音楽科6年「いろいろなひびきを味わおう」 浜松市立新津小 藤井早苗 1

音楽科6年「いろいろなひびきを味わおう」
浜松市立新津小
1 はじめに
(2) 相 互交流の時間の確保
現在担任している6年生は、J-POPや
映画音楽に興味が高く、音楽を聴くことや歌
うことを好む子が多い。しかし、器楽合奏と
なると、意欲面・技能面で個人差がある。苦
手 意 識 の 強 い 子 に 理 由 を 聞 く と 、「 上 手 に 演
奏 で き な い 。」「 楽 譜 を 読 め な い 。」「 た だ 練
習するだけでつまらない。他の曲になると、
ま た 一 か ら 分 か ら な く な る し 。」 と い う 声 も
あった。
そこで、友達と楽しく主体的に器楽合奏に
取り組み、活動から喜びを味わうことができ
る よ う に と 願 い 、「 グ ル ー プ の 演 奏 を 録 音 し
てCDにし、CDレーベルを作る」という活
動をゴールにした本題材を設定した。
2 実践
(1) 活動 内容、目標の明確化
自分たちの演奏を録音してCDにする活
動は、子どもたちには初めてのことだった。
単元の最初にそれを投げ掛けると、予想以上
の大きな反応があった。楽譜を見ながら範奏
を 聴 く と 、「『 ラ バ ー ス コ ン チ ェ ル ト 』 っ て 、
難 し そ う 。 こ の 楽 譜 、 全 部 演 奏 す る の 。」
「違うよ、パートが四つに分かれている
よ 。」「 打 楽 器 の パ ー ト も 別 に あ る ね 。」
「 パ ー ト や 楽 器 は 選 べ る の 。」 な ど 、 演 奏 に
対 す る 意 見 交 換 が あ っ た 。 そ の 後 、「 C D に
す る な ら 上 手 に 演 奏 し た い 。」「 い い 曲 に し
た い 。」 と 意 欲 的 な 声 が 上 が っ た 。 そ こ で 、
どのように演奏したらよいかを投げ掛けなが
ら、合唱曲「星空はいつも」を二部合唱した。
繰り返し歌ったり、聴き手と歌い手に分けて
聴き合ったりする活動を通して、子どもたち
は、それぞれの声部を楽譜通り正しく歌うこ
とはもちろん、両方の声量をバランス良くす
るとよいことに気付いた。その後、鑑賞曲
「『 王 宮 の 花 火 の 音 楽 」 よ り 『 歓 喜 』」 を 聴
い た 。「 同 じ ふ し が 繰 り 返 さ れ て い る け れ ど 、
金 管 楽 器 の 迫 力 が あ る 3 回 目 の 音 が 好 き 。」
と 演 奏 楽 器 に 興 味 を 持 つ 子 が 多 い 中 、「 自 分
は ど れ も い い と 思 う 。」 と い う 意 見 も あ っ た 。
その声をもとに、演奏楽器は違っても各声部
にふさわしい音域や音量で、バランスを良く
することが大切だと話し合った。このような
活動から、どのような演奏を目指せばよいの
か、共通の目標をもつことができた。教師は、
単元の流れをワークシートに表し、活動に見
通しを持てるようにした。ワークシートには
活動後の振り返りを書ける欄を設け、次回へ
の目標を持てるようにした。
藤井早苗
三 つ の グ ル ー プ を 作 り 、「 ラ バ ー ス コ ン
チェルト」の活動に入った。楽器演奏に比較
的自信がある子をグループのリーダーと副
リーダーとし、教え合えるようにした。教師
は、読譜が苦手な子のために階名を書いた楽
譜を用意し、奏法の個別指導をした。
まずは各担当を決め、短いフレーズだけ演
奏できるようにした。そして、演奏を他の
チームに聴いてもらい、全体のバランスが良
いか確認しあった。教師の投げ掛けをもとに、
「主旋律があまり聞こえなかったから、もっ
と 前 に 来 て 演 奏 し た ら 。」「 副 旋 律 の 音 が 目
立ちすぎるから、マレットを替えてみた
ら 。」「 低 音 パ ー ト の 割 に 、 音 が 高 い よ 。」 と
気付いたことを伝え合い、それぞれの演奏を
良くできるようにした。演奏楽器を決定し、
ふさわしい音域や音量を確認してから全て演
奏できるように練習した。
その後、他のグループが見守る中、グルー
プごとに録音をした。録音前には、各楽器の
演奏位置や、楽器の音量を確認し、それぞれ
のパートがバランス良く聞こえるようにと準
備をすることができた。
3
成果と課題
楽 器 演 奏 の 活 動 と な る と 、「 教 師 が 与 え た
曲をただ演奏するだけ」と受け身になる子が
多かった。しかし、演奏音源を残すという共
通の目標に、目的意識を持って主体的に活動
に取り組むことができた。音源を教師が目の
前でCDにし、音楽室のステレオで再生する
と、緊張した子どもたちの顔は、達成感にあ
ふれた笑顔に変わった。CDレーベルには、
曲紹介だけでなく、自分たちの演奏へのこだ
わりについても多く書かれていた。友達と課
題を追究する活動をし、達成感を味わえたこ
とは、今回の学習には大きな意味や価値が
あったと考えられる。その後の器楽の活動で
も、以前より意欲的に取り組む子が増えた。
表現することの楽しさに気付いた子の意欲を
今後も継続できるよう、単元構想を工夫して
いきたい。