3 講演1 「飼料穀物市場とDDGS・エコフィード(食品残渣飼料)など循環

講演1
「飼料穀物市場とDDGS・エコフィード(食品残渣飼料)など循環型飼料原料の最新動向」
三井物産株式会社 食料・リテール本部
淋 真也
<コーン関連>
世界のコーン消費量は世界人口増、畜肉消費量の増加を背景に過去 20 年間で 70%強増加
(88/89 年度 451 百万トン⇒07/08 年度 770 百万トン)している。一方、世界コーン生産量
についても過去 20 年間で 90%強増加(88/89 年度 401 百万トン⇒07/08 年度 774 百万トン)
している。近年は米国産コーンの単収が 160 ブッシェル/エーカーを上回り、大豊作となっ
た 04/05 年度、及び米国産の生産量が史上最大になると予想されている 07/08 年度を除き、
消費量が生産量を上回っており、期末在庫は減少傾向にある。国別期末在庫を見ると米国
の在庫が最も多く(07/08 年度 43 百万トン)
、次いで中国が多い(同 29 百万トン)が、期
末在庫の減少傾向が最も顕著なのは中国である。
現在米国は世界生産量の 4 割強を占める世界一の生産国であり、国際貿易市場における
輸出シェアは 7 割と圧倒的である。然るに米国における在庫減少は世界市場、日本のよう
な輸入国には多大な影響を及ぼす。エタノール向け需要増が本格化する今後は需給逼迫が
更に加速すると懸念されている。
コーン貿易市場にて世界 2 番目の輸出量を誇るアルゼンチンでさえ生産量は 23 百万トン
前後であり、全生産量を費やしても米国の年間エタノール用コーン需要の増加分にも満た
ない。ブラジルのコーン生産量は米国、中国に次いで世界第 3 位である。同国は 90/00 年度
まではネット輸入国であったが、大豊作となった 00/01 年以降はネット輸出国となっている。
ブラジルの粗粒穀物収穫面積は 07/08 年度で 15.3 百万ヘクタールと 10 年前と比較し 20%増
加している。単収も向上はしているものの米国の僅か 38%に過ぎない。広大な未耕作地を
有しており、今後 GMO の導入などにより単収向上に努めれば将来的に生産量の増加も期待
は出来るが、輸出市場の関係から大豆の方が収益性高く、また輸出規模拡大には物流イン
フラ整備が必要である。
エタノール生産が増加し続けると生産量の飛躍的増加が不可欠。他穀物の需給も逼迫し
ており、中長期的に大豆、小麦からの作付面積奪取は困難であろう。需要増が確実である
以上、一度の不作が急激な需給逼迫、価格上昇を招く。大規模な旱魃等があれば価格暴騰
を招く為、そのリスクは事前に価格に織り込まれることになろう。但し、天候不順がなけ
れば、価格は高水準を維持するも供給不安を招くような状況にはならないと予想する。
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<DDGS 関連>
米国では近年、燃料用エタノールの生産拡大に伴い、DDGS(Dried Distillers Grains with
Solubles)
やグルテンフィードなど副産物の生産量が増加傾向にある。
06 年度の米国産 DDGS
生産量は 13 百万トン、07 年度は 20 百万トン、08 年度は 25 百万トンにまで増えると予想
されている。DDGS 生産量の内、約 9 割は米国内で消費され、残り 1 割(1 百万トン強)が
輸出市場に向けられている。
日本全体の DDGS 輸入量は月間 9,000-10,000MT にまで増えているが、輸入形態はコンテ
ナが主流であり、価格は飼料工場受入ベースではコーン対比で割高になっている。価格面
に加え DDGS 使用のボトルネックになっている理由はエタノール工場により成分・色・粒
度のぶれが多いこと。これは起用プラントの違いや原料品質のみならず、製造工程(粉砕
から発酵、乾燥に至るまで全て)に大きく起因している。
再生可能燃料協会(RFA)によると、2007 年 10 月現在北米全土で稼働中のエタノール工
場は 131 あり、合計年産能力は 69 億ガロンである。その他現在建設中、及び能力拡張中の
エタノール工場が 86 あり、これら新規建設中の年産能力は 66 億ガロン、双方合わせた年
産能力は 135 億ガロンに達する見通し。現在米議会にて審議中の新エネルギー政策法案(上
院案)では、2022 年までに再生可能燃料の車両用添加量を 360 億ガロンにまで引き上げる
とされており、内 150 億ガロンまでがコーン由来のエタノールとの構想。この数字は DDGS
ベースで年間 40 百万トン以上の生産量に匹敵する。米国内の DDGS 消費は 30 百万トン程
度が上限と考えられており、今後 10 百万トン以上が輸出市場に回る見通し。輸出量の伸び
にコンテナキャパ、積込能力が追いつかず、今後はバルク船での輸出形態が主流になると
の見方もある。但し、DDGS は脂肪分が 10%前後と高く、ホールド、揚地サイロ内で固結
する恐れもある。
このように品質・輸送・保管・価格上の課題は多々あるが、今後米国産 DDGS の生産量・
供給量が伸びていくことは間違い無い。また米国エタノール業界の規模拡大に伴い、品質
の統一性またペレット化等により輸送保管上の問題も徐々に改善されつつある。国として
も DDGS、食品残渣など未活用資源の使用向上を推進しており、DDGS は将来性のある新た
な家畜飼料の一つであると認識する。
<エコフィード関連>
食品産業における 2006 年度の食品廃棄物の年間発生量は 1,100 万トン。対し食品廃棄物
の年間再生利用量は 670 万トン程度。食品リサイクル法の影響もあり、再生利用率は年々
増加しているが、未だに 400 万トン以上が焼却・埋め立てにて処分されている。
再生利用分の約 35%は飼料化されているが、三井物産では 10 年以上前よりエコフィード
事業に取り組んでいる。現在では札幌、東京、京都の 3 ヵ所を製造拠点として、循環資源
原料を集め、
「油温減圧乾燥方式」
(てんぷらと同じ原理)で飼料化し、配合飼料メーカー
に販売している。このエコフィードは食品副産物(Dried leftover)という名前で飼料登録さ
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れており、認知度・引き合いは日々高まっている。
今年 12 月に食品リサイクル法が改正され、
一律 20%としてきたリサイクル率目標を改め、
食品製造業や同小売業など業種毎に目標が定められる。この法改正に伴い、循環資源原料
が確保しやすい環境になると思われ、エコフィードの生産量も増えると予想する。日本の
食料自給率向上に寄与出来るという大きな意味もあり、DDGS 同様に今度注目される飼料原
料の一つである。
以上
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