68 7 考察 ほとんどの児童が、箏を見ることも演奏することも初めてだった

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考察
ほとんどの児童が、箏を見ることも演奏することも初めてだった。楽器を目の前にす
ると、はやく弾いてみたいという声が聞こえてきた。また、想像していたよりも楽器が
大きいという声もあった。
前の時間に、桜のイメージをもつことができるよう、一人一人、桜についてのイメー
ジを紙に記入させた。それをまとめたものを掲示することにより、互いのイメージを交
流し合うことができ、桜のイメージを広げることができた。
桜のイメージ
桜のイメージをまとめたもの
(5年生全員)
学習課題を「箏で錦帯橋の満開の桜を表現しよう」と設定し、「さくらさくら」の演
奏を始めた。満開の桜のイメージを児童に尋ねると、「きれいで心が落ち着く」「心が
優しくなる」という意見が出された。また、満開の桜ということばで、子供たちは桜の
花を集団の美としてとらえることができた。テンポだけでなく力強く演奏することも視
野に入れながら練習することで、少しずつ息の合った演奏ができるようになった。「さ
くらさくら」を繰り返し練習しているうちに、少しずつ音色に気をつけて演奏すること
ができるようになった。
箏の演奏
リコーダーの演奏
箏を演奏する時、またはリコーダーを演奏する時、どちらのパートを演奏するために
も正しいリズムと美しい音色、更に力強さや歯切れのよさが大切だと意識していた。ま
た、お互いの演奏を聞き合い感想を述べ合うことで、より課題に近づく演奏ができるよ
うに、それぞれがめあてをもって練習する姿が見られた。
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最後に、ゲストティーチャーによる「さ
くらさくら」の模範演奏を聴いた。
一般的な箏に、十七弦という低音の楽器
も加えた5面の箏による合奏を間近で見た
り、聴いたりすることができた。先生方の
細かい手の動きや、息の合った美しい音色
の演奏に感激していた。
また、5人にも関わらず、力強く歯切れ
のよい箏の音色に自分たちとの違いを見つ
け、次の学習に生かそうとする児童もいた。
ゲストティーチャーによる模範演奏
授業後の感想
・思っていたよりも弦が硬かったので弾きにくかったが、がんばった。
・演奏するまでは、できるかどうか心配だったけど、やってみると楽しかった。
・自分は右手だけで演奏するのも大変なのに、先生方が両手を使って演奏しているのを
見て、すごいなと思った。
・箏をもっとやってみたいと思った。来年は、もっと力強く弾きたい。
・みんなと一緒に合わせたところがよかった。みんなと合わせると本当に満開の桜みた
いだった。
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成果と課題
児童は、楽器に直接触れたり演奏を体験したりする活動を行うことにより、本物のよ
さを知り、日本の伝統音楽に関心をもつことができた。次の時間、「春の海」を鑑賞し
た時には、箏と尺八との合奏を聴きながら、その美しい音色を感じ取っていたようだっ
た。また、自分たちが演奏した「さくらさくら」をふり返り、次に箏を演奏する時には、
もっと上手になりたいと期待を膨らませていた。5年生での学習が、6年での箏の学習
への意欲や内容の発展につながっていくと考える。
本校では、ゲストティーチャーの方々に協力をいただき、このような体験学習を行う
ことができている。今後もこのような取組を続け、5年生での学習、そして6年生での
学習をより深めていきたい。箏を中心に日本の音楽を学習しながら、他の和楽器の音楽
にも触れる機会を作っていきたい。
ゲストティーチャーによる指導
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