Ultra HDはTVの未来です

NEWS
212/15
UltraHD は
テレビの未来です
4K テレビはマーケットを制覇しつつあります。しかしながら、
従来の放送を介して超高解像度番組を提供するためには、製
作・送信チェーン全体をアップグレードする必要があります。
ローデ・シュワルツには、放送会社がこれを可能にするすべて
の機材があります。
汎用測定器
信号発生器、
シグナル・スペクトラム・ア
ナライザから作られるコンパクト・チー
ム
セキュア通信
同時通信の自動検出による航空交通
の安全性の向上
無線モニタリング/無線探知
従来の方向探知と TDOA に対応した
ハイブリッド無線探知システム
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NEWS アプリケーションによって常に最新の状態を維持
タブレットユーザは、
今では NEWS をデジタルの形で読むことが
できます。iPad、
アンドロイド・タブレット、
およびアマゾン kindle と
いったデバイスに使われる R&S®News アプリケーションは、
それ
ぞれのプロバイダのアプリケーション・ストアから無料でダウンロー
ドすることができます。アプリケーションの言語は、
内部で英語、
ドイ
ツ語、
フランス語、
またはスペイン語へ設定することができます。
最新の印刷された文書の他に、最近の 3 年間に刊行されたすべ
ての記事へ秒単位でアクセスすることが可能で、
しかもトピック毎
に分類された状態でそれを行うことができます。コンテンツは多
数のビデオを含みます。グラフィカル・サインはアプリケーション
を最後にオープンしてからどの新しい記事が表示されたかをマー
クし、新しい機能の選択的ガイドを提供します。
ユーザの利点
■■ トピック毎に分類されたすべての記事を直ちに入手すること
が可能です。
■■ 製品の新機能の情報がタイムリーに紹介され、
次の印刷版
が出るまで待つ必要がありません。
■■ 印刷版に載せることのできなかった追加記事を読むことがで
きます。
■■ トピックに関連した詳細内容
(アプリケーションノート、製品
カタログ、
ビデオなど)へ短時間でアクセスすることができま
す。
R&S NEWS またはローデ・シュワルツというキーワードを
使って、あるいは対応の QR コードをスキャンするだけで、
個々のアプリケーション・ストアに用意されているアプリケー
ションを見つけることができます。
iPad 用 QR コード
NEWS
発行元:
Rohde & Schwarz GmbH&Co. KG
Mühldorfstrasse 15-81671 München
www.rohde-schwarz.com
地域別連絡先
■■ ヨーロッパ、
アフリカ、中東:+49 89 4129 12345
[email protected]
■■ 北米
:1 888 TEST RSA (1 888 837 87 72)
[email protected]
■■ 中南米
:+1 410 910 79 88
[email protected]
■■ アジア太平洋
:+65 65 13 04 88
[email protected]
■■ 中国
:+86 800 810 8228 | +86 400 650 5896
[email protected]
編集者へのメール宛先:[email protected]
アンドロイド用 QR コード
編集およびレイアウト:Redaktion Drexl&Knobloch GmbH(ドイツ)
英訳:Dept. GF-MC7
写真撮影:Rohde & Schwarz
印刷国:
ドイツ
ボリューム:55
発行部数(ドイツ語版、英語版、
フランス語版、
スペイン語版、
日本語版)
:約
75,000部
発行回数:年に約3回
ISSN 0028-9108
最寄りのローデ・シュワルツ販売店を通して無料で提供します。
出典が記載される場合には抜粋の転載も許可されます。コピーをローデ・
シュワルツ
(ミュンヘン)
までお送り下さい。
PD 3606.9604.72
R&S®はRohde & Schwarz GmbH & Co. KG の登録商標です。商標名は所有
者のトレードマークです。CDMA2000® は Telecommunications Industry
Association(TIA-USA)の登録商標です。Bluetooth® のワードマークとロゴは
Bluetooth SIG, Inc. が所有する登録商標であり、
ローデ・シュワルツはライセンス
の下で当該マークを使用しています。他のすべての商標はそれらの個々の所有者の
財産です。
表紙について
© Loewe Technologies GmbH
民生用オーディオビジュアル電子機器の
世界では、次から次へと新しい製品が登
場しています。SD 媒体である DVD は
依然として販売の首位を占めていますが、
3D の波は既に減退し、HD 技術が我々
の生活に入ろうとしつつあります。4K と
UltraHD(UHD)が現在における最新技
術です。比較的安価なカメラやテレビでは
この分解能が既に使われていて、これが
標準となる可能性があります。イメージセ
ンサやパネルの製作がもはや問題ではな
くなっているためです。しかしながら、プ
ロのビデオ制作に関しては、記録と再生と
の間に依然として大きなギャップが存在し
ます。
UHD 記憶媒体のマスマーケットへの登場
は 2015 年末までは実現しないと思わ
れるため、この技術を早くから採用してい
る場合、しばらくストリーミングサービス
を使い続けなければなりません。ストリー
ミングサービスには高速インターネットの
接続が必要ですが、韓国のような先駆者
は、地上波放送、衛星放送、および有線
放送の従来チャネルにおいても UHD コ
ンテンツをどのように提供できるかを教え
てくれます。しかしながら、これを実現す
るためには、放送会社はそのリソースを全
面的にアップグレードしなければなりませ
ん。ローデ・シュワルツは、放送会社がこ
れを行えるすべての機材を保有しています
(44 ページ)
。さらに、民生用電子機器
の分野ではファインチューニングが依然と
して行われていて、UHD には HDMI 2.0
が不可欠です。インタフェースを簡単にテ
ストできる方法については、52 ページを
参照してください。
概要
NEWS
212/15
無線技術
テスタ
®
■ R&S
CMW500
ワイドバンド無線機テスタ
汎用測定器
ネットワーク解析
®
■ R&S
ZNBT8 ネットワーク・アナライザ
世界唯一:24 のポート.......................................... 18
WLAN トラフィック・オフロード:混雑した無線通信ネッ
トワークのバイパス................................................. 10
■ R&S
テスト・システム
伝送・反射測定および S パラメータ測定に対応した費
用効果の高いアナライザ........................................ 22
®
ZND ネットワーク・アナライザ
®
■ R&S
TS7124 RF シールド電波暗箱
信号の発生と解析
オシロスコープ
®
RTO、R&S®RTE
■ R&S
信号解析に対応した 16 ビット垂直分解能........... 28
®
■ R&S
RTM2000
460M サンプルのデータ捕捉メモリを使用した長い
信号シーケンスの解析............................................ 31
データ・レコーダ
®
■ R&S
SGT100A ベクトル信号
発生器、R&S®FPS シグナル・
スペクトラム・アナライザ*
®
■ R&S
IQR I/Q データ・レコーダ
スペクトラムの記録と使用...................................... 34
テスト・システム
®
■ R&S
OSP オープン・スイッチ
および制御プラットフォーム
新しい RF モジュールは使用範囲を拡大します... 38
生産に対応した強力な製品群................................. 24
将来の開発/大量生産を見据えたテスト・システム
................................................................................. 16
ワンボックスに 24 のポートを備えたネットワーク・アナライザ
新しく、
かつ入手しやすい価格の R&S®ZND ネットワーク・アナライザは、
ケーブル、
アッテ
ネータ、
アンテナ、
またはフィルタの生産テストに適したソリューションです
(22ページ)
。
(各ポートが高速の2ポート・アナライザの性能を有している)
は、ローデ・シュワルツ以外では見ることができません(18
ページ)
。
4
EMC/電界強度
基準
®
セキュア通信
無線モニタリング/無線探知
航空交通管制
®
■ R&S
EMC32
EMC 測定ソフトウェア
■ R&S
Series4200
ソフトウェア内蔵の無線装置
Fujitsu Technology Solutions GmbH で使われ
ています................................................................... 40
航空交通の安全性が向上:
同時送信を自動的に検知........................................ 56
暗号製品
■ TopSec
方向探知
■ ハイブリッド無線探知システム
従来の方向探知(AoA)
と TDOA を使用したハイブ
リッド無線探知を提供.............................................. 64
Mobile
放送およびメディア
その他
フォーカス
マストヘッド.......................................................... 2
UltraHD はテレビの未来です............................... 44
NEWS コンパクト........................................... 6
テストおよび測定
®
VTC、R&S®VTE、
R&S VTS ビデオ・テスタ
■ R&S
®
最新の HDMI 2.0 6G をサポート....................... 52
あらゆる電話アプリケーションに対応した最新の暗号
化を行います........................................................... 60
ニュース.............................................................. 68
ITU に準拠したモニタ
リング、方向探知、およ
び TDOA に基づく送
信源の特定に使われる
コンパクトなアウトドア
R&S®UMS300 モニ
タリング・ラジオロケー
ション・シ ス テ ム( 6 4
ページ)
NEWS 212/15 5
NEWSコンパクト
R&S®TS8997 でISM バンド製品を最新 EMC 規格に準拠した試験を実現
2 0 1 5 年 1 月に、2 . 4 G H z および
5GHz の ISM バンドの電波を送信するす
べての製品に対して ETSI EN 300 328
規格と 301 893 EMC 規格の改訂版が
発効となりました。これらの規格はより厳
しい内容となっていて、新しい要求事項が
入れられています。変更は、無線技術の広
い範囲の帯域(高速データと低速データ、
広帯域または狭帯域、MIMO、周波数ホッ
パ)を占めてコンフリクトを及ぼし合う度
合いが増えてきている WLAN/Wi-Fi、
Bluetooth ® 、およびリモート制御アプリ
ケーションの普及の拡大によってもたらさ
れたものです。今回の規格の改訂は、
これ
らの多様なサービスが将来において干渉
を起こすことなく共存できるようにするこ
とを目的とするものです。R&S®TS8997
テスト・システムは R&S ®EMC32 ソフト
ウェア・プラットフォーム(40 ページ参照)
によって制御され、
すべてのテストを全自動
で実施します。このテスト・システムは、併せ
てアンテナカプラである R&S®DST200
RF 診断チャンバと併用することで特に有
効なものとなります。
CISPR、EN、VDE、ANSI、FCC、および MIL STD 461F に準拠した
妨害電圧測定用の新型 4 ライン V ネットワーク
電源によって作動する負荷の EMC 測定
(規格に従って実施)では、ライン・インピー
ダンス安定化ネットワークが使われます。こ
れらのネットワークは正確に規定された電
気特性を有し、T&M の目的に必要な精度
と再現性を保証します。R&S ® ENV432
の登場によって、ローデ・シュワルツの製品
群に大半の負荷の測定に理想的なモデル
が加わりました。R&S®ENV432 は、単相
および多相のデバイスへ接続することがで
きます。多相のデバイスは 1 相当たりで
最大 32A の電流を連続して流すことがで
き、
また、短時間なら 50A の電流も流すこ
とができます。自動ファンはすべての運転
条件下において温度を安全な値に保ち、パ
ルスリミッタは測定レシーバの入力を保護
します。自動テスト・システムでは、相の選択
のリモート制御に TTL 制御入力が用いら
れます。それらはローデ・シュワルツのコント
ローラまたは測定レシーバによって作動さ
せることができ、それらのファームウェアは
R&S®ENV432 と併用できるよう構成さ
れています。
最大で 8 つの独立したベースバンドを有する
R&S®SMW200A ベクトル信号発生器
T&M 機器の開発者は、着実に複雑さを増
していく現代の無線システムに対応できる
よう、常に革新を進めてゆく必要がありま
す。1 台の信号発生器で 8 つの独立した
ベースバンドを有する機種は以前には存
在しませんでした。R&S®SMW200A の
マルチ・エンティティ・オプションによって、
以前は膨大な労力を必要としたために性
能が限定されてしまっていた非常にコンパ
クトなセットアップを有するアプリケーショ
ンを実施することが可能となります。複数
の規格の基地局のテスト、干渉シナリオの
6
シミュレーション、および集合 LTE キャリ
アの生成からビームの形成、MIMO、およ
びレーダ信号まで、R&S®SMW200A は
最高品質のシグナルミックスをわずか 2
~3 の動作ステップで提供します。この計
測器は 2 つの内部 RF パスを装備できる
とともに、I/Q インタフェース経由で外部
R&S®SGT100A RF ジェネレータ
(図と
24 ページも参照)
を接続することができ、
最小スペースで最大 8 つのパスを有する
完璧なソリューションを構築することが可能
となります。
性能と測定簡便性が向上した新しいパワーセンサ
ロ ー デ・シュワ ル ツ は 、まったく新し い
パワーセンサ・ファミリ― ― 3 つ のパス
を有 するダイオード・パワーセンサ で あ
る R&S ® NRPxxS/SN シリーズ――
を 販 売して い ま す 。以 前 の モ デ ル も 十
分に高度な設計がなされていましたが、
R&S®NRPxxS/SN シリーズははるかに
優れた機能を提供します――すなわち、高
い測定スピード、広いダイナミックレンジ、
高い感度、ならびにより多くの構成オプショ
ンを有しています。たとえば、SN モデルの
追加 LAN インタフェースは、あらゆる距
離に渡ってブラウザ制御によるリモート測
定を可能にします。また、双方向トリガ・ポー
トも有し、タイムクリティカルなセットアッ
プにおいて測定を適切に同期させること
が可能です。ステータス LED によって計
測器の動作状態を一目で把握することが
できます。これは、生産に複数のセンサを
使用している場合に有効な機能です。測定
ノイズは感度、ダイナミックレンジ、および
測定スピードなどの重要な品質パラメー
タに大きな影響を与えるので、低測定ノイ
ズの達成に開発の焦点が置かれました。
20nW の代表的なノイズレベルにおいて、
R&S®NRPxxS/SN センサはセンサの分
野で最高の値を実現します。周波数の上限
値として 8GHz、18GHz、
および 33GHz
を得ることができます。現在、
さらに高性能
のモデルの開発が進められています。
ターゲット・シミュレータと FMCW 信号解析を使用しての
自動車用レーダの包括的テスト
ローデ・シュワルツは、今では ITS や mirosys のターンキー自動車用レーダ・ターゲッ
ト・シミュレータの独占的ディストリビュー
タとなっています。R&S ®FSW シグナル・
スペクトラム・アナライザとその FMCW
チャープ信号用解析オプションを組み合わ
せることで、ARTS は自動車用レーダ・セ
ンサの開発と生産にとって革新的なテスト・
ソリューションを提供します。R&S ® FSW
はチャープレート、チャープ長さ、および
チャープレート偏差などのパラメータに
従って 、自 動 車 用レ ー ダ で は 一 般 的 な
チャープ信号の特徴付けを自動的に行い
ます。ARTS は、移動ターゲットの距離、速
度、サイズを調整でき、現実的なシミュレー
ションを可能にします。構成に応じて、パラ
メータの違う異なるターゲットを 4 種類ま
でリアルタイムで表示することができます。
この計測器のコンビは開発、生産、品質保
証、および承認に大きな利点を与えます。
これまでではじめて、妥当なテスト深度と
100% のテスト・カバレッジの下で生産の
連続テストを行うことが可能となりました。
テスト・ソリューションは、共通の 24GHz
と 77GHz の自動車用レーダ・バンドで作
動します。
費用効果の高いネットワーク・アナライザの自動 4 ポート校正
R&S ® ZN-Z153 自動校正ユニットは、
8.5GHz 以下のローデ・シュワルツ製ネッ
トワーク・アナライザの校正を短時間で容
易に行うことを可能にします。これは、ロー
デ・シュワルツの自動校正ユニット製品群
の中のもう 1 つの経済的な 4 ポートモ
デルです。ポートの配置は、もう一方の 4
ポートモデルである R&S®ZN-Z51 とを
差別する主要な選択基準となっています。
R&S ®ZN-Z153 のポートは一列に配置
され、一方、R&S ®ZN-Z51 は各側に 2
つのポートが配置されています。最も有効
なポート配置は、ユーザのテスト・セットアッ
プに従って決定します。ユニットは、ユーザ
固有の校正データを完全な構成で記録す
るための内蔵メモリを備えていますが、簡
単に着脱のできるマイクロ SD も使用す
ることができます。これによって、容易に作
業を整理できるとともに容易に結果を保管
することができます。ローデ・シュワルツの
R&S®ZNB/R&S®ZNBT/R&S®ZNC/
R&S ® ZND ネットワーク・アナライザと
R&S®ZVA/R&S®ZVT ネットワーク・アナ
ライザは、USB 経由で校正ユニットを接続
した時点で速やかにその校正ユニットを識
別します。
NEWS 212/15 7
NEWSコンパクト
各種機能を備えた R&S®HMC 電源
ト ラ ッ キ ン グ 、シ ー ケ ン ス 処 理 、お
よ び F u s e L i n k ― ― こ れら の 用 語
は 、ロ ー デ・シュワ ル ツ が そ の 新 し い
R&S ® HMC804x 電源シリーズへ搭載
した最も興味を引く追加機能の一部を表
しています。ロギング機 能とエネルギー
メータモードも EUR 1000 の下で使
用 可 能 な 装 置に対 応する明 白 な 革 新 的
機能です。ローデ・シュワルツの子会社で
ある HAMEG Instruments が開発し
た R&S®HMC 電源は、1 つ、2 つ、
また
は 3 つのチャネルを備えています。これら
のデバイスはすべて最大 100W の電力
を供給し、0~32V の間を 1mV 間隔で
調整することができます。
トラッキング機能
は、組合せチャネルに同期させて電流/電
圧リミットを変更することを可能にします。
FuseLink は類似の考え方をベースとして
います。FuseLink は、複数のチャネルに安
全切断電流リミットを組み合わせていま す。シーケンス処理により、最大で 10 秒
の時間に渡って個々のチャネルを連続的に
オンにすることが可能です。ロギング機能
は、すべての電流、電圧、および時間の値を
保存します。エネルギーメータモードは、接
続された負荷へ供給される電力をワットで
連続的に表示します。多彩で高度な機能を
魅力のある価格で手に入れることができま
す。それこそが、R&S®HMC804x モデル
を代表的な高価値計測器としている理由で
す。
ブラウザベースのウェブ・ヘルプによるマニュアルおよび説明への容易なアクセス
ローデ・シュワルツは、ユー ザにフレンド
リーであることを重要視しています。それ
こそが、
ローデ・シュワルツがユーザ・インタ
フェースのエルゴノミックデザインに多く
の努力を傾注している理由なのです。最も
洗練された GUI でも、
わかりやすく作成さ
れた文書の代わりにはなりません。このた
め、多くの計測器は内容に応じたヘルプ機
能を用意していて、
このヘルプ機能へは専
用ボタンを使っていつでも速やかにアクセ
スすることができます。ただし、
このソリュー
ションは、小さなディスプレイしか装備して
いないまたはディスプレイを装備していな
い計測器では役に立ちません。これが、
ウェ
ブ・ヘルプが文書や PDF ファイルに対し
て使用可能な場合、有効な代替機能であ
る理由です。ウェブ・ヘルプは、完全な計測
器説明文書を索引と検索機能を有する構
造化 HTML フォーマットの形で提供しま
す。ある計測器でウェブ・ヘルプが利用可能
であれば、そのウェブ・ヘルプへは関連の製
品ページのダウンロード領域からアクセス
することが可能です。ただし、ダウンロード
する必要はありません。ウェブ・ヘルプはオ
ンラインで機能し、ユーザはマウスを 2~
3 回クリックするだけで製品の詳細を知る
ことができます。ホームページのアドレスを
ユーザのブラウザのお気に入りへ追加して
ください。
DOCSIS 3.1 信号を解析できる最初のソリューション
新しいケーブルによるデータサービスのイ
ンタフェース標準(DOCSIS)3.1 は、既
存のハイブリッドファイバ同軸(HFC)ケー
ブルテレビ・ネットワークを介して高速デー
タ転送を行います。この標準の計画的な投
入に合わせて、ケーブルヘッドエンド、ケー
ブルモデム、およびネットワーク機器の製
造者やケーブル・ネットワークのオペレータ
は、R&S®DSA PC 解析ソフトウェアを利
用することができます。R&S®DSA PC は
R&S®FSW シグナル・スペクトラム・アナラ
イザとの組み合わせで機能し、OFDM ベ
クトル・シグナル解析を使って信号を記録
します。このソフトウェアは記録された I/
Q サンプルを解析し、
さまざまな MER 値
8
とDOCSIS 3.1 信号の品質を総合的に記
述するビットやコードワードのエラー統計
を出力します。R&S®DSA ソフトウェアは
MER とサブキャリアの関係をそのまま表
示して、送信チャネルにおける干渉やその
他の負の影響を容易に検出できるようにし
ます。この解析ソリューションは、ラボ条件
下で実施するすべてのネットワーク・セグメ
ントのテストにも使用することができます。
このソフトウェアとローデ・シュワルツが昨
年に登場させた R&S ®CLGD DOCSIS
ケーブル・ロード・ジェネレータと組み合わせ
た場合に、そのテストを極めて容易に行うこ
とが可能となります。
ビデオ・ポストプロダクションのための高性能モジュラ記憶ソリューション
放送スタジオとポストプロダクションの IT
環境では、
リアルタイム帯域幅とビデオ・
サーバの信頼性に高い要求が課せられま
す。新しい R&S ®SpycerBox Cell は、
他に類を見ない形でこれらの要求に対応
します。わずか 1 ハイトユニットのこの測
定器は、最大 36Tbyte(最先端の需要に
適応)の総容量を有する 30 枚の SAS
エンタープライズ・ハードディスクまたは
SSD エンタープライズ・ハードディスクと
3Gbyte/秒の転送速度を持っています。柔
軟なスケーラビリティによって性能と容量
をカスタマー・ニーズに合わせることができ
るので、8K(UHD 2)のビデオデータでも
処理することができます。データは RAID
1 と RAID 5 または RAID 6 の組み合
わせによって保護され、データ損失の可能
性はほとんどありません。
(可逆の)ディス
クエラーが発生した場合には、エラーを起
こしたディスクをわずか 2~3 分で運用中
に交換することができます。2 つのスライ
ドイン・ディスクユニットを特徴とする洗練
された設計がこれを可能にし、ディスクへ
のアクセスは計測器の前部と後部の両方
から容易に行うことができます。ファン、電
源、およびコントローラもホットスワップが
可能です。R&S®SpycerBox Cell は、
プ
ロのビデオ製作ニーズのすべてに対応する
ソリューションを持つ記憶装置の階層ファ
ミリに属しています。詳細についてはwww.
dvs.deを参照してください。
無線監視の容易なオールインワンの革新的アンテナ・システム
新しい R&S®AU600 無指向性アクティ
ブ 受 信 アンテ ナ・システムは 、市 場 に 出
ているアンテナ・システムの 1 つです。
R&S®AU600 は、主に VHF と UHF の
周波数範囲のすべてならびに ITU 勧告に
従った SHF スペクトラムの一部のモニタ
リングを管轄する規制当局のために設計さ
れた製品です。オールインワンのソリュー
ションである R&S®AU600 は、
この形式
ではこれまでに存在しなかった方法でこの
タスクを実行します。このシステムは、耐候
性のレドームで覆われた 4 つの分離した
無指向性受信アンテナから構成されていま
す。耐候性は文字通りの意味を持っていて、
レドームは 275km/h までの風速に耐え
ることができ、他のすべての要因に対して
高い耐摩耗性を発揮します。その内部機能
はさらに印象的なものです。このシステム
は水平偏波信号と垂直偏波信号に適した
設計となっていて、20MHz~8GHz の範
囲――この種のアンテナでは他に類を見な
いスペクトラム――をカバーします。無線
帯域などの臨界周波数に対応する内蔵の
切り替え可能な帯域阻止フィルタが不要な
相互変調積を低減します。アクティブ/パッ
シブの切り替えによって、状況によって生じ
た要求事項に基づいて感度調整を行うこと
ができるので、出力の大きな送信機の近く
でもアンテナを運用することが可能となり
ます。このシステムは、R&S ®OSP120/
R&S®OSP130 オープン・スイッチ制御プ
ラットフォームを経由して制御するかある
いは LAN インタフェースを経由して手動
で制御します。
複雑な信号シナリオに対応した新しい高速スキャン方向探知機
R&S ® DDF5GTS は、ローデ・シュワル
ツの方向探知機ファミリの新しいフラッグ
シップモデルです。R&S ®DDF5GTS は
速度、精度、および多様性の新しい基準を
確立するものです。この方向探知機の優
れたフィーチャーは、濃密なスペクトラム
占有帯域、大きな反射、および大きなレベ
ル差を特徴とする厳しい信号環境に対し
て特に有効です。VHF/UHF/SHF の周
波数範囲に対応した非常に高速の3チャネ
ル・アーキテクチャと 80MHz リアルタイ
ム帯域幅は、最大 60GHz/秒の DF ス
キャン速度のベースを提供します。この高
速性によって、インターセプト信号の周波
数アジャイルと低確率の検出および方向
探知が可能となります。独立したデジタル・
ダウンコンバータ・チャネルのおかげで、
R&S®DDF5GTS は方向探知と受信を同
時に行うことができます。たとえば、復調さ
れた信号を使って下流のアナライザへの
供給を行うことができます。オプションとし
て、R&S®DDF5GTS は ITU に準拠した
測定方法への対応が可能です。この方向探
知機は広範なアプリケーションを提供し、多
くの DF アンテナの選択が可能という事
実がそれを示しています。興味深いフィー
チャーの 1 つとして、アクティブモード~
パッシブモード間でのアンテナの切り替え
はマウスをクリックするだけで行え、現在存
在する信号環境へフレキシブルに合わせる
ことができます。
NEWS 212/15 9
無線技術 | テスタ
WLAN トラフィック・オフロード:
混雑した無線通信ネットワークの
バイパス
10
WLAN トラフィック・オフロード――移動通信のデータトラフィックを WLAN ネットワークに迂回させること――は、
コンスタントに増え続けているデータ量へ対応するために、ネットワーク・オペレータが注目すべき代替手段です。仕
様は確立済みなので、新しい機能のテスト運用を行うことが、正式な運用を前にして次の大きな障害となります。こ
れらの複雑なシステムで使われる各種の異なる機器の円滑な相互運用が確実に行えなければならないので、テスト・
システムが重要な役割を果たします。
最先端の移動通信ネットワークでも近い
将来にはその容量の限界に達することが
予見されます。これは、主としてスマート
フォンやタブレットを経由したビデオの消
費が増加していることによるものです。結
果として生じるデータ量の大部分は建物
の中で発生するので、アクセスポイントが
使用可能である限りは、WLAN を経済的
な代替手段および移動通信ネットワーク
への追加手段として使用することができま
す。2 種類のネットワークが理想的にお互
いを補完します。移動通信ネットワークが
移動通信サービスを包括的にカバーする
一方で、
広帯域 WLAN が屋内利用におけ
る移動通信ネットワークへかかる負荷を軽
減します。
認証と認可
LTE または WLAN?
WLAN を経由して移動通信ネットワーク・
WLAN AP に
オペレータのコアネットワークへアクセス
おける
電界強度
する場合、アクセスが認証されているこ
とを確認しなければなりません。移動通
LTE への
復帰
WLAN
信規格と同様に、この確認は移動通信装
オフロード
しきい値
LTE
WLAN への
置の中の SIM カードを使って行います。
オフロード
パスワード入力の必要性をなくし、
シーム
時間
レスな移行を容易にするために、安全な
WLAN AP で使用したものと同じ手順が
適用されます。SIM カードのデータをネッ 図 1:WLAN アクセスポイントに最小の信号電界
トワーク・オペレータの認証サーバ(拡張 強度が存在する場合のみ WLAN トラフィック・オフ
認証プロトコル(EAP))
を使って WLAN ロードが機能します。
経由で自動的に比較し、多様な移動通信
規格へ組み込むことができるように多数
のプロトコルが定義されています。
基礎となる技術は WLAN トラフィック・
オフロードと呼ばれ、基本的にはいずれ
かの 移 動 通 信 規 格( G S M 、W C D M A 、 ポリシー:ネットワーク・オペレータの
CDMA2000®、LTE など)
との組み合わ 規則
せで機能します。
ネットワーク・オペレータは、
ポリシーという
名で知られる一組の規則を使ってそのネッ
ネットワーク事業へ与える利点は明白で トワークにある負荷のバランスを取るこ
どの
す。現代の移動通信装置のほとんどすべ とができます。このために、たとえば、
(オーディオ・テレフォニー/
てが WLAN インタフェースを備えてい データサーバ
ます。アクセスポイント
(WLAN アクセス ビデオ・テレフォニーやインターネットサー
ポイント
(WLAN AP))の取得コストは比 ビスなど)のオフロードに対してどこでい
較的安価です。加えて、WLAN は、移動 つどのような WLAN AP を使用できるか
通信規格に割り当てられている周波数ブ が移動通信装置へ通知されます。これに
ロックの外にある ISM バンドの中にある、 よって、特に大都市圏においてオフロード
2.4GHz と 5GHz の 2 つのライセンス に適した WLAN AP を見つけることが容
易になるとと同時に、スマートフォンのエ
フリーの周波数ブロックを使用します。
ネルギー消費を抑えることができます。ポ
WLAN トラフィック・オフロードの運用の リシーは、アクセス・ネットワーク発見選択
前に、3GPP と IEEE の標準化組織は多 機能(ADNSF)サーバによってオープン・
数の標準化されたプロトコルと手順を拡張 モバイル・アライアンス(OMA)のデバイ
しなければなりませんでした。以下の文章 ス管理を経由して移動通信装置へ送られ、
では、LTE との併用によってこの機能がい 加入者は必要なときに情報の問い合わせ
かに有効に働くかについて重点的に説明 を行うことができます。WLAN AP に存
在する信号電界強度も、LTE~WLAN ト
します。
ラフィック・オフロードの使用基準となりま
す。WLAN AP が存在するというだけで
は不十分で、指定された最小電界強度が
得られていなければなりません(図 1)。必
要な電界強度が存在しない場合には、
接続
が中断され、移動通信装置は LTE へ戻り
ます。
暗号化
盗 聴に対 する防 護も必 要です。移 動 通
信の加入者が自由なアクセスが可能な
WLAN AP を経由して LTE ネットワー
ク内の加入者へビデオ電話の呼び出しを
行ったと仮定します。データを確実に保
護するためには、LTE コアネットワーク内
のファイアウォールを起点として、WLAN
AP 経由でスマートフォンに対して IPsec
トンネルを確立して追加の暗号化を実施
します
(図 2)。
NEWS 212/15 11
無線技術 | テスタ
図 2:不正アクセスからの通信の防護:LTE コア
IPsec トンネル経由による暗号化
WLAN
ネットワーク内のファイアウォールを起点として、
WLAN AP 経由でスマートフォンに対して IPsec
3GPP
ネットワーク
EPC
IMS
ANDSF
Rx+
PCRF
IP/IMS
S7
SWn
モビリティ/
コントローラの
ゲートウェイ
S2b, S2c
ePDG
トンネルを確立して追加の暗号化を実施します。
PDN GW
SGi
SWm
SWa
3GPP AAA
サーバ
S5
SWx
IPsec
トンネル
HSS
S6
使用中の
GW
MME
S1-C
S1-U
LTE
WLAN AP
eNodeB
WLAN AP
UE
ANDSF: アクセス・ネットワーク発見選択機能; PCRF: ポリシー課金規則機能
IPsec: インターネット・プロトコル・セキュリティ; HSS: ホーム加入者サーバ; WLAN: 無線 LAN
UE: ユーザ機器(移動通信装置); MME: モビリティ管理エンティティ; PDN GW: PDN ゲートウェイ
AAA: 認証、認可、アカウンティング; ePDG: 高度パケットデータ・ゲートウェイ
自動で高速の WLAN アクセス
Amendment IEEE 802.11u は、
IEEE 802.11 標準化グループは、ア WLAN AP が 100 ミリ秒毎に送信する
クセス・ネットワーク・クエリ・プロトコル ビーコンに対してさらに情報を追加してい
(ANQP)を組み入れることができるよ ます(図 3)。WLAN AP との接続(この
うに新バージョン(Amendment IEEE 接続は認証連係手順の後に実施される)
802.11u)
で WLAN アクセス・プロトコ が実際に確立される前に、スマートフォン
ルの拡張を行いました。このプロトコルは、 は ANQP を使って新しい一般広告サー
スマートフォンから移動通信ネットワーク ビス(GAS)経由でオフロードに WLAN
への WLAN アクセスを自動的且つ高速 AP を使用するか否かを決めることができ
で行うことができます。WLAN AP との ます。
実際の接続が行われる前であっても、ス
マートフォンは WLAN AP 経由でアクセ
ス可能な 3GPP 移動通信ネットワークま
たはローミング・コンソーシアムに関する
情報を受信します。Wi-Fi アライアンスは、
新規格を一律に実施するとともに認定済
みの WLAN 機器の相互運用性を最大限
まで引き上げることができるように証明書
(Wi-Fi Hotspot 2.0(Passpoint™ と
しても知られている))
を発行します。
図 3:ビーコン内の追加情報は、WLAN アクセス
ポイントがトラフィック・オフロードに適しているか否
かに関する評価基準をスマートフォンに提供します。
12
通信の流れ
WLAN
ビーコン
複数の BSSID、
インターワーキング、
広告プロトコル、ローミング・コンソーシアム、
非常警報識別子
GAS 初期要求
ANQP クエリ, 基礎をなす原理につい
ては、
802.11u の表 11~15 を参照
してください。
GAS 初期応答
応答, 基本原理については、802.11u
の表 11~15 を参照してください。
ここからは 802.11u プロトコルの
変更はありません。
認証(WPA2 EAP)
連係
ネットワークの変更:
加入者に気づかれないことが理想的
WLAN トラフィック・オフロードを容認する
ための重要な前提条件は、無線通信ネット
ワーク~WLAN 間でシームレスな移行が
行われることです。加入者側でのインタラ
クションまたは入力が一切不要でなければ
なりません。理想的なケースでは、加入者
は移行にまったく気づきません
携帯電話の変更または無線アクセス技術
(RAT)の変更を行った後に IP ベースの
サービスを間断なく継続するためには、IP
フローモビリティが必要です。通信がクラ
イアント/サーバ・アーキテクチャをベース
としている世界では、
ダイナミック IP アド
レス割当を伴う高度なアドレス管理が必要
となります。これは、3GPP と高度 IP アド
レッシング指定による多数の修正プロトコ
ルを使って実現します。
高い要求が課せられる
検証テスト・システム
WLAN エンドから LTE コアネットワー
クへ入る入口にあるゲートウェイ/ファ
イアウォール
システムのすべての機器が一律に作動し、
規格に適合していることを確認するために ■■ ビデオまたはスピーチ・テレフォニなどの
は、包括的なテストを実施する必要があり
リアルワールド・アプリケーションを実施
ます。とりわけ、修正規格の重要要素とし
するための IMS サーバ
て移動通信装置のテストに焦点が置かれ ■■ DUT、WLAN AP、および LTE 基地局
ます。ユーザとの特に重要なインタフェー
の間のすべてのプロトコル・メッセージを
スを有するテスト対象機器(DUT)
は、
この
記録するためのメッセージ・アナライザ
シナリオで極めて大きな重要性を有して
います。テストでは、WLAN と LTE の両 個々のコンポーネントは、テスト・システム
方を介して DUT をテスト設備へ接続しま を形成するためにネットワーク化される
す。
か、あるいは R&S®CMW500 広帯域無
線機テスタ
(図 4)のように 1 つの装置へ
LTE~WLAN トラフィック・オフロード用 組み込まれます。一般原則として、
テストの
のテスト・セットアップは、以下の主要コン 再現性が得られるように、専用の計測器を
ポーネントを備えています。
使用するとともに市販のシステム機器の
■■ LTE 基地局のエミュレーション
(LTE コ 数を最小限に抑える必要があります。
アネットワークを含む)
■■ W L A N A P
( H o t S p o t 2 . 0または
Passpoint)
のエミュレーション
■■
図 4:ワンボックスで構成される R&S®CMW500 は、
LTE~WLAN トラフィック・オフロード機能の検証テストを実施するために必要となるすべてを提供します。
NEWS 212/15 13
無線技術 | テスタ
すべてのテスト要求事項に対応した
カスタム・ソリューション
でをカバーします。対応するソースコード
やインタフェース・ディスクリプションも用
意されていて、テストシナリオを個々のテ
スト要求事項に合わせて修正することがで
きます。
LTE と WLAN のプロトコル・スタックの
統合については、開発の初期の段階でプ
ロトコルの下位レイヤに関するテストを実
施する必要があります。必要な信号テスト
は、R&S®CMW500 と適切なミディアム M L A P I テストシナリオを 使 用 するこ
レベル・アプリケーション・プログラミング・ とで 、プ ロトコ ル の 下 位レイ ヤ に 対し
インタフェース
(MLAPI)
テストシナリオを て 極 め て 広 範 な テストオプションを 提
供 す ることが で きま す が 、プ ログ ラミ
使って実施できます。
ング に 関 す る 専 門 知 識 が 必 要 と なり
R&S ® CMW-KF650 オプションは、約 ます。代替製品は R&S ® CMWcards
50 のテストシナリオの入ったパッケー (R&S ® CMW-KT022)で、これはカー
ジを有しています。パッケージ内のシナリ ドゲームに似たグラフィカル・ユーザ・イン
オは、LTE コアネットワーク
(ePDG)の タフェースです。このツールは、特別なプ
ゲートウェイとの接続を確立するテストか ログラミング技術を要求することなく信号
ら認証テストや IP サービスを LTE から テストを編集することを可能にします(図
WLAN へ変更するテストならびに同サー 5)。
ビスを WLAN から LTE へ戻すテストま
そのネットワーク内で円滑な通信をでき
るよう、ネットワーク・オペレータは、サー
ビスを使 用したいすべての 装 置が合 格
となるテストケースを指定します。多くの
ネットワーク・オペレータに対して、
ローデ・
シュワルツは LTE~WLAN トラフィッ
ク・オフロード機能を検証するオプション
――たとえば、R&S ®CMW-KO576 と
R&S®CMW-KO569 ――を用意してい
ます。
R&S®CMW500 は、WLAN トラフィッ
ク・オフロード機能の開発と検証に対する
電話ボックスとして使うことができます。こ
の場合、DUT の RF 特性を検証するテス
トから機能テスト
(LTE と WLAN のプロ
トコル・メッセージの解析を含む)
までが網
羅されます。
図 5:R&S®CMW500 用の R&S®CMWcards グラフィカル・ユーザ・インタフェースにより、信号テストを仕様に従って極めて容易に編集することができます。
14
図 6:2.4GHz ISM バンドの WLAN と
LTE バンド 7 および 40 との間の
WLAN~LTE 間で発生しうる干渉
相互干渉は非常に重大な干渉です。
2401 MHz
パケット損失と性能テスト
ビデオ電話の呼び出しなどのデータサー
ビスの LTE から WLAN への変更は、可
能な限り中断が生じることなく、またデー
タパケットの損失を生じることなく行わ
れなければなりません。この変更は、目視
検査の他にメッセージ・アナライザ――エ
ラーの補正にも有効なツールです――を
使って詳細に検証することができます。さ
らに、データサービスの場合には、さまざ
まな条件および動作モードの下で規定の
2690 MHz
WLAN
LTE
LTE
LTE
バンド 40
チャネル
バンド 7
バンド 38
バンド 7
1~13
UL (FDD)
(TDD)
DL (FDD)
2300 MHz
LTE と WLAN のプロトコル・シーケン
スを同時に記録できる機能は、プロセス
が規格に従って機能しているか、エラー
の発見を行っているか、あるいはプロセ
スの 最 適 化を行っているかについて検
証する場合に非常に有効なものとなりま
す。たとえば、スマートフォンが Hotspot
2.0 に準拠した接続を WLAN AP と
確立しているか否かを検証する場合に、
R&S®CMWmars メッセージ・アナライザ
を使用することができます。このメッセー
ジ・アナライザは、ISO OSI モデルのい
くつかのレイヤの全体に渡って存在する
データメッセージとプロトコル情報を記録し
ます。必要な場合には、
正確な記録を行うた
めにフィルタを設定することができます。
2590 MHz 2620 MHz
LTE
(TDD)
プロトコルの解析
2483 MHz
2400 MHz
データ転送速度に関する最小要求事項を
検証する必要があります。大まかに言え
ば、
ラウンドトリップ時間を含むそのような
サービス品質(QoS)基準は、包括的 IP
データ解析の一部を構成します。
デバイス内共存テスト
2600 MHz
2500 MHz
WLAN トラフィック・オフロード機能のテ
ストを実施する場合、規格に従った動作
を確保することだけが重要な問題という
わけではありません。移動通信装置の中
で同時に使われる 2 つの無線規格の間
の干渉を確認することと、
この干渉をでき
る限りなくすことがもう 1 つの解決すべ
き問題となります。デバイス内共存テスト
を実施して、スマートフォン内で LTE 送
信機が WLAN 受信機へ及ぼす干渉と
WLAN 送信機が LTE 受信機へ及ぼす干
渉を測定します。このためには、たとえば、
WLAN チャネル 13(LTE バンド 7 か
ら 17MHz しか離れていません)を使っ
て受信機品質テスト
(PER 測定)
を実施し
ながら、スマートフォンから同時にビデオ
を LTE バンド 7 へ送信できるようにしま
す。理想的なケースの場合には、
ここで相
互作用が検出されることはなく、PER 測
定からは LTE 送信のないときと同じ結
果が得られます。図 6 で見られるように、
2.4GHz ISM バンドの WLAN と LTE
2700 MHz
周波数帯域 7 および 40 との間で発生しう
る相互干渉は非常に重大な干渉です。LTE
バンド40~WLAN チャネル間の相互干渉
は調査する必要がありますが、
LTE バンド 7
からの送信による干渉は WLAN の受信に
のみ影響を与えると推定できます。
サマリ
今日の移動通信ネットワークの中におい
ては Shannon に従って理論的に可能な
データ転送速度をフルに活用しても、使用
できる容量が増大するデータ・スループッ
ト要求事項を満たせなくなるのは時間の
問題です。代替ソリューションを見つけな
ければなりません。WLAN トラフィック・オ
フロードは有望なテクノロジで、移動通信
ネットワーク上における負荷を大幅に低
減することができます。仕様と標準化の確
立は終わっていて、現在は投入前のテスト
フェーズに入る段階となっています。この
フェーズでは、何よりも適切なテスト・シス
テムが必要となります。R&S®CMW500
はシステム全体を現実的にシミュレート
し、すべての関連テストを実施することが
できます。
Thomas A. Kneidel
NEWS 212/15 15
無線技術 | テスト・システム
将来の開発/大量生産を見据えた
RF シールド電波暗箱
同クラス最高のシールド効果を有する新しい R&S®TS7124 RF シールド電波暗箱は、信頼性と再現性の高い測
定を可能にします。手動タイプと自動タイプがあり、開発環境でも生産環境でも測定条件は同じです。
新しい R&S®TS7124 RF シールド電波暗箱(図 1)
は、移動無
線、RFID、Bluetooth®、ZigBee、WiMAX™、NFC、ISM、GPS、
および WLAN などのさまざまの規格に対応する無線インタ
フェースを有するデバイスのテストに使用できます。テストにおい
て、
これらのシールド電波暗箱はあらゆる要求事項とアプリケー
ションをカバーします。製品設計時の診断ツールとしての使用時
にも、あるいは生産シナリオ時の RF テストボックスとしての使用
時にも、
これらのシールド電波暗箱は遮蔽された再現性のあるテ
スト環境が必要なときに理想的な製品となります。
着することができ、
コンパクトなテスト・セットアップを保ちながら
DUT を収納できる大きな容積を提供します。
小さな RF テストボックスの重要パラメータとなるのがカップリン
グ係数です。アンテナカプラとDUT との間に十分なスペースが
あるため、R&S®TS7124 RF を使用することでこの係数は最
適なものとなります。
高いシールド効果
コンパクトかつ大容積なテスト装置
内 部 容 積 の 大 きな R & S ® T S 7 1 2 4 R F テストボックス
は、これまで小型の R&S ® TS7121 RF テストボックスや
R&S®TS7123 RF テストボックスから構成されていた製品範
囲をカバーします。19 インチ幅の新しいボックスはラックに装
R F テストボックスで最も重 要なパラメータであるシー ルド
効果に関しては、R&S ® TS7124 RF シールド電波暗箱は
300MHz~6GHz の周波数範囲で 80dB という極めて高い値
を実現します。この優れた特性は、非常に低い反射レベルも提供
する最高品質のアブソーバによって達成されます。
図 1:R&S®TS7124 RF は信号発生器およびスペクトラム・アナライザとともに、
さまざまの規格に適合する無線インタフェースを有する DUT のテストに用い
られる、
コンパクトなテスト・セットアップを形成します
(写真は、手動タイプのテストボックス、R&S®SMBV100A 信号発生器、および R&S®FSV スペクトラム・
アナライザのものです)。
16
図 3:RF テストボックスのアンテナはあらゆる要求事項に対応します。
図 2:アンテナリングは複数の可調アンテナに対応可能なので、
選択した方向で放射電力を測定することができます。
あらゆるアプリケーションに対応したアンテナ構成
再現性を有するテスト結果は、類似の測定を実施する上で欠くこ
とのできないものです。ここでは、アンテナが重要な役割を果た
します。R&S®TS7124 RF シールド電波暗箱には、異なるアン
テナ構成を使用することができます。複数のアンテナをボックス
内に置くことで、ユーザは自身の放射パターンを作り、選択した
方向で放射電力を測定することができます。複数のアンテナに適
合する新開発のアンテナリング
(図 2)
は、
アンテナを希望の位置
へ配置できるブラケットを備えています。さらに、その材料特性は
RF 測定にほとんど影響を与えません。ビバルディアンテナ(図
3)
は、広帯域スパイラルアンテナへの追加製品として高いゲイン
と優れた再現性を提供します。
ています。さらに、RF テストボックスはイーサネットまたは RS232-C インタフェースを経由してリモート制御することができま
す。アプリケーション毎に要求事項が異なるので、RF テストボッ
クスは、
イーサネット、USB、光ファイバ、および空圧系統との接続
に対してさまざまな方法で構成することができるシールド・フィー
ドスルーとともにインタフェース・パネルを前部と後部に持ってい
ます
(図 4)。
R&S®TS7124 RF シールド電波暗箱は、入手可能な価格でラ
ボ環境および生産環境の両方において高い品質と信頼性を提供
します。このシールド電波暗箱は、2015 年の第 1 四半期から
販売される予定です。
Iratxe Fernández Antón
大量生産環境に対応した堅牢さ
RF テストボックスは、その強固な構造のおかげでシールド効果に
顕著な影響を与えることなく百万回の開閉サイクルに耐えること
ができます。これが、高性能の閉鎖メカニズムを持つシリンダと耐
衝撃性を備えた自動タイプのモデルが大量生産環境の中で確実
に作動できる理由です。
図 4:構成可能なイン
あらゆるアプリケーションに対応できる
フレキシブルな構成
ラボ環境用の手動タイプと生産環境用の自動タイプは、いずれ
も測定条件が同等で同じ測定シナリオを使用できるようになっ
タフェース・パネル(こ
こでは後部)は、あらゆ
る ニ ー ズ に 対 応した
フィードスルーを提供
することができます。
NEWS 212/15 17
汎用測定器| ネットワーク解析
世界唯一:24 のポートを
備えたネットワーク・アナライザ
図 1:右:24 のポートを備えた新しい R&S®ZNBT8 ネットワーク・
アナライザは最高の性能基準を保ちながら同時マルチポート測定
を行えます。測定スピードの観点から言えば、R&S ® ZNBT8 は
ローデ・シュワルツが提供する高速スイッチマトリクスベースのソ
リューション――R&S®ZNB と R&S®ZN-Z84(左側に表示)――
より優れています。
18
ワンボックスに 24 のポートを備えたネットワーク・アナライザ(各ポートが高速の 2 ポート・アナライザの性能を有
している)は、ローデ・シュワルツ以外では見ることができません。これより、開発と生産においてまったく新しい選択
肢への道――たとえば、単一の掃引において 24 のポートを使い、DUT に対し高速で正確な測定を行うこと、ある
いは複数の DUT に対して同時測定を行うためにポートをグループに分割することなど――を開きます。
スマートフォンやタブレットに使用するマルチポート機器の開発お
よび生産において、測定精度とスループットに対して増大し続け
る要求を満たすこの R&S®ZNBT8
(図 1)
は、24 のポートを備
えた最初の市販ネットワーク・アナライザです。R&S®ZNBT8 は
9kHz~8.5GHz の周波数範囲をカバーします。R&S®ZNBT8
は、移動無線、GPS モジュール、WLAN モジュール、および
Bluetooth® モジュールなどに用いられるアクティブ・マルチポー
ト機器やパッシブ・マルチポート機器の開発および生産に使われ
るよう設計されています。
電子スイッチをなくし、RF 特性を低下させる関連損失を排除しま
す。この精巧なアーキテクチャのおかげで、ユーザは広いダイナ
ミックレンジ、高い出力電力、および極めて優れた電力処理能力
を得ることができます。R&S®ZNBT8 を用いたマルチポート測
定では、高い安定性、再現性、
および精度が得られます。
マルチポート測定が容易に
図 2:テストポート・インデックスの直
4 つのテストポートを有するベースモデルは、生産環境内におけ
る測定タスクの要求事項を厳格に満たすことを目的として、
オプ
ションを使って最大で 24 の追加ポート
(図 3)
を持てるよう拡張
することが可能です。
®
R&S ZNBT8 は自動化システムで使われる設計となっており、 接入力による迅速な S パラメータの
GPIB または LAN などを経由してリモート制御することができ 選択
ます。モニタ、
マウス、およびキーボードを接続すれば手動制御も
可能です。ユーザは、R&S®ZNB ネットワーク・アナライザに実装
R&S®ZNBT8 トゥルー・マルチポート・ネットワーク・アナライザ
されているものと同じ直感的なユーザ・インタフェースを利用す
ることができ便利です。R&S®ZNBT8 ソフトウェア・アーキテク
チャの各アスペクトは、
マルチポート・アプリケーションに対応した
反射率計 24
設計となっています。ユーザは、S パラメータ、波、
およびウェーブ
測定レシーバ
レシオなどの測定量をユーザ・インタフェースで直接選択します。
S パラメータと電力レベルに対応するテストポート・インデックス
基準レシーバ
を直接入力することができるため、多数のポートを使って DUT
信号発生器
のテストを行っている間でも、3 つ以下の操作ステップでアナラ
信号発生器
ポート 24
イザのすべての機能へアクセスすることができます
(図 2)。
プラットフォーム間の適合性
®
反射率計 2
®
R&S ZNBT8 は R&S ZNB アナライザと同じプラットフォー
ムをベースとしているため、同じユーザ・インタフェースとリモー
ト制御コマンドを持っています。R&S®ZNBT8 はR&S®ZVA、
R&S®ZVB、および R&S®ZVT のアナライザ・ファミリのリモー
ト制御コマンドもエミュレートできるので、面倒なシステム・ソフト
ウェアの変更を行うことなくアナライザの交換またはテスト・シス
テムのアップグレードに使用することができます。
測定レシーバ
基準レシーバ
信号発生器
ポート 2
反射率計 1
測定レシーバ
基準レシーバ
最大限の性能を引き出せる
トゥルー・マルチポート・アーキテクチャ
信号発生器
®
テストポート毎に反射率計を 1 台備えた R&S ZNBT8 の妥協
のないトゥルー・マルチポート・アーキテクチャは、優れた RF 特性
を発揮します。この設計は、
テストポートとスイッチマトリクスベー
スのマルチポート・システムで一般的に見られる受信機との間の
ポート 1
図 3:
トゥルー・マルチポート・アーキテクチャは、R&S®ZNBT8 の優れた RF
特性を発揮させるための重要要素です。
NEWS 212/15 19
汎用測定器 | ネットワーク解析
R&S®ZNBT8 とマトリクスベースのマルチポート・ソリューションの測定時間の比較
24
24
DUT のポート数
20
20
8
24
4
4 4
12
380
112
12
8
552
180
16
16
12
264
60
240
132
24ポートの R&S®ZNBT8
ベクトル・ネットワーク・アナライザと 4 つの N ポート・マトリクス
ベクトル・ネットワーク・アナライザと 2 つの N ポート・マトリクス
56
0
図4:R&S®ZNBT8 と
マトリクスベースのマ
100
200
300
400
500
N ポート に対する掃引数
ルチポート・ソリューショ
ンの測定時間の比較
最短の測定時間
R&S ® ZNBT8 は、従来のマルチポート・ソリューションより
計測器のマルチポート・アーキテクチャによって、DUT のすべて 10dB 高いダイナミックレンジを有しています。これは、ダイナ
のポートで測定を同時に行うことができます。すべてのポートか ミックレンジが同じ場合、R&S®ZNBT8 が従来の装置と比べて
ら得られたデータは同時に捕捉され、RF テストポートから IF ス 10 倍大きな IF 帯域幅を提供し、10 倍速い速度で測定を行え
テージを通ってディスプレイまでの間で並列処理されるので、マ ることを意味します。たとえば、201 個のポイントをカバーしてい
トリクスベースのマルチポート・システムに比べて測定時間を大 る 1MHz の IF 帯域幅で 80dB のダイナミックレンジを使って
幅に短縮します。たとえば、24 ポート DUT のすべての S パラ 掃引を行う場合、R&S®ZNBT8 が要する時間は 6 ミリ秒以下
メータを測定するのに要する掃引数はわずか 24 に過ぎません。 となります。
これとは対照的に、4 ポート・ネットワーク・アナライザを使ったマト
リクスベースのソリューションは複数のスイッチング操作を必要
とし、掃引の総数は 264 になります。たとえば、1 つの掃引に 5
ミリ秒*の測定時間がかかる場合、
マトリクスを有する 4 ポートの ワンボックスに 12 台のネットワーク・アナライザを
®
R&S ZNB ネットワーク・アナライザでは 1.3 秒が必要となりま 有し 12 個の DUT の並列測定を実施
す。一方、R&S®ZNBT8 の処理速度は約 4 倍で、時間はわずか 1 個の DUT で複数のパスあるいは複数の DUT を並列測定
340 ミリ秒となります。図4 に、
マトリクスベースのソリューショ するために、R&S®ZNBT8 のアーキテクチャはすべての DUT
®
ンと比較した場合の R&S ZNBT8 の処理の速さを示します。
ポートを同時に刺激することが可能です
(図 5)。このアナライザ
はそのテストポートをグループに編成し、各グループの測定を並
*ポイント数は 201、
100kHz の IF 帯域幅を使用し、800MHz で開始し、1GHz
列で実行します。たとえば、24 ポートの R&S®ZNBT8 は、各々
で終了します。
が 4 つのポートを有する DUT を 6 個同時にあるいは各々が
2 つのポートを有する DUT を 12 個同時にテストすることがで
きます。これは、時間とメモリを節約するだけではなくテスト設備
のスペースも節約します。
図5:R&S®ZNBT8 を使用しての複数 DUT の並列測定
DUT 1
20
DUT 2
優れた測定特性
全ポート間の測定に対して最大で 140dB のダイナミックレンジ
を提供する R&S®ZNBT8 は市販品の中で最高のマルチポート・
ネットワーク・アナライザであり、ハイブロッキング DUT の測定
にも使用することができます。-85~+13dBm と広くて電子的
に可変な出力電力範囲により、
アンプの線形および非線形の特性
を短時間で解析することが可能です。受信機のパス内にある電子
式ステップ・アッテネータは、0.1dB の減衰点を +27dBm へ増
加させます。これらの電子式ステップ・アッテネータは磨耗が発生
せず、生産環境において測定スピードと寿命を大幅に向上させま
す。
R&S ®ZNBT8 は、その信号発生器と受信機に対して独立した
シンクロナイザとして機能し、各種の周波数で送受信を行うこと
ができます。これによって、R&S®ZNBT8 はアンプの高調波と
相互変調積あるいはミキサの変換損失を測定することができま
す。必要な設定と校正の際にウィザードがユーザをガイドします
(図 6)。ミキサに対してマルチトーン信号を供給するためにあ
るいはローカル・オシレータ機能を提供するために必要となる可
能性のある外部信号発生器は、LAN または GPIB を経由して
R&S®ZNBT8 によって制御されます。
サマリ
R&S®ZNBT8 は、世界で初めて 24 のテストポートを備えた
ネットワーク・アナライザです。高い精度、速度、長期の安定性、お
よびダイナミックレンジを提供するこのアナライザは、
アクティブ
またはパッシブのマルチポート DUT の測定においてスイッチマ
トリクスベースのマルチポート・システムより優れた性能を発揮し
ます。
Thilo Bednorz
アンプおよびミキサの測定に用いられる機能
■■ 全ポートにおいて高い出力電力
(標準値:+15dBm)
■■ 広い電力掃引範囲
(標準値:100dB)
■■ 0 . 1 d B の 高 い コンプレッション・ポイント
( 標 準 値:
27dBm 超)
■■ 相互変調、
高調波、
および圧縮の測定
■■ 絶対電力の測定
■■ 電源電流とパワー検波器の特性を測定する 4 つの DC 入力
■■ 電力付加効率
(PAE)の測定
■■ 安定係数の測定
■■ Y パラメータと Z パラメータの測定
■■ ミキサでの変換損失の測定
フィルタの測定に用いられる機能
■■ 広いダイナミックレンジ
(最大140dB)
■■ フィルタ
・パラメータ(例:中心周波数、帯域幅、性質係数)
の表示
■■ 平衡 DUT のミックスドモード S パラメータの測定
■■ 平衡 DUT と不平衡 DUT のリアルタイム
・エンベディン
グ/ディエンベディングに対応した仮想マッチング・ネット
ワーク
■■ インピーダンスの変換
■■ ゲート機能を用いたタイムドメイン解析
(たとえば、SAW
フィルタのトリプル・
トランジット・エコーを抑制することを目
的として)
図6:相互変調とミキサの測定に用いるウィザード
NEWS 212/15 21
汎用測定器 | ネットワーク解析
伝送・反射測定および S パラメータ測定に対応した
費用効果の高いネットワーク・アナライザ
ケーブル、アッテネータ、アンテナ、またはフィルタを特徴付けするためには、多くの場合で基本的機能と安定した性
能を有するネットワーク・アナライザがその適切なソリューションとなります。特にこれらの機器の生産テストを行う
場合に、R&S®ZND のような手ごろな価格で操作の容易なアナライザは魅力的な選択肢となります。
新しい R&S®ZND ベクトル・ネットワーク・アナライザ(図 1)
は、
機器のテストの実施を目的として基本的で安定した性能を有する
ネットワーク・アナライザを必要とするアプリケーションに適切な
計測器です。この計測器の RF 性能(一般的な 130dB のダイ
ナミックレンジを含む)は、当該計測器を標準のアプリケーション
に理想的な製品にします。その魅力的な価格は、当該計測器を生
産環境での使用に最適なものとします。
操作の容易さとフレキシビリティに妥協はありません
このアナライザの大型のタッチスクリーンはトレースと制御ボタ
ンを有するソフトパネルを表示するための広いスペースを提供し
ます。ユーザは、
サブメニューを表示したまま、3 つ以下の操作ス
テップを実行するだけで計測器の全機能へアクセスすることがで
きます。ウィザードによって、短時間で簡単に希望する測定に対し
て計測器を設定することができます。内容に応じたオンラインヘ
ルプは、現在選択されているメニューに関する情報を提供します。
また、大型のタッチスクリーンは必要に応じてディスプレイを構成
することを容易にします。図とトレースは、希望するいかなる位置
にまたは組み合わせで配置することができます。
トレースは、図と
図の間で移動させて現在の測定タスクに最もマッチする方法で
表示することができます。計測器の設定のいくつかを RAM へ
ロードすることができ、R&S®ZND 上で同時に利用することがで
きます。希望する設定の選択は、
タブにタッチするかタブをクリッ
クするだけです。実際に必要な図だけが表示されるので、
この操
作によって時間が節約され、結果をクリア且つ正確に表示できま
す。
図1:新しい R&S®ZND ベクトル・ネットワーク・アナライザはポートを 2 つ備
えています。その基本構成では、100kHz~4.5GHz の伝送・反射測定を行う
ことができます。
22
R&S®ZND のベースユニットの機能向上オプション
テストセット
反射率計2
R&S®ZND
4.5GHz
R&S®ZND-K5
4.5GHz
S パラメータ
基 準レシー バ
R&S®ZND-K1
R&S®ZND
ポート2
反射率計1
測 定レシー バ
基 準レシー バ
R&S®ZND
R&S®ZND-K6
伝送・反射
S パラメータ・
テストセット
R&S®ZND-K7
R&S®ZND-K8
伝送・反射
8.5GHz
測 定レシー バ
R&S®ZND
R&S®ZND-K7
8.5GHz
ポート1
S パラメータ
図2:周波数範囲の拡大と S パラメータ測定を可能にするために伝送・反射
図3:伝送・反射テストセットを S パラメータ・テストセットへアップグレードする
ベースユニットをアップグレードすることができます。
ことができます。
将来の要求事項を満たすためにアップグレードが可能
テスト機器に対する要求事項は、時間とともに変わってくることが
あります。ソフトウェア・オプションを使ってテスト機器の機能を拡
張することは、変化する要求事項へ対応し続けるための一般的な
手法ですが、R&S®ZND は新しい方法を採用しています。周波
数範囲の拡大および伝送・反射測定に代わる S パラメータ測定
の実施を可能にするために、そのハードウェアを大幅にアップグ
レードすることができます。このように、R&S®ZND は将来の要
求事項または変化する要求事項へ容易に対応させることができ
ます
(図 2)。
®
その基本構成では、R&S ZND は 100kHz~4.5GHz の周
波数範囲を有する伝送・反射テストセットを持っています。伝送・反
射ベースユニットは、
ポート 1 に 1 台の基準レシーバと 1 台の
測定レシーバを、
ポート 2 に 1 つの測定レシーバを備え、
S11 と
S21 を測定することができます。この装置は、各ポートに 1 台の
基準レシーバと 1 台の測定レシーバを有するフルテストセットへ
アップグレードすることが可能です
(図 3)。この構成では、
アナラ
イザは 4 つすべての S パラメータ
(S11、
S21、
S12、
S22)
を測定
することができます。さらに、伝送・反射テストセットとS パラメー
タ・テストセットに対して周波数範囲を 4.5GHz から 8.5GHz へ
拡張することが可能です。
機器テストにとって重要な標準機能
ケーブルやフィルタのテストを行う場合、
タイムドメイン解析が重
要な機能となります。R&S®ZND では、
この機能をオプションで
使用することができます。この機能を使うことで、たとえば、ケー
ブルの障害を識別し、
ゲート
(周波数領域への転換を含む)
を使っ
®
てコネクタの影響をなくすことができます。R&S ZND の周波
数範囲を実質的に拡張することが可能です。これによって時間分
解能が高くなり、間隔の狭い 2 つのケーブル障害を区別するこ
とが可能となります。
電力掃引範囲をオプションで 28dB から 48dB へ拡張するこ
とができ、
これによって、
アンプで圧縮測定を実施することが可能
となります。タイムドメイン解析と拡張された電力掃引機能はい
ずれもキーコードを使って有効にします。
生産環境での使用に対応
R&S®ZND は LAN または GPIB を経由してリモート制御を行
え、RF 機器生産テスト・システムに組み込むことができます。専用
の I/O インタフェースによって、全自動テスト機器(ATE)
を有す
るシステムの中で部品の取扱いを制御することが可能です。テス
ト設備の外部機器とアナライザの内部テスト・シーケンスと同期
させるために、ユーザの制御ポート経由でデジタル信号を出力す
ることができます。
R & S ® Z N D は 、R & S ® Z N B ネットワーク・ア ナライ ザと
多様な校正機能
®
R&S ZND は、マニュアル校正キットまたは自動校正用の校正 R&S®ZNC ネットワーク・アナライザと同じファームウェアをベー
ユニットを使って校正することができます。ローデ・シュワルツが スとしています。そのため、既存のソフトウェア・ルーチンを継続し
提供するすべてのマニュアル校正キットを使用することができま て使用することができます。さらに、
より厳しい T&M 要求事項に
す。伝送・反射テストセットの場合、
ユーザは正規化(送信と反射)、 対応させるために、計測器のソフトウェアに修正を加えることなく
フル 1 ポート校正(オープン、
ショート、
マッチ)、
またはその 2 つ R&S®ZND を R&S®ZNB ファミリのアナライザに交換するこ
の組み合わせ( 1 パス・ 2 ポート)
を行うことができます。S パラ とが可能です。
メータ・テストセットは、TOSM や TRL などの他の校正法をサ
Andreas Henkel
ポートしています。
NEWS 212/15 23
一般 | 信号の発生と解析
生産に対応した強力な製品群
R&S®SGT100A ベクトル信号発生器とスクリーンを装備していない R&S®FPS シグナル・スペクトラム・アナライ
ザは、非常にコンパクトなパッケージを形成します。生産環境とテスト・システムでの使用に合わせて最適化されたこれ
らの製品は、無線通信の基地局を含む RF 機器と RF 装置のテスト中における高スループットの確保に貢献します。
生産に使われる専用の計測器は、次の 3 つの重要な
特性を備えています。
・一般的に機器が詰め込まれるラックにおける占有ス
ペースが非常に小さい。
・複雑な信号の発生と解析を短時間で行え、最新機器
において実施される広範囲なテストであるにもかか
わらず生産スループットを上げられる。
・DUT へ確実且つ正しくアクセスできるように、非常
に正確で再現性のある測定を行える。
これらの 3 つの重要特性は、生産環境に専用の 2 種
の計測器――R&S ®SGT100A ベクトル信号発生
器と R&S®FPS シグナル・スペクトラム・アナライザ
――の開発を進める際の目標でした
(図 1)。同時に、
これらの計測器は RF 機器――特に、無線通信に使
われる機器――の測定に対して汎用性の高いミニシ
ステムを提供します。これらの計測器は、生産環境と
自動テスト・システムへ完全に組み込むことができま
す。
図1:テスト・システムに
おける必要占有スペー
ス は 非 常 に 小 さ い:
R&S®SGT100A ベ
クトル信号発生器(上)
と R&S®FPS シグナ
ル・スペクトラム・アナラ
イザ
24
図2:R&S®SGT100A
は、マルチセグメント波
形モードにおける 2 つ
の 信 号 の 切り替 え を
わずか 2 マイクロ秒
2 µs
2マイクロ秒
で 行うことができます
(30.72MHzのサンプ
リング・レートを使った
W D C M A テ スト 信
号)
。
最小サイズで信号を発生します
R&S ®SGT100A は統合されたベースバンドを有
し、要求ハウジング寸法がわずか 1 ハイトユニットで
幅が 19 インチ幅の半分の最初のベクトル信号発生
器です。このコンパクト設計は、R&S®SGT100A を
一般的にラックが詰め込み状態になる自動テスト環境
での使用に理想的な製品とします。フルの 19 インチ
幅を有する従来の信号発生器では一般的に 2 ハイト
ユニットを必要とするのに対して、同じスペースへ 4
台の R&S®SGT100A 計測器を収納することがで
きます。
小型であるにもかかわらず、R&S®SGT100A は性
能を犠牲にしていません。60GHz までの RF 周波数
と 160MHz(RF)
までの I/Q 変調帯域幅を有する
R&S®SGT100A は、
すべての一般的な無線通信規
格をサポートしています。R&S®SGT100A は EVM
の低い高品質の変調信号を発生させるので、DUT の
正しい解析にとって信頼性の高い基準ソースとなりま
す。
その +22dBm の標準最大出力レベルは、線路損失
またはスイッチングマトリクスに起因する減衰を補償
します。これによって、多くのケースで外部アンプが不
要となります。
完璧なパートナー:
R&S®FPS シグナル・スペクトラム・アナライザ
R&S®FPS も、生産に最適化された優れた特性を有
しています。わずか 2 ハイトユニットと高さは従来の
計測器の半分でありながら、シグナル・スペクトラム・
アナライザのすべての機能を提供できます。5 種類
のモデルが用意されており、上限周波数はそれぞれ
4GHz、7GHz、13GHz、30GHz、および 40GHz
です。
R&S ® FPS はアナログ変調、すべての基本的な移
動無線規格、ならびにすべての基本的な無線規格に
対して高い測定スピード、160MHz の解析帯域幅、
および多数の測定アプリケーションを有しています。
R&S ®FPS は競合するアナライザと比べて最大 5
倍もの測定スピードを有し、高速で大きなデータ・ス
ループットにとって最適な測定ルーチンを提供します。
これは、生産環境において大きな利点となります。
外部モニタまたは PC 経由によるリモート操作によ
り、ユーザ・インタフェースを介して計測器のすべての
機能へ完全アクセスすることが可能です。これによっ
て、
リモート制御プログラムの開発または動作中のト
ラブルシューティングが容易になります。
NEWS 212/15 25
一般 | 信号の発生と解析
所有コスト:生産中において最も重要な要素
の保存が可能なので、切り替え時間が最小となります
消費電力がわずか 65W の R&S®SGT100A は、 (図 2)。たとえば、マルチセグメント波形モードでは、
その低電流ドレインとそれによる低放熱量によって全 ミリ秒単位で 100 種の異なるテスト信号を使用する
所有コストを低減します。これによって、
テスト・システ ことが可能です。
ム全体に要する冷却コストを下げることができます。
高速リモート制御を可能にする PCIe インタフェース
コストは、計測器の動作時間と密接な関連がありま 制 御 P C ま た は テ スト 計 測 器 と の 通 信 で は 、
す。信号発生器の開発時における重要なキーポイント R & S ® F P S が G P I B を使 用 するのに対して 、
の 1 つにシステムの動作可能時間を可能な限り最大 R&S®SGT100A は標準の USB インタフェースと
にすることにあります。R&S®SGT100A の場合、推 ギガビット LAN インタフェースを使用します。
しかし
自動テストでは、周波数または振幅を切り替え
奨校正インターバルを 3 年に延長することでこれを ながら、
実現しています。また、欠陥が現れた場合に、モジュラ るときに節約できる時間が非常に重要となります。そ
いずれの計測器も PC で使っているのと同
設計によって計測器の短時間で費用効果の高い修理 の理由は、
じ PCIe インタフェースを持っているからです。主要
を行うことができます。
なリモート制御コマンドは、
このインタフェースを使っ
信号発生器のソフトウェア・オプションを有効にするだ て、SCPI インタープリタを経由することなく計測器
けで、生産中に変わり続ける要求事項に対応すること の内部アーキテクチャへアクセスします。その結果と
コマンドは、既に証明されているように、周波数
ができます。たとえば、現場でキーコードを入力して周 して、
波数範囲を 3GHz から 6GHz へ速やかに拡張する または振幅の変化に対する R&S®SGT100A の非
ことが可能です。
常に短い設定時間を使うことによって極めて高い速度
――SCPI コマンドセットを使用している通信の 3 倍
の速度――で実行されます
(図 3)
。
両計測器ともテストを速やかに行えるよう最適化
短い切り替え時間
最新の DUT のテストでは、
できる限り速やかに使用
可能とならなければならない各種信号を必要としま
す。R&S®SGT100A は、
これを考慮した設計となっ
ています。最大 1G サンプルのメモリ深さによって
長い信号シーケンスの再生または多数の異なる信号
高い測定精度と測定スピード
R & S ® F P S は 最 大 7 G H z の 周 波 数にお い て
0.4dB 未満の絶対測定不確実性を持っています。こ
れは、類似のモジュラシステムの持つ不確実性よりも
はるかに小さな値です。測定の再現性は生産の歩留ま
りに直接影響を与えるため、
この再現性はより重要な
ものとなります。この歩留まりはテスト時間を長くする
レベル設定時間
6000
発生
5000
4000
3000
図3:R&S ®SGT100A
2000
の PCIe インタフェース
経由によるレベル設定時
1000
間のヒストグラム(内蔵
の ベ ー スバンド・ジェネ
0
0
50
100
150
200
250
300
350
400
450
設定時間(マイクロ秒)
26
500
レータを経由した I/Q 変
調 を 使 用 。特 性 は
AUTO に設定。)
図4:WCDMA 信号に
関する電力測定結果の
測定結果の標準偏差
測定時間の関数として
0.45
の標準偏差
R&S®FPS
測定結果の標準偏差(dB)
最も近い競合機種
0.4
0.35
0.3
0.25
0.2
0.15
0.1
0.05
0
0
20
40
60
80
100
120
時間(ミリ秒)
ことで大きくすることができますが、長いテスト時間は
スループットに悪影響を及ぼします。R&S®FPS の高
い測定精度と優れた再現性は生産スループットを確
実に向上させるため、当該計測器を使用した場合の妥
協はなくなります。
またその高い測定スピードは高い生産スループットに
貢献します。たとえば、
アナライザは WCDMA 信号
のレベルを 0.01dB 未満の標準偏差で測定し、結果
を 15 ミリ秒未満の時間で制御 PC へ送信すること
ができます。これは、競合機種の 5 倍も速いスピード
です。隣接チャネルの測定でも同じことが言えます。
すなわち、R&S®FPS は 0.1dB の再現性を実現し、
最も近い競合機種の 5 倍も速いスピードを可能にし
ます
(図 4)。
複数の移動通信規格に準拠した信号の同時解析
現代の通信シナリオの複雑さの増大に伴って、従来
の RF 接続で各種の移動通信規格に準拠した信号が
送信されます。信号の品質と相互作用を測定すると
き、アナライザは速度および異なる信号の同時解析
能力に関して大きな課題に直面します。R&S ®FPS
は、これらの課題を容易に解決します。その複数規
格解析機能と 160MHz の解析帯域幅を使って、
R&S®FPS は異なる規格(GSM、WCDMA、LTEな
ど)の信号を異なる周波数で同時に測定することがで
きます。それは、自動テスト・システムにおいてシーケ
ンスを最適化する際に DUT の構成に必要な時間が
総テスト時間の相当部分を占めている場合などに利
点となります。これらのケースでは、R&S ®FPS は、
DUT を次の測定に合わせて構成しながら捕捉デー
タを解析することができます。
サマリ
R&S®SGT ベクトル信号発生器と R&S®FPS シグ
ナル・スペクトラム・アナライザは、
自動テスト・システム
において生産または検証の目的に用いられる測定器
です。これらの機器は、
コンパクトなユニットであるに
もかかわらず低い所有コストで測定を短時間且つ正
確に行える設計となっています。
Johan Nilsson;Matthias Weilhammer
NEWS 212/15 27
一般 | オシロスコープ
図1:最大16ビットの垂直分解能で高精度の解析が可能。R&S®RTO-K17およびR&S®RTE-K17高分解能ソフトウェア・オプションを使用すれば、
オシロスコー
プの垂直分解能を256倍にすることができます。
高い分解能を有するオシロスコープ:
信号解析に対応した 16 ビットの垂直分解能
高分解能モードは、R&S®RTO と R&S®RTE の両オシロスコープの垂直分解能を 16 ビットまで向上させます。
これは、8 ビットの標準モードに比べて 256 倍も高い値です。波形はよりシャープになり、ノイズによって隠されて
しまう詳細な部分まで表示されます。ユーザは、より精度の高い解析結果を得ることができます。
小信号の正確な測定を可能にする高い分解能
高分解能(HD)
は、R&S®RTO オシロスコープと R&S®RTE オシロ
R&S®RTO
R&S®RTE
スコープ
(図 1)
を高い垂直分解能が要求されるアプリケーション
フィルタ
分解能
に使用できることを意味します。信号の低電圧成分――高電圧成
フィルタ
不動
8 ビット
不動
分も――を詳細に解析する必要がある場合に、特にこれが有効と
1GHz
10 ビット
500MHz
なります。同じデータ捕捉操作中のオフとオンのときにスイッチン
500MHz
12 ビット
300MHz
グ装置に加わる電圧を確認しなければならない場合の切り替え
300MHz
12 ビット
200MHz
モード電源の測定がその 1 つの例として挙げられます。電圧変動
200MHz
13 ビット
100MHz
は数百ボルトに及ぶことがあるので、小電圧成分の詳細な測定に
100MHz
14 ビット
50MHz
は 8 ビットを超える高分解能が必要となります。別の例としては、
50MHz~10kHz
16 ビット
30MHz~10kHz
レーダアプリケーションで見ることができるような低い変調指数
を有する振幅変調信号が挙げられます。
図2:フィルタ帯域幅の関数としての垂直分解能
28
分解能
8 ビット
10 ビット
11 ビット
12 ビット
13 ビット
14 ビット
16 ビット
HD モードは最大 16 ビットの垂直分解能を提供します
100 ミリ V
ノイズの低減
分解能が向上すると波形はよりシャープになり、
ノイズによって隠
されてしまう信号の詳細な部分まで表示されます
(図 4)。これら
の信号を詳細に解析できるようにするために、
オシロスコープの
入力感度が 500マイクロ V/ディビジョン まで高められていま
す。R&S®RTO と R&S®RTE のオシロスコープは、その低ノイ
ズ・フロントエンドと高精度シングルコア A/D コンバータのおか
げで優れたダイナミックレンジと測定精度を発揮します。HD モー
ドを有効にすることによって、ユーザはより精度の高い解析結果
を得ることができます。
R&S®RTO1044 オシロスコープのノイズ
RMS ノイズ
R&S®RTO-K17 と R&S ®RTE-K17 の高分解能オプション
は、A/D コンバータを通過した後の信号にデジタル低域フィルタ
を使用することで、
ローデ・シュワルツのオシロスコープの垂直分
解能を 16 ビットまで向上させます。このフィルタはノイズを低
減して、信号対雑音比を上げるとともに分解能を改善します(図
3)。低域フィルタの帯域幅は、適用される信号の特性に適合する
よう 10kHz~1GHz の間でフレキシブルに調整することができ
ます。フィルタの帯域幅が小さくなればなるほど、分解能とノイズ
抑制性能は高くなります
(図 2)。
10 ミリ V
1 V/ディビジョン
100 ミリ V/ディビジョン
1 ミリ V
10 ミリ V/ディビジョン
1 ミリ V/ディビジョン
100 マイクロ V
10 マイクロ V
1 マイクロ V
100 kHz
1 MHz
10 MHz
100 MHz
1 GHz
10 GHz
フィルタ帯域幅
図 3:R&S®RTO-K17 高分解能オプションの設定フィルタ帯域幅の関数とし
(4GHz モデル)のノイズ。
ノイズを
ての R&S®RTO1044 オシロスコープ
低減すると信号対雑音比が向上し、分解能が改善されます。
図 4:正弦波のピーク拡大図(左)。HD モードは有効となってい
ません。ズーム・ウィンドウでは定量化レベルのみ見ることができ
ます。
上:HD モードを有効にすると、
もう 1 つの非常に振幅の小さな
正弦波が信号に重ね合わされた図がズーム・ウィンドウに表示さ
れます。
NEWS 212/15 29
一般 | オシロスコープ
図 5:この例ではデジタ
ル・
トリガの高い感度に
よって、信 号 のオーバ
シュートを 9 ミリ秒/
ディビジョン未満にする
ことができます。140
ミリ秒/ディビジョンの
垂直スケー ルでは、こ
れは 1 表示ディビジョ
ンの小数点以下の値に
しか相当しません
HD モードは、高分解能デシメーション
(ローデ・シュワルツのオシ
ロスコープによってもサポートされている)
に大きな利点を与え
てくれます。ユーザは明確な低域フィルタリングによってどの信
号帯域幅が得られるかを知ることができ、不測のエイリアシング
効果は存在しません。HD モードはデシメーションをベースとして
いないので、サンプリング・レートの低減によって分解能が向上す
ることはありません。HD モードを有効にすると、
フル・サンプリン
グ・レートを使うことができ、最高の時間分解能を実現することが
できます。さらに、HD モードは向上した分解能を使って信号をト
リガすることを可能にしますが、高分解能デシメーションはトリガ
ユニットの後でのみ行われます。
最小信号ディテールのリアルタイム・トリガ
より徹底した検証のために HD モードで最小ディテールのトリガ
を行うことが成功に至るか否かは、使用しているトリガ・システム
の能力に大きく依存します。ローデ・シュワルツのデジタル・
トリガ・
システムは、高分解能信号の恩恵を受けるのに必要な感度を備え
ています。最大で 16 ビットのサンプルの各々をトリガ条件に対
してチェックし、
トリガを開始することができます。これは、オシロ
スコープが信号の最小振幅でもトリガを開始して当該信号イベン
トを分離することができることを意味します
(図 5)。
測定結果を短時間で提供できる高いデータ捕捉速度と
十分な機能
HD モードを有効にしても、
測定スピードや機能が損なわれること
はありません。分解能とノイズ抑制性能を向上させる低域フィル
タリングは、
オシロスコープの ASIC の中においてリアルタイム
で行われるので、
データ捕捉速度とデータ処理速度は高い値に保
たれます。オシロスコープはスムーズな動作を可能にし、測定結
果を速やかに得ることができます。自動測定、FFT 解析、
およびヒ
ストリモードなどのすべての解析ツールも高分解能モードで使用
することができます。
Sylvia Reitz
30
R&S®RTM2000 オシロスコープを
使用した長い信号シーケンスの解析
R&S®RTM-K15 ヒストリ・セグメントメモリ・オプションは、通信休止時間が長い信号の解析に理想的な製品です。
460M サンプルの分割された大きな捕捉メモリはこのクラスのオシロスコープでは独特で、シリアルバスのデバッ
グを行うときなどに長い期間の観察を可能にします。内蔵のヒストリ機能は、解析を目的とした波形への完全なタイ
ムドアクセスを可能にします。
挑戦:
オシロスコープを使用してのスポラジック・エラーの発見
スポラジック・エラーは、新製品の開発時に貴重な時間を費やさ
せることがよくあります。個々のデータ・パケット間の通信休止時
間(図 1の❶)
が非常に長くなる場合があるので、
プロトコルベー
スのバスまたは他のパルス信号のデバッグは特に面倒で時間を
浪費する作業となります。この例では、
センサが 10 ミリ秒毎に
400 マイクロ秒の時間に渡って値を含むプロトコル・パケットを
I2C バスへ送信します。この時間内に発生するエラーを解析する
必要があります。オシロスコープは、I2C インタフェースのデバッ
グで選択すべき計測器となります。このクラスのオシロスコープ
の大部分――R&S®RTM2000 を除く――は、非常に限られた
メモリしか備えていません。一般的に、
オシロスコープのメモリは
エラーの解析に必要な記録長さとヒストリを 2~3 ミリ秒に制限
してしまいます。
値です。これが、
このタイプの解析が R&S®RTM2000 ベンチ・
オシロスコープが提供するようなディープ・メモリを備えたオシロ
スコープを必要とする理由です
(図 2)。標準の 20M サンプル
の場合、
この例のサンプリング・レートを 100M サンプル/秒へ
上げることができ、19 個すべてのプロトコル・パケットを連続的
に記録して解析することが可能となります。この設定によって信
号エラーを解析することが可能となりますが、
非常に少数のパケッ
トしか記録されないので、エラーを分離する確率は高くありませ
ん。新しい R&S®RTM-K15 ヒストリ・セグメントメモリ・オプショ
ンがより良いソリューションを提供します。
単発捕捉と分割捕捉
❶通信休止時間が存在するプロトコルベースの信号
単発捕捉の欠点
通常、長い記録を 2 つのステップで手に入れます。最初のステッ
プは、十分な長さのタイムベース――たとえば、20 ミリ秒/ディ
ビジョンで、
この例ではテスト対象センサから送られてくる 19 個
のプロトコル・パケットに相当します――を選択することです。2
番目のステップは、捕捉した信号が次のトリガ・イベントによって上
書きされないように単発捕捉をトリガすることです。
通信休止時間が存在する長い時間
❷単発捕捉
従来の単発捕捉
メモリの制限による捕捉の失敗
多数の不作動状態が存在する少数パルスの捕捉
このプロセスは、急勾配のエッジを有するパルス信号に対するス
ポラジック・エラーの解析を非常に難しいものにしてしまう 2 つ
の大きな欠点を持っています。その 1 つである長く不適切な不
❸セグメントメモリを使った捕捉
作動状態は、対象のプロトコル・パケットを少数しか捕捉できない
#1
#2
#3
#4
#5
#6
#7
#8
ことを意味します
(図 1 の❷)。もう 1 つの欠点は、次の例で判
るようにサンプリング・レートの必要な制限によって発生します。
作動状態が存在する信号セグメントの捕捉
2M サンプルのメモリと 2G サンプル/秒のサンプリング・レー
トでは、最大記録長さはわずか 1 ミリ秒で、
テスト対象センサか
❹ヒストリ機能を使用しての各セグメントの解析
ら送られてくるプロトコル・パケット 1 個に対して十分な値にし
#1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8
か過ぎません。希望する 200 ミリ秒(すなわち、10 ディビジョ
ンに対して 20 ミリ秒/ディビジョン)は、サンプリング・レートを
各信号セグメントの表示および解析
10M サンプル/秒――実際、I2C 信号の安定したデコードには
低すぎる値どころではなく、信号のインテグリティ・エラーの発見
にとっても低すぎる値です――へ落とした場合にのみ達成できる 図 1:センサから送られてくる短期信号の捕捉および解析(例)
NEWS 212/15 31
一般 | オシロスコープ
分割捕捉の利点
より高度な方法では、捕捉をデータ・パケットにのみ限定します。こ
れには、専用のプロトコル・
トリガ――たとえば、I2C バスのスター
ト・シンボルをトリガするためのもの――の定義が必要となりま
す。図 3 に、R&S®RTM2000 オシロスコープがサポートする
プロトコルの概要を示します。
R&S®RTM-K15 ヒストリ・セグメントメモリ・オプションは、2 つ
の主要な方法でデバッグをサポートします。R&S ® RTM-K15
は、アナログ・チャネルとデジタル・チャネルの使用可能メモリを
460M サンプル――このクラスのオシロスコープでは他に例を
見ない値です――まで拡張します。さらに、R&S®RTM-K15 は
メモリをサイズの同じセグメントへ分割します。ユーザは、
タスク
の特定要求事項に合うようにセグメント数を修正することができ
ます
(図 4)。R&S®RTM2000 は、
メモリの最適使用を可能に
します。たとえば、シリアル・プロトコルの場合、信号内の最大パ
ケット長さで記録長さが決まります。
トリガ・ポイントからスタート
して、対象の信号セグメントがメモリへ保存されます。不活動状態
の時間は捕捉が行われません(図 1 の❸)。この後の解析の重要
なディテールに関し、R&S®RTM2000 は、3.2 ナノ秒の分解
能でトリガ・イベントの正確な時間を保存します。
この例で使われているセンサの場合、望ましい記録長さは 1 セ
グメント当たり 500 マイクロ秒で、400 マイクロ秒がプロトコ
ル・パケット用、50 マイクロ秒がイベント前後のそれぞれのバッ
ファ用です
(図 5)。この 500 マイクロ秒と 10 キロサンプルの
セグメント長さ――20 M サンプル/秒のサンプリング・レートに
相当――によって、安定したデコードを実現することができます。
45,000 の使用可能セグメントによって、8 分間の通信を記録す
ることが可能です。シリアル・プロトコル・
トリガに対するトリガ基準
として「プロトコル・スタート」が使われます。
アプリケーション
シリアル規格
オプション
埋込
I²C / SPI
R&S®RTM-K1
UART / RS-232 / RS-422 / RS-485
R&S®RTM-K2
自動車および工業
CAN / LIN
R&S®RTM-K3
オーディオ
I²S / LJ / RJ / TDM
R&S®RTM-K5
航空および防衛
MIL-STD-1553
R&S®RTM-K6
ARINC-429
R&S®RTM-K7
図 3:
トリガとデコードに対応したオプション
記録長さ
セグメント数
20 Mサンプル
23
10 Mサンプル
46
5 Mサンプル
92
2 Mサンプル
230
1 Mサンプル
460
500 キロサンプル 921
200 キロサンプル 2301
100 キロサンプル 4591
図 4:R&S RTM2000 のセグメン
®
トメモリの設定
50 キロサンプル
9183
20 キロサンプル
22 500
10 キロサンプル
45 000
図 2:1 つのボックスの
中に時間、周波数、
プロ
トコル、
および論理解析
の機能に加えて 1 基の
デジタル電圧計を備え
たR&S ® RTM2000
は、埋込ハードウェアの
開発、生産、およびサー
ビスに理想的な機種で
す。
32
図 5:アナログ波形を
有するデコード後の I2C
信号と捕捉テーブル。
ヒストリ機能へは一番
下のメニューを経由し
てアクセスします。
解析のためのヒストリモード
R&S®RTM-K15 のヒストリモードのおかげで、捕捉された信号
のすべてに後でアクセスすることができます。すべてのオシロス
コープ・ツール
(QuickMeas 機能、
マスク・テスト、およびプロトコ
ル・デコードを含む)を解析のために使用することができます(図
1 の❹)。
R&S ® RTM2000 の標準となっているマスク・テストは、たと
えば、テスト対象センサから送られてくるクロック信号の偏差を
発見するのに理想的な手段です。正しく送られてきた信号から
R&S®RTM2000 でマスクを生成するにはわずか 2~3 回の
キー操作のみで十分であり、
また、
マスクを USB フラッシュ・
ドラ
イブへロードすることができます。ヒストリ機能のプレイ・コマンド
(図 5 の一番下)
によって、マスクに対する 45,000 のすべて
のセグメントの比較が自動的にスタートします。マスクからの逸脱
は統計学的に評価され、可能であれば、マスクを逸脱した場合に
はテストが停止してセグメントが表示されます。
また、標準操作中にエラーが検出された場合、ヒストリを確認
することで解決に必要な情報を得られるのでしょうか? 問題
ありません。R&S ® RTM-K15 オプションを装備することで、
R&S®RTM2000 は常にすべての波形にタイムスタンプを付け
てセグメントへ保存するので、いつでもこのヒストリ機能を介して
これらの波形を入手することができます。
サマリ
R&S ®RTM-K15 オプションにシリアル・
トリガ・オプションとデ
コード・オプションを組み合わせることで、極めて有効な解析を行
うことができます。460M サンプルの大きなメモリ
(このクラス
では最高です)
とフレキシブルな分割は、有効記録長さをミリ秒か
ら分またはそれ以上の長い時間に拡張します。
ヒストリ機能によって、
すべての捕捉信号を後で確認および解析を
行うことができます。3.2 ナノ秒の分解能を有するタイムスタン
すべてのセグメントとそのタイムスタンプをリストアップした捕捉 プは、
信号イベントの正確な時間相関を可能にします。表示をする
テーブル(図 5 の一番下の左側)は、不良セグメントの前に位置 ために、
捕捉テーブルの中でマークした個々のセグメントを選択す
している捕捉したセグメントへ速やかにアクセスすることを可能 ることができます。あるいは、
ヒストリ機能を使ってすべてのセグメ
にします。これによって、前の信号の影響を速やかに排除すること ントを自動再生することができます。すべての R&S®RTM2000
が可能となります。この後ですべての不良セグメントに対するトリ オシロスコープ・ツール
(QuickMeas 機能、
マスク・テスト、FFT、
ガ・タイムを解析することで、周期性を発見することができます。 および信号解析のためのプロトコル・デコードを含む)
を不良セグ
すべてのセグメントは、
オフライン解析のために PC へ保存する メントの解析のために使用することができます。
ことができます。
Philipp Weigell
NEWS 212/15 33
汎用測定器 | データ・レコーダ
®eyetronic / fotolia.com
スペクトラムの記録と使用
シミュレートされた RF 信号は必要に応じて設定できるだけでなく、制御された条件の下で再現できるので、多くの
テストにおいて理想的なものです。ただし、再現性と信頼性のある結果を得るために時として「本物の」信号が必要と
なる場合があります。そして今、R&S®IQR I/Q データ・レコーダを使うことで 2 つのチャネルで高いデータレート
の下でこれらの信号を供給することができます。
I/Q データ・レコーダは
スペクトラムをラボへ提供します
今日のベクトル信号発生器は、
ボタンを押
せばあらゆる RF 信号を供給することがで
きます。ただし、現実のシナリオには多くの
やっかいな問題が潜在しているため、すべ
ての偶発性をカバーするために携帯電話
や衛星ナビゲーション・システムなどの主力
製品の開発時には本物の信号を使用する
ことが賢明であると思われます。これを行
34
うには、重要であると識別された代表的な
場所で対応の信号を記録してからラボへ
提供する
(フィールドからラボまたは F2L)
必要があります。R&S®IQR(図 1)のよう
な I/Q データ・レコーダはこの目的に使用
します。この計測器は無線スペクトラムそ
のものを記録するのではなく、上流の RF
フロントエンドによってリアルタイムで供給
される I/Q データの形でスペクトラムを生
成するデジタル変調
(ベースバンド)
を記録
します。ラボでは、
データをさらに処理する
ために PC へエクスポートするかベクトル
信号発生器(ここで、RF スペクトラムへ再
変換される)
へ供給します。R&S®IQR は、
ドライブ・テスト・システムの一環としてこ
れらのタスクをしばらく前から行ってきて
います。新しいファームウェア、高速メモリ
パック、および追加オプションがこのレコー
ダをさらに多目的なものにします。
高速での記録と再生
図 1:R&S ®IQR I/Q
最大帯域幅の使用には、適切な広帯域フ
ロントエンドが必要です。ローデ・シュワル
ツは、
このための機種として R&S ®FSW
シグナル・スペクトラム・アナライザを用
意しています。広帯域の信号の記録、再
生、解析、および保存を行うテスト設備は、
R&S®SMBV100A ベクトル信号発生器
を使用することで完成します
(図 4)。
帯域幅(MHz)
新しい高速構成機能は、80MHz という は多機能のユーザフレ
変調帯域幅において最大 99.5M サンプ ンドリな I/Q 信号保存
ル/秒の記録を可能にします(図 2)。こ 媒体です。
れは、R&S ®IQR が広帯域無線システム
に対応できることを意味します。さらに、
多くの RF 信号を同時に記録するために
帯域幅を分割するという機能も持ってい
ます(下記参照)。実際のアプリケーショ
ンにおいて重要な基準となるのが、デー
タレート、I/Q 分解能、およびメモリパック
のサイズをベースとした最大記録時間で
す。2T バイトの SSD を装備した場合、
R&S®IQR は I と Q の値を 16 ビット
の分解能で記録し、GPS 信号に対して
帯域幅とサンプリング・レートの相関
6MHz の帯域幅で 18 時間から最大帯
90
域幅で 1.3 時間までの保存時間を提供し
ます
(図 3)。
79.6
R&S®FSW
R&S®IQR20:最大 20M サンプル/秒
R&S®IQR100:最大 99.5M サンプル/秒
70
R&S®TSMW
R&S®FSV(FSV-B70 装備)
R&S®FSW(FSW-B80 装備)
60
50
40
R&S®FSV
30
20
16
10
R&S®TSMW
2 つのスペクトラムの
同時記録と同時再生
0.1
10
20
30
40
50
60
70
80
90
99.5
サンプリング・レート(M サンプル/秒)
図 2:異なるフロントエンドと R&S®IQR モデルを使って実現可能なサンプリング・レートと帯域幅
データレートの関数としての記録時間
10000
記録再生時間(時間)
2 つのスペクトラムの同時記録と同時再
生によって、DVB-T や DAB 送信機ま
たは 2 つの衛星ナビゲーション・システム
(GPS、BeiDou、
または Glonass)
を含
む各種の無線サービスまたは放送サービ
スのテストを平行して行うことが可能とな
ります。さらに、隣り合っていない低帯域
幅のスペクトラムを別々に記録すること
で、必要な全帯域幅、得られるデータレー
ト、および必要保存容量を大幅に下げるこ
とができます。
0
R&S®IQR-B020(2T バイト HHD)
R&S®IQR-B119F(1.9T バイト SSD)
1000
100
もう 1 つの興味深い 2 チャネル・アプリ
10
ケーションとなるのが、スマートフォンで
のA-GPS 機能(補助 GPS に適用され、
Glonass と BeiDou にも適用可能)の
1
10
0.1
80
90
99.5
20
30
40
50
60
70
テストです。このテストでは、GNSS 信号
と移動無線信号の同時受信が行われま
1380 h 13.8 h
6.9 h
す。R&S ®IQR は適切な信号を同時に記
1310 h 13.2 h
6.5 h
1.6 h
1.4 h
1.3 h
4.3 h
3.2 h
2.6 h
2.1 h
1.8 h
録し、その後で、その 2 つの I/Q インタ
データレート(M サンプル/秒)
フェースを介して同時に出力することがで
きます。このケースでは、2 つの信号を同 図 3:高速記録を実現するためには、R&S®IQR が SSD を備えていなければなりません。
NEWS 212/15 35
汎用測定器 | データ・レコーダ
2 種類の代表的テスト設備
PC、ネットワーク
RF スペクトラム
GPS
受信機
GPS データ
インポート/エクスポート
(オフライン)
R&S®IQR-K101
記録
再生
再生
例:R&S®FSW
I/Q データ R&S®IQR
ドライブ・テストに対応した頑丈なケース
(R&S®IQR-CAST オプション)
I/Q データ R&S®SMBV
USB 記憶媒体
GPS
(オプション)
2 × I/Q
2 つの I/Q データ・
ストリームの多重送信
R&S®IQR-K105
エクスポート
(オフライン)
R&S®IQR-K101
I/Q データ・ストリーム 1
R&S®IQR
2 台の RF フロント
エンドを備えた
R&S®TSMW
LAN 1G ビット
RF スペクトラム
USB 2.0
PC、ネットワーク
記録
I/Q データ・ストリーム 2
R&S®IQR-K107
信号発生器
例:R&S®SGT100A、R&S®SMBV、R&S®SFC
再生
図 4:R&S®FSW シグナル・スペクトラム・アナライザをフロントエンドとして装備し、R&S®SMBV100A ベクトル信号発生器を RF モジュレータとして装備した
高速テスト設備(上)。R&S®TSMW ユニバーサル無線ネットワーク・アナライザをフロントエンドとして装備し、R&S®SGT100A ベクトル RF ソースを RF モ
ジュレータとして装備した 2 チャネル・テスト設備(下)。
時に復調できる R&S®TSMW ユニバー
サル無線ネットワーク・アナライザがフロ
ントエンドとして機能します。得られた I/
Q データ・ストリームは、I/Q インタフェー
スを通して R&S ®IQR へ多重送信され
ます。RF は、対応のインタフェースを備
えた信号発生器(超コンパクトタイプの
R&S®SGT100A など)
によって生成す
ることができます(図 4 と青色のボック
ス)。あるいは、MATLAB ® のようなアプ
リケーションを使ってさらに処理を行うた
めに、I/Q ストリームをイーサネットまたは
USB インタフェースを経由して PC へエ
クスポートすることができます。
36
他の有用な機能
位置データの記録
記録済みのスペクトラムへ場所を割り当て
る能力は、
ドライブ・テスト・アプリケーショ
ンにとって重要な機能です。対応のオプ
ションを装備することで、R&S®IQR 上で
この機能が使用可能となり、地図にルート
を表示することができます。
基準レベルが制御された再生
RF 信号はドライブ・テスト中に大きく変動
することがあります。たとえば、
トンネル内
をドライブしているときなどです。それは
まさにドライブ・テストが行われるこれらの
実在の条件によるものであり、
ラボにおい
てそれらの条件を正確に再現する必要が
あります。R&S ®IQR-K1 オプションは、
R&S®TSMW の自動ゲイン制御(AGC)
機能を作動させることで正確なレベル適
応を確保して、
ドライブ・テスト中におけ
る信号レベルの受信を最適化します(図
5)。
外部計測器の制御
RF フロントエンドとダウンストリーム信号
発生器はいずれも、現在の測定タスクに
合わせて適切に構成しなければならず(た
とえば、周波数の設定)、
また、非常にダイ
ナミックに制御しなければなりません(RF
基準レベル適応)。R&S ®IQR-K2 ソフト
ウェア・オプションは、ユーザが信号発生
器を自動制御するのをサポートし、後の中
心周波数と基準レベル・オフセットの修正
を可能にします。これこそが、単独のメー
カーで完全なソリューションを提供できる
ことの利点です。なぜなら、共に機能する
よう機器を最適化することが可能である
からです。
Gert Heuer
AGC を使った RF レベル適応
オーバーフロー
RF レベル(dBm)
t
‒30
‒60
基準レベル
ゲイン
(dB)
+4
‒4
AGC を実施していない場合の RF レベル
AGC を実施した場合の RF レベル
AGC
図 5:R&S®IQR-K104 オプションは R&S®TSMW スキャナの AGC 機能を作動させ、現実的なスペク
トラムへ変換できるよう I/Q データの基準レベルを保存します。
R&S®IQR* と併用できるデジタル I/Q インタフェース装備の計測器
信号発生器
R&S®AMU200A、
R&S®SMW200A、
R&S®SMBV、R&S®SGT100A、
R&S®SMU200A
スペクトラム/シグナル・アナライザ
R&S®FSW、R&S®FSVR、R&S®FSV、R&S®FSQ、R&S®FMU36
放送テスタ
R&S®SFE、R&S®SFC、R&S®SFU、R&S®SFE100
ドライブ・テスト用および I/Q ストリーミング用のスキャナ
R&S®TSMW
データ・コンバータ
R&S®EX-IQ-Box
I/Qデータ・レコーダ
R&S®IQR100、
R&S®IQR20
ローデ・シュワルツ
I/Q インタフェース
デジタル無線通信の時代において
は、I/Q データは信号を記述する
一般的な方法です。しかしながら、
ユニバーサル・デジタル I/Q イン
タフェースは標準化されておらず、
ローデ・シュワルツがその自身の計
測器に対して専用規格を規定してい
るのはこの理由によるものです。コ
ネクタは市販の設計をベースとして
いますが、
シリアル通信は専用プロト
コルを使用しています。
インタフェースは実 I/Q データの
高速転送とメタデータの転送に使わ
れます。これが、I/Q 値のペアで(相
対)振幅と正弦波信号(ベースバン
ド)の位相だけをコード化できる理
由です。正しい位置にある RF の生
成に関する周波数情報と絶対レベル
は異なる方法で提供しなければなり
ません。
この目的のためや、
転送モー
ドまたはデータレートに関する情報
などの追加情報を計測器間で交換
するために、予備のピン
(情報インタ
フェース)
が使われます。
トリガの目的であるいはマーカとし
て、I/Q データ・ストリームと一緒に
コントロー ル・ビットとステータス・
ビットを送信することができます。
ローデ・シュワルツのインタフェース
を持っていない計測器をテスト設備
――一般的にすべての DUT――に
加える場合には、両方向の I/Q 信
号を変換するために R&S®EX-IQBox を使用することができます。
*機能と性能パラメータが異なるため、必ずしもすべての計測器が希望通りに相互に組み合わせることがで
きるわけではありません。関連のデータシート――特に、R&S®IQR データシートの適合性リスト――を参
照してください。
NEWS 212/15 37
汎用測定器 | テスト・システム
新しい RF モジュールは、R&S®OSP
制御プラットフォームの使用範囲を拡大します
新タイプのリレーを備えた RF モジュールと種類の異なるドライブを有するリレー(ラッチング・リレー)は、
R&S®OSP オープン・スイッチ制御プラットフォームの機能を拡張します。これによって、研究、開発、および生産にお
ける RF テスト・システムの切り替えの多様性が増し、新しいアプリケーションを可能にします。
R&S®OSP オープン・スイッチ制御プラットフォーム
(図 1)
に用
いるモジュールの範囲は、簡単なスイッチ・システムから複雑な
RF テスト・システムまで非常に広範なアプリケーションを提供す
るために拡張し続けています。一般的に使用可能なスイッチ・モ
ジュールとアプリケーションに固有の専用機能を備えたモジュール
(たとえば、EMC テスト・システム用のモジュール)の選択肢が広
いので、生産、
テストラボ、および R&D で使用するために T&M
システムを幅広く構成することができます。R&S®OSP モジュー
ルとR&S®OSP150 拡張ユニットを使って既存の構成を拡張で
きる可能性は、投資の安全性を高めてくれます。
ユニバーサル・ラッチング RF リレー
フェイ ル セ ーフ・ベ ー スモジュー ルに 加 えて 、オプション へ
R&S®OSP-B101L と R&S®OSP-B102L のラッチング
(バ
イステート)モジュールが登場しました
(図 2)。これらのモジュー
ルは、制御電圧の喪失後に支配的なスイッチング状態を維持しま
す。すなわち、制御電圧がスイッチング状態の維持ではなく切り替
えの目的にのみ必要であることを意味します。これによって電力
消費――特に、大きなテスト・システムにおける電力消費――を低
減するとともに、電源電圧が失われた場合にスイッチング状態を
維持します。
トランスファーリレー
2 種 類 の 新しい フェイ ル セ ー フ・リレ ー・モ ジュー ル で あ る
現在の R&S®OSP 用 RF モジュール――たとえば、
6 つの切り R&S ®OSP-B116 と R&S ®OSP-B136(図 2)は、2 つの
替えリレー
(SPDT)
を備えた R&S®OSP-B101 ユニバーサル・ RF パス間での交差配線の実施を容易にする 2 つのSMA リレー
と 2 つの N リレー(B136)
を備えています。
ベースモジュールと 2 つのマルチポジション・リレー(SP6T)
を (B116)
備えた R&S®OSP-B102 ――は、
すべて、
フェイルセーフ
(単安
定)
リレーを備えています。これらのタイプのリレーは一般的に高
い経済性を有していますが、
スイッチングのために制御電圧を常
に印加しておく必要があります。それでも、
この特性は、高い電流 追加の新型 I/O リレー・モジュール
ドレインは別として、電源の切断または停電の後に安全関連シス 新しい R&S ®OSP-B158 デジタル I/O モジュール(図 3)
テムを使用しての既定のスイッチング状態を実現する上での利点 は、R&S ® OSP-B103 デジタル I/O モジュールとは異な
となります。
り、差 動ライン経 由で外 部 機 器を駆 動することができます。
図 1:モジュールの数が常に増え続け
ているおかげで、R&S®OSP オープ
ン・スイッチ制御プラットフォームは、
さらに多くのアプリケーション分野に
対 応 す ることが 可 能 で す 。図 は 、
(上)
R&S®OSP150 拡張ユニット
と R&S®OSP130 ベースユニット
(下)
を示したものです。
38
R&S®OSP-B116
R&S®OSP-B136
R&S®OSP-B102L
R&S®OSP-B119
図 3:R&S ® OSP-B158 I/O モ
ジュール
R&S®OSP-PM-I
R&S®OSP-B101L
図 2:新しいリレー・モジュール
図 4:R&S®OSP-B121H モジュール
電力測定用テスト・システム
LAN
USB
パワーセンサ
RF
マルチプレクサ
1~n
4
4
DUT 1
DUT 2
•••
4
R&S OSP130
®
R&S ®OSP-B158 モジュールは、16 のデジタル入力の他に
16 の差動 RS-422 出力と 4 つのアナログ出力電圧を持っ
ています。R&S ®OSP-B158 モジュールは、たとえば、新しい
R&S®AU600 無指向性リモート・アクティブ受信アンテナ・シス
テム
(9 ページ参照)
を駆動し、当該システムへ必要な電圧を供給
する目的に使用することができます。
DUT m
図 5:複数のアンテナを有する複数
DUT における電力の連続測定。1
台の R&S®OSP で最大 42 の測
定ポートを実装することができます。
現 在 で は 、終 端 タイプ の 8 重 マ ル チポジション・スイッチ
(R&S ® OSP-B129)は、1 基の SP8T リレーと 2 基の
SPDT リレーから構成される R&S ® OSP-B119 非終端モ
ジュールによって完全なものとなりました。現在では、0Hz~
18GHz に対応する終端リレーと共に 40GHz と外部終端を特
徴とするモデル
(図 4 の R&S®OSP-B121H)
がご利用いただ
けるようになりました。
USB ポートは USB フィードスルー・フィルタを介して外部へ配
線されています。この新しいモジュールを使うことで、終端され
た SP6T ソリッドステート・リレー(R&S®OSP-B128)から構
成される上流側の RF マルチプレクサと一緒に電力測定用のコ
ンパクトなテスト・システムを構築することが可能となります(図
5)。R&S®OSP-B128 リレーの構成に応じて、SP42T または
SP30T へ接続されるマルチプレクサを R&S®OSP120 ベー
スユニットまたは R&S®OSP130 ベースユニットのそれぞれの
中へ実装することができます。R&S®OSP150 拡張ユニットと
追加の R&S®OSP128 モジュールを使って、72 もの数のアン
テナを連続的に選択することが可能です。ただし、個々のスイッチ
ング・ステップは、接続されたすべての装置とアンテナのスイッチ
ングを行うことによるパスの減衰ならびに必要測定時間の増大を
招くという事実を考慮しなければなりません。
R&S®OSP-PM-I は新しいパッシブ・モジュールで、R&S®NRPZxx パワーセンサをR&S®OSP オープン・スイッチ制御プラッ
トフォームへ組み込むことができます。R&S ®OSP へのカップ
リングによって生じる干渉を防止するために、パワーセンサの
R&S®OSP データシートは、使用可能なすべてのプラットフォー
ム・モジュールとダイバース・モジュールの概要(関連の正面図を
含む)
を提供します。
Gert Heuer
NEWS 212/15 39
EMC/電界強度 | 参考
テストラボで最高の効率を実現
Fujitsu Technology Solutions GmbH のプロダクト・コンプライアンス・センターでは、T&M システムを使って
電子機器と電子装置の EMC テストを実施しています。ローデ・シュワルツの R&S®EMC32 EMC 測定ソフトウェ
アは、インフラストラクチャのあらゆる場所における重要コンポーネントとなっています。このソフトウェアは、テスト・
プランの作成とテスト・シーケンスの自動制御および自動監視に使われます。
電 磁 装 置 やシステム の テストを 実 施 するた めに 、F u j i t s u
Technology Solutions GmbH(グレーのボックス内を参照)
は、
アウグスブルグとパーダーボルンに認定されたプロダクト・コ
ンプライアンス・センター(PCC)
を持っています。そこでは、業務
用ならびに個人消費者向けのコンピュータ、モニタ、ディスプレ
イ、
プリンタ、測定器、ロボット、
プロセス・コントローラ、家庭用機
器、
および医療機器などの製品のテストが行われます。
移動無線や無線アプリケーションの普及に伴って、近年、干渉問
題が急増しています。国際的な EMC 標準化委員会は、より厳
格な要求事項を課すことでこれに対応して来ました。昨年の始
め、Fujitsu Technology Solutions GmbH は PCC のサー
ビス範囲を EMC テストの分野まで拡大しました。Hermann
Möhring は、
アウグスブルグの EMC テスト・センターのヘッドと
して次のようなコメントを出しています。
「RF 干渉に起因する装
置の機能障害の防止を推進するために基準の拡大が行われまし
た。たとえば、今では、
ヨーロッパの CE マークを取得するために、
より厳しい要求事項を満たさなければならなくなっています。」
国内および国外のユーザのための
EMC テスト・サービス
日本の電子メーカーの完全子会社である Fujitsu Technology Solutions GmbH は、幅広い製品、
ソリューショ
ン、およびサービスを提供しています。
ドイツの数カ所で
ノートブック、PC、シンクライアント、サーバ、記憶システ
ム、およびメインボードの開発と製造が行われています。電
磁装置や電磁システムのテストは、アウグスブルグとパー
ダーボルンの PCC の 45 名の従業員によって行われま
す。個人消費者向けおよび業務用の電子製品のテストが行
われます。テスト・エンジニアは、EMC 適合性を確認するた
めに製品開発と平行して試作品のプレコンプライアンス・
テストも実施します。プレコンプライアンス・テストを実施す
ることでこの後の修正をなくすことにより、時間と追加費用
を節約することができます。このラボでは、富士通製品に加
えて他社のデバイスやコンポーネントもテストされていま
す。全テストの約 1/3 が国外ユーザから発注を受けたも
のです。
アウグスブルグの富士通プロダクト・
コンプライアンス・センター
40
これまでは、3GHz までの周波数範囲では約 10V/m の電界強
度の放射妨害に対するイミュニティをテストするだけで十分でし
た。テスト内容拡大の一環として、放射妨害に対する電子装置の
イミュニティは現在では 6GHz までの周波数範囲では 20V/
m の電界強度で測定が行われています。Fujitsu Technology
Solutions GmbH のマネージャーである Möhring は、
「拡大
されたイミュニティ・テストに対して、我々はローデ・シュワルツと
共同作業を行って、新しい要求事項を満足するよう特別にしつら
えたテスト設備を作りました。この新しいテスト・システムは全周波
数範囲に渡って自動連続測定を行え、時間と費用を節約します。
加えて、最新の EMC 基準へ厳格に適合します。」
と説明していま
す。テストには、妨害電界強度、妨害電圧、高調波、
フリッカ、静電
放電、放射 RF 電磁場イミュニティ、RF 場によって発生する誘導
妨害に対するイミュニティ、高速過渡現象(バースト)、低速高エネ
ルギー・サージ、ならびに電源ネットワークの電圧変動と停電が入
れられます。
全タイプの自動 EMC テストに対応した
測定ソフトウェア
エンジニアによるテスト対象装置(DUT)の誘導妨害や電磁場
に対して応答の仕方の調査とそのイミュニティの解析をアシス
トするために、各種のテスト・チャンバが用意されています。こ
のように、各種テスト・チャンバは、電子機器が意図した環境の
中で正しく機能し、他の機器の動作の邪魔をする電磁妨害を起
こさないことを確認することができます。EMC テストは、
ヨー
ロッパの CE マーク
(青色のボックスを参照)などの国内およ
び国際的な認定を取得するために必要な前提条件となります。
世界の EMC 認定
EMC テストは、
ヨーロッパの CE マークなどの国内およ
び国際的な認定を取得するプロセスにおいて不可欠な要
素となっています。プロダクト・コンプライアンス・センターに
よって運営されている2つの EMC テストラボは、DIN EN
ISO/IEC 17025に従ってドイツ認証機関(DAkkS)
に
よる認証を受けています。これらのラボは、UL、CSA、およ
びFCC(米国)、CCC(中国)、BSMI(台湾)、MIC(ベトナム)、
VCCI(日本)、KC(韓国)、C-Tick(オーストラリア)、および
GOST-R(CIS諸国)の規格に従って認められた認定書を
国際的に発行することが認められています。
Fujitsu Technology Solutions GmbH はローデ・シュワルツ
R&S®EMC32 EMC 測定ソフトウェアを使って、
これらの多様
なテストを実施しています。このソフトウェアは欧州規格と国際規
格に従った測定をサポートし、規格に準拠した一般的な EMS 測
定や EMI 測定(誘導と放射)
を含む広範囲なアプリケーションを
®
カバーします。さらに、R&S EMC32 ソフトウェアは、ETSI 規格
や FCC 規格に従って製品の最適化、DUT の放射パターンの測
定(アジムス・チャート)、
および R&TTE 適合測定に必要なプレコ
ンプライアンス・テストを行うことができます。
アウグ スブ ルグ の F u j i t s u T e c h n o l o g y
Solutions GmbH によって運営されている EMC
テスト・チャンバ
NEWS 212/15 41
EMC/電界強度 | 参考
R&S®EMC32 は、テスト・シーケンスを最大限まで自動化する
上で必要な重要要素です。
「ローデ・シュワルツのソフトウェアを
使い始めてから、
テスト・レポートをより速やかに作成することがで
きるようになりました。」
と、EMC テスト・センターのヘッドである
Möhring は嬉しそうに述べています。ラボ管理システムを統合
できるこのソフトウェアの優れた機能のおかげで、
テストラボで実
施されるすべての手順が最適化されます。
リソースをより効率的
に活用できるので、
テスト・シーケンスに要するコストが削減され
ます。
「EMC 測定ソフトウェアはすべての関連テスト領域と標準
化の分野における自動 EMC テストに理想的なものです。このソ
フトウェアは、
テスト・エンジニアが増え続けるタスク範囲を最適に
管理するための作業を行えるようにすることで彼らをサポートし、
また、
テスト・レポートやチャートのグラフ式表現を使って測定結果
を容易に評価することを可能にします。」
R&S®EMC32-K24 を使用したインタラクティブ EMI 測定
42
今では、2 カ所のプロダクト・コンプライアンス・センターが
理想的な EMC 測定ソフトウェアを備えています
アウグスブルグの PCC が既に何年かにわたってこの測定ソフト
ウェアを利用してきたのに対して、パーダーボルンのテストラボ
は 1 年前まで別のソリューションを使用していました。同社が 2
つのラボを組織的に統合したとき、両方の場所で同じ EMC 測定
ソフトウェアを使用することを決断しました。Fujitsu Technology Solutions GmbH のマネージャーである Möhring は、
「2 種類のソリューションを使い続けることで、必要な準備作業
が 2 倍になり、
また、必要なメンテナンス費用も 2 倍となってい
ました。EMC の専門家は、2 種類のシステムにそれぞれ対応し
た基準をベースとして定期的に使用するテストとレポートのテン
プレートを別々に開発し維持しなければなりませんでした。」
と述
べています。この製品の最終選択を行う前に、パーダーボルンの
テスト・エンジニアはローカルの T&M インフラストラクチャと組
み合わせてソフトウェアの試用を十分に行いました。その結果、
R&S®EMC32 をベースとして 2 カ所のラボで同じ測定ソフト
ウェア・アーキテクチャを構築することの許可が下りました。
2 カ所の PCC では現在同じソフトウェアを使用していますが、
メーカーの異なる測定器が依然としてこれらのラボで使われてい
ます。パーダーボルンの EMC テストラボのヘッドである Ulrich
Kracht は、
「ローデ・シュワルツのソフトウェアは、
ハードウェアが
違っていても 2 つのラボで同じテスト・シーケンスを使用するこ
とを可能にしてくれます。我々が現在持っているプロジェクトに対
応するために、2 つのテスト・センター間で計器の交換を頻繁に
行っているため、
この機能は非常に重要なものでした。」
と強調し
ます。このソフトウェアにはブランドの異なる測定器を制御するこ
とのできるドライバが多数内蔵されているので、2 つのラボで一
切の制限を受けることなくソフトウェアを活用することができま
す。
「我々は、
テスト・ハードウェア群を統一するための追加投資を
行う必要がありませんでした。」
と Kracht は述べています。
メーカーの中には、特定の基準に満たすためだけの目的でテスト
を要求するものがあります。他のメーカーは、特定のマーケットで
自分達の製品を売ることを望んでおり、必要なテストと認定に関
する相談を求めてきます。Möhring は目的を次のように定義し
ています。
「我々は対応するテストを実施し、国の管轄期間がそれ
を望めば結果を送ることもできます。我々の目標は、単にテスト結
果のセットを顧客に提供するのではなく、問題の完全なソリュー
ションを顧客に提供することにあります。このように、顧客はメー
カーの研究所としての我々の長年の経験から利益を受けること
ができます。我々は開発プロセスと生産プロセスを十分に理解し
ているので、必要な場合に改善のための提案を提示することもで
きます。」
さまざまの要求事項に対応した幅広いソフトウェア機能
パーダーボルンの PCC でのローデ・シュワルツの測定ソフトウェ
アの導入はスムーズに行われました。Möhring は次のように続
けています。
「広範な EMC 測定をサポートする直感的な動作
概念はプロセスをより簡単なものにします。これは開発中のテス
トに適用されるばかりでなく、単純なラボ・アプリケーションから
EMC テスト・チャンバ内での複雑なテスト・シーケンスに至る受入
テストやコンプライアンス・テストにも適用されます。」各種の要
求事項に適合できる広範な機能を有するモジュラ設計の概念が
その基礎を形作っています。また、その高い汎用性がコストを削
減し、将来的な拡張を可能にします。専用オプションにより、測定
データをテスト・センターの全ワークフローへ組み入れながら最
大限の自動化を図ることが可能です。
R&S®EMC32-K23 オプションを使って作成した 3D ディスプレイ
ローデ・シュワルツの開発者は、富士通プロダクト・コンプライア
ンス・センターの特殊な要求事項も満たしてきました。たとえば、
オープン・サイト・テストの自動化に必要な追加機能は極めて短時
間で実装されました。また、タブレットで使用できるようにソフト
ウェアを改作する希望も出されました。制御コンピュータがテス
ト・チャンバのすぐ近くにない場合、
テスト・エンジニアはタッチスク
リーンを介してテスト・システムへアクセスし、たとえば、サイトで
アンテナを直接再調整することができます。Möhring は次のよう
に強調しています。
「自分にとって、
この測定ソフトウェアの卓越し
た機能は、我々が開発者と密接な連絡を取っているのと同じくら
い重要なものです。ローデ・シュワルツは、常に我々のニーズを聞
くことができ、
またそれを望んでいます。我々の技術的な質問に
対する回答は、サポート部門からの折り返しの電話は長い時間待
つことなく短時間で返ってきます。」
Jürgen Koch
NEWS 212/15 43
© Loewe Technologies GmbH
放送およびメディア | フォーカス
44
UltraHD はテレビの未来です
4K テレビや 4K カメラは、すでに家電販売店から手ごろな価格で購入できるようになっています。しかし本来の
4K コンテンツは著しく不足しており、これは、とりわけ放送インフラストラクチャの不備が大きく影響しています。
ローデ・シュワルツは、この状況を変えるためのあらゆる技術的手段をコンテンツ・プロバイダやネットワーク・オペ
レータに提供しています。
超高分解能テレビ(UHDTV)は、テレビ業界で最も注目されて
いる話題のひとつです。
リオデジャネイロで開催が予定されてい
るオリンピックなどの大きなスポーツ・イベントをきっかけとして、
放送会社、民生用電子機器メーカー、およびそのサプライヤは、
UHD ソリューションを使用可能にして製品として完全なものと
し、最終的にその地位を市場に確立すべく、懸命に努力を続けて
います。
今回、民生用電子機器産業は、UHD 用のカメラとテレビを提供
することによって、いつものニワトリが先かタマゴが先かの議論
を有利に主導しています。インフラストラクチャ・サプライヤと放
送会社は、生産者と消費者間の供給ギャップを埋め、市場性のあ
る UHD エコシステムを作り出すという課題に直面しています。
劇的に向上した画像分解能(UHD-1:3840×2160 ピクセル、
UHD-2:7680×4320 ピクセル)
によってデータ量が爆発的に
増加したこと、最大 120fps のフレーム・レートなどのその他の
改善点、拡張された色範囲、
より強力なオーディオ・フォーマットな
どを考えると、
これは容易な仕事ではありません。
しかしその目標
は、HEVC(H.265)次世代コーディング標準を使用することに
よって、現在の HDTV に使われている MPEG-4
(H.264)
の2
倍の圧縮効率を実現することです。これにより、UHDTV の番組
を地上波で放送できるようになります。2013 年春に韓国放送
公社(KBS)
がローデ・シュワルツの送信機を使用してソウル地域
で UHD 番組の放送を開始した際に、
これは十分に実現可能であ
ることが実証されました
(NEWS 211 の 45 ページを参照)。
現在および将来におけるビデオ・フォーマットのピクセル分解能
HD
(1280
× 720)
フル HD
(1920
× 1080)
UHD-1
(3840 × 2160)
4K 映画 (4096 × 2160)
SD
(720 × 576)
UHD-2
(7680 × 4320)
図 1:圧縮されていないフルスクリーン画像のピクセル数とそれに対応するデータ量を比較すると、UHD に取り組む開発エンジニアが直面している課題を視覚
的に理解することができます。
NEWS 212/15 45
放送およびメディア | フォーカス
カメラから視聴者に至る UHD シグナル・チェーン
A
B
1
R&S®AVHE100
2
生放送
3
4K カメラ
C
エンコーディング
4
4 セクター、
4×3G-SDI
多重化
ゲートウェイ
D
R&S®BTC、
地上波送信機、
衛星または
ケーブル・
ネットワーク
RF 変調
R&S®ETL
RF 復調
IP
R&S®Clipster
XAVC
ProRes
4K カメラ
または RAW
フォーマット
4K インジェスト
1
2
4K 編集
4K プレイアウト
3
GMIT BBM-810
4
4K、60fps
4:2:2、10 ビット
12G ビット/秒
4K 非圧縮
HEVC
デコーディング
4K、60fps
4:2:0、8 ビット
または10 ビット
20~25M ビット/秒
4K 圧縮
4K 圧縮、RF または IP
4K 圧縮、家庭用
図 2:ローデ・シュワルツのコンポーネントは、あらゆる UHDTV 放送チェーンのセットアップを可能にします。
図 2 は、
カメラから視聴者までに至る UHD シグナル・チェーン
の概要です。ローデ・シュワルツの機器を使用すれば、
カメラ出力
から始まるチェーンのすべてを構築することができます。
元となる UHD の番組は 4K カメラで録画されます(A)。生放送
でない場合は、非圧縮の素材が 4K ビデオ・サーバに転送(イン
ジェスト)
されて編集が行われます
(たとえばカラー・サブサンプリ
ングやフレーム・レートの変更、特殊効果など)。
放送日になると、4 本の 3G-SDI ケーブルを介してリアルタイ
ム・コーダに信号が送られます。
リアルタイム・コーダは HEVC 圧
縮を行い、その結果をトランスポート・ストリームとして出力します
(B)。
46
トランスポート・ストリームはさらに地上波送信機から送信される
か(DVB-T2)、衛星アップリンクに送られます(DVB-S2)。ある
いはまた、ケーブル・ネットワーク
(DVB-C2)
や IP ネットワーク
(IPTV)
に配信されます(C)。
視聴者の 4K テレビはこの信号を直接復調してデコードするか、
HDMI 2.0 接続を介してセットトップ・ボックスから受信します
(D)。
このチェーンに沿ったそれぞれのステップについて、以下のペー
ジで詳しく解説します。
A
インジェスト、編集、プレイアウト
RAW データを一般的に使われるあらゆるファイルフォー
マット
(圧縮または非圧縮)
にリアルタイムで変換
■■ 相互互換マスターフォーマッ
ト
(IMF)をサポート。インジェ
スト、処理、および出力(パッケージング)。IMF はデジタル・
カメラと放送の世界のギャップを埋めるものなので、標準
UHDTV ワークフロー・フォーマットとして使われます。
®
■■ R&S SpycerBox Cell ユニッ
ト
(9 ページ参照)
を外付け
すれば、R&S ® CLIPSTER の内蔵メモリ容量をほぼ無制
限に拡張することができます。同様に、
スーパーハイビジョン
(8K)のワークフローも容易に実装できます。
■■
生放送以外の番組では、放送時におけるヘッドエン
ドでの送信準備に先立ち、スタジオで編集、前処理、バッファリ
ングというプロセスを経るのが普通です(図 3)。現行の R&
S®CLIPSTER は、
XAVC、
ProRes、
および RAW フォーマッ
トのカメラ・データも処理することができます
(ファイル・ベース
のインジェスト)。さらに、必要なすべての操作を極めて容易に
行うことができます。
■■ 4K クリップを時系列に沿って配置
■■ RAW データに色その他の補正を直接実行
インジェスト、編集、プレイアウト
4K
ファイル変換
XAVC
ProRes
4:4:4
4:2:2
4:2:0
12 ビット
10 ビット
8 ビット
1
2
3
4
4K カメラ
または RAW
フォーマット
カラー・サブサンプリング
4K 出力
4 セクター
4×3G-SDI
プロダクション・ミキサ
R&S®Clipster
図 3:R&S®CLIPSTER は、4K 信号のファイルベース・インジェスト、
デジタル・イメージング、
フォーマット変換、
リアルタイム・プレイアウト用の高性能汎
用ソリューションです。
NEWS 212/15 47
放送およびメディア | フォーカス
B
HEVCリアルタイム・コーダ、マルチプレクサ、
ゲートウェイ
コンパクトな R&S®AVHE100 ヘッドエンドは、4K 番組デー
タを処理して送信可能なトランスポート・ストリームに変換しま
す。ヘッドエンドは最新の高性能データ技術が特長で、CPU に
負担のかかる HEVC コーディングをリアルタイムで行いま
す。ヘッドエンドのシグナル・フローはすべて IP ベースです。こ
れは、すべての機能の集積密度を高めるとともに機能構造の
幅広い柔軟性を確保し、個々の要求事項を満たすための前提
条件です。
テムのスケーラビリティも全体画像処理のもうひとつの利点
で、ユーザは必要な計算能力を満たすシステムだけ購入すれ
ば済みます。たとえば、代表的な構成は毎秒 60 フレームの極
めて優れた画質の 4K 用に設計されており、
ハードウェア
(プ
ロセッサ性能)もそれに見合ったものが選ばれています。ハー
ドウェアは、
より高いフレーム・レートなどの新たな要求が発生
した場合でも、簡単に追加することができます。
R&S®AVHE100 は以下の機能を備えています。
■■ 4 つの 3G-SDI 信号を同期して 1 つの 4K 画像に結合
(スティッチング)
■■ 受信 UHD 信号のカラー
・サブサンプリングを実行し、ITU
UHD-1 に合わせて 4:2:2 から 4:2:0 へ変換
■■ 8 ビッ
トまたは 10 ビットの色深度で HEVC リアルタイム・
エンコーディングを実行
■■ UHDTV 多重送信情報と PSI/SI または PSIP 情報を生
成
■■ 必要に応じ、
地上波単一周波数ネットワーク
(SFN)
での放送
用に、GPS 信号から取り出したタイムスタンプで T2-MI パ
ケットをタグ付け
■■ 送信ネッ
トワークへ送る IP または ASI 経由のトランスポー
ト・ストリームを生成
UHDTV 信号は、4 本の 3G-SDI ケーブルを介して、4K カ
メラ、下流側の制御ユニット、あるいは 4K プレイアウト・サー
バからヘッドエンドへ送られます
(データレート:12G ビット/
秒)。HD 画像を 1/4 ずつ個別に処理し、最後にそれらをつな
ぎ合わせてフル 4K 画像にする他の市販ソリューションと異
なり、R&S®AVHE100 は編集前に 1/4 画像を結合して、そ
の後に完全な 4K 画像を使って作業を行います。その利点の
ひとつは、高品質のプレイアウト素材によって 1/4 画像間の
継目が見えない状態に保たれるので、
より良い画質が得られる
ことです。これに対し、個別に処理を行うと、エンコーディング
の質によっては継目部分の質が低下する恐れがあります。シス
HEVCリアルタイム・コーダ、マルチプレクサ、ゲートウェイ
4K、60fps
4:2:2、10 ビット
12G ビット/秒
1
2
3
4
4K カメラまたは
プレイアウト
4 セクター
4×3G-SDI
1
3
2
4
スティッチング
4K、60fps
4:2:0、8 ビット
25M ビット/秒
MPEG-2 トランスポート・ストリーム
ASIまたはIP
エンコーダ
ゲートウェイ
エンコーディング
多重化
DVB-T2
R&S®AVHE100
図 4:R&S®AVHE100 は、3G-SDI ケーブルで送られてくる 1/4 ずつの画像をつなぎ合わせることによってフルスクリーン画像を生成し、HEVC コー
デック
(H.265)
を使用してそれをリアルタイムで圧縮します。圧縮された信号はさらに MPEG 2 トランスポート・ストリームにパッケージ化されて、配信
ネットワークに送られます。
48
C
マルチスタンダード RF モジュレータと
送信機
UHDTV 番組用に、あらゆる出力クラスのさまざまな DVBT2 送信機(たとえば R&S®THU9 ファミリや R&S®TMU9
ファミリのもの)
が用意されています。これらの機器はトランス
ポート・ストリームを直接受信することができ、最初の設備はす
でに稼働中です。
R&S®BTC 放送テスト・センターは、UHDTV 民生用電子機
器の完全なテスト環境を提供します。この装置はオールインワ
ン・ソリューションで、あらゆる放送規格のシミュレーションを
行い、
ビデオ解析とオーディオ解析の両方を同時に行うことが
できます。とりわけ大きな特長は、R&S®BTC が、最新の地上
波、ケーブル、および衛星送信技術用の機能を備えたマルチ
スタンダード・モジュレータであるということです
(図 5)。この
装置の特長は、ベースバンドから RF 部分までの 2 パス・アー
キテクチャで、MIMO DVB-T2 などの複雑なシナリオをシ
ミュレートすることができます。R&S®BTC は、HDMI 解析モ
ジュールを組み込んで、
セットトップ・ボックス用の完全なテスト・
ソリューションとして構成することも可能です。
マルチスタンダード RF モジュレータおよび送信機
DVB-T2
R&S®THU9
MPEG-2
トランスポート・ストリーム
ASI または IP
RF 変調
DVB-T2
DVB-S2
DVB-S2X
DVB-C2
R&S®BTC
図 5:圧縮された UHD トランスポート・ストリームは、
たとえば DVB-T2 送信機または
(テスト・セットアップの場合
は)R&S®BTC 放送テスト・センターに送られます。これらの送信機やテスト・センターでは、そのマルチスタンダード・
モジュレータ機能が十分に生かされます。
NEWS 212/15 49
放送およびメディア | フォーカス
D1
詳細な RF およびベースバンド解析に
よるカバレージ測定
受信上の問題は視聴者を苛立たせ、ネットワーク・オペレータ
のイメージを損ないます。ネットワーク・オペレータがそのカバ
レージ領域内で T&M モニタリングを行い、必要に応じて改
善措置を講じる理由はここにあります。特に、
フェージングやエ
コーが予想される大都市圏においては、
カバレージ品質に関し
て確認された情報はなくてはならないものです。R&S ®ETL
TV 信号解析器は、
この情報を提供します。R&S®BCDrive ド
ライブ・テスト・ソフトウェアと GPS アンテナを組み合わせるこ
とによって、R&S®ETL は、RF およびベースバンド・パラメー
タに基づき、ある位置に関連した包括的な解析を行います。要
望があれば、
ローデ・シュワルツは、
この装置と他のシステム・コ
ンポーネントをテスト車両搭載型のターンキー・システムとして
統合化することができます
(図 6)。
図 6:R&S®ETL TV 信号解析器は、地上波送信の RF およびベースバンド
(トランスポート・ストリーム)
パラメータに関する詳細な情報を提供します。写
真はカバレージ測定システムのセンターピースで、あらゆる規格の放送ネットワーク品質を解析します。
50
D2
HEVC リアルタイム・デコーダと
UHDTV の品質モニタリング
UHDTV シグナル・チェーンは視聴者のテレビで終了します。
これらのテレビは、そのテレビ内で復調とHEVCデコーディ
ングを行うか、セットトップ・ボックスによって提供される A/V
信号を使用します。
しかし、プロ用のモニタリングには別のソ
リューションが必要です。R&S ®ETL TV シグナル・アナライ
ザは現場での受信と復調が可能です。この装置は、ASI インタ
フェース経由で、
ローデ・シュワルツの子会社である GMIT 製
の BBM-810 放送マルチストリーム・モニタにトランスポー
ト・ストリームを転送します。BBM-810 はサーバベースのソ
リューションで、数多くのビデオおよびオーディオ番組を同時
にモニタして表示します。これは最大 4 つの UHD 番組を同
時にデコードできる市場唯一のソリューションで、非圧縮フォー
マット
(3G-SDI または 10GigE 経由)
と圧縮フォーマット
(HEVC/H.265 または H.264)のどちらでも受信が可能
です。BBM-810 は、画像フリーズや画像/音声喪失といった
「ハード」エラーの検出に加えて、PSNR および SSIM 測定
値に基づき、
リアルタイムで画像品質(基準との比較による相
対画像品質)の解析を行い、ヘッドエンド出力でそれを使用し
て HEVC エンコーディング品質をモニタすることもできます
(図 7)。
HEVC リアルタイム・デコーダとUHDTVの品質モニタリング
4K TV
エンコーディング
3G-SDI
RF変調
多重化
ゲートウェイ
R&S®BTC
たとえばR&S®THU9
R&S®AVHE100
3G-SDI
DVB-T2
IP
ASI
GMITのBMM-810
R&S®ETL
図 7:GMIT の BBM-810 は、複数の UHDTV 番組をリアルタイムで同時にデコードし、それらを品質情報とともに制御モニタ上に表示できます。この
装置は圧縮信号と非圧縮信号の両方を処理して基準画像ベースの画像品質解析を実行できるので、継続的なヘッドエンド出力のモニタリングや、
R&S®ETL と組み合わせて行う一時的な現場測定に最適です。
サマリ
世界的な市場性を備えた大きなスポーツ・イベント、
より大きな画
像フォーマットへのトレンド、4K 民生用電子機器が使用できるよ
うになったことなどがきっかけで、放送業界による 4K 番組素材
の提供と、適切な放送インフラストラクチャの開発が促進されて
います。
しかし、
リアルタイム処理が求められることや、チャネル
容量に限りのある地上波ネットワークを介して番組を転送しなけ
ればならないことを考えると、UHDTV の高いデータレートは放
送会社とそのサプライヤにとって非常に大きな課題です。ローデ・
シュワルツの製品は、
カメラ出力や配信ネットワークからカバレー
ジ測定や品質モニタリングに至るまで、放送会社が UHD シグナ
ル・チェーンのすべてを実現することを可能にします。
Dr. Nik Dimitrakopoulos; Simon Roehrs
NEWS 212/15 51
放送およびメディア | テストと測定
HDMI 2.0 6G に対応した最先端のビデオ・テスタ
バージョン 2.0 は次世代の HDMI 規格で、T&M 機器に新たな課題をもたらします。しかし、ローデ・シュワルツのビ
デオ・テスタ・ファミリを使用すれば、容易に対応が可能です。新しいオプションにより、民生用電子機器やコンポーネン
トにおけるプロトコルの相互運用性をテストできるほか、物理的送信特性をテストすることもこのクラスで初めて可
能になりました。
プロトコル・テスト
新しい R&S®VT-B2362 HDMI CTS
RX/TX 600MHz モジュール(図 2)
を使用すれば、HDMI フォーラムの適合
テスト仕様 2.0 に適合したテストを行う
ことができます。この新しいHDMI バー
ジョンは、たとえばディープカラーや 3D
モード機能を備えた UltraHD フォーマッ
トに対応しています。このモジュールは、
340Mcsc を超えるデータレートでも、
規格の基礎である TMDS プロトコルの
エラーをテストすることができます。特に、
仕様に含まれるように、
ソースについては
HF1-10ff テスト ID、
シンクについては
HF2-5ff に関するテストが可能です
(詳細
についてはデータシートを参照)。HDMI
フォーラムの新しいテスト ID は、旧 ID 同
様公式に認定されています。
モジュールは HDMI タイプ A 入力を備え
ており、
セットトップ・ボックスや Blu-ray™
プレーヤなどのソースを接続することがで
きます。HDMI CTS ソーステスト・ソフト
ウェア・オプションは、
適合テスト ID の使用
を可能にします。特定のテストに合わせて
分解能、
フォーマット、
テスト・シーケンス長
などを設定すれば、
このオプションが記録さ
れた未加工 TMDS データをテストして、
コ
ンテンツ・エラーの有無を確認します。
図 1:セットトップ・ボックスに接続した
R&S®VTC ビデオ・テスト・センター
でアイ・ダイヤグラムによるタイムド
メイン解析を実行中
52
HDMI タイプ A 出力は、
テレビやモニタ
などのシンクのテストに使用します。この
テストに必要な HDMI CTS シンクテスト・
ソフトウェア・オプション
(図 3)は、適合テ
スト仕様に定められたすべての関連フォー
マット用テスト・シーケンスを生成します。
高品質 TMDS 信号源
シーケンスはハードディスクから RAM に
ロードされ、FPGA を介してピクセル単位
の精度で実行されます。FPGA による実
装は、チップセットベースの市販ソリュー
ションより明らかに優れています。FPGA
実装は将来的な規格の拡張に合わせて
アップグレードすることが可能な上に、
極め
て優れた電気的特性の信号を生成します。
このためジェネレータは、ケーブルやコン
バータなどの物理的伝送特性テスト用の
基準信号源に適したものとなっています。
図 2:R&S ® V T-B2362 モジュールは、最大
600Mcsc の信号の TMDS プロトコル適合テス
トを行うことができます。
図 3:シンクの CTS スクランブリング・テスト実行
用ダイアログ
図 4:R&S®AVBrun を使用した HDMI シンクの
例に基づく適合テストの設定
NEWS 212/15 53
放送およびメディア | テストと測定
自動テストとプロトコル
各種適合テストは、個別に呼び出して実行
することもできます。R&S®AVBrun テス
ト・シーケンサ(図 4)
は非常に有効なツー
ルで、HDMI 規格の CDF に基づいて複
数のテストを異なるフォーマットで実行す
ることにより、貴重な時間を節約します。ま
た、PDF と HTML のログも生成します。
HDMI ソースのタイムドメイン解析
R&S ® VT-B2380 TMDS タイムドメ
イン・アナライザ・モジュール(図 5)は、
手ごろな 価 格 の 使 いやす いタイムドメ
イン解 析ツー ルで、H D M I ソース用に
6G の速度に対応しており、DUT が電
気 的 な 面 で規 格に適 合しているかどう
かを確認することができます。このため
に、R&S®VT-Z2385 HDMI タイプ A
TPA テスト・アダプタ
(図 6)
を使用し、RF
ケーブルと制御ラインを介して、モジュー
ルに DUT、
セットトップ・ボックス、
またはタ
ブレットを接続します。
テスト・アダプタのスイッチ・マトリクスを使
用すれば、
さまざまな信号を切り替えて解
析することができます。アダプタの EDID
エミュレーションが、DUT を正しい動作
モードに設定します
(図 7)
。
サブサンプリングを使用した
アイ・ダイヤグラム解析
通常、TMDS 技術では最大 6GHz の反
復信号を使用しますが、
これはサブサンプ
リングを使用することによって簡単に取り
込むことができます。
リアルタイムで動作
するソリューションと比較した場合の利点
は、
テスト・モジュールをよりコンパクトにで
きること、
およびコスト効果を高められるこ
とです。
振幅、立上り/立下り時間、S/N 比、バイ
アス電圧、スキューなどの主要パラメータ
は、生成されたアイ・ダイヤグラムから求め
ることができます(図 8)。また、
カーソル
測定、
ヒストグラム、
マスク表示などのさま
ざまなビューによって利便性が向上してい
ます。
基本となるアイ・ダイヤグラム測定の他
にも、HDMI のテスト仕様に基づき、V L、
V off、T rise、T fall、ペア内スキュー/ペア間
スキュー、
クロック・デューティ・サイクルな
どの追加的なオプション測定を行うことが
図 5:R & S ® V T - B 2 3 8 0 モ ジュ ー ル と
(図 6)
を使用
R&S®VT-Z2385 テスト・アダプタ
すれば、HDMI 2.0 ソースのアイ・ダイヤグラム測
定を行うことができます。
図 6:R&S®VT-Z2385 テスト・アダプタ
54
可能です。これらは制御ラインの電気的
測定によって補完されます(CEC、DDC、
HPD、+5V電源)。詳細についてはデータ
シートを参照してください。
カーやテストハウスの 4K UltraHD 機器
に関するさまざまな需要を満たします。プ
ロトコル適合テスト・ソリューションに加え、
ビデオ・テスタは、ユニークな使いやすい
集積化タイムドメイン解析ソリューション
競合製品と比較して、
このタイムドメイン・ をユーザに提供します。このテスタを使用
アナライザはコンパクトで操作も簡単で すれば、ほとんどの場合、オシロスコープ
す。このプラグアンドプレイ型の集積化さ は不要です。
れたオールインワン・ソリューションを使用
すれば、EDID エミュレータ、容量計、
テス モジュール方式の設計と幅広いベース・
ト・アダプタなどの個別機器を多数使用し ユニットによって、
これらのテスタ・ファミリ
なくてもテストを行うことができます。
は個々の要求に合わせて設定することが
できます。この製品ファミリは、ハイエンド
R&D アプリケーション用の R&S®VTC
ビデオ・テスト・センター(図 1)、携帯使用
サマリ
新しい HDMI 2.0 モジュールにより、 およびテスト・システム・インテグレーショ
ローデ・シュワルツは、民生用電子機器の ン用の R&S®VTE ビデオ・テスタ、
コスト
開発者やメーカー、あるいはチップ・メー 効果が重視されるアプリケーション用の
R&S®VTS コンパクト・ビデオ・テスタで構
成されています。HDMI テスト・モジュール
の他に、
アナログ・ビデオ・インタフェースや
MHL オプションも用意されています。
Harald Gsödl
略語
CDF
CEC
CTS
DDC
EDID
FPGA
HDMI
HPD
Mcsc
MHL
TMDS
機能宣言書式
民生用電子機器制御
適合テスト仕様
ディスプレイ・データ・チャネル
拡張ディスプレイ識別データ
フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ
高分解能マルチメディア・インタフェース
ホット・プラグ検出
メガ・キャラクタ/秒/チャネル
モバイル高分解能リンク
遷移時間最短差動信号伝送方式
図 7:HDMI ソースから特定出力フォーマットを要
求するための EDID 設定用メニュー
図 8:データレート 5.9Gbps、
カーソル測定モード
における HDMI 2.0 TMDS チャネルのアイ・ダイ
ヤグラム
NEWS 212/15 55
セキュア通信 | 航空交通管制
航空交通の安全性向上:
同時送信の自動検出
56
たとえば、複数の無線局が同時に送信を行う同時送信状態が発生したにも関わらずそれが認識されなかった場合な
ど、パイロットと管制官の間の重要な無線通信メッセージがブロックされてしまった場合は、航空交通が危険な状況
に陥ります。R&S®Series4200 ソフトウェア無線は、この同時送信を高い信頼性で検出できる初の無線です。
ドイツの航空交通管制業務を行うドイツ航
空管制有限責任会社(DFS)は、
ドイツだ
けで年間 300 万を超える空の便の監視
と管制を行っています。DFS のこの業務
を可能にしている主要なツールは、依然と
して振幅変調(AM)の無線通信です。パ
イロットと管制官は、
この通信を使用して
コースや高度などの情報、あるいは離陸と
着陸のクリアランスをやり取りしています。
管制官は、
共通の無線周波数を使用してそ
の担当空域内のすべての航空機を管理し
ています。すべての利用者が同じ無線チャ
ネルを使用する状況では、
2 人以上のパイ
ロットと管制官の送信が重なってしまうこ
とがよくあります。これは同時送信と呼ば
れます
(図 1 と下のボックスを参照)
。同時
送信の発生頻度は、主に特定セクター内
の交通量によって決まります。結果的に、
交通量の非常に多い着陸進入区間(たと
えば大空港周辺)
で使われる周波数におけ
る同時送信は、巡航区間で使われる周波
数の約 10 倍の頻度で発生しています。
同時送信
TX
長い間、同時送信を検出することは技術的
に不可能であると考えられてきましたが、
RX
ローデ・シュワルツはそのソリューションを
開発しました。
図 1:航空交通管制における標準的な双方向通信
方法(利用者が同じチャネルで順番に送信または
受信を行う)
では、同時通信を検出できない可能性
があります。
検出されない同時送信の危険性
破滅的な結果をもたらしてしまった同
時送信の典型的な例は、1977 年に
テネリフェで発生した事故の報告書に
示されています。この事故では 2 機の
ボーイング 747 が視程不良の滑走
路上で衝突し、500 以上の人命が失
われています。後に、管制塔と一方の機
体の同時送信が、他方のパイロットが
エラーを犯した主因のひとつとして指
摘されています。このパイロットは滑走
路がクリアであると思い込み、離陸準
備を完了して滑走を開始しました。別
の機体が滑走路上にいることを警告す
るその後の無線メッセージは、管制塔
からの送信と同時に送信されました。
この同時送信のために、管制塔もパイ
ロットもその送信を明確に聞き取るこ
とができませんでした。
他の多くの例も、同時送信になったことが
分からなかったときに、航空交通にとって
危険な状態を招くことを実証しています。
たとえばスイスでは、2010 年にチューリ
ヒ空港で重大なニアミスが発生していま
す。この時は、
どちらの機体も別々の滑走
エアライン 1 -
エアライン 2 -
路で離陸準備を終えていました。管制官
滑走路 16 で
離陸準備完了、
ありがとう。
は一方の機体に離陸許可を与えましたが、 離陸準備完了。
コールサインが似ていたため、両方の機
体が同時にこの離陸許可に応答し、互いに
交差している滑走路上を加速していきま
した(右図)。管制官はこの同時送信、具体
的に言うと誤って行われた方の確認応答
を聞き取ることができませんでした。調査
を行ったスイス航空機事故調査委員会は、
「連邦航空局は、スイスで使用する無線 2010 年、チューリヒ空港において同時送信
運用システムについては、同時送信を検出 を原因とする重大なニアミスが発生しました。
できるようにすべきである」という安全勧
告を出しました。
NEWS 212/15 57
セキュア通信 | 航空交通管制
ローデ・シュワルツの
ソリューション:DSiT
特許申請中のスマート解析技術に基づき、
このプロセスは受信信号のリアルタイム・
ローデ・シュワルツの R&S®Series4200 スペクトラム解析を行って、複数の AM受信機と送信機(図 2)用同時送信検出 DSB 送信が行われていないかどうかを確
(DSiT)
ソフトウェア・オプションは、航空 認します(図 3)。アルゴリズムは、両方の
交通管制用固定無線局上で同時送信を検 送信のレベル差が最大 20dB であっても
出する世界初の量産ソリューションです。 動作します このアルゴリズムは DFS とと
もに何度も野外テストを行って評価され、
繰り返し精密調整が行われました。その結
果、
できるだけ多くの同時送信を高い信頼
性で検出することができるようになった一
方で、誤警報は最小限に抑えられていま
す。これは、管制官がこのシステムを受け
入れるための重要な基準のひとつでした。
DSiT 内蔵の ATC 無線
VHF(112MHz~156MHz)
R&S®XU4200
VHF 送受信機
UHF(225MHz~400MHz)
R&S®EU4200C
コンパクト
VHF 受信機
R&S®XD4200
UHF 送受信機
R&S®ED4200C
コンパクト
UHF受信機
図 2:これらの R&S ®
Series4200 無線機
は DSiT 機能を備えて
います。
同時送信によるスペクトラム
0
信号レベル
(dB)
‒10
‒20
‒30
‒40
‒ 50
‒60
‒70
‒ 80
‒90
‒1400 ‒1200 ‒1000
‒800
‒600
‒400
‒200
0
200
400
600
800
1000
1200
ベースバンド周波数(Hz)
58
図 3:同時送信によって
2 つのキャリアが現れ
たスペクトラムの例
音声通信システムへの組み込み
図 4:DSiT 機能を備え
た R&S®Series4200
DSiT 機能を備えた R&S®Series4200 無線機
無線機は、既存の無線
EUROCAE
ED-137 による VoIP
個別出力、
帯域内オーディオ
信号伝送、
EUROCAE
ED-137 による VoIP、
E1 CAS信号伝送
通信システムや新しい
無 線 通 信システムに
シームレスに組み込む
R&S®VCS-4G
音声通信システム
サードパーティの
音声通信システム
ことができます。
図 5:R&S ®VCS-4G
音 声 通 信 シ ステ ム の
GUI の一部:周波数情
報フィールドの背景が
黄色に変わって同時送
信があったことを知ら
せます。
同時送信が発生したことは、接続された音
声通信システムにいくつかの方法で知ら
せることができるので便利です。これらの
方法には、EUROCAE ED-137 による
VoIP、個別出力、帯域内オーディオ信号伝
送、
および E1 CAS 信号伝送が含まれま
す。
固定型の R&S®Series4200 受信機と
送受信機は、既存の ATC システムや新し
い ATC システムに簡単に組み込むこと
ができます
(図 4)。これらの無線機を組み
込まれた音声通信システムは、管制官に信
号を送って同時送信の発生を知らせます。
適切なソフトウェアがすでにインストール
されている場合は、DSiT オプションを有
効にすることで、簡単に無線機をアップグ
レードすることができます。
サマリ
飛行便数は絶えず増え続けており、パイ
ロットと管制官の通信の必要性も同様に
増しています。結果として無線チャネルも
サ ード パ ー ティの シ ス テ ムと 異 なり、 ますます混雑の度を増し、同時送信が起こ
R&S ® VCS-4G 音声通信システムは、 る可能性も高まっています。このような中
同時送信を GUI で視覚的に知らせる で、安全かつ迅速に航空機に各種の許可
すべての航空交通管制機
機 能をすでに備えています( 図 5 )。こ を与えることが、
れは、R&S ® S e r i e s 4 2 0 0 無 線 機と 関にとってより大きな課題となりつつあり
R&S®VCS-4G 音声通信システムで構成 ます。DSiT は、同時通信による致命的な
されたローデ・シュワルツのエンドツーエン 通信エラーを回避する上で、管制官に頼も
ド・ソリューションを選んだ場合の明確な しい支援を提供します。
Mathias Erhard
利点です。
NEWS 212/15 59
セキュア通信 | 暗号製品
あらゆる電話アプリケーションに
使用できる最先端の暗号
市場に広く受け入れられている TopSec Mobile 暗号化ユニットは、市販スマートフォン用の音声暗号化機能を提
供します。この拡張暗号化ソリューションは、iPhone および Android 搭載携帯電話、PC、ラップトップでの通話、そ
して社内固定回線への通話において、盗聴される心配のない安全な通話を実現します。
アプリ・バージョンの
記事には、TopSec
Mobile がいかに簡
単に使えるかを示した
ビデオが含まれてい
ます。
図 1:これ以上シンプル
な、あるいは便利なソ
リューションはありませ
ん。TopSec Module
があれば、たとえラップ
トップ 経 由 の も の で
あっても、特別な作業
を行うことなく秘密通
話を実現することがで
きます。特別な携帯電
話も必要ありません。
60
今日の企業や政府機関、そして軍は、固定回線やス
マートフォンを介して秘密情報を交換することを望ん
でいます。
しかし、
これらの通話は比較的傍受が容易
なので、強力な暗号によって秘密情報を保護すること
が非常に重要になっています。セキュリティ・ソリュー
ションは、過度に複雑になることなく毎日の通信プロ
セスを処理できなければならない一方で、
シンプルか
つ柔軟であることが求められます。
暗号化 - 利便性と安全性のバランス
現在市場で使用できる製品やこれまで発表されてき
た製品を見ると、機能やセキュリティ特性、そしてコス
トの面で実にさまざまなソリューションが存在してい
ることが分かります(図 2)。デバイスに関する要求、
アプリケーション環境、そして考えられる使用法が非
常に多岐にわたるため、支配的と言えるような技術的
アプローチはありません。
図 2:現在の電話盗聴
利便性と安全性のバランス
防 止 用 のソリューショ
ン間には、セキュリティ
高
専用
と使いやすさの点で大
デバイス
きな違いがあります。
外部暗号デバイスと
標準 OS
マイクロ SD カードと
TopSec Mobile
セキュリティ強化 OS
セキュリティ
マイクロ SD カードと
標準 OS
セキュリティ・
App
アプリケーションと
標準 OS
低
低
プロの攻撃者でも破ることができないような高いセ
キュリティ・レベルが求められる場合、
アプリケーション
ベースのソリューションは適していません。このような
高い保護要求を満たすには、ハードウェアベースの暗
号が不可欠です。この境界条件を考慮した場合に考え
られる基本的概念は 2 つあります。すなわち、専用開
発されたセキュリティ強化型の暗号電話か、
ハードウェ
アセキュリティを追加した市販デバイスです。
柔軟性と利便性
高
2 つのデバイスを使用し、電話の外部で音声暗号化
を行うソリューションもあります。これらのソリュー
ションは、通信デバイスの選択に関して最大限の柔軟
性を提供します。これは、ローデ・シュワルツ SIT の
TopSec Mobile を使用することによって実現される
アプローチです
(図 3)
。
図 3:スタンドアロン暗
特別にセキュリティが強化された暗号電話は高レベル
のセキュリティを保証できますが、通常は、使用可能な
機能や柔軟性が限定されるという短所が伴います。こ
れらの電話は開発や製造にコストがかかる上に、製品
が変更になった場合は時間のかかる再作業や再証明
が必要になります。
号 化デバイスとして、
TopSec Mobile は、
Bluetooth ® 経由で
iPhones、Android ス
マートフォン、PC、およ
び衛星端末に接続しま
す。
2 つ目の概念には、専用のハードウェア・コンポーネ
ントを使用した音声暗号化が必要です。これには、別
体のスマートカードを使って電話内で通話を暗号化
する組み込みソリューションが含まれます。
しかし、
こ
のようなソリューションを使用できる電話は一部のタ
イプに限られます。ユーザは、
これら特定のモデルの
中から電話を選ばなければなりません。人気の高い
iPhone にはカードスロットが無いので、
スマートカー
ドによるソリューションは使用できません。
NEWS 212/15 61
セキュア通信 | 暗号製品
TopSec Mobile はセキュリティと
柔軟性/利便性を両立
盗聴防止機能を備えた部屋やシチュエーション・セン
ター、地下壕内などでは、多くの場合、モバイル・ネット
TopSec Mobile は、
iPhone、
Android スマートフォ ワークを使えないか、携帯電話の使用が禁じられてい
ン、PC、衛星端末に Bluetooth® で接続するスタン ます。このような環境では、TopSec Mobile を使用
ドアロン暗号化デバイスです。このデバイスは、秘密 すれば、既存のPCとそのネットワーク接続を通じて通
通話を行いたい時にいつでも使用できます(図 4)。 話を暗号化することができます。
セキュア通話を行う場合は TopSec Mobile の高い
信頼性を備えたハードウェアが通話を暗号化し、ユー
ザは TopSec Mobile のマイクロフォンとスピーカ
を通じて送話と受話を行います。これによって、
スマー 固定回線網への暗号化通話
トフォンに入り込んでいるウィルス、
トロイの木馬、そ 新しい TopSec Office Gateway(TSOG)は、
の他のスパイウェアによって通話が操作される恐れが TopSec 製品ファミリを安全な通話のためのオール
なくなります。TopSec Mobile が送受信する音声 ラウンド・ソリューションに変えます
(図 5)。このゲート
データは、
すでに Bluetooth® インタフェースを介し ウェイは、携帯電話と社内電話機間の暗号化通話に
て最大限のセキュリティが確保されています。通信デ 対応しています。これは、TopSec Mobile からその
バイスは、暗号化された VoIP データを送信するため 組織の構内電話交換機(PBX)へのリンクを外部から
にのみ使われます。結果として、実質的にほぼあらゆ の攻撃から保護して、その安全を確保します。TSOG
る Android または iOS スマートフォンや Windows は、他の TopSec デバイスからの送話を受信して
7/8 搭載 PC を使い、高いセキュリティ・レベルの音 自動的に復号します。着信は PBX の VoIP インタ
声暗号化を行うことができます。これにより、
チームの フェースへ送られて、さらにそこから組織内の内線番
メンバーが入れ替わる場合やさまざまなデバイスが 号へ送られます。
必要とされる場合でも、大幅な省力化を実現できま
す。好みの通信機器をそのまま使用できる点もユー
ザにとっては魅力です。
TopSec Mobile:汎用性の高い音声暗号化
オフィス内
現場
電話
PBX と
会議サーバ
Bluetooth®
UMTS、EDGE、
WLAN
電話会議
IP networks
DECT 電話
VoIP 電話
図 4:TopSec Mobile
はあらゆるアプリケー
ションに信頼できる暗
号 化 機 能 を 提 供しま
す。
62
暗号化接続
TopSec Office
Gateway と
R&S®VoI SERVER
UMTS、EDGE、WLAN、
ケーブル
Bluetooth®、USB
Bluetooth®、
USB
図 5:TopSec Office
Gateway:携帯電話か
ら社内 PBX への安全
通話用
図 6:R & S ® V o I P
SERVER は最大限の
信頼性と使いやすさを
保証します
TopSec Mobile からの着信通話は、いつもと同
じように机上の受話器を取り上げることによって受
けます。固定回線網から TopSec Mobile へ暗号
化通話をするには、可変の暗号化プレフィックスを
入力します。発信通話は、PBX が TSOG に通話を
転送する時に自動的に暗号化され、そこから必要な
TopSec Mobile に転送されます。TopSec Office
Gateway は、安全な接続を通じて通話できる相手の
数を劇的に増やします。受信可能な相手の数を増やせ
ば、
このセキュリティ・ソリューションははるかに効果的
なものとなります。
TSOG は 2 種類の 19" ラックマウント形式で提供
されます。TSOG Medium では、TopSec Mobile
と固定回線電話間で 8 本の同時通話が可能で、
TSOG Large では 32 本までの並列通話が可能で
す。要求がこれらの標準的な性能クラスを上回る場合
や、最大限の可用性を必要とする場合は、
カスタム・ソ
リューションを開発することができます。
最初の TSOG 設備は、
すでにヨーロッパのユーザに
よって展開されています。
完全前方秘匿性(PFS)のための
最先端暗号化方法*
TopSec Mobile は、非常に安全性の高い AES
256 アルゴリズムを使用して通話を暗号化します。
256 ビット暗号化を使用すると 2256 通りのキーを
使用できます。つまり、1.15×10 77 です。現実的な
時間枠の中でこれを破ることができないことは明らか
です。各通話のセットアップ時に、暗号化デバイスは自
動的に新しいランダムキーについて合意しますが、
こ
のキーは通話終了後に直ちに削除されるので、完全
前方秘匿性が保証されます。
*完全前方秘匿性は、暗
号化通信の内容が記
録された場合でもキー
を解除できないように
することで、秘匿性を
保証します。
VoIP ベースのすべての暗号化ソリューション同様、
TopSec Mobile では VoIP サーバも使われます。
R&S®VoIP SERVER には 2 つのバージョンがあ
ります。やはり 19" ラックマントとして設計されたこ
れらのデバイスは(図 6)、Medium バージョンで最
大 50 の登録ユーザを、Large バージョンで最大
1000 ユーザを扱うことができます。また、
TSOG の
場合同様、要求に応じて高性能バージョンを用意する
こともできます。
T o p S e c M o b i l は 、N A T O 機 密( N A T O
RESTRICTED)
に分類されるデータとして、
ドイツ連
邦電子情報保安局の認定を受けています。
Christian Reschke
NEWS 212/15 63
無線モニタリング / 無線探知 | 方向探知
2 つの最良手法の融合 -
従来型方向探知(AoA)
と
TDOA によるハイブリッド
無線探知
図 1:TDOA に基づく ITU 適合のモニタリング、
方向探知、
および送信源探知用のコンパクトな屋外型 R&S®UMS300 モニタリング・ラジオロケーション・システム
ローデ・シュワルツのハイブリッド無線探知システムは、先進的な到達時間差(TDOA)技術と、従来から使われている
到来角(AoA)に基づく実績ある方向探知技術を組み合わせたシステムで、これら 2 つの手法を組み合わせること
で大きな効果を上げます。TDOA 対応の機器やシステムの多くは、幅広いタスクにスケーラブルなソリューションを
提供しています。
TDOA - その概念
到達時間差(TDOA)
に基づく送信源探知は、従来から使われて
いる到来角(AoA)
に基づく実績ある方向探知と同じ要求を満た
していなければなりません。位置を特定しようとする送信源の周
囲には、十分な数の受信機を配置する必要があります。これらの
受信機は通常、送信源から異なる距離で配置されるので、一定の
速度で伝播する送信源からの信号は、
わずかに異なる時間で各受
信機に到達します。送信源の座標、
すなわちその位置は、
これらの
相対時間差から計算できます。
64
2 台の受信機に到達する信号の相対時間差の計算には、数学的
相関法が使われます。この値と受信機の地理的座標が、考えられ
るすべての送信源位置を計算するための基礎を提供します。これ
らの位置を地図上にプロットすると、双曲線が形成されます。この
計算は 2 つ目のペアについても繰り返され、必要に応じてさらに
多くのペアについて繰り返されます。これらの双曲線の交わる点
が信号の発信源、つまり送信機の位置です。この交差法は方向探
知機による無線探知にも使われますが、
この場合、対象となる送
信源は双曲線上ではなく直線上に位置するという違いがありま
す。
これは、TDOA による無線探知システムを構成する場合、少なく
とも 3 本の双曲線を提供する 3 台の受信機が必要なことを意
味します
(RX1-RX2、RX1-RX3、RX2-RX3、
図 2を参照)。
受信機の数が多くなればそれだけ精度が向上します。
しかし、受
信機の数には上限があり、その数を超えると送信源特定に要する
時間が劇的に増加しますが、それに見合うような精度の向上は得
られません。方向探知機を使用した無線探知についてもこれは同
様です。少なくとも 2 台の方向探知機が必要で、3 台使用すれ
ば精度が向上しますが、5 台以上使用しても精度はそれほど向上
しません。
電磁波は光速で伝播するので、到達時間差を計算するにはナノ秒
範囲のシステム精度が不可欠です。GPS 受信機を使用する理由
はここにあります。GPS 受信機は正確なタイムスタンプを提供
しますが、
これがベースバンド
(I/Q)
データに挿入され、その I/Q
データが相関付けに使われます
(図 3)。計算により合理的かつ曖
昧さのない結果が得られるようにするため、信号には最小限の情
報が含まれている必要があります。これが、未変調キャリア、つま
り CW 信号に TDOA があまり適さない理由のひとつです。
TDOA 法の利点は、特に、建物の密集した市街地で明らかになり
ます。反射やマルチパス伝播といった代表的な弱点は方向探知機
にとって重大な障害となりますが、
これらの問題は適切な TDOA
アルゴリズムを使用することで緩和できます。市街地のような環
境では、往々にして信号シナリオが複雑なものとなります。これら
の環境では、数多くの送信源からの電波がさまざまな形で混在し
ています。強力な電波の発信源に微弱な電波の発信源が隣接し
ていることも多く、
これが、線形性、感度、
ダイナミックレンジに関
する受信機の要求を厳しいものにしています。
図 2:TDOA 探知:受信機に到達する
TDOA 探知
特定しようとする
信号の相対時間差に基づいて、3 本
送信源の位置
の双曲線が計算で求められます。3
本の双曲線の交差する点が送信源の
位置です。
RX1
RX2
RX3
ハイブリッド TDOA /AoA 探知 -
2つの最良手法の融合
TDOA システムまたは AoA DF システムでも、信号シナリオや
現場の状況によっては最良の結果を得ることができますが、互い
の利点を組み合わせるために、両方の方法を同時に使用できるよ
うにするのが理想的です。ローデ・シュワルツの新しいハイブリッド
無線探知システムは、両方の方法の要求を満たすのに最適なシ
ステムで、TDOA ベースの無線探知用に幅広いコンポーネント
を提供しています。これらのコンポーネントには、R&S®ESMD、
R&S ® EB500、および R&S ® EM100 モニタリング・レシー
バ、R&S ® DDF255 および R&S ® DDF205 方向探知機、
R&S®UMS300 コンパクト・モニタリング・ラジオロケーション・
システム
(図 1)、R&S®UMS175 コンパクト・モニタリング・シス
テムなどがあります。
時間遅延補正
ローデ・シュワルツの
モニタリング・レシーバ
信号処理時間遅延
ダウン
コンバータ
シンセサイザ
図 3:ローデ・シュワルツのデバイス
A
D
信号処理
プロセッサ
タイム
スタンプ生成
Ethernet
スイッチ
内蔵
GPS
は、アンテナ入力から信号処理まで
の時間遅延を測定します。これはモ
ニタリング精度を大幅に向上させま
す。
フロントパネル
プリセレクタ
外部
GPS
Ethernet インタフェース・
コマンド/データ
NEWS 212/15 65
無線モニタリング / 無線探知 | 方向探知
これらのデバイスで TDOA を使用するために必要なのは、適
切な GPS 受信機(IGT オプション)を接続して、最新のファー
ムウェアをロードすることだけです。既存のデバイスへのレトロ
フィットも容易です。
で、無線探知は方向探知機によって行われてきました。現在では、
TDOA 法を使用するか、TDOA と AoA の組み合わせを使用す
るかを選ぶことができます。どちらの方法でも、測定は自動または
対話的操作の選択が可能です。
ローデ・シュワルツのデバイスは、高度な方法を使用してアンテナ 関連するセンサの選択と、電子地図上への方向探知および無線
入力から信号処理までの信号遅延を計算し、ベースバンド・データ 探知結果の表示には、R&S®MapView 地理情報ソフトウェアを
に挿入されたタイムスタンプを修正します。これは、時間精度とモ 使用します。このソフトウェアではさまざまなフォーマットの地図
ニタリング精度を向上させます。さらに、市場で唯一のこの革新 (無料のものや市販のもの)
を使用でき、無線探知の結果に加え
的な概念は、送信源探知を行うにあたり、TDOA をサポートする て、既知の送信源や免許送信局の位置を表示できます(図 4と
すべてのローデ・シュワルツ製デバイスを任意の構成で組み合わ 5)。
せることを可能にします。
測定は、R&S®ARGUS モニタリング・ソフトウェアによって制御
されます。25 年以上にわたって市場で成功を収めてきたこのソ
フトウェアは、
スペクトラム・モニタリングを行うあらゆる規制当局
や同様の組織にとって、世界的な標準となっています。TDOA 探
知は、
このソフトウェアの提供するさまざまな測定および解析機
能にシームレスに組み込むことができます。従来のワークフロー
における第一のステップは、特定の周波数帯をスキャンすること
です。見つかったすべての送信源は、通常、免許データベースか
らインポートされるリファレンス・リストと比較されます。リファレ
ンス・リストにない稼働中の送信源、例えば無免許送信源は、
より
詳細に解析されて識別され、その位置が特定されます。これま
ローデ・シュワルツ製ソリューションの利点
ローデ・シュワルツの最新世代の受信機や方向探知機にオプショ
ンの TDOA 機能を実装すると、以下のような大きな利点が得ら
れます。
■■ 高品質のデバイスによって高い探知精度が保証される。
TDOA モニタリングを成功させるには ITU の規格に適合した
高品質のデバイスが不可欠で、
これは大都市圏の信号シナリオ
においては特に重要です。高い感度と広いダイナミックレンジ
が、強力な送信機の近くから発信される微弱な信号でも正確に
測定することを可能にします。
図 4:双曲線およびヒートマップとし
て表示された TDOA 測定の結果
66
■■
■■
TDOA モニタリングの精度は、信号帯域の拡大と S/N 比の改
善によって向上します。信号帯域が狭ければ、それだけ位置特定
の精度は低下します。ローデ・シュワルツ製受信機の高い感度は
S/N 比を向上させ、無線探知の結果をより正確なものとしま
す。多くの場合、無線探知を可能にするのは高い感度で、
これは
帯域幅に関係する精度不足を補う役割も果たします。つまり、高
品質のデバイスは、
より高い精度で狭帯域信号の位置を特定し
ます。
TDOA 法と方向探知(AoA)
の柔軟な組み合わせ
ユーザは、TDOA ソリューション、方向探知(AoA)
ソリューショ
ン、
または両者を組み合わせたハイブリッド・ソリューションを状
況に応じて自由に選び、いつでも最良の方法を用いることがで
きます。
無線探知を行う必要がない時は、ITU 規格への適合を確認する
他の測定にシステムを使用できます
送信源モニタリングは重要なタスクですが、経験からすると、そ
の機会はそれほど多くありません。純粋な TDOA センサは、そ
れ以外の場合は役に立たないことが多いのです。これに対し、
TDOA 機能をオプションとしたローデ・シュワルツのデバイスと
システムは、常時その他のさまざまなモニタリング・タスクに使
用することができます。これらの TDOA 対応デバイスとシス
テムは、すべて任意の組み合わせで構成できるので、ユーザは
その主要タスクに合わせて最適のデバイスを選ぶことができま
す。
■■
既存のハードウェアに TDOA 機能を組み込めば、
新たな用地を
探す必要がなくなります
新たなモニタリング局に適した用地を見つけることは、
ますます
難しくなっています。既存局の機能を簡単に強化できるので、用
地を探し、電気やネットワーク接続、通信機器といった必要イン
フラストラクチャを整備するために時間と労力を費やす必要は
ありません。
サマリ
TDOA モニタリングの基本的概念は新しいものではありませ
ん。帯域幅の拡大が続く送信信号、
コンパクトで高性能の受信機、
GPS に基づく極めて高精度の時間および位置情報の世界的な
普及、高速化を続ける通信インフラストラクチャは、将来における
TDOA の技術的および経済的成功を裏付ける十分な理由になり
ます。ローデ・シュワルツは、その幅広い TDOA 対応デバイスと
システムによって、
さまざまなタスクに使用できるスケーラブルな
ソリューションを提供します。特に、TDOA と従来から使われてい
る到来角(AoA)
に基づく方向探知の組み合わせは、
ほとんどあら
ゆるアプリケーションに最適のソリューションを提供します。これ
は、あらゆる送信源の位置を高い信頼性で迅速に、なおかつ時を
選ばずに特定することを可能にします。
Thomas Krenz
図 5:双曲線と方位線を使用したハイ
ブリッド無線探知
NEWS 212/15 67
ニュース | 国際
チェコの航空交通管制機関がローデ・シュワルツのソリューションを採用
チェコ共 和 国 航 空 交 通 管 制 国 有 会 社( A N S
CR)
が、完全 IP ベースの音声通信ソリューショ
ンの設置をローデ・シュワルツに発注しました。
その焦点は、複数の場所にまたがる仮想管制セ
ンターを確立することにより、
フェイルセーフ機
能を備えた柔軟な形で空港間の通信リソースを
使用することに当てられています。この契約は、
R&S®Series4200 ファミリの VHF/UHF 無
線機に基づく送受信システムを、チェコ全国に
散らばる 18 箇所の無線サイトに設置するとい
うものです。同時に、
カルロビ・バリ、
ブルノ、およ
びオストラバの 3 箇所の地方空港に、完全 IP
ベースの R&S®VCS-4G 音声通信システムが
設置されます。
契約調印におけるANS CR 社長の Jan Klas(左)
とローデ・シュワルツ・プラハ社長のPavel Salanda
ベルリンの DVB-T2
パイロット・プロジェクトと
ローデ・シュワルツ
撮影:メディア・ブロードキャスト社
パイロット・プロジェクトでは、
アレクサンダープラッ
ツにあるベルリンの放送塔が、DVB-T2 規格に
沿った番組を送信中です。
68
ローデ・シュワルツ、
ゲートプロテクト社を
買収
2 0 1 4 年 1 0 月、ネットワーク・オペレー
2 0 1 4 年 に 行 わ れ た ゲ ートプ ロ テクト 社
タ のメディア・ブロ ードキャスト社( M e d i a (gateprotect AG Germany)の買収によ
Broadcast)
は、
ベルリン地区で DVB-T2 パイ り、
ローデ・シュワルツは IT セキュリティの将来
ロット・プロジェクトを開始しました。ローデ・シュ 市場への投資を強めるとともに、ネットワーク・
ワルツは、ベルリンにある 2 箇所のサイトに使
セキュリティ分野における新たな技術力を獲得
用する R&S®AVHE100 ヘッドエンドと、
最新 しました。同社はローデ・シュワルツ・グループの
世代の送信機によってこのプロジェクトに参加し
一員となり、有限責任会社(GmbH)
に変更され
ています。R&S®AVHE100 ヘッドエンド・シス
ました。ローデ・シュワルツは 2013 年 12 月、
テムは、
HEVC規格に従って放送 HD 番組をエ
ネットワーク・セキュリティ・ソリューションのメー
ンコードすることができます。
このシステムには、 カーであるアディトン・システムズ社(Adyton
ローデ・シュワルツのヘッドエンド管理ソフトウェ Systems)
を買収しています。両社はゲートプ
ア、マルチプレクサ、および T2-MI ゲートウェ ロテクトという社名の下に統一され、世界中の
イも含まれており、
これらは、DVB-T2 対応の
企業や組織をサイバー攻撃から効果的に保護
出力ストリームの生成を可能にします。このパイ
するために、
次世代ファイアウォールの開発に取
ロット・
トライアルでは、
スタジオから視聴者まで り組んでいきます。
の経路上に使われている各コンポーネント間の
連携に関して、
徹底した実践的テストが行われま
す。これは、対応民生用電子機器の開発に使用
できるテスト環境を、
メーカーに提供するもので
もあります。DVB-T2 番組の放送は、
2016 年
にドイツ全国で開始される予定です。
ローデ・シュワルツが ITU アカデミーをホスト
(2 回目)
2014 年 11 月、国際電気通信
連合(ITU)が、ローデ・シュワルツ
において ITU アカデミー・
トレーニ
ング・プログラムを再度開催しまし
た。
「ITU-R 勧告に従った無線モニ
タリング・システムの実装」と題さ
れたこの 5 日間のワークショップ
の目的は、各国規制当局の職員を
トレーニングすることでした。ロー
デ・シュワルツの専門技術者は、ス
ペクトラム・モニタリングに関する
プレゼンテーションと実践的なデ
モンストレーションを行いました。
ITU アカデミーの招待に応じて、各国から 20 名の代表者がミュンヘンのローデ・シュワルツ本社を訪れました。
シンガポールの
3GPP ミーティング
2014 年 10 月、ローデ・シュワルツ・シンガ
ポールはチャンギ・ビジネス・パークの新社屋
で 3GPP ミーティングをホストし、RF/RRM/
復調に関する作業を継続するために 137 名
の代表者が集まりました。リリース 12 では、
進行中の 75 の標準化プロジェクトに関する
1000 以上の文書を処理する必要があります
が、
ここでは RAN4 が主導的な役割を果たし
ます。3GPP の主な仕様上の特徴には、LTE
キャリア・アグリゲーション、
デバイスツーデバイ
ス、
アダプティブ・アンテナ・システム、UE デュア
ル・コネクティビティ、スモールセル・エンハンス
メントなどが含まれます。仕様に関する作業の
他に、参加者には、ローデ・シュワルツの製品に
関する説明を聞く機会も設けられました。
チームは、
「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」にある人工の木、
スーパーツリー・グローブも訪問しました。
NEWS 212/15 69
ニュース | 国際
ローデ博士、
デリーで
名誉教授に
ローデ・シュワルツがスマート
国家シンガポールを支援
2014 年 7 月、
デリーのインド工科大学は、
ウ
ルリッヒ・L・ローデ博士に名誉教授の称号を授与
2014 年 11 月、ローデ・シュワルツ・アジア
しました。ローデ博士は、
この高名な大学で多 (Rohde & Schwarz Asia Pte. Ltd.)は、
年にわたり教育を行った功績によってこの名誉
シンガポールの情報通信開発庁(IDA)
との相
称号を授与されました。同博士は名誉教授とし
互意思確認書に署名しました。同社は、
スマート
て講義を行うとともに、論文作成の指導教官と
国家を目指すシンガポールをパートナーとして
して学生を指導する予定です。同博士の業務に
支援します。シンガポールの技術インフラストラ
は、合同プロジェクト、国際業界誌への寄稿、特
クチャは、たとえばモノのインターネットやデー
許申請のコンサルティングも含まれています。 タクラウドを実現するために拡張されます。こ
ローデ博士は、RF およびマイクロ波エレクトロ
ニクス分野における IIT の応用研究にも参加す
る予定です。
相互協力を目指して
(左から)
:ローデ・シュワルツ・ア
ジア社長Dr. Lim Boon Huat、
ローデ・シュワルツ
社長/COO の Peter Riedel、IDA副長官 Toh
Chai Keong 教授(工学・技術グループ)、IDA の
John Yong 主任(情報通信セキュリティ・グルー
プ)
放送事業分野を「放送および ローデ・シュワルツへの
メディア」部門に名称変更
環境表彰
ローデ・シュワルツは、放送分野の業務を送信機
と T&M 機器以外にも拡大してきました。ロー
デ・シュワルツは長年にわたり、バリュー・チェー
ン全体に沿ってその製品ポートフォリオの拡大
を続けています。このたび、この新しい動きを
反映するために、
「放送部門」
(Broadcasting
Division)
という名称を「放送およびメディア部
門」
(Broadcast and Media)
に変更しました。
ローデ・シュワルツは世界をリードする送信機と
放送 T&M 機器のサプライヤですが、
スタジオ
用のまったく新しい製品ラインも加えてきまし
た。ローデ・シュワルツは現在、
インジェストから
撮影後の編集までをカバーし、オーディオ/ビ
デオ・ヘッドエンドから送信機および T&M 機器
におよぶ製品とソリューションによって、放送業
界における高分解能 4K 規格の立ち上げを支
援しています
(44ページも参照)
。
ローデ・シュワルツは、
ミュンヘンの環境保護プ
ログラムに基づく
「エコプロフィット・カンパニー
2014」という環境表彰を受けました。ミュン
ヘンに拠点を置く各企業は、環境負荷を軽減し
て資源を保護するための実践的対策を展開し
ています。ローデ・シュワルツは、特に LED 照
明への転換によって大幅な省エネを実現しまし
た。
しかし、最大の効率と省エネは、社屋の冷房
に地下水冷却を採用することによって実現され
ました。ローデ・シュワルツの環境対策には、二
酸化炭素放出量の削減や、RoHS、REACH、
WEEE、ISO 14001 といった環境関連法令、
ガイドライン、標準への完全な適合も含まれて
います。
ミュンヘン市の Joachim Lorenz 健康環境担当
官から表彰状を授与されたローデ・シュワルツの環
境管理部長 Johann Schrödl(右)。
70
れは、異種ネットワーク
(HetNet)、サービス品
質(QoS)、通信セキュリティなどの分野におい
てローデ・シュワルツがその技術力を生かすこ
とのできる領域です。両者とも特に HetNet ソ
リューションに力を入れ、次世代の 5G ネット
ワークの定義を進める意向です。
ビンペルクが
最優秀雇用者賞を再受賞
2014 年夏、雇用者協会はローデ・シュワルツ
のビンペルク工場を年間最優秀雇用者に選出し
ました。今回同工場が受賞したのは、
「南ボヘミ
ア地方の年間最優秀進歩的雇用者」
という特別
部門です。受賞者選考にあたって選考委員の評
価対象となったのは、革新性、従業員の地位、財
務上の健全性、意思疎通、将来への備えといっ
た要素です。ビンペルク工場は 650 名の従業
員を擁しており、チェコ共和国の南ボヘミア地
方でも最大級の雇用者です。
R&S®RTE オシロスコープが読者賞を受賞
ド
R&S ® RTE デジタル・オシロスコープが、
イツの業界誌「フンクシャオ」の「年間最優秀
ITC 製品」読者賞の T&M 機器部門で 2 位
を獲得しました。2014 年 10 月、同誌の
Markus Kien 副編集長(左)
が、製品マネー
ジャーの Sylvia Reitz とオシロスコープ製
品管理部長の Guide Schulze に同賞を授
与しました。Schulze は、
このオシロスコープ
がユーザに広く受け入れられているのは、
「ク
ラス最高のサンプリング・レートとデータ収集
速度、そしてメモリ容量を備えているから」だ
と述べています。
EDN が R&S®RTE を
「ホット 100 プロダクツ」
に選出
表彰状を持つ Konrad Bartl 社長兼工場長
2014 年、R&S ® RTE デジタル・オシロス
コープが、
オンライン・マガジン EDN の「ホッ
ト 100 プロダクツ」に選出されました。これ
は、編集者が革新性、使いやすさ、技術的独自
性などを考慮して、数千におよぶ新製品の中
から優れたエレクトロニクス製品を毎年選出
するというものです。また、
リストに加えられる
製品は、2014 年の R&S®RTE のように、読
者の人気が高いものであることも求められま
す。このオシロスコープは、組み込み設計のテ
スト、電力解析、エレクトロニクス・デバイスや
コンポーネントのデバッグに最適です。
タイスナハ工場が「2014 年最優秀工場賞」を受賞
ドイツの業界紙「プロダクチオン」は、
コンサル
ティング会社の A.T.キーニー社と共同で、タ
イスナハ工場を「優れた製造能力管理」部門の
「2014 年最優秀工場」に選出しました。選考
委員はすでに、2010 年に「優れた小規模シ
リーズ生産」部門で同工場を選出していました。
選考委員は、
販売、
製品、
従業員、
技術、
空間利用
などの側面におけるタイスナハ工場の継続的な
発展に非常に感銘を受けたとのことです。
さらに、
プリント基板、高精度機械技術、板金加
工、電気メッキ、組み立て、品質保証などの分野
において抜群の実績を持つ極めて優れた製造
能力管理が、同工場選出の大きな要素となりま
した。ローデ・シュワルツの工場は、週 5 日稼働
の工場実現へ向けたその短いターンアラウンド
時間についても、高く評価されました。
「年間最
優秀工場」賞は 1992 年から表彰が続けられ
ており、その内容はドイツのメーカーにとって最
も厳格な伝統ある基準と見なされています。
NEWS 212/15 71
マルチメータ、
オシロスコープ、電源、
スペクトラム・アナライザ、
信号発生器…
あらゆるエレクトロニクス・ラボに
は、信頼性の高い汎用計測装置が
必要です。ローデ・シュワルツのバリ
ュー・インスツルメンツは豊富な機
能と優れた計測特性を兼ね備えて
おり、使いやすく、予算的にも手ごろ
です。
マルチメータ
オシロスコープ
信号発生器
電源
www.rohde-schwarz.com/ad/value
スペクトラム・
アナライザ