「安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築」 研究開発領域について 2015年7月 領域総括 山田 肇(東洋大学) 解決すべき社会問題 刑法犯の認知件数は2002年をピークに減少 「刑法犯の認知・検挙状況の推移(昭和21~平成25年)」『平成26年警察白書』 一方で、ストーカーやDV、児童虐待、高齢者を 狙った詐欺事件、ネットいじめ等が増加傾向 小世帯化による孤立、高齢化、サイバー空間の 拡大などを背景に、犯罪・事故の態様や被害者 が変化 研究開発領域発足の動機 研究や対策が進んでいるが、現実の問題は制 度を超えて、変化・深刻化しているのではないか 現実や地域の問題に対応できるよう、公/私が 協力して、発見、介入(支援)できる仕組み、そ の活動に資する制度と技術を提示したい CiNii論文数(2015年7月15日全文検索) 事象 児童虐待 論文数 2942 ドメスティック バイオレンス 660 高齢者 孤独死 636 ネットいじめ 128 研究開発領域のアウトカム(最終目標) 私的な空間・関係性で起きる安全・安心上の問 題の顕著な減少 – 合理的な制度、社会資本の適正な配分に配 慮した仕組みへの合意形成の契機となる – 公的なセクター間、公的セクターとNPO・支援 者が連携し活動できる施策・仕組みができる – ビッグデータや各セクターに今まで埋もれて いたデータが活用される – 一般の生活者の意識が変わる …… 研究開発領域全体の取り組みイメージ アウトプット 研究開発プロジェクトのテーマ例 • 新しいプライバシー概念の提示と個人情報等の 利用の拡張に関する研究開発 ①社会システム・制度 の創生と伝承 • 複数の関係公的機関での情報共有・連携を促 進する法制度のあり方等の研究開発 … ②配慮が行き届き適 • コミュニティにおける多くの支援機関・家族・住民 切に介入・支援をする 等の情報共有・連携システムに関する研究開発 社会技術の創出 • 養育や介護に関わる支援(個人、NPO等)の増 公/私が協力する仕 強に関する研究開発 … 組み(間) • 過去事例のビッグデータ解析を用いた予防と異 ③情報通信技術等の 常の早期検知のための研究開発 利活用による新たな • IoT(Internet of Things)等を用いた予防と異 支援機能の構築 常の早期検知、記録等の研究開発 … 期待する研究開発 横断的視点:さまざまな事象の背景や対処策に みられる共通の制度上の問題の研究開発 現実社会に適用できる成果:社会資本の適切な 配分に配慮した、制度設計に資する、現場を対 象にしたエビデンスの積み上げ 新しい「間」の仕組み:対象とする人々の援助希 求行動にも配慮が行き届いた研究開発 広義での「制度」研究:法制度に加え、規制・慣 行・思い込みなどを対象とする研究開発 (例) IoTを装備した高齢者家庭 「家庭ロボット」 電気・水道・ガス、その他の利用状況や利用者 の身体動作(睡眠・転倒など)などを検出 高齢者の状況を把握し、料理をしている、電気 などが使用されている、夜はよく眠っている、は 総合して「青信号」 キッチンの利用がない、玄関ドアの開け閉めが ない、行動している様子が見えないで「黄信号」 転倒して動かなければ「赤信号」 (例)「自立生活支援サービス」の実用化 単に技術を用意するだけでなく、緊急時に、支援 者が装着者の元に駆け付けるサービスを提供す ることが重要 – 支援者・医療従事者等の多職種が連携し、自 治体職員や家族・近隣住民が関与する形では じめて実現される「社会システム」 – IoTからなる「家庭ロボット」と「社会システム」 の結合が「自立生活支援サービス」 山田肇、「情報通信技術が生み出す自立生活支援サービス」『科学技術動向』(2012) (例)高齢者の状態変化への対応の課題 (社会的介入)予定外の危害・事故が発生した際 に、本人・家族から個人情報の提供同意を得るの は困難。個人情報を保護して個人を保護できない のは本末転倒 (技術)家庭に設置するシステムは、柔軟な変更 可能性が必要。抜き差しだけ(Plug and Play)で動作す るよう標準化すれば、実装費用も低下 DV、児童虐待などにも共通の制度課題があり、 共通の技術が利用可能ではないか 社会資本の適正な配分 危害・事故を最小限に抑える ための、技術と社会的介入 方法の創出が新領域の課題 自立生活支援サービスが 社会的利益を生む領域 私 「間」 公 社会的介入の程度 孤独死の発生など 被害が大きい領域 高齢者一人に介護職一人 が張り付くなど社会的損失 が大きい領域 山田肇、「日本における電子政府の現状と動向」『科学技術動向』(2010)を加工 研究開発領域の目標 発見・介入しづらい空間・関係性における危害、 事故の低減・予防に資する新たな手法を現実の 問題とニーズに基づいて提示する これらの成果をもとに、発見・介入しづらい空間・ 関係性における危害や事故の低減に資する制 度・政策とその実現可能性を提示する 提示する取り組みや施策が継続的に実施され ていくために、社会システムへの統合可能性と いう観点で、これらの手法を導いた思考・考え方 を共有するネットワークを構築する 人権の保護と法令遵守 研究構想を実施するにあたって、 – 相手方の同意・協力を必要とする研究 – 個人情報の取り扱いの配慮を必要とする研究 – 生命倫理・安全対策に対する取り組みを必要と する研究等 法令等に基づく手続きが必要な研究が含まれて いる場合には、研究機関内外の倫理委員会の承 認を得る等必要な手続きを行うこと
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