(前払地代:継続地代) 併用方式

賃借権
※第4条 前払地代固有条項
(前払地代:継続地代) 併用方式
解
説
第1条
(1),(2)法 22 条の一般定期借地権の特約を定めたものである。
(3)法4条(借地権の更新後の期間),法8条(借地契約の更新後の建物の滅失による解約
等),
法 13 条(建物買取請求権),法 18 条(借地契約の更新後の建物の再築の許可),民法 6
19 条(黙示の
更新)の適用除外規定は、定期借地権契約において不可欠である。
(4)借地権には、建物所有を目的とする地上権と土地の賃借権の2種類があるので、そ
のいずれかを
明記することが望ましい。
第2条
(1)存続期間は、50 年以上の確定的な期間として明確に規定する必要がある。(借地借家
法第 22 条)
(2)存続期間の開始日、終了日は、ともに年月日で明確に定めるのが望ましい。
契約開始日が存続期間の記載欄に明確でない場合、年月を経た後、契約期間開始の時
期が不明確になるおそれがある。
第3条
使用目的を居住用一戸建建物の所有に限定しつつ、詳細については特約をもって定め
ることとしたのは、たとえば居住用一戸建建物の1階に小さなレストラン、喫茶、アト
リエ、ギャラリーなどを併設するなど、居住を主としつつも、建物の一部を他の用途に
も使用することが考えられるからである。
これらについては、周囲の住環境と調和す
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る限り排除する必要がなく、特約によってその許容範囲を明確に規定し、無用なトラブ
ルを防止しようとする趣旨である。
第4条
※前払地代固有条
項
この契約方式は、契約の当初に契約全期間の地代総額を算出し、その一部(例えば 50
%)を一括前払地代とし、残余(例えば 50%)を継続払いの地代とする方式である。
前払地代については、税務取扱い上、その全額ではなく、その当年(度)分を貸主は所得、
借主は経費として処理されることになり、中途解約のときには、未経過分に相当する金
額は貸主から借主に返還されることとなるので、その年額・月額を表示する必要がある。
また、第2条の借地権の存続期間(全期間=例えば 50 年間)と重複して、本条にも前
払地代の対象期間を○年○月から○年○月までの○年間と明記しているのは、前払地代
の対象期間が、契約の全期間(例えば 50 年全期間)、あるいは後半の 25 年間というよう
な事例もあり得ようから、前払地代の性質(経過分、未経過分の把握の必要性)上、その
対象期間を特定しておくことが重要となるからである。
本条(5)項に「前払賃料についての増減請求権を排除した特約」を明記しているが、本
書9ページの「前払賃料と将来における賃料増減請求権に関する法律解釈」に記述した
とおり、現行法ではこの特約をもってしても借主の減額請求権を排除することができな
いけれども、本書の主題の1つである「借地借家法第 22 条の一部改正」要望の実現を
見越して明記したものである。
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第5条
(1)地代の改定をめぐって将来紛争が生じることが十分予想されるので、地代の改定方式
をあらかじめ定めた。
ところで変動率について、単に消費者物価指数によるとしただけでは消費者物価指数
のうちどの指数によるのか、たとえば総合指数なのか、特定の費目によるのか、全国平
均なのか、地域別なのかという疑問が生じるので、特定しておくことが必要である。
左記の記載例:都道府県庁所在地別のさいたま市 の 総合 指数に従い決定する。現在、
統計局の消費者物価指数には「地代指数」の登載がないが、これがあれば最も望ましい
ものとなろう。
(2)当初の契約締結時点では、対象となる土地は、農地・山林・雑種地などの課税を受け
ていることが多く、その税額をもって「従前地代決定時の公租公課」とすると異常値が
出るので、借地人の建物が完成し、区市町村の資産税課が、その翌年の1月1日時点で
建物敷地として課税し、4・5月に通知される税額を採用することが第1回の地代改定
の際には必要となる。
(3)地主が地代の改定を申し入れる時は、①②の資料をユーザーに提供しなければならな
いこととした。これにより、地代改定の申し入れを受けたユーザーは、本条第(1)項の
計算式によって自分で地代の計算することができ、地主の申し入れが契約どおりのもの
であることを確認できる。なお、①の資料とは固定資産土地課税台帳の写しなどを指す。
また、②の資料は政府刊行物を取り扱っている書店などで購入するか、総務省統計局の
ホームページから入手することができる。
第6条
(1)借地権を自由に譲渡、転貸されたのでは、どのような人間が借地人になるか分からな
いので、原則として譲渡、転貸には地主の承諾を要することとした。
(2)しかし、定期借地権付き住宅を購入する者にとって、将来、転勤、家族構成の変化な
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どの事情が生じた場合、住宅を売却できるかどうかは重大な関心事である。定期借地権
という制度が広く普及していくためには、中古の定期借地権付き住宅を簡単に売り買い
できるような環境の整備が必要である。
そこで、借地権の譲渡には地主の承諾を要するとしつつも、地主が承諾を与える条件、
手続および承諾料の額を契約上明らかにし、定期借地権付き住宅の売却が容易に行える
よう配慮した。
本項では、ユーザーが借地権譲渡の承諾を求めるには、地主に対し新賃借人について
の①から④の書類を交付しなければならないものとした。これらの書類により、地主は
新賃借人の家族構成、新賃借人が破産者などの欠格事由に該当しないことおよび新賃借
人とされるものが本人に間違いないことなどを確認することができる。
(3)地主は第(2)項の①から④の書類その他の事情から、借地権の譲渡を承諾しても自己
に不利益がないかどうかを判断する。そして本項の①から⑥に該当する事由がある場合
を除いて、借地権の譲渡を承諾しなければならない。
本項のような規定を設けることによって、地主もユーザーも、本項①から⑥の事由が
ない限り、借地権の譲渡を拒否できないということを自覚し、本条第(6)項で承諾料の
金額が具体的に決められたことと相まって、当事者間の話し合いにより、借地権の譲渡
がスムーズに行われることを期待できる。
なお、本項⑤で、保証金とともに借地権を譲渡するのでなければ承諾を拒否できると
い定めたのは、借地権者と保証金返還請求権者が異なったのでは、地主は借地権者の契
約不履行から生じた損害と保証金とを相殺することができなくなるからである。
(4)30 日というのは調査期間である。このように具体的に期間を定めることによって、
地主がいつまでも回答を引き延ばすという事態を回避することができる。
30 日の期間の起算日を、譲渡の承諾を求める書面が地主に到達した時としたのは、地
主が外国旅行などで長期間不在の場合を考えてのことである。また、30 日以内に承諾を
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拒絶する通知が発信されればよいというのは、ユーザーにこの通知が到達しないうちに
30 日が経過してしまうのを防ぐ趣旨である。
(5)地主が承諾を拒絶する通知を発しない場合、承諾したことになるのか、拒絶したこと
になるのか不明では困るので、このような条項を設けた。
(6)承諾料は地代の6ヵ月分とし、低額かつ具体的な金額にした。これは、定期借地権と
いうのは 50 年の期間が満了すれば必ず終了するもので、使用の継続や建物の再築による
期間の延長がないから、地主は従来の借地権の場合と比べ借地人の個性にこだわる必要
性が少ないからである。また、承諾料は具体的に定めておくことが、紛争防止に役立つ
と考えた。
(7)本条第(2)項から第(6)項の規定は、定期借地権付き住宅の流通性を高めるために設
けたものである。したがって、借地権の譲渡についてのみ適用があればよく、法律関係
を複雑にする転貸については、本条第(1)項の原則によればよいと考えた。
第7条
本条は、土地所有者と地上権者が、相手方に対し、各々が知り得べき最小限の情報と
しての図面や書面を互いに交付すべきとしている。
土地に関する図面・書面は、地上権者にとって不可欠のものであり、建物の図面・書
面は、土地所有者にとって管理上、必要最小限の情報として点検、保管されるべきもの
である。
双方の相続・贈与などによる親族への名義変更の情報を互いに知ることも、当事者に
とって望ましい姿といえる。
第8条
(1)地主が底地を第三者に譲渡する場合に、ユーザーに買い受けの機会を与える趣旨であ
る。
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(2)底地の譲渡が行われた場合は、保証金返還債務は当然に新地主に引き継がれると考え
られるが、念のためこのような条項を入れた。
第9条
建物の増改築、再築は原則としてユーザーの自由とし、その内容を通知すればよいこ
ととし、承諾料などの支払いは一切不要とした。これは、定期借地権というには 50 年
の期間が満了すれば必ず終了するもので、増改築や再築による期間の延長がないから、
地主は従来の借地権の場合と比べ、これらにこだわる必要性が少ないからである。
ただし、土地所有者の管理上必要な増改築、再築の内容につき、借地権者から図面・
書面の交付を受けるべきとした。
第 10 条
(1)本条第1項では、借地権者が建物を貸す場合には、借地借家法第 39 条の確定期限付
建物賃貸借契約を締結しなければならないこととしている。これにより、本契約に定め
る存続期間が満了し、建物が取壊される時点で借家権は消滅し、この結果、借地権者は
建物賃借人に対し建物退去(明渡し)を請求することができ、土地所有者は建物賃借人
(占有者)に対し建物退去明渡しを請求することができる。
(2)本条第1項に基づく建物賃貸借の賃借人が賃貸部分を転貸するのには、借地権者(建
物賃貸人)の承諾を要するところ、本条第2項は、この承諾は、転貸借を借地借家法第 3
9 条の確定期限付建物賃貸借契約とすることを条件としてしなければならないとしてい
る。その意義は、第1項の場合と同様である。
第 12 条
(1)保証金返還請求権を担保するために抵当権を設定する。
(2)住宅金融公庫などが建物に設定する抵当権を、前項の抵当権に優先させる趣旨である。
(3)定期借地権を設定した底地について、地主に物納する必要が生じても、抵当権が設定
されたままでは物納できない。そこで、保証金を全額返還した時は、ユーザーは抵当権
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を抹消しなければならないとしたものである。もっとも保証金は無利息であるから、地
主はいつでも保証金を返還することができ、その場合には抵当権の抹消を請求すること
ができる。したがって、このような規定を設けなくても抹消を請求できることは当然な
のであるが、物納についての地主の不安を取り除くためと、保証金の返還、抵当権の抹
消を、地主、ユーザー間でスムーズに行うために本項を設けた。
(4)抵当権の抹消は、地主側の物納の都合で行うのであるから、抹消の費用は地主側が負
担することとした。
(5)甲の相続人が保証金返還資金を用意できない時点で、物納申請の必要に迫られた場合、
税務署に「保証金に関する確認書」(保証金については賃貸人と賃借人間で処理し、保
証金返還債務を国に引き継がないことを確認する文書)を提出しなければならないため、
ユーザーの無償協力を規定した。実際問題として、物納申請から許可までには相当の時
間を要するので、この間に保証金返還資金を調達し、保証金の返還と抵当権の抹消は許
可の直前に行えばよいから、このような規定を設けることは有益と考えた。
(6)現時点では、保証金に関する確認書には実印を押印することは必要とされていないが、
将来取扱いが変更され実印が必要となる可能性があるため、このような規定を設けた。
第 13 条
(1)ユーザーは、借地権の譲渡とともにするのでなければ保証金返還請求権を譲渡できな
い。借地人の債務不履行によって地主に損害が生じた場合、その損害を担保するのは保
証金であるから、借地権者と保証金返還請求権者が別人になるのは許容できないのであ
る。
ユーザーが保証金について銀行などから融資を受ける場合、地主に対する保証金返還
請求権に対し、銀行あるいは保証会社などが質権を設定することになる。そこで、銀行、
住宅金融公庫などから融資を受ける場合に限って、保証金の質入を認めることとした。
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(2)異議を留めない承諾とは、地主が保証金返還請求権の譲渡・質入を承諾する場合に、
同請求権の成立・存続・行使について、何らの異議を留保しないでする単純な承諾を言
う。地主が異議を留めない承諾をした場合には、保証金がすでにユーザーに返還されて
いるとか、あるいは最初から保証金が地主に支払われていないなどの事情があった場合
でも、地主は保証金返還請求権の譲受人あるいは質権者に対し、それらの事情を主張で
きなくなる。つまり譲受人あるいは質権者は、地主の異議を留めない承諾を得ておけば、
どのような事情があっても、安心して保証金返還請求権を譲り受けたり、質に取ったり
することができるということである。
異議を留めない承諾は承諾書という書面によって行うが、この承諾書には確定日付を
得ておく必要がある。確定日付を得ておかないと、保証金返還請求権の譲受人あるいは
質権者は、第三者(たとえば保証金返還請求権を二重に譲り受けた者とか、同請求権を
差し押さえた者など)に対して保証金返還請求権の譲り受けあるいは質入れを対抗でき
なくなる。確定日付とは、一般的には承諾書を公証役場に持参し、公証人にその日の日
付印を押してもらうことを言う。
以上の理由から、地主はユーザーに対して確定日付ある異議を留めない承諾書を交付
することとした。
(3)確定日付ある承諾書は、ユーザーが借地権の譲渡をしたり、銀行などから融資を受け
るために必要なのであるから、確定日付の取得費用はユーザーの負担とした。
第 14 条
(2)明渡しに必要な事項を書面で通知するわけだが、その通知の内容を具体的に定めた。
(3)明渡しが遅延した場合の使用損害金の計算方法について定めた。賃貸借契約が終了し
たのにかかわらず、本件土地から立ち退くべき借地権者(賃貸借契約が終了しているわ
けだから、正確に言うと、すでに借地権者ではない)が、まだ本件土地に居座っている
というような場合、地代の何倍かに相当する、使用損害金を取るべきであろう。そうで
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ないと、借地権者は賃貸借契約終了後も土地を無償で使用できることになり、居座れば
居座るほど得をすることになってしまう。
第 15 条
本条の規定を設けないと、期間内解約が困難になる。
第 16 条
地主が広大な土地を開発造成して、住環境の優れた一団の定期貸付各区画に定期借地
権を設定した場合、その中の1つの区画の借地人が、他の区画の借地人に著しい迷惑を
及ぼすような行為をすると、地主は他の区画の借地人から責任を追及され、そのことを
理由に地代の減額請求や、地代の支払いを拒否されたり、あるいは他の区画の借地人が
中途解約をしてしまった場合には、新たな借地人を探すことが困難になったりする。本
条の④から⑥の解除事由を設けたのはこのような事態に対処する趣旨である。
また、借地権者が土地所有者の承諾を得た上で、第三者に、残存期間の借地権と中古
建物を望ましい価格で譲渡できる(これは、土地所有者にとっても、地代収入の断絶が
ないという意味で有益である。)ためにも、一団の定期借地権住宅街の環境維持は必要
条件となり、ユーザー(借地人)に対し、良好な住宅用地の供給者としての土地所有者の
姿勢を明らかにするためにも重要な規定となろう。
第 17 条
消費者契約法上、借地権者が消費者の場合は、金銭債務不履行の場合の違約金は年 14.
6%となる。
第 18 条
(1)借地権設定契約は公正証書によって行う。したがって、公正証書が作成された後すな
わち借地権設定契約が締結された後速やかに、定期借地権の設定登記をするものとした。
(2)定期借地権の設定登記は、地主、ユーザー双方のためにするものであるから、登記費
用は各2分の1の負担とした。
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第 20 条
借地権設定契約は公正証書によって行うから、本契約書を交わした後速やかに公正証
書を作成する必要がある。
借地借家法第 22 条では、一般定期借地権である旨の特約は書面によってしなければ
ならないと定められているのみで、必ずしも公正証書による必要はない。それにもかか
わらず公正証書を作成することとしたのは次の理由による。
公証人法施行規則第 27 条第1号によれば、公正証書の保存期間は 20 年とされている
が、一般定期借地権のように契約期間が 20 年を超える文書の場合は、その契約期間内
は公証役場において保存が継続される扱いとなっている。土地の登記事項証明書によっ
て定期借地権であることや存続期間その他の限定的要目を知ることができるとしても詳
細な契約条項を確かめることは不可能である。したがって、公正証書によって借地権設
定契約をしておけば、地主が契約書を紛失してしまった場合でも、当事者(地主・ユー
ザー)の求めにより、公正証書の謄本は有料でいつでも交付されることとなり、契約内
容の全部が確認できることとなる。
なお、公正証書を作成する場合、本契約書は、その準備書面となり、本契約書の字句
が多少修正されるほかは、本契約書の内容と公正証書の内容はほとんど同一である。
なお、公正証書は、土地所有者、借地権者双方のために作成するものであるから、作
成費用は各2分の1の負担とした。
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