はなみずきだよりNo.9

はなみずきだより
武蔵野市立第四小学校
校長 河村 祐好
No.9
はなみずき学級
平成27年2月27日(金)
1
巣立ちゆくあなたたちへ
井上 薫
.
通級してくる子供たちはみんな、きらきらボーイズ・るんるんガールズ(はなみずき教職員が密かに
命名した数人です。
)のように、毎回喜々としてはなみずきの教室に走り込んで来ます。
ようこそ。はなみずき学級へ。はなみずき学級は、あなたたち一人一人にとってオアシスであるよう、
学習環境を整えています。はなみずきに辿り着いた幸せを、身体全体で表現するあなたたちの姿に出会
うたびに、私たちはなお一層効果的な教育を提供できるよう努めてきました。
ただ、はなみずきの教職員は、あなたたちがここを必要としなくなる日を実現するために、日々研さ
んを積んでいるのです。あなたたち一人一人が、自信と勇気とスペシャルなツールを手にした時、ここ
は自然と必要なくなります。あなたたちの家庭と学校と地域社会が、本当の居場所になり、そこに真の
出番が見つかるからです。
さて、はなみずき学級の学習活動はいかがでしたか。子供も保護者の方もそろって大満足の方も、保
護者としては改善してほしいことが残っている方もいらっしゃるかもしれません。
弥生三月。子供たちには、小学校で迎える6回の3月の1回にすぎないかもしれません。しかし、小
学校にとって3月は一年の区切りの時期です。本年度もはなみずき学級を応援してくださった皆様、ど
うもありがとうございました。
そして、4月からもはなみずき学級に通う皆さん。私たちは、また一歩進化したはなみずき学級とし
てみなさんをお迎えします。どうぞご期待ください。
3月の予定
月
2日
火
水
木
金
3日
4日
5日
6日
9日
10日
11日
12日
13日
16日
17日
18日
19日
20日
保護者面談(2/23~)
通級終了
在籍校訪問
保護者面談終了
23日
24日
25日
修了式
26日
27日
春季休業始
保護者相談日
30日
31 日
☆在籍学級の担任の先生方へ☆
在籍校訪問の日時は、調整の上、改めてお知らせいたします。
☆保護者の方へ☆
来年度の「通級曜日」「通級開始日」については、改めてお知らせ
いたします。
朝・帰りの会、給食
2月で特徴的だったのは、給食の準備係へ立候補する子供が今までにも増して多かったことで
す。
「はい。やりたい。
」
「ぼくも。
」と、争うように手を挙げて胸を張る姿に、
「何か特別なことで
もあるのか。
」と勘繰りたくなるほどでした。どうもその意欲は、自分たち
で席を決められることのようです。
「ぼくと○君はこことここ。先生たちは
あっちにしてください。
」
自然な会話が広がるランチタイムといった雰囲気のはなみずき給食です。
身体感覚の課題
火曜日 ボール運動として、ポートボール
型のボールパスに取り組んでいます。ボー
ルパスでは、まず教員にパスをして前に進
み、教員からのパスを受けてゴールマンの
教員にパスをするという内容です。この活
動の中で、状況判断をしながら身体を動か
す経験や、ボールを投げたり捕ったりする
力を養います。移動に時間制限を設けると
「5 秒もいらないよ!」などとさらに難しい
制限を要求するなど、意欲的に取り組んで
います。今後は、敵役の教員をつけること
や、パスする役やゴールマンを子供に任せ
ることで、子供同士で協力して取り組む機
会につなげていきたいと考えています。
木曜日
水曜日
全身で一生懸命リズムをとりながら、止
まりそうなほどゆっくり回る長縄を目で
追っているのに、一歩も踏み出せないでい
るAさん。
「できない。」どんどん表情が暗
くなり、涙目になって身体の動きがしぼん
でいきます。
「目をつぶって、縄の音で入ってごらん。」
半分ポカンとした状態のAさん。1回目は
タイミングがずれて失敗。諦めるかと思い
きや、もう一度位置に付きます。4回目に
成功した後は、6人で声
を上げながら8の
字跳びをしていま
す。
金曜日
長縄跳びは、
「大波小波」から「8の字跳
足首を外向きにする「がに股歩き」や、内
び」にレベルアップ。今までは跳び込む必要
向きにする「内股歩き」をしました。C・D
がなかったため、跳べていたBさんも、跳び
君は、がに股や内股の姿勢になると、足を一
込む勇気がなくて泣いてしまいました。目を
歩前に出すことが難しく、大人の手を握りな
閉じて、床に縄が当たる音を聞いて入るよう
がら歩きました。2人はどこの筋肉に力を入
に言われました。縄が怖くて怯えていたBさ
れるか、バランスをどのようにとるかを経験
んでしたが、目を閉じて勇気を振り絞りまし
を積みながら実感しています。
た。結果、見事跳ぶことができて大喜び。そ
一つ一つの筋肉や関節の動きを意識させ
の後は、余裕と言わんばかりの表情で、長縄
ることで、徐々に全身を協応させた動きへと
跳びを楽しんでいました。
発展させていきます。
関係性の課題
火曜日
4月当初、自分の思いを優先して行動してしまい、集団の一員という意識が低かったE君。様々
な活動を通して、E君は役割に応じて自分の言動をうまく調整すること、相手の反応に興味をも
つことなどの経験を積み上げてきました。
そんなE君が、相談活動で書記に立候補していた時、E君にとっては、あまり好きではない活
動が提案されました。以前なら、
「僕は、やりたくないから書かない。
」と言っていましたが、今
では何も言わずに、提案を板書します。相談活動が進む速さに合わせて、書記としての仕事を自
分の力で果たしました。
これまでに、周囲の友達がE君の“そのまま”を受け入れ、行動モデルを示して関わってくれ
ました。この集団の関わりが、E君の伸びを後押ししたのだと感じられます。
水曜日
相談活動では、
「お化け屋敶」と「お店やさん」の提案が人気を集めています。
「お化け屋敶」では、子供たちが魔女やがい骨の装飾を付けてお客役の友達を驚かします。が
い骨のお面が怖くて、参加したくないと言うF君。他の皆は、「会場係なら、お化けに会わない
から大丈夫。
」
「G君と一緒に、案内役をやるのはどう?」と自発的に役割を考えていました。自
分さえ楽しめればよいのではなく、皆と一緒に活動するから楽しいという気持ちが膨らんでいま
す。
「お店やさん」でも同様に、活動リーダーが“全員に役割”を与え、商店街
のような活気のある活動となりました。
木曜日
「王様しっぽとり」では、
「ぼくが偽王様をするから、○君を本当の王様にしようよ。」と、低
学年の子供からも活発に作戦を提案します。また、初めて体育館で行ったキックベースでは、イ
ヤイヤ感満載で移動してきたのに、転がってくるボールを見た途端、真剣な表情になる男子もい
ました。自分の思いが先行してチームの意識としてはまだまだですが、集団として動き始めるま
での時間は速くなっています。
金曜日
「王様しっぽとり」では、王様をどうやって決めるか、どうやって相手に王様が分からないよ
うにするかで熱い議論が起こります。
同じチームになったH君とI君。H君は相手に王様が分からないようにわざと別の人が王様に
なったような演技をしようと作戦を立てました。しかし、なぜわざと王様の名前を伝えるのか分
かっていないI君。H君が理由を説明すると、I君は「じゃあ、○○君が王様になったらいいん
じゃない?」と提案していました。その後も二人で相談を重ねながら作戦を決めていました。
作戦が決まった後は、皆で作戦通りに行動しようとする子供たち。相手に勝つために必死です。
個別の実践報告(7)
出来事について説明することや、話題に沿って話をすることが難しくても、語彙を増やすこ
とや、説明する機会を設けることで伝えられるようになることがあります。
Jさんは、話題に関係のない話を始めることや、緊張する場面になると気持ちを伝えられず、
泣き始めることや混乱してしまうことがありました。
そのため、もじぴったんという言葉ゲームで語彙を増やしました。また、学校のことや自分
の家族のことなど話題に絞って会話をしたり、絵カードを並べてお話づくりをしたりすること
で、話題に沿って話す経験と説明する経験を積ませました。
集団での活動中、担当がJさんとは別の子供たちと行動することがありました。活動が終わ
り、Jさんに「どんなことをしたのか教えてくれる?」と尋ねると、
「○○をして、私は△△を
して、その次に…」と上手に内容を説明することができました。
今後は、小集団の中で役割を与えることで、出来事だけでなく、自分の提案や考えを友達に
分かりやすく伝えられるように指導していきます。
「巡回指導」の経過報告(2)
はなみずき学級通級児童の在籍校である本宿*、第三*、大野田、第四の4校で実施しました。
*2校が6月16日に先行実施を始めて1学期に2回、他2校は7月7日に1回行いました。
2・3学期には、隔週で各校4~5回実施し、対象児童は在籍児童43人(1月8日現在)中1
8人でした。低学年に対する「教科の補充指導」が11事例、主に中学年の通常の授業で、集団
の中で親和性を高める指導支援を行った7事例がありました。
指導の効果として、
「教科の補充指導」に関しては、個別課題に応じて一対一の指導体制が確
保でき、在籍学級の授業進行に応じた学習基盤の形成が図れました。一方、
「自立活動」は、個々
の特性に応じた集団編成の下で実施する情動協調の指導の方が、より効果的である印象が残りま
した。さらに、本市特別支援教室事業との連携により、教材等の共有が図れると、より効率的な
支援になると推察します。
はなみずきの風景
はなみずき学級の玄関前の掲示板をご覧になったことはあるでしょうか?実は
ここにも子供たちの会話を引き出すための秘密があります。それは、子供たちの大
好きなアニメやゲームのキャラクターの絵。これを子供たちが見るたびに、「あれ
は○○で、これは△△という名前で…」
「あのゲームどこまで進んだ?」
「このキャ
ラクターの色違いは☆☆って言うんだよ!」といった会話が自然に起こります。絵
は教員の手作りで、一月ごとに変わります。
そのほかにも、子供たちの意欲や会話を引き出すための秘密は様々なところにあ
ります。また機会があればお伝えしたいと思います。