエス・キリストに、
み
かた
くも
こ
栄光と力が永遠から永遠にありますように。アーメン。
見よ、この方が雲とともに来られる。
192
とく
かれ
ひと
つ
め
さ
かれ
あお
もの
み
すべての人の目が彼を仰ぎ見る、
ち
たみ
かれ
なげ
特に、彼を突き刺した者たちは。
かな
地のすべての民は、彼のために嘆き悲しむ。
い
わたし
しゅつげん
はじ
きょうだい
お
がた
み
そのとおりである。アーメン。
かみ
しゅ
いま
い ぜん
のち
こ
かた
ぜんのうしゃ
神 で あ る 主、 今 お ら れ、 以 前 か ら お ら れ、 後 に 来 ら れ る 方、 全 能 者 が
こ
がた
こう言われる。「私は初めであり、終わりである。」
ひと
人の子の 出 現
わたし
ま
のぞ
く なん
た
しの
わたし
かみ
私 ヨ ハ ネ は、 あ な た 方 の 兄 弟 で あ り、 あ な た 方 と と も に、 イ エ ス の 御
くに
あか
しま
にちよう び
国 を 待 ち 望 み、 イ エ ス の 苦 難 を 耐 え 忍 ん で い る も の で あ る。 私 は、 神 の
わたし
せいれい
み
うし
ほう
おお
こえ
こ と ば と イ エ ス の 証 し の ゆ え に、 パ ト モ ス と い う 島 に い た。 あ る 日 曜 日
き
ひび
こえ
い
の こ と で あ る。 私 が 聖 霊 に 満 た さ れ て い た と き、 後 ろ の 方 で 大 き な 声 を
み
まきもの
かた
か
こえ
ぬし
み
ふ
む
み
聞 い た。 ま る で ラ ッ パ の 響 き の よ う で、 そ の 声 は こ う 言 っ た。「 あ な た
わたし
の見ることを巻物に書きなさい。」
そ こ で、 私 は 語 り か け る 声 の 主 を 見 よ う と し て 振 り 向 い た。 そ こ に 見
193
あし
きん
なが
き
しょくだい
ころも
むね
おび
しょくだい
きん
あいだ
しめ
ひと
こ
み
かた
え た の は、 七 つ の 金 の 燭 台 で あ っ た。 燭 台 の 間 に は、 人 の 子 の よ う な 方
あたま
かみ
け
しろ
じゅんぱく
ようもう
ゆき
め
も
さか
ほのお
が、 足 ま で た れ た 長 い 衣 を 着 て、 胸 に 金 の 帯 を 締 め て い る の が 見 え た。
あし
かがや
ろ
ねっ
こえ
おおみず
その頭と髪の毛の白さは純白の羊毛や雪のよう、目は燃え盛る炎のよう、
みぎ て
ほし
も
くち
するど
もろ は
つるぎ
で
かお
足 の 輝 き は 炉 で 熱 せ ら れ た し ん ち ゅ う の よ う、 声 は 大 水 の と ど ろ き の よ
つよ
て
かがや
み
たいよう
わたし
し にん
あし
たお
う で あ っ た。 右 手 に 七 つ の 星 を 持 ち、 口 か ら は 鋭 い 両 刃 の 剣 が 出 て、 顔
かた
は強く照り輝く太陽のようであった。
かた
みぎ て
わたし
うえ
お
い
おそ
わたし
さいしょ
そ の 方 を 見 た と き 、私 は 、死 人 の よ う に そ の 足 も と に 倒 れ た 。す る と 、
さい ご
いま
い
もの
し
いま
えいえん
い
その方は右手を私の上に置いて言われた。
「 恐 れ る な 。私 は 最 初 で あ り 、
し
じ ごく
かぎ
み
いま
お
最 後 で あ り 、今 、生 き て い る 者 で あ る 。か つ て 死 ん だ が 、今 、永 遠 に 生 き 、
か
しる
もの
き
しょうり
え
もの
死 と 地 獄 の 鍵 を に ぎ る。 あ な た が 見 た こ と、 今 あ る こ と、 こ れ か ら 起
え
せいれい
い
こることを書き記しなさい。
しょうり
もの
勝利を得る者には
みみ
パラダイス
き
み
た
耳のある者は、聖霊が言うことをよく聞きなさい。勝利を得る者には、
かみ
神の天国にあるいのちの木の実を食べさせよう。
194
みみ
だい
え
もの
し
もの
せいれい
しろ
ほろ
ころも
き
き
わたし
しょうり
ひと
な
え
けっ
もの
耳 の あ る 者 は、 聖 霊 が い う こ と を よ く 聞 き な さ い。 勝 利 を 得 る 者 は、
けっ
しょうり
決して第二の死によって滅ぼされることはない。
しょ
け
な
わたし
ちち
てん し
まえ
みと
勝 利 を 得 る 者 は、 白 い 衣 を 着 せ ら れ る。 私 は、 そ の 人 の 名 を 決 し て い
い
あらわ
たし
かた
ちゅうじつ
まこと
しょうにん
かみ
そうぞう
みなもと
かた
つぎ
のちの書から消すことはなく、その名を私の父と天使たちの前で認めて、
しんじつ
言い表す。
い
じ ぶん
ゆた
み
た
なに
真 実 で 確 か な 方、 忠 実 で 真 の 証 人、 神 の 創 造 の 源 で あ る 方 が、 次 の よ
ひと
た
い
じ ぶん
みじ
あわ
まず
う に 言 わ れ る。『 あ な た は、 自 分 は 豊 か に な っ た、 満 ち 足 り て い る、 何
もうもく
はだか
わたし
あい
もの
わたし
一 つ 足 り な い も の は な い、 と 言 っ て い る が、 自 分 が 惨 め で、 哀 れ で、 貧
のこ
しか
こ
ねっしん
く
あらた
し く て、 盲 目 で、 裸 で あ る こ と が わ か っ て い な い。 私 の 愛 す る 者 を、 私
み
わたし
と ぐち
た
こころ
とびら
は ひ と り 残 ら ず 叱 っ た り、 懲 ら し め た り す る。 そ れ ゆ え、 熱 心 に 悔 い 改
わたし
こえ
き
とびら
あ
わたし
ひと
うち
はい
わたし
かれ
かれ
めなさい。見よ、私は戸口に立って、心の扉をたたいている。だれでも、
わたし
しょくじ
え
もの
わたし
じ ぶん
ざ
わたし
しょうり
私 の 声 を 聞 い て 扉 を 開 け る な ら、 私 は そ の 人 の 内 に 入 り、 私 は 彼 と、 彼
しょうり
は私と、食事をともにする。』
わたし
ちち
み
ざ
みみ
もの
せいれい
勝 利 を 得 る 者 に は、 私 は 自 分 の 座 に と も に す わ ら せ よ う。 私 も 勝 利 を
え
い
き
得、 私 の 父 と と も に そ の 御 座 に す わ っ た よ う に。 耳 の あ る 者 は、 聖 霊 が
言うことをよく聞くがよい。」
195
てん
わたし
おう ざ
のち
天の王座
よ
み
み
さいしょ
てん
こえ
い
ひら
もん
のぼ
き
そ の 後、 私 は 見 た。 見 よ、 天 に 開 か れ た 門 が あ っ た。 ラ ッ パ の よ う に
わたし
かなら
お
しめ
わたし
私 に 呼 び か け た あ の 最 初 の 声 が 言 っ た。「 こ こ へ 上 っ て 来 な さ い。 こ れ
せいれい
み
おう ざ
おう ざ
うえ
かた
み
か ら 必 ず 起 こ る こ と を、 あ な た に 示 し て あ げ よ う。」 そ の と き 私 は、 た
てん
ちまち聖霊に満たされた。
かた
み
へきぎょく
あか
おう ざ
まわ
すると、天に王座があって、その王座の上にすわっている方が見えた。
かがや
にじ
おう ざ
まわ
そ の 方 は、 見 た と こ ろ 碧 玉 や 赤 し ま め の う の よ う で あ り、 王 座 の 周 り に
ざ
ざ
にん
ちょうろう
かれ
輝 く 虹 が エ メ ラ ル ド の よ う で あ っ た。 ま た、 そ の 王 座 の 周 り に 二 十 四 の
しろ
ころも
き
あたま
きん
かんむり
おう ざ
いなずま
座 が あ っ て、 そ れ ら の 座 に は 二 十 四 人 の 長 老 た ち が す わ っ て い た。 彼 ら
かみなり
お
び
おう ざ
まえ
も
は 白 い 衣 を 着 て、 頭 に 金 の 冠 を か ぶ っ て い た。 王 座 か ら は、 稲 妻、 さ ま
かみ
れい
おう ざ
まえ
すいしょう
に
うみ
ざ ま な と ど ろ き と、 雷 が 起 こ り、 七 つ の と も し 火 が 王 座 の 前 で 燃 え て い
にん
ちょうろう
おう ざ
つ
かた
まえ
た。 こ れ は 神 の 七 つ の 霊 で あ る。 王 座 の 前 は、 水 晶 に 似 た ガ ラ ス の 海 の
ふ
とこしえ
とこしえ
い
かた
おが
じ ぶん
かんむり
おう ざ
よ う で あ っ た。 二 十 四 人 の 長 老 た ち は、 王 座 に 着 い て い る 方 の 前 に ひ れ
まえ
な
だ
い
伏 し て、 永 遠 か ら 永 遠 に 生 き て お ら れ る 方 を 拝 み、 自 分 た ち の 冠 を 王 座
の前に投げ出して言った。
196
しゅ
ほま
わたし
ちから
かみ
う
「主である私たちの神よ。
えいこう
あなたが、
ばんぶつ
そうぞう
そんざい
お
かた
たいよう
栄光と誉れと力とを受けるにふさわしい方です。
みこころ
あなたが、万物を創造し、
つく
だい じ しん
すべては、あなたの御心によって存在し、
ちじょう
また造られたのです。」
てんぺん ち い
天 変 地異
み
つき
ぜんめん ち
てん
ほし
ちじょう
お
け
も ふく
また、見ていると、地上に大地震が起こり、太陽は毛の喪服のように
くろ
き
おおかぜ
ゆ
あお
み
ふ
お
黒くなり、月は全面血のようになり、天の星は地上に落ちた。それはちょ
てん
まきもの
ま
き
さ
やま
しま
ば しょ
う ど 、い ち じ く の 木 が 大 風 に 揺 ら れ て 、青 い 実 を 振 り 落 と す よ う で あ っ
うつ
ちじょう
し はいしゃ
けんりょくしゃ
しょうぐん
かね も
ゆうりょくしゃ
た 。 天 は 巻 物 が 巻 か れ る よ う に 消 え 去 り 、す べ て の 山 と 島 は 、そ の 場 所
ど れい
じ ゆうじん
ほらあな
やま
いわかげ
かく
やま
いわ
む
い
から移された。地上の支配者たち、権力者、将軍、金持ち、有力者、あ
わたし
うえ
お
おう ざ
かた
かお
こひつじ
いか
ら ゆ る 奴 隷 と 自 由 人 が 、洞 穴 や 山 の 岩 陰 に 隠 れ 、山 や 岩 に 向 か っ て 言 っ
た。
「私たちの上に落ちて、王座におられる方の顔から、小羊の怒りから、
197
わたし
た
き
み
だいぐんしゅう
かみ
み
こひつじ
おお
いか
かぞ
ひ
き
だいぐんしゅう
私 た ち を か く ま っ て く れ。 神 と 小 羊 の 大 い な る 怒 り の 日 が 来 た。 だ れ が
ころも
それに耐えられよう。」
しろ
わたし
白い衣を着た 大 群 衆
のち
かれ
こくみん
しゅぞく
みんぞく
げん ご
ちが
たみ
なか
あつ
こ の 後、 私 が 見 て い る と、 見 よ、 だ れ に も 数 え き れ な い ほ ど の 大 群 衆
ひとびと
おう ざ
まえ
こひつじ
まえ
た
かれ
しろ
ころも
が い た。 彼 ら は あ ら ゆ る 国 民、 種 族、 民 族、 言 語 の 違 う 民 の 中 か ら 集 め
き
えだ
おう ざ
て
おう ざ
おおごえ
わたし
ちょうろう
さけ
かみ
まわ
い
た
こひつじ
おう ざ
まえ
ら れ た 人 々 で、 王 座 の 前 に、 小 羊 の 前 に 立 っ て い た。 彼 ら は 白 い 衣 を
すく
着、しゅろの枝を手にして大声で叫んで言った。
てん し
「救いは、王座にいます私たちの神にあり、小羊にある。」
ふ
かみ
おが
い
えいこう
ち
え
す べ て の 天 使 は 王 座 と 長 老 た ち の 周 り に 立 っ て い た。 そ し て 王 座 の 前
さん び
にひれ伏し、神を拝んで言った。
かんしゃ
ほま
せいりょく
けんりょく
「アーメン。賛美と、栄光と、知恵と、
とこしえ
とこしえ
わたし
かみ
感謝と、誉れと、勢力と、権力が、
永遠から永遠に私たちの神にありますように。
アーメン。」
198
ちょうろう
わたし
き
い
しろ
わたし
ころも
き
ひと
ぞん
長 老 の ひ と り が 私 に た ず ね て 言 っ た。「 こ の 白 い 衣 を 着 た 人 た ち は だ
わたし
い
こた
ひと
おお
く なん
とお
き
れですか。どこから来たのですか。」そこで、私は、「あなたこそ、ご存
ちょうろう
じではありませんか。」と答えた。
ころも
こひつじ
ち
あら
しろ
かれ
かみ
おう
す る と、 長 老 が 私 に 言 っ た。「 こ の 人 た ち は 大 き な 苦 難 を 通 っ て 来 た
ひとびと
ざ
まえ
ひる
よる
かみ
つか
おう ざ
かた
かれ
人 々 で、 そ の 衣 を 小 羊 の 血 で 洗 っ て 白 く し た。 そ れ ゆ え、 彼 ら は 神 の 王
す
かれ
う
かわ
あつ
座 の 前 に い て、 昼 も 夜 も 神 に 仕 え て い る。 王 座 に お ら れ る 方 が、 彼 ら と
たいよう
えんねつ
かれ
おそ
おう ざ
と も に 住 ま わ れ る。 彼 ら は、 も は や 飢 え る こ と も、 渇 く こ と も な く、 暑
ちゅうおう
こひつじ
かれ
ぼくしゃ
みず
いずみ
みちび
かみ
い 太 陽 も、 ど の よ う な 炎 熱 も、 彼 ら を 襲 う こ と は な い。 そ れ は、 王 座 の
かれ
め
なみだ
み まえ
た
にん
てん し
み
かれ
中 央 に お ら れ る 小 羊 が 彼 ら の 牧 者 と な り、 い の ち の 水 の 泉 へ と 導 き、 神
かみ
が彼らの目からすべての涙をぬぐわれるからである。」
てん し
わたし
天 使のラッパ
てん し
あた
ふ
かれ
な
ふ
よう い
ち
ま
ひょう
ひ
そ れ か ら、 私 は 神 の 御 前 に 立 っ て い る 七 人 の 天 使 を 見 た。 彼 ら に は 七
だい
つのラッパが与えられた。彼らはラッパを吹く用意をした。
第 一 の 天 使 が ラ ッ パ を 吹 き 鳴 ら し た。 す る と、 血 の 混 じ っ た 雹 と 火 と
199
あらわ
ぶん
や
ちじょう
てん し
な
あおくさ
ふ
なら
や
ちじょう
ひ
ぶん
も
おお
や
やま
き
が 現 れ て、 地 上 に 投 げ つ け ら れ た。 そ し て、 地 上 の 三 分 の 一 が 焼 け、 木
だい
の三分の一が焼け、青草はすべて焼けてしまった。
うみ
な
こ
うみ
ぶん
ち
第 二 の 天 使 が ラ ッ パ を 吹 き 鳴 ら し た。 す る と、 火 で 燃 え る 大 き な 山 の
うみ
い
もの
てん し
ぶん
し
ふ
な
ふね
ぶん
こわ
も
よ う な も の が、 海 へ 投 げ 込 ま れ た。 そ し て、 海 の 三 分 の 一 が 血 に な り、
だい
海の生き物の三分の一は死に、すべての船の三分の一が壊された。
おお
ほし
そら
お
き
かわ
ぶん
第 三 の 天 使 が ラ ッ パ を 吹 き 鳴 ら し た。 す る と、 た い ま つ の よ う に 燃 え
すいげん
お
ほし
な
にが
みず
ぶん
にが
て い る 大 き な 星 が、 空 か ら 落 ち て 来 て、 す べ て の 川 の 三 分 の 一 と、 そ の
てん し
みず
ふ
おお
な
ひと
し
たいよう
ぶん
つき
水 源 に 落 ち た。 そ の 星 の 名 は「 苦 よ も ぎ 」 と い わ れ、 水 の 三 分 の 一 が 苦
だい
くなった。その水のために多くの人が死んだ。
ぶん
ほし
ぶん
う
ぶん
くら
第 四 の 天 使 が ラ ッ パ を 吹 き 鳴 ら し た。 す る と、 太 陽 の 三 分 の 一、 月 の
ひる
ひかり
み
ぶん
わ
うしな
わし
よる
おな
なかぞら
と
おおごえ
い
三 分 の 一、 す べ て の 星 の 三 分 の 一 が 打 た れ、 こ れ ら の 三 分 の 一 が 暗 く な
わたし
り、昼はその光の三分の一を失い、夜も同じようになった。
き
わざわ
く
わざわ
く
ち
す
ひとびと
わざわ
く
私 が ま た 見 て い る と、 一 羽 の 鷲 が 中 空 を 飛 び な が ら、 大 声 で こ う 言 う
にん
てん し
ふ
な
の を 聞 い た。「 災 い が 来 る。 災 い が 来 る。 地 に 住 む 人 々 に 災 い が 来 る。
あと三人の天使がラッパを吹き鳴らそうとしている。」
200
だい
てん し
第 五のラッパ
だい
ほし
み
ふ
ほし
な
そこ し
あな
ひら
わたし
かぎ
てん
あた
ちじょう
お
第 五 の 天 使 が ラ ッ パ を 吹 き 鳴 ら し た。 す る と、 私 は 天 か ら 地 上 へ 落 ち
ほし
そこ し
あな
ひら
おお
ろ
で
けむり
あな
た
のぼ
た 一 つ の 星 を 見 た。 こ の 星 に、 底 知 れ ぬ 穴 を 開 く 鍵 が 与 え ら れ た。 そ の
たいよう
そら
あな
けむり
くら
けむり
なか
星 が 底 知 れ ぬ 穴 を 開 く と、 大 き な 炉 か ら 出 る よ う な 煙 が、 穴 か ら 立 ち 上
む
ちじょう
と
だ
き
ち
も
り、 太 陽 も 空 も こ の 穴 の 煙 に よ っ て 暗 く な っ た。 そ の 煙 の 中 か ら、 い な
けんりょく
あた
かれ
ち
くさ
き
しょくぶつ
がい
くわ
ご の 群 れ が 地 上 へ 飛 び 出 し て 来 た。 そ の い な ご に は、 地 の さ そ り の 持 つ
ひたい
かみ
いん
も
ひと
がい
くわ
い
よ う な 権 力 が 与 え ら れ た。 彼 ら は、 地 の 草 や 木、 ど ん な 植 物 に も 害 を 加
わた
ひと
ころ
ゆる
げつ
あいだ
くる
え な い で、 た だ、 額 に 神 の 印 を 持 っ て い な い 人 に 害 を 加 え る よ う に 言 い
ゆる
あた
く つう
さ
く
渡 さ れ た。 し か し、 人 を 殺 す こ と は 許 さ れ ず、 五 か 月 の 間 苦 し め る こ と
つう
き かん
にんげん
し
おも
し
が 許 さ れ た。 い な ご の 与 え る 苦 痛 は、 さ そ り に 刺 さ れ た と き の よ う な 苦
せつ
し
のぞ
わざわ
す
し
さ
かれ
み
に
い
のち
わざわ
く
痛 で あ っ た。 そ の 期 間、 人 間 は 死 に た い と 思 う が、 死 ぬ こ と が で き ず、
だい
切に死を望むが、死が彼らから逃げて行く。
第 一 の 災 い が 過 ぎ 去 っ た。 見 よ、 こ の 後、 な お 二 つ の 災 い が や っ て 来
る。
201
だい
てん し
第 六のラッパ
だい
さいだん
つの
で
ふ
こえ
な
き
こえ
わたし
かみ
み まえ
も
きん
第 六 の 天 使 が ラ ッ パ を 吹 き 鳴 ら し た。 す る と、 私 は 神 の 御 前 に あ る 金
だい
てん し
い
だい
がわ
の 祭 壇 の 四 つ の 角 か ら 出 る 声 を 聞 い た。 そ の 声 は、 ラ ッ パ を 持 っ て い る
にん
てん し
かいほう
にん
てん し
じんるい
ぶん
ころ
第 六 の 天 使 に 言 っ た。「 大 ユ ー フ ラ テ ス 川 の ほ と り に つ な が れ て い る 四
と
はな
てん し
さだ
とし
つき
ひ
じ
人 の 天 使 を 解 放 せ よ。」 す る と、 四 人 の 天 使 は、 人 類 の 三 分 の 一 を 殺 す
かん
よう い
き へい
ぐんぜい
かず
おく
た め に 解 き 放 さ れ た。 こ の 天 使 た ち は、 そ の 定 め ら れ た 年、 月、 日、 時
かず
わたし
き
まぼろし
なか
み
うま
き
し
よう す
かれ
間 の た め に 用 意 さ れ て い た の で あ る。 そ の 騎 兵 の 軍 勢 の 数 は 二 億。 そ の
わたし
数を私は聞いた。
あか
けむり
むらさき
も
い おう
いろ
むね あ
私 が 幻 の 中 で 見 た 馬 と そ の 騎 士 た ち の 様 子 は こ う で あ っ た。 彼 ら は、
ほのお
うま
あたま
し
し
あたま
くち
ひ
けむり
い おう
で
炎 の よ う な 赤、 煙 の よ う な 紫、 お よ び 燃 え る 硫 黄 の 色 の 胸 当 て を つ け て
くち
で
ひ
けむり
い おう
さいがい
じんるい
ぶん
ころ
お り、 そ の 馬 の 頭 は 獅 子 の 頭 の よ う で、 口 か ら は 火 と 煙 と 硫 黄 が 出 て い
うま
ちから
くち
お
お
へび
に
あたま
がい
た。 そ の 口 か ら 出 る 火 と 煙 と 硫 黄 の 三 つ の 災 害 で 人 類 の 三 分 の 一 が 殺 さ
くわ
さいがい
あ
ころ
のこ
にんげん
じ ぶん
れ た。 馬 の 力 は そ の 口 と 尾 に あ っ て、 尾 は 蛇 に 似 て 頭 が あ り、 そ れ で 害
を加えるのである。
し か し、 こ れ ら の 災 害 に 遭 っ て も 殺 さ れ な か っ た 残 り の 人 間 は、 自 分
202
きん
て
ぎん
どう
いし
き
く
あらた
つく
み
ぐうぞう
おが
き
つづ
ある
あくれい
の手のわざについて悔い改めず、なおも偶像を拝み続けた。悪霊どもや、
ぐうぞう
れいはい
さつじん
みだ
おこな
金、 銀、 銅、 石、 木 で 造 ら れ た、 見 る こ と も 聞 く こ と も 歩 く こ と も で き
ぬす
く
あらた
み
うみ
ち
うえ
た
てん し
みぎ て
てん
あ
な い 偶 像 の 礼 拝 を や め な か っ た。 ま た、 殺 人、 ま じ な い、 淫 ら な 行 い、
わたし
盗みを悔い改めなかった。
い
てん
ち
うみ
そ れ か ら、 私 は 見 た。 海 と 地 の 上 に 立 っ た 天 使 が、 右 手 を 天 に 上 げ、
えいえん
そうぞう
かた
ちか
とき
の
永 遠 に 生 き て お ら れ、 天 と そ こ に あ る も の、 地 と そ こ に あ る も の、 海 と
だい
てん し
おと
ひび
かみ
おく ぎ
じょうじゅ
そ こ に あ る も の を 創 造 さ れ た 方 に か け て 誓 っ た。「 も は や 時 は 延 ば さ れ
かみ
じ ぶん
よ げんしゃ
ふくいん
つた
ない。第七の天使のラッパの音が響くとき、神の奥義が成就する。それは、
ふ
な
てん
おお
こえごえ
神がご自分の預言者たちに福音として伝えられたとおりである。」
だい
てん し
第 七のラッパ
だい
い
おうけん
われ
しゅ
第七の天使がラッパを吹き鳴らした。すると、天に大きな声々があり、
よ
こう言った。
「この世の王権は、我らの主と、
そのキリストのものとなった。
203
しゅ
い
えいえん
おう
かんしゃ
かた
主は永遠に王である。」
かみ
み まえ
ざ
つ
にん
ちょうろう
ふ
かみ
神 の 御 前 で、 座 に 着 い て い た 二 十 四 人 の 長 老 た ち は、 ひ れ 伏 し て 神 を
おが
拝んで言った。
いま
「あなたに感謝します。
ぜんのう
かみ
ちから
はたら
おられ、かつておられた方、
しゅ
今
い だい
主なる全能の神よ、
とう ち
あなたは偉大な力を働かせて、
しょこく
たみ
いか
くる
統治されたからです。
み いか
ひ
のぞ
諸国の民は怒り狂いましたが、
し
もの
とき
き
あなたの御怒りの日が臨み、
つか
よ げんしゃ
死んだ者のさばかれる時が来ました。
せい と
おそ
ひとびと
あなたに仕えた預言者たち、
おお
もの
ちい
もの
聖徒たち、あなたを畏れる人々すべてに、
むく
あた
――大いなる者にも小さき者にも――
ち
ほろ
もの
報いをお与えになり、
地を滅ぼす者どもを
204
ほろ
とき
き
しろ
おう ざ
滅ぼされる時が来ました。」
さい ご
おお
最 後のさばき
わたし
てん
ち
み まえ
に
い
すわ
かた
な
み
いま
わたし
私 は ま た、 大 き な 白 い 王 座 と、 そ れ に 座 っ て お ら れ る 方 と を 見 た。 今
し
ひとびと
い だい
もの
ちい
もの
おう ざ
まえ
の 天 と 地 と は そ の 御 前 か ら 逃 げ て 行 き、 す で に そ こ に は 無 か っ た。 私 は
た
み
かずかず
しょもつ
ひら
ひと
しょもつ
ひら
ま た、 死 ん だ あ ら ゆ る 人 々 が、 ―― 偉 大 な 者 も 小 さ き 者 も ―― 王 座 の 前
しょ
し
ひとびと
しょもつ
しる
に 立 っ て い る の を 見 た。 数 々 の 書 物 が 開 か れ た。 も う 一 つ の 書 物 が 開 か
もと
なか
じ ぶん
おこな
し にん
おう
だ
し
よ
み
なか
し にん
れ た。 そ れ は い の ち の 書 で あ る。 死 ん だ 人 々 は、 こ れ ら の 書 物 に 記 さ れ
うみ
たことに基づき、自分の行いに応じてさばかれた。
かれ
じ ぶん
おこな
おう
海 は そ の 中 に い た 死 人 た ち を 出 し た。 死 も 黄 泉 も そ の 中 の 死 人 た ち を
だ
し
よ
み
ひ
いけ
な
こ
ひ
いけ
だい
し
出 し た。 そ し て、 彼 ら は お の お の 自 分 の 行 い に 応 じ て さ ば か れ た。 そ れ
しょ
な
しる
もの
ひ
いけ
な
こ
から、死も黄泉も火の池に投げ込まれた。この火の池が第二の死である。
い の ち の 書 に そ の 名 が 記 さ れ て い な い 者 は、 す べ て、 火 の 池 に 投 げ 込 ま
れた。
205
あら
わたし
あたら
すべてを新たに
う
うみ
てん
あたら
ち
わたし
み
せい
い ぜん
てん
みやこ あたら
い ぜん
ち
そ れ か ら 私 は、 新 し い 天 と 新 し い 地 を 見 た。 以 前 の 天 と、 以 前 の 地 は
き
かみ
で
てん
くだ
く
み
よう い
消え失せ、もはや海もない。そして私は聖なる都、新しいエルサレムが、
ととの
おっと
おう ざ
き かざ
はなよめ
おおごえ
い
うつく
き
み
かみ
神 の み も と を 出 て、 天 か ら 降 っ て 来 る の を 見 た。 そ れ は ち ょ う ど、 用 意
わたし
を整えて、夫のために着飾った花嫁のような美しさである。
ひと
あいだ
かみ
ひと
す
ひと
かみ
たみ
かみ
そ の と き、 私 は 王 座 か ら の 大 声 が こ う 言 う の を 聞 い た。「 見 よ、 神 の
す
じ しん
かれ
かれ
なみだ
住 ま い が 人 の 間 に あ っ て、 神 は 人 と と も に 住 む。 人 は 神 の 民 と な り、 神
と
し
かな
なげ
くる
ご 自 身 が 彼 ら と い っ し ょ に お ら れ る。 そ し て、 彼 ら の す べ て の 涙 を す っ
さき
す
つ
さ
かた
い
み
わたし
か り ぬ ぐ い 取 っ て く だ さ る。 も は や 死 は な く、 悲 し み も 嘆 き も 苦 し み も
おう ざ
ない。先のものは過ぎ去ったからである。」
い
か
しる
しん
す る と、 王 座 に 着 い て お ら れ る 方 が 言 わ れ た。「 見 よ、 私 は す べ て を
あたら
しんじつ
わたし
い
こと
かんせい
新しくする。」また言われた。「書き記せ。これらのことばは、信ずべき
わたし
はじ
お
かわ
もの
みず
いずみ
ものであり、また真実である。」また、私に言われた。「事は完成された。
の
しょうり
え
もの
う
つ
わたし
私 は 初 め で あ り、 終 わ り で あ る。 渇 い て い る 者 に は、 い の ち の 水 の 泉 か
ら た だ で 飲 ま せ よ う。 勝 利 を 得 る 者 は、 こ れ ら の も の を 受 け 継 ぐ。 私 は
206
ひと
したが
かみ
もの
ふ しんこう
ひと
もの
わたし
い
こ
もの
ひと ごろ
せいてき
みだ
わたし
もの
そ の 人 の 神 と な り、 そ の 人 は 私 の 子 と な る。 し か し、 お く び ょ う で 私
もの
ぐうぞう
おが
もの
もの
に従わない者、不信仰な者、忌まわしい者、人殺し、性的に淫らな者、
う
ぶん
ひ
い おう
も
さか
いけ
だい
し
ま じ な い を す る 者、 偶 像 を 拝 む 者、 す べ て の う そ つ き、 こ の よ う な 者
き
わたし
はな
き
こひつじ
つま
た ち の受 け る 分 は 、火 と 硫黄 の 燃え 盛る 池で あ る 。 これが、第二の死で
ある。
」
あたら
新 しいエルサレム
てん し
はなよめ
み
てん し
せいれい
わたし
おお
たか
さ て、 天 使 の ひ と り が 来 て、 私 に 話 し か け た。「 来 な さ い。 小 羊 の 妻
やま
つ
い
せい
みやこ
あた
かみ
で
で あ る 花 嫁 を 見 せ ま し ょ う。」 こ の 天 使 が、 聖 霊 に よ っ て 私 を 大 き な 高
てん
くだ
く
み
みやこ
かみ
えいこう
かがや
かがや
い 山 に 連 れ て 行 き、 聖 な る 都、 新 し い エ ル サ レ ム が 神 の み も と を 出 て、
こう か
ほうせき
す
とお
へきぎょく
みやこ
おお
天から降って来るのを見せた。都は神の栄光に輝いていた。その輝きは、
たか
じょうへき
もん
もん
にん
てん し
もん
高 価 な 宝 石 の よ う で あ り、 透 き 通 っ た 碧 玉 の よ う で あ っ た。 都 に は、 大
しんじゅ
もん
しんじゅ
き な 高 い 城 壁 と 十 二 の 門 が あ り、 門 に は 十 二 人 の 天 使 が い た。 十 二 の 門
みやこ
おおどお
す
とお
じゅんきん
は 十 二 の 真 珠 で あ っ た。 そ し て、 ど の 門 も そ れ ぞ れ 一 つ の 真 珠 で で き て
いた。都の大通りは、透き通ったガラスのような純金であった。
207
わたし
みやこ
なか
しんでん
みやこ
み
て
しゅ
たいよう
ぜんのう
つき
かみ
い
こひつじ
かみ
みやこ
えい
私 は、 都 の 中 に 神 殿 を 見 な か っ た。 主 で あ る 全 能 の 神 と 小 羊 と が 都 の
しんでん
こう
みやこ
て
こひつじ
みやこ
あ
しょこく
たみ
ひかり
神 殿 だ か ら で あ る。 都 に は、 そ れ を 照 ら す 太 陽 も 月 も 要 ら な い。 神 の 栄
なか
あゆ
ち
おう
えいこう
たずさ
く
みやこ
もん
いちにちじゅう
けっ
光 が 都 を 照 ら し、 小 羊 が 都 の 明 か り だ か ら で あ る。 諸 国 の 民 は、 そ の 光
と
よる
ひとびと
しょこく
たみ
の 中 を 歩 み、 地 の 王 た ち は そ の 栄 光 を 携 え て 来 る。 都 の 門 は、 一 日 中 決
えいこう
ほま
たずさ
く
けが
もの
ふ けつ
いつわ
し て 閉 ざ さ れ な い。 そ こ に は 夜 が な い か ら で あ る。 人 々 は、 諸 国 の 民 の
おこな
もの
けっ
みやこ
はい
はい
こひつじ
栄 光 と 誉 れ と を 携 え て 来 る。 し か し、 す べ て 汚 れ た 者、 不 潔 な こ と や 偽
しょ
な
しる
もの
かがや
みず
かわ
わたし
み
り を 行 う 者 は だ れ ひ と り、 決 し て 都 に 入 れ な い。 入 れ る の は 小 羊 の い の
すいしょう
ちの書に名が記されている者だけである。
かわ
いのちの川
てん し
かみ
こひつじ
おう ざ
なが
で
みやこ
おおどお
ちゅうおう
なが
かわ
は
こひつじ
き
しょこく
おう ざ
たみ
みやこ
しゅ
かれ
み
むす
のろ
まい つき み
かれ
なにひと
おが
み かお
あお
りょう
天 使 は ま た、 水 晶 の よ う に 輝 く、 い の ち の 水 の 川 を 私 に 見 せ た。 そ れ
ぎし
は 神 と 小 羊 の 王 座 か ら 流 れ 出、 都 の 大 通 り の 中 央 を 流 れ て い た。 川 の 両
き
岸 に は い の ち の 木 が あ っ て、 十 二 種 の 実 を 結 び、 毎 月 実 を み の ら せ る。
かみ
その木の葉は諸国の民をいやす。もはや、呪われるものは何一つない。
神 と 小 羊 の 王 座 が 都 に あ り、 彼 の し も べ た ち は 彼 を 拝 み、 御 顔 を 仰
208
み
び
かれ
ひかり
ひたい
たいよう
ひかり
かみ
い
な
しる
かみ
しゅ
よる
て
ぎ 見 る。 彼 ら の 額 に は、 神 の 名 が 記 さ れ て い る。 も は や、 夜 が な い。 と
かれ
よ
よ かぎ
おう
し はい
てん し
わたし
も し 火 の 光 も 太 陽 の 光 も 要 ら な い。 神 で あ る 主 が し も べ た ち を 照 ら さ れ
い
しん
しんじつ
よ げんしゃ
る か ら で あ る。 彼 ら は 世 々 限 り な く 王 と し て 支 配 す る。 天 使 は 私 に こ う
れいかん
あた
かみ
しゅ
ま
お
じ ぶん
言 っ た。「 こ れ ら の こ と ば は、 信 ず べ き も の で あ り、 真 実 で す。 預 言 者
しめ
み つか
つか
しょもつ
よ げん
まも
もの
さいわ
た ち に 霊 感 を 与 え る 神、 主 が、 間 も な く 起 こ る べ き こ と を、 ご 自 分 の し
ちか
く
もべたちに示すために御使いを遣わされたのです。」
とき
わたし
時は近い
み
わたし
き
み
き
「 見 よ、 私 は す ぐ に 来 る。 こ の 書 物 の 預 言 の こ と ば を 守 る 者 は、 幸
かれ
おが
てん し
わたし
い
い で あ る 。」 私 ヨ ハ ネ は 、 こ れ ら の こ と を 聞 き 、 ま た 見 た 。 聞 き 、 ま
み
わたし し め
てん し
あし
ふ
た 見 た と き 、こ の こ と を 私 に 示 し て く れ た 天 使 の 足 も と に ひ れ 伏 し て 、
わたし
きょうだい
よ げんしゃ
しょもつ
彼 を 拝 も う と し た 。 す る と 、 天 使 は 私 に 言 っ た 。「 そ れ は い け な い 。
まも
い
ひと
どうよう
つか
よ げん
もの
かみ
かく
おが
私 は、 あ な た や、 あ な た の 兄 弟 で あ る 預 言 者 た ち や、 こ の 書 物 の こ と
わたし
しょ
ば を 守 っ て い る 人 た ち と 同 様 、 仕 え る 者 で す 。 神 を こ そ 拝 み な さ い 。」 ま た 、 私 に 言 っ た 。「 こ の 書 の 預 言 の こ と ば を 、 隠 し て お い て は い
209
もの
とき
ちか
けが
ふ せい
おこな
ただ
もの
ひと
ふ せい
ただ
おこな
けが
け な い 。 時 が 近 い か ら で す。 不 正 を 行 う 者 は、 さ ら に 不 正 を 行 い、 汚 れ
おこな
きよ
もの
きよ
もの
わたし
たずさ
き
おこな
た 者 は、 ま す ま す 汚 れ た も の と な り、 正 し い 人 は、 さ ら に 正 し い こ と を
き
く
むく
行い、聖い者は、ますます聖い者となりなさい。」
しゅ
わたし
主イエスよ、来てください
み
おう
むく
わたし
さいしょ
さい ご
はじ
お
「 見 よ、 私 は す ぐ に 来 る。 私 は、 報 い を 携 え て 来 て、 そ れ ぞ れ の 行 い
に 応 じ て 報 い る。 私 は 最 初 で あ り、 最 後 で あ る。 初 め で あ り、 終 わ り で
じ ぶん
ころも
あら
きよ
ひと
さいわ
げ れつ
もの
ある。」 き
けん り
あた
みやこ
もん
とお
とっけん
え
い の ち の 木 へ の 権 利 を 与 え ら れ、 ま た 都 へ の 門 を 通 る 特 権 を 得 る た め
もの
みだ
もの
さつじんしゃ
ぐうぞう
おが
もの
に、 自 分 の 衣 を 洗 い 清 め る 人 は 幸 い で あ る。 し か し、 下 劣 な 者、 ま じ な
この
おこな
もの
みな
みやこ
し
だ
い を す る 者、 淫 ら な こ と を す る 者、 殺 人 者、 偶 像 を 拝 む 者、 す べ て う そ
がた
あか
わたし
おう
し そん
こんげん
かがや
あ
みょうじょう
を好み、行う者どもは皆、都から締め出されている。 わたし
つか
つか
しょきょうかい
「 私、 イ エ ス は 使 い を 遣 わ し て、 諸 教 会 の た め に こ れ ら の こ と を あ な
た 方 に 証 し し た。 私 は ダ ビ デ 王 の 子 孫、 ま た そ の 根 源、 輝 く 明 け の 明 星
である。」
210
*聖徒 キリスト信者のこと。キ
リストを信じることによって、彼
の血で罪が清められた、という意
味での「聖なる者」。
せいれい
き
わたし
い
かわ
き
もの
き
き
もの
い
みず
の
聖 霊 も 私 た ち も 言 う。「 来 て く だ さ い。」 こ れ を 聞 く 者 も 言 う が よ い、
ひと
よ げん
き
ひと
わたし
けいこく
「 来 て く だ さ い 」 と。 渇 い て い る 者 は 来 な さ い。 い の ち の 水 を 飲 み た い
しょ
人は、それをただでいただきなさい。
つ
くわ
かみ
ひと
しょ
か
わざわ
こ の 書 の 預 言 の こ と ば を 聞 く す べ て の 人 に、 私 は 警 告 す る。 も し だ れ
つ
くわ
よ げん
しょ
すこ
と
か が こ れ に 付 け 加 え る な ら、 神 は そ の 人 に こ の 書 に 書 か れ て い る 災 い を
のぞ
かみ
しょ
か
き
せい
みやこ
付 け 加 え ら れ る。 も し だ れ か が こ の 預 言 の 書 の こ と ば か ら 少 し で も 取 り
ひと
う
ぶん
と
のぞ
あか
かた
い
除 く な ら、 神 は、 こ の 書 に 書 か れ て い る い の ち の 木 と 聖 な る 都 か ら、 そ
いじょう
の人の受ける分を取り除かれる。
く
き
以 上 こ れ ら す べ て を 証 し す る 方 が、 言 わ れ る。「 そ の と お り で あ る。
わたし
しゅ
私はすぐに来る。」
しゅ
めぐ
* せい と
アーメン、主イエスよ、来てください。
主イエスの恵みが、すべての聖徒たちとともにあるように。アーメン。
211
キラウェア火山 (ハワイ)
その日、天は大きな響きをたてて消え失せ、天体は燃えて崩れ、
地とそこで造り出されたものは溶け去ってしまいます。
ペテロの手紙第Ⅱ 3:10
212
こうはん
よ
で
お
し
おお
き
ぼ う
しんじゃ
第十一章 世
の終わり、希望
せい き
つた
でんどう
とう じ
せかいじゅう
しん
ふくいん
一世紀の後半、イエスの弟子たちや多くの信者たちは、世界中へ福音を
の
かく ち
しんじゃ
しんこう
つよ
はげ
で
し
宣べ伝えるために、伝道をしていました。当時、キリストを信じるように
かずかず
て がみ
か
で
し
て がみ
かた
なった各地の信者たちの信仰を強め、また励ますために、イエスの弟子た
かみ
しんやくせいしょ
つう
て がみ
ほんしょ
だい
しょう
だい
ちは、数々の手紙を書きました。弟子たちのこれらの手紙をとおして語ら
しょう
て がみ
ばっすい
れた神のことばが、新約聖書の二十一通の手紙です。本書の第十一 章 ~第
十四章はこの手紙の抜粋です。
213
し と
じ だい
わたし
て がみ
いま
「使徒ペテロからの手紙」より
お
かたがた
終わりの時 代
あい
て がみ
がた
し
ど
め
て がみ
おも
か
お
愛する方々、私は今、あなた方に二度目の手紙を書いていますが、そ
がた
じゅんしん
き
も
さら
せい
よ げんしゃ
れは、これらの手紙で、すでに知っていることを思い起こさせ、あなた
かた
し
と
つた
しゅ
すく
ぬし
方の純真な気持ちをおこそうとしているのです。更に、聖なる預言者た
めいれい
おも
だ
おぼ
よ
お
じ だい
よくじょう
ちがかつて語ったことばと、使徒たちが伝えた主であり救い主であるイ
つぎ
エスの命令を思い出してもらうためです。
せいかつ
しん り
もの
あらわ
い
まず、次のことを覚えておきなさい。世の終わりの時代には、欲情の
さいりん
やくそく
ままに生活して、真理をあざける者たちが現れ、こう言います。「イエ
つぎ
みと
ふる
むかし
てん
ち
かみ
スが再臨するという約束は、いったいどうなったのだ。」と。すなわち、
とう じ
せ かい
こうずい
お
なが
ほろ
次のことを認めようとしないのです。古い昔から天があり、地は神のこ
げんざい
てん
ち
ち
や
おな
み
とばによってでき、また、当時の世界は洪水に押し流されて滅びました。
たも
ふ しん
ひとびと
ほろ
ひ
と
そして、現在の天と地とは、火で焼かれるために、同じ御ことばによっ
て保たれ、不信の人々のさばきと滅びの日まで取っておかれています。
214
あい
ねん
かたがた
ねん
にち
わす
ひとびと
しゅ
おそ
おも
にち
愛 す る 方 々、 こ の こ と を 忘 れ な い で く だ さ い。 主 に と っ て は、 一 日 は
しゅ
やくそく
じっこう
おく
しゅ
千 年 の よ う で、 千 年 は 一 日 の よ う で す。 あ る 人 々 が 遅 い と 思 っ て い る よ
がた
かんよう
ほろ
みな
く
あらた
のぞ
う に、 主 は 約 束 の 実 行 を 遅 ら せ て お ら れ る の で は あ り ま せ ん。 主 は あ な
とつぜん く
ぬすびと
おそ
き
ひ
てん
おお
ひび
た 方 に 寛 容 で あ ら れ、 ひ と り も 滅 び な い で 皆 が 悔 い 改 め る よ う に と 望 ん
ひ
でおられるのです。
しゅ
ひ
主の日は突 然 来る
しゅ
き
う
てんたい
も
くず
ち
さ
つく
だ
がた
と
きよ
しん
主の日は盗人のように襲って来ます。その日、天は大きな響きをたて
さ
ほろ
て消え失せ、 天体は燃えて崩れ、 地とそこで造り出されたものは溶け
去ってしまいます。
せいかつ
おく
かみ
ひ
とうらい
ま
のぞ
このように、すべてのものは滅び去るのですから、あなた方は聖い信
じんぶか
く
はや
ひ
てん
や
くず
てんたい
心深い生活を送らなければなりません。神の日の到来を待ち望み、また、
も
あとかた
な
わたし
かみ
やくそく
それが来るのを早めるようにすべきです。その日に天は焼け崩れ、天体
う
せい ぎ
やど
あたら
てん
あたら
ち
ま
のぞ
は燃えて跡形も無くなってしまいます。しかし、私たちは神の約束をお
受けして、正義の宿る新しい天と新しい地とを、待ち望んでいるのです。
215
*兄弟 キリストを信じる者は互
いに兄弟(婦人は姉妹)と呼び合
う。 **死んだ人たち 直訳「眠りに
ついた人々」。
よご
あい
かたがた
もの
やす
ま
かみ
のぞ
こころ
まえ
い
がた
そういうわけで、愛する方々、このことを待ち望んでいるあなた方で
はげ
わたし
しゅ
にんたい
すく
おも
すから、しみも汚れもない者として、安らかな心で神の前に生きること
て がみ
ひと
つぎ
し
ができるように、励みなさい。また、私たちの主の忍耐こそ、救いと思
いなさい。
し と
き ぼう
**し
「使徒パウロからの手紙」より
えいえん
*きょうだい
永遠への希 望
あい
き ぼう
も
ほか
ひとびと
かな
しず
愛する兄弟たち。死んだ人たちについて、ぜひ次のことを知ってほし
し
わたし
し
い。希望を持っていない他の人々のように悲しみに沈むことのないため
です。
かみ
おな
しん
というのは、イエスが死んでよみがえられたことを、私たちは知って
し
み
ひと
もと
つぎ
つた
あい ず
ごう
いるからです。そして、イエスのゆえに、神は同じように、イエスを信
かみ
じて死んだ人たちをも、いっしょによみがえらせてくださるのです。
神の御ことばに基づいて、次のことを伝えます。すなわち、合図の号
216
れい
くだ
だいてん し
こ
こえ
かみ
な
しん
ひび
し
ひと
じ しん
てん
はじ
令と、大天使の声と、神のラッパが鳴り響くと、イエスご自身が天から
つぎ
わたし
い
のこ
もの
かれ
くも
降って来られます。すると、イエスを信じて死んだ人たちが、まず初め
つつ
ひ
あ
てん
しゅ
あ
わたし
によみがえり、次に、私たち生き残っている者が、彼らといっしょに雲
しゅ
に包まれて引き上げられ、天で主にお会いするのです。こうして、私た
たが
なぐさ
あ
ひ
にち じ
よ こく
ちはいつまでも主とともにいるようになります。それゆえ、これらのこ
むく
しゅ
とばで互いに慰め合ってください。
かみ
神の報い
きょうだい
しゅ
ひ
よる
ぬすびと
とつぜん
き
ひとびと
兄弟たち、主の日の日時については、だれも予告できません。よくご
しょうち
へい わ
あんぜん
い
とつぜん
は めつ
おそ
承知 のとおり、 主の日 は夜の盗人のように 突然 やって来ます。人々が
にん ぷ
う
くる
のぞ
けっ
のが
「平和だ。安全だ。」と言っているそのときに、突然、破滅が襲うのです。
てん
ちからづよ
てん し
ひき
こ
かみ
ひとびと
それは妊婦に産みの苦しみが臨むようなもので、決してそれから逃れら
しゅ
れません。
あた
しゅ
ほのお
なか
すがた
み
主イエスが天から力強い天使たちを率いて来られるとき、神は人々に
むく
報いをお与えになります。そのとき主イエスは、炎の中に姿をお見せし
217
*
「不法の者」 にせキリスト。聖
書にはこの人が世の終わりに全世
界を統一すると預言されている。
ばつ
あた
かみ
みと
かれ
もの
しゅ
しゅ
み まえ
ふくいん
た
き
したが
えいこう
もの
かがや
ます。そして神を認めない者や、主イエスの福音に聞き従わない者に、
ちから
しりぞ
えいえん
ほろ
けいばつ
う
罰をお与えになります。彼らは、主の御前から絶たれ、その栄光に輝く
しゅつげん
しゅ
さいりん
力から退けられて、永遠の滅びの刑罰を受けるのです。
わたし
にせキリストの 出 現
きょうだい
わたし
あつ
ねが
れい
兄弟たちよ。私たちの主キリスト・イエスの再臨と、イエスがみも
わたし
か
おく
て がみ
とに私たちを集められることについてお願いします。霊によって、こと
しゅ
ひ
き
い
もの
どうよう
ばによって、あるいは、私たちから書き送られたという手紙によって、
「主の日はすでに来てしまった」と言う者がいても、すぐに動揺したり、
しんじゃ
しんこう
き
*ふ
うろたえたりしないでください。だれにも、どんなことがあってもだま
おお
されてはいけません。
もの
ほろ
こ
しゅつげん
ひ
き
なぜなら、まず、多くの信者が信仰をなくすときが来ます。また「不
ほう
もの
かみ
よ
おが
法の者」、すなわち、滅びの子が出現しなければその日は来ないからで
たいこう
ごうまん
じん
しんでん
すわ
こ
じ
す。この者は、すべて神と呼ばれたりするもの、拝まれたりするものに
対抗し、傲慢にふるまって、ついには、ユダヤ人の神殿に座り込み、自
218
ぶん
かみ
せんげん
はな
わたし
おも
だ
がた
分こそは神であると宣言します。私がまだあなた方のもとにいたとき、
いま
かれ
さだ
とき
あらわ
かれ
ひ
と
これらのことをよく話したのを思い出しませんか。
ふ ほう
おく ぎ
はたら
たん
いま
そ
し しゃ
のぞ
今は、彼が定めの時に現れるように、彼を引き止めるものがあります。
とき
とき
ふ ほう
もの
あらわ
しゅ
すでに不法の奥義が働いていますが、それは単に今の阻止者が除かれる
じ ぶん
くち
いき
かれ
ころ
らいりん
かがや
ただ
ほろ
時までのことです。その時になると、「不法の者」が現れますが、主イ
ふ ほう
もの
あらわ
あく ま
はたら
エスはご自分の口の息で彼を殺し、来臨の輝きをもって直ちに滅ぼして
いつわ
ちから
き せき
ふ
し
ぎ
おこな
ふ
ぎ
ゆうわく
しまわれます。「不法の者」の現れは、悪魔の働きによるのであって、
もち
ほろ
ひとびと
あざむ
かれ
ほろ
じ ぶん
すく
あらゆる偽りの力、奇跡、不思議を行い、そして、あらゆる不義の誘惑
しん り
あい
う
い
かみ
かれ
を用いて、滅びていく人々を欺くのです。彼らが滅びるのは、自分の救
まよ
ちから
おく
ひとびと
いつわ
しん
しん
いとなる真理と愛を受け入れようとしないからです。それで、神は彼ら
り
しん
あく
よろこ
もの
みな
がた
くらやみ
なか
しゅ
ひ
に迷いの力を送られ、人々は偽りを信じるようになります。それは、真
きょうだい
理を信じないで悪を喜ぶ者が皆、さばかれるためです。
がた
おそ
がた
ひかり
しかし、兄弟たち、あなた方は暗闇の中にはいませんから、主の日が、
ぬすびと
こ
ひる
こ
わたし
よる
くらやみ
盗人のようにあなた方を襲うことはないのです。あなた方はすべて光の
ひとびと
ねむ
め
さ
じ せい
子ども、昼の子どもだからです。私たちは、夜や暗闇のものではありま
せん。それで、ほかの人々のように眠っていないで、目を覚まし、自制
219
つつし
して慎んでいましょう。
あたら
こくせき
てん
新 しいからだでよみがえる
わたし
わたし
ま
すく
ぬし
ばんぶつ
したが
み
私たちの国籍は天にあります。そこから救い主、キリスト・イエスが
こ
ちから
わたし
いや
からだ
じ ぶん
おな
えいこう
すがた
か
来られるのを、私たちは待っています。キリストは、万物を従わせる御
ひと
い
し しゃ
ふっかつ
力によって、私たちの卑しい体を、ご自分と同じ栄光ある姿に変えてく
ださるのです。
からだ
く
おろ
ひと
ま
し
しかし、ある人はこう言います。「死者はどんなふうに復活するのか。
え
ま
どんな体で来るのか 。」と 。愚かな人 ! あなたが 蒔くものは 、死なな
むぎ
ほか
こくもつ
たねつぶ
かみ
ければいのちを得ないではありませんか。あなたが蒔くのは、やがてで
み こころ
あた
たね
どくとく
きるからだではなく 、麦でも他の穀物でも 、ただの種粒です 。神は 、
あた
い
もの
みな
おな
御心のままに、それにからだをお与えになり、それぞれの種に独特のか
にんげん
けもの
とり
さかな
ちが
てんじょう
らだをお与えになります。生き物も、皆どれも同じというわけではなく、
ち じょう
てんじょう
えいこう
ち じょう
えいこう
こと
人間、獣、鳥、魚と、それぞれ違います。また、天上のからだがあり、
地上のからだがあります。天上のものの栄光は地上のものの栄光と異
220
ほし
かがや
ちが
ふっかつ
たいよう
かがや
おな
つき
かが
ま
ほしぼし
かがや
く
ほし
た
く
なっています。太陽の輝き、月の輝き、星々の輝きがあり、ある星と他
し にん
の星も輝きが違います。
ま
いや
えいこう
死人の復活もこれと同じです。蒔かれるときは朽ちるものですが、朽
ま
よわ
ちからづよ
ちないものによみがえり、蒔かれるときは卑しいものですが、栄光ある
し ぜん
ま
てん
ぞく
ものによみがえり、蒔かれるときは弱いものですが、力強いものによみ
し ぜん
し ぜん
ちょうえつ
がえるのです。自然のからだで蒔かれ、天に属するからだによみがえる
わたし
い
う
かみ
くに
のです。自然のままのからだがあるように、自然を超越したからだもあ
きょうだい
るのです。
う
つ
く
く
う
つ
兄弟たち、私はこう言いたいのです。生まれながらのからだは神の国
し
おく ぎ
つ
わたし
ひと
し
あたら
じょう
を受け継ぐことはできません。朽ちるものが朽ちないものを受け継げな
いのです。
ひと
がた
ある人は死なない
わたし
か
さい ご
な
ひび
私はあなた方に奥義を告げます。私たちのある人は死なず、新しい状
たい
態に変えられます。それは、最後のラッパが鳴り響くとき、たちまち、
221
いっしゅん
わたし
い
のこ
もの
か
な
し にん
ふっかつ
く
く
もの
く
一瞬のうちにです。ラッパが鳴ると、死人は復活して朽ちない者とされ、
き
し
し
き
つぎ
私たち生き残った者は変えられます。それで、この朽ちるものが朽ちな
か
じょうじゅ
いものを着、この死ぬものが死なないものを着るのです。このとき、次
し
しょうり
の
のように書かれていることばが成就するのです。
し
しょうり
「死は勝利に呑まれた。
じ ごく
ちから
死よ、おまえの勝利はどこにあるのか。
あい
きょうだい
うご
た
地獄よ、おまえの力はどこにあるのか。」
わたし
しゅ
わたし
しょうり
たまわ
かみ
かんしゃ
私たちの主キリスト・イエスによって私たちに勝利を賜る神に、感謝
しましょう!
ぜんりょく
そそ
しゅ
はげ
ぞん
がた
ろう
それゆえ、愛する兄弟たち、動かされないようにしっかり立ち、いつ
く
しゅ
けっ
む
だ
も全力を注いで主のわざに励みなさい。ご存じのとおり、あなた方の労
苦は、主にあっては決して無駄ではありません。
222
*ユダ イエスの実兄弟のユダ。
イエスを裏切ったイスカリオテの
ユダではない。
し と*
かたがた
て がみ
しゅ
しゅつげん
にせキリスト信者の 出 現
しんじゃ
「
使徒ユダからの手紙」より
しんあい
おも
だ
し
かれ
と
い
わたし
お
よ こく
親愛な方々、主キリスト・イエスの使徒たちによって、私たちに予告
じ だい
ひとびと
あらわ
ふ しん
よくぼう
せいかつ
されたことばを思い出してください。彼らはこう言いました。「終わり
ひと
しんじゃ
あいだ
なか ま
わ
ひ
お
う
の時代には、あざける人々が現れ、不信な欲望のままに生活する。」と。
にんげん
せいれい
も
ひと
かれ
えいえん
ま
くら
この人たちは、信者の間に仲間割れを引き起こし、生まれつきのままの
やみ
よう い
だい め
ひとびと
人間で、聖霊を持たない人たちです。彼らのためには、永遠の真っ暗な
かぞ
闇が用意されています。
よ げん
み
しゅ
かず し
せい と
ひ
つ
こ
アダムから数えて七代目のエノクも、このような人々についてこのよ
ひと
ふ しん
い
かた
うに預言しました。「見よ、主は数知れない聖徒たちを引き連れて来ら
もの
かみ
おそ
かみ
おそ
れる。それは、すべての人をさばくためであり、また、不信な生き方を
しゅ
い
さか
かれ
つみ
さだ
した者たちが神を畏れないでしたいっさいのことと、また、神を畏れな
いで主に言い逆らったいっさいのことについて、彼らを罪に定めるため
である。」
223
ひとびと
おお
ふ へい
くち
い
もの
ふ まん
い
な
じ まん
もの
よくぼう
じ ぶん
とく
このような人々は、不平を言う者、不満を鳴らす者で、欲望のままに
せいかつ
ひと
かたがた
がた
い
もっと
きよ
しんこう
うえ
じ ぶん じ しん
きず
生活しています。その口は大きなことを言い、自慢もすれば、自分が得
しんあい
をするために人にへつらいのことばを言うのです。
せいれい
いの
かみ
あい
じ ぶん
まも
わたし
しゅ
しかし、親愛な方々、あなた方は最も聖い信仰の上に自分自身を築き
あ
えいえん
みちび
あわ
ま
のぞ
上げ、聖霊によって祈り、神の愛のうちに自分を守り、私たちの主キリ
じ だい
ひとびと
て がみ
こんなん
ありさま
じ
き
し
スト・イエスが永遠のいのちへ導く憐れみを待ち望みなさい。
お
じ だい
く
「パウロからテモテへの手紙」より
お
終わりの時代の人々の有様
ひとびと
じ ぶん じ しん
あい
きんせん
あい
ふ
こうまん
かみ
終わりの時代には困難な時期が来ることを知ってもらいたい。そのと
りょうしん
さか
かんしゃ
し
かみ
おそ
なさ
き、人々は自分自身を愛し、金銭を愛し、ほらを吹き、高慢になり、神
し
わ かい
ちゅうしょう
む せっせい
そ ぼう
ぜん
きら
ひと
をあざけり、両親に逆らい、感謝を知らず、神を畏れなくなり、情けを
うら ぎ
けいそつ
かみ
かいらく
あい
しんじんふか
よそお
知らず、和解せず、中傷し、無節制になり、粗暴になり、善を嫌い、人
を裏切り、軽率になり、うぬぼれ、神よりも快楽を愛し、信心深く装い
224
じつ
ひ てい
しん り
にんしき
たっ
い
かた
もくてき
しんこう
まな
かんよう
あい
にんたい
ながら、その実を否定するようになります。また、いつも学んではいるが、
しの
おし
いつになっても真理の認識に達することができません。
た
耐え忍びなさい
わたし
わたし
はく
しかしあなたは、私の教え、生き方、目的、信仰、寛容、愛、忍耐に
したが
がい
く なん
き
なん
はくがい
わたし
た
き
従い、アンテオケ、イコニオム、ルステラで私にふりかかったような迫
しゅ
わたし
すく
だ
害と苦難によくついて来ました。何というひどい迫害に私は耐えて来た
したが
しんじんぶか
い
ひと
みな
ことでしょう。しかし、主はいっさいのことから私を救い出してくださ
たし
いました。
あくにん
さ
ぎ
し
確かに、キリスト・イエスに従って信心深く生きようとする人は皆、
はくがい
あく
お
じ ぶん
まな
かくしん
迫害されます。しかし、悪人や詐欺師は、だましだまされながら、ます
まな
し
ます悪へと落ちていきます。けれどもあなたは、自分が学んで確信した
ことにとどまってください。あなたは、それをだれから学んだかを知っ
ているからです。
225
エチオピアの難民キャンプ
罪の結果は死です。しかし、神が無償で与えてくださる贈物は、
私たちの主キリスト・イエスによる永遠のいのちです。
ローマの信者への手紙 6:23
226
*
「十字架のことば」 神の子キ
リストが十字架の死により、人類
に罪の赦しを与えた福音。
ちから
ふくいん
くに
す く
ひとびと
第十二章 キ
リストの救い
ふくいん
福音の 力
かみ
ちから
わたし
ふくいん
はじ
もの
て がみ
すく
パウロの手紙より
しん
ふくいん
かみ
ぎ
キリスト・イエスの福音は、どの国の人々にも、信じる者すべてを救
しめ
ぎ
はじ
お
しんこう
う神の力です。それゆえ、私は福音を恥としません。福音には、神の義
じつげん
しん
ぎ じん
ひと
い
か
が示されています。しかし、その義は、初めから終わりまで信仰をとお
ほろ
ゆ
ひとびと
おろ
すく
して実現されるのです。「信じて義人となった人は生きる」と書いてあ
* じゅうじ か
るとおりです。
わたし
じつ
かみ
ちから
せいしょ
か
「十字架のことば」は滅び行く人々にとっては愚かなものですが、救
われる私たちにとっては、実に神の力なのです。聖書にこう書いてあり
227
わたし
ます。
かしこ
かみ
もの
かしこ
ち しゃ
ち
え
う
こわ
「私(神)は、知者の知恵を打ち壊し、
かみ
よ
ち
え
おろ
じ じつ
よ
ひとびと
賢い者の賢さをむなしいものにする。」
ち しゃ
がくしゃ
よ
けんじん
どこに知者がいる。どこに学者がいる。どこにこの世の賢人がいますか。
じ ぶん
ち
え
かみ
し
かみ
ち
え
神はこの世の知恵を愚かになさったではありませんか。事実、世の人々
かみ
の
つた
おろ
しん
ひと
が自分の知恵で神を知ることができないのも、神の知恵によるもので
すく
さだ
き せき
もと
じん
ち
え
ついきゅう
す。そこで神は、宣べ伝えられることばの愚かさをとおして信じる人を
じん
救おうと、定められたのです。
じゅうじ か
の
つた
ひと
ユダヤ人は奇跡やしるしを求め、ギリシヤ人は知恵を追求しますが、
わたし
た
ひと
おろ
わたし
私たちは十字架につけられたキリストを宣べ伝えます。それは、ある人
かみ
まね
もの
かみ
ちから かみ
ち
え
にとってはつまずき、他の人にとっては愚かなものでしょうが、私たち
かみ
おろ
ひと
ち
え
かみ
よわ
ひと
神に招かれた者には、だれであろうと、神の力、神の知恵です。なぜなら、
つよ
神によるこの愚かさは人よりも知恵があり、神によるこの弱さは人より
も強いからです。
228
つみ
こんげん
罪の根源
ひとびと
ひとびと
しん り
ふ
ぎ
ふ しん
おさ
ふ
ぎ
たい
かみ
いか
かみ
てん
し
しめ
さて、人々のあらゆる不信と不義に対して、神の怒りは天から示され
ひとびと
あき
かみ
しめ
め
み
ます。人々は真理を不義で押えています。そもそも神について知りうる
かみ
せいしつ
かみ
えいえん
ちから
しんせい
てん ち そうぞう
ことがらは人々に明らかです。それは、神が示されたからです。目に見
ひ ぞうぶつ
あらわ
ひと
し
えない神の性質、すなわち神の永遠の力と神性は、天地創造のときから、
ひとびと
べんかい
かみ
し
かみ
被造物のうちにはっきりと現れており、人によく知られています。した
あが
かんしゃ
がって、人々は弁解ができません。なぜなら、神を知りながら、神とし
おも
む
ち
こころ
くら
じ ぶん
かしこ
い
て崇めることもせず、また、感謝することもしません。かえって、その
おろ
えいえん
かみ
えいこう
ほろ
ゆ
にんげん
とり
けもの
思いはくだらなくなり、無知な心は暗くなりました。自分では賢いと言
は
ぐうぞう
かれ
と
か
よくじょう
ふ けつ
かれ
たが
いながら愚かになり、永遠なる神の栄光を、滅び行く人間や、鳥、獣、
かみ
這うものなどの偶像と取り替えてしまいました。
からだ
けが
かれ
かみ
しん り
いつわ
そこで神は、彼らの欲情のままに不潔をなすにまかせられ、彼らは互
と
か
つ く り ぬし
か
つく
おが
つか
いにその体を汚すようになりました。それは、彼らが神の真理を偽りと
つ く り ぬし
えいえん
かた
取り替え、創造主の代わりに造られたものを拝み、これに仕えたからで
す。創造主こそ、永遠にほめたたえられる方です。アーメン。
229
ひと
つみ
人の罪
ふ
かみ
し ぜん
かれ
は
か
じょうよく
おな
だんせい
じょせい
しぜん
じょせい
かんけい
し ぜん
す
それで、神は彼らを恥ずべき情欲にまかせられました。女性は自然な
かんけい
たが
じょう
も
おとこ
おとこ
おこな
みだ
関係を不自然なものに変え、同じく男性も、女性との自然な関係を捨て
おこな
とうぜん
ひと
むく
かみ
みと
み
う
かみ
かれ
だ らく
おも
て、互いに情を燃やし、男と男とがけがらわしいことを行い、その乱れ
さら
た行いの当然の報いを身に受けています。
わた
かれ
更に、人は神を認めようとしないので、神は彼らを堕落した思いに
ひ
ひと
ふ せい
あく
あくねん
み
さつ い
引き渡され、それで、彼らはしてはならないことをするようになりまし
ふ
わ
じゃねん
ひと
かげぐち
い
ひと
かみ
た。人は、あらゆる不正、悪、むさぼり、悪念に満ち、ねたみ、殺意、
ひと
あなど
こうまん
じ まん
あく じ
おや
さか
む
ち
不和、うそ、邪念にあふれ、人の陰口を言い、人をそしり、神をうらみ、
ふ せいじつ
む じょう
む
じ
ひ
おこな
し
あ
人を侮り、高慢であり、自慢をし、悪事をはかり、親に逆らい、無知、
かみ
さだ
し
じ ぶん
おこな
おこな
不誠実、無情、無慈悲です。また、このようなことを行えば死に当たる
ひと
こころ
どう い
という神の定めを知りながら、自分でそれを行うばかりか、それを行う
人に心から同意しています。
230
かみ
あま
神を甘くみるな
た にん
ひと
じつ
じ ぶん じ しん
い
わけ
つみ
さだ
それゆえ、他人をさばく人よ、あなたは言い訳できません。あなたは、
た にん
おな
わたし
し
かみ
他人をさばくことによって、実は自分自身を罪に定めています。さばく
おこな
もの
しん り
したが
ただ
あなたも同じことをしているからです。私たちは知っています、神はこ
ひとびと
みずか
おな
のようなことを行う者を、真理に従って正しくおさばきになるというこ
かんが
とを。
ひと
かみ
のが
かみ
あわ
考えなさい、このようなことをする人々をさばき、自ら同じことをす
く
あらた
みちび
し
ゆた
じ あい
かん
る人よ、あなたは神のさばきを逃れるのでしょうか。それとも、神の憐
よう
にんたい
あま
がんこ
く
あらた
こころ
れみがあなたを悔い改めに導くことも知らないで、その豊かな慈愛と寛
かみ
ただ
あらわ
み いか
じ ぶん
つ
あ
容と忍耐とを甘くみるのですか。頑固な、悔い改めない心によって、あ
ひとり
おこな
したが
むく
なたは神の正しいさばきの現れる御怒りを、自分のために積み上げてい
かみ
ます。
ぜん
おこな
つづ
かみ
えいこう
ほま
ふ めつ
もと
もの
神 は 一 人 ひ と り に、 そ の 行 い に 従 っ て お 報 い に な り ま す。 す な わ ち、
にんたい
えいえん
あた
し よく
はんこうしん
しん り
したが
忍 耐 を も っ て 善 を 行 い 続 け、 神 か ら の 栄 光 と 誉 れ と 不 滅 と を 求 め る 者 に
は、 永 遠 の い の ち を お 与 え に な り、 私 欲 や 反 抗 心 に か ら れ、 真 理 に 従 わ
231
おこな
もの
ふ
ぎ
したが
もの
ひと
いか
いきどお
あた
かんなん
く のう
あた
あく
な い で 不 義 に 従 う 者 に は、 怒 り と 憤 り を お 与 え に な り ま す。 す べ て 悪 を
ぜん
おこな
もの
えいこう
ほま
へいあん
あた
行 う 者 に は、 ど の よ う な 人 で あ ろ う と、 患 難 と 苦 悩 が 与 え ら れ、 す べ て
かみ
へんけん
善 を 行 う 者 に は、 だ れ で あ ろ う と、 栄 光 と 誉 れ と 平 安 が 与 え ら れ ま す。
ひと
か
神には偏見がないからです。
ただ
よ げんしゃ
正しい人はいない
つぎ
ただ
ひと
次のように、預言者が書いたとおりです。
さと
ひと
かみ
もと
ひと
「正しい人はいない。ひとりもいない。
ひと
かみ
まよ
で
悟る人はいない。神を求める人もいない。
む えき
もの
すべての人が神から迷い出て、
ぜん
おこな
ひと
だれもかれも無益な者となった。
ひと
のど
ひら
はか
善を行う人はいない。ただのひとりもいない。
した
た にん
あざむ
どく
人の喉は開いた墓のようであり、
くちびる
舌で他人を欺き、
その唇にはまむしの毒がある。
232
ひと
くち
あし
へい わ
ち
のろ
なが
は かい
みち
かみ
し
にがにが
ひ さん
おそ
はや
つみ
み
おか
人の口は、呪いと苦々しさで満ちている。
みち
その足は血を流すのに速く、
ひと
その道には破壊と悲惨がある。
こころ
人は平和の道を知らない。
ひと
その心には神への畏れがない。」
かみ
おんけい
かみ
えいこう
う
あがな
このように、すべての人は罪を犯したため、神の栄光を受けられなく
む しょう
ぎ
ち
しん
ひと
つみ
つぐな
なっています。しかし、神の恩恵により、キリスト・イエスの贖いのお
ぎ
じゅうじ か
かげで、無償で義とされるのです。
しんこう
信仰による義
かみ
もの
しゅ
し にん
なか
かた
しん
わたし
神はキリストをその十字架の血によって、信じる人のために罪を償う
そな
じつ
供え物となさいました。
ぎ
みと
わたし
つみ
し
わた
わたし
実に、主イエスを死人の中からよみがえらせた方を信じれば、私たち
ぎ
は義と認められます。イエスは、私たちの罪のために死に渡され、私た
ちが義とされるために、よみがえられたからです。
233
へい わ
え
わたし
しんこう
しゅ
ぎ
かみ
たい
このように、私たちは信仰によって義とされたのですから、神に対し
わたし
おんけい
しんこう
みちび
い
て平和を得ています。これは主キリスト・イエスのおかげです。キリス
かみ
えいこう
き ぼう
ほこ
トのおかげで私たちはこの恩恵へ、信仰によって導き入れられました。
おんけい
わたし
よわ
み がわ
そして神の栄光への希望を誇りにしています。
かみ
神の恩恵
じつ
わたし
かみ
さか
さだ
とき
し
実にキリストは、私たちが弱かったときに身代りになってくださいま
ただ
ひと
し
もの
おん
した。私たちが神に逆らっていたころ、定められた時に、キリストは死
じん
お
もの
んでくださいました。正しい人のために死ぬ者はほとんどいません。恩
わたし
つみ
わたし
人のためにはいのちを惜しまない者が、あるいはいるかもしれません。
し
かみ
わたし
あい
しめ
しかし、私たちがまだ罪びとであったとき、キリストが私たちのために
わたし
ち
ぎ
死んでくださったことにより、神は私たちに愛を示されました。
かみ
いか
すく
このように、私たちはすでにキリストの血によって義とされたのです
わたし
かみ
てき
み
こ
し
かみ
わ かい
から、キリストによって神の怒りから救われるのは、なおさらのことで
す。私たちが神の敵であったときでさえ、御子の死によって神と和解さ
234
すく
わ かい
いま
しゅ
み
こ
せていただいたのであれば、和解させていただいた今は、御子のいのち
いま
わ かい
わたし
かみ
ほこ
によって救われるのはなおさらのことです。そのうえ、主キリスト・イ
けっ か
し
かみ
む しょう
あた
おくりもの
わたし
エスによって今や和解をいただいた私たちは、キリストによって神を誇
つみ
るのです。
しゅ
えいえん
しん
もの
なん
ばつ
罪の結果は死です。しかし、神が無償で与えてくださる贈物は、私た
す
いま
ちの主キリスト・イエスによる永遠のいのちです。
よく
欲を捨てなさい
う
すく
かみ
れい
つみ
こういうわけで、今や、キリスト・イエスを信じている者は、何の罰
も受けません。
ちから
わたし
かいほう
つみ
たい
にんげん
よわ
キリスト・イエスによって救いをもたらす神の霊のはたらきが、罪と
し
かみ
いまし
かんせい
かみ
な
死の力から私たちを解放したからです。罪に対する人間の弱さのために
ひと
つみ
と
のぞ
み
こ
つみぶか
にんげん
おな
すがた
神の戒めが完成できなかったことを、神は成してくださいました。すな
よ
おく
つみ
しょばつ
わたし
じ ぶん
わち、人の罪を取り除くために御子イエスを罪深い人間と同じ姿でこの
世に送り、イエスを罪として処罰されたのです。それは私たちが自分の
235
よく
かみ
じ ぶん
せいれい
おも
したが
したが
あゆ
い
わたし
うち
じ ぶん
かみ
もと
いまし
ようきゅう
み
欲ではなく神の聖霊に従って歩み、私たちの内に、神の戒めの要求が満
にんげん
たされるためでした。
かんが
せいれい
したが
い
ひと
せいれい
もと
かんが
人間が自分の思いに従って生きるならば、自分が求めることをもっぱ
にんげん
おも
したが
し
ほろ
お
せいれい
したが
ら考え、聖霊に従って生きる人は、聖霊が求めることをひたすら考えま
へいあん
にんげん
よっきゅう
かみ
はんこう
かみ
す。人間の思いに従えば、死と滅びに終わりますが、聖霊に従えばいの
いまし
したが
したが
じ ぶん
ちと平安があります。なぜなら、人間の欲求は神に反抗するもので、神
よっきゅう
し はい か
もの
かみ
うち
よろこ
す
がた
よく
の戒めに従わないからです。いや、従うことができないのです。自分の
がた
欲求の支配下にある者は、神に喜ばれるはずがありません。
せいれい みちび
せいれい
聖霊の導き
かみ
せいれい
みちび
れい
も
もの
神の聖霊があなた方の内に住んでおられるかぎり、あなた方は、欲で
がた
うち
はなく聖霊に導かれています。キリストの霊を持たない者は、キリスト
つみ
し
れい
ぎ
のものではありません。しかし、キリストがあなた方の内におられるな
し にん
なか
かみ
らば、からだは罪のゆえに死んでいても、あなたの霊が、義のゆえにい
のちとなっています。もし、イエスを死人の中からよみがえらせた神の
236
せいれい
がた
かた
うち
す
がた
うち
せいれい
し にん
なか
聖霊が、あなた方の内に住んでおられるならば、キリストを死人の中か
がた
し
からだ
い
きょうだい
らよみがえらせた方は、あなた方の内にいるその聖霊によって、あなた
じ ぶん
よく
かんが
したが
い
がた
ほろ
せい
方の死ぬべき体をも生かしてくださるのです。ですから、兄弟たちよ、
れい
じ ぶん
よく
かんが
た
がた
い
自分の欲や考えに従って生きるなら、あなた方は滅びます。しかし、聖
かみ
せいれい
みちび
もの
みな
かみ
こ
がた
霊によって自分の欲や考えを絶つならば、あなた方は生きます。
おそ
つみ
ど れい
かみ
こ
せいれい
う
神の聖霊に導かれる者は皆、神の子なのです。あなた方は、もはやあ
せいれい
わたし
かみ
てん
とう
ちち
よ
の恐ろしい罪の奴隷ではなく、神の子としての聖霊を受けたのです。そ
せいれい
わたし
かみ
こ
して聖霊によって私たちは、神を「天のお父さま。父よ!」と呼ぶこと
あか
こ
よ
つ
わたし
ができるのです。この聖霊こそは、私たちが神の子どもであることを、
かみ
くに
よ
つ
いじょう
こうえい
証ししてくださいます。もし子どもであれば、世継ぎでもあります。私
く なん
う
きょうどう
よ
つ
たちが神の国の世継ぎである以上、キリストとともに光栄をうけるため
に、その苦難をもともに受けるなら、私たちは、キリストと共同の世継
ぎなのです。
237
き ぼう
希望
わたし かんが
くら
げんざい
と
た
き ぼう
くる
すく
しょうらいわたし
あた
き ぼう
私は考えます。現在のいろいろな苦しみは、将来私たちに与えられる
えいこう
わたし
栄光に比べると、取るに足りません。
み
しん
き ぼう
げん
も
私たちはこのような希望によって救われているのです。希望している
ひと
き ぼう
わたし
め
み
ものが見えるのなら、それは真の希望ではありません。現に持っている
のぞ
いじょう
にんたい
ま
のぞ
ものを、人はどうしてさらに希望するでしょう。私たちは、目に見えな
せいれい
よわ
わたし
たす
わたし
いの
いものを望んでいる以上、忍耐して待ち望まなければなりません。
せいれい
じ しん
あらわ
せつ
聖霊も弱い私たちを助けてくださいます。私たちはどう祈ったらよい
わたし
ひと
こころ
み
ぬ
かみ
かわかりませんが、聖霊ご自身が、ことばに表せない切なるうめきをもっ
せいれい
おも
なん
し
せいれい
かみ
て、私たちのためにとりなしてくださるのです。人の心を見抜く神は、
みこころ
したが
わたし
聖霊の思いが何であるかをよく知っておられます。なぜなら、聖霊は神
の御心に従って、私たちのためにとりなしてくださるからです。
238
しょうらい えいこう
し
将 来 の栄光
わたし
えき
かみ
かみ
ばん じ
あい
はたら
わたし
わたし
かみ
ご けいかく
私たちは知っています。神を愛する私たちのために、すべてのこと
したが
まね
こ
おな
すがた
かみ
まえ
さだ
えら
ひと
み
が益となるように、神が万事を働かせることを。私たちは神の御計画に
み
従 って招かれたものだからです。神は前もってお選びになった人たち
こ
おお
きょうだい
ちょうし
かみ
まえ
さだ
を、御子イエスのかたちと同じ姿にするよう定められました。それは御
ひと
まね
だ
まね
だ
ひと
さら
ぎ
ぎ
子が多くの兄弟の長子になられるためです。神はこれら前もって定めら
ひと
さら
えいこう
ぜったい
あた
かみ
わたし
み かた
い
れた人たちを招き出し、招き出された人たちを更に義とし、義とされた
あい
なに
人たちには更に栄光をお与えになりました。
かみ
神の愛の絶対
わたし
わたし
てきたい
わたし
じ ぶん
それでは、私たちは何といいましょうか。神が私たちの味方である以
じょう
み
こ
お
し
わた
かた
み
こ
上、だれが私たちに敵対できますか。私たちすべてのために、ご自分の
わたし
めぐ
御子をさえ惜しまずに死に渡された方が、どうして、御子といっしょに
すべてのものを私たちに恵まれないはずがありましょうか。
239
かみ
えら
かみ
つみ
わたし
さだ
うった
し
ひと
ぎ
だれが、神に選ばれた私たちを訴えることができましょう。人を義と
わたし
してくださるのは神なのです。
かみ
みぎ
わたし
だれが、私たちを罪びとと定めることができましょう。死んでよみが
あい
ひ
はな
く
えられたキリスト・イエス、神の右にいますキリスト・イエスが、私た
わたし
ちのためにとりなしをしてくださるではありませんか。
はくがい
う
はだか
き けん
だれが、私たちをキリストの愛から引き離すことができましょう。苦
なん
つるぎ
わたし
い ち に ちじゅう
難ですか。なやみですか。迫害ですか。飢えですか。裸ですか。危険で
しゅ
すか。剣ですか。
し
ちょくめん
ひつじ
み
「主よ。私たちは、あなたのために一日 中
あい
かた
わたし
かがや
しょうり
え
死に直面し、ほふられる羊のように見られています。」 か
わたし
と書いてあるとおりです。しかし、これらすべてのうちにいても、私た
わたし
かくしん
し
てん し
しゅけんしゃ
げん
ちを愛してくださる方によって、私たちは輝かしい勝利を得ています。
ざい
み らい
ちから
うえ
した
私は確信しています。死も、いのちも、天使たちも、主権者たちも、現
ひ ぞうぶつ
わたし
しゅ
在のものも、未来のものも、力あるものも、上にあるものも、下にある
かみ
あい
わたし
ひ
はな
ぜったい
ものも、そのほかいかなる被造物も、私たちの主キリスト・イエスにあ
る神の愛から、私たちを引き離すことは絶対にできないのです!
240
私たちは忍耐して待ち望まなければなりません。
ローマの信者への手紙 8:25
アザミ (ゲラサ地方)
241
ヨセフの家付近の石灰石に這う蔓草 (ナザレ)
あなた方はこの世と妥協したり、世にならってはなりません。
ローマの信者への手紙 12:2
242
かみ
あわ
し ゅ
たよ
し ん
がた
ねが
も の
て がみ
じ
使徒たちの手紙より
し と
第十三章 主
イエスを信じる者へ
まこと れいはい
真 の礼拝
きょうだい
かみ
よろこ
きよ
い
ささ
兄弟たち、神の憐れみに頼ってあなた方にお願いします。どうぞ、自
ぶん
まこと
れいはい
がた
よ
だきょう
分のいのちを神に喜ばれる、聖い、生きたいけにえとしてお献げなさい。
よ
じ ぶん
こころ
い
か
あたら
それこそ、あなたのなすべき真の礼拝です。あなた方はこの世と妥協し
じ ぶん
か
なに
よ
かみ
よろこ
たり、世にならってはなりません。むしろ、自分の心を入れ替え、新し
かんぜん
さと
かみ
みこころ
なん
し
い自分に変えていただきなさい。そして、何が良いことで神に喜ばれ、
また完全なものかを悟り、神の御心は何であるかを知るようになりなさ
い。
243
善によって悪に勝ちなさい。
あい
ぜん
おこな
善を行いなさい
いつわ
きょうだいあい
こころ
たが
あく
にく
あい
あ
ただ
そんけい
かた
こころ
むす
愛には偽りがあってはなりません。悪を憎み、正しいことに堅く結び
つ
たが
あい て
ゆうせん
きんべん
はげ
れい
も
しゅ
つか
き ぼう
付きなさい。兄弟愛をもって心から互いに愛し合い、尊敬の心をもって
よろこ
く なん
た
しの
いの
こま
しんじゃ
互いに相手を優先させなさい。勤勉に励み、霊に燃え、主に仕え、希望
たす
ひと
こころあたた
がた
はくがい
もの
のうちに喜び、苦難を耐え忍び、たゆまず祈りなさい。困っている信者
しゅくふく
しゅくふく
のろ
よろこ
ひと
を助け、よその人を心暖かくもてなしなさい。あなた方を迫害する者を、
よろこ
な
ひと
な
おも
も
み ぶん
ひく
祝福しなさい。祝福するのであって、呪ってはなりません。喜ぶ人とと
か
おも
たか
もに喜び、泣く人とともに泣きなさい。
あく
ひと
悪に勝ちなさい
たが
まじ
じ ぶん
かしこ
おも
たい
互いに一つ思いになり、高ぶった思いを持たず、かえって身分の低い
ひとびと
あく
あく
かえ
ひと
よ
みと
そんちょう
がた
人々と交わりなさい。「自分を賢いと思うな。」です。だれに対してでも、
かぎ
ひと
へい わ
す
悪に悪を返さず、人が良いと認めることを尊重しなさい。あなた方は、
できる限りすべての人と平和に過ごしなさい。
244
あい
ひと
じ ぶん
ふくしゅう
し かえ
わたし
かみ
いか
わたし
まか
ほうふく
しゅ
か
い
愛する人たち、自分で仕返しせずに、神の怒りに任せなさい。こう書
てき
う
た
かわ
の
いてあります。「『復讐は私のすることである。私が報復する』と主は言
かれ
あたま
も
すみ び
つ
あく
われる。」「もしあなたの敵が飢えたなら食べさせ、渇いたなら飲ませな
ま
ぜん
うえ
やみ
あく
か
すく
だ
あい
み
こ
さい。そうすることは、彼の頭に燃える炭火を積むことである。」悪に
わたし
けんりょく
負けてはいけません。善によって悪に勝ちなさい。
かみ
キリストはすべての上
ちち
し はい
なか
うつ
み
こ
わたし
あがな
父なる神は、私たちを闇の権力から救い出して、愛する御子イエスの
おうこく
つみ
ゆる
え
み
こ
み
かみ
王国の支配の中に移してくださいました。御子によって私たちは、贖い
つく
まえ
そんざい
み
こ
を、すなわち罪の赦しを得ています。御子は、見えない神のかたちであ
ばんぶつ
てん
ち
み
み
り、すべてのものが造られる前から存在しておられました。御子にあっ
おう ざ
しゅけん
し はい
けん い
つく
て万物が――天にあるもの、地にあるもの、見えるもの、見えないもの、
ばんぶつ
み
こ
み
こ
つく
み
こ
王座も、主権も、支配も、権威も、すべて――造られました。すなわち、
さき
そんざい
み
こ
な
た
万物は御子によって、御子のために造られたのです。御子はあらゆるも
のの先に存在し、あらゆるものは御子によって成り立っています。また、
245
み
こ
し しゃ
なか
しんじゃ
さいしょ
う
きょうかい
かた
み
こ
御子はそのからだである信者たち、すなわち教会のかしらです。御子は
かれ
だいいち
ち
い
つ
がた
あいだ
はじめであり、死者の中から最初に生まれた方です。それは、すべてに
おいて彼が第一の地位に即かれるためです。
も はん
キリストの模 範
かみ
み ぶん
かみ
ひと
もの
キリスト・イエスのうちにみられたこのことを、あなた方の間でも、
こころ
こ しゅ
おも
じ ぶん
けん り
す
さ
心がけてください。キリストは神の身分でありながら、神と等しい者
み ぶん
にんげん
おな
であることを固守しようとは思わず、かえって自分の権利を捨て去り、
にんげん
せいしつ
あらわ
し
いた
したが
じつ
じゅうじ か
し
いた
しもべの身分になって、人間と同じものになられました。へりくだり、
じゅうじゅん
かみ
たか
あ
な
人間の性質をもって現れ、死に至るまで従い、実に十字架の死に至るま
な
あた
な
てん
で、従順でした。それゆえ、神はキリストを高く上げて、すべての名に
ち
ち
した
まえ
まさる名をお与えになりました。それはキリストの名のもとに、天にあ
くち
しゅ
みと
るもの、地にあるもの、地の下にあるものすべてが、イエスの前にひざ
えいこう
ちち
かみ
き
をかがめ、すべての口が、「キリスト・イエスこそ主である」と認めて、
栄光を父なる神に帰するためです。
246
ふる
じ ぶん
がた
す
「古い自分」を捨てなさい
もと
かみ
みぎ
ざ
いじょう
てん
さて、あなた方は、キリストとともによみがえらされた以上、天の
ちじょう
こころ
む
てん
こころ
と
がた
ふる
ものを求めなさい。そこでは、キリストが神の右に座しておられます。
じ ぶん
し
がた
あたら
地上のものに心を向けず、天のものに心を留めなさい。あなた方の古い
かみ
うち
かく
わたし
あらわ
自分は死んだのであって、あなた方の新しいいのちは、キリストととも
がた
うち
えいこう
ちじょうてき
あらわ
みだ
おこな
ふ
に神の内に隠されています。私たちのいのちであるキリストが現れると
じ ぶん
き、あなた方も、キリストとともに栄光のうちに現れます。
かん
じょうよく
わる
よくぼう
す
さ
ですから、自分の内にある地上的なもの、すなわち、淫らな行い、不
けつ
ぐうぞう
つか
ぐうぞうれいはい
つみ
潔な考え、情欲、悪い欲望、およびむさぼりを捨て去りなさい。むさぼ
かみ
いか
くだ
がた
い ぜん
りは偶像に仕えること、すなわち偶像礼拝の罪にほかならない。これら
なか
おこな
ひ
す
のことのために、神の怒りは下るのです。あなた方も、以前このような
いま
いか
いきどお
あく い
くち
で
みだ
ことの中にいたときには、それらを行って日を過ごしていました。しか
ふる
たが
じ ぶん
おこな
ぬ
す
あたら
ひと
き
し、今は、怒りも憤りも悪意も、そしりや、口から出る淫らなことばを
がた
すべてやめなさい。互いにうそをついてはいけません。
あ な た 方 は、 古 い 自 分 を そ の 行 い と と も に 脱 ぎ 捨 て、 新 し い 人 を 着 た
247
しん
たっ
あたら
ち しき
ひと
つ く り ぬし
じん
に
じん
い ほ う じん
あたら
ど れい
じ ゆうじん
のです。新しい人は、創造主のかたちに似せられてますます新しくされ、
真の知識に達するのです。
く べつ
そこには、もはや、ギリシヤ人とユダヤ人、異邦人、奴隷、自由人と
か てい
かた
かみ
えら
きよ
あい
いうような区別はありません。キリストがすべてであり、すべてのうち
ひと
におられるのです。
あら
新たな人、家 庭
ふか
どうじょうしん
しんせつ
けんそん
にゅうわ
かんよう
み
つ
たが
このように、あなた方は神に選ばれ、聖められ、愛されているのです
しの
ふ まん
ゆる
あ
しゅ
がた
ゆる
から、深い同情心、親切、謙遜、柔和、寛容を身に着けなさい。互いに
がた
あい
たが
くわ
ゆる
あ
あい
かんぜん
むす
あ
忍びあい、不満があっても、赦し合いなさい。主があなた方を赦してく
うえ
ださったように、あなた方も互いに赦し合いなさい。
へい わ
がた
こころ
し はい
これらすべての上に、愛を加えなさい。愛は、すべてを完全に結び合
へい わ
も
がた
まね
ひと
からだ
わせるきずなです。また、キリストの平和があなた方の心を支配します
ように。この平和を持つために、あなた方は招かれて一つ体とされたの
です。
248
かんしゃ
うち
こころ
ゆた
も
やど
ち
え
つ
たが
おし
たが
いまし
がた
感謝の心を持つようにしなさい。また、キリストのことばがあなた方
し へん
さん か
れいてき
うた
こころ
かんしゃ
かみ
む
うた
の内に豊かに宿りますように。知恵を尽くして互いに教え、互いに戒め、
おこな
がた
しゅ
な
詩篇と賛歌と霊的な歌で、心からの感謝を神に向かって歌いなさい。こ
ちち
かみ
かんしゃ
とばにせよ、行いにせよ、あなた方のすることはすべて主イエスの名に
つま
おっと
したが
しゅ
よ
よってし、イエスによって、父なる神に感謝しなさい。
おっと
つま
あい
りょうしん
あ
したが
しゅ
よろこ
妻たちよ、夫に従いなさい。それは主にあって良いことだからです。
こ
夫たちよ、妻を愛しなさい。つらく当たってはいけません。
えいえん
てつがく
がた
子たちよ、どんなことでも、両親に従いなさい。それは主に喜ばれる
ことだからです。
み
見えないものが永遠
き
とら
にんげん
い
つた
気をつけなさい。むなしいだましごとや哲学によって、あなた方はだ
よ
し はい
しょれいりょく したが
もと
れにも捕えられないようにしなさい。それらは人間の言い伝えによるも
かみ
かんぺき
しんせい
み
ぐ たいてき
み
ので、世を支配する諸霊力に従っており、キリストに基づくものではあ
りません。キリストにこそ、神の完璧な神性が満ちあふれ、具体的に見
249
*肉体 直訳「外なる人」
**体 直訳「幕屋」
からだ
し はい
き
けんい
お
がた
わたし
かんぜん
*にくたい
し だい
おとろ
える体となり、そして、あなた方もキリストにあって完全なものです。
わたし
キリストはすべての支配や権威のかしらです。
わたし
うち
ひと
ひ
ひ
あたら
いま
それゆえ、私たちは気を落としません。私たちの肉体は次弟に衰えて
かる
かんなん
し
おも
えいえん
えいこう
わたし
いっても、私たちの「内なる人」は日に日に新しくされています。今の
わたし
め
み
み
しばらくの軽い艱難は、やがてはかり知れない重さの永遠の栄光を私た
み
いち じ てき
み
えいえん
ちにもたらしてくれます。私たちが目ざすのは見えるものではなく、見
そんぞく
す
**からだ ほろ
かみ
す
えないものです。見えるものは一時的なもので、見えないものは永遠に
くに
存続するからです。
てん
ちじょう
天の国へのあこがれ
わたし
てん
わたし
し
ひと
て
私たちの地上の住まいであるこの体が滅びても、神がくださる住ま
えいえん
す
わたし
てん
あた
す
うえ
き
いが天にあることを、私たちは知っています。これは人の手によらない
ちじょう
からだ
き
永遠の住まいです。私たちは、天から与えられる住まいを上に着たいと、
わたし
はだか
この地上の体にあってあこがれてうめいているのです。それを着せられ
たとき、私たちはもはや裸のままではいません。
250
からだ
あいだ
てん
わたし
あた
おも に
す
お
うえ
き
はだか
この体にいる間、私たちは重荷を負い、うめいています。裸のままで
し
の
わたし
はないよう、天から与えられる住みかを上に着たいのです。それによっ
し
あ
かみ
かみ
ほしょう
て、この死ぬべきものがいのちに呑まれてしまうためです。私たちをこ
せいれい
あ
からだ
す
あいだ
しゅ
はな
す
のことへと仕上げてくださったのは神です。そして、神はその保証とし
い
わたし
て、聖霊を与えてくださったのです。
しんこう
信仰に生きる
し
こころづよ
め
み
こういうわけで、私たちはこの体に住んでいる間、主から離れ住んで
しんこう
あゆ
わたし
こころづよ
いることを知りながらも、つねに心強いのです。目に見えるものによら
からだ
はな
しゅ
す
おも
ず、信仰によって歩んでいるからです。私たちは、心強い。そして、む
からだ
す
はな
す
しゅ
よろこ
もの
しろこの体を離れて、主のもとに住みたいと思っています。ですから、
わたし
みな
ざ
まえ
た
この体に住もうと、離れ住もうと、ひたすら主に喜ばれる者でありたい
わたし
ひと り
ぜん
あく
からだ
のです。なぜなら、私たちは皆、キリストのさばきの座の前に立たなけ
す
おこな
おう
むく
う
ればなりません。それは、私たち一人ひとりが、善であれ悪であれ、体
を住まいとしていたときに行ったことに応じて、
報いを受けるためです。
251
かみ
たい
い
おそ
キリストのために生きる
わたし
と
すす
かみ
し
わたし
ひとり
しん り
う
い
し
私たちは神に対する畏れを知っているので、真理を受け入れるよう、
ひとびと
わたし
がた
し
のぞ
人々に説き勧めます。神は、私たち一人ひとりをありのままに知ってい
かんが
あい
わたし
と
かこ
かた
ひと
か
し
ます。私も、あなた方にありのままに知られたいと、望んでいます。な
わたし
ぜなら、キリストの愛が私たちを取り囲んでいるからです。
いじょう
ひと
し
かた
私たちはこう考えます。ひとりの方がすべての人に代わって死んで
ひと
か
し
い
わたし
くださった以上、すべての人が死んだことになります。その方が、すべ
じ ぶん じ しん
い
じ ぶん
か
し
ての人に代わって死んでくださったのは、生きている私たちが、もはや
かた
い
み かた
い
自分自身のために生きるのではなく、自分たちに代わって死んでよみが
し しゃ
にんげんてき
えってくださった方のために生きるためなのです。
しんじゃ
信者はキリストの使 者
わたし
にんげんてき
ひょうじゅん
り かい
いま
それで、私たちは、これからはだれをも人間的な見方でみません。以
ぜん
前にキリスト・イエスを人間的な標準で理解していたとしても、今はも
252
あたら
そうぞう
もの
ふる
す
さ
しん
あたら
はやそのようにキリストをみません。キリストを信じるなら、だれでも、
かみ
で
わたし
じ ぶん
わ かい
さら
新しく創造された者です。古いものは過ぎ去り、すべてが新しくなった。
かみ
これらはすべて神から出ることです。
た
ひと
じ ぶん
わ かい
わたし
わ かい
つと
神は、キリストをとおして私たちをご自分と和解させられました。更
かみ
よ
じ ぶん
わ かい
に、他の人もご自分と和解するよう、私たちにその和解の務めをゆだね
ひとびと
つみ
せきにん
と
わ かい
ふくいん
わたし
られました。すなわち、神はキリストによって世をご自分と和解させ、
わたし
し しゃ
人々に罪の責任を問うことがないという、和解の福音のことばを私たち
かみ
わたし
わ かい
すす
かみ
つみ
なん
にゆだねられたのです。それゆえ、私たちはキリストの使者なのです。
かみ
神は私たちをとおして、勧めをなさるのです。
わたし
ばっ
わたし
「どうぞ神と和解してください。神は、罪と何のかかわりもないキリ
かみ
ぎ
ストを、私たちのために罰せられました。それは、私たちがキリストに
よって、神の義となるためです。」と。
253
愛は自分の利益を求めません。 コリントの信者への手紙第Ⅰ 13:5
母親の手を握る生後 3ヶ月の幼児
254
で
あ い
し
第十四章 愛
イエスのことば
てん
ちち
わたし
あい
い
わたし
イエスはかつて、弟子たちに言われた。
あい
わたし
いまし
まも
あい
ふくいんしょ
ヨハネの福音書より
がた
がた
わたし
あい
わたし
「天の父が私を愛されたように、私もあなた方を愛してきました。私
わたし
ちち
いまし
まも
あい
の愛にとどまりなさい。私の戒めを守るなら、あなた方は私の愛にとど
い
わたし
よろこ
がた
うち
がた
まります。ちょうど私が父の戒めを守り、その愛にとどまっているよう
よろこ
み
わたし
がた
あい
がた
たが
に。このことを言うのは、私の喜びがあなた方の内にあって、あなた方
わたし いまし
の喜びが満ちあふれるためです。
私の戒めはこれです。『私があなた方を愛したように、あなた方も互
255
あい
おお
あ
あい
とも
わたし
じ ぶん
めい
おこな
す
がた
わたし
いに愛し合いなさい。』友のために自分のいのちを捨てること、これよ
とも
て がみ
てん し
かた
りも大きな愛はありません。私の命じることを行えば、あなた方は私の
友です。」
し と
わたし
使徒たちの手紙より
あい
愛
ひと
たとえ、私が
あい
人のことば、また天使のことばを語っても、
わたし
愛がなければ、
さわ
す
私は、やかましいどら
わたし
騒がしいシンバルに過ぎません。
せんきょう
たとえ、私が
宣教をしても、
256
*身を焼かれる 殉教を意味する。
やま
うつ
おく ぎ
かんぜん
ち しき
しんこう
も
たっ
あらゆる奥義とすべての知識に達していても、
あい
む
ひと
まず
ひとびと
ほどこ
山を移すほどの完全な信仰を持っていても、
わたし
愛がなければ、
わたし
私は、無に等しい。
も
たとえ、私が
じ ぶん
*み
や
ひ
わた
持っているものすべてを貧しい人々に施しても、
あい
自分の身を焼かれるために引き渡しても、
む えき
愛がなければ、
にんたいづよ
いっさいは、無益です。
あい
あい
なさ
ぶか
愛は忍耐強い。
愛は情け深い。
あい
じ まん
また、ねたみません。
こうまん
愛は自慢せず、
高慢になりません。
257
れい
じ ぶん
しっ
り えき
礼を失せず、
もと
自分の利益を求めず、
ひと
あやま
おも
いらだたず、
ふ
ぎ
よろこ
人の過ちを思いません。
しん り
よろこ
不義を喜ばず、
真理を喜び、
しん
すべてをゆるし、
のぞ
すべてを信じ、
た
すべてを望み、
とこしえ
すべてに耐えます。
あい
けっ
た
愛は永遠に
あい
し
よ げん
いち ぶ ぶん
わたし
い げん
よ げん
ち しき
ほろ
いち ぶ ぶん
愛は決して絶えません。預言はすたれ、異言はやみ、知識も滅びます。
わたし
かんぜん
き
ぶ ぶんてき
おさなご
私たちの知っていることは一部分、私たちの預言していることも一部分
です。完全なものが来たとき、部分的なものはすたれます。幼子だった
258
わたし
おさなご
かた
おさなご
かん
おさなご
おさなご
かんが
とき、私は幼子のように語り、幼子のように感じ、幼子のように考えて
わたし
かがみ
うつ
み
いました。しかし、おとなになってからは、幼子のことをやめました。今、
かお
かお
あ
み
いま わたし
私たちは、鏡にぼんやり映るもののようにおぼろにしか見えません。し
いち ぶ
し
わたし
かみ
かんぜん
し
かし、そのときには、顔と顔とを合わせて見ることになります。今、私は、
わたし
き ぼう
あい
みっ
し
のこ
なか
もっと
おお
一部しか知りません。しかし、そのときには、私が神に完全に知られて
しんこう
いるように、私もはっきり知ることになります。
あい
く
たが
あい
あ
あい
かみ
で
信仰、希望、愛、この三つは、いつまでも残ります。その中で最も大
かみ
わたし
いなるものは、愛なのです。
あい
きょうだい
愛は神から来る
しんあい
あい
もの
かみ
う
かみ
し
親愛な兄弟たち、私たちは、互いに愛し合いましょう。愛は神から出
あい
もの
かみ
し
かみ
あい
かみ
ひと
ご
よ
るもので、愛する者はすべて、神から生まれ、神を知っているからです。
つか
わたし
かた
い
愛さない者は神を知りません。神は愛だからです。神は、独り子を世に
かみ
あい
わたし
しめ
あい
わたし
かみ
あい
遣わされ、私たちがこの方によって生きるようにされました。ここに、
神の愛が私たちに示されたのです。愛とは、私たちが神を愛したことで
259
かみ
わたし
きょうだい
あい
かみ
わたし
つみ
わたし
あがな
あい
み
こ
つか
はなく、神が私たちを愛し、私たちの罪の贖いとして御子を遣わされた
わたし
たが
あい
あ
かみ
み
もの
ことです。兄弟たち、神がこれほど私たちを愛してくださったのですか
わたし
たが
あい
あ
かみ
わたし
うち
ら、私たちも互いに愛し合うべきです。神を見た者は、いまだかつて、
やど
かみ
あい
わたし
うち
かんせい
ひとりもいませんが、私たちが互いに愛し合うなら、神は私たちの内に
わたし
かみ
うち
かみ
わたし
うち
やど
宿ってくださり、神の愛が私たちの内に完成されるのです。
かみ
じ ぶん
せいれい
わたし
あた
わたし
私たちが神の内にとどまり、神も私たちの内に宿っていることがわか
てん
ちち
み
こ
よ
すく
ぬし
つか
み
るのは、神がご自分の聖霊を、私たちに与えてくださったからです。私
あか
かみ
こ
い
あらわ
かみ
ひと
たちは、天の父が御子を世の救い主として遣わされたことを見て、その
証しをしています。
おそ
恐れることはない
やど
ひと
かみ
うち
わたし
わたし
だれでも、「イエスが神の子である」と言い表すなら、神はその人の
うち
たい
あい
かみ
あい
あい
し
うち
い
しん
ひと
かみ
うち
い
内に宿ってくださり、その人も神の内にとどまります。私たちは、私た
かみ
ちに対する神の愛を知り、また信じています。
神は愛です。愛の内に生きる人は、神の内に生きているのであって、
260
かみ
い
ひと
うち
やど
あい
わたし
わたし
うち
かんせい
よ
神もその人の内に宿ってくださいます。私たちも、この世ではイエスの
ひ
わたし
かくしん
も
あい
おそ
ように生きているので、愛が私たちの内に完成されています。そのため
かんぜん
あい
おそ
と
さ
さばきの日に、私たちは確信を持つことができるのです。愛があれば恐
おそ
ばつ
かんれん
おそ
も
もの
あい
かんせい
れることはありません。完全な愛は恐れを取り去るからです。なぜなら、
あい
かみ
わたし
あい
恐れは罰に関連するからです。恐れを持つ者には、愛が完成されていま
わたし
せん。
あい
くち
い
きょうだい
あい
ひと
私たちは愛します。神がまず私たちを愛してくださったからです。
かみ
げん
み
きょうだい
あい
もの
め
み
「神を愛している」と口では言いながら兄弟を愛さないなら、その人は
かみ
あい
なに
かみ
いまし
かみ
うそつきです。現に見える兄弟を愛さない者は、どうして目に見えない
あい
ひと
きょうだい
あい
おく
がた
つみ
おか
神を愛することができましょう。何にせよ、神からの戒めとは、「神を
あい
か
愛する人は兄弟をも愛せよ。」なのです。
かみ
キリスト、神の愛
きょうだい
つみ
おか
てん
ちち
兄弟たち、これらのことを書き送るのは、あなた方が罪を犯さないよ
うになるためです。しかし、もしだれかが罪を犯したならば、天の父の
261
互いに愛し合いなさい。
べん ご
かた
かた
わたし
つみ
あがな
ぎ
わたし
つみ
もとで弁護してくださる方がおられます。それは、義なるキリスト・イ
ぜんじんるい
かみ
つみ
めいれい
と
け
したが
かみ
し
エスです。この方こそ、私たちの罪の贖いです。いや、私たちの罪だけ
わたし
でなく、全人類の罪を取り消すいけにえなのです。
かみ
し
い
かみ
めいれい
したが
私たちが、神の命令に従うなら、それによって、神を知っていること
もの
しん り
ひと
うち
がわかります。「神を知っている」と言いながら、神の命令に従わない
かみ
まも
ひと
じつ
ひと
うち
かみ
あい
かんせい
わたし
者は、うそつきであって、真理はその人の内にはありません。しかし、
かみ
うち
つぎ
わ
かみ
神のことばを守る人、実にその人の内に神の愛が完成されます。私たち
うち
い
い
ひと
い
かた
おな
い
が神の内にいることは次のことによって分かります。すなわち、「神の
よ
よ
あい
あい
よ
あい
ひと
うち
内に生きていると言う人は、イエスの生き方と同じく生きなければなり
ません。」
よ
この世を愛するな
てん
ちち
あい
よ
この世も世にあるものも、愛してはなりません。世を愛する人の内に
にくよく
め
よく
きょえい
てん
ちち
よ
で
は、天の父の愛がありません。なぜなら、すべて世にあるもの、すなわち、
肉欲、目の欲、虚栄は、天の父からではなく、世から出るものだからで
262
*イエスを信じる人たち 直訳
「神の子ども」
**イエスを信じる人たち 直訳
「神から生まれた人」
えいえん
よ
い
す
つづ
さ
か
よく
しん
ひと
かみ
ちち
みこころ
かみ
おこな
う
ひと
す。この世は過ぎ去ります。欲もそうです。しかし、神の御心を行う人
う
は永遠に生き続けます。
よ
この世に打ち勝つ
もの
ちち
かみ
あい
ひと
かた
う
イエスがメシアであると信じる人は、だれでも、父なる神から生まれ
しんじゃ
あい
わたし
かみ
あい
た者です。父なる神を愛する人は、だれでも、その方から生まれたほか
めいれい
まも
*
しん
ひと
あい
かみ
の信者をも愛します。このことからわかるように、私たちが神を愛し、
あい
かみ
めいれい
したが
めいれい
むずか
その命令を守るときはいつも、イエスを信じる人たちを愛します。神を
**
しん
ひと
みな
よ
う
か
愛するとは、神の命令に従うことです。そして、その命令は難しいもの
わたし
う
か
しんこう
ひと
よ
う
か
かみ
み
しょうり
こ
しん
ひと
ではありません。なぜなら、イエスを信じる人は皆、世に打ち勝つから
よ
です。私たちの信仰、これこそ、世に打ち勝った勝利なのです。
よ
おう
ふ めつ
め
み
かみ
ほま
えいこう
世に打ち勝つ人はだれですか。イエスが神の御子であると信じる人で
よ
はありませんか!
とこしえ
世々の王、不滅であり、目に見えないただひとりの神に、誉れと栄光
が永遠にありますように。アーメン。
263
世の人々が自分の知恵で神を知ることができないのも、
神の知恵によるものです。 コリントの信者への手紙第Ⅰ 1:21
ユダヤ人の宗教学者
264
*「箴言」の大部分と「伝道
の書」はイスラエルのソロモ
ン王(在位紀元前九七一年~
前九三二年ころ)によって記
されたもの。九五ページに注
釈を参照。
せいしゅん
ち
ひ
び
え
いずみ
おう
つ く り ぬし
しんげん
おぼ
でんどう
したが
おそ
ひと
しょ
ソロモン王の「箴言」「伝道の書」より
*
第十五章 知
恵の泉
しゅん
き
あんぜん
せいかつ
青春の日々に、あなたの創造主を覚えよ。
せい
わざわ
かみ
青 春
やす
神に聞き従う人は、安全に生活し、
あ
安らぎ
やす
災いに遭う恐れもなく、
ち しき
かみ
神を畏れることが、知識のはじめである。
おそ
安らかである。
しき
ち
知 識
265
きょう
くん
くち
教 訓
かみ
らい
神の口
しん
信 頼
こ
はは
おし
ちち
さと
き
子よ、父の諭しを聞きなさい。
え
さず
かみ
かみ
みと
しんらい
じ ぶん
い けん
母の教えをなおざりにしてはならない。
ち
つく
かみ
知恵を授けるのは神であり、
さと
かみ
くち
で
悟りは神の口から出る。
こころ
みち
たよ
心を尽くして神に信頼せよ、自分の意見に頼るな。
かみ
あく
おも
おそ
はな
みち
たい
すべての道で神を認めよ、
かしこ
じ ぶん
そうすれば神は、あなたの道を平らにされる。
こう
かみ
自分を賢いと思うな、
いまし
う
けん
健 康
神を畏れ、悪から離れよ。
けんこう
それはあなたの体を健康にし、
からだ
あなたを元気にする。
げん き
こ
神の懲らしめをいやがるな。その戒めを受けよ。
かみ
こ
懲らし
266
かみ
あい
こ
もの
こ
こ
ひと
さいわ
ちち
かわいがる子を懲らしめる父のように、
み
ち
え
神は愛する者を懲らしめる。
ふく
こう
ちょうじゅ
あた
知恵を見いだした人は幸いだ。
ほま
あた
ひかり
幸 福
とみ
それは長寿を与え、
へいあん
みち
ひと
たの
また、富と誉れを与える。
こ みち
みち
その道は楽しい道であり、
したが
みち
その小道はみな平安である。
かみ
あん
ま
ま ひる
めい
かがや
やみ
神に従う人の道は、あけぼのの光のようだ。
ひと
みち
明 暗
さか
ますます輝きを増して、真昼にいたる。
かみ
なに
し
神に逆らう人の道は、闇のようだ。
じ ぶん
まも
ゆ だん
こころ
何につまずいても、知ることはない。
だん
ゆ
油断することなく、自分の心を守れ。
わ
油 断
いのちの泉はそこから湧いてくる。
いずみ
267
かみ
め
神の目
ひと
おこな
みち
かれ
こ
かみ
じ ぶん
め
つみ
まえ
とら
かみ
こころ
し
悪者は、自分の罪に捕えられ、
じ ぶん
とが
しば
自分の咎に縛られる。
わるもの
くば
人の行いのすべてに、神は心を配られる。
ひと
人の道は神の目の前にあり、
じ ごう じ とく
自業自得
ほろ
彼は懲らしめがないために死に、
おろ
かみ
にく
愚かであるために滅びる。
お
ぞう
こころ
い
神の憎むものが六つ、
いや、心から忌みきらわれるものが七つある。
憎 悪
高慢な目、
ただ
わる
はし
ひと
め
うそつきの舌、
こうまん
正しい人の血を流す手、
あく じ
あし
ち
した
悪いことをたくらむ心、
て
悪事に走る足、
なが
268
いつわ
ふいちょう
きょうだい あいだ
あらそ
ぎしょうにん
もの
偽りを吹聴する偽証人、
もの
か
かんいん
ぎん
う
じゅんきん
ちじょく
う
かみ
え
おし
はじ
じ ぶん じ しん
けっ
う
き
銀を受けるよりも、神の教えを受けよ。
ち しき
ほろ
打撃と恥辱とを受け、その恥は決して消えない。
だ げき
姦淫する者は、思慮に欠け、自分自身を滅ぼす。
し りょ
兄弟の間に争いをおこす者。
ほう
はじ
恥
ざい
財 宝
もの
くら
とうと
ちゅうこく
ちゅうこく
ざいほう
しんじゅ
純金よりも、知識を得よ。
え
知恵は、真珠よりも尊い。
ち
こうまん
え
にく
どんな財宝もこれと比べることはできない。
こく
ちゅう
ち
こころ
もの
かい わ
いまし
ひと
う
い
愚かな会話をする人は、滅ぼされる。
おろ
心さとき者は、戒めを受け入れ、
ほろ
知恵あるものを忠告するなら、あなたを愛する。
あい
高慢な者を忠告しても、あなたを憎むだけだ。
めい
忠 告
そう
聡 明
269
あい
愛
にく
あい
あらそ
ひ
お
憎しみは、争いを引き起こし、
おし
まも
ひと
おか
みち
い
愛はすべてのまちがいをおおう。
みち
おお
つみ
いのち
くちかず
き
はな
ひと
し りょ
口数が多ければ、罪を犯しやすい。
ひと
はじ
けんそん
ひと
ち
気をつけて話す人は、思慮がある。
こうまん
え
命の道
そん
教えを守る人は、いのちの道を行き、
いまし
む し
もの
ふ
まよ
戒めを無視する者は、踏み迷う。
くち
口
けん
い
ひと
ひ
ひ みつ
し
き
え
う
高慢な人は恥をかき、謙遜な人は知恵を得る。
あっこう
ひと
のぞ
謙 遜
みつ
せいじつ
あくにん
悪人の望みは、その人の死とともに消え失せる。
ひ
ぼう
悪口を言い歩く者は、秘密をもらし、
めつ
滅 亡
誠実な人は、ものごとを秘める。
もの
秘 密
ある
270
かく
じつ
確 実
し どう
じょげんしゃ
おお
ひと
あんぜん
ほろ
よい指導がなければ、人は滅び、
ほどこ
あた
ぶか
ひと
し りょ
と
じ ぶん じ しん
おんな
ひと
うるお
施しても、なお富む人があり、
お
美しいが、思慮のない女は、
きん
はな わ
ぶた
金の鼻輪をつけた豚のようだ。
うつく
いつく
助言者が多ければ、安全である。
ぶん
じ
慈しみ深い人は、自分自身が潤され、
ざんにん
もの
じ ぶん じ しん
きず
残忍な者は、自分自身が傷つく。
じん
自 分
び
美 人
ほどこ
施 し
とぼ
じ ぶん
すす
みち
もの
ただ
おも
与えるべきものを惜しんでも、
もの
おろ
かえって乏しくなる者がいる。
こく
ひと
い
かん
ち
き
愚か者は自分の道を正しいと思う。
知恵ある人は、勧めを聞き入れる。
え
勧 告
271
なぐさ
え
けいそつ
ち
はな
もの
ひと
つるぎ
ひと
もの
軽率に話して、人を剣でさすような者がいる。
ち
え しゃ
かた
た
知恵ある者のことばは、人をいやす。
慰 め
ひと
え しゃ
せいじつ
ち
もの
もの
とも
ち
え
もと
そんがい
こ
え
にく
高慢な者は、知恵を求めても、得られない。
さと
ひと
ち しき
え
悟りのある人は、たやすく知識を得る。
こうまん
むちをあてないのは、自分の子を憎むこと。
こ
あい
ひと
こ
くわ
子を愛する人は、すぐ懲らしめを加える。
じ ぶん
愚か者の友になれば、損害をうける。
おろ
知恵者とともに歩む人は、知恵者となり、
あゆ
ことば
むち
誠実なことばは、いつまでも堅く立ち、
いつわ
いっしゅん
偽りのことばは、一瞬である。
とも
友
あい
しゅう
愛の鞭
がく
学 習
272
みち
道
けん
めい
ろう
賢 明
きん
せい
勤 労
じ
みょう
自 制
じゅ
じ ぶん
お
ただ
し
おも
みち
みち
自分では正しいと思う道でも、
しん
その終わりが死の道となるものがある。
もの
かなら
よ
けっ か
え
わきまえのない者は、すべてのことを信じこみ、
かしこ ひと
かんが
こうどう
賢い人は、よく考えて行動する。
いっしょうけんめいはたら
ひと
ち
え
と
一 生 懸 命 働けば、必ず良い結果を得る。
びんぼう
しかし、おしゃべりだけでは貧乏をきたらせる。
ちぢ
おこるのにおそい人は、知恵に富み、
き
みじか
おろ
気の短いものは、愚かさをあらわす。
げきじょう じゅみょう
み
よ
ひと
もの
つ く り ぬし
あなど
激情は寿命を縮める。
あい
ふ こう
寿 命
けい
かみ
ひと
創造主を侮ること。
身寄りのない人をしいたげることは、
神を敬う人は、不幸な者をあわれむ。
うやま
敬 愛
273
せい
ぎ
とう
正 義
へん
もく
返 答
ちゅう
注 目
よ
ことば
えい
せい ぎ
つみ
たみ
くに
たか
正義は国を高め、
へん じ
いきどお
罪は民をはずかしめる。
おだ
み
しず
穏やかな返事は、憤りを静め、
はげ
いか
激しいことばは、怒りをかきたてる。
かみ
へん じ
よろこ
神はすべてを見ておられる。
わるもの
ただ
み は
悪者をも正しい人をも、見張っている。
よ
えい よ
さき だ
良い返事には、喜びがあり、
じ ぎ
うるわ
時宜にかなったことばは、いかにも麗しい。
けんそん
じ ぶん
みち
おも
めぐ
謙遜は、栄誉に先立つ。
こころ
栄 誉
ひと
人は心に自分の道を思い巡らす。
さだ
定 め
274
いまし
戒 め
もの
ひと
あゆ
う
けってい
ど しっせき
き
ほう
かみ
しかし、その歩みを決定されるのは、神である。
さと
おろ
ど
め
悟りのある人を、一度叱責する方が、
い けん
みみ
おろ
い
かたむ
もの
よろこ
かしこ
おも
愚か者を百度むち打つより効き目がある。
だま
え
もく
じ ぶん
ち
黙っていれば、愚か者でも、賢いと思われる。
ちん
おろ
き
はじ
こた
ひと
ただ、自分の意見を言い表して喜んでいる。
もの
沈 黙
ぐ
しゃ
愚か者は知恵に耳を傾けず、
ちょう
あらわ
愚 者
しん
おろ
ばつ
う
よく聞きもしないで答える人は、
かなら
愚かであって、恥をこうむる。
もの
慎 重
いきどお
いきどお
救ってあげようとしても、また憤るだけだ。
すく
激しく憤る者は、必ず罰を受ける。
はげ
いきどお
憤 り
275
あらそ
さ
かみ
けっぱく
めい よ
じ ぶん
かく
おこな
どう き
ただ
つみ
こころ
わたし
い
争いを避けることは、名誉なことである。
ほま
かしこ
こ
おろ
ひと
ゆ
き けん
もの
こ
み
すす
みち
ただ
こころ
さ
ばつ
きょういく
う
そうすれば、大人になっても、それを離れることがない。
はな
子をその行くべき道に正しく教育せよ。
おとな
思慮のない者は、進んで行き、罰を受ける。
し りょ
賢い人は、危険を見るとこれを避け、
い
しかし、神は心の隠れた動機をはかられる。
じ ぶん
わたし
誉 れ
しん
ぜん
「私は潔白だ。私には罪がない」とだれが言えようか。
ほん
ぎ
偽 善
自分には、自分の行いが正しいと見える。
じゃ
み
本 心
けん
いく
賢 者
きょう
むち
教 育
あい
き
愚かさは、子どもの心につながれている。
た
愛の鞭
懲らしめのむちが、それを断ち切る。
こ
276
かん
か
感 化
き
いか
みじか
もの
もの
なか ま
した
気の短い者と親しくするな。
もの
そ
しっぱい
すぐ怒る者の仲間になるな。
うれ
もの
さもないと、あなたもそれに染まって、失敗する。
ふ こう
あらそ
もの
ぐ
ち
い
もの
不幸な者はだれか。憂いある者はだれか。
きず
争いをする者はだれか。愚痴を言う者はだれか。
め
にご
もの
もの
わけもなく傷だらけになっているのはだれか。
よ
さけ
濁った目をしているのはだれか。
さけ
あじ
ま
あ
それは、酒に夜をふかす者、
ちから
つよ
もの
もの
混ぜ合わせた酒を味わう者である。
ち
え
酒
さけ
え
ひと
さいなん
したが
わるもの
かみ
なん ど
た
知恵ある者は、力ある者より強い。
ち
き
知 恵
さい
神に従う人は、何度たおれても立ちあがる。
悪者は災難に遭えばつまずく。
あ
再 起
277
ふく
しゅう
とく
復 讐
せっ
りょ
説 得
えん
ちょう
遠 慮
どう
ぷく
同 調
はん
もの
反 復
なま
怠け者
じ ぶん
おも
せっとく
し かえ
し どうしゃ
かよ
「自分にされたとおりの仕返しをしてやろう」
と
と思ってはならない。
こん き づよ
いえ
根気強く説けば、指導者も説得される。
ほね
くだ
やさしいことばは骨をも砕く。
ゆうじん
もの
おろ
こた
友人の家であっても、あまりひんぱんに通うな、
あ
きら
飽きられ、嫌われることのないように。
おろ
じ ぶん
は
愚か者には、その愚かさにのって答えるな。
じ ぶん
おな
自分も、同じようにならないために。
いぬ
もの
そうめい
こた
にん
ひと
犬が、自分の吐いたものにもどるように、
おろ
もの
おろ
かえ
愚か者は、愚かなことをくり返す。
なま
怠け者は、聡明な答えをする七人の人よりも、
278
かん
しょう
きょう
干 渉
ひ
卑 怯
じ ぶん
かしこ
かんけい
おも
いぬ
あらそ
くち
自分を賢いと思っている。
じ ぶん
とお
お
だ
自分に関係のない争いに口を出すことは、
い
ひと
通りすがりの犬の尾を、つかむようなものだ。
ゆうじん
じょうだん
友人をだましておいて、
し
ひ
や
な
き
くる
ひと
にく
ひと
「あれは冗談だよ。」と言う人は、
きず
死と火の矢を投げつける、気が狂った人のようだ。
じ ぶん
いつわ
いきどお
人の憤りは、むごく、
ひと
自分自身をほめるな。
た にん
まか
それは他人に任せよ。
じ ぶん じ しん
偽りをいう者は、自分が傷つけた人を憎み、
ひと
もの
は かい
まね
人にへつらう者は、破壊を招く。
もの
いつわ
さん
偽 り
じ
と
自 賛
しっ
嫉 妬
279
いか
こうずい
しっ と しん
あま
たいこう
怒りは洪水のようだ。
とも
つづ
ひ
しかし、嫉妬心には、だれが対抗できよう。
ぎん
ほろ
ひ
おっ て
あ
せいれん
に
悪人は、追手がなくても逃げるが、
あくにん
金や銀は、火で精錬される。
ひと
た にん
しょうさん
はんのう
ため
人は、他人の称賛にどう反応するかで、試される。
きん
地獄と滅びは飽くことがなく、
ひと
よくぼう
あ
人の欲望も飽くことがない。
じ ごく
人はその友によってとがれる。
ひと
鉄は鉄をとぐ、
てつ
ながあめ
かかあでんか
嚊天下
げん
てつ
長雨の日にしたたり続ける雨もりは、
しゅじん
ふ へい
い
いさか
つま
に
主人に不平を言い、諍いをする妻に似ている。
とも
友
む
れん
無 限
し
き
試 練
ゆう
勇 気
280
く
あらた
こく
ただ
かく
ひと
もの
し
し
さか
いさ
正しい人は、獅子のように勇ましい。
つみ
かんしゃ
い
もの
ちゅうこく
ひと
罪を隠す者は、栄えない。
す なお
みと
す
ひと
う
素直に認め、それを捨てる人は、あわれみを受ける。
さい ご
じ
しか
たす
こころ
いまし
ち
え
こ
あた
ごうじょう
はは
むちと戒めとは知恵を与える。
こうまん
ひと
ひく
ほま
う
心の低い人は、誉れを受ける。
こころ
高慢になれば、低くされ、
ひく
もの
わがままにさせた子は、その母の恥となる。
はじ
たちまち捨てられて、助かることがない。
しばしば叱られても、心の強情な者は、
す
お世辞を言う者ではなく、忠告をする人である。
せ
最後に感謝されるのは、
悔い改め
ちゅう
こ
忠 告
がん
にん
頑 固
ほう
まん
放 任
こう
高 慢
281
へい
あん
平 安
きょう りょく
かみ
ひと
しんらい
おそ
ひと
やす
人を恐れるとわなにかかる。
あ
はたら
ふた り
神に信頼する人は、安らかである。
ひと り
こころ
むく
たす
よ
一人でいるより、二人でいるほうがよい。
まんぞく
お
協 力
たお
き
心を合わせて働けば、その報いは良い。
つな
さんぼん よ
きんせん
ひとりが倒れれば、もうひとりが助け起こす。
もの
三本縒りの綱は、切れにくい。
きんせん
しゅくえん
いえ
い
ひと
もちゅう
お
いえ
い
祝宴の家に行くよりは、喪中の家に行くほうがよい。
し
金銭を愛する者は、金銭で満足しない。
とみ
もと
もの
とみ
え
まんぞく
富を求める者は、富を得ても満足しない。
あい
ぼう
よく
欲 望
かな
悲しみ
こころ
なぜなら、死はすべての人の終わりであり、
かな
もの
生きている者は、それを心にとめる。
い
悲しみは笑いにまさる。
わら
282
わら
笑 い
かな
え
もの
ひと
いまし
き
こころ
き
よ
悲しみによって、心は良くなる。
ち
おろ
うた
知恵ある人の戒めを聞くのは、
した
もの
にがにが
も
わら
愚かな者の歌を聞くのにまさる。
おろ
愚かな者の笑いは、
し
おんな
おと
かまの下に燃えるいばらの音のようだ。
わな
かのじょ
こころ
あみ
くさり
死よりも苦々しいものは、女のわな。
うで
おんな
女の罠
とら
ひと
彼女の心は網、その腕は鎖だ。
つみ
よろこ
神に喜ばれている人は、そのわなにかからないが、
かみ
罪びとは、彼女に捕えられる。
わる
かのじょ
せ
たい
はんけつ
悪いことをしても、
くだ
げん
現 世
あく
おこな
それに対する判決がすぐに下されないため、
へい き
人々は、平気で悪を行おうとしている。
ひとびと
283
はかな
あわ
儚 い
む
無
みず
くう
水の泡
くう
空の空
あくにん
かみ
かげ
おそ
なが
へいあん
つづ
悪人は、神を畏れないから平安がない。
え
ぶ
き
おお
そのいのちは影のようで、長く続かない。
ち
つみ
知恵は武器にまさる。
ぴき
こう ゆ
くさ
ほろ
しかし、ひとりの罪びとは、多くのよいことを滅ぼす。
し
わずら
よ
じ ぶん
じ ぶん
なに
ろう く
死んだハエの一匹は、つぼの香油を腐らせる。
すこ
おろ
おお
えい よ
ち え
きず
少しの愚かさは、大きな栄誉と知恵を傷つける。
おも
のこ
この世でした自分の労苦と、
思い煩いは、自分に何を残すのだろう。
し ごと
じつ
あいだ
かな
人の一生は悲しみであり、
こころ
よる
いっしょう
その仕事には悩みがあり、
ひと
その心は夜の間も休まらない。
なや
これもまた、実にむなしい。
やす
284
しゅう きょく
終 極
けつろん
かみ
おそ
かみ
結論はこれだ。
めいれい
したが
てきごう
「神を畏れ、神の命令に従いなさい。」
ひと
これこそ、すべての人に適合するからだ。
ひと
あく
神は、善であれ悪であれ、
ぜん
人の隠れた行いも、すべて、
かみ
おこな
さばかれるからである。
かく
285
ナザレ村の少女
神のみことばに心を留める人は幸福を見つける。
箴言 16:20
286
*百五十篇からなる「詩篇」
のほとんどは、ダビデ王(在位
紀元前一〇一〇 年 ~九七一年
ころ)によって記 され た 。これ
らは 昔からユダヤ 人や キリス
ト 信 者によって、神への 祈 り
や 賛 美 として歌われ、イエス
ご自 身も 読 まれた 。ここにあ
るのはその う ちの十篇 。四六
ページの注釈を参照。
みち
もの
みち
し へん
せき
た
すわ
し
い の
ひと
第十六章 詩
と祈り
ひと
さいわ
あつ
い
人の道 (詩篇 一)
わるもの
幸いなことよ。
つみ
悪者の集まりに行かず、
こうまん
罪びとの道に立たず、
さいわ
かみ
おし
あい
高慢な者の席に座らぬ、その人は。
ひと
幸いなことよ。
ひる
よる
おも
その人は、神の教えを愛し、
昼も夜もそれを思う。
*
おう
し へん
ダビデ王の「詩篇」より
287
なが
ひと
その人は、
き せつ
か
く
み
う
むす
き
さか
流れのほとりに植えられた木のよう。
は
季節が来れば実を結び、
ひと
葉も枯れることはない。
さか
かぜ
もの
ふ
ひと
さ
ひと
みち
まも
その人のすることはすべて、栄える。
かみ
神に逆らう者は、
かれ
そうではない。
ただ
つど
彼らは、風が吹き去る
わるもの
もみがらのようだ。
つみ
悪者はさばきに、
た
ただ
罪びとは正しい人の集いに、
かみ
耐えられない。
あくにん
みち
ほろ
う
まことに、神は、正しい人の道を守られる。
しかし、悪人の道は滅び失せる。
288
かみ
おも
し へん
わたし
神を思う (詩篇 一一五)
しゅ
わたし
主よ、
み
な
えいこう
き
私たちにではなく、私たちにではなく、
あい
しん り
あなたの御名に栄光を帰させてください。
くにぐに
い
それは、あなたの愛と、あなたの真理のゆえです。
かれ
かみ
なぜ国々は言うのでしょう。
わたし
かみ
てん
「彼らの神はどこにいるのだ」と。
みこころ
おこな
私たちの神は天におられ、
くにぐに
ぐうぞう
きんぎん
御心のままにすべてを行われます。
ひと
て
つく
国々の偶像は金銀にすぎず、
くち
はな
人の手が造ったもの。
め
み
口があっても、話すことができず、
みみ
き
目があっても、見ることができず、
耳があっても、聞くことができず、
289
はな
て
か
さわ
鼻があっても、嗅ぐことができず、
あし
ある
手があっても、触ることができず、
のど
こえ
だ
足があっても、歩くことができず、
ぐうぞう
つく
しんらい
もの
もの
みな
おな
喉があっても、声を出すことができない。
ぐうぞう
偶像を造る者も、
おそ
もの
かみ
しんらい
偶像に信頼する者も皆、これと同じようになります。
かみ
かみ
たす
たて
神を恐れる者よ、神に信頼しなさい。
かみ
わたし
おぼ
神は、あなたの助け、あなたの盾。
わたし
しゅくふく
神は私たちを覚え、
い だい
もの
ちい
もの
私たちを祝福してくださいます。
かみ
つよ
偉大な者も、小さき者も。
どうか、神があなたを強められますように。
てん ち
つ く り ぬし
かみ
あなたと、そして子どもたちをも。
しゅくふく
天地の創造主、神が、
あなたたちを祝福してくださいますように。
290
てん
ち
かみ
かみ
てん
ひと
天は、神の天。
かみ
さん び
あた
し しゃ
地は、神が人に与えられた。
ちんもく
さ
し にん
神を賛美するのは、死者ではない。
い
わたし
沈黙へ去った死人ではない。
かみ
さん び
生きる私たちこそ、
かみ
神を賛美する。
いま
とこしえ
神をほめたたえよ。
今より永遠に。
291
かみ
かみ
よる
かえ
み
かみ
えいこう
て
ひ
ち
かた
ち しき
ぜん ち
は
ものがた
つた
おく
ゆ
しめ
とど
し へん
す
もう
神のわざ、神のことば (詩篇 一九)
てん
おおぞら
天は、神の栄光を物語り、
ひ
大空は、御手のわざを示している。
よる
その日その日に語り伝え、
おと
夜から夜へと知識を送る。
しず
音もことばもなく
つ
静まり返っているのに、
おし
そのお告げは全地に行きわたり、
たいよう
その教えは地の果てまで届く。
かみ
たいよう
へ
や
で
く
はなむこ
神はそこに、太陽のために住みかを設けられた。
ゆう し
そう ろ
よろこ
はし
太陽は、部屋から出て来る花婿のようだ。
てん
は
は
のぼ
めぐ
ゆ
勇士のように、その走路を喜び走る。
てん
天の果てから昇り、
天の果てにまで、巡って行く。
292
ねつ
かく
かんぜん
ひと
い
その熱から隠れるものはない。
かみ
かみ
おし
しん り
む
ち
ひと
ち
え
神のことばは完全で、人を生かす。
かみ
めいれい
ただ
こころ
よろこ
あた
あた
神の教えは真理で、無知な人に知恵を与える。
かみ
いまし
おそ
きよ
きよ
ひと
め
あ
つづ
神の命令は正しく、心に喜びを与える。
かみ
神の戒めは聖く、人の目を開ける。
かみ
しんじつ
ただ
神への畏れは清らかで、とこしえに続き、
す
おうごん
とうと
あま
神のさばきは真実で、すべて正しい。
じゅんきん
それらは、黄金よりも尊く、
みつ
どんな純金にもまさる。
みつばち
それらは、蜜よりも、
かみ
う
蜜蜂の巣のしたたりよりも、甘い。
おし
それらによって、神よ、
まも
あなたのしもべは教えを受け、
わたし
おお
むく
それらを守れば、
私たちに大きな報いがあるでしょう。
293
し
おか
かみ
あやま
ゆる
わたし
かく
つみ
知らずに犯した過ち、私の隠れた罪を、
どうか、神よ、お赦しください。
たい
あなたのしもべが、
まも
わたし
し はい
あなたに対してかたくなにならぬよう、
つみ
守ってください。
わたし
つみ
もの
それらの罪が、私を支配しませんように。
そむ
つみ
まぬか
かた
こころ
おも
そうすれば、私は罪なき者となり、
わたし
背きの罪を免れましょう。
み まえ
よろこ
どうか、私の語ることばと、心の思いとが、
しゅ
わたし
いわ
わたし
すく
ぬし
あなたの御前に喜ばれるものとなりますように。
し へん
主よ、私の岩、私の救い主よ!
わたし ぼくしゃ
わたし
ぼくしゃ
私 の牧者 (詩篇 二三)
しゅ
わたし
とぼ
主は私の牧者。
私には、乏しいことがありません。
294
しゅ
いこ
わたし
みず
みどり
まき ば
つれ
やす
ゆ
主は私を、緑の牧場に休ませ、
しゅ
わたし たましい
あた
憩いの水のほとりに連れて行きます。
み
な
わたし
ただ
みち
みちび
主は、私の魂に、いのちを与え、
し
かげ
たに
い
御名のゆえに、私を正しい道に導かれます。
わたし わざわ
おそ
死の陰の谷を行くときも、
わたし
私は災いを恐れません。
むち
つえ
あなたが、私といっしょにおられますから。
わたし
なぐさ
あなたの鞭、あなたの杖、
てき
まえ
それが私を慰めます。
わたし
しゅくえん
もう
敵の前で、あなたは
わたし
こうべ
こう ゆ
そそ
私のために祝宴を設けてくださいます。
わたし さかずき
ひ
かぎ
あなたは、私の頭に香油を注いでくださいました。
わたし
私の杯は、あふれています。
めぐ
いつく
わたし
お
く
まことに、私のいのちの日の限り、
わたし
とこしえ
しゅ
いえ
す
恵みと慈しみが私を追って来るでしょう。
私は、永遠に主の家に住むのです。
295
く
あらた
いの
じ
し へん
ひ
悔い改めの祈り (詩篇 五一)
かみ
わたし
神さま、あなたの慈悲によって、
ふか
あわ
私をあわれみ、
わたし
とが
さ
あなたの深い憐れみをもって
わたし
ふ
ぎ
あら
私の咎をぬぐい去ってください。
わたし
つみ
きよ
私の不義をすべて洗い、
わたし
じ ぶん
つみ
し
私の罪を清めてください。
わたし
つみ
わたし
まえ
私は、自分の罪を知っています。
わたし
つみ
おか
私の罪は、いつも私の前にあります。
まえ
わる
こと
おこな
あなたに、ただあなたに、私は罪を犯し、
とき
せんこく
ただ
あなたの前に、悪い事を行いました。
せんこく
それゆえ、
とき
あやま
あなたが宣告される時、その宣告は正しく、
あなたがさばかれる時、そのさばきに誤りはありません。
296
はは
わたし
たいない
う
つみ
つみ
も
ああ、私は生まれながらの罪びとで、
こころ
おくそこ
しんじつ
もと
母の胎内にいるときから、罪を持っておりました。
ち
え
わたし
さと
ああ、あなたは、心の奥底の真実を求められます。
わたし
つみ
きよ
ち
ふ
どうか、その知恵を私に悟らせてください。
わたし
きよ
私に、罪を清める血を振りかけてください。
わたし
あら
しろ
そうすれば、私は清くなるでしょう。
くも
私を洗ってください。
たの
よろこ
き
そうすれば、雪よりも白くなるでしょう。
くだ
ほね
どうか、楽しみと喜びを聞かせてください。
よろこ
あなたが砕かれたこの骨を、
み かお
わたし
つみ
つみ
かく
け
さ
どうか、喜ばせてください。
わたし
御顔を私の罪から隠し、
わたし
うち
きよ
こころ
つく
私の罪をことごとく、消し去ってください。
かみ
あたら
れい
わたし
あた
神さま、私の内に清い心を造り、
新しく、ゆるがない霊を私にお与えください。
297
み まえ
せいれい
わたし
わたし
す
と
さ
どうか、御前から私を捨てず、
すく
よろこ
わたし
かえ
あなたの聖霊を、私から取り去らないでください。
よろこ
したが
こころ
わたし
どうか、あなたの救いの喜びを、私に返し、
そむ
もの
喜んで従う心が、私をささえますように。
みち
おし
そうすれば、あなたに背いている者に、
つみ
あなたの道を教えることができます。
かえ
しゅ
わたし
すく
かみ
そして、罪びとはあなたのもとに、
かみ
帰ってくるでしょう。
神よ。主よ。私の救いの神よ。
298
うち
さん か
しゅ
し へん
せい
み
あけぼのの賛歌 (詩篇 一○三)
わたし こころ
わたし
私の心よ、主をほめたたえよ。
わたし
たましい
しゅ
な
私の内なるすべてよ、その聖なる御名をほめたたえよ。
めぐ
わす
私の 魂 よ、主をほめよ。
しゅ
とが
そのすべての恵みを忘れるな。
わたし
主は、
わたし
やま
私のすべての咎をゆるし、
わたし いのち
じ ごく
あがな
私のすべての病いをいやし、
あい
なさ
わたし
つつ
私の命を地獄から贖い、
わたし
いっしょう
み
愛と情けとで私を包み、
わたし
わか
わし
私の一生をよいもので満たしてくださる。
しいた
ひと
こうして私の若さは、鷲のようによみがえる。
しゅ
せい ぎ
こうせい
おこな
主は、すべて虐げられている人のために、
正義と公正とを行われる。
299
しゅ
いか
あわ
ぶか
なさ
あい
ぶか
おお
主は、憐れみ深く、情け深い、
しゅ
わたし
せ
怒るのにおそく、その愛は大きい。
いか
主は、私たちをいつも責められず、
しゅ
わたし
つみ
おう
あつか
いつまでも怒りをのこされない。
わたし
あく
おう
むく
主は、私たちの罪に応じて、扱うことはなく、
てん
おそ
ち
もの
たい
たか
しゅ
じ あい
し
私たちの悪に応じて、報いることもしない。
かみ
天が、地よりはるか高いように、
ひがし
にし
こ
わたし
あわ
わたし
とお
つみ
おそ
にんげん
とお
ひと
ひ
はな
ぞん
神を畏れる者に対する主の慈愛は、はかり知れない。
かみ
東が西から遠いように、
ちち
じ ぶん
あわ
神は、私たちの罪を、遠く引き離された。
しゅ
父が子を憐れむように、
しゅ
主は、ご自分を畏れる人を憐れんでくださる。
わたし
ちり
こころ
と
主は、私たち人間がどのようなものであるかをご存じであり、
しょうがい
くさ
私たちが塵にすぎないことを、心に留めておられる。
ひと
人の生涯は、草のよう、
300
かぜ
さか
うえ
の
す
はな
う
その栄えは、野の花のよう。
は
ば しょ
し
あと
風がその上を過ぎると、失せて跡なく、
しゅ
じ あい
よ
よ
生えていた場所すら、だれも知らない。
しゅ
おそ
せい ぎ
けいやく
ひと
まも
し そん
もの
と
つづ
ひと
およ
しかし、主の慈愛は、世々とこしえに、
しゅ
主を畏れる人とともにあり、
しゅ
こころ
おこな
主の正義は、子孫にまで続き、
めいれい
主の契約を守る者、
み
ざ
てん
かた
た
その命令を心に留めて行う人に及ぶ。
しゅ
おうこく
し はい
主は、その御座を天に堅く立て、
てん し
しゅ
その王国は、すべてを支配する。
み
したが
天使たちよ、主をほめたたえよ。
めいれい
おこな
ゆう し
御ことばに従い、
しゅ
その命令を行う勇士たちよ、
てん
ぐんぜい
しゅ
主をほめたたえよ。
天の軍勢よ、主をほめたたえよ。
301
み こころ おこな
しゅ
御心を行うしもべたちよ、
しゅ
つく
主をほめたたえよ。
ところ
しゅ
主に造られたものたちよ、
わたし たましい
しゅ
すべての所で、主をほめたたえよ。
した
し へん
私の魂よ、主をほめたたえよ!
み
さいわ
御ことばを慕う(詩篇 一一九より)
ただ
み
ひとびと
いかに幸いなことでしょう。
しゅ
み おし
あゆ
ひとびと
正しいと見なされた人々、
さいわ
主の御教えによって歩む人々。
しゅ
めいれい
まも
ひとびと
いかに幸いなことでしょう。
こころ
しゅ
もと
ひとびと
主の命令を守る人々、
ひと
ふ せい
おこな
心から主を求める人々。
しゅ
みち
あゆ
このような人は不正を行わず、
主の道を歩みます。
302
しゅ
いまし
あた
ちゅうじつ
まも
まも
主よ、あなたは、忠実に守るようにと、
わたし
戒めを与えられました。
わたし
あゆ
かくじつ
おも
どうか、私があなたのことばを守れるように、
めいれい
私の歩みを確実にしてください。
わたし
は
い
そうすれば、あなたのすべての命令を思うとき、
ただ
まな
私は恥じ入ることがないでしょう。
わたし しょうじき
こころ
かんしゃ
あなたの正しいさばきを学ぶとき、
しゅ
わたし
したが
私は正直な心で、あなたに感謝します。
わたし
み
す
主よ、私はあなたのことばに従います。
どうか私を、お見捨てにならないでください。
303
わか
ひと
いの
し へん
わか
もの
じ ぶん
若い人の祈り(詩篇 一一九より)
きよ
たも
どのようにして、若い者は自分を
したが
清く保てるでしょうか。
あゆ
あなたのことばに従って、
わたし
こころ
もと
そのとおりに歩むほかにありません。
おし
私は、心をつくして、あなたを求めます。
まよ
で
どうか、あなたの教えから
わたし
み
こころ
おさ
迷い出ることがないようにしてください。
そむ
つみ
おか
私は、御ことばを、心に納めています。
しゅ
あなたに背いて、罪を犯さないように。
さだ
おし
主よ。あなたをほめたたえます。
わたし
くち
おし
どうか、あなたの定めを教えてください。
かた
つ
私はこの口で、あなたの教えを
わたし
よ
たから
ひとつひとつ語り告げます。
私は、この世のどんな宝よりも、
304
しゅ
あか
わたし
みち
おも
よろこ
あなたの証しの道を喜んでいます。
めいれい
主よ、私は、
みち
かんが
あなたの命令を思い、
さだ
よろこ
あなたの道を考え、
わす
あなたの定めを喜び、
かみ
し へん
あなたのことばを忘れません。
ぜん ち ぜんのう
わたし
さぐ
全 知 全 能の神(詩篇 一三九)
しゅ
わたし
し
主よ、あなたは私を探り、
わたし
た
い
私をことごとく知っておられます。
み
おも
とお
み とお
あなたこそは私の立ち居ふるまいのすべてを
わたし
見ておられ、
わたし
あゆ
わたし
ふ
み まも
私の思いを、遠くから見通されます。
わたし
あゆ
し
私の歩みと、私の伏すのを見守り、
私の歩みのすべてを、知っておられます。
305
しゅ
わたし
わたし
ひとこと
かた
し
主よ、私がまだ一言も語らないうちに、
うし
うえ
み
まえ
て
お
わたし
し
つつ
ぎ
こうえん
あなたは、私のことばのすべてを知っておられます。
わたし
ふ
後ろから、前から、あなたは私を包み、
ち しき
私の上に御手を置かれます。
わたし
こ
およ
はな
い
このような知識はあまりにも不思議で、高遠で、
おも
私を超えたものです。
わたし
思いも及びません。
まえ
のが
私は、あなたを離れて、どこへ行けましょう。
わたし
てん
のぼ
あなたの前から、どこへ逃れましょう。
し にん
せ かい
ふ
たとえ、私が天に上っても、あなたはそこにおられ、
死人の世界に伏しても、
わたし
ひ
で
ほう
と
い
あなたはそこにおられます。
にし
うみ
は
て
す
わたし
みちび
私が、日の出の方へ飛んで行っても、
み
西の海の果てに住むとしても、
みぎ て
わたし
あなたの御手はそこにあり、私を導き、
あなたの右手は、私をささえます。
306
わたし
やみ
たとえ私が、
わたし
かこ
ひかり
わたし
よる
「おお、闇よ。私をおおえ。
やみ
くら
い
私を囲む光よ。夜となれ。」と言っても、
よる
ひる
あか
あなたにとっては、闇は暗くなく、
くらやみ
ひかり
おな
夜も昼のように明るいのです。
わたし
ないぞう
暗闇も光も同じことです。
はは
たいない
わたし
く
た
あなたは、私の内臓をつくり、
おそ
きょう い
かた
母の胎内に、私を組み立てられました。
わたし
あなたは恐るべき驚異の方。
み
わたし
しんみょう
しん
ゆえに、私はあなたをほめたたえます。
こころ
あなたの御わざは、神妙。
わたし
はは
たいない
けいせい
ああ、心から、私はあなたを信じます。
ほね
く
た
私が母の胎内で形成され、
み
骨が組み立てられたとき、
め
たい じ
わたし
み
あなたは見ておられました。
あなたの目は、胎児の私を見られました。
307
わたし
にち
ひ
び
しる
私のためにつくられた日々が、
しょ
まだ一日もなかったとき、
おも
それはすべてあなたの書に記されました。
しゅ
とうと
主よ、あなたの思いは
ぜんたい
こうだい
なんと尊いことでしょう。
はか
その全体はなんと広大なことでしょう。
はま
すな
おお
それを計ろうとしても、
わたし
め
ざ
浜の砂よりも多いのです。
わたし
私が目覚めるとき、
しゅ
あくにん
う
ほろ
私はなおも、あなたのところにいます。
わるもの
わたし
かれ
はな
い
とな
ああ、主よ、どうか悪人を打ち滅ぼしてください。
しゅ
悪者よ、私から離れて行け!
いの
主よ。彼らはたくらみをもってあなたを唱え、
しゅ
むなしくあなたに祈ろうとします。
主よ。
308
わたし
わたし
きら
かぎ
にく
た
もの
む
つ
もの
にく
にく
私は、あなたを憎む者たちを憎まないでしょうか。
い
にく
かれ
私は、あなたに立ち向かう者を
わたし
忌み嫌わないでしょうか。
かれ
わたし
てき
かんが
私は憎しみの限りを尽くして彼らを憎みます。
わたし
さぐ
彼らを私の敵と考えます。
しゅ
わたし
おも
し
主よ。どうか私を探り、
わたし
ため
わたし
こころ
ひ みつ
し
私の思いを知ってください。
わたし
うち
あやま
み
私を試し、私の心の秘密を知ってください。
わたし
みち
みちび
私の内に誤ったところがあるかを見、
私をとこしえの道に導いてください。
309
おう
かみ
かみ
よ かぎ
な
ひ
さん び
おう
い だい
し へん
かた
さん び
おお
たっと
王なる神への賛美 (詩篇 一四五)
わたし
わたし
私の神よ、王よ。
よ
私はあなたをあがめ、
わたし
世々限りなく、ほめたたえます。
み
私は日ごとに、あなたを賛美し、
しゅ
御名をとこしえにたたえます。
い だい
つぎ
よ
し
こうえい
うた
かた
主よ。あなたは偉大な方、大いに尊ぶべき方。
よ
あなたの偉大さは、はかり知れない。
み
し
ぎ
かた
こうえい
おも
かがや
み
つ
つた
この代は、次の代へと、あなたの光栄を歌い、
い げん
あなたの御わざを語ります。
ふ
おそ
ちから
あなたの威厳、光栄、輝きを告げ、
ひと
あなたの不思議を思います。
わたし
い だい
おお
の
じ あい
おも
で
かた
人は、あなたの恐るべき御わざの力を伝え、
ひと
私は、あなたの偉大さを宣べます。
人は、あなたの大いなる慈愛の思い出を語り、
310
なさ
せい ぎ
ぶか
うた
あわ
ぶか
あなたの正義を歌います。
しゅ
いか
あい
み
主は、情け深く、憐れみ深く、
しゅ
いつく
み
うえ
怒るにおそく、愛に満ちておられます。
あわ
主は、すべてを慈しみ、
つく
その憐れみは、すべての御わざの上にあります。
しゅ
かんしゃ
主よ。造られたものはすべて、
しん
ひと
あなたに感謝し、
かれ
てん
み くに
こうえい
ちから
こうえい
かた
かた
ひと
し
信じる人は、あなたをほめたたえます。
おお
彼らは天の御国の光栄を語り、
み
あなたの大いなる力を語るでしょう。
み くに
こうえい
かがや
しめ
あなたの御わざと光栄をすべての人に知らせ、
しゅ
み くに
えいえん
くに
御国の光栄の輝きを示すでしょう。
とう ち
よ
よ かぎ
つづ
主よ、あなたの御国は永遠の国、
あなたの統治は、代々限りなく続きます。
311
しゅ
ひと
た
たお
め
もの
ひと り
ま
のぞ
主よ、あなたは倒れる者を一人ひとりささえ、
しゅ
よろめく人を立たせられます。
かて
主よ、すべての目は、あなたを待ち望み、
み
て
ひら
ねが
み
あなたはときにかなって糧をくださいます。
い
あなたは、御手を開き、
みち
ただ
めぐ
ふか
すべて生きるものの願いを満たされます。
しゅ
み
主の道はすべて正しく、
しゅ
いの
もと
よ
ひと
もと
ひと
その御わざはすべて恵み深い。
まごころ
主を祈り求める人に、
しゅ
ちか
じ ぶん
おそ
ひとびと
のぞ
真心をもって呼び求める人すべてに、
しゅ
主は近いのです。
かれ
さけ
き
すく
主は、ご自分を畏れる人々の望みをかなえ、
しゅ
あい
ひと
しゅ
まも
彼らの叫びを聞いて、救われます。
だれでも主を愛する人を、主は守られ、
312
しゅ
わたし
さか
くち
しゅ
ひと
もの
み
さん び
な
主に逆らう者をすべて滅ぼされます。
せい
ほろ
私の口は主を賛美します。
しゅ
すべての人が、
よ
313
主の聖なる御名を、
よ
詩篇 51:7
ほめたたえますように。
世々とこしえに!
神よ、私に罪を清める血を振りかけてください。 そうすれば、私は清くなるでしょう。
私を洗ってください。
そうすれば、雪よりも白くなるでしょう。
聖書について
聖書は 、 旧約 聖書と新約 聖書から成り立っています 。旧約 、 新約の
「約」は「契約」の「約」で、神が人間を救ってくださるという約束を
意味しています。
神の救いの契約とは、イエス キ
・ リストの十字架上の死による救い、
また、その救いによる天の御国の相続、という約束です。キリスト信者
は、約二千年前に生まれた神の子イエス・キリストが、罪深い人間が受
けねばならない刑罰を身代りに受け、十字架上で死なれたことによって、
人類の罪が永遠に取り除かれたと信じます。つまり、私たち人間の罪が
赦され、神から永遠のいのちを与えられるという神の契約の福音を信じ
ているのです。この契約の福音が聖書全体の中心です。そして、キリス
ト以前に書かれた「契約の書」が「旧約聖書」、キリスト以後に書かれ
たものが「新約聖書」と呼ばれています。
旧約聖書は、ユダヤ民族を中心に、紀元前一五〇〇年代~前四〇〇年
代の間にまたがり、数多くの人々によって書かれ、歴史の書、律法の書、
預言の書、詩や歌など、合わせて三十九の書によって成り立っています。
その中で、キリストと神の新しい御国が、繰り返して預言という形で語
314
られているのです。
それに対して、新約聖書は、これらのキリストについての預言がいか
に成就したかを、事実をもって説明し、その救いについて教えています。
その内容は紀元三〇年代~九〇年代までの間に、おもにイエスの弟子た
ちによって書かれ、キリストの生涯を記した四つの福音書からはじまり、
二十一通の手紙など、合計二十七の書から成っています。
なお、ユダヤ人は旧約聖書のみを「律法」とか「預言」と称し、「神
のことば」、
「聖書」と見なしてきましたが、キリスト信者は、旧約聖書、
新約聖書すべてを「神のことば」と信じています。
「聖書のことばは、どれも、
自分勝手に解釈してはならない。」
ペテロの手紙第Ⅱ 一・二〇 315
一・一~六
・
一六~一九
四三・二五
五・一一、一二
・
一九~二三 イザヤ書
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
三・一六
・
一八~二四
・
一一
五・二四、一四
六六・二四
四〇・二一~二六
・
二八、二九
四四・九~一三
・
一五~二〇
四五・五~七、一二
五一・四~八
・
一二、一三
三五・三、四
・
一、二
二六・一九
三五・五~一〇
四二・一~七
七・一四
九・六、七
一一・二~五、九
五二・一三~一五
五三・ 全 章
四九・七
第 四 章
イザヤ書
″
″
″
″
″
″
第 五 章
ヨハネ書 ″
″
マルコ書 ルカ書 一・一~五
・
九~一二
・
一四
一・一
一・二六~三五
イザヤ書 五五・一~三
″
・
六、七
ダニエル書 七・一、九
″
・
一〇、一三
″
・
一四、二七
″
一二・二、三
″
六・二五~二七
ゼカリヤ書
九・九、一〇
″
・
一六、一七
″
一三・一、二
サムエル記Ⅱ 二
三・二~五
″
七・一二~一四
詩 篇 八九・二一~二四
″
・
二六
マラキ 三・一、二
″
・
五~七 ″
・
一四~一八 ″
四・一~三
聖書との対照 (本書は、聖書の次の箇所をまとめました。)
一・ 全 章
二・一~九
・
一五~一七
三・一~六
・
八~一三
・
一六~二一
第 一 章
六・一、五~二二
七・一、四
・
七~一二
・
一七~二一
・
二三、二四
八・ 全 章
九・一~二
・
九~一六
第 二 章
創世記
″
″
″
″
″
創世記
″
″
″
″
″
″
″
第 三 章
イザヤ書
″
″
″
″
ルカ書 マタイ書
ルカ書 マタイ書
ルカ書 ″
マタイ書
″
ヨハネ書
マタイ書
ヨハネ書
″
マタイ書
″
″
ヨハネ書
ルカ書 マタイ書
″
ルカ書 マタイ書
″
″
″
″
一・三七、三八
一・一八~二五
二・一~二〇
二・ 全 章
二・四〇~五二
三・二三
三・一、二
・
五~六
一・一九~二〇
三・一一
一・二九、三〇
・
三四
三・一三~一七
四・一~一一
・
一七
一・三五~五一
四・一四、一五
四・一八~二五
五・一~一二
六・二四~三六
五・一三~一六
六・一~一五
・
一九~二一
・
二四~三四
七・七~二九
316
・
四六~五二
三・一~一二
・
一六~二八
・
三〇~三六
八・一~三
二・一~一二
三・七~一〇
・
二〇、二一
・
三一~三五
四・三五~四一
六・五三~五六
・
三四
五・二一~四三
五・二四、二五
・
二八、二九
一三・四〇~五〇
一〇・一七~三四
一八・三四
一〇・一
・
一六~二三
・
二八~四二
九・一八~二五
一〇・一三~一六
第 六 章
マタイ書 マルコ書 ″
″
″
″
″
″
″
ヨハネ書 ″
マタイ書 マルコ書 ルカ書 マタイ書 ″
″
ルカ書 マルコ書 ″
ヨハネ書
″
″
七・一~八
・
一四~二三
二三・一~一五
・
二五~二八
・
三三、三四
二二・一五
・
三五~四〇
第 七 章
マルコ書
″
マタイ書
″
″
″
″
ルカ書 マタイ書 ルカ書 ″
マタイ書 ヨハネ書 ″
″
″
″
″
″
マタイ書 マルコ書 ″
マタイ書 ″
ヨハネ書 ″
″
″
″
ルカ書 ヨハネ書 一二・一、二
一二・一四~二一
一六・一九~三一
一八・九~一四
一八・一~六
七・二~一七
一二・四四~五〇
七・二五~二九
・
三一
・
四〇~四三
・
三二、三〇
・
四五~五二
二四・一~一四
一三・一九~二七
・
三一~三三
二四・三七~三九
二五・三一~四六
一一・一~三、七
・
一七~四八
一一・五五~五七
一二・一~二
・
九~一九
二二・二~六
一二・三七~四三
一四・一二~一七
一三・一
一四・一八~二一
一三・三〇
一四・二二、二三
一四・一~六
・
八~一〇
・
一六~一八
第 八 章
マルコ書
ヨハネ書
マルコ書
ヨハネ書
マルコ書
ヨハネ書
″
″
ヨハネ書 ″
″
″
″
マルコ書 ヨハネ書 ルカ書 マタイ書 ルカ書 マタイ書 ルカ書 マタイ書 ヨハネ書 ″
″
マタイ書 ヨハネ書 マタイ書 ″
ヨハネ書 ″ マタイ書 ヨハネ書 ルカ書 マルコ書 ルカ書 ″
マタイ書 ヨハネ書 マタイ書 ″
マルコ書
マタイ書
一四・二六
・
二三、二四
一六・一二、一三
七・七
一五・一八~二五
一四・二六~三一
一八・一~三
二二・四七、四八
二六・五一~五四
二二・五一
二六・五五~七四
二二・六一、六二
二七・一、二
一八・二九~三一
・三三~三八
一九・一~四 二七・一九 一九・五~一五
二七・一八、二四
・
二五
一九・一六、一七
・
一八の半分
二七・三八
一九・一九~二二
二三・三四
一五・二九~三二
二三・三六、三七
・
三九~四三
二七・四五~四七
一九・三〇
二七・五一
・
五四~五六
一五・四二~四七
二七・六二~六六 二八・一~七
二四・五~八
二八・八~一〇
二四・九、一一、一二
二八・一一~一五
二四・一三~四八
二八・一八~二〇
二〇・二一、二二
・
二四~二九
一・三
一六・一五、一六
二四・五〇
一・九~一二
一六・二〇
二〇・三〇、三一
第 九 章
マタイ書 ルカ書 マタイ書 ルカ書 マタイ書 ルカ書 マタイ書 ヨハネ書 ″
使徒行書 マルコ書 ルカ書 使徒行書 マルコ書 ヨハネ書 一・一~三 ・
五~一九
二・七、一一
三・五、一四 ・
一七~二二 四・一~六
・
一〇~一一
六・一二~一七
七・九~一七
八・二、六~一三
九・一~六
・
一二~二一
一〇・五~七
一一・一五~一八
二〇・一一~一五
第 十 章
黙示録
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
317
黙示録
第十一章
″
″
二一・一~一二
・
二一~二七
二二・ 全 章
・
五〇~五五
・
五七、五八
一・一七~一九
・
一三~一六
・
二〇、二一
三・一~五、七
・
一〇~一四
一・一六、一七
一・一八~二五
一・一八~三二
二・一~一一
三・一〇~一八
・
二二~二五
四・二四~二五
五・一、二
・
六~一一
六・二三
八・一~一一
・
一三~一八 ペテロⅡ 三・一~一五
テサロニケⅠ 四・一三~一八
″
五・一~三
テサロニケⅡ 一・六~九
″
二・一~一二
テサロニケⅠ 五・四~六
ピリピ 三・二〇、二一
コリントⅠ 一五・三五~四四
″
″
ユダ ″
″
テモテⅡ
″
第十二章
ローマ コリントⅠ
ローマ ″
″
″
″
″
″
″
″
″
第十三章
ローマ
八・二四~三九
・
九~二一
一・一三~一八
二・五~一一
三・一~二〇
二・八~一〇
四・一六~一八
五・一~一一
・
一四~二一
ローマ 一二・一、二
″
コロサイ ピリピ コロサイ ″
コリントⅡ 第十四章
″
″
一・三三、七、八
二・六
三・五~八
・
一一~一三
・
一六・一七
四・一八、一九
・
二三
五・二一~二三
六・一六~一九
・
三二~三三
一二・一
ヨハネ書 一五・九~一四
コリントⅠ 一三・ 全 章
ヨハネⅠ 四・七~二一
二・一~六
・
一五~一七
五・一~五
一・一七
第十五章
″
″
″
テモテⅠ
伝道書
箴 言
″
″
″
″
″
″
″
″
″
箴 言 ″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
″
箴 言 二七・二〇、二一
八・一〇、一一
″
二八・一、一三
九・八
一〇・八、一二
″
・
二三
″
二九・一、一五
・
一七、一九
一一・二、七
″
・
二三、二五
伝道書 ・
一三、一四
四・九、一〇
″
・
一七、二二
・
一二
″
・
二四
五・一〇
一二・一五、一八
″
七・二、三
″
・
一九
・
五、六
一三・二〇、二四
″
・
二六
一四・六、一二
″
八・一一、一三
″
・
二五、二三
九・一八
″
一〇・一
・
二九、三〇
″
二・二二、二三
・三一、三四
一五・一、三 ″
一二・一三、一四
第十六章
・
二三、三三 一六・九
一七・一〇、二八
詩 篇 第一篇 全 篇 一八・二、一三
″
第一一五篇 一~八、一一
一九・一九
″
一三~一八
二〇・三、九
″
第一九篇 全 篇 二一・二
″
第二三篇 全 篇 二二・三、六、一五 ″
第五一篇 一~一四
″
・
二四、二五
第一〇三篇 全 篇
二三・二九、三〇
″
第一一九篇 一~八、
二四・五、一六
″
九~一六
″
・
二九
第一三九篇 全 篇
二五・一五、一七
″
第一四五篇 全 篇
二六・四、一一
・
一六~一九
・
二八
二七・二、四
・
一五、一七 318
嵐とともに雷鳴
主の日は盗人のように襲って来ます。
…ですから私たちは
聖い信心深い生活を送らなければなりません。
ペテロの手紙第Ⅱ 3:11
319
320
321
主を祈り求める人に、
真心をもって呼び求めるすべての人に、
主は近いのです。
詩篇145篇18節
発行 聖書配布協力会
〒981-2153 宮城県伊具郡丸森町郵便局私書箱第3号
昭和
昭和
昭和
平成
平成
平成
平成
52
60
63
14
16
19
20
年
年
年
年
年
年
年
12 月 15 日初版印刷発行
6 月 15 日 第 6 版発行
10 月 1 日 改訂版発行
3 月 1 日 第 12 版発行
7 月 1 日 第 13 版発行
2 月 1 日 第 14 版発行
7 月 1 日 第 15 版発行