7 考察 ほとんどの児童が、箏を見ることも演奏することも初めてだった。楽器を目の前にす ると、はやく弾いてみたいという声が聞こえてきた。また、想像していたよりも楽器が 大きいという声もあった。 前の時間に、桜のイメージをもつことができるよう、一人一人、桜についてのイメー ジを紙に記入させた。それをまとめたものを掲示することにより、互いのイメージを交 流し合うことができ、桜のイメージを広げることができた。 桜のイメージ 桜のイメージをまとめたもの (5年生全員) 学習課題を「箏で錦帯橋の満開の桜を表現しよう」と設定し、「さくらさくら」の演 奏を始めた。満開の桜のイメージを児童に尋ねると、「きれいで心が落ち着く」「心が 優しくなる」という意見が出された。また、満開の桜ということばで、子供たちは桜の 花を集団の美としてとらえることができた。テンポだけでなく力強く演奏することも視 野に入れながら練習することで、少しずつ息の合った演奏ができるようになった。「さ くらさくら」を繰り返し練習しているうちに、少しずつ音色に気をつけて演奏すること ができるようになった。 箏の演奏 リコーダーの演奏 箏を演奏する時、またはリコーダーを演奏する時、どちらのパートを演奏するために も正しいリズムと美しい音色、更に力強さや歯切れのよさが大切だと意識していた。ま た、お互いの演奏を聞き合い感想を述べ合うことで、より課題に近づく演奏ができるよ うに、それぞれがめあてをもって練習する姿が見られた。 68 最後に、ゲストティーチャーによる「さ くらさくら」の模範演奏を聴いた。 一般的な箏に、十七弦という低音の楽器 も加えた5面の箏による合奏を間近で見た り、聴いたりすることができた。先生方の 細かい手の動きや、息の合った美しい音色 の演奏に感激していた。 また、5人にも関わらず、力強く歯切れ のよい箏の音色に自分たちとの違いを見つ け、次の学習に生かそうとする児童もいた。 ゲストティーチャーによる模範演奏 授業後の感想 ・思っていたよりも弦が硬かったので弾きにくかったが、がんばった。 ・演奏するまでは、できるかどうか心配だったけど、やってみると楽しかった。 ・自分は右手だけで演奏するのも大変なのに、先生方が両手を使って演奏しているのを 見て、すごいなと思った。 ・箏をもっとやってみたいと思った。来年は、もっと力強く弾きたい。 ・みんなと一緒に合わせたところがよかった。みんなと合わせると本当に満開の桜みた いだった。 8 成果と課題 児童は、楽器に直接触れたり演奏を体験したりする活動を行うことにより、本物のよ さを知り、日本の伝統音楽に関心をもつことができた。次の時間、「春の海」を鑑賞し た時には、箏と尺八との合奏を聴きながら、その美しい音色を感じ取っていたようだっ た。また、自分たちが演奏した「さくらさくら」をふり返り、次に箏を演奏する時には、 もっと上手になりたいと期待を膨らませていた。5年生での学習が、6年での箏の学習 への意欲や内容の発展につながっていくと考える。 本校では、ゲストティーチャーの方々に協力をいただき、このような体験学習を行う ことができている。今後もこのような取組を続け、5年生での学習、そして6年生での 学習をより深めていきたい。箏を中心に日本の音楽を学習しながら、他の和楽器の音楽 にも触れる機会を作っていきたい。 ゲストティーチャーによる指導 69
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