特集:この国は「戦争」をめざすのか

第
2013年
広島ジャーナリスト
号
15
月
12
特集:この国は「戦争」をめざすのか
松元 剛 安倍政権の恫喝と犠牲強要
前泊博盛 日本は主権国家か
屋良朝博 沖縄抑止力論は本当か
なぜ、今「国防軍」なのか 日弁連パネル討論
山田健太 知る権利と秘密保護法
大島 寛 「正気を保つ」ということ
広島で秘密保護法反対ネット結成
日本ジャーナリスト会議広島支部
≪1≫
特定秘密保護法に抗議し、広島市内の繁華街でで約千
人がデモをした (12 月6日、撮影・長谷川潤)
目次
戦後日本の〈誤表示〉問題 浅川泰生2
特集・この国は「戦争」をめざすのか
家族守るため移住決断
「加害者主導」が大きな問題 神原 将 96
除本理史 101
沖縄リポート 安倍政権の恫喝と犠牲強要
福島の甲状腺検査「疫学調査」の色彩
松元 剛3
青木克明 108
日本は主権国家か 前泊博盛 11
非人道的なベトナムへの原発輸出 伊藤正子 113
沖縄抑止力論は本当か 屋良朝博 28
被爆者とABCC㊦ 相良カヨ 120
藤居平一さんのこと 宇吹 暁 128
岩国基地「海の裁判」
「山の裁判」判決
四国・オレンジルートをたどる 37
沢田 正 40
なぜ、今「国防軍」なのか 日弁連パネル討議か
ら
43
変更迫られる「人権」
「自由」
体
斎藤貴男 131
「アラブの春」3年 坂井定雄 134
青井未帆 57
国家安全保障基本法案概要
61
知る権利と秘密保護法 「正気を保つ」ということ
「 成 長 戦 略 」 と「 積 極 的 平 和 主 義 」 は 表 裏 一
山田健太 63
大島 寛 67
アングル 銀幕の向こう側 なりたい自分にな
れない物語 真崎 哲 138
メディアスクランブル 自民党タカ派の平和ぼ
秘密法反対広島ネットワーク結成 72
け 定義あいまい何でも秘密
尾山慎太郎 72
THE BOOK 「沖縄の〈怒〉日米への抵抗」「原発
小森陽一 79
ホワイトアウト」
「『幸せ』の戦後史」
「アメリカ・
85
メディア・ウォーズ ジャーナリズムの現在地」
伊方再稼働8千人「NO」
編集部 86
143・144
止めよう伊方再稼働 和田 宰 88
風訊帖 安倍政権は軍拡の泥沼にはまりこむの
原発再稼働を認めないために 木原省治 92
か 戦争する国づくりに「NO」を
書評・島の「たたかい」を淡々と 真崎 哲 139
浜風子 145
広島ジャーナリスト
≪2≫
巻にも及ぶ膨大な資料の存在を、ホワイトハウスと
女は、印象的な指摘をしている。
一つは、
中野重治の作品を引いて「私らは侮辱の中に生きている」と発言した
のは昨年7月、東京・代々木公園での大江健三郎氏だった。1年余を経
点とし、多くは国内の「聴衆=有権者と議会」
向けであったということだ。
向けであったこと―。これらは何を意味するか。欺瞞は自己欺瞞を出発
事実がほとんどなかったこと。嘘は敵に向けてでなく、ほとんどが国内
戦後日本の〈誤表示〉問題
て、私たちは再び「侮辱の中に生きている」と言わねばならない。
きた対米従属と占領政策批判の二律背反である。その深層に潜むのは、
ドに、戦後史の逆層に光を当てたのは白井聡氏の「永続敗戦論」で[
ある
が、基軸として語られているのは戦後一貫して日本の保守政治がとって
日に縮められた。それでも寄せられた意見は9万480件
では主に政令や省令が対象で法律は任意だが、それにしても原則
募集期間は
30
立した。最後に、国民の目の届かない秘密の「永久凍土」を、刑罰を伴
それが9月中旬に国会提出の動きが表面化して以来、3カ月足らずで成
である自民と公明から特定秘密保護法の具体的言及がなかったことだ。
られ、そこで出た意見は、黙殺された。一つは、7月の参院選で、与党
ル、レストランのメニュー「誤表示」問題ではないが、そろそろ戦後日
いま安倍政治は、それを裸のまま露呈させている。先ごろ発覚したホテ
戦」を否認しつつ対米従属を続けるという自民党政治の内部矛盾である。
言葉を借りれば「実利としての平和」である。そこから見えてくるのは
「敗
デカダンス」
(丸
[山)である。
吉 田 茂 以 来、 日 米 安 保 体 制 の 上 に 表 装 さ れ た「 平 和 」 は、 白 井 氏 の
[4]
う法体系で作ったことだ。何が秘密かも分からない仕組みは、どんな監
[1]
ペンタゴン・ペーパーズ
国 防 総 省 秘 密 報 告 書を ニ ュ ー ヨ ー ク・ タ イ ム ズ 紙 が 1 9 7 1 年 6 月
[5]
「 日 本 の 支 配 機 構 が 出 し て き た 憲 法 改 定 を 国 民 が 押 し 戻 し た 場 合 は、
となった品川正治氏のビ
[ デオメッセージが記憶に残る。
日本の国は全く変わる。日米関係も変わる。 世紀の日本の姿は、そこ
=筆者要約。 (「広島ジャーナリスト」編集長 浅川泰生)
から描ける。改憲案を拒否して9条を守るとなると世界史的な事件だ」
21
密」が5
[ 年間で3万4千件廃棄され、指定解除が1件だけだったことが
それを物語る。
に公にした事件はジャーナリズムに多くの教訓を残すが、この問題につ
[2]
いての詳細な論考であるハンナ・アーレントの「政治における嘘」も[ま
た、多くの示唆を含む。アーレントは、政治目的達成のための意図的な
10
[3]太田出版、2013年 [4]「丸山真男セレクション 軍国支配者の精神形態」(平凡社、2010年) [5]しながわ・まさじ 1924年神戸市生まれ。中国から復員後、東京大卒。全
損保本部副書記長、副委員長のほか、日火支部委員長。日本火災海上保険社長、経
済同友会専務理事など歴任。8月 日死去。「戦後歴程」は岩波書店、2013年
29
虚偽と明白な嘘は、有史以来われわれとともにあったという。さらに彼
月 は じ め 広 島 市 内 で 開 か れ た 日 弁 連 大 会 で の、
「戦後歴程」が遺著
本の〈誤表示〉問題にこそ決着がつけられなければならない。
%は反対だった。衆参の地方公聴会はあたふたと舞台がしつらえ
「隠蔽された敗戦=「終戦」との言い換え」(白井)と「体制そのものの
日の
[3]
大江氏が言った「侮辱」と丸山真男氏の「無責任の体系」をキーワー
特定秘密保護法は成立した。市民、ジャー
国会最終日の 月6日深夜、
ナリスト、学者ら広範な反対を押し切った末だ。経緯を振り返って「侮
の外にあった。一つは、報告書によって暴露された中に、目覚ましい新
国務省はつきとめることができなかったこと=文書は彼らの関心
47
一 つ は 国 民 の 声 の 無 視 で あ る。 パ ブ リ ッ ク コ メ ン ト は、 行 政 手 続 法
辱の中を生きている」というのは、少なくとも三つの理由がある。
12
視 機 関 を 作 ろ う と 恣 意 的 に 事 実 を 闇 に 葬 り 去 れ る。 先 行 す る「 防 衛 秘
で、
15
[1]元海自隊員の情報漏えいを契機に2002年施行の改正自衛隊法で規定された。
文書保存期間は1年未満から 年で、延長できる。漏えいは最高懲役5年。
[2]「暴力について」(みすず書房、2000年) 30
2013.12.20
77
松元剛 沖縄リポート
縄(しま)という窓」を連載。2013年
から編集局次長兼報道本部長。1965年
那覇市生まれ。
「県内移設」を掲げなかった彼らは総崩れとな
り「辞職して信を問うべきだ」とする県民の猛
烈な批判にさらされている。
超党派の県民が「県内移設ノー」で結束した
「 オ ー ル 沖 縄 」 の 民 意 の 一 角 は 崩 れ た。 在 京 大
いるが、そう簡単に事が進むはずはない。自民
辺野古移設が容易に進むとの見方を増幅させて
手 メ デ ィ ア の 報 道 を 介 し て 本 土 の 国 民 の 中 に、
「沖縄の声に耳を傾け、信頼関係を構築する」。昨年 月の衆院選で政権を奪取
して以来、安倍晋三首相は沖縄の基地問題、特に普天間飛行場返還・移設問題へ
党支持層の中核には今回の事態に強く反発する
勢力がある。政権与党であり、仲井真県政の与
党でもある公明党の県本部は「県外移設要求」
日米両政府が普天間飛行場の移設先に定めて を貫く姿勢を堅持している。
いる名護市辺野古沿岸部の埋め立て申請に対す
安倍政権下で憲法改悪に向けたきなくささが
なかいま ひろかず
る仲井真弘多知事の承認の可否判断が迫る中、 増し、 月6日深夜、特定秘密保護法が成立し
組み敷くため、強権を発動する牙をむきだしにしている。
する「主権の外部化」であることをいとわず、基地押し付けに抗う沖縄の民意を
の対応を問われた時、こう繰り返してきた。それが全くの偽りであり米国に追従
12
まつもと・つよし 琉球新報記者。一貫
して基地を取材。雑誌「世界」に隔月で「沖
特集・この国は「戦争」をめざすのか
「植民地」統治に抗う
安倍政権の恫喝と犠牲強要
≪3≫
議員として当選を果たした選挙で誰一人として
野古移設容認」を強要した。国会議員、県議会
所属国会議員5人に「県外移設要求」から「辺
安倍自民党は恫喝を駆使して自民党沖縄県連と
普天間飛行場の県外移設公約を見直すかどう
義の剣が峰でもあろう。
なる中、沖縄が迎えた剣が峰は、日本の民主主
た。戦争に突き進む道程と「秘密国家化」が重
12
広島ジャーナリスト
≪4≫
か態度を明らかにしていなかった衆院沖縄1区
は怒気をはらんだ口調でこう漏らした。
ゆる可能性を排除しないことで一致した」と胸
られ、党を挙げた脅しに屈した県連所属議員を
従え、石破氏は会見で「辺野古移設を含むあら
選出の国場幸之助、2区選出の宮崎政久、3区
ほぼ1年前の衆院選で「県外移設」を公約に
掲げ当選した沖縄選出議員に対し、方針転換を
迫る政府自民党が切り札にしたのが「離党勧告」 を張った。
や「除名」などの強硬手段だった。
日午前9時前、党本部で石破茂幹
事長、浜田靖一幹事長代理と向き合った。離党
部は「固定化」を前面に出し、3氏を屈服させた。 宮崎氏は拳を固く握り締めていた。まるで、戦
高村正彦副総裁や浜田氏らが再三、離党勧告
や除名処分をちらつかせる一方で、官邸と党本
国時代の「首実検」を連想させる場面だった。
月
選出の比嘉奈津美の3議員を含む沖縄の自民5
勧告を示唆し、
根拠に乏しいまま
「固定化」か「辺
石破氏の姿は現代の「琉球処分官」をほうふつ
議員が
野古移設」かと迫る党本部の恫喝に屈し、3氏
国場氏は当初、石破氏に「公約を堅持する。い
とさせた。
国場氏は終始うなだれ、会見中目線を落とし
たままだった。比嘉氏は時折、目をぎゅっと固
は「県内移設」容認に転じた。先に「県内」に
かなる処分をも受ける」と返答したが、別室で
た。
員全員が「県外移設」の公約をあっけなく覆し
じた。こうして自民党の沖縄県連所属の国会議
排除しない」という表現での妥協を迫られ、応
基地に反対する本土の民意は重く見るが、沖縄
域だ」と述べ、普天間飛行場を運用する海兵隊
でなくてもよいが、政治的には沖縄が最適の地
民主党政権の森本敏前防衛相は退任会見で、
普天間基地の移設先について「軍事的には沖縄
く閉じ、悔しさをにじませたようにも見えた。
転換していた沖縄4区の西銘恒三郎氏、参院議
説得され「辺野古移設を含むあらゆる選択肢を
この日は、公約をかなぐり捨てることを強要
した首相官邸と党本部が定めた回答期限に指定
の民意は無視していいということだ。本土のた
ら、固定化だ。県外移設はあり得ない」と圧力
その前段で、菅義偉官房長官は「辺野古以外な
宮崎政久の3衆院議員にこう水を向けた。既に
しているように見えた。
を横目に、石破氏は頬を緩ませ〝成果〟を誇示
自民党基軸に移ったが、それを安倍政権はあか
めに沖縄は犠牲になれというに等しい。政権は
という論法ではない。1996年の日米合意以
摘している。
核心を突いた論稿なので引用する。
を掛けていた。
「辺野古に移設しないと普天間は固定化する
のか」
。比嘉氏の問いに石破氏は「辺野古移設
年間、1㌢も普天間飛行場を動かせなかっ
来
た大半の責を負うべきである自民党政権が、辺
〈この際、「有権者」とはまぎれもなくこれら
の議員に背かれた沖縄県民・住民のことである。
日付琉球新報の、石破幹事長
と居並ばされた沖縄選出の国会議員たちの無残
それにしても、
で悲しい姿を見よ。沖縄県民はこの写真を目に
意を迫ったのだ。奇妙な構図で沖縄に放たれた
定化意思」を前面に押し出す印象操作に絡め取
に屈した。
「政府を軽く見ているようだな」。国
の力では及ばない」と「固定化」の〝脅し文句〟 野古以外なら「固定化させる」と開き直り、翻
言したという。比嘉氏は「大国との話。一議員
17
月 「固定化」の矢の理論的根拠はないのである。「固
11
26
は日米合意だ。できなければ固定化する」と断
らさまに可視化した。
注意深く検証すると、石破氏らの言動は「辺
野古移設」以外なら「固定化になってしまう」 琉球大名誉教授で歴史家の比屋根照夫氏が琉
球新報への寄稿「二重写しの処分劇」でこう指
の 常 駐 場 所 は 沖 縄 で な く て も よ い と 暴 露 し た。
会見に同席させられた。発言席の横に並ぶ5人
されていた。
「熟慮の結果を聞かせてほしい」。 会 談 後、 総 裁 応 接 室 か ら 出 て き た 5 人 は そ
石破氏と浜田氏が、向かい側に座る国場、比嘉、 ろって厳しい表情を浮かべ、石破幹事長の記者
「琉球処分官」 石 破 幹 事 長
員の島尻安伊子氏に追随した。
25
日までに回答しなかったことに、菅官房長官
2013.12.20
11
場、比嘉両氏らが当初党本部が期限とした
20
≪5≫
きつけたことであろう。
と屈服の姿勢を示すわが議員諸公の姿を目に焼
破幹事長の姿を見たであろうし、うつろな表情
しただけで、日本国家の権力の権化としての石
ことはせず、力ずくで屈服させる挙に出た。そ
ル沖縄」の民意を知りつつ、それを受け止める
らは現代の「琉球処分官」と言っていい。「オー
安倍首相、菅官房長官、石破幹事長らのなり
ふり構わぬ沖縄への圧力は暴政そのものだ。彼
付琉球新報文化面)〉
段に高めた今の民意が簡単に転がることはない
つになり、「自己決定権」を獲得する意識を格
沖縄県民は戦後、多くの分断工作を経験した。
自民党県連が総崩れしても「辺野古ノー」で一
帯びた怒りが沖縄県内で増幅している。
植え付ける狙いもあろう。かさぶたをはがされ
だろう。
にも軽く使いすぎていないか」と真っ向から批
年間動いていない。固定化という言葉をあまり
連が普天間飛行場の県外移設公約を撤回し、名
し た。 そ の 直 後 の 会 見 で 翁 長 政 俊 会 長 は、 県
30
おなが
広島ジャーナリスト
た上、鋭利な物で傷をえぐられるような痛みを
さながら琉球処分劇をリアルタイムにまざま
ざと我々に見せ付け、明治政府の琉球処分官松
れは、植民地扱いに等しいと言うしかない。
普天間の「固定化」を強調し、県に埋め立て
承認を迫る政府の手法がここに来て露骨になっ
判している。普天間の「固定化」懸念ばかりが
ているが、沖縄県幹部は「既に返還合意から
全国会議員の公約撤回によって外堀を埋めら
れた自民党県連は、その2日後、あっけなく軍
強調されている現状は、県側には「地元への責
「分断統治」の手法
田道之と琉球王国側の姿を二重写しに突きつけ
た。それは「首里城明け渡し」ではなく、これ
から展開される現代版「沖縄明け渡し」の強権
劇の序章であり、未来の構図である。だがしか
門に下った。県議の議員総会で辺野古移設容認
任転嫁」
(幹部)とすら映っている。仲井真知
し、琉球王府側はこれほどたやすく明治国家に
は屈しなかった。弁舌を尽くしての抗弁、条理
最大懸案となって久しい沖縄で、移設先を県外
球王国の誇りであり、
主体性の主張でもあった。 を決定した。普天間飛行場の返還・移設問題が
にもとづいた士族的抵抗、それが少なくとも琉
とするのか、県内とするのかは有権者が最も関
このような歴史的背景を想起すべきであっ
た。沖縄議員たちは 年間にわたる住民の苦悩
心を払う政策である。自民党県議は「県内移設」 事の最大与党の自民党は転んでも、知事が辺野
自民県連会長辞任の深層
古埋め立てを承認するかは見通せない。
を背負って、なぜ、日本政府の強硬姿勢にぎり
政府とのやりとりを県民に訴えなかったのか。 である。公約を媒介に沖縄の有権者と候補者が
決定的瞬間にどのように重い決断を下すかは、 契約を交わす代表制民主主義を根底から破壊し
自民党県連は 月1日に開いた総務会で、所
属国会議員に続き、「辺野古移設を含むあらゆ
統治」そのものとみなすこともできる。支配に
り、試金石そのものである。
安倍政権による辺野古移設強要は、沖縄にい
言い換えれば、今回の事態で何よりも要求さ つまでも犠牲を強いる現代版「銃剣とブルドー
れていたものは、沖縄の政治家としての誇り・ ザー」である。植民地統治の要諦である「分断
護市辺野古移設を容認する方針に転じた責任を
てしまった。
矜持であり、政治家としての尊厳であった。そ
抗う側にくさびを打ち、対立をあおっていがみ
取り、辞任する意向を表明した。
まさに沖縄の政治家に課された厳粛な使命であ
れを放棄したところに、沖縄県民は今、大きな
合わせ、権力者の側は涼しい顔で統治しようと
11
る選択肢を排除しない」との方針を正式に決定
精神的な空白感・虚脱感を抱き、湧き上がる憤
翁長氏は総務会では進退について言及しな
月
する。沖縄社会に抵抗は無駄だという無力感を
激の感情を抑えがたい状況にある。
(
日
12
のか。なぜ、
粘り強く沖縄の異議申し立てをし、 ない。国会議員に続くまぎれもない公約の撤回
を掲げて、2012年の県議選に臨んだ者はい
17
ぎりの抵抗をすることなく、たやすく降伏した
68
≪6≫
かったが、満を持して会見の場で表明した。自
ぶべくして転んだ』という心ない意見がある」 翁長那覇市長と市議団の矜持
越したことはない」「本土の中には、『沖縄は転
している」と述べ、悔しさをにじませた。
長と自民党所属の那覇市議団だった。
「県内移設」
容認劇を苦々
今回の自民党県連の
たけし
しい思いで見つめていたのが、翁長雄志那覇市
民党県連内は蜂の巣をつついたような騒ぎとな
辞任は不可避となっている。
誰がどうみても、翁長氏辞任は、沖縄の「自
己決定権」を無視した〝強権政治〟に対する抗
り、動揺が走った。翁長氏は慰留を振り切り、 「国民の大多数が平和と安全をぬくぬくと享受
「オール沖縄」の民意をバックに県議会野党
とも連携して「県外移設要求」を主導した翁長
名実ともに沖縄への基地押し付けに抗う全県
的なリーダーとなった翁長市長は、県内移設に
氏は、
県議の一人としても最終局面まで「県外」 議の意思表示であり、県民の根強い反発を照ら
沖縄の政治家は中央から圧力があっても沖縄の
政権下で鳩山由紀夫首相が「県外移設」から「県
の屋台骨に「県外移設要求」があった。民主党
ぐり、最大の保守勢力が中央政府と対峙し、そ
今、基地の島OKINAWAは近現代史の大
きな分岐点に立っている。沖縄の重大懸案をめ
覚すべきだが、追随する役員、議員はいない。
とが政党、政治家としての責任の取り方だと自
外移設の公約は堅持している」と主張している
る狙いもあっただろう。しかし、県外を堅持し
会議員と県議がそろい踏みし、結束を印象付け
連方針を正式決定した。公約撤回後、初めて国
れ伏すかだ。安全保障やいろいろなものに影響
く、翁長会長の辞任表明は、県連が一枚岩でな
公約撤回を強要した党本部の手法については
いことを逆に露呈する形となった。それは、「県 「そこまでやるかという感じはある。県民がひ
て沖縄1区支部役員を辞任した那覇市議団に続
がなければいいと思う」と危惧した。
メントした。
という部分は持っておかないといけない」とコ
をどこに置くか。やはり県選出は沖縄県が第一
しっかり保ってほしかった。政治家として軸足
し出した。
にこだわった。当然のけじめであろう。
政 治 を 担 っ て い か な い と い け な い。 こ の 辺 は
内移設」に転換したことを機に、主義主張や党
国場氏の発言にもうかがえる。会見で国場氏は
転んだ国会議員の対応について「恥ずかしい。
を含むあらゆる選択肢を排除しない」とする県
「県外」
の公約を下ろした国会議員、
県議らは、 この日、県連は、公約を覆した衆参両院議員
その職を辞して有権者に信を問う決断を下すこ や県議らが出席して総務会を開き「辺野古移設
派を超えて県民に「オール沖縄」の意識が強ま
自民党県連の屈服劇を見て、
い取材を思い出した。
年前の忘れ難
分からない」と述べた。
オスプレイの 「辺野古移設が、唯一絶対のプランであるのか
配備と追加配備の強行など、沖縄への基地負担
1999年秋から冬にかけて、米軍普天間飛
行場の県内移設を導く意図を込めた決議が三つ
り、海兵隊の垂直離着陸機MV
の押し付けを続ける政府に抗う県民世論がかつ
県連がまとめた「辺野古移設を含むあらゆる
選択肢を排除しない」を字義通りに解釈すれば
てなく高まった。歴史的な民意の地殻変動は不
可逆的である。
本土の無関心に安住した安倍政権と自民党本
部が、根拠に乏しい「普天間固定化」を用いて
考停止し、党中央と足並みをそろえて仲井真知
も含まれる。自民党県連が「辺野古移設」で思
場で追った。
当記者だった私は、ほぼ徹夜の激しい攻防を議
「あらゆる選択肢」の中には「県外・国外移設」 の議会で相次いで可決された。政経部の基地担
14
なるだろう。
ば、県民から大きなしっぺ返しを食らうことに
市、県議会、移設先として有力視されていた名
当時の稲嶺恵一知事の県内移設推進の公約を
支えるため、普天間飛行場を抱える地元宜野湾
沖縄に犠牲を強要し県連に屈服を迫る過程は、 事に辺野古埋め立て承認を求める圧力をかけれ
「現代の琉球処分」にほかならない。
翁長氏は辞任表明の会見の中で「県外移設に
2013.12.20
22
≪7≫
内移設促進」決議が周到に筋立てされた。
護市議会の順で、
まるでドミノ倒しのような「県
安堵の表情はすぐ曇り、疲れの色をにじませて
政治家の信念だと胸を張ったが、可決の瞬間の
僚支配の病弊を照らし出した。
いたことが記憶に残る。
二つの暴言は、沖縄に海兵隊を置くのは、軍
事的理由でなく、ほかに受け入れる地域がない
後 に 防 衛 省 の 天 皇 と ま で 称 さ れ、 権 勢 を 振
るった守屋武昌氏(元防衛事務次官)らが決議
という「政治的理由」と認めた森本前防衛相の
翁長氏は2000年に那覇市長に初当選し、
ひず
昨年 月に4選された。海兵隊のMV オスプ 発言とも通じる。日米安保体制の歪みを沖縄に
名護市長が辺野古移設を容認するまでの工程表
レイ配備と普天間飛行場の名護市辺野古移設を
権による今回の自民党県連に対する仕打ちによ
集中させ、被害の是正には背を向ける。安倍政
り、沖縄への「構造的差別」は一層あからさま
だが、それに対する沖縄社会の抵抗力は明ら
かに増している。その証左が翁長市長と行動を
になった。
世論調査では7~9割の県民がオスプレイ配
備、普天間飛行場の県内移設に抗い、全市町村
1999年と今回の辺野古移設強要劇を比べ 意見書で「激しく抗議」
ると、隔世の感がある。全体的な沖縄の民意は、
する議場のもようを政府与党の有力者に〝実況
那覇市議会(安慶田光男議長)は自民党県連
が「辺野古移設」の容認を正式決定した翌日の
中継〟して時折、指示まであおぐ議員も目にし
して激しく抗議し、普天間基地の県内移設断念
共にする那覇市議会の自民党所属議員の反発
と早期閉鎖・撤去を求める意見書」を全会一致
長、全県議がことし1月、安倍首相らに直訴す
目前に横たわる不条理に敢然と異議を唱えるよ
で可決した。那覇市議会による同様の意見書可
る歴史的な総行動にうって出た。この国と民主
が転倒し、沖縄は濁流に翻弄され、日本政府に
うになった。尊厳をかけて地域のあるべき未来
決は実に6回目となる。
た。
首根っこを押さえつけられてもがき苦しんでい
6%、地球儀では針の先ほどのOKINAWA
押し付けられた国策の下、選挙で選ばれた沖 を切り開こうとする強さを宿している。
縄県民の代表らが賛否に分かれていがみ合う。
沖 縄 の 近 現 代 史 は、 自 ら の 将 来 を 決 め る こ
とが許されない陰影を刻んできた。国土の0・
た。
にアジア太平洋地域の米兵の4分の1以上が集
意見書は県内移設断念の要求について「日米
両政府はこの県民の総意を無視して、『辺野古
だ。
まに操ろうとする「分断統治」の典型的状況が
中する。
移設』を『唯一の解決策』として力ずくで押し
主義の在り方を鋭く問う民衆蜂起に映る行動
立ち現れ、沖縄の自立・自律に向けた自尊心と
「沖縄はゆすりの名人で怠惰」「犯す前に『犯
しますよ』と言いますか」。普天間飛行場問題
付 け よ う と し て い る 」 と 指 摘。
「 県 民 は、 米 軍
だった。
自己決定権が切り刻まれているように思えた。
をめぐり、2011年に日米の官僚が相次いで
占 領 時 代 か ら 保 革 を 超 え た 島 ぐ る み の 闘 い で、
は「辺野古沖移設を強引に推し進める政府に対
12
り構わず、年内決着の圧力をかけていた。主客
稲嶺知事が辺野古移設を決断する環境を整え
るための県議会決議の提案者代表は、自民党県
発した沖縄蔑視発言は、基地に組み敷かれる宿
月2日、間髪入れずに意思表示した。市議会
連幹事長を務めていた翁長雄志氏だった。
命を帯びた地とみなす、沖縄差別をまとった官
怒号が渦巻く目の前の議場で、植民地を意のま
普天間代替基地建設の代償として振興予算を
獲得し、経済を浮揚させる。それが沖縄の保守
稲嶺知事と岸本市長に辺野古移設の受諾を
迫って、当時の小渕政権と自民党本部はなりふ
普及し始めていた携帯電話を通話状態にし、 る超党派の結束の中心に立つ。
県内移設に反対する野党側の激しい追及で緊迫
拒む沖縄世論の急先鋒として政府に立ちはだか
の文案をこしらえ、稲嶺知事や地元の岸本建男
22
を添えて、地元議員らにもたらしていた。
11
広島ジャーナリスト
≪8≫
た。
今、
求められているのは沖縄のアイデンティ
土地取り上げに反対し、祖国復帰を実現してき
出し、県内容認に転換したことを受け、西銘氏
恒三郎氏がことし4月に県外移設の公約を放り
稲嶺市長は戦後 年間も沖縄に米軍基地が集
中し、米軍による事件・事故が頻発していると
いる。
へ頑張り抜くことだ」と強調している。
ティーを貫き、県民の心一つに県民総意の実現
して「子や孫たちに負の遺産を残す判断をすべ
沖縄の全 市町村長、全議会の反対を無視し、
国会議員と県連を屈服させた安倍政権・自民党 きでない」と述べた。
の後援会長をきっぱりやめた気骨ある人物だ。
68
書には憤りの強さが反映している。
批判している。
「激しく抗議」と銘打った意見
照準を安倍政権と自民党本部に据えて、厳しく
政府のやり方に、激しい怒りを禁じえない」と
その上で「政治家に公約変更を迫り、子や孫
の代まで米軍基地を強要しようとしている日本
来年1月 日の名護市長選では、辺野古移設に
べきだ」と述べた。沖縄自民党の良心とも言え
民主主義国家のやることかと世界にアピールす
会に訴え、沖縄が抑圧されていること、これが
なに差別されて黙る必要はない。国連人権委員
を痛烈に批判し「沖縄に民主主義はない。こん
されるオスプレイの配備や埋め立てによる環境
件を満たしていない事項として、安全性が懸念
て不承認を要求している。公有水面埋立法の要
意見案はA4判 ㌻で、辺野古移設について
生活環境や自然環境の保全が不可能であるとし
これからの大きな展開の礎になる」と話した。
名護市長の歴史的意見
合理的指摘が網羅された上、名護市民の尊厳
を懸けて辺野古埋め立てを許さないという気概
日本政府の主張は整合性を欠くとも指摘した。
画を挙げ「辺野古移設が唯一の解決策」とする
米海兵隊のグアムやオーストラリアへの移転計
さらに辺野古埋め立てにかかる国の環境影響
評価(アセスメント)のずさんさを批判。在沖
を挙げた。
る仲里氏は、県連の公約撤回を受けて離党した。 への影響、ジュゴンやウミガメなどの保全など
強く反対する現職の稲嶺進氏を支持し、名護市
那覇市議会の意見書は、沖縄人の尊厳を踏み
にじる国策を強いることへの強い異議申し立て
ウチナ ーンチュ
であり、不退転の決意表明と言えよう。
年、 政府が提出した辺野古沿岸部の埋め立て申請を
で多くのきょうだいを亡くした仲里さんは、教
ことに対し、沖縄社会が強く反発した。沖縄戦
を消すかのように、教科書の記述変更を求めた
文科省が教科書検定で、日本軍が強制した史実
公有水面の埋め立て手続きで地元首長が反対
意見を出すのは極めて異例。 月下旬以降と見
うお願いしたい」と強く訴えた。
めるわけにはいかない。知事には承認しないよ
提出した。稲嶺市長は「市として(移設を)認
できるので、ぜひ多くの方に読んでほしい。
米国の財政難と海兵隊リストラ
自民党中央と安倍政権が殺し文句のように使
い続けている「普天間の固定化」をめぐり、那
覇市の翁長市長が核心を突く発言を重ねてい
込まれる仲井真知事の可否判断を視野に入れ、 る。
翁長氏は「日米同盟の重要性を考えると、固
めた。
12
科学的、民主的な分析を網羅した見解となって
科書検定に抗議する県民大会の実行委員長を務
23
民の誇りをかけて移設に断固反対する」として、 に満ちている。名護市のホームページでも閲覧
11
沖縄戦の「強制集団死」
(集団自決)をめぐり、 仲井真知事が承認しないよう求める市長意見を
利信さんだ。
仲里さんが県議会議長だった
党本部に対し、激しい怒りを表明した自民党
員の重鎮がもう一人いる。元県議会議長の仲里
こうした中、稲嶺市長は 月 日、米軍普天
間飛行場の名護市辺野古移設について「名護市
27
が一致した意見書を出したことはありがたい。 でマイクを持つ覚悟まで表明している。
で県民の分断が図られているところに、市議会
意見書可決後、翁長市長は記者団に「オール
沖縄で私も議会も取り組んできた。中央の圧力
41
19
地元の沖縄4区から衆院選を勝ち抜いた西銘
2013.12.20
07
≪9≫
定化などあり得ない」
「辺野古が駄目になれば、 いたい人、行きたい場所を希望し、沖縄メディ
廻り舞台 検証 フテンマ」をスタートさせた。
島袋良太ワシントン特派員が中心になって取材
幹部と意見を交わす機会があった。
還・移設問題をめぐり国務省、国防総省の担当
出しが躍った。
の中で「プランB 重鎮、代替案を提起」の見
「米国内で、名護市辺野古沿岸のような豊か
な自然が息づく海を埋め立てることは可能か」 千載一遇の好機
リチャード・アーミテージ氏は、民主党政権が
持つべきだ」と提言していた。同氏は在沖海兵
して肯定的な結果は出ない。米国はプランBを
非公式フォーラムで「長く待っても辺野古に関
11
23
広島ジャーナリスト
アの一行3人で7都市を巡った。
沖縄から海兵隊は出ていくのではないか」と述
ぐる米国内の認識の変化にフォーカスした。そ
万人に縮小する案の検討を命
と問うと、即座に「米国の環境法規に照らせば、
自然を壊して軍事基地を造ることはできない」 ブッシュ政権時代、辺野古海域にV字滑走路
を敷く日米合意に深く関わった元国務副長官の
米本国では無理、という二重基準をあっさり認
という答えが返ってきた。辺野古ではできるが
本国に二つ、沖縄に一つ置いている三つの海
兵遠征軍体制を維持するのはもはや困難になり
県外移設を模索していた
年1月、ワシントン
めた。
いだろう。そもそも、米軍再編合意によって、 け る と、 予 想 外 の 答 え が 返 っ て き た。「 軍( 海
征軍の組織体制は抜本的な見直しが避けられな
兵隊)は、政府の方針に従う組織だ。普天間飛
で開かれていた日米の安全保障の有識者が集う
主力となる8千人の歩兵部隊のグアム移転は既
たことも明らかになっている。
隊の全面撤退を検討する必要性を示し、関係者
すかすかの戦闘部隊を抱え続ける矛盾は遠から
備されている。『プランB(代替案)』の移設先
にその検証を指示するなど、具体的に動いてい
ず表面化するだろう。翁長市長の予見には十分
知日派の重鎮で日米合意をごり押しするジャ
パンハンドラーの頭目と思われるアーミテージ
氏による「辺野古見直し発言」が発掘され、私
という発言が何度も飛び交い、もう一人の重鎮
その幹部は言葉を選びながら、耳慣れない「プ
ランB」という用語を使った。日本政府側が辺
であるジョセフ・ナイ氏(元国防次官補)が「私
は驚きを覚えた。
仲井真知事が、政府による辺野古海域の埋め
立て申請を承認するか否かに注目が集まり、自
も同じ見解だ」と述べていた。いずれも公になっ
野古案の見直しを提起すれば、すぐに検討でき
は、日本国内にも米国領土にもある」
米国こそが恐れる「固定化」
招き、米国の民主主義の懐の深さを実感しても
民党県連と所属議員の公約撤回に向けた動きが
「フ
翌年3月の同じセミナーでは、出席者から
テンマ・イズ・デッド(辺野古移設は死んだ)」
らう「インターナショナルビジターズプログラ
加速していた 月 日、琉球新報は連載「日米
年、 米 政 府 の 招 き で 米 国 に 1 カ 月 滞 在 し
た。世界各国から政治家やメディア関係者らを
ム」への参加だった。沖縄の基地問題を軸に会
る代替案が用意されていると明かしたのだ。
な現実味がある。
も、軍が即応できるさまざまな選択肢が既に準
さらに「辺野古への代替基地建設が頓挫すれ
ば、米国には別のプランがあるか」とたたみ掛
10
に決定済みだ。
普天間の航空部隊が居座りつつ、 行 場 の 代 わ り の 新 基 地 建 設 が 不 可 能 に な っ て
基本に編成、運用されている沖縄の第3海兵遠
つつあり、本国からの6カ月ローテーションを
削減の第二幕が続いている。
した第一部「米国の深層」は、普天間問題をめ
べ て い る。
「 政 治 家 と し て の 直 感 」 と す る が、 首都ワシントンでは、日本、米国、沖縄の三
者間の最重要懸案となっている普天間飛行場返
その見立ては決して的外れではない。
財政が極度に悪化した米政府は国防費の大幅
削減を迫られ、海兵隊の大リストラの号令を発
万人から
している。ヘーゲル国防長官は海兵隊の総兵力
を
15
じ、海兵隊が組織防衛に血まなこになる軍事費
19
02
≪ 10 ≫
ていなかった新事実である。
国外移設の選択肢が現実味を帯びる中、名護市
し」が具体化することはほぼ間違いない。
長選が迫っている。移設反対を堅持する現職稲
嶺氏が再選を果たせば、米国内で「辺野古見直
月中旬に琉球新報のイン
オバマ政権で普天間をめぐる対日交渉の実務
責任者的役割を担っていた前国務次官補のカー
ト・キャンベル氏も
安倍政権はこうした米国内の不可逆的な動き
に対し、見て見ぬふりを決め込んでいる。沖縄
年の大統領選にも立候補したマケ
を必要とする見方が増幅している。米上院の共
建設する愚を犯すことはなくなる。「辺野古あ
いる海兵隊の新たな航空基地を恒久施設として
京大手メディアの沖縄報道に巣食っていまい
和党重鎮で
普天間飛行場の辺野古移設を、沖縄の民意を
無視して強引に推し進める中央政府の手法は
させ、沖縄の自己決定権を取り戻す焦眉の課題
だが、沖縄人はもはやかつてのような受動的
姿勢は取らず、構造的差別を自らの行動で改め
日本国民は無自覚なままになっていまいか。
差別の本質に切り込むことがないため、多くの
か。それは、沖縄人には耐え難い差別性をはら
が起きれば沖縄の全基地撤去運動に進展すると
警告している。
市街地にある普天間飛行場の「固定化」は、
実は米国側が最も避けたい選択肢だ。日本政府
地ノーの民意が示されれば、辺野古移設見直し
得ない。しかし、差別する側は、それを異議申
差別される側は、常に異議申し立てをせざるを
点が到来している。
本の民主主義が機能するかどうかの重大な分岐
てきた沖縄社会の真価が問われるとともに、日
差別が構造化されている場合、差別する側に 強権政治をはね返すことができるか。沖縄の
いる人々は、差別者であることを自覚しない。 政治に携わる者の歴史観と、民主主義を実践し
に本気で取り組むようになった。
に踏み出さざるを得ないという認識が強まって
し立てとは受け止めず、地域エゴに基づく「わ
米国の知日派の大勢は1月の名護市長選で新基
いる。
がまま」ととらえ、その印象操作に走る。
はまったくといっていいほど報道されない。琉
球新報はワシントンに自前の特派員を置かざる
を得ない。
らカネを取る。辺野古への移設も、最終的には
本土で流されている「沖縄では、革新が基地
に対して反対を唱え、保守がそれで中央政府か
残念なことに、在京大手メディアのワシント
ン発の報道からは、こうした米国内の地殻変動
「固定化」を利用することを容認してはいても、 「沖縄差別」の牙をむきだしにした感がある。
と気脈を通じて沖縄に圧力を掛ける要素として
「構造的差別」の深化
りき」の思考停止に陥り、県外・国外移設の絶
申し込みはファクス 082-231-3005 かメー
ル [email protected] ▽紀伊国屋書
店広島店、フタバ図書などでも好評発売中
イン氏も、日本に赴く前のキャロライン・ケネ
ストーン&カズニック、広島で語る
何が起きてもおかしくない 若松丈太郎
豪州ウラン採掘 深刻な影響 P・ワッツ
被爆者とABCC㊥ 相良カヨ
国の「だまし討ち」と闘う 本田博利 んでいるが、報道の大半が中央政府による沖縄
特集「平和宣言に何を読み取るか」
戦後 70 年 広島の役割は 加戸靖史
首相にぶつけられた長崎の思い 樋口岳大
核兵器禁止条約をめざせ 川崎哲
平和祈念式・8月報道 座談会で振り返る
「国際平和拠点ひろしま構想」を問う
好機を逸することは、あまりにも罪深い。
広島ジャーナリスト第 14 号
ディ駐日大使に、
「固定化」した後に重大事故
米国内の知日派の間には、辺野古に固執する の意思を受けて対米交渉に当たれば、豊かな海
日本政府に先回りするかのごとく「プランB」 を埋め立てて、必要性がどんどん乏しくなって
る」と述べ「固定化」の危うさを指摘していた。 の民意に目を向け、名護市長選で示される地元
起きれば、周辺住民の支持は壊滅的打撃を受け
タビューに応じ「普天間や周辺で事件・事故が
11
豪州への移駐を含む県外・ カネで解決する」などという言説は、今なお在
米国本土への撤収、
2013.12.20
08
前泊 博盛
まえどまり・ひろもり 沖縄
まれ。駒沢大卒、明治大大学院
修了(経済学修士)。84 年琉球
新報社入社、社会部、東京報道
部、政経部などの記者、編集委
員などを経て論説委員長。この
間 2004 年に地位協定取材班と
して日本ジャーナリスト会議大
賞、石橋湛山記念・早稲田ジャー
ナ リ ズ ム 大 賞 な ど を 受 賞。11
年から現職。著書に「沖縄と米
軍基地」「検証地位協定 日米
不平等の源流」(共著)「日米地
位協定入門」(編著)など。
いうスタンプを集めるのが新聞記者時代の私の
マ ル 秘 と か 取 扱 注 意、 指 定 外 秘 密、 極 秘 と
期限秘は期限がきても解除されないということ
に無期限秘というスタンプが押されている。無
地位協定を適用してはいけないということが書
アメリカ本国の米兵で在日米軍ではないので、
る。
協定を担当している日米地位協定室とか日米安
らの関係者でいえば山口県出身の二見寛という
推 理 小 説 を 読 む よ り 面 白 い。 例 え ば、 こ ち
自国民を守らない政府
全保障条約課長しか持っていない。これは表紙
たのは外務省だった。なんでかというと、地位
る運用ができる。これがよく売れた。一番売れ
だ。これがあれば、みなさんでも外務省を超え
位協定を運用する時に使うマニュアル、虎の巻
方 増補版」
(写真・琉球新報社編、
2004年、 位置だが、極秘というのが一番重い。極秘の次
高文研)という本を出した。これは外務省が地 がマル秘。何で無期限秘にしたか、読めばわか
で、私のコレクションの中では比較的下の方の
ることに なったが、「考え方」の 中には、彼は
う。これを適用して彼はアメリカに送り返され
では日本は脱走米兵の身柄を引き渡す義務を負
時に日本の外務省は説得に行く。日米地位協定
た。カナダは日本に送り返した。送り返された
と、訓練を受ける時に脱走してカナダに亡命し
は「なぜおれはベトナムに行くことになるんだ」
ベトナム戦争に送り込まれることになった。彼
青年がアメリカに出稼ぎに行って、徴兵されて
国際大教授。1960 年沖縄県生
趣味で、その成果として「日米地位協定の考え
の見直しを訴えた。市民110人が傾聴した講演要旨を紹介する。
(文責・編集部)
のかと指摘した。沖縄の基地は軍事的理由ではなく政治的理由で置かれているとして安保政策
沖縄国際大でのヘリ墜落事故で米軍が現場を封鎖した事実を挙げて、日本は主権国家と言える
密保護法を批判。
オスプレイ配備で
「米軍方針にどうこう言える立場にない」とした首相発言や、
民の権利を売り渡すときに秘密指定している。民主主義を守るため情報開示が必要」と特定秘
と題して講演した。前泊さんは記者時代にスクープした外務省の無期限秘文書を基に「国は国
資料館で開かれ、元琉球新報論説委員長の前泊博盛・沖縄国際大教授が「安倍政権と日米安保」
日本ジャーナリスト会議広島支部恒例の「不戦のつどい」が9月1日、広島市の平和記念
安倍政権と日米安保
日本は主権国家か
≪ 11 ≫
広島ジャーナリスト
≪ 12 ≫
いてある。それなのに適用して引き渡してしま
う。
後は慎もう、この時は国会の問題にならなくて
運がよかったと書いてある。
論になった。いったい何人の日本人が強制的に
がわかった。なぜ結ばなかったのか、国会で議
が、アメリカとはそれを結んでいなかったこと
ぶことによって拒否することができる。ところ
度 を 持 っ て い る が、 日 本 は 徴 兵 免 除 協 定 を 結
ドネシアとかタイとかいろんな国がそういう制
とアメリカは徴兵する権利を持っている。イン
最初の問題がある。半年ぐらい働きに来ている
撃たれると思って逃げ回った。米兵はキツネ狩
活の糧を得る場所として使っていた。旗のおり
刈りをしたり、薬きょう拾いをしたりして、生
りる。山城君という青年が、旗がおりた後、草
農地もない。米軍の演習が終わると赤い旗がお
江島は島の半分以上を米軍に訓練場にとられて
沖 縄 の 伊 江 島 事 件 と い う の も 出 て く る。 伊
力を見た人がいるか。ツチノコやネッシーを見
/島しょ防衛に重点」という記事がある。抑止
乗った米兵たちが銃を構えて追いかけてきた。 衛隊の抑止力、見せてPR/富士山麓演習ルポ
る の を 見 て、 彼 は 草 刈 り に お り た ら ジ ー プ に
た人はいるか。これと同じくらい抑止力を見た
だろう。
ある。この国の主権はどこで発揮されているん
らお願いしても米軍はやってくれないと書いて
い。この文書では、米潜水艦は問題だが、いく
に 決 ま っ て い る が、 米 軍 は そ れ を や っ て い な
ときは浮上して旗を立てて無害通航を示すこと
日本側が第1次裁判権放棄
徴兵されてベトナムに送り込まれたのかを聞か
りのような感じで追い回して遊ぶ。最後は追い
ことがないのに、あると思っている。今度、予
国 際 法 で は、 潜 水 艦 が 領 海 内 に 入 っ て く る
れた外務省の答弁は「詳細を把握しておりませ
詰められて、撃たれてかばった手に信号弾が当
こ の 事 件 で は、 な ぜ 徴 兵 さ れ た の か と い う
ん」
。国民の命がかかわるのに詳細を把握して
たって骨折した。
[1]
旗 が お り て 演 習 は 終 わ っ て い る か ら 当 然、 算が計上されて与那国島に自衛隊が駐屯し、尖
きょうの日経新聞(9月1日付朝刊)に「自
い な い。 送 り 込 ま れ た 数 に つ い て は わ か ら な
い。
だ。そして、裁判が長引いてたいへんなことに
と。
地位協定より上位の国際法に違反している。 そ う だ っ た の で 第 1 次 裁 判 権 を 放 棄 し た か ら
能性があると書いてある。このちぐはぐな防衛
あるが、有事には戦車などの態勢が整わない可
大分県が最南端で、船で南西諸島に運ぶ必要が
披露したという。現在、陸自で戦車があるのは
もう一つの問題は、亡命して「助けてくれ」 公 務 外 に な る。 に も か か わ ら ず 第 1 次 裁 判 権 [閣の危機に対応すると言っている。記事では、
をアメリカがとった。なぜか。外務省が、面倒 尖閣が危機を迎えた時、戦車で迎え撃つ態勢を
と戻ってきたのに日本は追い返してしまったこ
守っている。徴兵されても
「おれの国民を返せ」 なると山城君を説得してわずか百数十㌦で示談
国際法では自国民の保護規定があり、自国民を
と主張すれば取り返せる。
それをやらなかった。 に応じさせた。米兵たちは殺人未遂になるよう
軍 事 力 で 抑 止 で き る の か ど う か 疑 問 だ。 演
体制が「見せてあげる抑止力」の中身だ。
習では一方的に撃つだけだ。実戦では敵も砲撃
な事件にもかかわらず罰金で終わった。
こ の 文 書 に は、 第 1 次 裁 判 権 放 棄 と い う の
2013.12.20
なぜ、この国は自分の国民を守れないのか。戦
はまさに行政当局の司法権への介入だから、今
からない。例えば、尖閣に人が上陸して住もう
占拠しなければいけないのか、という理由が分
島 を 保 つ と 言 っ て も、 な ぜ こ こ に 上 陸 し て
してくる。
力を持たないという憲法9条に違反して自国民
[1]第1次裁判権 日米地位協定 条では、公務中の
米 兵・ 軍 属 の 犯 罪 は 米 側 が 第 1 次 裁 判 権 を 有 し、 公 務
外 の 犯 罪 は 日 本 側 が 有 す る と し て い る。 一 方 が 第 1 次
裁判権を放棄すると他方に移る。 を戦争に送り込むというのは憲法違反だという
議論もされた。この文書にはこんなこともあっ
たから次は注意しようね、と書いている。ばれ
ないように内部で話を処理するためにこういう
ものを使っている。
17
≪ 13 ≫
ういうものは知らない」と言うので、それじゃ
きた。
でいた新聞だったと、わざわざ電話で報告して
てばらまくというのはどういうことか」とえら
聞社からすれば赤字だ。それがゴーヤを包んで
を投入し、広告なしで十何㌻刷って出した。新
年代に日
あということで数日後に新聞に全文を掲載し
く怒られた。一方で、取材に対しては「あれは
を飛ばしてやる」という電話もきた。それで、
いの大使から「流出させた人を教えてくれ。首
いうのは国民に知られるとまずいからだ。知ら
も地位協定についての文書を見たいという要請
新聞をほしいと言ってきた。国会議員たちから
すぐに国会図書館の担当官が全文掲載した
た 」 と 話 し か け た。 彼 は「 な ん と い う こ と を 」
います。この間も本当にありがとうございまし
その大使に大きい声で「いつもお世話になって
定した。
「目の前にあるのにないとはどういう
協定の考え方』という文書は存在しない」と否
ペーンをした。そしたら外務省は「この『地位
ンと打った。そして地位協定を告発するキャン
権利を売り渡している、これはおかしいとドー
2004年元旦にこういう文書があって国民の
ね 」 と 揺 さ ぶ ら れ た。 か ま わ ず に 琉 球 新 報 で
れわれとの付き合いをやめるということです
書 く と 通 告 し た ら「 前 泊 さ ん、 残 念 な が ら わ
この文書を記事にする直前に外務省幹部に
新聞社に行かなくても公設市場でゴーヤを包ん
う と、「 じ ゃ あ、 包 ん で あ げ よ う 」 と な っ た。 はどうなのか、一般市民はどうなのか。みなさ
れをもらうために飛行機代を払って来た」とい
を包んでいる新聞が秘密文書だった。「私はこ
る。お土産にゴーヤを買いに行ったら、ゴーヤ
あ っ て、 沖 縄 の 豚 耳 や 豚 の 頭 や 魚 を 売 っ て い
の先に那覇の台所といわれている公設市場が
泊さん、今公設市場にいる」という。平和通り
帰るという日の午後、電話がかかってきて「前
言ったら、もらいに行きますという。もらって
もう部数がない。来られるのなら差し上げると
あったが、全国からの問い合わせに送ったので
道記者じゃない。学者はどうなるのか、研究者
道は別建てで処罰しないというが、私は今、報
私も含めて懲役
秘密保護法案)というのがある。これでやると
三政権が進めようとしている秘密保全法(特定
まだよかった。1年程度の懲役だ。今、安倍晋
犯 人 を 見 つ け る と ど う な る か。 そ の 当 時 は
年をくらう可能性がある。報
んにとっても他人事ではない。
10
広島ジャーナリスト
とする。食料をどうするか。一時、
本人の一団が上陸した。知り合いがそれを支援
人
を落としたが、飛び散る。なかなか届ける方法
売っているというのが沖縄の懐が深いところ
記 者 生 命 を か け て、 勝 負 を か け て 記 者
た。「外務省に数冊しかないのに
がなくて苦労したと話していた。それぐらい大
前泊さんが作った捏造文書だ」という。これだ
万部印刷し
して、食料を届けようと飛行機を飛ばしてコメ
変だ。それで食料を調達できるようにヤギを放
さ れ て い る。 読 め ば 読 む ほ ど 腹 が 立 つ け れ ど
たまたま送別会のパーティーがあったので出掛
そ の 後、 外 務 省 は 犯 人 捜 し を し た。 知 り 合
だ。
も、こんなふうに国は行政を動かしているとい
国 民 の 権 利、 財 産 を 譲 り 渡 す よ う な 運 用 を
う見本になる。そういうのを見ていただきたい
れてはまずい情報というのは国民の権利や人
という顔をし、
「たちの悪い冗談はやめてくれ」
け て い っ た。 犯 人 は 誰 か と い う 話 が 出 た の で、
権、生命が危うくされている、そういう情報を
が多いけれども外務省は出してくれないので掲
と思って全文を掲載した。
隠しておかなければいけないということで表に
と言った。それ以来、犯人捜しはやんだ。
ことですか」と聞いたら「いやありません」と
秘密法で学者も逮捕の危険
いう。
「これはおたくの方にないんですね」「そ
出てこない。
載 紙 が 欲 し い と い う。 千 部 以 上 余 分 に 刷 っ て
みると、基本的に政府や官僚が隠したい資料と
この文書でなぜ秘密なのかというところを
かという話も後の方で触れたい。
き残れるのか。そもそも尖閣は本当に必要なの
うだが、ヤギを捕まえてヤギ汁だけで本当に生
け書けたら私は博士号をとっている。
24
した。ヤギは今尖閣にたくさん繁殖しているよ
20
70
≪ 14 ≫
そういう国の秘密を暴露すると逮捕される。そ
昨 年、 段 ボ ー ル 箱 で
が通りそうになった。
かる。
年かかると、秘密保全法をやられれば
アウトになる。なぜ急ぐかというと、今、全部
している。その中で秘密保全法を安倍政権が出
でこの秘密、密約について大学院生たちと調査
と 崩 れ て く る。 崩 れ な い よ う に ス キ ャ ニ ン グ
れると2、3週間でぼろぼろになり、パラパラ
うとした。古い紙は劣化しているので空気に触
いてデータベース化するためスキャニングしよ
アウトになってしまう。みなさんの前に顔を見
りそうだ。通るとこれを持っているだけで私は
けれども、どうも間に合わず法律の方が先に通
罰せられない。みなさんにお知らせしたいのだ
に出ているものについては後から作った法律で
出しておけば法律は不遡及の原則があって、既
してきたので、学生たちに「申し訳ないが2年
す る の は 大 変 で、 プ ロ に 頼 ん だ ら、 ト ー タ ル
箱ぐらいの文書につ
国民の権利を侵害されているかもしれない、 提供しようと準備をしている最中に秘密保全法
年の懲役刑だ。今、私は沖縄国際大
は辛抱できるか」
と聞いてみた。
「何ですか」「秘
の整理」と
基礎データ
究のための
示をする研
いての研究」「過去の行政文書に関して情報開
ん と 書 き 方 を 変 え「 行 政 の 政 策 決 定 過 程 に つ
るということ、それをしっかり握るためにそう
民主主義を守るために、国民が主権を持ってい
告発して改めていかなければいけない。日本の
期限秘」に指定していることがわかる。それを
きに生じる問題を実は「秘密」や「機密」や「無
もはっきりしている。国民の権利を売り渡すと
かということが、この「地位協定の考え方」で
国はいったい何のために情報を隠している
「情報隠し」にひそむ意図
密をこうやって暴くと懲役2年をくらう可能性
足りないので科研費を政府に申請した。「秘密
いうことで
いう情報開示が必要だ。開示の手段を奪われる
を解除するために、データベースにしたい」と
年という話
申請し直し
ことが秘密保全法の大きな問題だ。メディアの
いうことを書いたら当然蹴られた。これはいか
調 査 で は、 極 秘 マ ー ク や 秘 密、 あ る い は 指
た。 1 割 ぐ
みなさんにとっても非常に大きな問題になって
秘密、そして無期限秘密なのか、それを誰が指
定するのか、どういう基準でやるのか、それを
今、全部整理している。そこで「例えば極秘文
書にはこういうものがある」と書く。秘密保全
秘 密 文 書 の ス タ ン プ は 役 所 に よ っ て 違 う。
法ができると、
「例えば」でアウトだ。
シンプルな極秘もあれば、明朝体の重々しい極
取材で入手した秘密指定文書の表紙
やめましょうか」という。
定外秘密のスタンプが、どんな文書に押される
らいの補助
いる。私も捕まらない方法を考えながら研究を
か、何が極秘の文書で、何が秘密で何が指定外
をもらった
続けていかなければいけないところに追い込ま
なぜ安倍さんがここまで秘密保全法にこだ
の で、 一 部
わるのか。「日本 に情報を漏らすと翌 日、翌々
データベー
秘もあるし、百円ショップで売っているような
て い る。 こ
日には新聞に全部載っている。だから日本には
くと
年か
れている。
ものもある。
そういうものを趣味で集めている。
表紙さえ入手すればその文書を情報公開法で請
求することができる。役所は文書の存在を否定
できない。そういう形で秘密文書を山ほど集め
の調子でい
ス化を始め
が 出 て き た ら、
「 先 生、 勘 弁 し て く だ さ い。 僕
といっていた。ところがその後、
せるのはきょうが最後になる可能性がある。
して最高
10
がある」
「2年ですか。何とか頑張れそうです」 2千万円ぐらいと見積もりが出た。研究費では
20
の人生がなくなってしまいます。秘密の研究を
10
てきた。それをデータベース化してみなさんに
10
2013.12.20
10
≪ 15 ≫
罪を科すというのはいかがなものか。
ら情報をもらうために情報漏洩者に対して、重
る」というふうに報道されている。アメリカか
得るために秘密については漏れないようにす
教えないとアメリカから言われたから、信頼を
は、結果として 万人あまりのイラクの人たち
が、明らかに「派兵」だ。それでイラク戦争で
で 派 遣 し た。 新 聞 は イ ラ ク「 派 遣 」 と 書 い た
いかない」、「小銃だけ持っている」ということ
形で海上自衛隊を派遣し、そして「戦闘地域に
ラク戦争を総括することが先ではないか。ああ
ないのではないか」という話をした。そして「イ
ないかという問題、本質を説明しなければいけ
んでアメリカの艦船が砲撃を受けなければなら
のはおかしいでしょう」という。私は「要はな
アメリカがくれる情報がそんなに大事なも
のなのか。例えばイラク戦争の時にアメリカが
が犠牲になった。兵隊たちも6千人以上が犠牲
た。CIAの誤報だったのに、いったい金をい
やって派兵して最終的に大量破壊兵器はなかっ
摘した。そ したら、「そういう重箱 の隅をつつ
器 は な か っ た 」「 あ れ は C I A の 誤 報 で し た 」 団的自衛権の問題は議論できないのでは」と指
くら使ったのか。イラク戦争の反省なくして集
いる。だから先制攻撃される前に先制攻撃する
と い う こ と に な っ た。 誤 報 で 他 国 を 空 爆 し て
く よ う な 話 で は な く て 」 と 言 わ れ て し ま っ た。
何 が 原 因 だ っ た の か。 結 果 は「 大 量 破 壊 兵
になったといわれる。
んだ」という話を信じて、当時小泉純一郎内閣
万人を殺しても罪を問われないことが不思議
性が高まっている。
全保障の法的基盤の再構築に関す
時は何だろうと思った。有害物質があるんだろ
思った。今では福島で見なれているが、
場 で 米 兵 の 黄 色 い 防 護 服 を 見 て、 何 だ ろ う と
言うと、「でもアメリカが日本を守
まれる方が多いんじゃないか」と
けれどもアメリカの戦争に巻き込
す る。 私 は「 集 団 的 自 衛 権 と い う
的自衛権は必要だと一生懸命主張
議 論 し た の だ け れ ど も、 彼 は 集 団
先だって日曜討論で防衛大臣と
らず、米軍が完全に制圧した。メディアの取材
がない。日本の領土、日本の私有地にもかかわ
使できなかった。ということは、日本には主権
なく外側だ。にもかかわらず日本の司法権が行
によって封鎖された。基地のフェンスの内側で
できない。沖縄国際大の構内だ。私有地が米軍
プを張られて警察も消防も入れない。現場検証
当時、劣化ウラン弾を積んだ訓練が鳥島で行
も全部規制された。
れが砲撃されて日本が黙っている
るために艦船を出しているのにそ
04
10
で し ょ う が な い が、 そ う い う こ と が も っ と 自
由にできるようにということで集
これは 年8月 日、沖縄国際大の構内に米
軍ヘリCH Dが落ちた時の写真。その時に現
る懇談会)の座長は集団的自衛権
うというぐらいの感覚だった。現場は、米軍が
年の
については自由に行使できるよう
13
な答申を出したいということを表
04
完全に封鎖していて日本は関与できない。テー
審議している政府の有識者会議(安
団的自衛権が今、議論されている。
残念ながらアメリカの戦争に巻き込まれる可能
だったが、
「アメリカが行くなら応援する」と
くれた情報、
「イラクが大量破壊兵器を持って
10
明している。
53
いう話で、インド洋で給油を引き受けるという
沖縄国際大学に墜落したヘリの事故処理作業を行う米
兵。放射性物質を探す中央の2人は防護服姿だが、両脇
の2人はマスクだけで顔や腕を露出している
広島ジャーナリスト
≪ 16 ≫
われていた。劣化ウラン弾はイラク戦争で使わ
れて、戦車の硬い装甲板を撃ち抜く。霧状に放
射性物質が飛び散り、被曝する。イラク戦争の
後、多くの米兵ががんになったり、被曝症状を
発症したりしている。ヘリは劣化ウラン弾を積
んでいたのではないかと疑われた。
が含まれていて、そのカプセル五つのう
人はそのことを知っているから完
全 防 護 服 だ が、 あ と の 2 人 は 知 ら
頼んでもダメだった。
フェンスの内側でも沖縄だ。沖縄は日本だ。
日に「主権回
に琉球新報は号外を出した。「政府式典に抗議
沖縄では「屈辱の日」と言われている。その日
復の日」という政府式典を開いた。この日は、
れている。安倍首相が今年4月
同じようなことがフェンスの外側でも行わ
「屈辱の日」なぜ「主権回復の日」
本当にこれで主権国家なのか。
されておらず半袖でマスクだけだ。 日本の領土内でも日本の主権が行使できない。
米軍の中でも情報の格差がある。
大学の構内で、周りには人がいっ
ぱ い い る。 し か し、 こ う い う こ と
を 知 ら さ れ て い な か っ た。 日 本 政
府はいまだにそういうことをしっ
かりと伝えない。
救難
ことし8月5日、宜野座村のキャ
ン プ・ ハ ン セ ン で 米 軍 H H
ヘ リ が 落 ち た。 ス ト ロ ン チ ウ ム
やセシウムを含んだ部品を積んで
い た。 フ ェ ン ス の 内 側 に ダ ム が あ
1952年4月
日という講和条約発効の
『屈辱の日』大会 市民結集」「沖縄切り捨て
再び」と見出しがついている。
放され主権を回復した日とされているが、奄美
として記憶されてきた。日本が占領政策から解
」以降、沖縄では「銃剣とブルドー
を、安倍首相は「4・
」をもって「日本は戦
込まれていった。そういうきっかけになった日
地方自治もすべて否定され、暗黒の時代に追い
された。日本国憲法の庇護もなくなり、人権も
壊され、住民は追い出され、住む場所も畑も潰
ザー」という悲劇を生む。家はブルドーザーで
「4・
軍統治下に置かれた。
と小笠原と沖縄はその日をもって切り離され米
放 射 性 物 質 が 飛 び 散 る。 そ れ が 飲
が、 地 位 協 定 の 管 理 権 に[よ っ て フ ェ ン ス の 内
側、提供施設内には入れなかった。日本政府に
[2]
は大騒ぎして調査させろと言った
み 水 に ど う 影 響 す る か、 村 の 職 員
水をとっている。ヘリが落ちた時、 日は沖縄では「切り捨てられた日」
「屈辱の日」
る。 そ の ダ ム か ら 宜 野 座 村 は 飲 み
28
の日として式典を開きたい」とした。「4・
」
後の主権を完全に回復した。この日を主権回復
28
ヘリの部品の中に放射性物質のストロンチ
ウム
ちの一つがなくなって探していたことが後から
28
90
60
[2]管理権 日米地位協定第3条 基
[ 地内の合衆国の
管理権 に
] は「 1 合 衆 国 は、 基 地 内 に お い て、 そ れ
ら の 設 定、 運 営、 警 護 お よ び 管 理 の た め 必 要 な す べ て
の措置をとることができる」とあり、前泊氏は「『米軍
の 排 他 的 管 理 権 』 を 認 め た も の で、 米 軍 基 地 が 日 本 国
内 に あ り な が ら 日 本 の 国 内 法 が 適 用 さ れ な い、 事 実 上
アメリカの領土であるという最大の原因」と解説する
(「 本 当 は 憲 法 よ り 大 切 な『 日 米 地 位 協 定 入 門 』 = 創 元
社=から)。 2013.12.20
28
4月 28 日の琉球新報号外を手にする前泊さん
わかった。象徴的なのは、それを探している2
28
90
≪ 17 ≫
と内外に表明したことになる。
の外にあったということになる。日本ではない
の日に切り離された沖縄、奄美、小笠原は主権
をもって主権を完全に回復したとするなら、そ
た。
し」と答えた。中国の記者はがっかりして帰っ
保障されていない中国より、まだ日本の方がま
が、残念ながら人権問題や言論の自由が十分に
し ょ う。 そ う い う こ と を 聞 き た い ん で し ょ う
るが、犯人が捕まらないまま終わるケースがた
練された者による猟奇的殺人ではないかと分か
れた強盗殺人事件。明らかに普通じゃない。訓
る。タクシー運転手が、首の皮一枚残して切ら
ている。女性の性器に棒が突っ込まれて殺され
」の式典開催を受けて最初に大喜び
日 本 の 何 が ま し か と い う と、 憲 法 が あ る か
力もない。ここから抜け出すには、もう日本に
くさんある。警察の捜査権が制限されてなんの
「4・
して報道したのは中国メディアだった。そろそ
らだ。憲法のありがたみを経験しているのは沖
」で今度は切り捨てら
28
沖縄市(旧コザ市)で米軍車両をひっくり返し
実 際 に 捜 査 し た 警 察 官 に も 聞 い た。 た ま た
で、「昔はこういうことがたくさんあったがど
て火を付 けた。怒りが爆発した。 きっかけは、 ま 乗 っ た タ ク シ ー の 運 転 手 が 沖 縄 県 警 の O B
米軍の人身事故。MP(憲兵)が来たが、また
う か 」 と 聞 く と、
「今も似たよう なものだ、犯
繰 り 返 さ れ て い る の が 沖 縄 だ 」 と 言 っ て い た。
人が分からないのが結構ある。そういうことが
「こんなにひどい目にあって大変でしたね」と
の直前、糸満市で主婦がひかれて死亡した。こ
Pが発砲した。それに対して騒動が起きた。そ
いろいろ聞いてくる。私は「最初に結論言いま
「太陽がまぶしくて信号が見えなかった」それ
してしまったのが安倍首相だ。
らず完全な主権が回復された日としてお祝いを
ときにたくさん写真を見る機会があった。猟奇
損、死に損だった。私は記者時代、警察担当の
が反発をしているというので地ならしという意
アを回った。政府式典をやると言った時に沖縄
式典の前に菅義偉官房長官が沖縄のメディ
沖縄長期占領を望んだ天皇
が無罪の理由だ。年間1千件から2千件ぐらい
か。完全な主権が行使されていないにもかかわ
米兵犯罪にしっかりした捜査権がとれるかどう
米兵犯罪が起きていた。そのことに対する怒り
殺人かと思うような写真もあったが、すべて迷
味だろう。その時のようすが琉球新報の特集号
司 法 権 が 行 使 で き な い 状 況 の 中 で、 ひ か れ
が爆発した。
宮入りだ。警察官は「こんな事件を俺たち解決
年9月の天皇メッ
セ ー ジ が 出 て く る。 天 皇 が 側 近 の 宮 内 省 御 用
できない。この殺し方、普通じゃないだろう」 に出ている。議論の中で、
という。女子高生が乳房を切りとられて殺され
47
中国版がある。
[4]琉球処分 明治政府による琉球藩設置から分島問
題 の 終 結 ま で を い う。 明 治 維 新 に 伴 い 1 8 7 2( 明 治
5) 年、 明 治 政 府 は「 琉 球 国 」 を 廃 し て「 琉 球 藩 」 と
し、 廃 藩 置 県 に 向 け て 清 国 と の 関 係・ 通 交 を 絶 ち、 明
治 の 年 号 使 用 な ど を 迫 っ た。 従 わ な か っ た た め 年 3
月、 武 力 的 威 圧 の も と で 廃 藩 置 県 を 布 達、 首 里 城 明 け
渡しを命じた。事実上琉球王国は滅び、「沖縄県」とな
る。 し か し 琉 球 士 族 の 一 部 は こ れ に 抗 し て 清 国 に 救 援
を 求 め、 清 国 も 日 本 政 府 の 一 方 的 な 処 分 に 抗 議 す る な
ど、 問 題 は 尾 を 引 い た。 外 交 交 渉 の 過 程 で、 清 国 へ の
先 島 分 島 が 提 案 さ れ 調 印 の 段 階 ま で き た が、 最 終 段 階
で 清 国 が 調 印 を 拒 否、 琉 球 に 対 す る 日 本 の 領 有 権 が 確
定した。(琉球新報「沖縄コンパクト事典」から、要約)
79
[3]環球時報 中国共産党中央委の機関紙「人民日報」
の 国 際 版。 人 民 日 報 社 が 1 9 9 3 年 に 発 刊。 英 語 版 と 両 に ひ か れ て 死 亡 し た。 こ れ も 無 罪 に な っ た。
れが無罪になった。その前には中学生が米軍車
され、友軍によっても集団死の問題が起きた。 無罪になるんじゃないかと住民が取り囲み、M
れて米軍統治下に入った。沖縄戦では米軍に殺
れたと思ったら「4・
攻があった。太平洋戦争で犠牲になり、占領さ
球 時 報 が[打 ち 出 し た。 私 の 所 に も 中 国 メ デ ィ 縄だけだ。かつて米軍統治下でどうだったか。 戻るしかない。日本国憲法で守ってもらうしか
[4]
アが取材に来た。琉球処分が[明治時代にあり、 銃剣とブルドーザーで家をとられても文句を言 ない。これが、沖縄が日本に戻ろうと決めた理
さらにさかのぼると1609年に薩摩の琉球侵 えない。1970年、復帰直前のコザ騒動事件。 由だと親たちから聞かされてきた。
[3]
ろ沖縄の帰属について議論する時期が来たと環
28
広島ジャーナリスト
≪ 18 ≫
[5]
[6]
りも、つまり講和条約の中で琉球の軍事基地権
崎氏によると、天皇は、米国が沖縄やその他琉
協定で書けということ。日米安保条約によって
を保障するよりも日米2国間条約によってなさ
球諸島の軍事占領を続けるように望んでいると
沖縄の基地権、日本の基地権を押さえる。それ
が明らかにした。[それまでは知られていなかっ
た。メッセージが出たのは 年9月 日だ。寺
う話。対応した連合国軍総司令部政治顧問シー
言明した。天皇の考えでは、そのような占領は
を天皇が要望したことになっている。この日付
掛 ・ 寺 崎 英 成 氏 を[通 し て、 沖 縄 の 長 期 占 領 を
希望することを口頭でアメリカ側に伝えたとい
ボルトが要旨をまとめ、
「琉球諸島の将来に関
米国に利益をもたらし日本にも保護を与えるこ
年5月には日
講 和 条 約 で 沖 縄 長 期 租 借 は 書 く な、 2 国 間
する日本の天皇の見解」と題した書簡に添付し
とになる、という。天皇はさらに、潜在的主権
れるべきだと考えていた。
て米国務長官マーシャルに送った。米軍の沖縄
年9月 日、これも問題だ。
47
年、 本 国 憲 法 が 施 行 さ れ た。 憲 法 で 天 皇 は 象 徴 に
20
なったはずなのに政治的行為を行っている。こ
皇が自ら言ったかどうか。メッセージの信ぴょ
された、言わされたという説もある。本当に天
れが本当かどうかは検証する必要がある。調べ
[6]「世界」1979年4月号。 もしくはそれ以上を考えていたという。手続き
年から
47
として、沖縄および他の琉球諸島の軍事基地権
50
ていくと天皇メッセージはマッカーサーに書か
年に進 藤 榮 一 筑 波 大 教 授 ( 当 時 ) ことにな っている。長期租借、
占領は日米双方に有意義で日本国民の賛同を得
これを
を日本に残したまま、長期占領を許すと言った
20
の獲得が連合国の対日平和条約の一部をなすよ
25
られるとの見解を示した。
47
沖縄県公文書館が米国立公文書館から入手した「天皇メッセージ」をメモした米外交文書
2013.12.20
79
[5]てらさき・ひでなり 外交官。日米開戦直前にルー
ズベルト大統領から昭和天皇への親書発出に奔走した。
1947年に宮内省御用係に任命され、天皇・マッカー
サ ー 会 談 の 通 訳 な ど を 務 め た。 実 の 娘 の 名 を キ ー ワ ー
ド に し た 電 文 の 謎 を 追 う 柳 田 邦 男「 マ リ コ 」( 新 潮 社、
年)のモデル。 80
≪ 19 ≫
う性をしっかり確認しておく必要がある。ご本
県民を、また切り捨てて沖縄を米軍統治下に置
な が ら 政 府 式 典 を や り た い 」 と い っ た。
「寄り
いう言い方をしたかというと「沖縄に寄り添い
添う」とはどういうこと?という話にもなった
いたという話になる。
菅 官 房 長 官 が 沖 縄 に 来 て、 政 府 式 典 を や り
広島ジャーナリスト
人は今いらっしゃらないので、現在の天皇にイ
ンタビューを申し入れたことがある。東京報道
61
年の節目
年の節目。1年余分で
年にやりたかったが
年まで待てばい
が、式典は開かれた。主権回復から
の年なので、という。
61
たいと言った時に琉球新報の富 田 詢 一 社長は
沖縄でイベントがあると、天皇が来られた。 「政府の式典があるのか」と聞き、官房長官が「陛
は、と聞いたら、本当は
60
部時代にお願いしたが、なかなか実現しない。
下も出てきます。お言葉もあります」と応じて
年か
その時は政権をとっていなかったので、という
説明だった。だったら
70
沖縄の新聞は皇室報道に熱心でないので小さく
存じないのですか。沖縄にとっては重大な問題
いのにと思うが、それまで政権が続くか自信が
65
しか載らない。それでも沖縄の海洋博を見に来 「えっ、お言葉もですか。天皇メッセージをご
が残ってます」と言ったら、官房長官は後ろを
たと言うので、話題にはなる。直接お話を聞こ
うと取材に行き、写真を撮りながら声をかけた
なかったのでは。
「講和」で変わらぬ実態
振り向いてぼそぼそっと話をして「お言葉はな
歴史認識に甘いところがあるのではないか
いそうです」と答えたそうだ。
年9月8日
らSPが飛んできて話はできなかった。
天 皇 メ ッ セ ー ジ は、 沖 縄 に と っ て 屈 辱 的 な
サンフランシスコ講和条約が
シーボルトからマッカーサーあて覚書(コピー)
1947 年 9 月 20 日
天皇の顧問、寺崎英成氏が、沖縄の将来に関する天
皇の考えを伝える目的で、予約して私の事務所を訪れ
た。
寺崎氏は、米国が沖縄およびその他の琉球諸島の軍
事占領を継続するよう天皇が希望していると述べた。
天皇の意見では、そのような占領は、米国の利益にな
るし、日本を守ることにもなる。天皇が思うには、そ
のような政策は、ロシアの脅威ばかりでなく、占領終
結後に右翼及び左翼勢力が台頭して「事件」を起こし、
それを口実にロシアが日本の内政に干渉してくるよう
な事態を恐れている日本国民の間で広く賛同を得るだ
ろう。
さらに天皇は、沖縄(および要請された場合の他の
諸島)に対する米国の軍事占領は、日本に主権を残し
た形での長期租借―25 年から 50 年、あるいはそれ以
上―という擬制の上になされるべきであると考えてい
る。天皇によると、このような占領方式は、米国が琉
球列島に対して恒久的野心を持たないことを日本国民
に納得させ、また、それによって他の諸国、とくにソ
連と中国が同様の権利を要求するのを阻止するだろ
う。
手続きについて寺崎氏は、(沖縄および他の琉球諸
島の)
「軍事基地権」の獲得は、連合国の対日講和条
約の一部としてではなく、米国と日本の二国間条約に
51
よるべきだと考えていた。寺崎氏によれば、前者の方
式は、押しつけられた講和という感じがあまり強すぎ
て、将来、日本国民の同情的な理解を危うくする恐れ
があるという。
ことだ。長期占領を許したのは天皇だというこ
題:琉球諸島の将来に関する日本の天皇の意見
天皇の顧問、寺崎英成氏が当事務所を訪れた際の同
氏との会談要旨を内容とする 1947 年9月 20 日付の
マッカーサー司令官あて覚書のコピーを同封します。
それには、天皇が沖縄およびその他の琉球諸島の米
国の軍事占領継続を希望していることが記されていま
す。その希望が主として私的立場からのものであるこ
とは疑いありません。天皇は、米国がこれら諸島を長
期租借して軍事占領を継続することを望んでいます。
その意見によれば、日本国民はそれによって米国に下
心がないことを納得し、軍事目的での米国の占領を歓
迎するだろうということです。
という議論が、その時に出た。政府式典が決まっ
東京 1947 年 9 月 22 日
とになると、
「天皇の赤子」として天皇のため
ての書簡
て反発が出た時、安倍政権は非常に困ってどう
米国対日政治顧問W・J・シーボルトから国務長官あ
に一生懸命に尽くして戦争で犠牲になった沖縄
昭和天皇の「沖縄メッセージ」(仮訳・編集部)
≪ 20 ≫
軍は、この条約の効力発生の後
[9]
日以
領軍は、この条約の効力発生の後なるべくすみ
講 和 条 約 第 6 条 に は、 連 合 国 の す べ て の 占
か。
ことになる」と脅すが、それでも吉田は行かな 辱 的 だ っ た 」 と 書 い て い る。[な の に 主 権 回 復
かった。最終的に、ダレスは天皇に指示を出し、 の日ということで式典を開くとはどういうこと
天皇は業務命令を出す。それで吉田は渋々行っ
た。
講 和 条 約 は 代 表 団 の 全 員 が 署 名 し た。 そ の
やかに、かつ、いかなる場合にもその後
内に、日本国から撤退しなければならない、と
後の安保条約については、こんなものにサイン
するのは俺だけでいい、と吉田首相一人が署名
年たっても、まだ米軍は
ある。
延長を認める安保条約とセットだった。このこ
条約調印式の2時間前だった。講和条約は、日
ではないとあることから、2国間協定、つまり
協定に基づく外国軍隊の日本駐留を妨げるもの
いる。6条後段には2国間もしくは多数国間の
日どころか
した。安保条約の全文が発表されたのは、安保
90
日に発効する。
条約には、 本全土基地方式、基地の自由使用、占領政策の
61
望む場所に望む期間だけ駐留する権利を確保す
う「6条a」
( 別表 )がある。望む数の兵力を
外国の軍隊が日本に駐留するのを妨げないとい
ンは「もし、安保条約が署名されたら、日本側
リカ側は何と言ったか。ダレスの補佐役アリソ
と に 対 し て 宮 沢 喜 一 さ ん は[「 こ れ で は 独 立 す
る意味がないに等しい」と批判している。アメ
た 権 利 を 駐 留 軍 に 保 障 す る た め に 作 っ た の が、
ない。変わった気がしない。占領軍が持ってい
留軍」に変わったというが、違いがよく分から
た。それまで「占領軍」と呼んでいたのが「駐
に駐留することになった。
宮 沢 氏 を は じ め 当 時 の 自 由 党、 民 主 党 の 政
的だということを痛感していた。安倍首相も「美
屈 辱 的 と 言 わ れ、 し か も 沖 縄、 奄 美、 小 笠
憲法改正への布石?
地位協定の原型である日米行政協定だ。
講和条約で何が変わったかと先輩にも聞い
安保条約を一緒に結んで、引き続き米軍が日本
る。その権利が確保されない限りは講和条約は
だ」と言っている。それぐらい売国的な中身だ
た。
占領政策そのものを延長することを前提に、 代表団の一人は帰国後に暗殺されることが確実
結ばないというのがアメリカのスタンスだっ
ということをアメリカも知っていた。それで吉
機密保持や国会審議回避のため、和文は存在せ
治家たちは講和条約によって日本が独立したと
この講和条約の中身は主権を回復したとはいえ
原は切り捨てられた日にもかかわらず、この日
を完全な主権回復の日としなければならなかっ
しい国」という本の中で安保条約について「屈
[7]
に行くのを拒んだのだそうだ。アメリカの講和
53
担当のダレスが[「なんで来ないんだ」
「大変な
[8]宮沢喜一・元首相は1949年から池田勇人蔵相
秘 書 官 と し て 講 和 条 約 の 交 渉 に 携 わ り、 年 の 調 印 式 [9]「アメリカ人が日本国内で犯罪を犯しても、日本に
に は 全 権 随 員 と し て 参 加 し た。 池 田 側 近 時 代 の 日 米 交 は 裁 判 権 が な い な ど、 独 立 国 と は 名 ば か り の、 い か に
渉 の 裏 面 を ま と め た「 東 京 ― ワ シ ン ト ン の 密 談 」 は 史 も隷属的な条約を結んでいたのだった」(安倍晋三「美
しい国へ」=文春新書、2006年=から) 料として評価が高い。
52
ない、占領政策を延長しているだけだと、署名
あたって、当時の吉田茂首相は何と言ったか。 は思っていなかった。安保条約とセットで屈辱
ず直前まで英文だけだった。講和条約を結ぶに
れを条件に講和条約を結んだ。
日米安保条約は、 田首相は一人で署名したという。
[8]
講和条約を結ぶということになった。その中身
年4月
90
が、日米安保条約が保障する全土基地方式。そ
に調印され
(a)
連合国のすべての占領
[7] John Foster Dulles
1881~1959。 ~
年 ま で ア イ ゼ ン ハ ワ ー 大 統 領 の も と で 国 務 長 官。 冷
戦下、反共主義者として知られる。
2013.12.20
かなる場合にもその後九十日以
内に、日本国から撤退しなけれ
ばならない。但し、
この規定は、
一又は二以上の連合国を一方と
し、日本国を他方として双方の
間に締結された若しくは締結さ
れる二国間若しくは多数国間の
協定に基く、又はその結果とし
ての外国軍隊の日本国の領域に
おける駐とん又は駐留を妨げる
ものではない。
28
なるべくすみやかに、且つ、い
52
講和条約第6条
59
≪ 21 ≫
年間の開きがある。憲法は、安倍首相がいう主
年5月3日に施行さ
たのはなぜか。調べていくと、日本国憲法との
ない。
てどういう結論を出すのか。検証しないといけ
体系全部を見直さないといけなくなる。果たし
要か。憲法を全部廃止するとなると、日本の法
思・京都大教授なんかは言う。本当にそれが必
るはず。ところが、どうしようかと聞かれた皇
なったのだから、今ならその後の行程は中止す
待っていたんだそうだ。とはいえ大変な騒ぎに
が、中にいた者たちは数カ月前から奥に潜んで
口だけ調べて奥までは入らなかった」。ところ
れた。講和条約は
年4月に発効している。5
関係が出てくる。憲法は
権がない時に作られたので無効ということにな
それと、この式典には天皇も参加させたが、 太子は「続けよう」と答え、ホテルへ帰って着
これは天皇の政治利用に当たらないかという議 替えすることもせず、そのまま日程をこなした。
日付産経新聞「金曜討論」で、文筆
論がある。式典の終わり近くになって突然、誰
まり、振り向いた顔には非常に迷惑そうな表情
た。立ち去ろうとしていた天皇の動きが一瞬止
いうのを是非聞いておかねばならない。そのこ
ことをしてきた」と。彼の沖縄に対する思いと
る。4月
家の兵頭二十八さんが、憲法は無効である、廃
都大名誉教授の意見が並列的に掲載されてい
とを記録するのは歴史を検証していくうえで非
にそはち
憲だと主張した。これに対して、改憲はやむな
た。すべての日本の法律は憲法を基本に作られ
が出ていた。彼は元首になりたいのか。おそら
どうしてかと尋ねられた時に皇太子はこう答
えたという。「我々はそうされても仕方のない
年間も、無
常に重要ではないか。伊江島に彼の詠んだ歌の
ている。憲法無効論を認めれば、
くそんな気持ちはないだろう。
憲法は明治憲法の改憲の規定に従ってしっかり
た ん じ ゃ な い か。 と こ ろ が、 実 際 に は 日 本 国
ころに成立した日本国憲法は無効と言いたかっ
たとしか思えない。つまりは、主権がなかった
明するために「主権回復の日」祝賀式典をやっ
こ れ は、 主 権 を 持 っ て い な か っ た こ と を 言
きたいのかもしれないが、そういう議論になっ
憲よりはまだ改憲がまし、という話に持ってい
なってしまう。それはできないということで廃
屋良朝苗知事が『聖地なのだから、そこまでし
いては「壕の中まで調べようとしたが、当時の
佐々淳行さんという警察庁派遣の警備責任者
が後に言っていたことだが、ひめゆりの塔につ
ついたそうだ。
ず皇太子にけがはなかったが、背広に焦げ目が
ンバーに火炎瓶を投げられた。身体には当たら
の塔を参拝中に壕の中から出てきた過激派のメ
た。 糸 満 市 を 通 る 車 列 に 向 か っ て 植 木 鉢 の[よ
うなものが投げつけられた。その後、ひめゆり
子時代に海洋博があって来た時に事件があっ
今 の 天 皇 は 何 度 か 沖 縄 に 来 て い る が、 皇 太
で一生懸命反対をしても、オスプレイは強行配
今、沖縄で話されているのがそもそも主権と
は何だろうということ。沖縄の人たちがみんな
「宗主国」アメリカ
さんには是非チャレンジしてほしい。
か。記録し残しておくことに、新聞記者のみな
改憲草案の問題を天皇自身はどう考えている
メッセージの問題、元首に戻すという自民党の
沖縄についての関心は高く、琉球新報や沖縄タ
市町村の全首長が反対、県
議会も反対、自民党の支持を受けている仲井真
てほしいと沖縄の
備されてしまった。これ以上の過重負担はやめ
イムスの愛読者とも聞く。憲法との関係、天皇
碑があるが、沖縄への思い入れがうかがえる。
成立している。廃憲論を主張している人たちは
なくてもいいじゃないか』と言ったので、入り
[10]警備責任者だった佐々淳行「菊の御紋章と火炎
ビ ン 」 で は「 液 体 の 入 っ た 薬 品 の 瓶 が 投 げ ら れ た 」 と
している。 [10]
何が言いたいかというと、新憲法については無
日本の憲法は明治憲法だということ。そういう
議論が今、始まっている。
「憲法を廃止して再
審議と再公布・施行の手続きが必要」と佐伯啓
49
てしまう。
効なので有効なのは明治憲法だけだ、いまだに
効の憲法の上に法体系をつくってきたことに
61
広島ジャーナリスト
47
か が 立 ち 上 が り「 天 皇 陛 下 万 歳 」 と 声 を 上 げ
52
しとしても廃憲はどうか、という中西輝政・京
26
≪ 22 ≫
沖縄の普天間基地に配備するということになっ
大教授が属国日本の実態について書いた本を出
るということ。最近、あるオーストラリア国立
初、
オスプレイはいったん岩国に陸揚げした後、 宗主国があるということはその下には属国があ
が出るというが、一方でどれほどの損失がある
あるか。新聞報道によれば3兆2千億円の利益
PPに参加することで日本にどんなメリットが
れはちょっと譲歩しすぎだと言われている。T
て聞いた。日本の国は宗主国を持っているのか。 え置くこと、簡保の新商品は出さないこと。こ
ていた。岩国の人たちが怒って反対運動が激し
した。確かに他国の軍隊がこれほどいる国は他
弘多知事すらも反対を表明しているのにだ。当
くなったので、政府が岩国への陸揚げはやめて
か。農業とかにどれほどのダメージを受けるか。
が「そんなことをしたら、また沖縄差別と言わ
某党の幹事長をしている沖縄県選出の国会議員
本当に日本は主権国家かという疑問を持って当
い。日本国民に比べ低率。そういう状況を見て、 にしかならない。
起こしても裁かれない。起訴件数が本当に少な
3兆円と言われる。差し引き2千億円のプラス
直接沖縄へ配備しようという話が出てきた時、 にはない。その兵士が自由に動き回り、犯罪を
れるよ。何があってもまず岩国に揚げてから配
然ではないか。
変えられる。アメリカの自動車関税がなくなる
そんなわずかな金額のためにこの国の形を
備してくれ」と言ったので、結局、政府がそう
主権というのはまったく発揮されていない。日
が、
なぜ許されるのか。オスプレイ配備の直前、 ある。オスプレイの配備に関して言えば、この
長期的には沖縄に置くわけだから。そんなこと
本の領土内で起こった米軍機の事故でも捜査権
ついては 年間開示しなくてよいという決まり
のがTPP交渉の怪しいところだ。交渉内容に
見えない部分の情報を開示しなくていいという
ことがほとんど知らされないまま交渉が進む。
の利益などすぐに吹っ飛んでしまう。そういう
リカにはどうこう言えないと答える。
これでは、 えるのだろうか。日本がここで主権を発揮した
やめてくれとお願いしているのに、首相がアメ
というのを知っている人はいるか。日本の主権
るのか。大変心配になる。
されているのか。国民の権利が売り渡されてい
どんな形で交渉が進められ、日本の主権が脅か
がある。国民には知らせなくていいということ。
治のあり方を最終的に決める権利」とも書いて
某民放テレビ局の番組で当時の野田佳彦首相は
を持たない、米軍機の配備にノーと言える立場
ということが日本の主力産業である自動車に
いう措置をとったそうだ。
そもそも主権とは何か。広辞苑を引いてみる
と、「他の意思に支配されない国家統治の権力」 とって最大のメリットをもたらしてくれるはず
だからと言って、沖縄差別ではないなんて言
えることではない。一時的に岩国に置いても、 「最高・独立・絶対の権力」とある。「国家の政 なのに、これを据え置くとなると3兆2千億円
い」と言った。国民の命が脅かされる、国民が
「米軍の方針についてどうこう言える立場にな
日本という国には主権がないと言ったのに等し
にない―これで果たして主権を持っていると言
いのではないか。野田さん、
しっかりしてくれ。 というのはまるで見えない。
わない」と言う以上、沖縄県民は直訴するしか
備交渉に行った。その結果を日経新聞で読んで
を取ったらいきなり参加に転換。アメリカへ予
断固参加しないと書いていた。ところが、政権
ている最低のことも表に出てこない。何のため
内政干渉だ。こうしたTPPの交渉で議論され
と危ない」というわけだが、これなんかまさに
ぎる。支給年齢が早すぎるからで、改善しない
げ。「日本の 年金制度は破綻する。 年金が高過
昨年末の総選挙の公約で自民党はTPP反対、 問題の一つが日本の年金支給開始年齢の引き上
そ の 交 渉 の 中 で、 ア メ リ カ か ら 要 求 さ れ た
ない。海の向こうの宗主国に。
愕 然 と し た。 交 渉 で 何 を の ま さ れ た か と 言 う
例 え ば、 環 太 平 洋 経 済 連 携 協 定( T P P )。
宗主国というのは私が言い出したことではな
い。 以 前、 あ る 防 衛 省 首 脳 が 使 っ て い た。「 日
と、アメリカの自動車関税については %を据
あんたが言わなきゃ一体誰が言うのか。
でも「言
本の宗主国はなぜ中国からアメリカに変わった
2013.12.20
10
のか」と書いてある文書を見た。その時、初め
12
≪ 23 ≫
で、日本がそういうことをするのはよろしくな
揚陸艦である空母を配備しようという話まで出
の、誰のためのTPPか。しっかり情報を集め
い」と言ったのに、その翌々日には「国有化」 ている。
を次期
日本政府はカタパルト(射出機)がないので空
母じゃないと言っているが、同時にF
までも続くはずがない。そういう状況の中で、 「この問題は複雑だから解決は知恵のある後の
では名実ともに空母じゃないか」と中国のメ
直 離 着 陸 が 可 能 な オ ス プ レ イ と 同 じ で、
「これ
てからだ。東京都で尖閣を買い取ろうと言い出
か。ある人が「国有化」という考えを打ち出し
おきたい。今の日中の対立がどこから始まった
そ こ で、 ち ょ っ と 尖 閣 諸 島 の 問 題 に 触 れ て
が、どう責任を取るのかを彼らにぜひ聞かなけ
の は い か が な も の か。 メ デ ィ ア も 追 及 し な い
ず、原因をつくった人たちに何のとがめもない
易額だけで5兆円を失う羽目に。にもかかわら
彼 ら の お か げ で 中 国 の 反 日 デ モ が 起 き、 貿
ると昔、侵略されたのはこちらで、侵略したの
脅威論というのがすぐ出てくるが、中国からす
ま た、 こ ん な 時 に 日 本 の メ デ ィ ア で は 中 国
思えない。
本当に戦闘機の離発着ができるか。とてもそう
を買ったんだ」とも言っていた。そんな代物で
有化」を迫ったわけだ。よせばいいのに、その
けないということで水陸両用軍を置こう、いわ
算要求を見ると、島嶼部防衛を強化しないとい
ちもどっちと思うが、片方だけでなく両方のメ
ると、それぞれ国益を主張し合うばかりでどっ
だというわけである。双方のメディアを見てい
広島ジャーナリスト
て考える必要がある。
空 母 を 進 水 さ せ た。 1 万 9 千 ㌧ 級 の ヘ リ コ プ
と こ ろ で、 実 は 日 本 は 事 実 上 3 隻 目 と な る
中 国 に す れ ば 面 子 を つ ぶ さ れ た 格 好。 こ れ
ター搭載型護衛艦(DDH)という名称になっ
を決めてしまった。
がいるが、昔と違って今や軍事力では国は守れ
が後々までもめ続けている理由の一つだ。一体
軍事力があればこの国が守れると考える人
ない。アメリカがイラク戦争をして何が残った
い出した人は都知事を辞めて国会議員になり、 がハリアー戦闘機を載せていたものと同じ規模
ているが、フォークランド紛争の時にイギリス
実際国有化に踏み切った首相は既にその座にな
かと言うと財政破綻。これ以上は無理だという 「国有化」によって何を守ろうとしたのか。言
わけで今、外国の駐留部隊をどんどん減らそう
返還の時から表面化してきたことで、後によく
で、事実上空母ではないかという意見がある。
ということになっている。4999の基地を抱
年の沖縄
い。 ご 承 知 の よ う に こ の 問 題 は、
兆円のお金を使う。戦費を含める
えるアメリカ。さすがに多すぎるということだ
ろう。年間
主力戦闘機として導入も始めている。F は垂
世代に任せよう」という態度だった。その通り
持ち出される鄧小平発言が示すように中国側も
もし日本が戦争をすれば何を失うかを考えてい
たのに、自分には知恵があると思った人がいた。 持っているのに、中国が中古の空母を1隻買っ
また、その口車に乗って動いた人がいたから、 ただけでなぜ大騒ぎするのか。中国はまだ1隻
した。あそこは沖縄県の土地なのに。逆に、沖
ればいけない。このまま中国と日本が尖閣をめ
も持っていないから不安だ。それで急いで中古
縄が東京の千代田区を買うと言い出したらどう
はそっちだろうという話になる。日本で、中国
こんなふうにこじれることになった。
なるだろうか。
実際には沖縄は買えないけれど。 ぐ っ て 激 し く 対 立 す る こ と が 続 く と ど う な る
が侵略してくるなどと言われているのは心外
口車に乗って買った人がいる。しかも、最悪の
ゆる海兵隊、つまり第4軍を持とうという話に
ディアを見ておかないといけないことは確か
か。 昨 日( 8 月
タイミングで。中国が全人代で政権交代をする
なったという。さらに、そのために必要な強襲
31
直前、時の胡錦濤主席が「今は微妙な時期なの
東京のあの人はそんなことを言って政府に「国
日)出された政府予算の概
事実上の空母 3 隻 持 つ 日 本
ディアから指摘された。「日本は空母を3隻も
兆円もの軍事費になる。こんなことがいつ
72
知恵のある世代が出るのを待っていればよかっ
と
35
35
60
かないといけない時期に来ている。
75
≪ 24 ≫
だ。
このヘリコプター搭載型護衛艦の1隻目は
共産党も非常に反対して、
情報が全国に流れた。
不平等・法の空白・恣意運用・特権
が、環境団体の反対で追い出した。その後どこ
に行ったのかはわからない。そういうことが起
こっている。こういうことのないように、しっ
ド イ ツ の 場 合 は、 米 軍 に「 原 状 回 復 義 務 」
地位協定の問題は六つの問題に収斂される。 かりと環境対策をさせなければいけない。
第1に、「法の下の不平等」。犯罪起訴率の格差
2隻目はいつの間にかできてしまい、3隻目は
こんな大型がもう竣工してしまっている。慣ら
とになっている。日本の場合、地位協定で米軍
%。 がある。元のきれいな土地にして返せというこ
がある。日本 人の
カの情報公開があって、「密約」が明らかになっ
る。 沖 縄 返 還 協 定 に 絡 む 密 約 を[暴 露 し た た め
職を失った。その後、1997、8年にアメリ
西山太吉さんという元毎日新聞の記者がい
は、撤退するとき、あるいは移動するとき、持っ
見つかっている。埋められていたものだ。米軍
で「枯葉剤」「有害物質」の入ったドラム缶が
撤退するときも掃除していかない。今、沖縄市
第2に「法の空白」。環境問題では規制がな
柄を引き渡すというように地位協定の改善がさ
るが、実際は米軍優先だ。重大犯罪の場合に身
が起きた時は「共同捜査」することになってい
第3に、「恣意的運用」の問題がある。事故
を使ってやることになっている。
い。その処理は日本が責任を持って国民の税金
あまりにもおかしい。
%に対して、米 兵は
されてしまうと日本国民というのは、抵抗しな
た。ところが、日本政府はいまだに否定してい
て行けそうにないものは、全部埋めていく。返
にそうした「原状回復義務」を課していない。
る。アメリカは認めているのに、日本はないと
還後、そういうのがどんどん見つかる。返還さ
めても、地位協定を盾にはじかれる。ヘリを飛
かしい」
「 あ る 女 性 と 情 を 通 じ て 取 っ て い る 」 その状況を調査しようと日本側が立ち入りを求
昨年、沖縄市である婦女暴行事件があった。
から自由に出入国できる。日本の国境がない。
免除されている。米軍基地の中に入れば、そこ
い。例えば、米兵は出入国自由。入国管理法が
第4に「免法特権」
。日本の法が適用されな
い。米軍は基 地・提供施設を汚しっ ぱなしで、 だから、米軍は汚しっぱなしのまま帰ってもい
言 い 張 っ て い る。 西 山 太 吉 さ ん は 当 時、 そ の
れたが、実行されていない。アメリカの「好意
じゃないか」と言って「見せろ」というと、し
民はその「女性スキャンダル」に飛びついた。 ばして上空か ら見ると、黒い池 がある。「ある
として「女性スキャンダル」にすり替えた。国
ぶしぶ中に入れてくれるが、入った時には既に
[11]
400万㌦の密約の電文を国会で横路節雄衆院
れた基地を掘り返すと廃油が湧き出るといった
密約話は吹っ飛んでしまい、西山さんは記者生
人に声
ち帰れ」と要求する。米軍はそれをドラム缶に
が湧き出てくる。そうしたのは米軍だから「持
還されてその場所を調査すると、PCBや廃油
着衣を持ち帰った。レイプ事件は「親告罪」だ
その2人は「戦利品」ということでその女性の
ところで捕まり、そこでレイプされてしまう。
られた。自宅マンションの駐車場に逃げ込んだ
をかけられ、女性は怖くて逃げたが、追いかけ
コンビニに買い物に行った女性が米兵
詰め、本国に持ち帰ろうとした。ところが、ア
から、訴えて初めて犯罪となる。女性はすぐ警
2
メリカの国内法に引っかかった。有害物質の持
埋められていて、その池はない。何年か後に返
命を失った。
[12]
話がよくある。PCBで汚染された池もあった。 に依存」しないと、犯罪捜査ができない。
17
議 員 に 追 及 し て も ら っ た。 そ れ に 対 し て 当 時
[
の自民党政府がやったことは、
「入手方法がお
くなる。
49
ち 込 み は 禁 止。 結 局、 横 須 賀 港 に 戻 っ て き た
2013.12.20
「機密文書」を入手するのは、私もいろいろ
経験しているが、非常に苦労する。
52
[ 1 1] ア メ リ カ が 支 払 う べ き 軍 用 地 の 原 状 回 復 費 用
400万㌦を日本が肩代わりして支払うという内容。
[12]よこみち・せつお 1911~ 。 年から旧・
北 海 道 1 区 で 通 算 8 期 当 選、 旧 社 会 党 の 国 対 委 員 長 や
政審会長を歴任、安保問題などの論客として知られた。
横路孝弘・前衆院議長の父。
67
≪ 25 ≫
察に訴えたので緊急配備が敷かれた。ホテルか
らの通報で警察が踏み込むと、彼女の着衣が天
し、北海道から沖縄まで日本全土が訓練エリア
しまった」というので、「沖縄ではF
故の原因が不明なのに、もう訓練が再開されて
が墜落
になっている。
低空飛行訓練エリアが設定されているので、 し原因もまだわからないのに訓練を再開してい
表されていない。
地位協定の問題が、
韓国やフィ
起こした同じような事件の写真があったが、発
ル、写真が残っていた。この中には、他の国で
た彼らのスマホあるいは携帯電話には写メー
るからだ。そうなると泣き寝入りだ。押収され
ないケースが出てくるのは、こういうことがあ
出入国が管理されていないから。犯人がわから
れないものだから知られていない。なかったこ
れたとか被害が出ているが、全国紙には報道さ
でも米軍機が低空飛行訓練をして窓ガラスが割
か載らないので、なかったことになる。島根県
地方紙には載るのだけれど、全国紙にはなかな
性に接触して女性が即死した。そういうことは
した米軍機の車輪が道路を自転車で通行中の女
誰がどうなったかわからない。
あとが残らない。 使われている。かつて茨城県でも超低空飛行を
てしまっていた。
基地から出て行ってしまうと、 いる人が山ほどいる。実際にはいろいろ普通に
もう2時間遅かったら、彼らは次の国に移動し
とにされている。訓練では、ある地域だけが被
ム村」だ。高台にゲスト席をつくり、当時のア
東村の高江というところにつくられた「ベトナ
写真を見てほしい。ベトナム戦争当時、沖縄・
国に広がり、共感できるようになってきた。
本の沖縄化」が進んでいる。ようやく問題が全
ら な か っ た の で す よ 」 と 話 し た。 い ま や、
「日
とをずっと訴え続けて来たのに、なかなか伝わ
す か 」 と 聞 く。
「 ずっと許されてき た。このこ
る 」 と 答 え る と、
「そんなことが許されるので
井裏から見つかり、2人の米兵は逮捕された。
リピンなど他の国にも波紋を広げると面倒だと
害を受けていると思われている。しかし、その
メリカの高等弁務官が高みの見物をしている。
そこでオスプレイが訓練するのだ、と誤解して
いうことでなかったことにされているのかもし
訓練エリアにオスプレイやF はどのようにし
地間移動は自由だ。訓練ゾーンに向かうまでの
ワープするのは宇宙戦艦ヤマトだけだ。訓練基
のために雇われたのかもしれない。今、オスプ
に土地をとられ、働く場所がないので現金収入
役として雇われているのは沖縄の人たち。基地
れようとしている。そして、それに反対する人
つ い 先 だ っ て、 中 日 新 聞 か ら 取 材 に き た。 レイが来て、高江に新しいヘリパッドがつくら
間は、どこでも飛んで行ける。
て飛んでいくのか。瞬間移動する訳ではない。 ベトナム戦争の訓練をしているところだ。標的
沖縄全体が「標的の村」
れない。
入国管理ができないと、
このようなケー
スが今に日本全体で起こってくる怖さがある。
日本全土で自 由 に 低 空 飛 行 訓 練
また、
「低空飛行訓練」も自由に行えること
そういう低空訓練を止められないのですか、と
訓練が沖縄だけでなく全国で行われるからだ。 止められない」というと驚いていた。北海道か
訓練ルートには「ピンク」
「グリーン」
「ブルー」 らも取材が来た。「演習地外に砲弾が着弾した。
で敗訴になり今、最高裁に上告している。
皆さん、「スラップ訴訟」というのをご存知
ト」は「ある」とも「ない」とも米軍は認めて
しなさい。政府が払ってくれます」と答えた。「事
すからね」「被害が出た時には、日本側に請求
などのルートがある。
中国地方の
「ブラウンルー 「しようがないですね。訓練を受け入れたので
士を雇って裁判を闘わないといけない。迎え撃
な賠償金を要求する。反対する人たちは、弁護
する人びとがいると彼らを裁判に訴える。膨大
「ブラウン」
「イエロー」
「オレンジ」
「パープル」 先生、この問題はどうでしょう?」というので、 か。たとえば、大企業が工場建設をする。反対
いない。
「北方ルート」は認めていない。しか
広島ジャーナリスト
15
全国で関心をもって見てくれるようになった。 聞 く の で、「 地 位 協 定 で 認 め ら れ て い る か ら、 たちが国から訴えられ裁判になった。1、2審
になっている。オスプレイの問題が今ようやく
15
≪ 26 ≫
つためにはお金がいる。そのコストを考えると
沖 縄 国 際 大 学 に ヘ リ が 墜 落 し た が、 四 国 の
ではと思われるほどだ。しかし、政権を取った
伊方原発の近くにも米軍ヘリが墜落している。 後、「なかったこと」にされた。
は通行妨害禁止を命じる判決を受けた。裁判は
もいた。
「通行妨害」という理由だ。中心人物
現場にいたこともないという当時7歳の女の子
住民たちを訴えた。訴えられた十何人の中には
日 本 政 府 は こ の よ う な「 ス ラ ッ プ 訴 訟 」 で
いる中、国民は無頓着になっているのではない
日本全土が「標的」にされた訓練が進められて
ている。以前、米軍機が墜落して死傷者が出た
九州大学にも落ちている。横浜の緑区にも落ち
る」となっている。これは、日本の主権が適用
の使用には、原則として日本の法令が適用され
に墜落事故が起きていたからではないか。今、 し、 そ の 意 向 を 尊 重 す る 」 と か、「 施 設・ 区 域
という記事はベタ記事だった。それほど日常的
されるということだ。
「環境保全」では、「日米
が審査する。その際、地方自治体の意見を聴取
8年ごとをめどに使用計画書を提出し、日本側
大変なので、反対運動をやめてしまう。
今も続いている。政府が反対運動を押さえつけ
だろうか。地位協定にはほかに「治外法権」と
そ の 改 定 案 で は、 基 地 に つ い て「 米 軍 は、
るため、司法を使うということが沖縄で行われ
法の空白を埋めている。より重 要なのは、「低
両国の環境基準のより厳しい方を採用する」と
実行されれば、在日米軍基地問題は解決するの
ぜ実行しなかったか、残念だ。
これだけ立派な改定案をつくっているのに、な
次裁判権を持つ」とも書いている。画期的だ。
外の犯罪は公務中のものであっても日本が第一
に関する日本の法律を適用する」「施設・区域
「基地に居住する米軍関係者に、外国人登録
訓練禁止」と書いている。
ているにもかかわらず、改定案には「低空飛行
オスプレイの配備を決めて低空飛行訓練を許し
定案」をつくっていた。非常によくできている。 空飛行訓練は禁止する」となっていることだ。
2 0 0 8 年 3 月 に 民 主 党 は「 地 位 協 定 の 改
ている。
「標的の村」になりたくないというこ 「密約」の問題がある。
とで闘っている住民が、訴えられている。
実 は、 沖 縄 全 体 が「 標 的 の 村 」 に な っ て い
きん
る。これは、金武町のブルービーチで米軍のヘ
リパッドからヘリが上昇したところだ。潮干狩
りをしている住民に、米兵が銃を構えている。
襲撃訓練だ。標的は住民。オスプレイが沖縄で
飛ぶ―ただ遊覧飛行している訳ではない。住宅
エリアの上を飛ぶということは、住宅エリアで
攻撃訓練をしているということだ。それが日本
中で行われる。
高知新聞が高知に飛来するオスプレイの取
材をよくやっている。訓練は最初、九州でやる
受益と被害の分離…原発と共通
最後に原発の問題について。福島の原発問題
が起きた時、沖縄の基地問題と共通点が多いな
とわかった。ひとつは「安全神話 」。原発をつ
くるとき、誰もが安全だということを信じ込ま
された。私が小学生のころ、東海村に原子の灯
2013.12.20
のかと思ったら、
前日になって四国に変わった。
なぜか。いろいろ取材すると、
「朝鮮戦争のと
きと似ているんだよね」という話になった。朝
鮮戦争のときは四国上空での訓練が頻発した。
朝鮮半島の地形とよく似ているからだそうだ。
ないか。
「朝鮮有事」がそろそろ準備されているのでは
沖縄・高江に作られた「ベトナム村」を見物する米軍幹部
(前泊博盛編「日米地位協定」から)
≪ 27 ≫
る。今日も、もしかしたら大雨のせいで、汚染
まった。止めるすべのないまま、今に至ってい
ころが、こんな結果になってしまい被曝してし
躍していた。
「夢の世界」が描かれていた。と
が と も っ た。 あ の こ ろ は「 鉄 腕 ア ト ム 」 が 活
を一つひとつなくしていかなければ、安全保障
発の差別、いろんな差別がある。こうした差別
題の差別、放射能の差別、基地問題の差別、原
Aとしてまだ持っている。被爆者差別、部落問
近代化したはずの日本という国が、差別をDN
よう」ということを提案している。
新しい時代、「軍事基地から経済基地へ転換し
いけている」と思われるのが心外だ。私たちは、
なっているのにまだ、「基地があるから食って
こういうことを、いつまで続けるのだろうか。 自分たちでカネを作っている。こういう時代に
経済的デメリットよりももっと大きな問題
水が海に流れ出ているかもしれない。安全だと
誰も問わない。責任を追及しない。
「なかった
を訴えても聞いてもらえないのか。
被害を受ける地域は札びらを振り回され、危険
需工場があったからだ。軍事拠点は攻撃を受け
事基地があり、大本営があった土地であり、軍
言っていた人は、どこに行ってしまったのか。 の問題も原発の問題も解決していかない。なぜ、 がある。広島は、なぜ原爆を落とされたか。軍
ことにする」
「見なかったことにする」
。これは
る。 も う 一 つ の 原 爆 投 下 候 補 地 だ っ た 小 倉 も
そう。それから長崎。軍事拠点になっていると
日本人のDNAかもしれない。
ころは先制攻撃を受ける。中国の国防白書の中
沖 縄 に は 基 地 が あ り、 そ の た め に 振 興 策 を
もらっているのだから、我慢してあたりまえだ
「 受 益 と 被 害 の 分 離 」 と い う 共 通 点 も あ る。
被害者と受益者は別だ。沖縄では基地に土地を と、よく言われる。しかし、基地がない方が儲
私 は、 基 地 返 還 の た め の 経 済 問 題 を 研 究 し
の軍事力を持つ拠点を最初に叩く。パールハー
ている。なぜか。私が「敵国」だったら、最大
には、最初に攻撃する場所として沖縄と書かれ
ている。嘉手納基地は、成田空港の倍の広さが
バーを日本軍が最初に叩いたように。だから沖
かる時代に、実はなっている。
ある。成田の滑走路は2500㍍と4千㍍の2
とられた人はかつて被害者だった。今は、基地
億円もらってい
の内側に自分の土地をとられた人には軍用地料
本だが、嘉手納 は4千㍍が2本。経 済効果は、 縄が最初に叩かれる。それが怖い。だから、基
がある。一番多い人は、毎年
る。基地のフェンスの外に土地を持っている人
成田は約1兆円。雇用効果は6万4千人。嘉手
防衛大臣をしていた森本敏氏は退任会見で
地をどけてほしい、と言っている。
は、売るに売れない。被害だけを受ける土地と
納は、国民の税金を使って250億円くらいの
いうことで被害者。受益者と被害者が分離され
ている。
けの差がある。滑走路2本のうちの1本を、岩
を食うタコだ。雇用は2300人ほど。これだ
ざるを得ないのは、他の地域が引き受けてくれ
音だ。軍事的理由はないが、沖縄に基地を置か
的理由から沖縄に置くしかない」と言った。本
お金を生み出している。税金を使い、自分の足 「沖縄に基地を置く軍事的理由はないが、政治
があるのか。しかも「東京電力」の原発が。福
国のように軍民共用にすればどれだけの経済効
め、福島が犠牲になっている。
生まれるのか。この国には、1等国民、2等国
側は6500万円の経済効果を上げている。基
フェンスの内側は1㌶当たり2500万円。外
沖縄の基地問題は解決することを示している。
明確な差別だ。皆さんが引き受けてくれるなら、
な ぜ、 国 民 の 中 で 犠 牲 に な る 人 と 受 益 者 が
民、
3等国民がいるのだろうか。この国には「菊
を見直す時期に来ているのではないか。
被害者と受益者が分離されている安全保障政策
かも、2500万円を生み出すと言っても日本
そ し て も う 一 つ「 差 別 の タ ブ ー」 が あ る。 の税金を食べているだけだ。外の民間経済は、
があるのかもしれない。
のタブー」に「安保のタブー」
、「原発のタブー」 地はお金を生み出さない時代に入っている。し
果が上がるかを試算している。普天間基地は、 ないという政治的理由だ。これは沖縄に対する
島は東北電力管内。首都圏に電力を供給するた
福 島 原 発 の 問 題 も そ う だ。 福 島 に な ぜ 原 発
25
広島ジャーナリスト
≪ 28 ≫
やら・ともひろ 1962年沖縄県北谷町生まれ。
フ ィ リ ピ ン 大 を 卒 業 後、 沖 縄 タ イ ム ス 入 社。 年 か
年間ハワイ大の東西センターで客員
年6月に退社後はフリーランスライター。
2007年から
ら基地問題担当。論説委員、社会部長などを務めた。
92
社)などがある。
その海兵隊はどこから来たか。1945年に
太平洋戦争が終わり、 年に朝鮮戦争が始まっ
による基地問題が大きなシェアを占めている。
故、騒音、レイプ、おおもとが海兵隊。海兵隊
面積比で言うと
%が海兵隊だ。だから事件事
「改憲と国防 混迷する安全保障の行方」(共著、旬報
研究員。
1
75
沖縄抑止力論は本当か
基地問題を基礎から考える
人が聴き入った。要旨は以下の通り。
12
た。朝鮮戦争で出兵した、あるいは休戦後に韓
なぜ沖縄に米軍が集中しなければならないの
か。あるいは、それは日米同盟の絶対条件なの
ら、 近 々 世 界 一 に な る。 ア ジ ア の 5 カ 国( 日
み、ドイツは7万人ぐらいいたが半分になるか
ア で 一 番 多 い = 図 1。 米 軍 再 編 が 世 界 的 に 進
それがなぜか
として海兵隊が岐阜、山梨に分散配備された。
国 に 駐 留 を 始 め た 米 陸 軍、 そ の 後 方 支 援 部 隊
か。政府が言っている地理的優位性、あるいは
年代か
年 代、 日
上 が っ た。
地運動が盛り
本全土で反基
ら
う。
因だったとい
政治環境が原
は日本全体の
山 梨、 あ る い
説には岐阜や
て い な い。 一
はよく分かっ
㌻ 図 2。 理 由
年に沖縄に移転してきた=次
抑止力というのは本当なのか。きょうは、そう
た1台に詰め込んでいる。これが沖縄の基地問
物を運ぼうとする。その荷物の4分の1をたっ
025%。例えば5千台のトラックで大きな荷
分の1が駐留する沖縄は2300平方㌔で0・
と 8 9 0 万 平 方 ㌔ だ。 2 万 4 千 人、 全 体 の 4
本、韓国、フィリピン、タイ、オーストラリア)
%が駐留
が同盟を結んでいる。その国土面積を全部足す
沖縄にアジアの
万人。では、そ
こんな国はない。イタリアやドイツも基地は
受け入れているが、陸海空軍を分散して置いて
縄の兵力構成は、 %が海兵隊であと陸海空軍。
図1
したおおもとの話をしたい。
住民の会主催。市民ら約
現状を例示し、沖縄の基地運用の改善を訴えた。岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部
基地の地理的優位性について明確に反論した。そのうえで屋良さんは、イタリアの基地管理の
沖縄の基地問題で発言を続ける元沖縄タイムス記者でフリーランスライター屋良朝博さんが
8月 日、廿日市市の廿日市商工保健会館で講演し、日本政府が強調する沖縄抑止力論や沖縄
屋良 朝博
のうち沖縄は何パーセントを占めているだろう
この地域に配備された米軍は
地域で見た場合、どのくらいの集中度なのか。 題だ。
沖縄には、日本国内にある米軍基地の %が
集中していると言われる。では、アジア太平洋
74
いる。沖縄には陸海空軍と海兵隊全部いる。沖
10
50
60
25
%。北朝鮮と向き合っている韓国
か。答えは
54
25
とほぼ同じ。日本国内全体で3万6千人。アジ
61
2013.12.20
60
50
24
56
≪ 29 ≫
そうとしている。これを彼らは「思想との戦い
舎を修繕したりして、アメリカ・シンパを増や
た、海兵隊のアジア太平洋地域での展開図=図
ら6千人死んでいった。テロとは戦いようがな
るか。その国の警察や軍隊が行かないような山
い。そこで、民生支援活動をしてアメリカシン
奥の村に入り、若い人たちをリクルートして鍛
3。先ほども言ったように、海兵隊はこの地域
年には砂川闘争があった。そのころ、沖縄
えて兵士にし、都市部を攻める。この動きの根っ
をぐるぐる回っている。だから、沖縄に基地が
~
性より政治的な意味合いが大きかったのではな
こを断つのに躍起だ。米軍は共同軍事訓練に合
に海兵隊が来た。朝鮮半島を警戒するため日本
いか。
わせて、テロが〝繁殖〟しそうな寒村へ出向き、 あれば日本を守ってくれると思う人たちは多い
に配備された海兵隊が来たのは、軍事的な合理
海兵隊は6カ月沖縄にいて、フィリピン、タ
イ、グアム、オーストラリアをローテーション
民生支援活動を積極的に実施している。軍医が
)
」とも言う。
パを増やしている。テロはどうやって力を蓄え ( War
of
Idea
これは海兵隊司令部のホームページにあっ
で回っている。回りながら海兵隊は何をしてい
サー(沖縄の民家などに置かれる魔よけの像)
だろうが、大きな勘違いだ。彼らは決してシー
るか。軍事演習をする一方で、民生支援サービ
スをしている。これを彼らは「テロとの戦い」 医療ボランティアを行ったり、壊れた学校の校
ア 太 平 洋 地 域 に ア メ リ カ 軍 の 存 在 を 示 し て、
て、 同 盟 国 の 協 力 関 係 を 確 認 し な が ら、 ア ジ
で は な い。 彼 ら は 回 遊 魚 の よ う に 展 開 し て い
図3
と言っている。
なぜこれがテロとの戦いなのか。
テロはどこから来るか分からない。ハイテク兵
56
それが地域の安定に資すると考えている。
「地理的優位性」は虚構
万 人 規 模 の 兵 力 を 動 か す。 で は な
54
か 地 理 的 優 位 性 と か い う。 在 沖 海 兵 隊 の 定 数
は1万8千人と言われるが実際は1万2千~
万 人 投 入 し た。 こ の う ち 海 兵 隊
1 万 4 千 人 し か い な い。 湾 岸 戦 争 の 時 も、 米
国は全軍で
機 で ピ ス ト ン 輸 送 し た。 例 え ば カ リ フ ォ ル ニ
ア の 部 隊 を 太 平 洋 越 し に 運 ん だ。 ヘ リ 1 7 7
機、ジェット機、輸送機194機。 万人を3、
50
図2
太 平 洋 戦 争 で 沖 縄 に 上 陸 し た 部 隊 も 万 人。
ベ ト ナ ム 戦 争 も ピ ー ク 時 に 約 万 人。 大 き な
戦争では
50
ぜ、 そ の 部 隊 が 沖 縄 な の か。 政 府 は 抑 止 力 と
50
は 9 万 3 千 人 動 員 し た。 米 本 土 か ら 大 型 輸 送
50
器を駆使する米軍が、イラク戦争では4千人か
50
1945年8月終戦▽ 年6月朝鮮戦争▽海
兵隊配備 年8月 岐阜、山梨▽ 年 沖
縄へ移転
53
広島ジャーナリスト
56
≪ 30 ≫
ち、そのうえで戦闘までできるのはアメリカし
4カ月で移動できる。そのぐらいの機動力を持
まったとか、全国紙の中にも書いているところ
オスプレイが沖縄に配備されたから尖閣の守
りが堅くなったとか、中国に対する抑止力が高
か。
台湾海峡を同時ににらむことができる場所だと
への米軍基地配備を説明する時に、朝鮮半島と
けない。輸送機では動けないので船を使う。そ
を起点に、平壌と台北までの距離を比較して見
載せていく。これは合理的なのか。沖縄と佐賀
佐世保の艦船が沖縄まで南下して兵士と物資を
の船は佐世保に配備されている。政府は、沖縄
機い
かない。その米軍の一部、海兵隊1万8千人が
いう。仮に、朝鮮 半島で何かが起 きたとする。
沖縄にいて普天間飛行場に軍用機が約
がある。沖縄は、CH に代わって間もなくM
オスプレイが 機体制になり、1機ごとの
は120㌔だ。なんとCH でカバーできるの
2051㌔。佐賀だと2002㌔だ。
佐賀は沖縄よりも地理的にいいし沖縄より
も抑止力は高いという結論になる。福岡も沖縄
600㌔。なぜそうなるかといえば、3時間飛
内陸奥地まで飛べる。しかし行動半径で見ると
=図5。沖縄に置いたって九州に置いたって差
あいい。鹿児島も2056㌔だから変わらない
例 え ば、 航 空 部 隊 は 佐 賀 空 港 を 使 い 、 大 分
はなくて、むしろ彼らが動きの拠点としている
間作戦行動
の 日 出 生 台 を[使 っ て 陸 上 部 隊 は 動 く。 そ う す
ると佐世保との連携がうまくいくはずだ。だか
べる軍用機
をして1時
ら沖縄じゃないといけないと言っている政府の
佐 世 保、 船 が い る 近 く に か た ま っ て い た 方 が
間かけて帰
ずっと効率的に動けるはずだ。
るというの
説明は全くおかしい。九州北部でも海兵隊は機
[1]陸上自衛隊日出生台演習場(大分県玖珠町など)。
西 日 本 最 大 の 陸 自 の 演 習 場。 在 沖 海 兵 隊 に よ る 沖 縄 県
道104号線越え実弾射撃訓練の負担軽減措置として、
日出生台など本土の演習場5カ所で実弾砲撃演習が行
わ れ て い る。 日 出 生 台 で は 実 施 計 画 が 浮 上 し た 時 か ら
地元自治体や住民が反対している。
[1]
が普通の飛
能する。
らないとい
は各国を回
パターンで
洋での行動
兵隊の太平
び方だ。海
だと1時間
図5
飛んで1時
の航続距離は3900㌔ある。中国まで行けば、 よりいい。熊本はほとんど同じ。高知はまあま
は沖縄本島周辺だけだった。確かにオスプレイ
46
CH の行動半径は140㌔。沖縄本島の南北
こ れ は 公 開 さ れ て い る 地 図 = 図 4 = だ が、 る と 沖 縄 か ら 平 壌、 台 北 ま で の 距 離 の 合 計 は
総人員は576人。それで何ができるか。
輸送兵員数は 人から 人になる。輸送できる
V
46
24
24
る。有事には米本土から押し寄せてくるという
のが常識なのに、沖縄のこの兵力で何ができる
図4
2013.12.20
12
22
46
60
≪ 31 ≫
ど突然、司令部と補給部隊はグアムに動かすこ
が、その合意に具体的に現場が応じていく現場
る日本の識者もいなければ、マスメディアも全
い。なぜこういう再編が可能かを説明してくれ
軍事合理的に海兵隊の運用をみると理解できな
させてもらった。
を太平洋司令部に取材するためにハワイに留学
普天間の航空部隊は沖縄に残っていられるのか
司令部と補給部隊はグアムに行け、戦闘部隊と
接の海兵隊関係者から説明を受けられるとわく
広島ジャーナリスト
とができるという。この理由が知りたかった。 監督がいるのはハワイの太平洋司令部だ。何で
年に少女
覚 え て お い て ほ し い こ と だ が、 ア メ リ カ は
然説明しなかった。政府もそれは沖縄の負担軽
沖縄に固執し な い 米 軍
暴行事件が起きた。その翌年、米軍は日本政府
減だからというだけで合理的な説明がなかっ
沖縄に固執しているわけではない。
に対して北海道でもいいということを提案して
わくしながら取材に行った。「何で分散配置が
になった。ずっと疑問に思っていたことが、直
の米軍再編を担当する責任者に取材できること
ようやくコネができて太平洋海兵隊司令部
いる。それをペンタゴン(米国防総省)に申し
た。
し、ハワイ大学の東西センターという政府系シ
できるのか、これまであなたたちは地上部隊、
出ている。
そ れ か ら 昨 年、 米 軍 再 編 の 見 直 し が 行 わ れ
ンクタンクの客員研究員という肩書をもらって
年に会社を1年間休職
たが、米軍は1500人を岩国へ持っていこう
ということで僕は
と提案した。それを蹴ったのが日本。その時の
航空部隊、後方支援の三つの機能が常に近くに
性とかは全くなく
そこには軍事合理
る、 と い う だ け だ。
たから俺たちはや
ルドがやれと言っ
防長官、ラムズフェ
当時のアメリカ国
ド な ん だ 」 だ っ た。
てはラムズフェル
は 一 言 だ け、
「すべ
その担当者の説明
と 聴 い た と こ ろ、
てきたではないか」
用できないと言っ
ないと海兵隊は運
いて一緒に行動し
ハワイに留学した。何でハワイかというと、政
図7
府と政府の合意はワシントンと東京でなされる
心配かけて申し訳ありませんでした」
と謝った。
年に日米
沖縄からみていると、なんじゃこれはだ。
在 日 米 軍 の 再 編、 2 0 0 5 年 ~
で合意されたのは、グアムに海兵隊司令部と補
給部隊の8千人を移動し、沖縄には地上戦闘力
と航空部隊を残すという内容だった=図6。で、
沖縄から8千人減を実現するには普天間の辺野
古移設を受け入れなければだめと交換条件がつ
いた基地負担軽減策が合意された。この時、僕
はびっくりした。長い間海兵隊を取材している
けれども、一般的な常識として海兵隊というの
は陸の部隊と航空部隊、それと物資を補給する
後方支援部隊の三つが必ずワンセットで動かな
ければならない。ワンセット必ず同じ場所にい
て常日頃から訓練して連携をとらなければなら
ないと海兵隊はずっと説明してきている。だけ
図6
民主党の玄葉光一郎外相は山口県に行って「ご
07
95
06
≪ 32 ≫
こ れ ぐ ら い 大 き な 変 化 に か か わ ら ず、 オ ス
部隊はスカスカになる。ダンプカーが軽自動車
隊が集中していないと抑止力が保て
プレイが来たからよかったね、と言っている新
機能するとアメリカ政府も日本政府
ないとずっと言ってきた日米両政府
聞社がある。尖閣が守れるからよかったと言っ
になるぐらいの大きな変化だ。
が あ っ さ り こ う い う こ と を や る。 彼
てるテレビのコメンテーターがいる。おかしい。
も 認 め て い る。 こ れ ま で 沖 縄 に 海 兵
らが言っていることは全然信用でき
を全然言わないで、沖縄に基地が集中していれ
抑止力は低下しているではないか。彼らはそれ
MEUとい
ない。
沖縄に残る部隊は
フィリピンとかをぐるぐる回り訓練
ている強襲揚陸艦に乗ってタイとか
( Marine Expeditionary Unit
)は海
兵 遠 征 隊 と 訳 す。 佐 世 保 に 配 備 さ れ
コ ン パ ク ト な 展 開 部 隊 だ。 M E U
軍事的にはそうなる」と言った。MAGTFと
に機能する状態であれば沖縄でなくてもよい。
えば日本の西半分のどこかでMAGTFが完全
当然、森本敏防衛相(当時)はプロだから知っ
ば安心だと、頓珍漢なことを言っている。
する。沖縄には司令部は残るけれども、 ME
いうのは〝 Marine Air Ground Task Force
〟の
頭文字で海兵空陸機動部隊。地上兵力、航空部
日の離任会見で「例
て政治が決めたことだから軍は政治の命令に
Uは年間9カ月は遠征していてほとんど沖縄に
隊、後方支援部隊の三つの機能を一体運用する
月
従ってやる、政治の決定に従ってオペレーショ
いない。だからほとんど沖縄にいないのが海兵
12
25
るときにMAGTFと呼ばれる。西日本に機動
再編見直しで沖縄を出る戦闘部隊
中心だ。海兵隊は航空部隊とか海軍の船とかの 展開部隊が機能するような基地があれば沖縄で
サポートを受けて、地上部隊を前線に送り出す。 なくてもいいと、現職の大臣として言った。そ
は沖縄に残すという、見直し前とまるっきり逆
かというと、戦闘部隊を沖縄から出し、司令部
それがグアムに退くと、沖縄の海兵隊というの 方向に進まないのかということについて、森本
は、機動力は第 MEUでできているけれども、 さんは「政治的に許容できるところが沖縄にし
役は地上兵力。その地上兵力の大本が第4連隊。
かないので、だから簡単に言ってしまうと、軍
な ん で そ れ が 議 論 さ れ な い の か。 そ う い う
に な っ た = 前 ㌻ 図 7。 要 す る に ど っ ち で も よ
本体部隊のほとんどがグアムとかに移り、在沖
のことを認めた最初の大臣だ。
普天間の航空部隊も佐世保の船も輸送手段で主
第4連隊というのは沖縄の海兵隊の地上部隊の
アムに行く5千人のうちに第4連隊が入ってい 区などの後方支援部隊から必要な分だけ兵力を
ることを知ったときにはこれもびっくりした。 持ってきて、編成部隊を作って海外に展開させ
ブの地上部隊、普天間の航空部隊、牧港補給地
編成の仕方を言う。キャンプハンセン、シュワ
ている。だから昨年
ンプランを書き直し、新しい部隊の配置に基づ
隊になる。
年 に 米 軍 再 編 が 見 直 さ れ、 改 訂 版 で は グ
31
さ ら に、 昨 年 再 編 の 見 直 し で ど う 変 わ っ た
ちになった。
に1年間留学したのかと思って、実に暗い気持
たからそうするということを聞くためにハワイ
いて運用を考えていくだけという。政治が決め
う、 船 に 乗 っ て 動 く 2 千 人 単 位 の
31
かったということだ。どう配備しても海兵隊は
31
2013.12.20
12
≪ 33 ≫
論になる」と言った。簡単に言えば、海兵隊の
ると、沖縄がつまり最適の地域であるという結
事的には沖縄でなくてもよいが、政治的に考え
みを負わされた。そういう二分化が顕著だった
していた。沖縄は安全保障の矛盾や痛み、苦し
て基地を拡張した。日本全体は経済発展に邁進
民に向け、追い出して、家を壊し、田畑を潰し
が移って来た。新しい基地が必要だ。銃剣を住
アメリカからみると中国は絶対に大事な貿
リカと中国は安全保障上の関係を深めている。
だけれども、日中が熱くなっている時に、アメ
ている。おかしくないか。日本はアメリカ頼り
そしてハワイ沖では救難訓練を米中合同でやっ
係であって、経済的にも安全保障上も米中はど
計では中国の半分以下だ=表参照。そういう関
だ。日本は4位だけれども貿易高、輸出入の合
易パートナーだ。中国はカナダに次いで第2位
運用上、沖縄でなくても軍事的な合理性は整え
られるけれども本土に持っていくとみんな反対
のが海兵隊の本土から沖縄への移転だった。
「尖閣に巻き込むな」が米の本音
するから沖縄の方が政治的にはいいと言ってい
る。あらかじめ沖縄の問題は日本の中で無視し
ている。そうした方が政治的にいいということ
だ。これが、沖縄の基地問題の真実だ。
年のアメリカ企業
国内での安全保障観、安全保障論の変質だ。特
マート。ウォルマートはほとんどの商品が中国
の売上高トップはスーパーマーケットのウォル
んどん関係を深めている。
に尖閣問題。日本が尖閣を国有化した。それに
最 近、 沖 縄 に と っ て 憂 慮 す べ き 事 態 は 日 本
も抑止力は変わらない。西日本のどこでもいい
海 兵 隊 は 沖 縄 で な く て も 機 能 す る。 九 州 で
のだが、メディアも分析しない。沖縄の地理的
製、メード・イン・チャイナだ。売り上げがな
兆円。中国にも多数の
平国家主席を訪問している。その時にどういう
そのころパネッタ米国防長官が北京に習近
あがっていることを前提に考えたとき、尖閣を
店舗を展開している。そういう関係が既にでき
んと4692億㌦、約
がない。中身を知らないまま、沖縄問題をとら
話し合いがされたかというと、中国も環太平洋
た。
えている。それは政治の責任だ。軍隊は政治が
合同演習(リムパック)に参加しませんかと誘っ
が終わった年だ。日本は高度経済成長に向かっ
「もはや戦後の経済ではない」と書いた。戦後
1956年。その年、経済企画庁が経済白書に
海兵隊が本土から沖縄に移って来たのは
期に、ソマリア沖で海賊対策の米中共同訓練を、
るアメリカはパネッタ・習近平会談をやった時
威は現実かもしれないが、日本が頼りにしてい
めぐって日本国内で中国脅威論が出ている。脅
ている。冷戦構造というのはないのに、尖閣を
めぐる日中のもめご
決めればそれに従うのは民主主義国家では当た
た。その前の年にロシアが参加している。ロシ
中国がすねたのでアメリカは中国を誘いに行っ
洋地域の西側連合の大規模な軍事演習だ。その
ていく。沖縄でそのころ何があったか。海兵隊
されているというのが沖縄問題の実態、
真実だ。 軍事演習に中国もロシアも参加する時代になっ
抑止力とか地理的優位性とかいう言葉で覆い隠
いる。
沖縄の問題は国内政治の問題だけれども、 た。リムパックは中国とロシアを包囲する太平
沖縄に置いた方が現実的だということになって
て政治の責任だ。
だけどそれが全く議論されず、 アを呼ぶのに、何でおれたちを呼ばないのかと
り前だ。誰が軍隊に基地を与えているのか。誰
海兵隊は何をやってるという記事を読んだこと
優位性をいうが中身について論じた解説とか、 対して中国では市民が暴動に近い抗議活動をし
12
が予算や装備を与えているのか。政治だ。すべ
47
部からみたアジア政
ト ル が「 米 政 府 の 内
を 出 し た。 サ ブ タ イ
顧録「オバマと中国」
だ っ た 人 が、 最 近 回
C)アジア上級部長
安 全 保 障 会 議( N S
近までアメリカ国家
ダ ー と い う、 つ い 最
ジ ェ フ リ ー・ ベ ー
てものすごく煙たい。
とはアメリカにとっ
米貿易パートナー(2013 年 4 月)
国
輸出
輸入
合計 比率%
カナダ
98.5 110.6 209.1
16.8
中国
37.1 130.3 167.4
13.5
メキシコ
73.5
91.0 164.5
13.3
日本
20.8
46.3
67.1
5.4
ドイツ
15.8
35.7
51.6
4.2
単位:10 億㌦
順位
1
2
3
4
5
広島ジャーナリスト
≪ 34 ≫
策」
。 そ の 中 で、 尖 閣 問 題 に 触 れ て い る。「( 中
国漁船衝突事件で)
日本の対応は不器用だった。
に配備されている海兵隊は大西洋全域と地中海
をカバーしている。
解 決 策 は あ る の か。 沖 縄 基 地 問 題 を と に か
カリフォルニアから来ても同じだ。展開方法は
海外移転の「花道」で解決も
起きるなんて、ばかげた、こっけいな考えだ。
く解決しなければいけないと思って提案があ
変わらず、プレゼンスの示し方も全く変わらな
だ か ら、 ア ジ ア 太 平 洋 地 域 に 展 開 す る の に
オバマ政権は、熱くなった日中の市民による挑
る。この図は、基本的な海兵隊の動きを示して
い。沖縄に拠点があれば安上がりということぐ
中国と日本がロック(岩)をめぐり武力衝突が
発行為が収まってほしいと願うばかりだった」
いる= ㌻の図3参照。沖縄にはほとんどいな
いる。これがアメリカの本音だ。なのにオスプ
の撃ち合いに巻き込まないでくれ』
」と書いて
『どうか我々を誰も住まない岩をめぐる中国と
月3日の記事で「安倍晋三首相が来月ワシント
なって初めてワシントンを訪れる際に出した2
軍の準機関紙がある。そこが安倍さんが首相に
ラリアに集まり、船でぐるぐる回ればアジア太
ても、再編による移転先のグアムとかオースト
出る、つまり集合場所でしかない。沖縄でなく
受けた後、
緊急なメッセージを受け取るだろう。 が、航空部隊も含めて沖縄に集合してここから
ンを訪れる。首相は親密な同盟国として歓迎を
平洋地域における海兵隊のプレゼンスは低下し
る。沖縄はどういう役割かというと、戦闘部隊
い う 部 隊 だ。 そ れ ら は 船 に 乗 っ て 展 開 し て い
のうち9カ月は海外に展開している MEUと
い。米軍再編で沖縄に残るのは司令部と、1年
いたくない。沖縄で日本政府が海兵隊を維持す
すると、思いやり予算は使い勝手がいいから失
とと交換条件にするのはあると思う。
力だ。海兵隊が必要としている、欲しているこ
り方も考えられる。これは政治力であり、外交
どうぞみなさん、出口はここですよ、というや
た人たちは結構粘る。じゃなくて花道を作って、
わけだ。とはいえ、おまえら出てけ、と言われ
らいだ。軍事的には日本に駐留しなくてもいい
沖縄に拠点を置かなくても、
ハワイから来ても、
ス タ ー ズ・ ア ン ド・ ス ト ラ イ プ ス と い う 米
レイが来たから尖閣防衛力が高まったと意図的
ない。あるいはハワイやカリフォルニアを起点
今 海 兵 隊 が 何 を 欲 し て い る か。 幾 つ か 例 示
に言っている。
だ。そういった中で憲法改正という話が盛り上
安 全 保 障 が 語 ら れ て い る。 と て も 危 な い 状 況
が歪んで、実態を知らないままイメージだけで
が日本国内の世論をかっ歩している。言論空間
イが配備されたから喜ぶ、とてもおかしな議論
たら動いてくれるだろうと信じ込んでオスプレ
人で構成する部隊が船に乗ってインド洋に展開
アからMEU、沖縄に残る MEUと同じ2千
に両方、4万5千人ぐらいいる。カリフォルニ
ニアに沖縄よりずっと大きな基地がある。そこ
海岸のノースカロライナと西海岸のカリフォル
ではない。全世界に展開している。アメリカ東
海兵隊は太平洋地域だけに展開しているの
らは欲しがっている。海兵隊は太平洋地域に高
ストがかかる。輸送に関しては高速輸送船を彼
とっては懐の痛みは変わらない。
うという条件提示をしてみてはどうか。日本に
で使っているように軍事面でなく、非軍事で使
ストラリアで使っていいと、けれども日本国内
出ていく部隊に対しては、海外、
グアムとかオー
るために払っている思いやり予算を、沖縄から
がっている。非常に困ったものだ。アメリカは
いる。カリフォルニアには三つのMEUがあり、 速輸送船を1隻、オーストラリアの船会社から
して、その地域で海兵隊のプレゼンスを示して
年間契約でチャーターしている。それを日本の
にしてもいい。
尖閣で動くつもりはないという事実を知ったと
船会社が提供することができるのかどうかだ。
おかしくないか。勝手に頼って、なんかあっ
きに、どうなるのか。実態的議論をずっと避け
6カ月ローテーションで展開してインド洋全体
あ と 分 散 配 置 す る か ら 輸 送 コ ス ト、 通 信 コ
てきた日本の政治に責任がある。僕らにも責任
をカバーしている。東海岸のノースカロライナ
31
があると思うが、本当に岐路に立っている。
2013.12.20
29
31
≪ 35 ≫
トリアとの国境に近いところにあるアビアノ飛
めている。私が取材したイタリア北部、オース
ラは約200㍍下の谷底に落ちて乗っていた
場のゴンドラのケーブルを翼で切断し、ゴンド
り、道路の修復をしたり。こういうことは自衛
い環境の同飛行場にはF 戦闘機が 機配備さ
行場。背後にアルプスの山並みを抱く素晴らし
事故機は一部損傷したものの自力でアビアノ
飛行場に帰着した。出迎えたのはイタリア軍警
人が即死する事故を起こした。
もう一つは民生支援活動。例えば医療サービ
スを提供したり、学校の傷んだ校舎を修繕した
隊でも憲法の範囲内でできることなので米海兵
今のままでは普天間基地は残る。普天間の移
転先はやっぱり普天間ということになりかねな
外交力の問題だ。
いいのではないか。これは日本の政治というか
いう面で日米同盟を広げることも視野に入れて
に訓練も一緒にやろうということになる。そう
や災害復旧などの活動で連携を図る。そのため
る。さらに、将来的には中国も入れて民生支援
国にも同じサークルの中でやることを呼びかけ
も、日米にとどまらずアジア太平洋地域の同盟
ながる。そんなことを提案してはどうか。しか
隊と一緒にやれるし、米側のコスト削減にもつ
で米軍が勝手に何かできるということは決して
塔に陣取っている。イタリアの知らないところ
主権を握っている象徴としてイタリア軍が管制
リアは空域を米軍に丸投げはしていない、空の
いる。パイロットとの交信は米兵が担当。イタ
この飛行場の管制塔にもイタリア軍の兵士が
必ずいて、滑走路に降りた航空機の誘導をして
代表が常駐していて監視役をしている。
る。米軍の使っている基地の中にイタリア軍の
の2人が毎日話し合って基地の運用を決めてい
についてはイタリア軍の司令官が責任者で、こ
については米軍の司令官、基地の使い方・管理
イタリア軍の基地司令官の2人。航空機の運用
れている。運用しているのは米空軍の司令官と
で軍事裁判が開かれた。その中でパイロットは、
かった。裁判権は米側に持って行かれ、米国内
起訴。結局は地位協定に阻まれ裁判は開かれな
イロットの取り調べをしたうえで、両方の罪で
当たるとして、飛行場のある地域の検察官がパ
ことが分かった。
該機の検分を実施。その結果、パイロットが事
の押し問答になったがイタリア側は譲らず、当
返せと主張して取り巻いた。「返せ」
「返さん」
物であり、しかも軍の機密を満載しているので
あると包囲した。米軍も、この機は当方の所有
察。事故機を証拠物として差し押さえる必要が
被害者
人に対する殺人と証拠隠滅の罪に
故前後の飛行記録のビデオ映像を消去していた
い。だから、米海兵隊の中身を分析した議論を
ない。イタリアは米軍基地の中でも主権は行使
張した。結果として殺人については無罪、証拠
飛行前に渡された地図にケーブルは記載されて
そんなイタリアで1998年2月、「カバレー
ゼの悲劇」と呼ばれる事故が起きた。カバレー
隠滅についてだけ有罪で6カ月の懲役と不名誉
残 念 な 結 末 と は い え、 イ タ リ ア は シ ュ ー ト
おらず気づかなかった、これは不可抗力だと主
ゼはスキーのリゾート地として知られ風光明媚
除隊で軍から追放となった。
ば、当然岩国基地だって変化せざるを得ない。 している。
艦載機部隊も動かざるを得ないわけで、両方を
セットで交渉する糸口になるかもしれない。
なところ。ここで米軍は渓谷を縫うように低空
飛行訓練をしていた。レーダーに捕捉されない
は最後までやるべきことはやった。その時の外
外 国 で は ど う か。 イ タ リ ア に は 基 地 使 用 協 定
米軍のEA6Bプラウラー電子偵察機がスキー
山あいや谷間を縫って飛行訓練をする。そこで、 相、後に首相にもなったランベルト・ディーニ
氏にインタビューした時に彼はこう話した。「オ
というのがある。基地ごとに細かく使い方を決
を放った。ゴールはならなかったが、イタリア
ようにして敵地の奥深く入り、攻撃をしてレー
オスプレイ一つとっても、基地運用で米軍は
住民を無視している。これが日本の実態だが、 ダーに捉えられないよう逃げ帰る。そのために
主権放棄せぬイタリア
20
広島ジャーナリスト
20
そろそろすべき時ではないか。海兵隊が新たな
50
ローテーションを組んで沖縄からいなくなれ
16
≪ 36 ≫
合意がなされた。日本ではまったくそうはなら
住 民 へ の 配 慮 と い う 点 で は「 公 共 の 安 全 に
軍が決める。日本では、すべての管理権を米軍
ルブライト米国務長官に国際電話をかけて『あ
に委譲し、基地を自由に使わせるというシステ
妥当な考慮をする」とあるが、何が妥当かは米
基地管理ではイタリア軍の司令官が主導権
ず、今日まで来た。
を握っているという話をしたが、協定ではなん
れは単なる航空機事故ではない。いかれたパイ
ロットの殺人事件だ。
我々が裁判をする』と言っ
た」
。こんな外相が日本にいたか。
兵隊員が大学構内に入ってきている。普天間基
が落ちた直後の映像を見ると、既に多くの米海
の占領状態になる。沖縄国際大にヘリコプター
米 軍 機 事 故 が 日 本 で 起 き る と、 日 本 は 米 軍
の米軍に対する弱腰ぶりを見てきただけに、米
許可を出さないだけだよ」と答えた。日本政府
聞くと司令官は「滑走路を閉鎖するだけ、使用
い方をした時に対抗策、抑止策はあるのか」と
空機が無茶な飛び方をするなど無茶な基地の使
ど徹底しているかというと、取材で「米軍の航
平時と有事の区別もきちんとしている。どれほ
が日本の基地提供のありようだということだ。
政府は何も言えない仕組みになっている。それ
じゃない。米軍が決めて米軍が動くことに日本
担保されている。沖縄の人たちはたまったもの
と飛行回数も決めているし、時間も決めている。 ムが出来上がっていて、それが日米地位協定で
地のすぐ近くだから、ヘリが落ちるのを見た米
軍は同盟国に強い立場で臨んでいると思ってい
日本は即座に 「 占 領 」 状 態
兵たちがすぐにフェンスを乗り越えなだれ込ん
たが、そうではなかった。
る。日本の国の主権意識の希薄さ、国と国との
えが返ってき た。「リポーゾ(スペ インではシ
令官の言葉は本当か」と尋ねると、こういう答
こ の 地 の 新 聞 の 記 者 と 話 す 機 会 が あ り「 司
スの空軍基地ですら周辺環境に配慮した造りに
飛行場があって周りは一面緑。米アンドリュー
工作物は配置できない。ベルギーにも米空軍の
んど畑だ。イタリアの航空法に基づいて周囲に
リアのアビアノ飛行場では滑走路の周りはほと
各 国 に あ る 米 軍 基 地 を 写 真 で 見 る と、 イ タ
日米同盟支持者とも議論必要
できた。日本のメディアを排除して現場処理に
関係がどうなっているかがこの二つの事故の比
エスタ、昼寝の習慣)の時に芝刈りをすると警
なっている。カリフォルニアのミラマー海兵隊
当たったが、こんな横暴が日本では許されてい
較でよくわかる。
察が飛んでくる。同じようにリポーゾの時にF
航空基地は滑走路から一番近い住宅でも約2㌔
で は、 イ タ リ ア は な ぜ こ ん な に 強 く 出 る こ
は飛ばないよ」。沖縄では午前2時、3時で
を管理するどころではない。大きな違いがある。 ど ち ら も 基 地 ぎ り ぎ り ま で 住 宅 が 密 集 し て い
も飛ぶ。これでは眠れないという状況で、基地
とができ、基地管理権を行使できるのか。イタ
リアは二つの仕組みで基地を運用しているから
基地の使われ方。イタリアは二重構造になって
いなんかほとんど変わらないが、一番違うのは
んど変わらない。犯罪が起きた時の容疑者の扱
年に結んだ基地使用協定。 日米地位協定の中身はヨーロッパの協定とほと
学などがある。滑走路の端から一番近い住宅ま
中にあり、近辺には小学校、中学校、高校、大
険な飛行場と言われている普天間に至っては街
ので本当の町域は2割しかない。世界で一番危
る。嘉手納も町域の8割が基地に取られている
離れている。これに対して日本の横田や厚木は
だ。一つはNATO(北大西洋条約機構)の地
換えてドイツ国内法を米軍に提供している基地
いて、イタリア軍が基地を管理するシステムが
で160㍍しかない。
冷戦構造が崩壊し、
年代初頭から「平和の配
にも適用できるようにした。
ドイツはこれより早く、
位協定。
もう一つは
年代の終わりに
できているのに、日本の場合はすべての管理権
年にボン協定を書き
当」という言葉が国際的に普及し、それまでの
こ ん な 環 境 で、 日 本 に あ る 米 軍 基 地 は 運 用
を米軍に丸投げしている。
2013.12.20
16
軍事優先から住民優先の運用に変えようという
80
93
95
90
うのか。このまま基地を置きたいという人にし
されている。それを一体いつまで続けようと言
とも日米同盟を支持している、あるいは米軍駐
はずっと問い続けなければいけないが、少なく
独立国に外国の軍隊がいるのはおかしい。それ
いか。
きれば、いろいろ解決策が見えてくるのではな
くさんある。そういう人たちと平たい議論がで
年 月、国は本当は、滑走路移設の埋め立てに
海 の 裁 判 の 住 民 側 訴 え に よ る と、 1 9 9 6
出訴期間過ぎ不適法
ても、今のような状況が果たして持続可能なの
かを考えるべきではないか。
当然のことながら、 留を支持している人たちにも問うべきことはた
岩国「海の裁判」「山の裁判」相次ぎ判決
よって基地機能を強化し、厚木基地(神奈川県)
からの米空母艦載機移駐の受け皿とすることを
目論でいたが、それを隠し、航空機騒音の緩和
市街地開発事業が廃止され、事業跡地が米軍住
処分を受けた。2006年5月には
から滑走路沖合移設事業のための埋め立て承認
や安全性の確保などが目的と偽って山口県知事
宅に利用されるのは違法として、地元住民が開
厚木から岩国へ空母艦載機
年までに
米軍岩国基地の滑走路沖合移設の埋め立てを
めぐり、岩国市の住民が山口県知事の埋め立て
発事業認可取り消し処分の取り消し(事業の再
月
日に広島高裁であった。筏津淳子裁判長は「埋
(以降、海の裁判と略)の控訴審判決が
め立て承認の効力が消滅した場合、国は原状回
復義務を負う」として、国に原状回復義務なし
機を移駐させると
14
年1月、国は艦載機移駐が可能なように滑走
開)などを求めた訴訟(以降、山の裁判と略) いう在日米軍再編のロードマップが発表され、
は「 訴 え の 利 益 が な い 」 と し て 請 求 を 却 下 し
更」承認を申請、同2月知事は変更を承認した。
路東側に誘導路を新設するなどの埋め立て「変
の判決が広島地裁であった。梅本圭一郎裁判長
た。
年 2 月、 山 口 県 を 相 手 に 山 口
地裁に提訴。①知事の埋め立て承認処分は、基
人が
張強化を図る国・山口県など行政にだまされて
地機能の強化という真の目的を隠し、偽るとい
住民
きたと訴えていたが、両判決はいずれも請求本
住民側は両裁判の意見陳述などで基地の拡
告の請求を却下した。原告弁護団によると国に
う国の脱法行為を見過ごしてなされたので取り
途の変更」に当たるのに関係図書の告示縦覧や
11
という。埋め立て事業で国に都道府県知事の承
せた。住民側は高裁判決を不当として上告、地
地元市町村長の意見聴取などの必要手続きがと
(編集部) 裁判決に対しても 月
た。
られず、瀬戸内海環境保全特別措置法が求める
日、広島高裁に控訴し
消されるべき②変更承認は、「埋め立て地の用
とした山口地裁の一審判決を取り消した上で、
59
る基地行政のチェックを期待した原告を失望さ
08
原状回復義務を認めたのは「おそらく初めて」 案の判断に踏み込まずに門前払いし、司法によ
18
13
日 に は、 岩 国 市・ 愛 宕 山 地 区 の 新 住 宅
27
認内容・条件を守るよう警鐘を鳴らした。
同
12
出訴期間が過ぎているなどとしてあらためて原
08
11
承認処分は違法として取り消しを求めた訴訟
基地行政チェックせず門前払い
11
違法なら国にも原状回復義務
≪ 37 ≫
広島ジャーナリスト
≪ 38 ≫
原告側は控訴。広島高裁の控訴審で、「埋立
再度の環境影響評価も実施されていないので違 請求を却下した。
法などと主張、①と②の処分の取り消しを求め
の意のままに用途やレイアウト、工法は変更の
し放題で当初とは似ても似つかぬ巨大な新基地
号への寄稿で強調してい
しており、社会通念に照らして現状回復は不可 提出。埋め立て承認が違法として取り消された
復義務を負う」と述べ、一審判決を取り消した。
滅した場合、国が都道府県知事に対して原状回
広 島 高 裁 判 決 は「 埋 め 立 て 承 認 の 効 力 が 消
た。
法では国に原状回復義務は免除されていない」 が誕生する」と本誌
能」とし、
「埋立法では国がなす埋め立ての場 場合、国に原状回復義務があるかどうかが争点
年 6 月「 埋 め 立 て 工 事 は 竣 功 とする本田博利愛媛大教授(当時)の意見書を
合に埋め立て承認が取り消されて承認の効力が となった。本田氏は「国が違法な埋め立てを行っ
しかし、判決は①について、行政事件訴訟法で
した。計画では約102㌶に住宅約1500戸、
同公社の事業認可申請に対し、建設大臣は認可
住宅市街地開発事業の都市計画を決定。同月、
愛宕山地区にニュータウンを建設する愛宕山新
山の裁判の判決によると、山口県は1998
年2月、山口県住宅供給公社を事業主体として
旧地権者も原告適格なし
定し請求は不適法として却下した。
されるべきなどと判示。変更承認の処分性を否
する個別公物管理法に基づく手続きの中で検討
体的な利用計画の問題点は埋め立て地を対象と
律ではなく、埋め立ての動機や埋め立て地の具
埋立法は埋め立て地の利用について規律する法
規模の変更を直接の原因とするものではない。
を直接の原因とするもので誘導路などの配置や
の騒音や大気汚染、墜落の危険性は艦載機移駐
法として却下した。また②について、現状以上
であり、出訴期間を過ぎているので請求は不適
消滅しても、国は法的に原状回復義務は負わな ても原状回復の義務なしとなると、万一、沖縄
14
取り消しの訴えができるのは処分の日から1年
国は好き勝手できない
96
い」と判示。原告の「訴えの利益なし」として 県知事が辺野古の埋め立てを承認したら、米軍
山口地裁は
た。
12
「海の裁判」弁護団コメント
大することを指摘しているが、埋め立てによっ
て直接生じるものではないので、処分性がない
などだ。ただ、①について、 年の段階では沖
合移設事業の目的は、騒音と墜落の危険性の軽
減なので、訴えを起こせるはずがなく、それを
現時点で言われることに原告たちは納得できて
いない。
さ ら に、 空 母 艦 載 機 部 隊 な ど が 移 駐 し た 場
合、埋め立てによって騒音が増大するのではな
いとする判決は、埋め立て承認処分を争うので
はなく、移駐を争うべきだと言わんばかりだ。
この点については、日米両政府が決めているこ
とについて私たちが争うことは難しい。ではど
うしたらよいのかと報告集会でも会場から質問
があった。弁護団からは、現在、爆音訴訟で移
駐差し止めを争っており、爆音訴訟に今日の判
決を活かしていかなければならないことや裁判
だけではなく、運動においても移駐を中止させ
ていく必要性を訴えた。裁判だけではなく、運
動も両輪だということをあらためて確認させら
れた。
2013.12.20
13
月 日、 海 の 裁 判 控 訴 審 判 決 に つ い て 岩
国基地訴訟弁護団が出したコメント要旨は次の
通り。
広島高裁判決は仮に国の埋め立てで違法性
が認められた場合は、国にも原状回復義務があ
ると認定し、一審の判決は取り消された。国が
埋め立てを行う場合に原状回復義務があるとい
う判決はおそらく初めてと思われる。沖縄にお
いても仮に仲井真弘多知事が辺野古の埋め立て
を承認した場合、一審判決では、一度承認して
しまうとあとは国が好き勝手にできるという恐
れがあったが、この判決によって、知事が承認
したとしても国はそのあと好き勝手にできず、
原状回復の可能性があることになった。
原 告 の 訴 え は 却 下 さ れ た。 そ の 理 由 は ①
1996年の承認処分に対する出訴期間が過ぎ
ている②艦載機部隊が移駐してきたら騒音が増
11
≪ 39 ≫
ため愛宕山を整地する際に生じた土砂は岩国基
ニュータウンを建設するもので、住宅地造成の
小学校、福祉施設などがある人口5600人の
中止すること に合意。公社は翌
月、「新
口県副知事と岩国市長は事業が未完成の段階で
用土砂の搬出が終了して3カ月後の同6月、山
却した。ところが、2007年3月、埋め立て
ことにより得られる利益だが、事業認可取り消
た生命・財産権・環境権などは事業が完成する
いて定めた都市計画法で保護されていない。ま
事業地の旧地権者の優先購入権は事業認可につ
設住宅着工戸数や地価が落ち込んでおり、事業
し処分を取り消しても事業の完成を義務付ける
年
地の滑走路沖合移設の埋め立てに利用されるこ
とになっていた。愛宕山地区の地権者は良好な
次 い で、 事 業 認 可 取 り 消 し 処 分 に 手 続 き 的
として請求を却下した。
込まれず、事業施行の必要がなく
定したことを受け、同日、中国地
方整備局長は事業認可を取り消し
何を言ってもだめなのか
を廃止する法律上の根拠はないと
地元住民 人は 年7月、国を
相手に広島地裁に提訴。都市計画
開発法(新住法)という特別な法律を使って開
強い失望の念を感じた。愛宕山は新住宅市街地
た。われわれは何を言ってもだめなのかという
提訴以来、4年4カ月で判決があったが、聞
いていてだんだん力が抜けていく感覚に陥っ
主張。事業認可取り消し処分は公
岡村寛原告団長 益上の必要性がないのに跡地を米
発した土地だ。この法律を使って全国に過去、
た。
軍住宅に利用するという不当な目
件以上の案件が中止を一切せずに実行されて
かの力が国土交通省にかかって、国は法律的根
いる事実を裁判所は何と考えているのか。何ら
前の日米の了解であそこを米軍基地に提供しよ
り違法として取り消し処分の取り
償を求めていた。
律的に新住法の何たるかを裁判所はもっと真剣
消しを求めた。また違法な処分で
広島地裁判決は、事業認可取り
消し処分は行政行為の撤回であ
に検討すべきでなかったか。そこまで考えてい
基 づ き 行 う こ と が で き る と 判 示。 ない、安易な判断だ。
うという思惑もその中に絡んでいたと思う。法
り、当初の行政行為の授権規定に
拠もないのを承知のうえで事業を中止した。事
的で行われ、裁量権を逸脱してお
09
精神的損害を被ったとして国家賠
60
19
償請求を棄却した。
違法や裁量権の逸脱・乱用はないとして国家賠
年2月、県が事業を
09
中止する内容の都市計画変更を決
しを申請。
なった」として事業認可の取り消
域の住宅需要が著しく多いとは見
効果がないので訴えの利益はなく原告適格なし
11
を継続すると多額の赤字が見込まれる。岩国市
08
ニュータウンの建設に期待して公社に土地を売
海の裁判で広島高裁に向かう原告と支援者(11 月 13 日、広島高裁前)
広島ジャーナリスト
≪ 40 ≫
小中学校の上を超低空飛行
四国・オレンジルートをたどる
スをたどった。米軍の垂直離着陸輸送機オスプ
低空飛行訓練を始めてから、最も頻繁に飛行し
レイが3月から米軍岩国基地を拠点に本土での
ているのがオレンジルートだ。ここでも、授業
中国地方の山間部と並んで米軍機の低空飛行
の被害が深刻な四国の山間地域を 月5日、「オ
スプレイの配備と米軍機低空飛行を許さない市
中の小・中学校の上を超低空で飛ぶなど米軍機
上流にある早明浦ダムは高さ106㍍、貯水量
今回は早明浦ダムから加茂発電所へのルート
を陸路でたどった。四国最大の河川・吉野川の
練をする。
形に似ているといわれる四国山地で低空飛行訓
撃目標にして爆撃訓練するなど、朝鮮半島の地
西条市の四国電力加茂発電所の3カ所を模擬攻
の切目崎と高知県東洋町の甲浦変電所、愛媛県
国基地へ至る=上の写真参照。途中、和歌山県
明浦ダム(本山町・土佐町)付近を経由して岩
点に紀伊水道を渡って四国に入り、高知県の早
オレンジルートは、ピースデポ代表湯浅一郎
さんによると和歌山県日高川町の椿山ダムを起
朝鮮半島を想定か
を脅かしていた。
(沢田正)
は傍若無人に暴走飛行を繰り返し、住民の安全
民ネットワーク」のメンバーとともに訪ね、オ
(湯浅一郎さん提供)
2013.12.20
10
レンジルートと呼ばれる米軍機の低空飛行コー
オレンジルート
㊧中央の山の中腹に見えるのが大川小・中学校。
今年6月、後ろの山を越えて来た米軍機が学校
の上を超低空で飛び、子どもたちを驚かせた
㊤米軍機墜落現場に立つ看板
≪ 41 ≫
吉野小学校がある。運動公園で本山町の嶺北高
た本山町の運動公園があり、そのそばの高台に
ダムのすぐ下流の左岸におわん形の屋根をかけ
業中にいきなり「ドーン」という轟音とともに
もひどい低空飛行に遭ったという。3年生の授
から1年半になるが、今年6月にこれまでで最
も同じ建物を使っている。教諭は大川中に来て
日午後、米空母艦載機A6E
飛んでおり、外にいた生徒が「オスプレイが飛
どんなにか恐ろしかっただろう。
前田幸二さんの本誌 号への寄稿によると、今
ち9回は午後9時以降だった。
11
まかり間違えば大惨事になるところだった。
日までの町の記録では米軍機の飛来計
回のうち午後6時以降の飛来が 回あり、う
年5月
13
を出す観光施設「村のえき」になっていた。そ
当時、現場から約400㍍のところにあった
保育園は、今は大川村の産品の販売や特産料理
16
こに昼食を食べに来た大川中学校の男性教諭に
49
教諭は 年の墜落事故時は、統合されて今は
なくなった本山町の吉野中に勤務していた。当
米軍機の低空飛行の状況を聴いた。大川中学校
㊨正面奥が早明浦ダム。右側の白い建物は
本山町の運動公園の屋根。米軍機は運動公
園の上を通りダムへ飛ぶ
㊤早明浦湖の墜落現場
94
広島ジャーナリスト
は西日本2番目で四国の水瓶として知られる。 は村のえきの対岸の山の中腹にあり大川小学校
校野球部のトレーニングを見ていた男性は「米
月
小中併設校で最年長の中3生徒がイスから
度近い急旋回をしたためパイロットが失神
飛びあがるほどの衝撃だったのだから小学生は
んできた」と知らせにきたこともあるという。
で
事故機は高度120~150㍍を時速800㌔
イントルーダー攻撃機が訓練中に早明浦湖に墜
1994年
会・ 嶺 北 平 和 委 員 会 が 立 て た 看 板 が あ っ た。 も、やめてほしいと怒っている。オスプレイも
体育の授業をやっていると機影が見える。生徒
は4月から7月にかけて飛行が多かった。外で
で、空から落ちてきたかと思ったという。今年
校の南側の山を越えていきなり飛んできたの
構えることができる。しかし、6月のときは学
中断するが、来るときは遠くで音がするので身
きて西の上流の方へ飛んでいく。轟音で授業が
米軍機はいつもは東の下流の方から飛んで
男子生徒が驚いてイスから飛びあがった。
軍機はこの上をよく飛ぶが、すごい音がする。 校舎が震え、机に向かって感想文を書いていた
東の方(下流側)から来て、吉野小の体育館の
上を通って早明浦ダムの方へ行く」と米軍機の
横暴ぶりを訴えた。
墜落現場近くに小中学校
ダムから早明浦湖沿いの道路を上流へ約 ㌔
進 む と 湖 は ほ ぼ 度 で 左 に 大 き く 曲 が る。 曲
10
がり切った地点の道路沿いに高知県平和委員
90
14
落、
米兵2人が死亡した事故現場を示す看板だ。
10
したと報告されている。民家への被害はなかっ
教諭は本山町に住んでいるが、米軍機は夜も
たが、数百㍍先には保育園、学校などがあり、 飛んでいると怒りをあらわにした。本山町職員・
90
≪ 42 ≫
㊤大川小学校と大川中学校の校舎
㊦中央の白い建物が本山町運動公園。その右
が吉野小。手前は吉野川。左手上流に早明浦
ダムがあり、米軍機は吉野小と運動公園の上
を通り、早明浦ダムへ飛ぶ
時は低空飛行がすごかったという。吉野中は吉
野 小 の す ぐ 北 側 に あ り、 米 軍 機 は 学 校 の 上 を
早明浦ダムの方へ150~160㍍の高度で飛
ぶので、パイロットの表情はわからないが、ヘ
ルメットが見えたという。墜落当日も学校の上
を飛ぶ轟音を聞いた。夕方になって投光噐を照
らした米軍のヘリが飛んできて上流の方へ向か
い、
米軍機が早明浦湖に墜ちたと聞いたという。
「オスプレイも 飛 行 」
大川村の次に模擬攻撃目標の加茂発電所に向
かった。国道194号を愛媛県西条市に向かい
県境の寒風山トンネルを抜けると加茂川渓谷に
㍍ぐらい下った加茂川の左岸にあった。出
入る。加茂発電所は渓谷の中の国道沿いの斜面
を
ある発電所では
番目。発電所本体は川岸の地下にあり、地上
力1700㌔㍗、四国電力の
には3、4棟の小屋があるだけ。国道沿いの斜
面を一直線に下り発電所へ通じるクリーム色の
㍍ぐらいで両岸はⅤ字形の渓谷。こん
導水管がなければ発電所があるとは思えない。
川幅は
な狭い空間を猛スピードで飛ぶのならいつ事故
が起きても不思議ではないと思った。国道沿い
にある一番近い民家は発電所から数百㍍の距離
だ。発電所の位置を教えてくれた民家の主人は
「軍用機はよく飛ぶ。オスプレイも飛んでくる。
川の向こう側の山の方から来て、家の上を通り
2013.12.20
30
ぬけていく」とやりきれない口調だった
㊤オレンジルートで模擬攻撃目標となっている
加茂発電所の地上施設。左は加茂川
㊦導水管が目印か
65
50
50
≪ 43 ≫
な
ぜ、今「国防軍」なのか
日弁連パネル討議から
解釈改憲による集団的自衛権の容認、国家安全保障基本法案や国家安全保障会議(日本版N
SC)設置法案、特定秘密保護法案の国会提出、新防衛計画大綱の策定と、日本の安全保障を
めぐって大きな動きが相次ぐ。その先には、憲法改正を待たず、事実上の国防軍設置がもくろ
月3日、広島市中
まれているという。
「戦争のできる国づくり」へと向かう安倍晋三政権を批判し、日本の進む
べき道筋を探るパネルディスカッション「なぜ、今『国防軍』なのか」が
区の広島国際会議場で開かれた。主催は日本弁護士連合会。半田滋・東京新聞論説委員、孫崎享・
元外務省国際情報局長、李鐘元・早稲田大教授、浜矩子・同志社大教授らが、多角的に論争を
展開した。一般市民や高校生も含め、約700人が聴き入った。直前にあった青井未帆・学習
半田
孫崎
院大教授の講演「
『国防軍』にすることの意味」と合わせ、要旨を紹介する。 (文責・編集部)
自衛隊の現状と落差
米国と一体化は危険
李
浜
は解釈改憲で憲法を骨抜きにしようという動き
〈第Ⅰ部〉
が進みつつある。7月の参院選で自民は大勝し
条にある発議要件の
たが、改憲勢力と言われる日本維新の会とみん
なの党を合わせても憲法
議員数3分の2に達しなかった。安倍晋三首相
は投票日翌日の会見で、憲法改正を急がないと
明言した。一方で集団的自衛権行使は引き続き
検討を進めると話した。2006年の第一次安
倍内閣で、私的諮問機関・安全保障の法的基盤
の再構築に関する懇談会(安保法制懇)
をつくっ
た。このメンバーで集団的自衛権の行使を認め
るべきだという報告書が一度は出された。昨年
月に安倍首相が返り咲き、今年2月にこの懇
7 月 の 参 院 選 結 果 を 受 け て、 改 憲 は で き な
いが解釈改憲で進める、となった。これは安倍
さんには都合のいいことだ。国民投票で万一否
決されたら、
正当性を失ったとして退陣になる。
そうした危険を冒すことなく、解釈改憲によっ
て 日 本 を 集 団 的 自 衛 権 行 使 が で き る 国 に す る。
集団的自衛権は、外国が攻撃を受けた場合、自
[1]
国が攻撃されたと同じにみなして武力行使する
こ と。 既 に 内 閣 法 制 局 長 官 を 交 代 さ せ た。[外
[1]内閣法制局長官に8月8日付で外務省出身の小松
一 郎 氏( 1 9 5 1 ~) が、 駐 フ ラ ン ス 特 命 全 権 大 使 を
経て就任した。小松氏は就任時の各紙インタビューで、
集団的自衛権行使を禁止しているとする従来の憲法解
釈を見直す考えを示した。これまで同長官は総務、法務、
財 務、 経 産 4 省 の 出 身 者 に 限 ら れ、 憲 法 解 釈 を 担 当 す
る 第 1 部 長、 法 制 次 長 か ら の 昇 格 が 慣 例 化 し て い た た
め、 小 松 氏 の 就 任 は 安 倍 政 権 に よ る 異 例 の 人 事 と 見 ら
れている。 広島ジャーナリスト
96
談会が再招集され議論が再開された。
12
10
半田滋 自民党は憲法改正を掲げながら、実
淘汰より共生世界を
東アジア枠組み重要
安倍改憲路線
≪ 44 ≫
◆パネリストの横顔◆
半田 滋(はんだ・しげる)
東京新聞論説兼編集委員。下野新聞社を経て東京新聞(中日新
聞)入社。1991 年から防衛省(庁)自衛隊取材を担当。自衛隊
の権限や活動について、新聞や月刊誌に論考を多数発表。著書に
「集団的自衛権のトリックと安倍改憲」
(高文研)
「
、改憲と国防」
(共
著、
旬報社)
「防衛融解 指針なき日本の安全保障」
、
(旬報社)、
「『戦
地』派遣 変わる自衛隊」
(岩波新書)= 2009 年度日本ジャーナ
リスト会議 ( JCJ ) 賞受賞、
「自衛隊 VS 北朝鮮」
(新潮新書)、
「闘
えない軍隊」
(講談社+α新書)など。
務省から抜擢した小松一郎さんは、一度も内閣
自衛隊「目立とう」作戦
される新防衛計画大綱に反映させると思われ
法制局で勤務したことがない。集団的自衛権の
る。来年の通常国会では集団的自衛権行使容認
12
行使は容認派と言われている。
保法制懇の座長代理、北岡伸一・国際大学長が
や海外での武力行使、国民に国防義務を課す国
安倍首相が先日、アメリカで表明した「積極
的平和主義」に沿う報告書を出し、 月に予定
座長になっている。二つの懇談会で重複するの
一方でもう一つ懇談会が立ちあげられた。安
全保障と防衛力に関する懇談会(安防懇)。安
は北岡さん一人だ。集団的自衛権行使は必要だ
2013.12.20
家安全保障基本法案を提出していくだろう。
伊藤 真(いとう・まこと)東京弁護士会=第Ⅱ部のみ参加。
(日弁連配布資料をもとに作成)
という最初の安保法制懇の報告書をまとめた一
浜 矩子(はま・のりこ)
同志社大大学院ビジネス研究科教授、エコノミスト。1975 年
一橋大卒、三菱総合研究所入社。1990 年から 98 年まで三菱総研
初代ロンドン駐在員事務所長。2002 年 10 月から現職。専門は国
際経済学。映像・音声メディアの時事ニュース番組にマクロ経済
に関するコメンテーターとして出演。著書に「中国経済危うい本
質」(集英社新書、2012 年)
、
「誰も書かなかった世界経済の真実
~地球経済は再び切り刻まれる~」
(アスコ、2012 年)、「2013 年
世界経済総崩れの年になる」
(共著、東洋経済新報社、2012 年)
など。
それが、今までの自衛隊活動とどれほどかけ
李 鐘元(リー・ジョンウォン)
早 稲 田 大 大 学 院 ア ジ ア 太 平 洋 研 究 科 教 授。 ソ ウ ル 大 中 退
後 ,1982 年来日。国際基督教大卒、東京大大学院法学政治学研究
科修了。東北大助教授,
立教大教授。2012 年4月から現職。その間、
米国プリンストン大客員研究員、朝日新聞アジアネットワーク客
員研究員など歴任。著書に
「東アジア冷戦と韓米日関係」(1996 年、
大平正芳記念賞、米国歴史家協議会外国語著作賞など受賞)、「国
際政治から考える東アジア共同体』
(共著、2012 年)
、
「歴史とし
ての日韓国交正常化」
(共編著、2011 年)など。
人なので、結論は分かり切っている。
孫崎 享(まごさき・うける)
元外務省国際情報局長。1966 年東京大法学部中退、外務省入省。
英国、
ソ連、
米国
(ハーバード大学国際問題研究所研究員)、イラク、
カナダ(公使)勤務を経て駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、
駐イラン大使を歴任。2002 年から防衛大学校教授。2009 年3月
退官。著書に「日本外交―現場からの証言―」
(第2回山本七平
賞受賞、中央公論新社)
、
「日米同盟の正体」
、
「日本の領土問題―
尖閣・竹島・北方領土―」
「不愉快な現実」
、
「戦後史の正体」「検
証尖閣問題」
「これから世界はどうなるか」など。
≪ 45 ≫
を 目 立 た せ よ う と し て い る。 米 軍
所 つ い て い る。 日 本 人 と い う こ と
目 立 つ。 日 の 丸 も 1 人 に つ き 4 カ
国内と同じ緑色を基調としていて
行 使 は し な か っ た。 迷 彩 服 も 日 本
ている。いわゆる海賊から守るための活動、国
の哨戒だけで世界の哨戒活動の7割をカバーし
いる。P3C哨戒機が2機派遣され、アデン湾
献している。ソマリア沖では外国船を防衛して
路を直したり、建物を建てたりして国造りに貢
砂漠の中で目立たないよう薄茶色
い。東日本大震災で見られたような災害派遣活
結果、日本は幸いにして一度も戦争をしていな
の迷彩服のどこにも星条旗はない。 造りのための協力、そういうことをやってきた
が ベ ー ス だ。 日 本 の 車 両 に は、 わ
敵対するために来ているのではな
姿だ。
ざわざ漢字まで入っている=写真。 動は年間600回に及ぶ。これが自衛隊の今の
い、 と い う こ と を 見 せ る た め「 目
万人死んでいる。退役軍人庁とい
うのがあり、年間予算5兆円だ。戦死者を出す
戦争などで
る。一方、アメリカ軍はベトナム戦争、イラク
今まで自衛隊は戦争していないから戦死者は
いない。訓練中に亡くなった人は1831人い
立とう」作戦をやってきた。
イラクを飛ぶ航空自衛隊のC
1 3 0 は、 毎 回 の よ う に ミ サ イ ル
警報が鳴りアクロバットのような
10
発のロ
違いがある。
孫崎享 日本社会は異常な社会になってきて
いる。中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」が
帰国後昨年8月までに陸上自衛官
して、生徒には刺激が強すぎるからやめようと
がとられた。松江市教育委員会が漫画を読み直
洋上補給をする。そういう後方支援までは行う
のアフガニスタン攻撃に伴い、米艦船に燃料の
国連平和維持活動(PKO)に参加する。米軍
のペルシャ湾掃海艇派遣で始まった。翌年には
離れているか。自衛隊の海外活動は1991年
い。
とを検証しない。それが日本の特徴かもしれな
るが、日本の防衛省は反応してない。過去のこ
空自で5倍と極めて高率だ。PTSDが疑われ
松江市教育委員会を縮み上がらせた右翼男と
危険な組織」と記事を載せた。在特会の元京都
が、週刊文春9月5日号が「はだしのゲン騒動
いた。ほとんどの新聞がこれを報道しなかった
した。これは他の自衛官と比べると陸自で 倍、 思ったのか。そうではなかった。右翼が脅して
支部長が脅していた。このような脅しがあるに
現在は南スーダンでPKOをやっている。道
で
人、 航 空 自 衛 官 で 9 人 が 自 殺
3600人がイラク派遣されたが、 一時、松江市内の市立小中校図書館で閉架措置
隊 は 5 5 0 0 人、 航 空 自 衛 隊 は
カ軍のような海外で武力行使をしてきた軍隊の
飛 行 を し な け れ ば な ら な か っ た。 軍隊は後が大変だ。ここにも自衛隊と、アメリ
回で
そういう中で自衛隊は活動してき
た。 陸 上 自 衛 隊 は
22
ケ ッ ト 弾 攻 撃 を 受 け た。 陸 上 自 衛
13
よ う に な っ た。 し か し、 自 衛 隊 は 海 外 で 武 力
16
10
広島ジャーナリスト
≪ 46 ≫
でそれもある」ということをいった。
もかかわらず、官房長官は一時「教育的な配慮
特定秘密 保護法案、国防軍、積極的 平和主義、
異常な空気 の中で、集団的自衛 権、憲法改正、 く、アメリカの安全しか考えていない。
た。大手メディア、新聞、テレビで、わが社は
かしいことをおかしいと言えない社会」とあっ
「少年H」という映画があり、
宣伝文句に「お
外交カードをより強めるためにではないかと
の指摘もある。非常にきれいな言葉だが、私か
うこと。平和という口実のために軍事を使う。
積極的平和主義。積極的とは、軍事を使うとい
安全保障環境改善のための行動。これが日本の
軍事介入。リビア、シリアもそうだ。別の言葉で、
考え方が起こっているかというと、人道主義的
みんなつながっている。アメリカで今どういう
加担しないといえば、日本への攻撃はあり得な
北朝鮮の問題も、日本が北朝鮮の軍事的破壊に
副首相の時のように棚上げということをやって
首相と周恩来首相、
一つは尖閣諸島の問題がある。
まず外交的解決求めよ
おかしいということをおかしいと言える社だと
らすると米国追随のための行動。このような形
い。
るのは無理があると話していた。
年の田中角栄
な ぜ そ ん な こ と を し な く て は い け な い か。
画を撮るのをやめると言った中で、世界がぎし
で米国と一体化するのは、日本の安全に反する
言える社がどれだけあるか。宮崎駿さんが、映
ぎし音をたてている時代にファンタジーをつく
ことになってきている。
外交的努力をせず逆に外交的に危機をつくっ
ている。世界を見ると、 年に国連ができて以
年の園田直外相と鄧小平
いれば紛争は起きない。外交的に解決できる。
来、侵略戦争はほとんどない。後は領土紛争と
これは、ミサイル発射前にこちら側から攻撃し
にしない。それでも他国が攻撃してきた時は個
国家の主権を守る。二つ目は、武力行使は絶対
団的自衛権とは、相手が攻撃してきた時の行動
て撃つということだ。集団的自衛権を考える人
ア メ リ カ か ら 考 え る と、 自 分 の 国 に 飛 ん で
別自衛権と集団的自衛権がある。国連憲章の集
で「私を右翼の軍国主義者と呼びたいのであれ
だ。日本でいう集団的自衛権はイラク戦争、ア
10
10
[2]
来るミサイルを日本が攻撃して止める。アメリ
たちの口から直接聞いた。
迎撃ミサイルは飛んでも高度100~200 れは国連憲章とまったく相反する概念のもの
㌔。アメリカへ行くミサイルは千㌔上空を飛ぶ。 だ。国連憲章にはいくつかの柱がある。一つは、
していいか、というのがある。だから我々は積 アメリカの行動だ。集団的自衛権は国連憲章で
極的に出なければいけないという。ありえない。 認められた権利だから持つ、と言われるが、こ
集団的自衛権を考える際、北朝鮮のミサイル
が日本上空からアメリカに行く、黙って見過ご
72
フガニスタン戦争という形で、こちら側から行
ご く 最 近、 安 倍 首 相 が 米 国 ハ ド ソ ン 研 究 所
45
カの利益を 点とする。失うものは0点。撃た
北朝鮮はプラス 点、マイナス 点のとんとん。
~
年、 ア メ リ カ が 日 本 の 自 衛 隊 を ア メ
93
リカの戦略のために使おうと言った時、日本が
92
れた北朝鮮は撃ち返す。日本向けノドンミサイ く戦争だ。国連が禁じる行動をむしろしようと
ルを200~300発持つから、これを撃つ。 している。
10
では日本は。マイナス 点だけ。自分の国でな
10
2013.12.20
78
ば ど う ぞ 」 と 言 っ て い る。[開 き 直 り だ。 こ の
[2]9月 日、ハーマン・カーン賞受賞式でのスピーチ。
故 ハ ー マ ン・ カ ー ン 氏 は 米 国 の 有 力 保 守 系 シ ン ク タ ン
ク で あ る ハ ド ソ ン 研 究 所 の 創 設 者。 同 賞 は 国 家 安 全 保
障 に 貢 献 し た と さ れ る 指 導 者 に 毎 年 贈 ら れ て お り、 安
倍首相は米国人以外では初の受賞。 25
≪ 47 ≫
主権国家の枠組みだけであれば、政権が代われ
つながっているからだ。日本国がどこに向かお
考えたことは、まず自衛隊を人道支援や災害救
ば日本はどの方向にも走れる。そこに大きな安
有する仕組みがこの地域にはまだない、言葉を
日本の改憲論議が関心事になるのは、未来を共
で何が起きても、隣国は私たちが軍隊を独自に
常に役に立ちました。ボン(旧西ドイツの首都)
ので、近隣国との緊張につながらない。
いた。フォルカー・シュタンツェル駐日ドイツ
完 全 非 武 装 で あ る べ き だ と い う こ と で も な い。
とも並行していく必要がある。これは、日本が
感がある。日本国憲法は国際公約でもある。今
るか。一つは過去の経緯に起因する危惧、不信
が口を挟むことではない。ではなぜ関心事にな
す」。東京で何 が起きても、という のは、どん
も、憲法9条があれば安全だと皆が知っていま
するための助けになります。東京で何が起きて
は必要ありません。しかし、それは隣国が安心
交的な表現だと思う。「その意味で憲法の条文
その文化の中で行動するでしょう」。これは外
安全保障を落ち着いて考えるべきだ。これが
2点目で申し上げたいことだ。日本では安全保
思う。
ら、信頼醸成をしながら、同時並行が必要だと
な方向性に使うかは難しい。地域をつくりなが
レベルが格段に高いということ。今後どのよう
持たず第6位の軍事費というのは、通常兵器の
全保障に焦点を合わせた協調、協力する安全保
国家を中心とした軍事的安全保障から人間の安
の議論を見ると、日本の平和憲法に近い方へ、
障は軍事と同義語にされる。歴史的に安全保障
な政治的変化があっても、ということ。単独の
の地域の秩序の一つの土台。その土台が変わろ
うとした時、懸念が生じるというのはある。な
ぜいつまでも過去にこだわるのか、後ろ向きで
はないか、とよく言われるが、それが未来にも
[3] Gerald L. Curtis
1940~。アメリカの政治
学 者。 日 本 政 治 に 精 通。 著 書 に「 代 議 士 の 誕 生 ― 日 本
保 守 党 の 選 挙 運 動 」「 永 田 町 政 治 の 興 亡 」「 政 治 と 秋 刀
魚―日本と暮らして四五年」など。 後は戦争、武力行使をしないということが、こ
制」の助けになっていると思うか、という記者 日本は平和国家だが、軍事費はストックホルム
の質問に「日本 は、どうあっても自 制を続け、 平和研究所の統計によると世界第6位だ。核を
大使がこう表現している。日本の憲法9条は「自
10
広島ジャーナリスト
助に使おう、
ロジスティックは基本的に同じだ、 うとしているのか、という関心だ。
年、武力行使に自衛隊を使え
日本人が慣れてくれば、武力を使う方向にいこ
う。それから約
権の動きだ。
変えればそういう表現ができる。
平和という言葉も使い方次第でいろんなこと 全 装 置、 憲 法 9 条 が あ れ ば 安 全 だ と み ん な が
が あ る。 平 和 は 語 源 と し て は pacify
、 平 定 と 知っている。大使は続けてこう言っている。
「私
同じ語源で、武力行使と裏表といえば裏表だ。 たちにとっては、かつてNATOへの統合が非
李鐘元 安全保障について3点申し上げた
い。1点は、日本の憲法の議論がアジアの周辺
ドイツの持つ軍事力の方向性が主権国家単
独の判断ではなく、地域の国家を含めたある種
アにNATO(北大西洋条約機構)のような地
の枠組みで共同の基盤を持ちながら思慮される
域の枠組みがないから、と表現した。同じよう
なことがけさ( 月3日)の朝日新聞に載って
2点目。日本の新しい役割は、東アジア近隣
諸国を含めた地域をつくっていく作業と少なく
諸国、とりわけ韓国、中国の関心事であること。
コ ロ ン ビ ア 大 の ジ ェ ラ ル ド・ カ ー テ ィ ス 教
[3]
憲法問題は日本の主権者が決めることで部外者 授 が[最 近 あ る 研 究 会 で、 日 本 の 憲 法 改 正 問 題
が東アジアの国際的関心事になるのは、東アジ
動かせないことを知っていました」。
る時代になったと判断した。それが集団的自衛
20
≪ 48 ≫
いうものが試みられてきた。
際の政策も、ヨーロッパなど先進地域ではそう
障への大きな転換という流れになっている。実
れを冷静に考えるのが安全保障では必要だ。
それで北朝鮮問題が解決するのか。中国の脅威
トとハードのバージョンアップが必要なのか。
か。これに対抗する手段としての国防力はソフ
定の国家が脅威というより、国境を越えるさま
保障は、もはやグローバル化した世界では、特
らに進めたのが人間の安全保障だ。協調的安全
訳され、新しいバージョンになっている。
南アジアにも受け入れられて包括的安全保障と
いう新しい考え方も日本で提唱され、それが東
が生まれ、経済に重点を置いた総合安全保障と
背景だ。さらにヨーロッパでは共通の安全保障
というのが、安全保障という言葉が一般化した
て、もはや国の安全は軍事だけで確保できない
ナショナルディフェンスだった。冷戦期におい
側面がある。一つは弱肉強食、淘汰の世界。強
いう言葉を使っている。ジャングルには二つの
浜 矩 子 グ ロ ー バ ル 時 代 と は ど う い う 時 代
か。従来から私は「グローバルジャングル」と
使している。
メリカはプレッシャーをかけながら外交力を駆
国、資源大国で、宗教的にも影響力がある。ア
れに比べ広がる脅威だ。イランは中東の文化大
うさまざまな問題が北朝鮮問題だ。イランはそ
かに縮小させ転換させるか。そのプロセスに伴
れた脅威であり、縮小していく脅威。これをい
イランにかかりっきりだ。北朝鮮は閉じ込めら
シャーもかけていない。核兵器を持っていない
判はするが外交的な交渉もせず軍事的プレッ
朝 鮮 の 核 に 対 し て は ほ と ん ど 放 置 状 態 だ。 批
増えているのは事実だ。しかし、アメリカは北
北 朝 鮮 が 核 を 持 ち ミ サ イ ル を 持 ち、 脅 威 が
お互い支え合いながらモノをつくりモノを提供
長い生産体系の中に人々も国々も組み込まれて
かいう言葉が使われる。国境を越えた幅広い、
であることが分かってきた。グローバルサプラ
ングルは、誰もひとりでは生きていけない場所
いうことが次第に見えてきた。グローバルジャ
き残れないととらえていたが、そうではないと
ンダードを制する者が勝つ、そういう者しか生
グローバル時代、当初は我々はグローバルスタ
在していて、お互いを支え共生している。この
強いも弱いもしかるべき役割を果たしながら存
というのは、日本への攻撃を意味するのか。そ
安全保障という言葉は、国防にとってかわっ
た言葉だ。 世紀、 世紀の初めまでは軍事=
ざまな問題が脅威である、という発想だ。特定
し合っている。だれもが誰かから何かを借りて
の方がより重要な安全保障ではないかというの
気候変動、国境を越えるテロ、犯罪なのか。後
人のふんどしで相撲を取る、
グロー
木もバクテリアもいる。そういう関係の中で、 思っている。
少し弱めの肉食動物、さらに弱めの小動物、草
オンは食物連鎖のトップにはいるが、その下に
しかいないかというとそんなことはない。ライ
りしているか。私はそれをふんどしと土俵だと
それを踏まえたうえでグローバルジャングル
の住人たちはお互い何を借りたり、貸し合った
冷 戦 終 結 後 に は 協 調 的 安 全 保 障、 そ れ を さ
人間の安全保障考える時代 の国家を脅威として考えるというのは、まだ完
いものが勝っていく。もう少し視野を引いて大
が大きな流れだ。
イチェーンとかグローバルバリューチェーンと
全には無視できないが、現実において比重はど
申し込みはファクス 082-231-3005 かメー
ル [email protected] ▽紀伊国屋書
店広島店、フタバ図書などでも好評発売中
いる世界。それがグローバルジャングルだとい
尖閣は棚上げ合意へ回帰を 浅井基文
広島・長崎データ 科学的議論を 湯浅正恵
豊かな海を毒壺にするな 湯浅一郎
インドの反原発運動と日本 福永正明
「1994」繰り返すまい 小森陽一
う認識を持つ必要がある。
マレーシア住民虐殺の地を訪ねる 橋本和正
きな観点から見ると、ジャングルとは共生の世
特集「沖縄・岩国 オスプレイ」
沖縄は「無法地帯」なのか 松元剛
日米安保から脱却を 伊波洋一
オスプレイ配備の意味 岩国から 久米慶典
の程度か。私たちが東アジアで抱え込んでいる
広島ジャーナリスト第 11 号
のも戦争に対する備えなのか。伝染病、災害、 界である。ジャングルには百獣の王のライオン
20
第3に、北朝鮮は、実態として何が脅威なの
2013.12.20
19
≪ 49 ≫
経済活動を活発化させる、外から来てくれた人
バル時代はそういう時代だ。外資の力を借りて
安倍首相が国家戦略特区をつくって海外から
企業に来ていただきましょうというのも、人の
本は資本が海外に出てカネを稼がせてもらう。
が移転すれば雇用問題が起きる。これらはみん
リーマンショックが起きる。国境を越えて工場
ろんな問題が起こってくる。カネが暴走すれば
ではありえない。グローバルジャングルとは国
いることは、要は富国強兵だ。アベノミクスで
は声高に言っている。安倍政権がやろうとして
慮していう場合でないという思いを強め、最近
思い、遠慮がちに呟いていたりしたが、もう遠
葉がアホノミクス。当初はさすがに品がないと
製品が国境を越えて出ていく。今や日本企業の
日本国内で行われた。国内で作られた純正日本
バイジャパニーズ。全て日本企業の生産活動は
メイドインジャパンという言い方があった。
かつてはメイドバイジャパン、あるいはメイド
外」と排除の姿勢は許されない。
が家でどこから外なのか判然としない。「鬼は
てくる。どういう脈絡で「世界」が登場してい
義が完全にデフォルトであってリセットはあり
和が必要だ。従ってグローバル時代では平和主
グローバルジャングルの経済構図には絶対的平
広島ジャーナリスト
境なき世界だ。ヒトモノカネが国境を越え、い
たちの力を借りて経済社会を回していく。そう
ふんどしで相撲を取ろうという発想だ。その割
なで考えなければいけない問題だ。
富国、憲法改正で強兵という形で大日本帝国を
しかし、グローバルジャングルでは、どこから
取り戻す。そういう陰謀に付き合わされてはか
そういうスタイルもまた多い。東ヨーロッパ諸
るか。日本が再び世界をリードするとか、再び
ことは、相手のことも考えることにつながる。
グローバル時代の愛国は博愛。だれもがだれ
かから何かを借りている。自国の国益を考える
くことは許されない。
こだわって外に向かって排除の動きを出してい
ている。そういう時に内と外という仕切り線に
製品といえども組み立てや縫製は国外で行われ
安倍さんが成長戦略を発表した6月5日のス
ピーチがある。官邸のホームページにアップさ
成長戦略=世界制覇戦略なのか
なわない。
おうとしているが、ふと思いついてしまった言
みに私はアベノミクスという言葉が大嫌いで、 特定の国を脅威と見るような時代ではない。
極力この言葉を使わないで安倍政権の悪口を言 「 福 は 内、 鬼 は 外 」 と い う 言 い 方 を し て き た。
言っていいという姿勢とか、矛盾がある。ちな
いうことがうまい国がグローバルジャングルに
万人ちょっとの国が外からやってきた企
はたくさん存在する。典型はルクセンブルグ。 に は 唱 え て い る 成 長 戦 略 と か、 国 粋 主 義 者 と
人口
業や人の力を借りて世界に冠たる豊かさを手に
入れている。
一方で、人の土俵を借りて相撲を取っている
国もある。多くの移民、労働者を海外に送り出
国とか、フィリピンとか。アジアで人のふんど
し、人の土俵で稼いだ金で経済を支えている、 れているが、「成長」が 回、「世界」が 回出
しで相撲を取っているのはシンガポールとか香
得ない。
こんな形では、グローバルジャングルの住人
戦略であるということを強く示唆している。
日本が世界の中心に躍り出るとか、世界で勝つ
人の土俵の上でカネを稼がせてもらっている
国もある。その典型が日本。資本輸出大国の日
日本とか。この人の成長戦略は即ち世界制覇の
37
港とか台湾とか。
41
50
半田
孫崎
下からの憲法の破壊が、このような形で容認さ
れている。
コーディネーター 国家安全保障基本法が制
定されれば、明文改憲なくして憲法9条が空分
化してしまうということは明らかだ。来年の国
会に向けて準備すると言われている。準備の一
つとして、安保法制懇で集団的自衛権行使を認
める報告書をまとめようという動きがある。
「対米攻撃」の非現実性
李
半田 安保法制懇は一度報告書をまとめてい
て、安倍さんが首相を辞めた後に福田康夫首相
に提出したが福田さんは棚上げした。憲法解釈
浜
を大幅に変える内容が含まれていた。その中で
明文改憲の前に、上からでなく下の法律で憲
法9条を変えていくという動きがある。その中
護法が具体的に書かれている。 条は国連憲章
る。特に教育、建設、運輸。3項では、秘密保
ことはいかがか。二つ目として、米本土を狙っ
艇の防護。海上で自衛隊がアメリカの船を守る
と平和、国の安全が目的として掲げられている。 も安倍首相が、これを研究しなさいと言った四
〈第Ⅱ部〉
第3条2項で、国の行政のあらゆる場面で国の つの類型というのがある。二つまでが集団的自
コーディネーター(川口創=愛知県弁護士会)
安 全 保 障、 言 葉 を 換 え れ ば 国 防 が 最 優 先 さ れ 衛権に関わることで、一つは公海における米艦
㌻参照=
釈を一貫してとってきたので、内閣提出は難し
集団安全保障措置に参加することができる。海
伊藤真 昨年7月4日、
自民党で決定された。 権の行使を法律の明文で定める。 条は国連憲
内閣法制局が集団的自衛権を認めないという解 章上定められた安全保障措置への参加。国連の
だ。この法案について。
外派兵の一般法としての意味合いを、この 条
という内容だった。
いないが、実施しなければ日米同盟は崩壊する
権の行使にあたり、現行憲法解釈上認められて
がか。最初の報告書では、いずれも集団的自衛
た弾道ミサイルの迎撃。米国に飛んでいく弾道
心になるのが国家安全保障基本法=
い。そこで議員立法が当初予定された。今の内
が持っている。
11
と特定秘密保護法、安全保障会議は一体のもの。 た米艦船をを守るのは、個別的自衛権の範囲で
11
ミサイルを日本が迎撃しなかったらこれはいか
閣は、内閣提出法案として出していく予定に変
更している。
この二つの答えに対して、既にさまざまな見
解が表明されている。日本防衛のために来援し
に定められた自衛権の行使。ここで集団的自衛
10
国をあげて安全保障という名の下の国防に突
き進む基本法が案として検討されている。これ
61
第1条は本法の目的。国民の安全や生命を守
るというのが目的にない。あくまでも国の独立
2013.12.20
「防衛」2類型 無
意味
テロ脅威の増大はウソ
既に選択肢でない戦争
国民と国家の逆転狙う
≪ 50 ≫
≪ 51 ≫
撃った瞬間に1000㌔上空を飛んでいく。北
今 イ ー ジ ス 艦 に は S M 3 と[い う 迎 撃 ミ サ イ
ルが搭載されている。しかし、弾道ミサイルは
[4]
給などで隣接している場合は、どちらの船が狙
朝鮮から発射されてアメリカに飛んでいくよう
い。今の時代、危険な武器は潜水艦が発射する
る。しかし今、大砲の撃ち合いという戦争はな
は日本だけだ。世界中の軍隊が束になっても、
う国があるのか。アメリカに戦争を仕掛けたの
よるアメリカへの本格的な侵攻になる。そうい
ミサイルを横にいる日本の船が迎撃する、これ
広島だと、名古屋あたりから飛んでくる。この
われることはないし、アメリカめがけて弾道ミ
もしないのと同じだ。永遠にアメリカの船が狙
に対して集団的自衛権を認めると言っても、何
今の魚雷は回避はほぼ無理だ。
アメリカが狙われるということを前提に立て
対艦ミサイルは300㌔先から飛んでくる。 た2類型は意味をなさない。だからこの2類型
は今の技術ではできない。自分が狙われていれ
ばレーダー波が自分にあたるので、レーダーを
めがけてミサイルを撃てるが、他の船に飛んで
いくのは見ているしかない。設問自体が現在の
軍事技術を反映していない。
[4]SMは Standard Missile
の略。アメリカ海軍をは
は軍旗の意味
じ め 西 側 諸 国 で 使 わ れ て い る。 Standard
だ が 基 準 の 意 味 も 込 め ら れ て い る と い う。 S M 3 は 弾
道 ミ サ イ ル 防 衛 専 用。 S M 3 ブ ロ ッ ク Ⅱ A は 2 0 1 8
年に実戦配備が予定されている。 広島ジャーナリスト
できるという政府見解も示されている。洋上補
われたか分からないので、自分の船を守るとい
う。今の技術では迎撃できない。日米で共同開
なミサイルは撃った瞬間に宇宙空間に出てしま
た だ、 設 問 そ の も の が 奇 妙 な の は、 実 際 に
発しているSM3ブロックⅡAでもできない。
う趣旨で結果的にアメリカの船も守ることがで
は並走する米艦艇というのはいない。映画の日
きる、ということが示されている。
本海海戦などで、例えばバルチック艦隊に対し
対艦ミサイルや弾道ミサイルはテロリストや
ゲリラの攻撃ではない。軍隊のある主権国家に
魚雷だ。もう一つは航空機や艦艇が発射する対
アメリカと通常兵器の戦争をやったら勝てな
て連合艦隊が前を遮るT字戦法をとり、砲撃す
艦ミサイル。これらの武器から逃げるには、船
い。横須賀にいる原子力空母ジョージ・ワシン
機を積んでいる。電子戦機EA
同士お互いのスクリュー音が邪魔して潜水艦の
リカには 隻ある。こんな国に戦争を仕掛ける
とんどの国の空軍力を上回る。あの空母がアメ
6Bはどの国も持ってない。一つの空母で、ほ
接近が分からなくては困る。だから距離を置く。 トンは航空機
リムパック(
=
Rim of the Pacific Exercise
、環太平洋合同演習)に何回も取材に行っ
Rimpac
たが、日米の船は、どこにいるか分からないぐ
80
らい離れている。それでも潜水艦に狙われたら、 国は、かつての日本以外にない。
10
≪ 52 ≫
ありえない、集団的自衛権は全面的に容認する
てきたらしく、北岡座長は最近、部分的容認は
えても意味がない。懇談会でも、それが分かっ
サイルが飛んでいくことはない。憲法解釈を変
というある種の善意で世界は構築された。
あったとしても、ソ連がアメリカを攻撃しない
しなくてはいけない。ソ連がいかに悪の帝国で
ういうことであれ、相手のある種の善意に期待
いうことが、集団的自衛権行使容認や国防軍設
て軍事的な抑止力を高めていくことは必要だと
コーディネーター 日本を取り巻く国際環境
が緊張化している、その中で日米同盟を強化し
[5]
で集団的自衛権行使容認の動きがあると言われ
コーディネーター 孫崎さんにうかがう。ア
メリカとの武力的な一体化が進んできている中
段があるにもかかわらず、それを追及しない代
と同時にテロ攻撃は大きくなった。外交的な手
に減少した。イラク戦争やアフガニスタン戦争
る、軍事的な対抗措置、備えが抑止力というこ
ことになる。国際政治学では強制力というが、
行動をさせない、あるいはさせると、そういう
ると、明らかに抑止力を超える。相手に特定の
李 国際政治学では、侵略とか戦争を止める
のが抑止力。そうではなく外交手段としてとな
どう見るか。
たが、他方でアメリカはイラク戦争を経てブッ
償として軍事紛争は起こる。
とになるが、朝鮮戦争が終わって
これはウソだ。テロ行為が 年からイラク戦争
置を進めるロジックの中で使われるが、抑止力
んだ、と言い始めていて、高見沢将林内閣副官
冷戦終結以降、国際秩序が変わった、これか
房長官補は「地球の裏側まで行くことがある」 らの脅威はテロの脅威である、とよく言われる。 をどう考えるか。前提としてのアジアの情勢を
シュ政権の時とオバマ政権の時で戦略の方針が
国家安全保障基本法を見ると、国連憲章等に
定められた自衛権の行使は、基本的には「わが
まで、どのように推移したかというと、圧倒的
変わってきているのではないか。にもかかわら
国と密接な関係にある他国に対する、外部から
と言っている。[
ず日本側は、アメリカから集団的自衛権行使容
年、実際に
例えば北朝鮮が韓国に攻めてこないようにす
認を認めろと強い働きかけがあるかのようにい
の武力攻撃が発生した事態であること」とある。 戦争が起きなかったという意味では抑止力は働
そうした圧力が本当にあるのか。
国本土が 攻撃されるか。ないと 思う。しかし、 なくなっているので、特定の局地的な衝突など
は逆に完全に抑え込むのは難しい。北朝鮮の延
一部に攻撃されたら、という論理は出てくる。 坪島砲撃は計算したような行動だが、韓国は報
ではないかとよく言われるが、他国が他国を攻
安全保障を守るということは、現状では夢物語
い。憲法解釈の時に、他の国の善意に基づいて
米国の安全保障で微妙なのは中近東。イスラ
エルの安全保障はアメリカの安全保障と同じだ
も済む、ということではない。
ないから、実際問題として自衛隊は行かなくて
形での抑止は、誤解を恐れず言えば大枠はでき
しい。
ているので、局地的な挑発を封じ込めるのは難
はなく、全面戦争までいけない。足元を見られ
復はできない。戦争はもはや現実的な選択肢で
撃する、侵略するというのはほとんどなくなっ
と言う。イスラエルが和平を求めるという形を
ている。それは核報復とか大量報復の脅しだけ
全体的な戦争が起きないようにするという
ている。もっと大きいことは、核兵器が出てき
とらない限り、テロはある。そうするとアメリ
条からくるものは、いろんな類型に該当し
アメリカ大使館はアメリカの一部。アメリカの
孫崎 オバマ大統領になって平和路線が強化
されたということはない。米国が対外的に軍事
第
いている。しかし、国家間の戦争はもはやでき
60
行動をしたいという動きは全く収まっていな
れる、
というような論理が改憲論者の中にある。 この「他国」は「米国」と書けばいい。では米
い、そこを認めないと日米同盟の信頼が損なわ
90
年間戦争をしなかったのは核の脅威にさらさ
カも入り、攻撃される。集団的自衛権があれば、 なのか、歴史的な検証は難しい。北朝鮮がこの
日、自民党安全保障関係合同部会での発言。 日本は出ていく。
60
2013.12.20
10
た時に、大国同士の戦争はできなくなった。ど
[5]9月
19
≪ 53 ≫
れてなのか、中国やソ連が止めたのか。さまざ か、高揚感を持って発言している安倍政権はど こない。対象は国になっていて、国のための国
まな要因が重なって戦争は起きなかった。
う進もうとしているのか。グローバルな方向と 民の責務が第4条に登場する。どういうことを
北朝鮮の立場からすると、
冷戦が終わった後、 は相反する方向に見えるが。
考えているかが出ている。
ソ連の核の傘がなくなったので、彼らの抑止力
彼 ら の 富 国 強 兵 の 発 想 の 中 に は、 近 現 代 的
浜 先ほどの成長戦略のスピーチに戻るが、
を考えている。北朝鮮がアメリカを攻めるとい
「
成長」が 回、「世界」が 回登場した。「人間」 な意味合いにおける「国民国家」を変えようと
という言葉は1回しか登場していない。どのよ しているというところがある。我々の常識的な
が抑止力だと考えている。
だが、そこを威嚇できるものを持ちたい。それ
のがロサンゼルスやサンディエゴといった軍港
きた時に、米軍増派部隊を運び出す拠点となる
焦点がいっているかが見えてくる。国家安全基
しない。どういうところにチーム安倍の意識の
は一切登場しない。地域社会や地域経済も登場
1回だけ。格差とか貧困とか非正規雇用者とか
に人間洗濯機というのがありましたね」。その
うな形で登場したかというと「大阪万博のとき
倍政権の背後に見えてくるスタンスだ。
係を完全に逆転させようとするというのが、安
義国家のあり方だと思う。この国民と国家の関
するサービス事業ととらえるのが現代的民主主
は国民に奉仕するためにある。国家は国民に対
認識として言えば、国民と国家の関係は、国家
うことは考えないと思うが、朝鮮半島で何か起
日中間でも米中間でも、戦争はよほどのこと
がない限りない。あとは細かい小競り合い。い
とは防げない。ではどうするか。北朝鮮は軍事
的にはテクノロジーがあるが経済が弱い。弱い
伊 藤 自 民 党 の 改 憲 草 案 で 国 家 と 国 と い う
回。現行憲法の2倍以上だ。国家、国
が前面に出ている。抑止力というのは、武力に
言葉が
ように思えてしまう。改憲は 条の手続きしか
明文改憲と解釈改憲と2種類改憲手続きがある
いう言葉がメディアに出てくると、なんとなく
「解釈改憲」は曲者だ
ところをつき、挑発行動はしないようになだめ
たり、抑えたり、説得したり、非常に疲れるプ
ロセスだが、そうせざるを得ない。中国も、大
きい部分ではそうなる。
日本に照準を合わせたノドンミサイルは
あり得ない。それ以外は違憲だ。解釈改憲とは、
国際紛争は解決しないと憲法でも言っている。 めのレトリックに過ぎない。
政府がやろうとしている違憲行為を覆い隠すた
を減らすには、ミサイル防衛を開発して、すべ
最終的になくすような総合的なことを考えるの
的にまず減らし、核とミサイルをこの地域から
と言っているわけだから、自分が作ろうとする
主張は、初めから武力による威嚇で解決しよう
機能。少なくともそういう解釈のもとで自衛隊
ぺ返しを受けるから思いとどまらせようとする
日 本 政 府 は、 三 つ の 攻 撃 的 兵 器 を 持 た な い
が武器体系をそろえてきたことは間違いない。
解 釈 改 憲 と い う 言 葉 は 曲 者 だ。 解 釈 改 憲 と
改憲案にしても守る気がないといえる。
コ ー デ ィ ネ ー タ ー 世 界 を 席 巻 す る 日 本 と
が現実的なのか。
て撃ち落とせるようにするのが現実的なのか、 自民党の改憲案もそれをはっきり言っている。
半 田 抑 止 力 を、 日 本 政 府 が 言 っ て い る 通
り解釈すると、もし攻め込んだら手ひどいしっ
領土問題で軍事力を持たないといけないという
うという話だが、武力による威嚇や武力行使で
伊藤
本法案の第1条には「国民」という言葉が出て
37
くらアメリカに軍事力があっても、局地的なこ
41
250基と言われる。今のテクノロジーだと、 よる脅しだ。武力による脅しで政策を実現しよ
年かかっても日本の防衛は難しい。その脅威
96
35
さまざまな手段でミサイルの脅威そのものを量
10
広島ジャーナリスト
≪ 54 ≫
て7月に中間報告が出た。その中に具体的に書
距離爆撃機。防衛計画大綱の見直しが進んでい
と言っている。弾道ミサイル、攻撃型空母、長
けている。
が海兵隊機能ぐらいで、槍の矛先程度の力は付
な武器体系がつくられている。一番遅かったの
レーダーがない所に行っても戦争ができるよう
それを取り返すための海兵隊という理屈だ。こ
島、在日米軍がいる嘉手納基地のある沖縄本島。
ある宮古島、陸上自衛隊第
領されるということ。例えばレーダーサイトの
旅団のいる沖縄本
かれているのが、海兵隊的機能。沖縄の米海兵
隊をイメージしてもらえば分かる通り殴り込み
そういう時に集団的自衛権行使の話を始め
中でつくられた専守防衛の装備体系は、読み方
れは読み変えができる。個別的自衛権の範囲の
母というが、防御型空母というのはない。日本
に正式に書かれることは間違いない。攻撃型空
いくことはないと思う。しかし、イラク戦争を
ている。いま日本が領土的な野心を持って出て
外国に攻め込むことができるようなものを持っ
にカエルが跳び込んだら熱いと出てきた。防衛
みんなゆでガエルになった。今まではお湯の中
ここ十年ぐらいの間に急速にタガが緩んで
御的な兵器に特化していた。ところがだんだん、 を変えれば集団的自衛権の行使として海外に出
た。今までなら日本は攻め込まれないための防
月
は既に空母のような船を持っている。
「ひゅう
思い浮かべれば分かるが、アメリカが空爆する
三沢基地や福岡の築城基地にあるF2戦闘機は
対地攻撃もできる。
かつては長距離移動ができないよう空中給
油機能を取り外した。F4ファントムを入れた
アメリカの戦争に協力する準備は着々と
える。そういうものを裏付けるため国家安全保
費が抑えられていて気付かず、マスコミも看過
迫っているというのが今の状況だ。
浜 解 釈 改 憲 は あ り 得 な い と い う 指 摘、 重
要だと思う。言葉をひとり歩きさせるというの
改憲より実態修正を
われば集団的自衛権行使が禁止されるというこ
はやめなくてはいけない。メディアのおかげで
障基本法がある。内閣が代わって閣議決定が変
とでは自民党にとっては意味がないので国家安
洗脳されてしまう言葉の一つの典型だ。
がある。実態があまりにも現行憲法とずれてい
全基本法をつくる。これは過半数でできる。
けている。空中給油機はいま浜松基地に4機置
伊 藤 攻 撃 型 空 母 の 話 が あ っ た。 敵 基 地 を
かれている。A―WAX空中警戒管制機など、 攻撃するとか先制攻撃も許される?
ましき思いを抱えている人たちを憲法難民と呼
11
22
島をとられるということは、米軍のいる島が占
兵隊は上陸しない。自衛隊の想定では、尖閣諸
海兵隊機能もそうだ。尖閣という無人の島に海
い る な ら、 そ っ ち を 修 正 す る の が 当 然 だ ろ う 。
えなければいけないほど憲法の枠から逸脱して
いるのか。基本的な考え方としては、憲法を変
に取り戻すために攻撃が必要だという理屈だ。 んでいる。では実態はどれほど離れてしまって
るから、改憲せざるを得ないのでは、という悩
憲 法 難 民 と い う、 キ ャ ッ チ ― だ が い い 言 葉
半 田 今 ま で、 な ぜ 自 衛 隊 に 攻 撃 機 が あ っ
たか。日本が戦争に負けて占領される、その時
時は空中機能を取り外したが、今は最初から付
て行って戦える部隊になりうる。
が」と「いせ」
。これらは空母としてはまだ中
[6]
㍍しか違わない。もしアメリカがF
うが」
「いせ」より甲板が
大和と
Bという垂直離着陸戦闘機の開発に成功すれば
じように戦争するようになるのではないか。
してきた。後は法体系の変更というところまで
持ちましょうと中間報告に書かれている。
部隊だ。本来は攻撃的な機能を持つが、それを
15
途半端だ。横須賀で進水した「いずも」は「
[ ひゅ 時、日本の集団的自衛権行使が容認されていれ
㍍長い248㍍で、 ば、イギリスが戦闘機や攻撃機を出したのと同
12
攻撃機として積める。長距離爆撃機はないが、 整っている。あとは憲法を変えるか、解釈を変
35
50
[6] 「ひゅうが」2009年就役。排水量1万395
0 ㌧。 搭 載 ヘ リ 最 大 機。 定 係 港 は 横 須 賀。 2 0 1 3
年 6 月、 米 国 沖 の 米 軍 統 合 訓 練 に 参 加、 M V オ ス プ
レイが着艦した▽「いせ」2011年就役。排水量同。
搭 載 ヘ リ 同。 定 係 港 は 呉 ▽「 い ず も 」 2 0 1 3 年 8 月
進 水、 年 就 役 予 定。 排 水 量 1 万 9 5 0 0 ㌧。 搭 載 ヘ
リ最大 機。
2013.12.20
15
14 15
≪ 55 ≫
自衛隊が憲法の範囲を著しく逸脱しているな
の 体 制 で あ る こ と を 明 ら か に す る。 そ こ か ら
す る 仕 組 み を つ く っ て い く。 ヨ ー ロ ッ パ で も
る。拡張主義的、膨張主義もないとは言えない。 き合って、戦争責任者が一定の責任をとり、国
今 の 世 界 で は、 あ る 種 の 専 守 防 衛 は 必 要 だ
にヨーロッパで試みられた戦略だ。ナショナリ
米中の防衛交流、安全保障交流を進める。まさ
すことはできない。そこは本気でアジアと向き
問題もある。国防軍を考える時、そこを切り離
戦争責任を明確にすることもない。歴史認識の
になっている。そこは違うと思っている。いく
56
18
広島ジャーナリスト
ずっとそういうことをやってきた。
益に向かって枠組みをつくっていこうというこ
ら、元のコンセプトの中に引き戻す、あるいは
とはできるはずだという指摘だと理解した。そ
、専守防衛。守りのための
defensive
defense
ものであることをお互い見せあうことで戦争を
大 量 破 壊 兵 器 の 時 代 に、 戦 争 は 現 実 的 で は
こで、ドイツもEUの中で一定の役割を果たせ
廃止する。そういう発想で考えるのが筋だ。悩
ない。戦争に勝つというのは意味がない。目標
るようになったのだから、日本もアジアの中で
伊 藤 最 初 の 枠 組 み 作 り の き っ か け は 安 全
保障、軍事面だとしても、アジアでの共通の利
は戦争の回避。となると、相手とこちらの共通
める憲法難民のみなさんには、それは憲法の方
の目標になる。共通の安全保障。そういうこと
同じように、と言った時、やっぱりドイツと違
回避する。
から歩み寄るのはおかしいでしょう、という答
えになるのかと思う。
共通の安全保 障 考 え よ う
でヨーロッパでは冷戦は平和的に終結した。
李 抑止力の話に戻るが、二つ種類がある。
東アジアで北朝鮮は縮小する脅威といえる。 う、という ところが戦争責任の 問題。一方で、
一 つ は 拒 否 的 抑 止( deterrence by denial
)。 中国は拡大する存在であり、中国の台頭に対応 アジアで安全保障を考える時よく思うが、ドイ
相手が侵略して取ろうとする目標を達成させな するのは最大の課題だ。そこでさまざまな不安 ツと日本は同じであってはならないと思う。
アメリカの対応を見ても二つある。一つは、守
ドイツはヨーロッパでの戦争ときちっと向
相手を痛い目に合わせることで思いとどまらせ
いような守りを固める。
もう一つは懲罰的抑止。 が生じる。中国の中でもさまざまな方向性があ
る。一つは専守防衛であり、もう一つは攻撃力
日本の場合は残念ながらそこがない。
りを固める。もう一つはある種の共通安全保障、 史がある。
ろう。冷戦期のヨーロッパにあったような、米
ズムが渦巻いているところに、局地的で挑発的
民としても向き合い、信頼を勝ち取ってきた歴
を高めて抑止を確保する。
ソ の 核 兵 器 も そ う だ が、 懲 罰 的 抑 止 は 際 限 が
合っていかないといけない。
一 方、 ド イ ツ は 隣 国 ポ ー ラ ン ド や フ ラ ン ス
な発想で攻撃力を高めたりすると、かなり危険
だ。
年代
な い。 そ の 反 省 に 立 ち、 ヨ ー ロ ッ パ で
[7]
の信頼を得た後どうしたか。コソボを空爆した。
ら 東 ア ジ ア 首 脳 会 議 が[で き て い る。 ア メ リ カ
をまきこんで大きな枠組みをつくった。重層的
ら朝鮮半島や中国の信頼を得られたとしても、
軍事的枠組みの安全保障の中で、戦争をする国
心。つまり脅しによる安定は非常に不安定なの
にそういう枠組みを重ね合わせて地域を安定化
[8]
ASEAN+3の延長線上で2005年か
で 相 手 を 安 心 さ せ る、 自 分 の 領 土 を 守 る だ け
ん軍拡につながるので、相互抑止でなく相互安
に、 全 欧 安 全 保 障 協 力 会 議 か[ら 共 通 の 安 全 保
障という概念が生まれた。懲罰的抑止はどんど
70
[8]東アジア首脳会議 2005年にクアラルンプー 日本は軍隊を持っていい、アジア共通の軍事同
[7]全欧安全保障協力会議 1975年に国境不可侵 ル で 発 足。 第 1 回 会 議 で エ ネ ル ギ ー、 金 融 な ど 協 力 で 盟を作ろう、という方向に行ったら憲法9条の
と安全保障に関するヘルシンキ宣言を採択しスタート。 合 意。 2 0 1 1 年 第 6 回 会 議 か ら 米 露 が 正 式 参 加 し、
存在意義がなくなる。
冷戦後の 年に欧州安全保障協力機構(本部ウィーン) 政 治、 安 全 保 障 の 取 り 組 み 強 化 を 確 認 し た。 日 本 な ど
コ ー デ ィ ネ ー タ ー 尖 閣 の 問 題 を 含 め て 中
に改組した。2008年現在で カ国が加盟している。
カ国が参加している。
94
≪ 56 ≫
ずっと言ってきた。
得ない。キッシンジャーら安全保障の関係者は
身が撃たれる。それを考えたら、核の傘はあり
ために反撃しようとしたら、相手にアメリカ自
るということもない。アメリカが、もし日本の
義は定まっていない」と、事実と異なる発言を
168人の国会議員が参拝したり、「侵略の定
ない。むしろ、靖国神社の今年の春の例大祭に
連、それらの国とは本格的な戦争にはなってい
国 は た く さ ん あ る。 イ ン ド、 ベ ト ナ ム、 旧 ソ
半 田 尖 閣 諸 島 の 問 題 は、 孫 崎 さ ん の 発 言
に 全 面 的 に 同 意 す る。 中 国 と 国 境 紛 争 を し た
ついて。
コーディネーター 他国から武力行使され
たらどうするか、それと憲法と実態のかい離に
解決の仕方かを考えてやっていくべき時期だ。
の安全保障を考える、何が我々にとって有利な
が考えていることはかけ離れている。
争はやっていない。そういう実態と、安倍政権
Oと国際緊急援助隊と能力構築支援の三つ。戦
自衛隊が実任務としてやっているのはPK
格的に始めた。
アを中心に昨年から善行キャンペーンとして本
たり、カンボジアで道路を直し方を教えたり、
PKOに初参加するベトナムの将官の教育をし
災害復旧がメーンの仕事に代わりつつある。日
ダーシップがとれる。沖縄の海兵隊も人道支援、
国との関係をどう考えるか。
日 米 同 盟 の 実 態 を 見 る と、 管 轄 地 が 攻 撃 さ
した首相がいたりする。そういうことによって
東チモールで重機の使い方を教える。東南アジ
北 沢 俊 美 元 防 衛 相 は、 2 年 間 の 在 任 期 間 で
のために、なんで重要な国と戦争をするか。そ
既に日本より中国の方が重要だ。重要でない国
の政府を倒しても、アメリカの力による支配に
力では解決しないのではないか、一時的に相手
ら、アフガン戦争、イラク戦争をやってみて武
既にブッシュ大統領の時代の後半ぐらいか
らもいろいろ言われるのだが、防波堤は憲法9
た。中国との摩擦が大きくなって、アメリカか
た」と発言した。本人に会って真意を聞いてみ
党 勉 強 会 で「 頼 り に な っ た の は 憲 法 9 条 だ っ
一部緩和したりした。この人が今年2月の民主
防衛計画の大綱を変えたり、武器輸出三原則を
の上で、日中が仮に戦争を起こしたら、日本が
不満がくすぶって結局は解決しないと気付か
条だったという。では集団的自衛権を解禁しろ
孫 崎 中 国 と の 関 係 で、 軍 事 的 に 解 決 す る
ことはない。中国に対して、核の傘を持ってい
本も海外で能力構築支援というのをしている。
れた時には発動するが、軍事が出るということ
緊張をつくりだすことに狙いがあると思う。
「尖閣」で米の 関 与 な い
ではない。尖閣諸島の問題でアメリカが出てい
勝つというシナリオはどこにもない。中国には
れてきて、アメリカは 年ごろから善行キャン
る。外交的に可能性のあるものを追求せず、軍
日本が有利な形で棚上げにしようと決まってい
し か し、 不 思 議 な こ と に 尖 閣 諸 島 の 問 題 は
ベトナムやカンボジアで医療行為を行ってい
も参加しているが、アメリカ病院船を派遣して
トナーシップというのを始めた。 年から日本
かなりある東アジア。ここでパシフィックパー
ペーンを始めた。注目したのはイスラム教国が
聞くと、アメリカ政府と違うところに向いてい
そういうことを言う人がいる。そういう声だけ
ジャパンハンドラーと言われる人たちの中には
府からそういう正式な申し入れはないという。
回会ったが一度も言われていない、アメリカ政
とゲーツ国防長官に言われたかと聞いたら、8
くということは絶対ない。
アメリカにとっては、
ミサイルがあり核がある。アメリカは助けてく
事で抑止力と言っている。軍事を使わない形で
る。 ア メ リ カ の 工 兵 部 隊 が ベ ト ナ ム で 学 校 を
れず、日本が軍事的に対抗できる力もない。
紛争を処理できる枠組みが実はある。その枠組
造ったりする。いい人になろうキャンペーンだ。 くんじゃないかと思う。
年間二ケタずつ増
兆 3 千 億 円。 日 本 は
4兆7千億円。中国は過去
直近の中国国防費は
みを全く追求しないで、幻想的にアメリカと一
ムなどで嫌われるので日本が間に挟まり、リー
11
14
緒になれば大丈夫みたいなことを言っている。 日本も参画していて、アメリカだけだとベトナ
もうアメリカに踊らされる時代ではない。我々
23
2013.12.20
07
≪ 57 ≫
横 須 賀 の 少 年 高 等 工 科 学 校 は、 陸 上 自 衛 官
夢だ。
人員も装備も増やすと言っているが、かなわぬ
したいという。1人も戦争をしたいとは言わな
は、PKOに参加する自衛隊を見て、国際貢献
助けてもらった体験が原点だという。残る2人
見たという。うち1人は家が流されて自衛官に
やしてきて、
安倍首相は日本の防衛費を増やす、 いたら8人が、東日本大震災で自衛隊の活躍を
は世界で最も素晴らしい国の一つだった。この
国民の間の格差がない、犯罪がない、日本は実
日本は平和愛好国家だ。社会的な秩序があり、
た時のトップは日本だった。その人たちの思う
界でもっと発言力をつけてほしい国は、と聞い
あおい・みほ 学習院大法務研究科教授。東京大
大学院法学政治学研究科から信州大経済学部准教
か。そうならないようにしないといけない。
になるため中学を卒業して入る。倍率が高く優
年 に B B C が 国 際 世 論 調 査 で、 世
素晴らしいものをなんで今捨てようとするの
人を集
孫 崎 かった。安倍さんに学習してもらいたい。
秀な子どもたちだ。取材で1~3年生
めてもらった。なぜ陸上自衛官になるのかと聞
「国防軍」にすることの意味
授、 成 城 大 法 学 部 准 教 授 を 経 て 現 職。 主 な 著 書 に
年)、「憲法を守るのは誰か」(幻冬舍ルネッサンス、
「 改 憲 の 何 が 問 題 か 」( 共 著、 岩 波 書 店、 2 0 1 3
2013年)など。(日弁連配布資料をもとに作成)
)法が秋の臨時国会にも成立
Security Council
しようとしている。極めて異例な内閣法制局長
変更迫られる「人権」
「自由」
条の政府解釈を前提とすれば、自国の防衛に他
国の防衛は出てこない。これを集団的自衛権を
官人事が行われたのも記憶に新しい。これらの
的平和主義」という言葉を使った。次のような
行使できるようにする、と言えば大きな変化が
『国防軍』にすることの意味」と題してお
「
話 し す る。 現 在、 安 全 保 障 を め ぐ っ て 大 き な
変化を象徴するのが、自民党の憲法改正草案で
文脈で述べ られている。「私は、私 の愛する国
安 倍 晋 三 首 相 が 米 国 で の ス ピ ー チ で「 積 極
生まれてくる。
動 き が あ る。 国 家 安 全 保 障 戦 略( N S S =
国防軍創設を提案していることではないか。
談会)も再開され、集団的自衛権行使容認の立
ろに過ぎていく。しかし、遠くの山はゆっくり
ていただきたい。近くの人はあっという間に後
毎日の変化の中で、全体像が見えにくくなっ
ている。電車の窓から見える景色を思い浮かべ
チ全体から考えると、米国を中心に世界のピー
〟だ。「積極的に平和に
Contributor to Peace.
貢献する」という言い方がされている。スピー
[1]9月
ピーチ。
日、ハーマン・カーン賞受賞に際してのス
る」
。[こ れ は 英 語 で 何 と 言 っ た か。〝 Proactive
[1]
場で報告書が出されると思われる。今秋にもと
動いている。巨視的な観点から見る努力が必要
スがつくられていて、そこに積極的にかかわっ
を積極的平和主義の国にしようと決意してい
言われたが来春以降という話も出てきている。
だ。ゆっくり変えられていこうとする先にある
が 反 対 意 見 だ っ た。 こ の 特 定 秘 密 保 護 法 と 日
ものは何か。外交カードとして軍隊という実力
特 定 秘 密 保 護 法 は、 パ ブ リ ッ ク コ メ ン ト が
た っ た 日 間 で 9 万 件 集 ま っ た。 し か も 8 割
制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇
)と新防衛大綱の
National Security Strategy
策定が年内になされると言われている。安保法
青井 未帆
07
10
本 版 N S C( 国 家 安 全 保 障 会 議、 National 組織を使える国にすることではないか。憲法9
25
15
広島ジャーナリスト
≪ 58 ≫
現行憲法と改正草案の比較(下線は青井教授、2012 年改正草案でのゴシック体はママ)
日本国憲法
第2章
第9条1項
日本国民は、正義と秩序を基調とする
国際平和を誠実に希求し国権の発動た
る戦争と、武力による威嚇又は武力の
行使は、国際紛争を解決する手段とし
ては、永久にこれを放棄する。
第9条2項
前項の目的を達するため、陸海空軍そ
の他の戦力は、これを保持しない。国
の交戦権は、これを認めない。
第9条の2第1項
我が国の平和と独立並びに国及び国民
の安全を確保するため、内閣総理大臣
を最高指揮権者とする自衛軍を保持す
る。
第9条の2第2項
自衛軍は、前項の規定による任務を遂
行するための活動を行うにつき、法律
の定めるところにより、国会の承認そ
の他の統制に服する。
第9条の2第3項
自衛軍は、第1項の規定による任務を
遂行するための活動のほか、法律に定
めるところにより、国際社会の平和と
安全を確保するために国際的に協調し
て行われる活動及び緊急事態における
公の秩序を維持し、又は国民の生命若
しくは自由を守るための活動を行うこ
とができる。
第9条の2第4項
前2項に定めるもののはか、自衛軍の
組織及び統制に関する事項は、法律で
定める。
第9条の2第1項
我が国の平和と独立並びに国及び国民
の安全を確保するため、内閣総理大臣
を最高指揮官とする国防軍を保持する。
第9条の2第2項
国防軍は、前項の規定による任務を遂
行する際は、法律の定めるところによ
り、国会の承認その他の統制に服する。
第9条の2第3項
国防軍は、第1項に規定する任務を遂
行するための活動のほか、法律の定め
るところにより、国際社会の平和と安
全を確保するために国際的に協調して
行われる活動及び公の秩序を維持し、
又は国民の生命若しくは自由を守るた
めの活動を行うことができる。
て い く、 そ うい う こ と を 指 して
い る。 私 た ち が「 平 和 主 義 」 と
いう言葉で考えてきた内容とか
なり違う。
問 題 は、 そ の こ と が も た ら す
波 及 的 効 果 だ。 も し 日 本 が 地 球
の裏側まで軍事組織を出せる国
に な る と する な ら、 私 た ち の国
「積極的平和主義」が使われて
第9条の2第4項
前2項に定めるもののほか、国防軍の
組織、統制及び機密の保持に関する事
項は、法律で定める。
第9条の2第5項
国防軍に属する軍人その他の公務員が
その職務の実施に伴う罪又は国防軍の
機密に関する罪を犯した場合の裁判を
行うため、法律の定めるところにより、
国防軍に審判所を置く。この場合にお
いては、被告人が裁判所へ上訴する権
利は、保障されなければならない。
第9条の3
国は、主権と独立を守るため、国民と
協力して、領土、領海及び領空を保全し、
その資源を確保しなければならない。
(日弁連配布資料をもとに作成)
民気質、文化、人権保障、自由、
これらのありようは根本的に変
わっていくと思われる。
個人と国家の
一体化ありえない
日本国憲法第2章と改正草案
に 加 え て、2 0 0 5 年 に 自 民党
が公にした新憲法草案での第2
年
12
改正草案(2012 年)
第2章 安全保障
第9条1項
日本国民は、正義と秩序を基調とする
国際平和を誠実に希求し、国権の発動
としての戦争を放棄し、武力による威
嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決
する手段としては用いない。
第9条2項
前項の規定は、自衛権の発動を妨げる
ものではない。
章、 こ の 三 つ の 対 照 表 を 付 け た
年より
05
= 別 表 参 照。 一 見 し て、 条 文 の
数 が 増 え て い る。
2013.12.20
の も の の 方 が 増 え て い る。 そ の
年の9条1項は現行憲
05
中で既に説明があったところな
の で、
法と全く変わっていなかったが
年は少し文言が変わった。
「放
棄 す る 」 も の が 限 定 さ れ た。
年 の 第 9 条 1 項、「 最 高 指 揮 権
05
12
新憲法草案(2005 年)
第2章 安全保障
第9条1項
日本国民は、正義と秩序を基調とする
国際平和を誠実に希求し、国権の発動
たる戦争と、武力による威嚇又は武力
の行使は、国際紛争を解決する手段と
しては、永久にこれを放棄する。
第9条2項
削除
≪ 59 ≫
出 発 点 に し て い る。 安 全 保 障 を 私
負ったりした方々への深い反省を
先 の 大 戦 で 亡 く な っ た り、 傷 を
た。防空精神が即ち日本精神だった。空襲があ
人に至るまで国が管理する状況がつくられてい
であり、隣保班であった。日本国民は末端の個
うので、周到な仕組みが作られた。それが隣組
た。法律上の義務だけでは、みんな逃げてしま
たち一般市民が床屋談議のように
ることが明らかでも人々は逃げ出すことを許さ
人 権 侵 害 以 外 の 何 物 で も な い。 主
なる戦争も生身の人間にとっては
い。 国 家 と は 観 念 に 過 ぎ ず、 い か
ことをきっかけに、国家が国民を管理する方向
団をつくる。朝鮮人大虐殺をする。このような
流言飛語に惑わされ在郷軍人を中心として自警
くの人が後ろめたい気持ちがあったと思うが、
的状況を言えば、直前に朝鮮併合があった。多
きなかった。政治も不安定だった。国が国民を
意し…」とある。
「政府の行為」による惨禍を
争の惨禍が起ることのないやうにすることを決
は」だ。その後に「政府の行為によって再び戦
初の文章に注目してほしい。主語は「日本国民
防空法という法律があった。空襲があれば消火
ていたはずだ。実は、逃げ出すことのできない
がある。事前に、空襲で狙われるところは分かっ
民はなぜ逃げなかったのか、という素朴な疑問
国との責任の問題に注目したい。当時の日本国
ではないか、という問題は置いておいて、日本
いる。でも「自主」だ。戦前とは一線を画して
りがあり、自主防災組織をつくることを進めて
地方公共団体が防災のためにできることには限
保共同の精神という言葉が使われている。国や
災害対策基本法でも、自主防災組織の説明で隣
隣 保 班 は 隣 近 所 と い っ た 意 味 だ が、 現 行 の
広島ジャーナリスト
いう言葉で憲法は始まっている。
語 る 時、 擬 人 化 し て「 ア メ リ カ が
れず、法律上消火、防火を義務付けられた。
防 空 法 は、 関 東 大 震 災 を 契 機 と し た と も 言
怒 っ て い る 」 と か「 日 本 が 困 っ て
いる」とか言いがちだが、国が怒っ
権国家と主権国家の争いとは観念
に進んだと言われる。それが意味するのは、社
われる。震災で多数が火事で亡くなった。政治
と 観 念 の 戦 い だ。 で も 私 た ち は 戦
た り、 困 っ た り す る こ と は 本 来 な
争を観念の問題としてはとらえない。それは人
会の隅々まで軍事的なものの考え方が広まって
年は「最高指揮官」という職名
が死ぬからだ。ここに、論理における小さくは
者」とあるが
になった。米国大統領が最高司令官であるとい
いたということだ。
管理するようになったのは、潜在的暴力として
戦前の日本は軍隊をうまくコントロールで
ないギャップがある。「私」と国家が一体化す
広 島、 長 崎 で は 原 爆 で た く さ ん の 方 が 亡 く
の国民を管理しないと国が危機にひんする、そ
年の草案と比べても違いがみら
なった。原爆だけでなく、一つの都市で100
ういう考え方もあったと思われる。国の管理を
このように、
れる。軍隊としての標準装備を備える方向に変
にも上ると言われる。この空襲は国際法違反
人以上が亡くなった空襲を受けた都市は全国で
こうむったのは、一人ひとりの個人だ。政府や
しなくてはいけないという義務が設定されてい
戦 争 と 人 権 に つ い て。 日 本 国 憲 法 前 文 の 最
国家は生身の人間でないから、惨禍を被りよう
74
がない。このことを強く意識した文章だ。こう
肩代わりするのが隣組であり隣保班だった。
わっていることがうかがえる。
た。 年には第9条の2第5項を新たに作った。 ることはあり得ない、ということだ。
うのと同じようなタイプの規定の方向になっ
12
05
12
≪ 60 ≫
やってもらう。国家が一手に実力を持つ。だか
「防衛を取り戻す」構想は、国家安全保障基
る 提 言 」 と し て 自 民 党 が 出 し た。[こ の 中 に、
いま動いているさまざまな動きが現れている。
[3]
ら憲法が、実力の行使のしかた、権力の行使の
私 た ち は 実 力 を 行 使 で き ず、 代 わ り に 国 家 に
第 2 次 大 戦 中 の わ が 国 は、 国 民 は 表 現 の 自
しかたについて限界を付している。
いる。
由を持っていなかった。マスメディアも、報道
「軍事」
。切り札を切られると、あっという間に
てしまっていた。トランプに例えれば切り札は
んと与えなかった。軍事が国家や社会を否定し
げているが、そういう側面とともに、実力装置
が起きたりもする。9条は平和という理想を掲
な問題だった。軍隊が大きくなるとクーデター
をどうやってコントロールするか、ずっと大き
を守るために必要な実力は大きさが違う。軍隊
国 内 の 治 安 を 守 る た め に 必 要 な 実 力 と、 国
している。第二点、自衛隊と国防軍では、おお
を前提としたものではなく、改正草案を前提と
れている状況がある。第一点として、現行憲法
とり戻す」構想の、上からでなく下から変えら
衛省改革などがある。ピラミッド状の「防衛を
特定秘密保護法、国防の基本方針の見直し、防
本法案のもとでさまざまな改正が位置づけられ
の自由を持っていなかった。政府も情報をきち
人権が負けてしまう。そういう状況があった。
をコントロールするという側面を持つ。
ており、
下位の取り組みとして日本版NSC法、
樋 口 陽 一・ 東 北 大 名 誉 教 授 が[、 憲 法 9 条 は
わが国の自由を下支えしていると指摘されてい
[2]
るのは、まことに正当だ。9条によって自由と
ず、下から変えられていく。本当は、憲法改正、
伝 統 的 に 国 際 法 は 戦 争 を 前 提 に し て き た。 もとのロジックのありようが違うにもかかわら
現在、戦争は違法とされ、さらに武力行使も原
防衛、安全保障のあり方から考えなくてはいけ
人権保障は、相当に下支えされている。人権は
人権と見がちだが、それを支えていたのが、軍
則違法とされている。しかし、世界には軍隊が
提にしているので、限界がある。武力行使を原
由のありようを捨ててしまっていいのか。捨て
国になりたいのだろうか。これまでの人権、自
私 た ち は 本 当 に「 積 極 的 平 和 主 義 」 に 立 つ
ない。
事的な合理性を貫徹させない、そういう論理を
則として違法化する、これを出発点に置かなく
与えていた9条であることに注意を払いたい。 あふれている。国連自体も軍事による平和を前
安全保障は硬質の概念だが、人権保障と結びつ
てはならない。別のいい方をすれば、全ての国
るのは簡単だが、もう一度つくるのは大変だ。
を殺してきていない。軍縮外交を旗として掲げ、
私たちの国は、日本という名のもとで外国で人
が平和主義に立たなくてはいけない。
いている。
上からでなく 下 か ら の 変 化
憲 法 改 正 草 案 が 提 唱 す る、 自 衛 隊 か ら 国 防
軍に変えるというのは、看板のすげ替えにとど
来ているのではないか。
条がめざす理想をこそ、考えていくべき時期に
うのが、一つ象徴的だが、私たちは本来的に9
まらない。人権、自由のあり方などから見ても、 それなりの地位を占めている。国防軍設置とい
国 家 は 観 念 に 過 ぎ な い と 申 し あ げ た。 こ れ
自衛隊から国防軍へというのが大きな問題
だけを聞くと弱々しい存在に聞こえるかもしれ
であるにもかかわらず、憲法改正草案には、ど
大きな意味を持つ。
の命を奪う。
罪を犯したという疑いで逮捕する。
ないが、そういうことはない。死刑によって人
火事の時、周りの家を「破壊消防」できる。国
家は自らの意思を貫徹するだけの実力を持つ。 う変えていくのか、見取り図が描いてない。で
は、無計画に動いているのか。そんなことはな
[2]ひぐち・よういち 1934~。東京大名誉教授。
い。「 防 衛 を 取 り 戻 す 」 構 想 と い う の が あ る。
比較憲法学。「憲法という作為―『人』と『市民』の連
かか
6月4日付「新『防衛計画の大綱』策定に係わ
関と緊張」(岩波書店、2009年)など著書多数。 [ 3] 自 民 党 ホ ー ム ペ ー ジ( https://www.jimin.jp/
)で見ることができる。 index.html
2013.12.20
≪ 61 ≫
概
(要
)
保障に関する施策を総合的に策定し実施する責
務を負う。
2 国は、教育、科学技術、建設、運輸、通信
その他内政の各分野において、安全保障上必要
な配慮を払わなければならない。
3 国は、我が国の平和と安全を確保する上で
必要な秘密が適切に保護されるよう、法律上・
制度上必要な措置を講ずる。
4 地方公共団体は、国及び他の地方公共団体
その他の機関と相互に協力し、安全保障に関す
る施策に関し、必要な措置を実施する責務を負
う。
5 国及び地方公共団体は、本法の目的の達成
のため、政治・経済及び社会の発展を図るべく、
必要な内政の諸施策を講じなければならない。
6 国及び地 方公共団体は、広報活 動を通じ、
安全保障に関する国民の理解を深めるため、適
切な施策を講じる。
第4条 (国民の責務)
国民は、国の安全保障施策に協力し、我が国
の安全保障の確保に寄与し、もって平和で安定
した国際社会の実現に努めるものとする。
第5条 (法制上の措置等)
政府は、本法に定める施策を総合的に実施す
るために必要な法制上及び財政上の措置を講じ
なければならない。
第6条 (安全保障基本計画)
政府は、安全保障に関する施策の総合的かつ
計画的な推進を図るため、国の安全保障に関す
る基本的な計画(以下「安全保障基本計画」と
いう。)を定めなければならない。
2 安全保障基本計画は、次に掲げる事項につ
いて定めるものとする。
一 我が国の安全保障に関する総合的かつ長
期的な施策の大綱
二 前号に掲げるもののほか、安全保障に関
する施策を総合的かつ計画的に推進するために
必要な事項
3 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の
決定があったときは、遅滞なく、安全保障基本
計画を公表しなければならない。
4 前項の規定は、安全保障基本計画の変更に
ついて準用する。
第7条 (国会に対する報告)
政府は、毎年国会に対し、我が国をとりまく
安全保障環境の現状及び我が国が安全保障に関
して講じた施策の概況、ならびに今後の防衛計
画に関する報告を提出しなければならない。
別途、安全保障会議設置法改正によって、
・安全保障会議が安全保障基本計画の案を作
成し、閣議決定を求めるべきこと
・安全保障会議が、防衛、外交、経済その他
の諸施策を総合するため、各省の施策を調整
する役割を担うこと
を規定。
第8条 (自衛隊)
外部からの軍事的手段による直接または間接
の侵害その他の脅威に対し我が国を防衛するた
め、陸上・海上・航空自衛隊を保有する。
2 自衛隊は、国際の法規及び確立された国際
慣例に則り、厳格な文民統制の下に行動する。
3 自衛隊は、第一項に規定するもののほか、必
要に応じ公共の秩序の維持に当たるとともに、
広島ジャーナリスト
国家安全保障基本法案
平成 年7月4日
第1条 (本法の目的)
本法は、我が国の安全保障に関し、その政策
の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体
の責務と施策とを明らかにすることにより、安
全保障政策を総合的に推進し、もって我が国の
独立と平和を守り、国の安全を保ち、国際社会
の平和と安定を図ることをその目的とする。
第2条 (安全保障の目的、基本方針)
安全保障の目的は、外部からの軍事的または
非軍事的手段による直接または間接の侵害その
他のあらゆる脅威に対し、防衛、外交、経済そ
の他の諸施策を総合して、これを未然に防止し
または排除することにより、自由と民主主義を
基調とする我が国の独立と平和を守り、国益を
確保することにある。
2 前項の目的を達成するため、次に掲げる事
項を基本方針とする。
一 国際協調を図り、国際連合憲章の目的の
達成のため、我が国として積極的に寄与するこ
と。
二 政府は、内政を安定させ、安全保障基盤
の確立に努めること。
三 政府は、実効性の高い統合的な防衛力を
効率的に整備するとともに、統合運用を基本と
する柔軟かつ即応性の高い運用に努めること。
四 国際連合憲章に定められた自衛権の行使
については、必要最小限度とすること。
第3条 (国及び地方公共団体の責務)
国は、第2条に定める基本方針に則り、安全
24
≪ 62 ≫
同項の任務の遂行に支障を生じない限度におい
て、別に法律で定めるところにより自衛隊が実
施することとされる任務を行う。
4 自衛隊に対する文民統制を確保するため、
次の事項を定める。
一 自衛隊の最高指揮官たる内閣総理大臣、
及び防衛大臣は国民から選ばれた文民とするこ
と。
二 その他自衛隊の行動等に対する国会の関
与につき別に法律で定めること。
第9条 (国際の平和と安定の確保)
政府は、国際社会の政治的・社会的安定及び
経済的発展を図り、もって平和で安定した国際
環境を確保するため、以下の施策を推進する。
一 国際協調を図り、国際の平和及び安全の
維持に係る国際社会の取組に我が国として主体
的かつ積極的に寄与すること。
二 締結した条約を誠実に遵守し、関連する
国内法を整備し、地域及び世界の平和と安定の
ための信頼醸成に努めること。
三 開発途上国の安定と発展を図るため、開
発援助を推進すること。なおこの実施に当たっ
ては、援助対象国の軍事支出、兵器拡散等の動
向に十分配慮すること。
四 国際社会の安定を保ちつつ、世界全体の
核兵器を含む軍備の縮小に向け努力し、適切な
軍備管理のため積極的に活動すること。
五 我が国と諸国との安全保障対話、防衛協
力・防衛交流等を積極的に推進すること。
第 条(国際連合憲章に定められた自衛権の行
使)
第2条第2項第4号の基本方針に基づき、我
10
が国が自衛権を行使する場合には、以下の事項
を遵守しなければならない。
一 我が国、あるいは我が国と密接な関係に
ある他国に対する、外部からの武力攻撃が発生
した事態であること。
二 自衛権行使に当たって採った措置を、直
ちに国際連合安全保障理事会に報告すること。
三 この措置は、国際連合安全保障理事会が
国際の平和及び安全の維持に必要な措置が講じ
られたときに終了すること。
我が国と密接な関係にあ
四 一号に定める 「
る他国 に
」 対する武力攻撃については、その国
に対する攻撃が我が国に対する攻撃とみなしう
るに足る関係性があること。
我が国と密接な関係にあ
五 一号に定める 「
る他国 に
」 対する武力攻撃については、当該被
害国から我が国の支援についての要請があるこ
と。
六 自衛権行使は、我が国の安全を守るため
必要やむを得ない限度とし、かつ当該武力攻撃
との均衡を失しないこと。
2 前項の権利の行使は、国会の適切な関与等、
厳格な文民統制のもとに行われなければならな
い。
別途、武力攻撃事態法と対になるような「集
団自衛事態法」(仮称)、及び自衛隊法におけ
る「 集 団 自 衛 出 動 」( 仮 称 ) 的 任 務 規 定、 武
器使用権限に関する規定が必要。
当該下位法において、集団的自衛権行使に
ついては原則として事前の国会承認を必要と
する旨を規定。
第 条(国際連合憲章上定められた安全保障
措置等への参加)
我が国が国際連合憲章上定められ、又は国際
連合安全保障理事会で決議された等の、各種の
安全保障措置等に参加する場合には、以下の事
項に留意しなければならない。
一 当該安全保障措置等の目的が我が国の防
衛、外交、経済その他の諸政策と合致すること。
二 予め当該安全保障措置等の実施主体との
十分な調整、派遣する国及び地域の情勢につい
ての十分な情報収集等を行い、我が国が実施す
る措置の目的・任務を明確にすること。
本条の下位法として国際平和協力法案(い
わゆる一般法)を予定。
第 条(武器の輸出入等)
国は、我が国及び国際社会の平和と安全を確
保するとの観点から、防衛に資する産業基盤の
保持及び育成につき配慮する。
2 武器及びその技術等の輸出入は、我が国及
び国際社会の平和と安全を確保するとの目的に
資するよう行われなければならない。特に武器
及びその技術等の輸出に当たっては、国は、国
際紛争等を助長することのないよう十分に配慮
しなければならない。
2013.12.20
11
12
月6日深夜、第185国会(臨時会)で特
定秘密保護法が成立した。メディアの評価も二
採決、毎日=民主主義の土台壊すな、読売=指
定対象絞り「原則公開」確実に、日経=秘密保
護法案の採決強行は許されない、産経=成立に
向け大きな前進だ、東京=国民軽視の強行突破
だ―であった。これらからわかるとおり、 月
れることはない」というのは、放射能汚染水を
して朝日)
。なお、日経は当初より一貫して漏
義〉を見出しにとった社説で応じた(同趣旨と
を後退させぬ」
(毎日)と、くしくも〈民主主
は、
「民主主義を取り戻せ」
(東京)
「民主主義
案に対し強い批判の姿勢を示し続けた立場から
立を歓迎した(同趣旨として産経)
。他方で法
の先進国並みの機密保全体制が整った」と法成
見出しのもと、
「日本にもようやく米英など他
すらなく通ってしまった。法成立後に首相が会
議の結果の成案は、実質的な審議をされること
かも政治的取引の中で秘密裏に行われた修正協
しかし結果から見れば、法はあまりにも穴だ
らけで、閣僚間ですらその解釈はバラバラ、し
フジは、6日発行号の1面で「法律は国益・国
上でなされていたということになる。なお夕刊
よそ社説に示されたトーンで記事の展開が紙面
った。当時、藤原紀香の反対ブログが話題にな
リックコメントが開始されたあとも変わらなか
9月3日に法案の概要が示され、その後、パブ
常の国」『図書』
は沈黙し たままだ」(赤川次郎「 非常の町、非
ビューを掲載、産経も翌7日の朝刊で転載した。 言えば「遅きに失した」対応であり、もはや大
民を守るためのもの」との安倍首相独占インタ
ったが、紙面上でもそれはまだ色モノ扱いであ
そうした法案の問題点を明らかにするという
観点からは、新聞も含め既存メディアは一言で
ことはいうまでもない。
ったく同様、空疎で何の保障にもなっていない
7日に法案が国会で審議入りして以降は、おお 「完全にコントロールしている」というのとま
賛成しない立場で、当日の社説も「
『知る権利』 見でわざわざ説明不足を認め、運用上の心配は
洩防止の仕組みは必要としながらも、法案には
ないと言わざるを得ないことに、図らずも法自
って、問題点を指摘する記事はきわめて限定的
月号)と指摘された状況は、
勢を変えるには至らなかった。「大手マスコミ
揺るがす秘密保護法成立を憂う」としていた。
であった。そうした新聞社の空気は、当然のこ
11
月7日付朝刊)の
やまだ・けんた 専修大人文・ジャーナリズム学
科教授、専門は言論法、ジャー
ナリズム論。1959 年京都市生
まれ。早稲田大大学院ジャーナ
リズムコース、法政大法学部等
でも講師を務める。日本ペンク
ラブ理事・言論表現委員会委員
長、自由人権協会(JCLU)理事、
世田谷区情報公開・個人情報
保護審議会委員ほか。近著に、
『3.11 とメディア―新聞・テレビ・WEBは何をど
う伝えたか』(トランスビュー)『言論の自由―拡大
するメディアと縮むジャーナリズム』(ミネルヴァ
書房)
『ジャーナリズムの行方』
(三省堂)
『法とジャー
ナリズム 第 2 版』(学陽書房)『政治のしくみと議
員のしごと』(トランスビュー、共編著)など。毎
日新聞、琉球新報で連載中。
体に大きな問題があることが露呈しているとい
27
の深化につなげよ」
(読売
山田 健太
えるだろう。もちろん、首相が「自由が制約さ
分しており、一方の立場からは「国家安保戦略
12
ちなみに、法案の衆院可決時( 月 日付朝
刊)の在京紙社説は、朝日=民意おそれぬ力の
11
12
11
遅きに失した 紙 面 展 開
~メディアは何を主張し、 何を主張しなかったのか~ 知る権利と秘密保護法
≪ 63 ≫
広島ジャーナリスト
≪ 64 ≫
たとえば、有識者と呼ばれる論者が筆を振る
う各紙の論壇では、最終盤においてもなお、
「十
らかだ。
とながら新聞社内だけの問題ではないことも明
にも強く、
なかった。こうした訳知り顔の空気は現場記者
まし」として法制化を後押しするものが少なく
振り、「法案 に問題はあるにせよ、 ないよりは
経を尖らせるのは当然」といった言説が大手を
民放各局は説明不足や拙速審議を戒めつつも、
放送各局も、反対姿勢を明確に示す番組やコ
ーナーが多いTBSやテレビ朝日に対し、他の
降であったことを、記憶しておく必要がある。
月段階においても担当記者以外、 法そのものには反対せずの立場を示すという違
年一日のごとく絶対反対」を唱える市民運動を
も少なくなかった。
解しない原理主義的考えとして嫌悪感を示す者
由の危険性を説く声に対しては、国際情勢を理
社内ではほとんど関心がなく、むしろ表現の自
年 月
出版社系週刊誌にも言え、毎日新聞紙上でも指
は無関心を装うものが目立った。同様の傾向は
夕方や夜の番組においても、日本テレビやフジ
いを見せた。さらにいえば、報道系といわれる
日付「雑誌批評」
)。確認できたところ
摘したが、見事な沈黙ぶりであった(2013
実際、朝日新聞労組は、秘密保護法に対して
反対しない方針を決め、国会請願デモなどへの
見られたくない、というものであるという。ま
の理由として伝聞するところでは、左翼集団と
組合員の参加も自粛を求めたとされている。そ
刊プレイボーイ』の問題指摘があった程度とい
表明を行い、危険性を記事化したほかでは、
『週
では、
『SAPIO』『週刊朝日』が誌上で反対
が虎の尾を踏むことであることを感じ取ったと
いうことだろう。そしてそれは、今日のメディ
アで識者として持ち上げられ活躍する論者にも
たことと関係があるのか、朝日の反対姿勢を明
理解すればよいのかは極めて悩ましい。そうし
訳のごとく積極的に紙面展開するさまを、どう
で法案の問題点を、最終局面になってから言い
団」と認識しているということだからだ。一方
市民の意見表明を「社会から遊離した危険な集
こうした状況は悲劇的だ。なぜなら、似たよ
うな構図にある原発反対のデモも含め、記者は
際、政治の世界では公明党に関し、消費税軽減
のではないかとの勘ぐりも少なからずある。実
聞適用が話題になったことから、裏取引がある
いている。あるいは、同時並行で軽減税率の新
身の既得権益擁護のため、との厳しい見方も続
ネット上では、メディアが反対しているのは自
意見表明を行っている。こうした動きに対して
すぐに、「知る権利を損なう恐れがある」との
自由」への懸念である。日本新聞協会も成立後
共通するものだ。
日の閣議決定以
法案に賛成した媒体を含め、
そうしたなかで、
共通して指摘されてきた問題が「取材・報道の
取材報道の自由への脅威
えよう。
19
さに「賢い」記者は、この法案に反対すること
11
確にしての報道は、政府方針が確定し法成立の
見通しが明らかになった 月
25
批判し、
「安全保障上、政府が秘密の保全に神
参院採決直前の国会正門前、幾重にも並ぶ警
官の背後にメディアの放列、写真の手前にバ
リケードを挟んで抗議の市民が陣取った
(筆者撮影)
10
2013.12.20
10
≪ 65 ≫
これまでも、再販など業界の経営に大きな影
響力がある課題に直面するたびに、そのときの
る。
であったとの報道があとを絶たない状況にあ
税率導入と秘密保護法成立への協力がバーター
ある(法がもつ根本的な問題については、『世界』 な取り締まりを可能にするマジックワードであ
ささかもその問題を解消するには至らないので
権利に対する「配慮条項」を追加しようが、い
になる。ここで改めて同法がもつ問題全般に言
これは適用範囲を狭めたように見せかけてはい
ための「第三者的機関」を設置しようが、知る 「 著 し く 不 当 な 方 法 」 な る 言 葉 の 挿 入 だ ろ う。
及する余裕はないが、たとえ秘密指定の監視の
るものの、実際は逆に以下に示すとおり恣意的
生じさせる結果になっている。その最たる例が
である。しかし実際はその結果、むしろ問題を
関する擁護という側面があることを否定はしな
議で問題ありとして廃案になった法案より、よ
になる。その意味するところは、過去の国会審
会審議でも再三俎上に載せられた外務省情報漏
が理由で処罰されることになる。なぜなら、国
ったととしても取材方法に問題があれば、それ
取材行為についても当てはまり、公益目的があ
を問わず取り締まることだ。しかも同じことは
たい)。
あるいは過去に比較して今回の法案の特徴
そしてなにより、この法の基本構造の欠陥は、 は、政府の不当な行為の告発など、いかなる公
類似の法案と比較することによって、より顕著 益目的があろうとも、情報漏洩を理由のいかん
り、取材の対象外を広げる効果をもちかねない。
い。しかし、あえていえば再販維持も軽減税率
り悪質な法案が審議不十分のまま成立し、私た
洩事件の最高裁判決では、もたらされた情報に
月号および1月号所収の拙稿を参照いただき
政 権 と の 距 離 の 近 さ、 あ る い は 政 策 批 判 の 矛
先が鈍っているのではないかとの批判がなさ
導入も直接的には新聞社の経営に資することで
ちの生活を縛ることになるということだ。具体
よって得られた国民の利益が省みられることは
れ て き た。 こ う し た 可 能 性 が な い と 断 定 す る
あるにせよ、翻っていえば表現の自由強化のた
原案と4党修正後の成案、その一方で4半世紀
( 詳 細 は 拙 著『 言 論 の 自 由 』 ミ ネ ル ヴ ァ 書 房、 的には、特定秘密保護法の最初に示された政府
めの社会的制度の一つであることに違いはない
前に議論された秘密保護法(スパイ防止法)の
一切なく、またその情報が真に隠す価値がある
材料を持ち合わせないし、自己の有する権利に
2012年)
。
原案と修正案を比較することにしたい= ㌻別
権利の負託にこたえるための権利行使であり、 表参照。
令の整備が必要であるほか、規則、政令等に委
「第三者的機関」の設
法は成立したものの、
置も含め、今後、国会法の改正も含めた関係法
最大の危機があるともいえるだろう。
現状にこそ、現在のジャーナリズムが直面する
れず、むしろメディアと市民の両者が乖離した
までない。その意味では、こうした理解が得ら
けだと説明されてきた。教唆犯に関する目的規
つく。それは適用に絞りをかけるための条件付
情報隠しであろう。さらには条文の長さも目に
意的な取り締まりと官僚組織内で進む無制限な
張がもたらすものは、行政による表現活動の恣
むなしとするが、その曖昧模糊とした秘密の拡
ーネット等の情報環境や国際情勢の変化からや
4法案を比較してすぐにわかるのは、処罰対
象(秘密の対象)の拡大である。政府はインタ
あるということの意味は、政府(捜査当局)が
会観念」上許されない行為のみが処罰の対象で
受け売りしたのが国会答弁で、
繰り返された「社
上許されないものだとしているからだ。それを
る上記漏洩事件では、不当な取材とは社会観念
三重の誤りを犯している。なぜなら前例とされ
えに、悪しき前例を絶対視しているという二重
しかも、政府が「歯止め」と説明する「不当
な取材」の判断基準は、曖昧模糊としているう
まま信じるにとどまった。
ねられる部分も多く、施行までの1年弱でどこ
定の付加しかり、表現の自由の配慮条項しかり
66
まで精緻な制度作りができるかが問われること
取材行為にかかわる重大事項であることは言う
情報であったかどうかも、政府の言い分をその
さらにいえば、今回の秘密保護法と取材の自
由の関係が問題となるのは、それが市民の知る
11
広島ジャーナリスト
≪ 66 ≫
解釈適用
罰則
不当な方法
外国の利益若しくは自己の不正の利 (取材の相手方の人
益を図り、又は我が国の安全若しく 格を著しく蹂躙する
は国民の生命若しくは身体を害すべ など社会観念上是認
き用途に供する目的で、人を欺き、 することができない
人に暴行を加え、若しくは人を脅迫 もの)
する行為により、又は財物の窃取若 ※法規定なし
しくは損壊、施設への侵入、有線電
気通信の傍受、不正アクセス行為そ
の他の特定秘密を有する者の管理を
害する行為により、特定秘密を取得
した者
人を欺き、人に暴行を加え、若しく (取材の相手方の人
は人を脅迫する行為により、又は財 格を著しく蹂躙する
物の窃取若しくは損壊、施設への侵 など社会観念上是認
入、有線電気通信の傍受、不正アク することができない
セス行為その他の特定秘密を有する もの)
者の管理を害する行為により、特定 ※法規定なし
秘密を取得した者
(左から右へ年代順)
目的
我が国の安全保障(我が国の存立に関わ これを拡張して解釈して、国民の基
る外部からの侵略等に対して国家及び国 本的人権を不当に侵害するようなこ
民の安全を保障することを言う。以下同 とがあってはならず、国民の知る権
じ。)に関する情報のうち特に秘匿するこ 利の保障に資する報道または取材の
とが必要であるものについて、これを的 自由に配慮しなければならない。出
確に保護する体制を確立した上で収集し、版又は報道の業務に従事する者の取
整理し、及び活用することが重要である 材行為については、専ら公益を図る
ことに鑑み、当該情報の保護に関し、特 目的を有し、かつ、法令違反又は著
定秘密の指定及び取扱者の制限その他の しく不当な方法によるものと認めら
必要な措置を定めることにより、その漏 れない限りは、これを正当な業務に
えいの防止を図り、もって我が国及び国 よる行為とするものとする。
民の安全の確保に資することを目的とす
る。
我が国の安全保障に関する情報のうち特 報道の自由に十分に配慮するととも
に秘匿することが必要であるものについ に、これを拡張して解釈して、国民
て、これを的確に保護する体制を確立し の基本的人権を不当に侵害するよう
た上で収集し、整理し、及び活用するこ なことがあってはならない。
とが重要であることに鑑み、当該情報の
保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者
の制限その他の必要な措置を定めること
により、その漏えいの防止を図り、もっ
て我が国及び国民の安全の確保に資する
ことを目的とする。
防衛秘密の保護に関する措置を定めると 表現の自由その他国民の基本的人権
ともに、外国に通報する目的をもって防 を不当に侵害するようなことがあっ
衛秘密を探知し、若しくは収集し、又は てはならない。出版又は報道の業務
防衛秘密を外国に通報する行為等を処罰 に従事する者が、専ら公益を図る目
することにより、これらのスパイ行為等 的で防衛秘密を公表し、又はそのた
を防止し、もって我が国の安全に資する めに正当な方法により業務上行った
行為はこれを罰しない。
ことを目的とする。
外国に通報する目的をもって、又は 「不当な方法」とは、
不当な方法で、防衛秘密を探知し、 法令に違反し、対価
を供与し、偽計を用
又は収集した者
い、又は、秘匿状態
にある文書、図画等
をみだりに開放する
等社会通念上是認す
ることができない方
法をいう
外国のために国家秘密を探知し、又は収 これを拡張して解釈して、基本的人 外国に通報する目的をもって、又は
集し、これを外国に通報する等のスパイ 権を不当に侵害するようなことがあ 不当な方法で、国家秘密を探知し、
又は収集した者
行為等を防止することにより、我が国の ってはならない。
安全に資することを目的とする。
2013.12.20
特定秘密の保護に関する 特定秘密の保護に関する法律案
法律案(政府原案)
(修正案)=成立したもの
防衛秘密に係るスパイ行
為等の防止に関する法律
案(新案)=廃案になっ
たもの
国家秘密に係
るスパイ行
為等の防止に
関する法律案
(旧案)
ディアがそれを了解している。
範に使うことを政府は選択し、そして多くのメ
故調査委員会の記録も見られずじまいだ。おそ
かかわる文書の公開に応じていないし、原発事
府の恥ずかしい政策決定のミスを覆い隠すため
の自己に都合のよい解釈によって架空の
「良識」 問題を見てもわかるはずだ。あるいは原発事故
ことが想定されている。そうした検察(政府) ても、アメリカのイラン参戦時の大量破壊兵器
もらわねばならない。そうしたメディアのあり
メディアは真摯に反省し、取り組みを強化して
ールに基づく国家情報の管理」が実現するよう、
の秘密保護」でもなく、「国民によるコントロ
にかかわる記録が出されていない事実は、政権
ようを、
私たち市民も厳しく監視していきたい。
歳で死去」を大きく報じた。二つのニュース 特定秘密保護法が成立した今、私は「一市民
はもちろん偶然の符合だが、私は「国の命運」 として正気を保つこと」を自分に言い聞かせて
南アフリカはマンデラという稀有な人物の存在
だ。「正気を保つこと」はそれほど難しいこと
を失っていったことを忘れてはならないから
という古くさい言葉を久しぶりに思い出した。 いる。戦前、まじめで善意の日本人たちが正気
により、アパルトヘイトという暗い歴史から脱
広島ジャーナリスト
「良識」と称する自らの恣意的な判断基準に従
い、いつでもジャーナリストを拘束する仕組み
物であるか、すでに破棄されていてないか、最
らくそれは恥ずかしくて出すことができない代
であるということだ(判決の読み方については
その延長 線上にはもちろん、「知 る権利(表
現の自由)が国の安全に優越することはありえ
『月刊民放』1月号所収の拙稿参照)
。
結果として無罪になろうと、 ない」という国会答弁でも繰り返された「神話」 初からまったく記録をとっていないかのいずれ
場合によっては、
もっといえば起訴されなくてもよいのである。 が、メディア内にも根強いことが伺われる。こ かであろう。
結果として国を破滅へと追い込んできたからで
政府が発表してほしくないタイミングで拘束し れが誤りであることは、過去の歴史から明らか
しかしそれでは困るのである。「官僚のため
口を封じることが、
法を口実として可能となり、 であろう。国民に嘘をつき、情報を隠すことが、 の官僚による官僚の秘密保護」ではなく、
「政
しかも探知したとされる秘密の中身が開示され
ある。それは日本やドイツの 年前に遡らなく
が形成され、そうした「倫理」違反を違法行為
の問題ではない日本の政府組織の根本的問題で
(参照紙面はいずれも東京都内版)
ないことから、刑事弁護の活動も困難を極める
として裁くという、法と倫理の混同の結果、記
あることも、私たちは学んできている。
年以上
主 義 が「 小 さ き
かせてきた民主
りなりにも根付
を か け て、 曲 が
は戦後
却 し た。 日 本 で
者の取材行為を有罪とした。こうした取材が制
元
記者の視点から
60
定秘密保護法成立」と「ネルソン・マンデラ氏、 権力者たち」の手で壊されようとしている。
大島 寛
日本はいまだに、イラン開戦時の政策決定に
70
約された事例である最高裁決定を、法解釈の規
月7日。各紙朝刊一面は、「特
主義は腐
権力が腐敗するように、秘密
──
[1]
敗する(ダニエル・エルズバーグ) [
2013年
[1]ダニエル・エルズバーグ氏のワシントン・ポスト
紙への寄稿から(2013年7月7日)
12
95
秘密保護法成立を受けて 「正気を保つ」ということ
≪ 67 ≫
≪ 68 ≫
情報開示は民主主義の血液
古い話になる。9・ 同時テロの少し前、
年6月のことだ。ワシントンの中華街にある小
要だ」というステロタイプな言明の意味を問う
が必ず言う「防衛、外交などで秘密は確かに必
による反論封じだ)
。新聞の社説や街頭の市民
触りのよい言葉の意味を問うこと(空虚な言葉
「決められる政治」といった、為政者が使う耳
追された人だ(裁判で公訴棄却)。エルズバー
タイムズ紙などに流し、スパイ法違反などで訴
パーズ(米国防総省秘密文書)をニューヨーク・
戦争の欺瞞を暴く、いわゆるペンタゴン・ペー
グ氏の顔を初めてみた。1971年、ベトナム
思う」。ペンタゴン・ペーパーズの暴露がアメ
造反者が出なかったことの意味を問うこと(党
議拘束という制度の異様さ)─。
今の日本の命運を決めるのは、こうした一人
ひとりの市民の小さな問いの積み重ねではない
かと私は思う。
米国家安全保障局(NSA)の世界的盗聴を暴
露した元職員エドワード・スノーデン氏(国外
策を変更するのはそれほど難しい。
逃亡中)や、ウィキリークスに大量の軍事・外 エルズバーグ氏は、自分はリーク(情報漏え
交秘密情報を流したブラドリー・マニング元陸 い)という言葉は嫌いだから使わない、と語っ
年で服役中)を「全面的に」 た。役人が情報を流してやるという特権的な響
きがあるからだという。リークの代わりに「許
軍上等兵(禁固
倍政権がもくろむ一連の「日本を作りなおす」 支持している。一昨年、 歳の誕生日の日だっ
秘密保護法は、集団的自衛権行使、武器輸出
三原則見直し、日米軍事一体化、改憲─と、安
した。彼はその後も、現在に至るまで反戦活動 時の私は感じた。でもそれは事実だったのだ。
を続け、政 府のウソに挑み続け ている。彼は、 ベトナム戦争が終結に至るまで、それから4年
もかかったのだから。秘密とウソにまみれた政
リカ社会に及ぼした衝撃の大きさに比べ、エル
申し込みはファクス 082-231-3005 かメー
ル [email protected] ▽紀伊国屋書
店広島店、フタバ図書などでも好評発売中
ズバーグ氏の自己評価は控えめすぎると、その
私の中沢啓治さん 渡部久仁子
グ氏はその会合で、「7千㌻の文書をコピーし
放影研交え「黒い雨」シンポ
対談 S・リーパー A・ビナード
あれしきの被曝で何を騒ぐかと。 澤野重男
事故は収束していない 佐藤和良
忘れられぬ2年前 青木達也
原発は社会を分断する 木原省治
「脱原発」決断に至るドイツの歩み 田村栄子
こと(秘密はなければないほど国民にとってよ
広島ジャーナリスト第 12 号
い)
。 法 案 採 決 で 自 民 党 か ら 棄 権 一 人 を 除 き、 た時には、死ぬまで刑務所だと覚悟した」と話
特集「
『核と人間』のいま」
分断された地域、暮らし、家族 若松丈太郎
ではない。例えば、この法律の名に冠せられた
「特定」という言葉は詐術ではないかと問うこ
と(秘密は特定されていない)
。
「第三者機関」
や「有識者諮問会議」はまやかしではないかと
問うこと(政府が言わせたいことを喜んで言う
01
「有識者」はあまたいる)
。
「丁寧」
「安全・安心」 さなレストランで開かれた会合で、エルズバー
11
プログラムの一環だ。日本の状況は決して良好
れているよ」とツイッターでつぶやいていたこ
たか、「私は 自分の歳の数より、何 回も逮捕さ
の利益になるならば、許可があろうがなかろう
可のない情報開示」という言葉を使った。国民
ら。マンデラ氏はもちろん真似できないが、ダ
し、どんな時代にも正気の人たちはいるのだか
も、多くの人が死なずに済んだのではないかと
争をすぐに終わらせることはできなかった。で
か」と尋 ねた。エルズバーグ氏 は答えた。「戦
争にどのような影響を及ぼしたとお考えです
私 は 会 合 で「 秘 密 文 書 の 暴 露 が ベ ト ナ ム 戦
特定秘密保護法をひと言で言えば「国家の、
国家による、
国家のための法律」である。国家、
たちを勇気づけてくれる。
は語った。エルズバーグ氏の言葉と行動は、私
これこそ「民主主義国家を生かす血液だ」と彼
がその情報をオープンにする、ということだ。
とは言えないが、ことさらに悲観することはな
とを思い出す。
ニエル・エルズバーグ氏なら、
元記者の私にとっ
ちに正気と見識が備わっていたことはまれだ
い。いつの時代でも、どこの国でも、権力者た
80
てはより近い存在だ。
2013.12.20
35
≪ 69 ≫
報」。ここで、秘匿されるべ
率的な統治ができる夢の国」
だ。そういう国が、
とは私には思えない。
記者に与えられた「期待役割」
新法の下でメディアの報道活動がどうなる
方面から既に表明されている(そのすべてが却
法理のなさ)についての懸念、批判的論点は各
要はないからだ。何が秘密なのか分からない(こ
とはいえ、彼らがすべての安全保障情報を特
定秘密指定するとは、私は思わない。そんな必
それに秘密が加わった。
者ではないが、その関係者、周辺者への取材⑧
モードのパソコンをワンタッチして起動し閲覧
書を裏返して閲覧、写真撮影して閲覧⑥省エネ
府の部屋に入り、閲覧可能状態のパソコン画面
がないという官僚に、私は出会ったことはない。 ミュニケーション・飲食④入室可能な状態の政
が官僚である限りそうなる。予算と人事に関心
特定秘密取扱者と極めて関係の深い関係部局担
いした公務員は
や紙を閲覧⑤机上に伏せられ放置されている文
可能となったページの閲覧⑥情報取り扱い責任
共謀、教唆、扇動は5年以下の懲役」という罰
る(別表二項)
。
「外国の政府又は国際機関との
メール、電話、直接接触③個人的関係に伴うコ
の法律では実際に、分からない)という状態に
問題点を一例だけ挙げる。特定秘密のうち、
外交に関する事項として法は次のように規定す 国民とマスコミを置けばよい。必要なら「漏え
下されての法案成立だった)
。
年以下の懲役」「不法に秘密
当者の取材⑨情報を得ているだろう政治家の取
命及び身体の保護、領域の保全その他の安全保
則をちらつかせればよい。威嚇効果は満点だ。 材。 [
を取得した者は
障に関する重要なもの」
「安全保障に関し収集
公務員は口を閉ざし、マスコミは縮こまり、社
13
[2]
11
材⑩情報取扱者の家族の取材⑪民間事業者の取
した国民の生命及び身体の保護、領域の保全若
会は無関心に陥る。これこそ、官僚にとって「効 [2] 月 日付朝日新聞
交渉又は協力の方針又は内容のうち、国民の生
官僚たちの「夢の国」
年以下の懲役」「秘密取得の
11
しくは国際社会の平和と安全に関する重要な情
10 10
広島ジャーナリスト
き情報は特定されているか。 私たちが望む健全な民主主義の国、社会である
安全保障に関わる当局者に
と っ て、 自 ら が 持 つ 情 報 を
「重要な情報でない」と考え
首 相、 閣 僚、 官 僚 に と っ て
る者は普通はいない。彼ら、
はすべての情報が重要であ
のか。国会の論戦で目を引く(かつ笑える)記
日、衆院国家安全保障特別
事があった。
月
り、 従 っ て 秘 密 に 指 定 さ れ
委員会で寺田稔氏(自民)が、法案で取材の自
たるかどうか」と質問した。これに対し、森雅
得 る。 な ぜ な ら、 法 律 に そ
そして「秘密指定権」は間違いなく官僚の利
権と化し、秘密は際限なく増殖する。官僚たち
子担当相は「ご指摘の事項はすべてあたらない」
の例は①夜討ち朝駆け②頻繁な
例の取材方法を示して、
「(不当な方法に)あ
政治を行い、その内実は国民に知らせない。責
は自分が使える予算を常に増やしたがると同様
由が保障されない「著しく不当な方法」として
12
う書いてあるのだから。
11
11
すなわち行政(政治家、官僚)が好きなように
年)で、ベトナム戦争の歴史を検証す
る報告書が作成された。内容は①米政
府は国民に秘密裏に戦線を拡大した②
米軍は北ベトナムに軍事的挑発行動を
行った③真の戦争目的は公の「南ベト
ナム防衛」ではなく、
「中国封じ込め」
だった④米国が戦争を続けた大きな理
由は「面子」のためだった─など。報
告書作成チームの一員だったダニエ
ル・エルズバーグは、7000 ㌻の文書
をひそかにコピーしてニューヨーク・
タイムズ紙に提供。同紙は掲載差し止
めをめぐってニクソン政権と争った。
エルズバーグはスパイ罪などで訴追さ
れたが、ニクソン政権による違法捜査
が発覚して連邦裁は公訴棄却とした。
米メディア史上、言論の自由を守る闘
いの金字塔とされる。
任もとらない。権力者にとって、これほど「や
のマクナマラ国防長官の指示(1967
と答弁した。
ン・ペーパーズ事件)
》ケネディ政権
りやすい政治」はないだろう。法理(あるいは、 に、「秘密」情報 を増やしたがる だろう。官僚
《米国防総省秘密文書事件(ペンタゴ
≪ 70 ≫
上に伏せられた文書、ワンタッチ起動、こうし
は、こういうものなのかと分かったからだ。机
ほど官僚がイメージしている記者取材というの
長 々 と 引 用 し た が、 私 が 笑 っ た の は、 な る
りるのが適切というものだ。 年 月、同事件
毎日新聞記者(当時)、西山太吉氏の言葉を借
きた「外務省秘密漏えい事件」の当事者である
ペンタゴン・ペーパーズ事件とほぼ同時期に起
ない。より本質的な問題は、特定秘密保護法の
ら、マスコミ業界という特殊利益の侵害にすぎ
りづらくなるということではない。それだけな
ただ、問題は特定秘密保護法で記者が仕事をや
狙いが、知る権利を奪うことによって、記者だ
わぬ」存在につくり変えることにあるというこ
の一審最終意見陳述で西山氏述べた言葉を、少
「本法廷では検察側証人により外交交渉経過
とだ。記者対策はこうした
「国民浄化キャンペー
た描写は記者とつきあう官僚の脳内を映し出し
アブナイことまで、全部OKなのですよ。心配
秘 密 論 な る も の が〝 鉄 の 法 則 〟 と し て 強 調 さ
ン」の第一歩にすぎないのだ。
けでなく国民全体を国家の管理に従う「もの言
ないでしょ」とメディアに言っているのである
れた。しかし、私の経験によれば、その法則に
(言外に)
。秘密保護法は第
もとづいて現実は動いていないということであ
さて、エルズバーグ氏の「許可のない情報開
示 」 は 自 身 の 力 だ け で 遂 行 さ れ た の で は な い。
のはなにか。それは他ならぬ国民から弾劾され
メディアの覚悟と協力があった。権力側からす
「十分な配慮」がこのリストである。与党議員
といっても過言ではない。政府が刑罰をもって
る秘密である。不当秘密こそが真の秘密である
威嚇しようとするものは、この不当秘密の暴露
に質問させ、答弁でこう答える。これをプロパ
ガンダと言う。
笑 え な い の は、 こ の 答 弁 が 官 僚 が 記 者 に 与
「プレスにとって取材の対象に聖域のないこ
決断を迫られる。掲載することは、国家との全
新聞の紙面に掲載すべきかどうか、新聞社側は
れば「違法に漏出した機密情報」を、果たして
守っている限り処罰されないマニュアル。「期
とはもちろん、取材の相手にも聖域はない。わ
なのである」
待される記者像」である。
「このマニュアルを
れわれはそれを法によって強制されていない。 面対決を意味する。事実、エルズバーグ氏によ
この取材行動リストを見て、
「知る権利」「取
ね」というメッセージなのだ。
すよ。ただし、国家の秘密だけは取材しないで
ることにおいて、記者は本来的に自由であるべ
迫、暴行など刑法に触れるときだけである」 [
西 山 氏 は こ こ で、 国 家 の 不 当 な 秘 密 を 報 じ
業務が違法とされるのは、取材相手に対する脅
公開関心事項についての取材、報道という正当
な ど 望 め な い 」 と 叫 ん だ。[秘 密 の 暴 露 ほ ど、
権力にとって危険なものはないのだ。法的制裁
暴露は)政府の権威そのものへの攻撃だ」「国
るリークに激怒したニクソン大統領は「(この
[3]
材の自由」がなるほど守られていると考える記
を受けることは疑いない。アメリカの新聞はど
大部分の賛同は得られるのではないかと思う。
[4]ドキュメンタリーフィルム「アメリカで最も危険
な 男 」( 2 0 0 9 年、 コ ヴ ノ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ズ、
インサイト・プロダクションズ共同制作)から [4]
家機密のリークが許されるなら、秩序ある政府
者はたぶん、いない。普通の記者なら失笑し、 きだと主張している。元記者として私は西山氏
うしたか。ニューヨーク・タイムズ紙はエルズ
のだ。とはいえ私は国家機密の一つも暴いた経
情報をとるためには「あらゆることをする」も
あるいは怒り出すだろう。記者というものは、 の主張に全面的に同意する。また、現役記者の
条)を適用されないで、自由な取材ができま
参照すれば、
『著しく不当な(取材)方法』(第
える「期待役割」になっていることだ。これを
頑固なメディア
条で「国民の知る
し長いが引用する。
10
ているではないか。そして、担当相は「こんな
73
に配慮しなければならない」と規定している。 る。……政府・官僚が真に秘匿しようとするも
権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分
22
験がない凡庸な記者だったから、
説得力はない。 [3]澤地久枝著「密約」(岩波現代文庫)202㌻
2013.12.20
22
≪ 71 ≫
経営陣が政権による報復を恐れて慎重論を唱え
トン・ポスト紙が掲載を開始した。ポスト紙は
邦地裁が同紙の載記事を差し止めた後、ワシン
踏み切った。ニクソン政権の申請に基づいて連
バーグ氏から真っ先に情報を提供され、掲載に
はっきりと反対を表明したが、「トゥーレイト
きない」と微温的な姿勢だった。朝日と毎日は
法案成立に条件付きで賛成し、日経は「賛成で
は言えない。全国紙の社説では産経、読売は同
に対して、大手メディアの感度は良好だったと
たメディアの連帯はあるか。特定秘密保護法案
スの罠」や、毎日新聞の日野行介記者による福
係だが、朝日新聞が長期連載中の「プロメテウ
いるはずだ。例えば、いずれも福島原発事故関
真実に肉薄しようと試みる記者たちはたくさん
を 思 わ せ る 」 と 書 い た。[そ の 状 況 は 今 も あ ま
り変わっていないのかもしれない。とはいえ、
けられる。
特 定 秘 密 保 護 法 は 1 年 以 内 に 施 行 さ れ る。
を試された先例の一つが、外務省秘密漏えい事
しているということだと思う。ニクソン政権に
コミ人たちが思っている以上に切実に情報を欲
めた。戦前の日本を見るまでもなく、戦時に新
どメディアの多くはイラク戦争の旗振り役を務
による情報操作を見抜けず、FOXニューズな
国心が高揚する中で米メディアはブッシュ政権
聞かない。日本にはエルズバーグ氏のような内
属会社の毎日新聞でさえ守り通したという話は
を入手した西山記者を、メディアはおろか、所
国民の知る権利はどこかに消失した。秘密文書
道機関もそういう存在であってほしいと思う。
密の壁」が一層高くなったとしても、日本の報
いる報道機関」が必要だと述べた。たとえ「秘
ためには「小うるさくて、頑固で、どこにでも
ほとんど定着していない。手ごたえもなければ
30
[5]澤地前掲書223㌻ [6]日野行介著「県民健康管理調査の闇」(岩波新書)
局長)
部告発者の存在も、それをメディアが守るとい (おおしま・ひろし、元共同通信ワシントン支
この事件を丹念に取材した澤地久枝さんは
実感も乏しい。民主主義をうたうようになって
年近いけれど、その実体はいかに寒々しいか
アメリカのメディアが国家の脅しに抗して言論
翻 っ て 私 た ち の こ の 時 代、 こ の 国 に こ う し
ない。
の自由のために闘ったことは忘れることはでき
ジャーナリズムの真価が問われた肝心な時に、 「〈知る権利〉という言葉は、私たちの歴史には
ペンタゴン・ペーパーズ事件のような、いわば
は戦争の利益享受者でもあるのだ。とはいえ、 う伝統も、残念ながら欠けている。
聞が部数を伸ばすのは世の常であり、メディア
11
広島ジャーナリスト
[5]
たが、
オーナーのキャサリン・グラハム氏が「(新
島県が行った県民健康管理調査の検証記事を読
日本のメディアには「反対」と言い切る力強さ
乱れがあっては、全国紙が一致して共同社説を めば、それ は分かる。「
[国民の知る権利」に応
掲げることなど、望むべくもなかった。総じて、 えようという志を持った彼らの仕事には元気付
[6]
聞を)印刷しましょう」とゴーサインを出した。 (遅過ぎ)」の感は否めない。こうした足並みの
政権はポスト紙にも差し止めを求めた。ボスト
ン・グローブ紙、シカゴ・サンタイムズ紙など
の地方紙が後を継いで掲載を開始した。政権
がなかった。
アが力を合わせて守った。
「ニューヨーク・タ
件だった。この時、検察が起訴状に忍び込ませ
よる、ペンタゴン・ペーパーズの掲載差し止め
日本のメディアが「知る権利」
「報道の自由」 原発事故で明らかになったのは、市民は、マス
イムズの特ダネの後追いはいやだ」といった貧
た「情を通じて」のひと言でメディアも世論も
風向きが一変した。論点は「国家のウソ」から 要求を却下した米連邦地裁のガーフェイン判事
私はアメリカのメディアを、ことさらに称賛
しているのではない。9・ 同時テロの後、愛 「男女関係を利用した取材方法」にすり替わり、 は判決で、表現の自由、国民の知る権利を守る
しい記者心理など、みじんもない。
自由」
、「国民の知る権利」
というトーチをメディ
側にもう掲載を止める術はなかった。
「言論の
15
≪ 72 ≫
秘密法反対広島ネットワーク結成
制問題対策プロジェクトチーム幹事の尾山慎太
郎氏が人権、知る権利、表現の自由を侵す危険
な法案と指摘。政府、官僚が適用を意のままに
して厳罰で国民を萎縮させる狙いもあると述べ
た。オスプレイ、原発問題に取り組む市民や地
方公務員らが法案への懸念を表明した後「この
法案はアメリカと一緒になり、世界のどこでも
特定秘密保護法案に反対する集会を広島平和記
新 田 秀 樹・ オ ス プ レ イ 配 備 と 米 軍 機 低 空 飛
ません」
とする反対アピール(次㌻)を採択した。
す。事実上の憲法改悪を目指すものにほかなり
日、 戦争ができる国・日本を実現するためのもので
念資料館東館で開き「SТОP!国家秘密法 広島ネットワーク」を結成した。約100人が
行を許さない市民ネット事務局長▽佐野隆幸・
山田弁護士以外の共同代表は次の通り。
参加。地元選出の国会議員へ反対を求める嘆願
広島県マスコミ文化労組事務局長▽沢田正・日
本ジャーナリスト会議広島支部事務局長。
の対象がより広範囲になった。これによって、
マスコミや情報公開を求める市民団体の人たち
ことは秘密にしてしまうことが懸念される。も
秘密にできるところにある。自分に都合の悪い
の定義があいまいで官僚たちが何でもかんでも
にやや比重を置いてこの法案の説明をしたい。
道がこの法律によってどういう影響を受けるか
新聞記者をしていたので、マスコミの取材・報
揺るがす。そういう意味で私は反対してきた。
じる。知る権利を侵害する。民主主義の根幹を
うひとつは、刑罰が重くなっただけでなく、そ
特 定 秘 密 保 護 法 案 の 最 大 の 問 題 点 は、 秘 密
(文責・編集部) に、怖いからやめておこうという萎縮効果が生
尾山慎太郎弁護士の講演要旨
定義あいまい 何でも秘密
マスコミ・市民に萎縮効果
集会では元記者で広島弁護士会秘密保全法
んだ。
書を送る活動を広げていくことを決め、共同代
月
15
表に広島弁護士会の山田延広弁護士ら4人を選
広島の市民、マスコミ関係者らが
弁護士・マスコミ関係者ら
市民ら約100人が参加して開いた特定秘密保護
法反対ネットワーク結成集会
2013.12.20
10
≪ 73 ≫
でどういう規制をしてきたかというと、刑法の
きた。この取材の自由の中で今回の特定秘密保
名誉棄損、少年法の実名報道の規制などがある。 護法が関わってくる。取材の自由が制限される
弁 護 士 会 と し て は 日 弁 連、 広 島 弁 護 士 会 と
も、秘密保護は今の法律、国家公務員法とか自
と、きちんとした報道ができなくなるので、間
特 定 秘 密 保 護 法 は、 ち ま た で は「 知 る 権 利
接的に報道の自由が侵害されることになる。
こういう報道はいけませんよ、とは言っている
けど、基本的に報道内容の規制というものでは
ない。
の侵害」とよく言われる。知る権利とは何か。
表現の自由とか報道の自由は、国は表現活動に
対して規制するな、介入するなというものだ。
こ れ に 対 し て 知 る 権 利 は、 国 な ど 公 権 力 に 対
して情報を公開せよと要求する権利。毛色が変
わっている。
衛隊法で十分である、特定秘密保護法なんてつ
まずは報道の規制と知る権利についてどん
くる必要はない、というスタンスだ。
取 材 の 自 由 に 対 し て は、 国 家 公 務 員 法 や 地
方公務員法の「守秘義務」がある。取材は常に
な法律があるのか、整理したい。取材者は取材
源から取材する。それをもとに報道機関は新聞
この「守秘義務」違反とのたたかいだ。いわば
記者であるわけだ。こういう中でどうバランス
や放送をつくり読者、視聴者に届ける。報道機
記者が取材することには取材の自由、これが憲
を取るのかと、これまでもいろいろ議論されて
関から読者、視聴者への流れには表現の自由、 常にそそのかし行為をするのが新聞記者や放送
法で保障されている。これに対して国がこれま
「特定秘密保護法案」
定される可能性があり、その情報
反対アピール
を社会に知らせようとする内部告
安倍政権は、本日開会した臨時
国会で国民の知る権利を侵害する
「特定秘密保護法案」の成立を狙っ
ています。私たちは本日「STOP!
国家秘密法 広島ネットワーク」
を結成し、人権と民主主義を破壊
するこの悪法の成立阻止へ向け
て、広島の市民や団体のみなさん
と一緒になって全力を尽くしま
す。
この法案は、ひとことで言え
ば、「アメリカと一緒になり、世
界のどこでも戦争ができる国・日
本」を実現するためのものです。
憲法9条が禁止している「集団的
自衛権の行使」をするため、国家
安全保障会議(日本版NSC)の
設置と一体となって、事実上の憲
法改悪を目指すものにほかなりま
せん。国民の知る権利を実現しよ
うとした報道機関や国民の情報取
得行為を弾圧するものであり、そ
れに協力した公務員や民間業者に
厳罰を科すだけでなく、政府の施
策に批判的な市民運動のみなさん
も処罰の対象となりかねないもの
です。
具体的には、政府や行政機関が
自分たちに不都合な情報を国民の
目から恣意的に隠す手段として使
われます。この情報は「特定秘密」
だと閣僚たちが指定すると、主権
者である国民には何が指定された
のか分からぬまま、秘密の範囲が
拡大していきます。また、最高で
懲役 10 年、罰金 1000 万円という
極めて厳しい罰則が設けられ、公
務員の情報公開に対する姿勢が過
度に萎縮させられます。さらに、
報道機関の正当な取材ですら、法
律の運用次第では、共謀とか教唆
だとして処罰対象になりかねませ
ん。例えば、原発の安全性に関す
る情報は、原発に対するテロ活動
防止の観点から「特定秘密」に指
発や取材活動が違法として処罰さ
れかねないということです。
どんな社会になるでしょうか。
時代の空気が変わり、人権や民主
主義が保障されない社会になるで
しょう。そんな馬鹿な!と知らん
顔をするのではなく、法案が通っ
てしまった状況を認識し、想像す
る力が私たちに求められていま
す。なぜなら、この特定秘密保護
法案は、戦前の軍機保護法と同じ
性格を持っているからです。かつ
て私たちや両親・祖父母の世代
は、この法律のもとで、戦争へと
突き進み言葉に表せないほどの苦
い体験をしました。先の戦争で、
日本はアジアの人たちに、取り返
しのつかない大きな苦痛と被害を
与え、広島と長崎には原爆が投下
されました。この歴史に学び、広
島から声をあげなくてはなりませ
ん。
政府は、国民からの批判の高ま
りを受け、ここにきて「知る権利」
を明記するとか、「報道の自由」
に配慮するなどと言及しています
が、報道機関だけでなく、国民全
体の表現の自由や知る権利が抑圧
されるという本質には変わりがあ
りません。
政府と自民・公明両党は、週明
けから詰めの協議に入り、10 月
22 日には閣議決定を目指してい
ます。事態は重大な局面を迎えて
います。主権者である国民の耳目
をふさぎ、口を封じる法案には、
私たちは断固反対です。政府に「特
定秘密保護法案」の国会提案をあ
きらめさせ、法案を成立させない
ために、市民のみなさん、直ちに
反対の声をあげ、行動しましょう。
子や孫たちの世代に禍根を残さぬ
ために奮闘しましょう。
2013 年 10 月 15 日
「STOP! 国家秘密法 広島ネット
ワーク」結成集会参加者一同
広島ジャーナリスト
≪ 74 ≫
た判例はある。「報道機関の報道は、 民主主義
国民の知る権利とどう対立関係にあるのかを確
のではないか。要は、主権者として政治に関与
に奉仕するものである」
。[知る権利は、国民主
権、民主主義から導かれると整理をしてもいい
重要な判断の資料を提供し、国民の『知る権利』
ペラペラしゃべる人ではないのかをチェックす
民間業者の人たちがまともな人なのか、情報を
いる。行政機関の長は情報を取り扱う公務員や
機関の長が特定秘密を指定することになって
「 防 衛 」「 外 交 」「 特 定 有 害 活 動 」「 テ ロ リ ズ
社会において、国民が国政に関与するにつき、 認したい。
記した国の法律はおそらくない。自治体の情報
する、選挙権を行使する、おかしいことはおか
る。これが「 適性評価」。例えば借 金まみれで
「知る権利」 は 民 主 主 義 の 礎
公開条例などは知る権利を盛り込んだものはい
しいと言う。そのためには判断の材料になる情
ないか、酒はほどほどにしているか、そういっ
ムの防止」に関する4つの項目の中から、行政
くつかある。憲法上も知る権利は明記されてい
報が必要である。その情報なくして民主主義は
たことを調べる。特定秘密は一切外部に出ない
[1]
ない。しかし、解釈上は憲法上の権利とされて
あり得ない。それを保障するのものが「知る権
のかというとそうではない。一つは行政機関内
国 民 主 権 の も と で は、 情 報 は 国 民 の も の で
認められている国政調査権に基づいて要求した
国会議員に渡す場合がある。国会議員が憲法上
44
11
26
知 る 権 利 は な ぜ 大 事 な の か。 知 る 権 利 を 明
いる。知る権利はどういう権利かを明確にした
利」であり、「知る権利」があってこそ健全な
民主主義や国民主権が生まれる。
ある。公文書管理法では「健全な民主主義の根
場合、これはどこにも出すなという条件を付け
部で情報のやりとりをする場合。もう一つは、
幹を支える国民共有の知的資源」、情報公開法
て渡す、裁判官にも同じようなことで渡す。
国会議員が情報を漏らした場合は懲役5年以
情報を管理し、近づいてくるものは罰する。
では「国民の的確な理解と批判の下にある公正
民主権のもとでは情報は国民のものなのだ、そ
下、公務員や事業者が漏らしたら懲役 年以下。
で民主的な行政の推進」としている。つまり国
れが健全な民主主義を支えるんだと言ってい
21
手すると懲役
年以下の罰則。この取得行為を
暴行・脅迫したり、管理を害する行為をして入
しようとした人も罰せられる。うそをついたり、
特定秘密を公務員らを介してではなく直接入手
役5年以下とか3年以下の罰則を科す。また、
のかす)、扇動(あおりたてる)した人にも懲
る。このこと を前提に、特定秘密保 護法案は、 さらに、秘密を漏らすように共謀、教唆(そそ
10
共謀、教唆、扇動した人も同じく罰する。懲役
5年以下だ。
2013.12.20
判例はない。ただ、知る権利という言葉を使っ
おやま・しんたろう 1975年、東京都練馬区
生まれ。京都大文学部卒。産経新聞記者として、松
[1]「報道機関の報道は、民主主義社会において、国民
が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、
国民の『知る権利』に奉仕するものである。したがって、
思 想 の 自 由 と な ら ん で、 事 実 の 報 道 の 自 由 は、 表 現 の
自由を規定した憲法 条の保障のもとにあることはい
う ま で も な い。 報 道 機 関 の 報 道 が 正 し い 内 容 を も つ た
め に は、 報 道 の 自 由 と と も に、 報 道 の た め の 取 材 の 自
由 も、 憲 法 条 の 精 神 に 照 ら し、 十 分 尊 重 に 値 す る も
のといわなければならない」(最高裁、昭和 年 月
日、博多駅テレビフィルム提出命令判決) 10
江支局、神戸総局勤務などを経て、2009年に弁
護士登録。広島弁護士会秘密保全法制問題対策プロ
ジェクトチーム幹事、同弁護士会人権擁護委員会報
道部会委員を務めている。
21
≪ 75 ≫
秘密保護法案の概要
え で、 法 案 の 問 題 点 を
な枠組みを押さえたう
こういう法の基本的
力の整備に関する見積もり若しくは計画又は研
べて特定秘密にすることができる。ニは「防衛
ているので、自衛隊の運用に関するものは、す
見積もり、もしくは計画若しくは研究」となっ
にしてしまう。ホは「武器、弾薬、航空機その
究」となっている。ここでは、こんな懸念が生
他の防衛の用に供する物(船舶を含む)の種類
条文に沿ってみていき
げる事項に関する情報
又は数量」となっているので、武器や装備関係
た い。 第 3 条「 特 定 秘
で あ っ て、 公 に な っ て
はすべて含まれる。ヌは「防衛の用に供する施
まれる。官製談合を取材し、見積もり額を知ろ
い な い も の の う ち、 そ
設の設計、性能又は内部の用途」。防衛省が管
密の指定」が肝になる
の漏えいが我が国の安
轄する施設や建物も特定秘密にしようと思えば
うとしたとする。政府が「これは まずい」
「こ
全保障に著しい支障を
できる。これを見てあいまいと思うか、具体的
んなことを新聞に書かれたらお縄ちょうだいに
与えるおそれがあるた
に特定されていると思うか。私は、どうみても
部分だ。「行政機関の長
め、 特 に 秘 匿 す る こ と
あいまいで網羅的に書かれていると思う。ちな
は、 当 該 行 政 機 関 の 所
が必要であるものを特
みにこれらは、現在の自衛隊法でもすべて秘密
なる」と思ったら、それを隠すために特定秘密
定秘密として指定する
掌事務に係る別表に掲
ものとする」となって
扱いにしている。自衛隊法の防衛秘密が特定秘
「安全保障に関する外国の政府又は国際機関と
「外交に関する事項」は新しい項目だ。イは
密保護法に吸収される形だ。
いる。
官製談合取材も
ストップ
の交渉又は協力の方針又は内容」とある。これ
「防衛に関する事項」で
安全保障に係ると言えばでき る。ハは、「安全
さい特定秘密にできる。TPP交渉も経済的な
「 別 表 」 を 見 て み る。 だと安全保障に関する協議内容とか方針はいっ
項目
ある。イは、「自衛隊の
に基づき保護することが必要な情報その他の重
保障に関し収集した条約その他の国際的な約束
はイからヌまで
運用又はこれに関する
10
広島ジャーナリスト
≪ 76 ≫
る。これがあいまいでなく特定されていると言
ので、結局はすべて秘密にしようと思えばでき
要な情報」となっている。
「その他の」とある
的になりそうなものに関する全ての情報は特定
という言葉が入っている。要するに、テロの標
ていてここに入らない事項はないのではない
経済的な状況に関する事項」。日常生活を行っ
の他の重要な情報」と、ここにも「その他の」 いての節度に関する事項」「信用状態その他の
収集した外国の政府又は国際機関からの情報そ
か。「経済的な状況」にはお金にかかわること
念頭に置いている。条文では「外国の利益を図
秘密に値するのかチェックする機関がない。報
さ ら に こ の 法 案 に は、 指 定 し た こ と が 特 定
調べる。最近はハニートラップが問題になって
はすべて入ってくる。飲酒についての節度まで
する事項」「精神疾患に関する事項」「飲酒につ
えるかどうか。
秘密にできるということだ。
る目的で行われ、かつ、我が国及び国民の安全
いる。いっそ「異性に対するだらしなさの度合
「特定有害活動」は、基本的にスパイ活動を
を著しく害し、又は害するおそれのあるもの」 道によると有識者会議を設置してチェックする
のうえだからいいじゃないかと思うかもしれな
調 査 は 同 意 を 求 め る こ と に し て い る。 同 意
い」も入れたらどうかと言いたくなる。
かをみるだけで一つ一つが特定秘密に値するの
いが、上司から「今度秘密を取り扱ってもらう
というが、この会議は指定の基準が妥当かどう
か判断する機関ではないそうだ。修正協議で有
ことになったから適性調査をする」と言われて
条2項1号)と定義している。この活動に
当たるかどうかを判断するのも行政機関の長で
識者会議が何をすることになるのか、みていく
拒否できるかどうか。嫌だと言えば何か都合の
(
ある。
必要がある。秘密指定の有効期間は5年間だが
があれば可能だ。
家族も適性調査される
とされた人が訴えても具体的には教えてくれな
れる。適性評価の判断基準は不明だ。適性なし
で勝手に氏名・生年月日・国籍・住所が調べら
つかえるかもしれない。家族は同意手続きなし
悪いことがあるのかと勘ぐられる。出世に差し
更新できる。 年を超えての更新も内閣の承認
チェック機関 は 存 在 せ ず
「テロリズムの防止」が4番目にある。テロ
リズムとは何か。
「社会に不安を与える目的で
人を傷つけたり物を破壊したりするための活
動」と、この法案は規定している。ある集会に
適 性 評 価 の 話 に 移 る。 対 象 は、 秘 密 を 取 り
テロ活動とされるかもしれない。何を特定秘密
兄弟姉妹」さらに「配偶者の父母と子」につい
る。本人だけでなく「本人の配偶者・父母・子・
うとしたとき(未遂)
、誤って漏らしたとき(過
罰 則 は、 特 定 秘 密 を 漏 ら し た と き、 漏 ら そ
いだろう。
にするか。イに「テロリズムによる被害の発生
解できる。次の「管理を害する行為により取得
失)がまず対象になる。それから、特定秘密を
したとき」、これが肝だ。よく分からない規定だ。
ても「氏名・生年月日・国籍・住所」を調べる
イ活動やテロ活動に関する事項」とあるが、こ
条文をみると、窃盗、不正アクセス、住居侵入
若しくは拡大の防止(テロリズムの防止)のた
と書いてる。原発はどうなるのか。原発テロを
れは思想調査に通じる。「犯罪及び懲役の経歴
取得しようとしたとき、うそ・暴行・脅迫など
防止する対策や避難計画などは、この条項で特
に関する事項」「情報の取り扱いに係る非違の
で取得したときは罰せられる。これは、まあ理
定秘密にされる可能性がある。こんなことをテ
な ど が 例 示 さ れ て い る。 そ れ 自 体 が 犯 罪 だ か
からキまで7 項目列記している。ア は、「スパ
ロリストに知られたら困るという理屈をつけれ
経歴に関する事項」「薬物の乱用及び影響に関
めの措置又はこれに関する計画若しくは研究」 ことになっている。調査事項は何か。法案はア
ている、と行政機関の長が勝手に解釈すれば、 扱 う 公 務 員 と 適 合 事 業 者 の 従 業 員 と さ れ て い
ついて、社会に不安を与え物を傷つけようとし
30
ばいい。ロを見ると「テロリズムの防止に関し
2013.12.20
12
≪ 77 ≫
特定秘密保護法と現行類似法との比較(概要)
日米相互防衛援助協定
(MDA)等に伴う秘密保
日米刑事特別法
護法
米国から供与された装 在日米軍
備品等
自衛隊法
国家公務員法
地方公務員法
特定秘密保護法
防衛
ケースはどうなるのか。私の経験
類を見て新聞記者が書いたという
分かる。机の上の置いてあった書
ら、これらがいけないというのは
いのときは懲役
事特別法の四つがある。公務員法の罰則は漏え
助協定(MDA)等に伴う秘密保護法、日米刑
法・地方公務員法、自衛隊法、日米相互防衛援
るか。秘密の漏えいを防ぐ法律は、国家公務員
年、過失、未遂の場合は罪に
から言ってもこれはあること。意
のか、いろいろある。盗み見た行
れとも管理が甘くて書類が見えた
図的に席を空けてくれたのか、そ
厳しい。今回の特定秘密保護法案は、在日米軍
律では、漏えいが懲役
がり、過失は禁錮1年。米軍がらみの二つの法
ならない。自衛隊法では漏えいが懲役5年に上
年、未遂は懲役5年と
為 が、「 管 理 を 害 す る 行 為 」 に 問
がらみの法律の処罰規定に合わせて厳罰にしよ
動しても処罰の対象になる。危険
す る だ け で な く、 共 謀、 教 唆、 扇
特定秘密を漏えい、または取得
われることは十分にある。
1
うとしている(比較表参照)。
うと計画しても実際に行わなけれ
みてみる。第一に、特定秘密の範囲があいまい
あ ら た め て、 特 定 秘 密 保 護 法 案 の 危 険 性 を
公正な裁判も危うくなる
ば罪には問われないが、秘密保護
ということ。なぜあいまいなら危険なのか。政
萎 縮 も 懸 念 さ れ る。 何 が 秘 密 か 分 か ら な い
う恐れがあるからだ。
よくわからないので、みんなで国
ので内部告発をやめておこうという気持ちにな
罰 則 が 広 範 で、 か つ あ い ま い な こ と も 危 険
会にデモして中身をただそうじゃ
だ。報道機関の中では、これまで普通にやって
る。取材者も同様の理由で怖いから取材をやめ
いう行為も対象にしている。漏え
ないか、と言っただけで罪に問わ
いが行われなくても、その前段階
いた取材活動や社内での協議が共謀、教唆、扇
ておこうとなる。なぜそうなるのか。秘密の指
から罰するように範囲が広がって
動とみなされ、犯罪となる恐れが出てくる。正
れることもありうる。立件される
いるのが、この法律の危険性だ。
当な取材活動は罰しないというが、なにが正当
定基準があいまいだからだ。
それでは現行法はどうなってい
かどうかは別にして、法案はそう
例えば私がここで秘密法の内容は
問 わ れ か ね な い。「 扇 動 」 と は、 府や官僚が何でもかんでも特定秘密にしてしま
法では、計画を立てた段階で罪に
なところだ。例えば、泥棒に入ろ
10
既遂と同じ
(陰謀)懲役 5 年
懲役 5 年
懲役 5 年
既遂と同じ
(陰謀)懲役 5 年
懲役 5 年
懲役 5 年
×
×
×
×
懲役 10 年
懲役 10 年
懲役 5 年
禁固 1 年 or
禁固 2 年 or
×
罰金 3 万円
罰金 5 万円
既遂と同じ
既遂と同じ
既遂と同じ
懲役 3 年
(陰謀)懲役 5 年
(陰謀)懲役 5 年
懲役 3 年
懲役 5 年
懲役 5 年
×
×
懲役 5 年
懲役 10 年
懲役 5 年
懲役 10 年
・防衛
職務執行に関連して知
秘密 ・外交
りえた秘密
範囲 ・スパイ活動の防止
・テロリズムの防止
懲役 10 年 and
懲役 1 年 or
漏洩
罰金 1000 万円
罰金 50 万円
禁固 2 年 or
×
過失
罰金 50 万円
未遂 既遂と同じ
×
懲役 5 年
(企て)懲役 1 年 or
共謀
罰金 50 万円
懲役 5 年
(唆し)懲役 1 年 or
教唆
罰金 50 万円
扇動 懲役 5 年
×
懲役 10 年 and
×
取得
罰金 1000 万円
×
未遂 既遂と同じ
共謀 懲役 5 年
×
教唆 懲役 5 年
×
扇動 懲役 5 年
×
広島ジャーナリスト
≪ 78 ≫
なのかは判断が分かれるところだ。最高裁判例
ば最後の砦すら存在しないことになってしま
定秘密の指定が適法であるかを裁判所が判断で
こ の 法 案 を 食 い 止 め る に は、 世 論 の 力 し か
きなければ、司法による事後的チェック、いわ
は西山事件な[どで、
「社会通念上認められる取
材活動は違法ではない」としているが、深夜に
う。
[2]
取材に行って玄関でピンポンを鳴らす行為は社
会通念上どうなのかと言われれば難しいところ
ない。関心のない人に、この法律がいかに危険
を言っているにすぎない。重要なことは、報道
だ。憲法改悪反対の立場からは秘密法反対も言
この法案は憲法改悪につながっていくもの
マ ス コ ミ が 先 頭 に 立 っ て、 こ の 法 律 は お か
なのか、繰り返し話して分かってもらう必要が
の自由や基本的人権の侵害を防ぐための具体的
いやすい。ただ、憲法を変えたい、防衛上の秘
しいとはっきり言ってほしい。そのためには、
国 民 の 知 る 権 利 に 資 す る 報 道・ 取 材 の 自 由
もある。
な基準やチェックする手続きを盛り込み、行政
密は必要だという人にも、この秘密法は危険だ
自分たちは国民に代わって権力の監視をし、悪
ある。市民 運動をしている人、メ ディアの人、
を縛ることができるかどうかだ。
ということを分かってもらいたい。TPPや集
いことは悪いと書くぞという姿勢を持たなくて
に 配 慮 す る と し た 自 公 の 修 正 は、 な い よ り は
適性評価によるプライバシーの侵害や国会
団的自衛権の問題にしても情報があるから我々
われわれ弁護士も繰り返し危険性を訴えていく
議員の活動への制限なども問題だ。公開の裁判
は判断できる。情報は国民のものか、官僚のも はならない。先日、あるメディアの人が、自分
のかが問われている。秘密保護法は必要ない。 らはこの法律ができても役人とは、なあなあで
あった方がいいという程度のもの。青信号に変
を受ける権利が侵害されるのではという危険も
やってきたから逮捕されることはないと言うの
必要がある。
ある。秘密漏えいで捕まった人の裁判でどうい
しかし、もしやるのであれば、情報公開法や公
を聞いた。唖然としたが、これが今のマスコミ
わってからみんなで渡りましょうと当然のこと
う秘密を漏らしたのか明らかにしてくれと要求
文書管理法をきちんと整備して、あらゆる情報
論陣を張っていただきたい。
メディアの役割を再認識し、この法案に反対の
権 力 の 監 視 は 完 全 に 窒 息 死 さ せ ら れ る と 思 う。
し か し、 私 は 特 定 秘 密 保 護 法 が で き れ ば、
時にはいい記事がある。
をそのまま伝えることが多くなっている。でも
しても、それは秘密ですと言われれば、出てこ
申し込みはファクス 082-231-3005 かメー
ル [email protected] ▽紀伊国屋書
店広島店、フタバ図書などでも好評発売中
の本音かもしれない。
「慰安」の名称に日本軍の犯罪性 梁澄子
沖縄リポート 松元剛
被爆者とABCC㊤ 相良カヨ
上関原発をどう止めるか 木原省治
平和憲法の原点と現点 河上暁弘 はいずれ公になるようにしたうえで、本当に守
特集「すべての核に『NO』といえない日本」
被爆国の立場なし 平岡敬
市民の力が問われている 森瀧春子
ホンネの核政策前面に 浅井基文
特集「
『虐殺』
『慰安婦』問題と『原爆』
」
アジアへの戦争責任明確化を 田中利幸
なくなる。どうやって弁護すればいいのか。特
りたい秘密は何なのかを議論していくべきだ。
ら、メディアの監視力は弱くなり、役所の情報
[2]毎日新聞政治部記者として外務省などを担当して
い た 西 山 太 吉 記 者 が 1 9 7 2 年、 沖 縄 返 還 交 渉 の 過 程
権力監視機能が窒息死
で 日 米 間 に 密 約 が あ っ た こ と を、 機 密 電 文 を 手 に 入 れ
て ス ク ー プ し た。 と こ ろ が、 こ の 電 文 入 手 に あ た っ て
西山記者は、外務省の女性事務次官と密かに情を通じ、
最 後 に、 私 は 産 経 新 聞 の 記 者 を し て い た の
秘 密 漏 え い を そ そ の か し た、 と し て 逮 捕・ 起 訴 さ れ た
で 申 し 上 げ た い。 こ の 法 律 が で き れ ば 既 存 メ
事 件。 一 審 は 無 罪、 控 訴 審 で 有 罪 判 決 が 下 り、 上 告 し
た が 棄 却 さ れ た。 2 0 0 0 年 に は、 密 約 を 裏 付 け る 米 ディアの権力監視は確実に低下する。いまです
国の公文書が発見された。
2013.12.20
広島ジャーナリスト第 13 号
≪ 79 ≫
安倍解釈改憲路線
戦争する国づくりに「NO」を
小森 陽一
現在の九条の会呼びかけ人5人で
月
日、 日本国憲法9条が生まれて以降、最大の危機
にある。しかもそれは明文改憲でなく、政府の
(文責・編集部)
かなければならないと強調した。呉九条の会連絡センター主催。講演の要旨は以下の通り。
民動員体制だとした。そのうえでこうした動きに対抗するため、草の根の力で世論を変えてい
自民党憲法草案に触れ、第9章の緊急事態条項は首相に三権が集中する危険な体制であり、国
自衛隊を戦争する軍隊にしようとする安倍晋三政権の動きを強く批判した。小森さんはさらに、
九条の会事務局長の小森陽一さんが 月 日、呉市警固屋公民館で「暴走改憲の危険な本質
―未来の世代に憲法を手渡すために―」と題して講演、市民ら約170人を前に、解釈改憲で
10
7
でも積極的平和主義を言った。政府の有識者懇
解釈だけで一気に進められようとしている。
裁任期中の明文改憲を公約した。その前に
めるのが本筋だ。しかし安倍首相はその時、続
解釈をしてきた。これを転換してしまう。
集団的自衛権の行使は憲法上許されないという
年5月
年、
日、憲法を変え
06
かった。しかし、首相は辞めなかった。その後
は明文改憲ができる3分の2を政権に与えな
その後の7月参院選で安倍政権は大敗した。
私たちの草の根運動が国民世論を変え、参院で
憲で行うという路線だ。歴代のすべての政権は、 する法律)を国会で強行採決した。
14
法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇) 9月第1週にシドニーでブッシュ大統領と日米
12
広島ジャーナリスト
談会で解釈を出すだけで、それを政府見解とし
て一気に突破することが狙われている。
しかも、
9月末の国連総会では積極的平和主義を掲げて
PKO( Peacekeeping Operations
=国連平和
維持活動)に積極的に参加する、という言い方
をしている。PKOは、自衛隊が海外に出るた
めの名目になっている。
異様な対米従属政権
なぜ安倍政権が改憲を「歴史的使命」として
いるか。ここで、第1次安倍政権は、どのよう
にして政権を投げ出したのかを振り返ってみ
年7月の参院
る。 年9月、おなかが痛くなって辞めたのは
皆さんご存じだ。辞めるのなら
選で自民が大敗し、民主党をはじめとする野党
のは大江健三郎さん(作家)
、
奥平康弘さん(東
教育基本法を改悪。
が多数派になってねじれ国会になった時点で辞
京大名誉教授)
、澤地久枝さん(作家)
。内容に
9月に入って安倍首相は、あらゆるところで
積極的平和主義という7文字の熟語を繰り返し
る為の国民投票法(日本国憲法の改正手続に関
だった。
解釈改憲で一気に自衛隊を戦争する軍隊にし
てしまおうという安倍政権の動き、これは何と 9月 日の安全保障と防衛力に関する懇談会
しても止めなければいけないという危機感の中 (安防懇)の席上、さらに5日後の安全保障の
でアピールは出された。
07
投を明言した。第1次安倍政権は総裁選で、総
ついては鶴見俊輔さん
(評論家)
、
梅原猛さん(哲
ている。積極的平和主義とは、九条の会アピー
日に出して以来だ。5月
ルでいうと集団的自衛権行使の容認を、解釈改
は2004年6月
学者)も了解してくれた。全国民向けアピール
東京で共同アピールを出した。記者会見をした
07
07
13
17
10
日は、全国の九条の会のへの内向きの呼び掛け
10
≪ 80 ≫
り、自衛隊は武器を使わないまま帰ってくるこ
た。アフガニスタンは全土で戦闘が行われてお
るアフガニスタンに自衛隊を出せと要求され
首脳会談があり、大統領から強力に、戦場であ
は憲法上許されないと強く反対した。直後の9
の時の内閣法制局長官は、集団的自衛権の行使
戦場でも大丈夫と言われたわけだ。しかし、こ
保条約に基づく集団的自衛権の行使ができれば
日本は今、原発ゼロ状態だが、そういう中で
安倍首相は、世界の国々に日本の原発を売り歩
していない。
自衛権の行使容認をオバマ大統領は日本に要求
政権は、異様なまでの対米従属政権だ。集団的
日に、首相はおなかが痛いと辞任した。ブッ
月
案」や日本版NSC(国家安全保
障会議)設置関連法案などを臨時
日本国憲法はいま、大きな試練
国会に提出しようとしています。
の時を迎えています。安倍首相は、 自民党が作成した「国家安全保障
集団的自衛権行使に関する憲法解
基本法案」では、
「教育、科学技
釈を転換し、
「戦争する国」をめ
術、運輸、通信その他内政の各分
ざして暴走を開始しているからで
野」でこれらの「安全保障」政策
す。日本がアメリカといっしょに
を優先させ、軍需産業の「保持・
海外で戦争するという集団的自衛
育成」をはかるとしているばかり
権の行使が、従来の「自衛権」解
でなく、こうした政策への協力を
釈から大きく逸脱することは明白 「国民の責務」と規定しています。
です。それどころか、日本やアメ
これを許せば、憲法の条文には手
リカの「防衛」ではなく、世界中
をふれないまま第九条改憲の内容
のあらゆる地域・国への武力介入
をほとんど実現してしまいます。
をめざす体制づくりです。この企
戦前、日本国民はすべての抵抗
ては、本来なら憲法「改正」の手
手段を奪われ、ズルズルと侵略
続きを経なければ許されない内容
戦争の泥沼に巻き込まれていっ
を、閣議決定だけで実現してしま
た苦い経験をもっています。しか
うものです。これは立憲主義を根
し、いま日本国民は国政の最高
本からつき崩すものであり、とう
決定権をもつ主権者であり、さら
てい容認することはできません。 に侵略戦争の教訓を活かした世界
それだけではありません。安倍内
にも誇るべき九条を含む日本国憲
閣は、自衛隊を戦争する軍隊にす
法をもっています。いまこそ日本
るために「防衛計画の大綱」の再
国憲法を守るという一点で手をつ
改定により、
「海兵隊的機能」や
なぎ、歴史の教訓に背を向ける安
「敵基地攻撃能力」など攻撃的性
倍内閣を草の根からの世論で包囲
格をいちだんと強めようとしてい
し、この暴走を阻むための行動に
ます。
たちあがりましょう。
「戦争する国」づくりにも足を
2013 年 10 月7日 九条の会
これを果たすために今やっている。第2次安倍
年から2013年まで 年間、原発を造っ
てないから原発が造れる技術者はアメリカには
発は造られてない。
年スリーマイル原発事故、 年のチェルノブイ
その安倍が政権に返り咲いて自らの歴史的使
命、いや本人のアメリカ大統領に対する使命、 リ原発事故後は住民が危険と反対して新しい原
カの原発企業の要求だ。アメリカでは1979
いている。原発セールスマンだ。これもアメリ
とはできないという厳しい状況だった。
23
大 統 領 か ら 派 遣 の 仕 方 ま で 言 わ れ て い る。 シュが要求した集団的自衛権の行使容認へカジ
自 衛 隊 は P K O で 来 る、 ア メ リ カ は P K F を切れなかったための詰め腹辞任だ。
に安倍内閣は、
「特定秘密保護法
を ( 要旨 )
86
だから日本の企業は3・
までは原発を造り続
いるから、原発を造らないと特許料は入らない。
わゆる特許は全部アメリカの原発会社が持って
いない。しかし、原発をめぐる知的所有権、い
27
安倍政権がやっていることはアメリカの原発
企業の要請で、アメリカさえもできない原発の
が、あれは核兵器原材料置き場だ。
発の4号機は使用済み核燃料置き場といわれる
目的は核兵器の原材料を作ること。福島第1原
それで発電したらいいということになったが、
239を作る装置だ。その過程で熱が出るから、
材料である地球上に存在しないプルトニウム
抑 止 力 だ と 全 国 で 演 説 し た。 原 発 は、 原 爆 の
自民党が野党だった時代、現在の石破茂幹事
長は、原発を稼働させていることが潜在的な核
けた。日本には原発を造る技術者がいる。
11
世界への売りまくりをやっているということ
2013.12.20
86
( peacekeeping force
=国連平和維持部隊)と
して軍事活動しているから、アメリカ軍が撃た
踏み入れようとしています。すで
る国」づくりに反対する国民の声
れたら自衛隊も撃たなくてはいけない。日米安
集団的自衛権行使による「戦争す
≪ 81 ≫
だ。アメリカの原発資本の手先になっている。
変えようというのは、あまりにひどいと急速に 「加憲」をいう公明を入れれば、改憲勢力は参
院も3分の2になる。このままいけば 年7月
改憲を許してはいけないぞとなっていく大きな
まで国政選挙はない。解釈改憲でどんどん自衛
隊を戦争できる組織に作り替える。それを許す
国民に伝わった。これが、国民世論が 条先行
安倍首相は、今年の参院選前には明文改憲を
やろうとした。突然、自分は第 代日本国総理
日本国憲法の前文で言われている、主権者と
して行動することが必要だ。日本国民は、正当
のか。この局面で国会の力関係を変える力は草
大臣だと言い出し、5月5日の長島茂雄氏と松
の根運動にしかない。
う背番号で出てきた。
昨年
う 本 で、 最 初 の 鼎 談 の 時、 樋 口 先 生 に 運 動 を
さん(東京大、東北大名誉教授)が代表となっ
には、今まで運動を一切やらなかった樋口陽一
そういう中で5月に九条の会が「九条の会の
みなさんへ」というアピールを出し、5月 日
会に出している法律の中身に、その解釈改憲を
突き付けた。だから姑息にも解釈改憲だ。今国
参院選の結果、有権者は改憲勢力に3分の2
を渡さなかったわけだから、明文改憲にNOを
は今頑張っている。
行った時に胸張って会えるようにと、樋口さん
んとは仙台一高の同級生だ。向こう側の世界に
の呼びかけ人のひとり、作家の故井上ひさしさ
俺ひさしに会えないだろう」という。九条の会
動するということ。帝国憲法下では、憲法を作
前文は「わが国全土にわたって自由のもたら
す恵沢を確保し」、これは直接民主主義的に行
したか。送ってないのなら送りましょう。
こうしてくれというファクスやメールを送りま
議員は皆さんの代表者だ。その人を通じて行動
えは憲法違反だ。この選挙区から出ている国会
が投票した人でないからどうでもいい?この考
選挙区の国会議員は誰ですか。知らない?自分
する。代議制民主主義、間接民主主義。呉の小
たね、と聞いたら、一言「ここでやらなければ、 に選挙された国会における代表者を通じて行動
憲論者の小林節さん(慶応大教授)が乗り込ん
改憲を進めていた。
条
先取りした内容を入れていく。典型的に表れて
る前に集会条例や新聞条例、そういう言論弾圧
できて、一緒にやると表明した。この時、
の自由をはじめとするさまざまな自由、この恵
た。その教訓を踏まえて言論の自由、集会結社
論弾圧で日本は戦争する国へと行ってしまっ
抱き合わせで作った。この治安維持法による言
る時に言論弾圧するということで治安維持法を
する。その人に憲法問題や秘密保護法問題で、
は立憲主義の基本だと非常に鮮明になった。主
いるのが特定秘密保護法案だ。わずか2週間で
条例をしこたまつくった。さらに普通選挙にな
条の会」が結成された。記者会見には改
権者である国民が、立法権力、行政権力、司法
パブリックコメントを締め切り、約9万件のう
て「
権力の三つの権力に対して最高法規である憲法
ち8割近くが反対意見だった。日本ペンクラブ
ている。縛られてきた国会議員が2分の1でい
いというのは、小林さんによれば裏口入学みた
いなものだ。日本国憲法を変えると言ってきた
以降、原発
解釈改憲で戦争ができる国家体制作りをやろ
うとしている。ここに第2次安倍晋三政権の本
みを保たなければならない。3・
の は 自 民 党 で あ り、 国 民 は そ う は 思 っ て こ な
質がある。国会は衆参とも自公が安定多数で、 再 稼 働 を 政 府 が や っ た こ と に 対 し て 官 邸 前 で
主権者としての行動が必要
によって縛りをかける、これが立憲主義だ。
条先行
やってこなかったのに今回は引き受けられまし
要因になった。
16
や日弁連の反対意見書も出ている。
れば一気に明文改憲ができる。最初は
自民党、みんなの党、維新の会の改憲勢力は8
96
96
かった。それで変えられなかったからルールを
11
広島ジャーナリスト
96
井秀喜氏への国民栄誉賞授与式では「 」とい 樋口先生と奥平先生と私で鼎談した「安倍改
月の衆院選の結果、 憲の野望」(かもがわ出版、2013年)とい
96
割を占めた。参院選でこの勢力が3分の2をと
12
条によって衆参それぞれ国会議員総数の3
分の2以上の議席の賛成がなければ改憲の発議
23
96
96
はできない。そうやって国会議員の権力を縛っ
96
≪ 82 ≫
万人を超える人たちが再稼働反対を言った。 のだから。
大きな転換がある。イラクがクウェートに軍事
置かれた歴史的な流れを見ると、1990年に
自衛隊は、現時点ではぎりぎり戦争する組織
ではない。9条が機能しているから。自衛隊が
けてPKO法案を国会に提出し、これが通った。
侵攻する。国連憲章違反で安保理が開かれた。 い。武器は持たない。そういう厳しい縛りを付
が終わって民主的な選挙の監視ぐらいならい
自衛隊が行けるところは非戦闘地域だから戦争
派政権だ。だから従来の自民党の立場に立って
( Show The Flag
)
」。第1次宮沢政権は加藤紘一
官房長官で、その後は河野洋平官房長官。ハト
をしてきた。
それまでだと米ソの拒否権発動で何も決まらな
以降、国会も政府も民意を
この自由のもたらす恵沢を確保することが9
条を守ることだ。
「政府の行為によって再び戦
こ の 時 の、 自 衛 隊 は 戦 闘 地 域 に は 行 け な い
こういう形で3・
争の惨禍が起こることのないやうにすることを
かった。冷戦が終わったのが 年。安保理でイ
本当の意味で一人ひとりの国民が主権者とはい
死んでこいと国が命令できる、そういう国では
を確定する」
。例え自衛軍でも、お国のために
に主権が国民に存することを宣言し、この憲法
と 国 連 平 和 協 力 隊 法 を 出 し た。 当 然、 法
が出たから自衛隊を出せるのではないか
小 沢 一 郎 幹 事 長。 首 相 は 国 連 安 保 理 決 議
カからかかった。内閣は海部俊樹首相、自民は
本の自衛隊をPKFに出せという圧力がアメリ
ラクに対して軍事行動をする準備の一方で、日
心にした多国籍軍事部隊、PKFを編成してイ
ラクに対する経済制裁を決めた。アメリカを中
た。こう言わせたのが9条の力 だ。自衛隊は、
ところが非戦闘地域だ」と答えざるを得なかっ
る。問い詰められて小泉首相は「自衛隊が行く
町だけが非戦闘地域だと言えるのかと追及す
た。野党は、どうしてイラクでサマーワという
のためのテロ対策特措法が国会で論争になっ
るイラクに自衛隊を派遣しようとしていた。そ
小泉純一郎政権のもとで2003年、戦場であ
という縛りは、極めて重要な役割を果たした。
代表してないのなら直接行動でやるということ
決意し」
、これは9条のことだ。そして「ここ
えない。自分の意思で自分の命を全うできない
案が違憲か合憲かを内閣法制局が判断す
りなっていない。
る。この時の内閣法制局長は国会答弁で、 海外に行っても戦争をする軍事組織にはぎりぎ
自衛隊が参加している行動が実力行使と
そのぎりぎりなっていないところを、集団的
自衛権を行使すれば武器が使える、とそそのか
したのがブッシュ大統領だ。でも第1次安倍政
一体になるようなものなら憲法違反と明
確 に 答 弁 し た。 そ れ で 法 案 は 廃 案 に な っ
た。
千 億 円( 1 3 0 億 ㌦ ) の 軍 事 費 を 差 し 出
外 に 出 せ と 要 求 し た。 海 部 政 権 は 1 兆 数
から憲法の番人である内閣法制局長を人事です
釈だけでやっていくというのが今の路線だ。だ
は国民からNOを突き付けられた。だったら解
権ではそこまで踏み込めなかった。第2次安倍
海部政権から宮沢喜一政権になった時、
ア メ リ カ は、 何 で も い い か ら 自 衛 隊 を 海 政権は解釈改憲でやろうとしている。明文改憲
し た が、 ア メ リ カ は、 日 本 は カ ネ だ け 出
律について、憲法違反かどうかの判断は一切放
し て 血 と 汗 は 流 さ な い の か、 と い っ た。 げ替えた。これから国会に内閣が出してくる法
宮 沢 政 権 の 時 は「 と に か く 旗 を 見 せ ろ
2013.12.20
90
11
10
≪ 83 ≫
律は憲法に違反していると大きな声で言えるか
棄することになる。国民が草の根から、この法
くとある。司法権は国防軍のもとにある。ここ
るか。9条2項の5には、国防軍に審判所を置
ている。
とだ。現行憲法の立憲主義を180度転倒させ
はならないのは権力者ではなく国民だというこ
日。 読 売 新 聞
で何を罪として裁くかが出ているのが、特定秘
年の6月
は毎年4月第1週に憲法世論調査をするが、こ
九条の会結成は
国 防 軍 の 活 動 は 全 世 界 に 広 が る。 そ の た め
の年は6割を超える人が憲法を変えた方がいい
10
の重要な装置が憲法 条だ。現行憲法の 条は
密保護法だ。
どうかにかかっている。
緊急時には首相に権力集中
04
入れているか。 条の3を見ると「緊急事態が
生存権を保障している。ここに自民党案は何を
だった。そういう状況の中で、加藤周一さんら
と答えた。変えない方がいいと答えたのは2割
25
わにしている自民党の憲法改正草案、ここにど
ならない」。「緊急事態」の4文字が極めて危険
生じたときは、在外国民の保護に努めなければ
年7月には全国で3千の九条の会が生まれた。
9人の方がアピールを発したのが6月
日。翌
ういう国家を作ろうとしているかが表れてい
けれども3千では、小泉首相の郵政選挙に歯止
私たちは何を大声でいうべきか。与党になる
前の野党の時の、改憲政党としての本質をあら
25
る。
その本音を有権者に分かってもらうことだ。 だ。3・ をめぐる政府の危機管理能力のなさ
25
を入れた。 条を見ると、閣議だけで「緊急事
かれている。
「国防軍は(略)国際社会の平和
れているかが分かる。さらに「その他の法律で
態」が宣言できる。いかに首相の権力が集中さ
案を出した。その翌年、安倍政権になった。教
と、この選挙の1カ月半後に自民党は新憲法草
年4月の読売憲法
と安全を確保するために国際的に協調して行わ
月。
世論調査では、3年続けて「憲法を変えない方
日米安保条約しか結んでいないので国際とはア
結んでいる国との間柄、という意味だ。日本は
める上で不可欠なことだ。
なく立法権も持ってしまう。これは、戦争を進
内閣は国防軍の審判所で司法権を牛耳るだけで
する政令を制定できるとある。行政権力である
報道だった。
年には憲法を変えない方がい
何 を す れ ば い い か。
の力によって、
年ぶりに多数派になった。今、
ている。その雇われ兵として日本の国防軍を使
のグローバル企業の利益を守るための活動をし
今のアメリカ軍は、世界中に進出している1%
を戦争に動員していく体制を、首相に全権力を
しょっ引かれる恐れがある。こういう形で国民
職 員、 公 立 学 校 の 先 生 は、 国 防 軍 の 審 判 所 に
もついてしまう。ということは、地方自治体の
れる活動(をする)
」
、これが本当のところだ。 治体の長まで戦争体制に組み込まれ、予算措置
に変わるはずだ。
とどうなるか、それを伝えていけば世論は確か
に憲法を変えようとしているか、変えてしまう
九条の会が一斉に草の根で、自民党がどのよう
全国に7500を超える九条の会がある。この
(こもり・よういち、東京大教授)
いたいということだ。
いという人が
年に作った九条の会
数%で拮抗しているという
と言えてしまう。緊急事態が宣言されるとどう
メリカとの関係という意味。それで読み直して
条 の 続 き を 見 る と、 首 相 の 命 令 で 地 方 自
みる。
「国防軍は(略)アメリカ社会の平和と
40
08
15
集中して行う。だから、この憲法を守らなくて
安全を確保するためにアメリカに協調して行わ
04
いう人が減り、今
国際とは国連加盟国すべてということではな
07
がいい」という人が増え「変えた方がいい」と
12
なるか。 条で、内閣は法律と同一の効力を有
06
い。法律上国際とは、日本が国際条約で同盟を
年
育基本法改悪が
分の2以上をとった。憲法改悪の条件が整った
を踏まえて、自民党案は第9章に「緊急事態」 めをかけられず、自民と公明が296議席、3
10
れる活動(をする)
」
。
「国際」がキーワードだ。 定める緊急事態」とある。なんでも緊急事態だ
自民党憲法改正草案の第9条2項にある「国
防軍」は何をするか。9条2項の3にはこう書
11
98
99
国防軍が機能し始めるとどんな国家体制にな
99
広島ジャーナリスト
≪ 84 ≫
自民党憲法草 案 か ら
第二章 安全保障
(平和主義)
第九条 日本国民は、正義と秩序を
基調とする国際平和を誠実に希求
し、国権の発動と し て の 戦 争 を 放 棄
し、武力による威 嚇 及 び 武 力 の 行 使
は、国際紛争を解 決 す る 手 段 と し て
は用いない。
2 別項の規定は、自衛権の発動を
妨げるものではな い 。
(国防軍)
第九条の二 我が国の平和と独立並
びに国及び国民の 安 全 を 確 保 す る た
め、内閣総理大臣 を 最 高 指 揮 官 と す
る国防軍を保持す る 。
2 国防軍は、前項の規定による任
務を遂行する際は 、 法 律 の 定 め る と
ころにより、国会 の 承 認 そ の 他 の 統
制に服する。
3 国防軍は、第一項に規定する任
務を遂行するため の 活 動 の ほ か 、 法
律の定めるところ に よ り 、 国 際 社 会
の平和と安全を確 保 す る た め に 国 際
的に協調して行わ れ る 活 動 及 び 公 の
秩序を維持し、又 は 国 民 の 生 命 若 し
くは自由を守るた め の 活 動 を 行 う こ
とができる。
4 前二項に定めるもののほか、国
防軍の組織、統制 及 び 機 密 の 保 持 に
関する事項は、法 律 で 定 め る 。
5 国防軍に属する軍人その他の公
務員がその職務の 実 施 に 伴 う 罪 又 は
国防軍の機密に関 す る 罪 を 犯 し た 場
合の裁判を行うため、法律の定める (在外国民の保護)
第二十五条の三 国は、国外におい
ところにより、国防軍に審判所を置
て緊急事態が生じたときは、在外国
く。この場合においては、被告人が
民の保護に努めなければならない。
裁判所へ上訴する権利は、保障され
(犯罪被害者等への配慮)
なけばならない。
第二十五条の四 国は、犯罪被害者
(領土等の保全等)
及びその家族の人権及び処遇に配慮
第九条の三 国は、主権と独立を守
しなければならない。
るため、国民と協力して、領土、領
海及び領空を保全し、その資源を確
第九章 緊急事態
保しなければならない。
(緊急事態の宣言)
第九十八条 内閣総理大臣は、我が
第三章 国民の権利及び義務
国に対する外部からの武力攻撃、内
(表現の自由)
第 二 十 一 条 集 会、 結 社 及 び 言 論、 乱等による社会秩序の混乱、地震等
による大規模な自然災害その他の法
出版その他一切の表現の自由は、保
律で定める緊急事態において、特に
障する。
必要があると認めるときは、法律の
2 前項の規定にかかわらず、公益
定めるところにより、
閣議にかけて、
及び公の秩序を害することを目的と
緊急事態の宣言を発することができ
した活動を行い、並びにそれを目的
る。
として結社をすることは認められな
2 緊急事態の宣言は、法律の定め
い。
るところにより、事前又は事後に国
3 検閲は、してはならない。通信
会の承認を得なければならない。
の秘密は、侵してはならない。
3 内閣総理大臣は、前項の場合に
(生存権等)
お い て 不 承 認 の 議 決 が あ っ た と き、
第二十五条 全て国民は、健康で文
国会が緊急事態の宣言を解除すべき
化的な最低限度の生活を営む権利を
旨を議決したとき、又は事態の推移
有する。
により当該宣言を継続する必要がな
2 国は、国民生活のあらゆる側面
いと認めるときは、法律の定めると
において、社会福祉、社会保障及び
ころにより、閣議にかけて、当該宣
公衆衛生の向上及び増進に努めなけ
言を速やかに解除しなければならな
ればならない。
い。また、百日を超えて緊急事態の
(環境保全の責務)
宣言を継続しようとするときは、百
第二十五条の二 国は、国民と協力
日を超えるごとに、事前に国会の承
して、国民が良好な環境を享受する
認を得なければならない。
ことができるようにその保全に努め
4 第二項及び前項後段の国会の承
なければならない。
認については、第六十条第二項の規
定 を 準 用 す る。 こ の 場 合 に お い て、
同項中「三十日以内」
とあるのは、「五
日以内」と読み替えるものとする。
(緊急事態の宣言の効果)
第九十九条 緊急事態の宣言が発せ
られたときは、法律の定めるところ
により、内閣は法律と同一の効力を
有する政令を制定することができる
ほか、内閣総理大臣は財政上必要な
支出その他の処分を行い、地方自治
体の長に対して必要な指示をするこ
とができる。
2 前項の政令の制定及び処分につ
いては、
法律の定めるところにより、
事後に国会の承認を得なければなら
ない。
3 緊急事態の宣言が発せられた場
合には、何人も、法律の定めるとこ
ろにより、当該宣言に係る事態にお
いて国民の生命、身体及び財産を守
るために行われる措置に関して発せ
られる国その他公の機関の指示に従
わなければならない。この場合にお
い て も、 第 十 四 条、 第 十 八 条、 第
十九条、第二十一条その他の基本的
人権に関する規定は、最大限に尊重
されなければならない。
4 緊急事態の宣言が発せられた場
合においては、法律の定めるところ
により、その宣言が効力を有する期
間、
衆議院は解散されないものとし、
両議院の議員の任期及びその選挙期
日の特例を設けることができる。
2013.12.20
≪ 85 ≫
島の「たたかい」を淡々と
けで暮らしが成り立ち困らない点
子育てを終えた人ばかりで年金だ
船の襲来もあり油断できない。
取っている周辺漁業者とみられる
密漁ばかりでなく、補償金を受け
価 は 急 落。 出 荷 手 数 料 に 頼 る 漁
入っていける慣習があるという。
ついては、他人の土地にも自由に
片栗粉」になるウバユリの採取に
融 通 し や す い 点 も あ る。「 上 等 の
中 電 に も 負 け ん!」「 お な ご が 言
は「わしらおなごがでたら、口じゃ
く。同氏が司会を務め、女性たち
女性を中心とした座談会」が付
「 た た か い 」 の 末 尾 に「 祝 島 の
を挙げる。食べ物にしても魚介類
協経営は苦しくなる。それに山口
をはじめ身近で調達でき、互いに
山口県上関町祝島で中国電力
県信漁連に巨額の負債のあること
「祝島のたたかい 上関原発反対運動史」
「祝島日誌 原発予定地を目前にみる島に生きて」
年間反対して
候補者でもあった山戸貞夫氏の著
み海上運搬担当者、時には町長選
祝島漁協組合長、町会議員、生ご
きた団体のリーダーを務めながら
かった。新たな出資と累積赤字の
合され一支部にならざるを得な
出され、祝島漁協も曲折を経て統
が発覚。県内一漁協の方針が打ち
港内に殺到してくる。タイがよく
れらに追われたアジなどの群れが
男性たちの座談会。漁協正組合員
る。もう一つ、現役漁師を交えた
続かんわいね」とさばさばしてい
う た ほ う が い い 」「 そ り ゃ あ、 銭
祝 島 の 周 辺 海 域 に は ス ナ メ リ、
イルカ、クジラも姿をみせる。そ 銭ばっかり思うちょったら反対は
の上関原発建設に
作 が 2 冊 出 た。
「たたかい」は反
釣れたかと思うと、タコ漁の不振
の漁師は金を貰っていない!』と
清 算 に 直 面 し た 同 氏 は、 個 人 で
か威張ったようにいうのは、腹が
対 運 動 の 歩 み を 淡 々 と 記 述。
「日
り、さまざまな恵みをもたらして
立つことがあるのう」
「めんめん
2人が「他所の原発反対言う市民
り 変 わ り な ど の 寄 稿 文 集 で あ る。 篤志家による無利子の緊急融資と
いる。その豊かさを略奪しようと
連中が、わしらがおる前で『祝島
全国からのカンパで乗り切った。
する外部からの侵入にも目をこら
ヒジキ採りの労苦。海は生きてお
身を削る反対運動の日々。ピンク
祝 島 の 漁 業 者 の 多 く と「 お ば
1 5 0 0 万 円 の 借 り 入 れ を 決 断。 が続く。潮が大きく引く冬の夜の
の色あいが一本一本個性を持つ山
らは、漁に何の関係もなあのにの
島の経済は漁業を中心に成り
思う事がある」と話す。
をせてなあじゃろうが
てきた。その背景について同氏は、 さなければならない。四国からの
立つ。同氏はその要の漁協組合長
祝島の苦闘は続く。
う! わ し ら と 同 じ 苦 労
に 代後半で就き、かじ取りして
る姿は印象深い。
ツワブキの黄色い花などに癒され
桜、 山 を 覆 う ビ ワ の 袋 掛 け の 白、 ちゃん」たちは初志を強固に貫い
誌」は日々の思いと島の四季の移
30
てきた。バブル経済崩壊以降、魚
取りたい組合員もいる中でまとめ
業補償金の受け取りを拒否。受け
うち祝島だけが原発計画に伴う漁
きた。その間、上関周辺8漁協の
=1500円)
らん!下関の会、頒価
別)
、「 日 誌 」( 原 発 い
書 店、 2 1 0 0 円 = 税
「たたかい」
(岩波
30
広島ジャーナリスト
≪ 86 ≫
月1
「 福 島 を 忘 れ な い。 伊 方 原 発 を
再稼働させない」
。東京の反原発
元で
年活動してきた斉間淳子さ
非人間性を訴えた。伊方原発の地
山豊寛さんらが登壇し「原発」の
は京都府に住む元宇宙飛行士の秋
慧さん、福島からの避難者で現在
加 し た。 ジ ャ ー ナ リ ス ト の 鎌 田
表)
。広島からも約200人が参
か ら 約 8 千 人 が 参 集( 主 催 者 発
伊方原発をとめる会主催で、全国
日、 松 山 市 の 城 山 公 園 で あ っ た。
行動に匹敵する大集会が
12
く」と決議し、中心街をデモ行進
廃炉へ手を取り合って行動してい
者 は「 す べ て の 再 稼 働 を 許 さ ず、
ちを思い出した」と述べた。参加
なったおじいさん、おばあさんた
受けるのは初めて。道半ばで亡く
んは「こんなに大勢の人の声援を
40
した。 (編集部)
」
NO
集会場の城山公園から二手に分かれてデモ。
2番目の横断幕は広島からの参加
愛媛県庁(左手奥のドームの建物)を
望む会場を埋めた参加者
2013.12.20
伊方再稼働8千人「
12 月1日 松山で反原発集会
≪ 87 ≫
集会には若い母親たちも子ども連れで参加、未来への
不安を訴えた
集 会 で 原 発 の 非 人 間 性 を 訴 え る、
上 段 左 か ら 鎌 田 慧 さ ん、 広 瀬 隆 さ
ん、 秋 山 豊 寛 さ ん。 下 段 は 斉 間 淳
子さん
広島ジャーナリスト
福島・津波破損説を覆すデータ
深部低周波地震の恐怖募る
日
子力規制委員会委員長が八幡浜市で、世界から
人が参加した。講演の要旨は以下の通り。
こ の チ ラ シ = 次 ㌻ 写 真 参 照 = は、 9 月
だと強く批判した。約
方を示した。また、中村時広・愛媛県知事の「再稼働白紙」発言は再稼働が前提で「ペテン」
も起きる恐れがある―の2点を強調、これらが解決されないままの伊方再稼働は問題、との見
ことが一段と鮮明になった②東日本大震災の予兆として深部低周波地震が確認され、伊方沖で
発を巡る最近の情勢を報告した。和田さんは①福島原発の配管破断は津波ではなく地震による
25
和田 宰
伊方原発をとめる会の和田宰・事務局次長が 月 日、広島市中区の原爆資料館東館地下で
講演、伊方再稼働阻止へ向けた松山1万人集会( 月1日)の参加を呼び掛けるとともに、原
10
12
スタッフ
人が八幡浜駅に降りて、小さな集落
年と
わ だ・ つ か さ 1 9 5 2 年 生 ま れ。 年 か ら
2002年まで愛媛県立養護学校教諭。教科書問題、
年の愛媛県知事選に立
79
年から「伊方原発プルサーマル計画中止を求
原発問題などを争点に
07
年に発足した「伊方原発をとめる会」共同代表
人の
める愛媛県民共同の会」幹事。同会の解消に伴い、
候補。
03
14
を送ってもらった。
その中から2人、
原告になっ
には5通ぐらい、チラシから切り取ったはがき
俊雄さんが7月
うニュース。高知に住む元東電原発技術者木村
ものではなく、地震による疑いが強まったとい
たように福島原発事故の配管破断は津波による
し い と い う 内 容 だ っ た。 ヨ ウ 素 剤 の こ と も 含
仕方がない」、残りは、原発再稼働をやめてほ
月
15
日時点)。 1通は、切
25
手 も 張 ら ず「 再 稼 働 賛 成 」
、1通 は「心配だが
きが返っ てきた(
10
通ほどはが
てもいいという人が現れた。伊方原発運転差し
ターで記者会見し明らかにした。福島第1原発
め、避難の仕方が分からない、という不安の声
10
今 回 チ ラ シ を 配 っ た こ と で、
止め訴訟は今第3次訴訟で、原告は1002人
事故の分析を続ける元原子炉格納容器設計者・
もはっきり出ていた。
日、 都 内 の 日 本 プ レ ス セ ン
になった。伊方町の原告2人は、このチラシを
後 藤 政 志 さ ん が 同 席 し た。 非 常 に 重 要 な 指 摘
まいたことで見つかった。
で、津波より前に配管が破損していたことを示
れた。
があったことが報じられた。これもチラシに入
では、東北大の若手研究者によって重大な発見
のとらえ方だった。しかし「メガクエイクⅢ」
じわじわ逃がしている側面もあるというぐらい
エイク(深部低周波地震)は地震の強い応力を
初に放映された2010年のころは、スローク
が N H K で 放 映 さ れ た。
「メガクエイク」が最
9 月 1 日 に「 メ ガ ク エ イ ク Ⅲ 」 と い う 番 組
うことを地元の住民にお知らせした。
まま、猛スピードで審査を行っている。こうい
が、原子力規制委員会はこれらの検証をしない
は可能というストーリーを崩すものだ。ところ
水対策など津波に対する防御さえすれば再稼働
す証拠がほぼ明らかになっている。防波堤や浸
うちの1人。
11
04
今 回 は 新 し い 情 報 を い く つ か 入 れ た。 チ ラ
も う 一 つ は、 国 会 事 故 調 な ど が 指 摘 し て い
ニュースを入れた。
に佐田岬半島一円の4800世帯に配布した。 原発をなくさないといけないと講演した。この
28
30
にも入った。3月に続いて2回目だった。3月
80
シ作製の数日前にグレゴリー・ヤツコ前米国原
2013.12.20
止めよう「伊方再稼働」
≪ 88 ≫
≪ 89 ≫
町議会が再稼 働 認 め ぬ 意 見 書
んの一部しかデータを出さず、しかも事故調査
データを公開すると回答があった。その後、朝
東 電 か ら、 東 電 が 必 要 と 判 断 し た も の に 限 り
だが、この町の議会で「伊方原発の再稼動を認
愛媛県越智郡上島町はもともと保守的な土地柄
炉心流量及び再循環系データ(流量、温度、圧
と言っている。分析するデータは原子炉出力、
データを時間軸をそろえて並べ、分析すべきだ
1 0 0 分 の 1 秒 ま で 分 解 可 能 で、 そ れ ぞ れ の
伊方原発の再稼動を認めないことを求める意見書
四国電力は7月8日、北海道・関西・九州電力とと
もに原子力規制委員会が新規制基準の施行に合わせ
て、伊方原発3号機の再稼働審査を申請しました。こ
の中でいま、伊方原発3号機が先行して審議が進めら
れ、「再稼働の一番手」ではないかといわれています。
新規制基準は、福島第1原発事故の原因究明も終わ
らないもとで、教訓を踏まえたものとはいえず、安全
を確保できる保証はなく、世界有数の地震国・日本に
は原発の立地可能な地域などありません。まして伊方
原発の6㌔先には日本最大の活断層―中央構造線があ
り、東海・東南海・南海の「同時発生」も言われてい 17
ます。さらに重大事故が起こった際の避難・防災計画
も確立していません。伊方原発は、閉鎖性海域である
瀬戸内海に面しており、ひとたび伊方原発で過酷事故
が起これば、四国、中国、九州全域に大規模な放射能
汚染が広がるとともに、瀬戸内海が重大な汚染を受け
ることは明らかです。
伊方原発3号機は、よりいっそう危険なプルサーマ
ルを行っている原発でもあります。福島第1原発事故
は、
「収束」するどころか大量の放射性汚染水が海に
流出し、深刻化しており、原発の再稼働は許されませ
ん。
以上の趣旨にかんがみ 伊方原発の再稼働を認めな
いことを強く要望し、地方自治法第 99 条の規定によ
り意見書を提出します。
平成 25 年9月 26 日
上島町議会
(提出先)
内閣総理大臣
経済産業大臣
広島ジャーナリスト
報告書のつじつまが合っていないことに彼は
気づいていた。過渡現象記録装置は、航空機な
めないことを求める意見書」が、すんなり通っ
原発事故の深刻さへの認識が広がっている。 ら ボ イ ス レ コ ー ダ ー の 役 割 を 担 う。 デ ー タ は
た。ほぼ私たちの提案と同じ内容が安倍晋三首
力、 ポ ン プ 速 度、 ポ ン プ 振 動 )、 原 子 炉 圧 力、
原 子 炉 水 位、 原 子 炉 温 度、 給 水 系 デ ー タ( 流
相と茂木敏充経済産業相に送られた。海ととも
に暮らしている町だから、福島の実態を見なが
量、 温 度、 圧 力 )、 主 蒸 気 系 デ ー タ( 流 量、 温
度、圧力)、 格納容器圧力の8項 目。東京電力
に対する公開質問状で、これらのデータを出せ
日 の 会 見 で「 過 渡 現 象 記
録装置をフルに使用して事故時のプラント挙動
と迫った。木村さんの報告では、7月 日付で
木村さんは7月
ら、海を汚すことへの憤りが広がっている。
を説明することが必要」と強調した。東電がほ
10
≪ 90 ≫
さ ら に「 配 管 破 損 に よ る 事 故 進 展 と 東 電 の
分、非常用復水器に行こうと
日新聞記者らの尽力で、8月に過渡現象記録装
時
事 故 進 展 評 価 の 比 較 に つ い て 」 と い う 部 分。
日
置の全データを公開すると回答してきた。その
月1日に第一弾 「3月
新たな知見への対応を
東 日 本 大 地 震 の 約 4 カ 月 前 に、 東 北 大 の 伊
データを木村さんが解析し、
の報告があった。
部分。通常は、原子炉出力ゼロの場合でも自然
ことが分かった。東電の評価が正しいなら、格
整理していくと東電の報告書自体に矛盾がある
いたことが発見された。スロー・クエイクによ
いて、それが大規模地震にそのままつながって
クエイクが巨大地震の1カ月余り前に起こって
する」、これは東電の報告書にある。ところが、 ろしていた。地震計を引き上げてみたらスロー・
%弱(毎時約2100㌧)の冷却材の
納 容 器 外、 即 ち 原 子 炉 建 屋 の 放 射 能 充 満( 線
廃炉を求める署名」を 21 万 7000 余筆提出し、継続中。
寺住職)
、大原英記(県平和運動センター事務局長)、
共同代表は次の通り。安西賢誠(真宗大谷派専念
草薙順一(弁護士)、河野文朗(愛媛医療生協前理事長)
、
白戸暉男(農業)、清野良榮(松山大教授・福島県出身)
、
須藤昭男(インマヌエル松山キリスト教会牧師・福島
県出身)、立川百恵(コープえひめ元理事長)、中尾寛
(愛媛労連特別執行委員)、松浦秀人(愛媛県原爆被害
伊方原発運転差止訴訟 四国電力に対し、伊方原発
の全3基運転停止を求めて 2011 年 12 月8日、松山地
裁に訴状を提出し第 1 次訴訟を起こした。原告は 300
人。差し止め請求の根拠として人格権をあげ、原子炉
の運転によって生命、身体、健康が侵害される恐れ
があるとした。12 年3月 28 日に第2次提訴。原告は
622 人。13 年8月 20 日、第3次訴訟を起こした。原
告は 1002 人に膨らんだ。愛媛県内全 20 市町から原告
が出ている。3次で新たに早坂暁さん(松山出身の脚
本家)やアーサー・ビナードさん(詩人)らが加わった。
伊藤助教はそのプレートの動きが巨大地震の引
き金になったと考えている。これが9月1日放
映の「メガクエイクⅢ」の内容だ。
日付愛媛新聞が、
31
11
12
分に放射能測定値が高くなっていると
業従事者)。
東電資料にあり、これはおかしいと指摘してい
者の会事務局長)、真鍋知巳(医師)、村田武(愛媛大
2 0 1 0 年 の N H K「 メ ガ・ ク エ イ ク 」 で
は、伊方原発のある佐田岬半島の直下にスロー
クエイクのあることが報道された。東大地震研
の小原一成教授は、その時点ではスロー・クエ
イクを深刻なものと受け止めていなかった。今
回の東北大の発見は、地震学者にとっては衝撃
的だった。
今 年 6 月 に は、 原 子 力 規 制 委 員 会 の 委 員 5
人に要請書と資料を渡した。伊方沖の中央構造
日に松山市内で1596年
月
震とみていると表明したことなどを入れた資料
を添付したものだ。 年
12
破砕帯が伊方原発の真下を走っていると報道し
12
る。
表幹事)
、渡部竟志(福島県南相馬市から避難した農
循環で
流量が残存するが、この自然循環ゼロという異
るプレートのずれは、およそ
組む。中村愛媛県知事あてに「伊方原発を稼働させず
㌢に及んでいた。
量上昇)は3月 日未明にならなければ起こら
署名活動、伊方原発運転差止訴訟、議会への請願、
時
常事象の原因は、原子炉圧力容器につながる配
「ジェットポンプ流量ゼロ以下の意味」という
藤喜宏助教らが、震源の少し東側に地震計を下
19
した運転員は放射能測定器が高い値を示したた
17
報告の中の分かりやすいところを見てみる。 め1号機原子炉建屋に入れなかった事実が存在
11
管破損による冷却材漏えい以外に考えられな
首長への要請、集会、デモ、講演会の開催などに取り
19
ないはずだ、と彼は述べている。ところが、
3日発足した。
40
線活断層帯のことや、都司嘉宣・元東大地震研
准教授が 年7月
29
の慶長豊後伊予地震を中央構造線活断層帯の地
12
た記事も入れた。
2013.12.20
10
い。データを見ればそう言えるということだ。 日
ネルギーへの転換を図ることを目的に、2011 年 11 月
17
名誉教授)
、和田宰(伊方等の原発をなくす県民連代
10
そのデータ自体が壊れているかどうかの検証も
返してはならないと、伊方原発を止めることと自然エ
丁寧にやっている。
伊方原発をとめる会 福島のような原発事故を繰り
≪ 91 ≫
南海トラフ巨大地震モデル検討会が
なっている。8月
日の規制委員会では更田豊
を付けて超特急で工事完成日を定めて取り組も
は思えない。明らかに再稼働を目指している。
物を入れて、住民を守る客観的評価ができると
うとしている。住民にとっていま急がなければ
年
ならないのは使用済み核燃料の安全な管理だ
志委員が伊方原発を高く評価した(愛媛新聞8
な活断層があるとしているが、四国電力は過小
をこれまでより広く想定していた。
報告には「深 月 日付)。この人はこれまで何度も伊方原発
部低周波地震が発生している領域についても、 を持ちあげている。
四国電力は伊方原発周辺に480㌔の長大
月
評価が得意技だ。長沢啓行・大阪府立大名誉教
が、それよりも再稼働に向けた手順を優先して
することが適切と考える」とある。このことが
年1月
の市と町があるが、
オフサイトセンターが原発に近すぎるので少
し離れた所に移そうと、中村知事は大きな予算
授は、電力会社が計算する地震の計算式そのも
強振動を発生する可能性がある領域として検討
日 放 映 の「 メ ガ・ ク
事実として初めて確認されたのが、今度の東北
大 の 観 測 だ。
なく、徹底調査が必要だ。再稼働をめざすため
に必要なのではない。再稼働しないにしても、
かなりの期間、現地に使用済み核燃料は残る。
水問題が一番の課題だが、使用済み核燃料対策
はプルサーマルだ。もちろん、福島原発の汚染
カネも費やさなければいけない。特に伊方原発
使用済み核燃料の安全管理だ。そのことに人も
いると指摘している。例えば応力降下量につい
い研究者だが、四国電力は非常に過小評価して
その首長や議会の議長たちが次々と伊方原発を
安全なエネルギーを求める住民の当たり前
訪れた。再稼働へ向けた根回しだ。
の声を広く大きくする必要がある。原発再稼働
ても、地震が起きる前と後の差が非常に小さく、
他の電力会社に比べても如実に過小評価してい
を許さず、安全なエネルギーを求める声が若者
が走っている。この危険性をもっと広く知らせ
る。伊方原発の北約6㌔に中央構造線活断層帯
の危険性について具体的に分かりやすく知らせ
あ る。 さ ら に、 活 断 層 に 極 め て 近 い 伊 方 原 発
から高齢者まで広がっていることを示す必要が
ると述べている。厳しく監視していかなければ
いけない。
知事の「白紙」発言はペテン
愛 媛 県 の 中 村 時 広 知 事 は 常 々、 再 稼 働 に つ
原 子 力 規 制 委 員 会 は 今 猛 烈 な テ ン ポ で 審 査 だが、この委員に今春、奈良林直・北海道大教
している。愛媛新聞が8月に報じた記事では、 授を任命した。露骨な再稼働論者だ。すぐに「不
適切な人事」と文書で申し入れた。こういう人
規制委員会の評価をどう見るか議論するところ
県環境安全管理委員会の原子力安全部会は、
との発言だ。ペテンのような話だ。
後はタイミングの問題だという意味での「白紙」
な5%のゆとりを2%に縮め、詰め込んで保管 いて「白紙」と言ってきた。白紙とは何かと問 ていく必要がある。
されている。
今一番やらなければならないのは、 い詰められ、再稼働しないという選択肢は含ま
ない「白紙」だと答えた。いずれ再稼働はする、
ところが、伊方の使用済み核燃料は、本来必要
23
日に中間報告を出し、南海トラフの震源域
22
いるのが現状だ。県内には
12
こ れ ら は 新 た な 知 見 だ。 再 稼 働 ど こ ろ で は
データも、もっと広く公開すべきだ。
電力は地下2千㍍に地震計を置いている。その
部低周波地震のことを今、調べるべきだ。四国
じことが起きはしないかという危惧をもって深
周波地震の動きがあると報じられた。東北と同
エイク」でも、伊方原発の真下あたりで深部低
10
は将来にわたって必要なことだ。
20
10
これまでの約2週間に1回が、週3回ぐらいに
広島ジャーナリスト
11
のに実際に数値を入れながら追跡できる数少な
27
地元対策・ソフト面追及・海外連携
関西電力大飯原発4号機が停止作業に入り、昨年5~7月以来の「原発稼働ゼロ」の状況が
生まれた9月 日、
「上関原発止めよう!広島ネットワーク共同代表」の木原省治さんが「原
木原 省治
㌔圏内が「地元」とされてきたが、事故後新たに ㌔圏、 ㌔
10
30
50
子ども・被災者支援法は1年間たなざらしだ。
ツ イ ッ タ ー で「 何 も し な い こ と が 措 置 で あ る 」
日付で総務省官房付に異動=も、とても腹立た
と書いた復興庁の水野靖久・元参事官=6月
しい。
安 倍 晋 三 首 相 は 9 月 7 日、 ブ エ ノ ス ア イ レ
スであったオリンピックのプレゼンテーション
で、 現 在 も 将 来 も 放 射 線 被 害 は ま っ た く 起 き
な い と 言 い き っ た。 そ れ に 対 し て I O C の メ
ン バ ー が、 は っ き り 言 っ て く れ た と 評 価 を す
る。これにも腹が立つ。国は470億円、汚染
水対策で出すと言ったが、東京電力は事故を起
こした時、四方を囲む遮水壁を考えていた。約
1千億円かかる。そうなるとその時点で破産状
態になる。これをそのまま放っておいて、今に
て、あす未明には原発が停止する。これで稼働
9月3日未明には3号機118万㌔㍗が停止し
北海道電力の泊原発1~3号機の再稼働申請が
~4号機、四国電力の伊方原発3号機、関西電
せてしまった。原発は カ月運転で点検に入る 原子力規制委員会が規制基準を7月8日に決
ので、あす未明に大飯4号機が完全停止する。 定、施行した。その同じ日に、九州電力の鹿児
なって汚染水が大きな問題になっている。選挙
中の原発はゼロになる。昨年5月の連休の時以
ている。
出された。関西電力は昨年7月に大飯原発を動
昨年は、夏が終われば大飯は止める、という話
来だ。昨年は関西電力を中心にした地域で、自
レジュメの表紙に「組織された無責任」「組
織されたあきらめ」と書いた。この国は原発事
かした。
の時に話に出さなかった責任は大きい。
宅治療の人が、停電になって治療ができず死ん
故に対して総括も反省もしない。だれも責任を
で進んでいた。しかし、こういう形で再稼働さ
だらどうする、責任はだれが持つんだというよ
とらない。戦争が終わった時、この国は戦争に
時ごろ。原子炉を冷却し
うな脅しがあったのを覚えていると思う。橋下
ついて総括せず反省せず責任も取らなかった。
年たった今、原発事故で同じことがいえる。 事故原因の議論なく新基準決定
力の大飯原発3~4号機、高浜原発3~4号機、
島川内原発1~2号機、数日遅れで玄海原発3
徹大阪市長や滋賀県の嘉田由紀子知事ら、それ
裂反応が止まるのが
21
にきちんと反論できると思われる人が屈服させ
られ、大飯原発の再稼働を7月上旬にさせてし
13
参院選でも、汚染水問題は遅くとも7月初めに
68
11
、関西電力大飯原発4号
きょう(9月 日)
機が午後4時ごろから徐々に停止される。核分
運動との連携が大事―との見解を示した。約150人が聴き入った。講演の要旨は以下の通り。
ソフト面で原子力規制委員会はきちんとした結論を出していない。追及が必要③海外の反原発
圏が原発の「地元」と考えられるようになった。その対策が重要②避難の仕方など事故対応の
原さんは①これまで原発から
発再稼働をさせないために何が必要か」と題して広島市中区の平和記念資料館で講演した。木
15
15
北海道電力以外は、
電力供給は夏がピークだ。 は分かっていたが、選挙の争点にはしなかった。 規制基準の作り方に大きな問題がある。まず
まった。
2013.12.20
原発再稼働を認めないために
≪ 92 ≫
≪ 93 ≫
作られた経過。極めて急いで作っている。当初
型( B W R = Boiling Water Reactor
)。 加 圧
水型はウェスチングハウス(WH)社、沸騰水
伊方原発は中央構造線のほか全国有数の地滑
り地帯にあるし、唯一の瀬戸内海沿いの立地で、
申 請 が 出 さ れ た。 申 請 が 出 さ れ た 原 発 は す ヘリで九州側に運ぶと言っている。昨年の冬に
べ て 加 圧 水 型( P W R = Pressurized Water 訓練をしたが、強風のためつり上げて避難させ
)。福島原発事故を起こしたのは沸騰水 ることができなかった。北海道電力の泊原発、
Reactor
北陸電力の志賀原発も同じように原発に向かっ
事故調、政府事故調、民間事故調、東電事故調
型はゼネラルエレクトリック(GE)社がつくっ
放射能の海洋拡散予測がない。上空は米軍機飛
うに伊方先行、泊後追いとか、1馬身差で川内
ないという防衛省通達があるし、日米間でも原
認された。原発上空は飛行機を飛ばしてはなら
墜落、不時着、緊急着陸は、これまで計8回確
価が要請されている。高浜原発1~2号機は地
う方向に進んでいる。泊原発は地下構造の再評
きく報じた。合意は守られていない。
伊 方 原 発 の 問 題 点 と し て、 広 島 か ら 1 0
0 ㌔ の 位 置 に あ り、 原 発 か ら 海 側 6 ㌔ に 日
震、津波対策が議論になり、原子炉の安全評価
大 き な 理 由 は、 愛 媛 県 の 中 村 時 広 知 事 が 極
本 一 と も 言 わ れ る、 長 く て 規 模 の 大 き い 中
は後廻しになって再稼働申請は見送られてい
原発は五重の扉があり、何があっても放射能
は漏らさないと言っていたが、フィルター付き
広島ジャーナリスト
3月以降に骨子が明らかにされるといわれてい
たが、これを1月に明らかにした。7月8日に
がそれぞれ調査結果を出したが、規制基準を決
た。福島で事故を起こした沸騰水型は今回、再
は正式決定、施行された。福島原発事故で国会
める過程で、それについての議論がまったくさ
て避難するしかない。
れていない。いずれの事故調の結論も違うとこ
で起きたのか地震で起きたのか。そういうこと
とか、いろいろ報道されているが、伊方が先行
発の上空は飛行機を飛ばさないと話をしている
行ルートになっている。米軍機の原発周辺での
が議論されず、規制基準が決められた。福島県
している。なぜ伊方先行といえるのか。規制委
最 近 の 新 聞 報 道 を 見 る と、 競 馬 の 予 想 の よ
稼働申請を遠慮した。
民も含め、原発事故被害者に対する聞き取りも
員会の議論をマスコミが見ている限りでは、伊
が、朝日新聞が「伊方原発の上飛ばないで」
「米
ろがある。福島原発事故はなぜ起きたか。津波
していない。やったのは電力会社からの聞き取
軍機、合意守らず」(8月
日付社会面)と大
方原発は少し高い所にあり、防潮堤の審査が必
そ う 言 わ れ な が ら も、 電 力 会 社 か ら 再 稼 働
りだけ。現場無視ともいえる。
要ない。明らかな活断層、破砕帯がない。最も
央 構 造 線 と い う 活 断 層 線 が あ る。 事 故 が 起
る。大飯原発は、活断層の問題があり再度調査
しかし、7月に原子力規制委員会の規制基準
ができて、伊方原発3号機は特に問題ないとい
きた時の司令塔になる免震重要棟は原発か
ベントは放射能を出すことを前提にしている。
故 が 起 き た 時、 原 発 に 向 か っ て 避 難 し な い
と い け な い。 四 国 電 力 も 愛 媛 県 も 佐 田 岬 の
に 約 5 千 人 が 住 ん で い る。 こ の 人 た ち は 事
発 の 中 に あ る。 伊 方 町 に は 人 口 1 万 人 が い しないといけないと言っていたが、規制委員会
るが、原発の西側(佐多岬の突端に近い方) は結局活断層は存在しないと結論を出した。わ
ずか 分間の議論だ。
ら 離 れ て い な く て は な ら な い が、 こ れ が 原
めて再稼働に前向きだということだ。
26
突端から海上自衛隊海上保安庁などの船や
10
≪ 94 ≫
新基準では、沸騰水型原発は再稼働の条件とし
てフィルター付きベントを付けなければならな
い。加圧水型は5年間の猶予期間がある。だか
ら、今回の再稼働申請では加圧水型が先行して
%
いるとも言える。フィルター付きベントはガス
抜きみたいなもので、ガスを出すけれども
の放射能は除去しますということになってい
た ㌔圏内に、原発再稼働を止める動きを期待
から市街地
㌔圏、 ㌔圏がポイントになる。安全協定では、
するのは難しい。あらたに「地元」になった
だが、原発
までずっと
は広島に向
海だし、風
市には「了解が必要」だが、鳥取県、米子市に
例えば原発稼働を認めるか認めないかで、松江
㌔
日本全国の原発を見ると、EPZの ㌔圏内
では 万人がいた。 ㌔圏内だと440万人、
ともに紳士ではないと認めることになる。
されるものではないというと、電力会社は名実
は開き直って安全協定は紳士協定という。拘束
は「報告する」となっている。そこで電力会社
薄い。
圏も根拠が
㌔圏、
ている。
かって吹い
30
人が住む。再稼働を止めるには
㌔圏
の人たちに対する働きかけが重要だ。報告だけ
島根県。U
でいいと言っても知事や首長が「再稼働は困る」
米子の各市
知事は慎重な姿勢だ。そういうところを見ると
の滋賀県の嘉田由紀子知事、京都府の山田啓二
重要事項の意思決定、情報連絡、避難指示のあ
システム(SPEEDI)のあり方、安定ヨウ
り方、緊急時迅速放射能影響予測ネットワーク
治体、あるいは地元以外の自治体はどうするか。
広島県、岡
れる。
例えば島根原発で事故が起きた場合、山口、広
素剤の配備、避難困難者をどうするか。地元自
原発マ
ネーでズブ
山県も含ま
新規制基準のソフト面に目を移す。多くの問
Zには庄原
道路の確保、
市、新見市、 題点を含んでいる。現場での対応、
入る。PP 「新たな地元」が大きなポイントになる。
と鳥取県が
来、 出 雲、 大飯原発がある福井県の西川一誠知事は、本
雲南、境港、 音は再稼働を早くやってほしい。しかし、周り
と言えば中電も強引に進めることはできない。
㌔圏、
㌔圏内では日本の人口の約1割、1200万
30
る。しかし、実際には実験できない。
約 1200 万人
上記に加え庄原、新見市、広
島、岡山県
ブルーム通過時の放射性ヨウ素
による甲状腺被曝を避けるため
PPZ
概ね 50 ㌔圏
の屋内退避、安定ヨウ素剤服用
等の対策を準備する区域
10
Zに入るの
島根原発
の場合EP
10
50
ハード面では、免震重要棟や防潮堤のほかに
電源車の問題がある。原発は核分裂を止めて冷
松江市・島根県
上記に加え安来、出雲、雲南、
境港、米子市、鳥取県
約 440 万人
50
70
は松江市と
50
やす。冷やすために電気がいる。福島は冷やす
約 15 万人
UPZ 緊急時防護措置を準備する区域 概ね 30 ㌔圏
30
PZでは安
30
ことができなかったから事故が起きた。電源車
は小高い丘の上に置きましょうとか、ハード面
は決めた。ソフト面について原子力規制委員会
はきちんとした結論を出していない。
新たな「地元」への対策を
㌔
原発のいわゆる地元というのは、これまでお
おむね ㌔とされていた。EPZ(原子力防災
対策重点地域)だ。福島原発事故によって
圏 内 の U P Z( 緊 急 時 防 護 措 置 を 準 備 す る 区
㌔圏についてはPPZ(ブ
松江市・島根県
原子力防災対策重点地域(これ
8~ 10 ㌔圏
までの「地元」
)
PAZ 予防的防護措置を準備する区域 概ね5㌔圏
約 70 万人
EPZ
島根原発での該当市町
住民の数
(国内の総計)
50
ズブになっ
2013.12.20
域)
が決められた。
ルーム通過時の放射性ヨウ素による甲状腺被曝
を避けるための屋内退避、安定ヨウ素剤服用等
㌔についても問題はある。原発から
の対策を準備する地域)という。しかし、この
㌔、
㌔離れた飯舘村は、放射能汚染でみると
30 50
50
区域
日本語名
名称
99
30
10
50
㌔圏以上だ。伊方原発から広島まで約100㌔
~
30
60
原発の新たな「地元」
≪ 95 ≫
を止める上で重要だ。
結論を出していない。この面での追及は再稼働
ことと回答した。原子力規制委員会はきちんと
質問に、規制委員会は事業者、自治体が決める
んと決まっていない。新潟県の泉田裕彦知事の
そういうことが大きなポイントになるが、きち
付きベントを付けるとか電源車を配備すると
ト工事をするのは安全協定違反だ。フィルター
願いに行ったが知事は拒否した。[
地元自治体を無視してフィルター付きベン
くれと広瀬直己社長が7月5日、泉田知事にお
羽が再稼働申請する。そのための工事をさせて
志賀は活断層問題が大きい。そうなると柏崎刈
のか。どのようにして避難計画を立てるのか。 中部電の浜岡。女川は震災被害を受けた。再稼
維持費がかかるのに引きずっているのか。3号
明した。なぜ再稼働申請する気もない原発を、
機は2015年夏までこのままにしておくと表
1兆2千億円ぐらいかかる。中国電力の苅田知
額 で 1 兆 円 か か る と い わ れ る。 原 発 維 持 費 も
各電力会社の安全対策を実施するには総
フを含めた地震対策がスムーズにはいかない。 に廃炉にすべきだ。
働申請にはなかなかならない。浜岡は南海トラ
機137・3万㌔㍗は完工しておらず燃料も装
火処理もする気もない。だったら1号機は直ち
らず、再稼働申請する気もない。ケーブルの耐
か。沸騰水型を持つのは東北電力の女川原発、 電力の再稼働申請が考えられるのは2号機だ。
もう一つは国際協力。このままいくと東京オ
リンピックは、世界中からボイコットされるか
荷していない。しかし、このままだと2号機再
島、岡山各県への避難要請はどのような形です
もしれない。前回の東京オリンピックは戦後復
か、原発の安全対策をする場合は、事前に自治
稼働、3号機は運転開始という状況になってい
東京電力の福島、柏崎刈羽、北陸電の志賀原発、 1号機はフィルター付きベント工事を考えてお
興のシンボルだったが、今回は国際社会の中で
体の同意を得る必要があると協定にある。フィ
く。
そしてできれば原発を再稼働させたい。こうし
海外の反原発運動との連携がとても大事だ。
ようとしているのは2号機だ。再稼働申請した
と同型で出力も同じ。中国電力が再稼働申請し
になる。これをずっと続けさせていく。来年3
う3点に絞って話した。あす未明には原発ゼロ
(きはら・しょうじ)
ていきたい。
そう簡単にはいかない。脱原発へ向けて頑張っ
と 伊 方 町 議 会 で も さ ま ざ ま な 意 見 が 出 て い る。
かとも言われるが、愛媛新聞などの報道を見る
月議会で伊方町が再稼働にOKするのではない
[1]東京電力の広瀬直己社長は9月 日、新潟県の泉
田裕彦知事に柏崎刈羽原発6、7号機のフィルター付き
ベ ン ト 改 良 工 事 に つ い て 了 解 を 求 め る 要 望 書 を 提 出。
泉 田 知 事 は 日、 同 原 発 の 新 規 制 基 準 適 合 審 査 申 請 を
条件付きで承認することを東京電力に伝えた。
30
25
広島ジャーナリスト
るか。どう避難するか。バスは何台確保できる
日本がどう位置付けられているかが重要なテー
ルター付きベントは、沸騰水型では再稼働の条
いる。フィルター付きベントも来年には完成す
た政策を変えさせるために「新たな地元」への
原発廃炉産業を育成する方向に決断しないこ
とで、ずるずるとすべてを先送りさせていく。
英社長は電気事業連合会で会見して、島根1号
マになる。一番の課題は福島原発の汚染水対策
件 に な っ て い る。 こ れ ら を 自 治 体 を 無 視 し て
[1]
だ。ニューヨークタイムズ紙では連日、大きく
報じられている。覆水盆に返らずではないが、 やってしまう。だから泉田知事は怒った。
㍍の防潮堤を造って
そこまで言い切ったわけだから、きちっと対策
る。地元無視、電力会社の横暴だ。島根原発1
島 根 原 発 も そ う だ。
をとらないといけない。汚染水対策ができない
対策、安全ソフト面の追及、海外との連携とい
出ていった水は元には戻らない。安倍首相はあ
限り原発再稼働は認められない。この問題で、 号機 万㌔㍗、2号機 万㌔㍗。1号機は福島
15
82
原発は、いずれも運転開始から 年以内。中国
が大事ではないか。
地元同意得ぬまま安全工事
島根原発など沸騰水型原発は今後どうなる
26
①新たな地元に対する期待②規制基準の中で
抜けているソフト面での対策③海外との協力―
46
後、東京から一家で何のゆかり
もない呉市に移住。その経緯を
まとめた「原発引っ越し」を自
費出版。原発移住者を取材した
冊子「移住者の声 HOME」
を連続発行している。企画・制
作・執筆にかかわった本に「吉
田拓郎とつま恋と僕」「輝き続
ける星 東方神起」「飯島愛 孤独死の真相」など。
みは脆くも無くなってしまいました。原発事故
ほど仕事をしてきました。しかし、そうした営
「移住者の声」より
あなたが語ってくれたこと
お前だけは健康でいて欲しいと言って送り
出してくれた大好きな両親を捨てた。
放射能が怖いなら子ども生まなければいい
じゃんと言った妻を捨てた。
年7月のことでした。
の影響による放射能汚染から家族を守るため
に、慣れ親しんだ東京・世田谷から、広島県呉
年収を1000万円捨てた。
移住をしたのは
雑誌に毎月載るような人気のパン屋を3店
舗捨てた。
いされる。産地を確かめ、安心できる料理
僕らは傷つきながら、子どもの手を引いて
を 用 意 し よ う と す る と、
「風評被害で困る
僕らは「放射能不安症」と呼ばれて、マス
クをしていると「気にしすぎだよ」と苦笑
で母子避難や家族移住をした家族を取材し、「移
私は移住後、原発事故と移住のことについて
「原発引っ越し」という自著に書き、同じ立場
7年かけて開拓して夫婦の夢だったチーズ
を作る牧場を捨てた。
住者の声HOME」を発行しています。取材を
始めて、およそ1年半で130人ほどの母子避
難、家族移住者に会いました。今回のこの寄稿
の保育所を開園2週間前に捨てた。
んだよ」と罵られる。
11
豊かな山と川が近くにあって地域の年配者
らと交わりながら幼児を育てる、こだわり
家族同然で暮らしてきたペットを捨てた。
市へと移住を決断したからです。私たち家族が
をして得た声を元に書いたものです。
11
2カ 月 だ け 住 ん だ 新 築 の 一 戸 建 て を 捨 て
た。
最後まで避難に反対した病気ひとつせず家
族のために働いてきた夫を捨てた。
夫婦二人三脚でやってきた二代目を継いだ
美容室を捨てた。
の企画、書籍にかかわる。3・11
と思います。
のゴーストライターとして多数
いくつもの難儀な仕事を一緒に乗り越えて
きたスタッフたちを捨てた。
石垣市生まれ。文化人や芸能人
さて、3・ 母子避難、家族移住のことを語
る前に、紹介したい詩があります。これは私が
かみはら・しょう フリーラ
全国大会で優勝したソフトボールのチーム
メイトを捨てた。
ンスの編集者。1974 年沖縄県
実際に、母子避難、家族移住をした家族に取材
移住に至った理由を少しでも知ってもらえたら
職、家、夫、妻、親、友失う
原発引っ越し
神原 将
18
私は、東日本大震災の起きた2011年3月
日まで東京に住み、マスコミの一端で 年間
11
では、母子避難、家族移住者の存在と、避難や
2013.12.20
家族守るため移住決断
≪ 96 ≫
≪ 97 ≫
避難をした。
自分の暮らす町にはどれくらいの人が移って来
す。しかし、こうしたことが報道されないので、
そんななかで3・ を経験しました。原発事
母子避難、家族移住者がどんな思いでいるのか、 故の影響で東京は交通機関が大混乱しました。
は泣きながら一人で暮らす新しい家の
僕ら
玄関に、ただいまと声をかける。
私自身の取材と、中国地方や九州地方のNPO
電車はダイヤが乱れ運転見合わせの路線ばかり
分で往復で
しな国だよと、毎日ため息をつくのが
おか
癖になった。
たくなる。
に気がついて、原発のばかやろう!と叫び
す。
いる人はおよそ1千人で、日ごとに増えていま
残り6割となっています。広島県に移って来て
東京を中心とした関東圏からの避難、移住者が
ルトが出たことに驚きました。まるでSFの世
杉並周辺の放射能汚染の数値で最大3㍃シーベ
したのです。さらに友人らが測定した世田谷、
日本の中心たる東京は、完全に機能不全を起こ
作ってきました。沖縄県の南の外れの小さな島
18
で生まれ育ち、東京に憧れて上京後、がむしゃ
らに仕事をやってきたのです。
呉を移住先に選んだのは、過去 年間ほどの
全国の災害の状況を調べたところ、岡山県と広
ねた生活を捨てることを決意しました。
からの脱出、移住を勧められたことで、積み重
さて、紹介した詩の最初に書いてある「年収 界に迷い込んだような状況のなか、知人の研究
1000万円を捨てた」のは私自身のことです。 所の先生、フランス大使館関係者らに強く東京
ゲーム業界を出発点にして、出版業界で 年ほ
に抱えられるだけの幸せがあればいい
両手
やと自分を励ます。
母子避難、家族移住者たち。
ど活動をし、大小併せて 冊以上の本や雑誌を
3・
がとうと、素直に感謝を口に出せるよ
あり
うになった。
団体などから聞いた数から言えば、福島を中心 はパンや牛乳、お米、インスタント食品、缶詰
友だ ち 以 上 に 思 え た あ の 人 や、 あ の 人 や、
あの人の態度が、よそよそしくなったこと とした東北圏からの避難、移住者がおよそ4割、 など食料と呼べるものが一切姿を消しました。
きるところに5時間かかり、スーパーの棚から
ているのか、ほとんどの人は実感がありません。 となりました。道路はいつもなら
夫だよと、毎晩寝る前に自分に言い聞
大丈
かせる。
30
が少ないことが分かりました。そこで、3・
島県が、地震や津波をはじめ、台風などの被害
30
80
ん に 関 す る 本 が き っ か け で、 広 島 の フ ァ ン の
方々と何人かネット上で繋がる機会があり、ま
ったく知り合いのない岡山に行くよりも、広島
にしてみようと決めたのです。親戚縁者のない
土地でしたが、あとは勢いでした。
東京の汚染はタブー
移住後、我が家の避難の経緯を本に書いて、
広島ジャーナリスト
11
の直前に手がけたミュージシャンの吉田拓郎さ
11
かに今、ここに僕らは生きている。
たし
テレビが話題にしなくても、僕らはこ
例え
こで声をあげ続ける。
に入りの家や、大好きな家族や、大切
お気
な仲間たちに届いて欲しいと声をあげる。
みんなでこの国の上で生きたい。
あなたと生きたい。
報道されない 関 東 圏 避 難 者
この詩に書いてある事柄は、まさに今、母子
避難、家族移住者の身の上に起きていることで
(11 月 22 日、広島市内)
11
き合いの長い大手出版社数社に、いつもの流れ
られれば、これまでのように
せん。神原さんも、目をつけ
家族がいる内容は出版できま
射能汚染されていること、それを理由に逃げる
くら原発事故が起きたからといって、東京が放
り上げよりも広告収入に依存しているので、い
対をする人もいました。「今の出版社は本の売
う。
いう現実には、正面から向き合えないのでしょ
されていて、避難や移住しなければならないと
はNGということのようです。その場所が汚染
出版業界だけでなくテレビや新聞も、東京は
じめ関東が汚染されていることを取り上げるの
は150万円程度になる見込みです。
るまで編集部との関係は回復せず、今年の収入
数年と付
で企画を持ち込んだのです。ほとんどの出版社
は仕事が入らなくなるかもし
さて、前述した詩から読み取れるように、家
を失った方、職場を失った方、家族や友人を失
多くの人に伝えようと思いました。
で編集部は賛同してくれましたが、なかには反
れないし、今は冷静になった
った方、いろい ろな境遇の方がい ます。なぜ、
ほうが得だと思います」
ここまでして、これまでの暮らしを捨てて、避
年 4 月、 難や移住をしたのでしょうか。大きな理由は、
「原発引っ越し」というタイ
思った以上に東北から関東圏まで広い範囲で、
トルで、
て初めて自費出版をしまし
た。すると、その年の冬まで
1年間の仕事の予定が入って
いたのに、連絡も相談もなく
各地の放射性セシウム降下量を文科省が測定
し、原子力規制委員会がこっそりと公開してい
データが示す放射能放出継続
らの仕事
るデータを、自作でグラフにしたものを紹介し
だに多量の放射性セシウムが、私たちの暮らし
年3月
の上に、今も空から静かに降っていることが分
かります。いちばん左側が事故当時の
11
月~
年4月の5カ月
です。グラフの途中2カ所でピーク(福島では
年
12
80
【注】原子力規制委員会のホー
ムページの放射線モニタリング
1回目のピークは
12
今日に至
さ ら に、 ックアップしました。このグラフからは、いま
た の で す。 ます〈グラフ1〉
。個人的に気になる地域をピ
は消滅し
突然それ
ります。
放射能汚染があることが分かってきたことにあ
12
冊以上出版してき
す。 そ の た め 私 は
経過時間H 23.3 ~H 25.9
情報を基に筆者作成。対数目盛
表示を使用して描画しています
11
2013.12.20
そして、どの出版社も結果
として出版を見送ったので
月間放射能降下量(Cs134 + Cs137 合計)<グラフ1>
10
月当たり降下量 MBq/km2
≪ 98 ≫
月~
から安心」と言うのなら、なぜこのように高い
数値が、継続して測定されるのかということで
が確認できます。現在出回っている放射能汚染
(平成
)年
月に
いうことは、尿や便に含まれている放射能が大
半を占めていると考えることもできそうです。
さて、こうした情報を能動的に収集できた人
の多くが、疎開や移住を決断しました。家族を
放射能汚染から守るためには、汚染地から素早
く離れて距離を置くしか方法がありません。事
故を起こした原子炉1基を7カ月で石棺にし
て、放射能拡散をひとまず食い止めたチェルノ
ブイリでさえ、何十万人という地域の人を、素
早く移動させ距離を置く対策をとりました。福
島原発事故は、少なくとも3基が爆発したこと
が確認され、事故となったのは計4基。それが
事故後2年8カ月以上が過ぎた現在も石棺にす
ら さ れ ず、 グ ラ フ で 見 た よ う に い ま だ に 放 射
Atmospheric Chemistry and
能 を 環 境 中 に ま き 散 ら し て い る の で す。 欧 州
の研究機関である
Physics A
( CP が
) 年に発表した試算によ
れば、これまで福島第1原発事故で放出された
セシウムの量はチェルノブイリの7分の1程度
と言われていましたが、実際には3倍程度にな
る見込みといいます。まだ汚染は拡大する一方
ですから、この数値も日ごとに増しています。
チェルノブイリでは、事故炉から170㌔以
広島ジャーナリスト
年
年2月の3カ月間) ここで考えてほしいのは、政府や行政が言う
ように、「事故炉は冷温停止されている」「汚染
す。同地域の上水道の放射能の量を見ると、こ
)年8月から
10
間。2回目は
された食べ物は流通していない」「除染をした
(平成
25
れほどの数値を示すようなことはありません。
13
至るまで、「検出 されず」が続いて います。と
24
地図は、この二つのピークの直前までのデータ
13
12
であり、この二つのピークの汚染をほとんど反
映していないように見えます。
私はこのことを、福島第1原子力発電所に詳
しい、日立関係のエンジニア3人に取材をして
見解を訪ねました。どなたの意見も「事故炉か
ら新たに噴き上がっている、
いわば『間欠放出』
と呼ばれるような現象だろう。重大な記録だ」
と答えました。
だとすれば、東北や関東は、一度除染をした
からといって、田植えや農業を始めていい場所
とは思えません。ちなみにグラフの右端、(平
)年9月末の福島県はおよそ1平方㌔当た
る放射性物質が止まってからでなければ、除染
はほとんど効果を発揮しません。政府はさらに
3兆円もの追加予算を除染に当てるようです
が、このグラフから分かるように、その予算を
使ってもっと先にやるべきことがあります。
さらに、もうひとつグラフ化したものを紹介
します〈 グラフ2〉
。こちらは栃木県那須塩原
市にある那須地区広域行政事務組合のし尿処理
施設(第2衛生センター)で測定されたもので
す。同センターでは主に尿や便などの生活汚水
【注】那須地区広域行政組合のホームページの放射能濃度測定結果を基に筆者作成
13
り7億ベクレルです。言い換えれば、空から降
成
13
(平成
経過時間H 24.4 ~H 25.10
12
を 処 理 し て い ま す。 グ ラ フ の 右 端、
那須し尿処理 焼却灰放射能濃度<グラフ2>
12
月の測定でセシウム合計がキログラム
10
13
25
)年
25
当たり4千ベクレルを超えています。
セシウム合計(Bq /kg)
≪ 99 ≫
≪ 100 ≫
留まれば、
娘たちも留まるしかない。娘たちに、
ちから奪い去りましたが、別の多くのものを与
上離れた地域でも放射能汚染の影響と見られる
これから数年後、放射能の影響と思われる健康
3・
以前に住んでいた場所で暮らし続けても
大丈夫なのでしょうか。
またしかし、避難や移住後もその地域での暮
らしが肌に合わず、2度3度と住む場所を替え
聞くにちがいない。娘たちが、自分の日記やブ
ログに、そうした苦しみを僕には内緒でひっそ
ムができてきているように思います。転職後の
過している人は、やっと新天地での生活のリズ
たいと思います。避難や移住から2年以上が経
母子避難や家族移住をした方々が、その後ど
のような暮らしをしているのかにも触れておき
けて情報発信をしています。
びに変えて、海外移住を検討している家族に向
労しているようですが、新しい発見と経験を喜
住をした家族もいます。慣れない文化のなか苦
ばならなくなった家族もいます。また海外に移
とで、介護をするために泣く泣く帰還しなけれ
ます。東北や関東に残した両親が病に倒れたこ
子どもが兄弟姉妹でバラバラになった家族もい
なふうに生きていけばいいのか分からない。そ
かない状態になってしまっていたら、僕はどん
が、もしも数年後、娘たちの体が取り返しのつ
の心を貫くにちがいない。大袈裟かもしれない
仕事のしがらみ、社会的なしがらみのない、
純粋無垢な子供の疑問は、とてもシンプルに僕
むだろう。
んな胸の内を知ってしまったら、僕は嘆き苦し
ている家族もいます。離婚した夫婦もいますし、 りと書き留めるかもしれない。ある日、娘のそ
仕事に慣れた人、地域の支援をもらいながら自
第1原子力発電所はいまだに放射能を拡散して
少なくとも共通理解しておきたいことは、福島
の時に、国や東電に迫ってみても、娘たちの健
営業を再開できた人、アルバイトやパートでが
康が戻って来ることはないのだ。
さまざまです。しかしこうした方々は、苦しい
いて、見えない津波のように私たちの足下から
( 妻 ) の 仕 送 り と 両 親 の 支 援 で や っ て い る 人、 在り方によって道を選ぶのだと思います。ただ
なかでも新しい生活を楽しんでいることが分か
す。
腰まで、静かにその水かさを増していることで
かっているのです。
さて、最後 に自著の「原発引っ越 し」から、
一部引用します。避難や移住を決断した家族の
ります。その姿勢がこれから避難や移住を考え
私個人のことで言えば、東京で暮らした 年
間よりも呉での2年間にできた繋がりのほうが
気持ちを、ここから酌み取っていただければ幸
ている人に伝われば、後に続きやすくなると分
多いのです。街を歩けば誰かに「野菜を持って
いです。
は多くのことを私た
子供を守れるのは親しかいない。僕が東京に
いきなさい」
「困ったことはないか」などと声
18
をかけてもらえます。東京ではそういうことは
ありませんでした。3・
「原発引っ越し」書籍版 1300 円(税込)、電
子書籍版 500 円(税込)▹「移住者の声 H
OME」各号 350 円(税込)▹購入申し込み・
問い合わせはインターネットの次のサイトへ
http://genpatsu-hikkoshi.info/
ん ば る 人、 二 重 生 活 の な か で 地 元 に 残 っ た 夫
残る人、動く人、誰が正解ということはない
でしょう。それぞれが個々の暮らし方、仕事の
苦しい中で新生活楽しむ
さんはどうして東京から逃げなかったの?」と
健康異常が、現在でも多数見つかっています。 えてくれています。東京では4人の家族だった
㌔の避難区
害が起きてしまえば、彼女たちはきっと「お父
㌔や
のに、呉では家族が100人も増えたように思
私たちは、政府が用意した
30
域の距離だけを見て、
このまま東北や関東など、 える毎日です。
20
11
2013.12.20
11
原発賠償にも取り組む。著書に
レット)、「原発事故の被害と補
償」(共著、大月書店)、「環境
被害の責任と費用負担」(有斐
閣)など。
的にはこのようにいってよかろう。
東電の賠償は大きな問題点を抱えており、被害
者との矛盾を広げている。以下ではまず、原発
から、応急段階を脱したとはいえないが、発災
被災者が「応急仮設住宅」で暮らしているのだ
呼ばれる)
。東日本大震災では、今なお多くの
段階に分けられる(これは「災害サイクル」と
対策に始まり復興、防災・減災へと至る複数の
時間軸でのずれが、上記三つの課題を空間的に
原住地の復興にも多くの年月を要する。人びと
原発事故の賠償は、「原子力損害の賠償に関
の生活再建の場は、避難先とならざるをえない。 する法律」
( 以 下、 原 賠 法 ) に し た が っ て 進 め
うに低減しなければ、住民は安心して戻れず、
影響は、極めて長期に及ぶ。汚染が事故前のよ
待ったなしの課題である。一方、放射能汚染の
賠償の仕組みから述べていこう。
から3年目の現在、復旧・復興も同時に課題に
切り離してしまうのである。
年1月
る原子力損害賠償紛争審査会(以下、紛争審)
しているが、賠償の対象となる損害の範囲につ
られる。原賠法は、原子力事業者の責任を規定
原発賠償の仕組み
のぼらざるをえない。
単純化していえば、国の政策の重点は、除染や
そこで国は、被害地域の除染やインフラ復旧 いては、とくに定めていない。
などを通じて、住民の帰還を促そうとしている。
原賠法によれば、賠償すべき損害の範囲に関
する指針を決めるのは、文部科学省に設置され
ている。
「生活再建」は個人や家族、
「復旧」は
避難先での雇用対策などもあるとはいえ、基本
の間に、七つの指針(追補を含む)を順次策定
傍)に住民を帰還させるところに置かれている。 である。紛争審は2011年4月から
インフラ復旧を進め、原住地(あるいはその近
「復興」は、福島復興などというように、しば
しば地域が主語とされる。
13
インフラなどの施設が主語となるだろう。また
「復旧」
「復興」という三つの課
「生活再建」
題は重なり合いつつも、その〝主語〟が異なっ
「生活再建」「復旧」「復興」
原子力災害における
それはまず時間軸においてあらわれる。避難
とは何か。一般に、災害発生後の対応は、応急 者 た ち に と っ て、 生 活 再 建 は い う ま で も な く
地震で一定の範囲の建物が倒壊したような
ケースを想定すれば、これら三つの連続性は比
「原発賠償を問う」(岩波ブック
本稿では、福島原発事故における賠償の現状
と問題点を検討したい。とくに不動産賠償に焦
と、被害地域の再生。震災後は
点をあてる。被害者の生活再建にとって、住ま
病など公害・環境被害の補償
他方、被害者の生活再建に向けた国の対策は
非常に限定的であって、東京電力(以下、東電)
研究テーマは、大気汚染や水俣
較的イメージしやすい。しかし今回のように、
経大教授などを経て現職。主な
放射性物質による深刻な環境汚染が生じた場
位取得。博士(経済学)。東京
いの問題は決定的に重要だからである。そのう
まれ。一橋大大学院博士課程単
が行なう賠償にもっぱら委ねられてきた。だが、
済 学 専 攻。1971 年、 横 浜 市 生
合、三つの課題の間には、避けがたい矛盾が生
立大教授。環境政策論・環境経
えで、被害地域の再生に向けた課題についても
よけもと・まさふみ 大阪市
じてくる。
除本 理史
考えたい。
福島原発事故賠償―現状と課題
「加害者主導」が大きな問題
≪ 101 ≫
広島ジャーナリスト
≪ 102 ≫
わけではない。
不動産賠償基準の問題点
43
を余儀なくされている。とはいえ全体
地・家屋など財物の賠償に関する基準を策定・
とともに、紛争審を差し置いて、額が大きい土
年3月から8月まで開
公表した。紛争審は、
である。
東電が、財物の賠償基準を公表してしまったの
こうして進められている東電の賠償
で
あ
る
。
経
産
省が賠償の「考え方」を示し(
は、 国 の 避 難 指 示 等 の 有 無 に よ っ て、 年7月 日)
、東電がそれを受けて、具体的な
基 準 を 公 表 す る と い う 形 を と っ て い る( 同
12
してきた。
内容に大きな格差が設けられている。国の避難
月3日、広島市で開かれた日弁連人権擁護大会)
41
き た と い え る。 つ ま り「 加 害 者 主 導 」 催されなかったが、その間の7月に、経産省と
12
避難指示区域内の不動産のみである。区域外の、
20
指示等があった区域では、避難費用、精神的苦
加害者と被害者の間で争いがある場合、通常
は、司法のような第三者に判断が委ねられる。 痛、収入の減少などに対する賠償が、それなり
(
に も か か わ ら ず、 加 害 者 た る 東 電
は、これを賠償の「天井」であるかの
よ う に 扱 っ て き た。 そ れ だ け で な く、
「加害者主導」の構図は、不動産賠償でいっ
そう明確にあらわれている(除本理史「原発賠
㌻)
。
指針よりも賠償の範囲を限定しようと
~
償を問う―曖昧な責任、翻弄される避難者」岩
、
する場面すらあった。これには被害者
~
26
年7月、東 電は経済産業省(以下、経 産省)
年、
や世論の批判が大きく、国会などでも
波 ブ ッ ク レ ッ ト、
25
としてみれば、加害者側が賠償の枠組
取り上げられたため、東電は一部撤回
13
みを定め、それを被害者に押し付けて
13
を避け、当事者間の自主的な解決を促進するた
ただ、裁判では時間や費用がかかるので、それ
にはもう少し複雑だが、おおむね以上のように
れないか、あるいは極めて不十分である。実際
かった場合、住民に対する賠償はまったくなさ
に行なわれている。他方、国の避難指示等がな
建物の補修・清掃費用に対する賠償はある)
。
い(ただし旧緊急時避難準備区域など一部で、
人口が多い中通りなどは一切対象になっていな
理解しても大過ない。次に述べる不動産につい
め、紛争審の指針によって、最低限賠償すべき
が指針を受けて賠償基準をつくり、被害者から
ては、東電の書式による賠償請求の手続きが
損害の範囲が示される。今回の事故では、東電
日 )。 な お、 こ の 賠 償 基 準 が 対 象 と す る の は、
24
年8月の紛争審では、経産省と東電が賠償
基準の説明まで行なった。本来まず紛争審が指
の請求を受け付けている。
ここで注意すべきは、紛争審の指針が、裁判
等をせずとも賠償されることの明らかな損害を
れている(避難指示区域とは、国の避難指示が
無が、避難指示区域の内・外ではっきりと分か
年3月末から始まっているが、これも賠償の有
経産省がこのような発表をするのか」と同省担
だ中身だったため、紛争審のある委員は「なぜ
しかも、基準が紛争審の指針を越え、踏み込ん
当然だろう。
列挙したものであり、賠償の範囲としては最低
区域)。
当者に理由を問うた。そうした疑問が出るのは
針を示すはずなのだが、順序が逆転している。
12
出された福島第1原発 ㌔㍍圏と旧計画的避難
13
限の目安だということである。指針に書かれて
いないからといって、賠償がなされないという
2013.12.20
10
20
≪ 103 ≫
非常に多いことが問題視された。不動産の売買
年4月以降実施され
る賠償(慰謝料)などを打ち切っていく方針も
720万円にしかならない。この方の場合、ロー
り、土地・建物に庭木などを含めた賠償額が約
とされる避難指示解除準備区域にご自宅があ
じではない。
土地や家屋は、頻繁に売買される「財物」と同
のだろう。つまり被害地域の人びとにとって、
に登記はつきものだが、そうした意識が希薄な
てきた避難指示区域の再編と連動している。避
ンも残っており、同等の住居を再取得するのは
代々受け継がれる土地や家屋は、容易に代わ
りのものを入手することは困難であるから、代
て』に対する会長声明」
難指示区域の見直しに伴う賠償の実施につい
本弁護士連合会「東京電力株式会社による『避
た避難者たちにとって、住んでいた家や土地は
きである。原住地を離れることを余儀なくされ
年
東電の賠償に納得できない被害者は、裁判を
月上旬現在、 起こすことも可能だし、紛争審のもとに設置さ
議論は進行中だが、住居の再取得などに配慮し
れた裁判外の紛争解決機関「原子力損害賠償紛
政権交代と「復興の加速化」
注目される。
者側の動きがどこまで高まるか、今後の動向が
ある。
「加害者主導」の枠組みに対抗する被害
6年以降であれば、
「事故前の価値」の全額を
まいを得たとしても、避難者たちがふるさとを
奪われたことには何ら変わりがない。
年以上の家屋につ
いては、新築価格の2割しか賠償されない。原
これら二重の減額措置が適用されると、賠償
額が減り、新たに住居を取得するのが困難にな
次の世代へと受け渡していくものだ、という意
除染やインフラ復旧を進め、住民を帰還させる
中身にもすでに言及したとおり問題があるが)、
月 日の就任記者会見で「復興の加速化」
識が強い。東電による不動産賠償手続きの開始
年
る人も少なからず出てくる。
「残存価値」を賠
簿上の所有者が亡くなったりしているケースが
ところに政策の重点を置いている。安倍首相は、
現にそこに住んでいたという「使用価値」を重
12
償するのは当たり前に思えるかもしれないが、 に至る過程で、不動産が未登記だったり、登記
いため、自治体から反発が出された。
発事故の被害地域には、そうした古い家屋が多
が考慮されるのである。築
は、それに応じて賠償を減額する。
ただし、住居の再取得といっても、あくまで
家屋については、もう一つ減額措置がある。 居住スペースの確保であり、原状回復からは程
「事故前の価値」の算定のなかで、
「経年減価」 遠いことに注意しなくてはならない。新たな住
争解決センター」に申し立てるという選択肢も
賠償を減額する二つの要因が組み込まれてい
る。
面からの批判を踏まえて、紛争審も不動産賠償
日)。各方 「ふるさと」の象徴ともいえる。
の見直し作業に着手した。
年8月
一 つ は、 土 地・ 家 屋 に つ い て、 前 述 の よ う
に、避難指示の解除時期と連動した減額措置が
10
て賠償を上乗せする案が固まりつつある。
11
12
賠償するが、6年に満たず早く帰還できた場合
13
そもそも、避難指示区域の人たちにとって、
農地を含 む土地は、単なる「財物 」ではない。
本稿冒頭で述べたように、国は「生活再建」
都市部とは異なり、それは先祖から引き継がれ、 を基本的に東電の賠償に委ねつつ(その賠償の
48
12
26
広島ジャーナリスト
視しなければならない。筆者が話を聞いた楢葉
経産省と東電は、財物の賠償基準とともに、
「事故収束」を前提として、精神的苦痛に関す 町の避難者のケースでは、最も早く帰還できる
難指示が解除されれば、避難による費用や精神
極めて困難である。
明らかにした。これは、
的苦痛もなくなるはずだからという理由で、そ
れらに対する賠償の打ち切りが浮上してくる。 日本弁護士連合会は、これらの減額措置を批 替性が乏しいものと解すべきであろう。そうし
判し、避難者が生活基盤を再取得できるよう、 た不動産に関する損害評価は、容易に市場で入
経産省と東電が 年7月に公表した不動産の
賠償基準について検討しよう。この基準には、 賠償の仕方を改めるべきだと提言している(日 手できる財物とは違って、慎重に行なわれるべ
12
ある。すなわち、避難指示の解除時期が事故後
12
≪ 104 ≫
16
安倍新政権のもとでも、国の方針はまったく転
換していない。政権は「復興の加速化」を掲げ
るが、
つまるところ従来の路線を変えないまま、
年
月末頃から、政府・与党が、後述の
「帰
いっそう前のめりになることを意味している。
なお
がなくなり、復旧作業などを進めるのが容易に
げられるだろう。①被害地域への立ち入り制限
区域再編によって「生活再建」
や「復
一般には、
興」が進むはずだ、という受け止め方が少なく
指示区域の再編である。
この問題点を分かりにくくしているのが、避難
興 」 へ の 橋 渡 し が う ま く い か な い 恐 れ が あ る。
ころが国の政策では、「生活再建」から「復旧」「復
延 長 線 上 に、
「復興」がなければ ならない。と
そもそも、復興とは「人間の復興」であるべ
きだ。そう考えれば、被害者の「生活再建」の
避難指示区域再編の「二重性」
か、注視が必要である。
の帰還という点でみると本当に転換しているの
避難元地域についてはそうだとしても、福島へ
かのような報道がなされている。汚染の深刻な
還困難区域」に関して「帰還」政策を転換した
10
来ならば、戻れないのと同じであろう(福島民
12
を強調したが、原発事故の被害者からは、そも
13
ない。その理由として、おおむね次の3点が挙
(福島県のホームページから)
日付)。後述のように、避難自治
年6月
的に多数を占めている。
11
体では、原住地帰還に困難を感じる住民が相対
そも「復興」という言葉への違和感も聞かれる。 友
放射能汚染の影響は極めて長期に及ぶ。国が
いかに除染や復旧作業を推し進めても、放射能
14
年6月の町議会で述べたように、 自民党の大勝と政権復帰をもたらした第 回総
46
財の賠償が進み、避難者の生活再建が可能にな
選挙の、ちょうど1年前である。しかしながら、 る。
2013.12.20
13
汚染に対しては限界がある。汚染が事故前のよ 国の「帰還」政策は、とくに 年 月 日の なる②避難指示が解除されることで、避難者た
うに低減しなければ、
住民は安心して戻れない。 「事故収束」宣言以降、明確に打ち出されてきた。 ちがもとの土地に戻れる③連動して不動産と家
大熊町長が
帰還できるといわれても、汚染の低減が遠い将
13
≪ 105 ≫
のように空間線量と関連づけられている。
ルト超の地域)である。新たな区域分けは、こ
たに設定した。
味を捉え直すことが重要である。そこで以下で
時に実施してきたため、住民はもとより関係自
第1原発 ㌔㍍圏の陸域については、国が警
戒区域の解除と避難指示区域の見直しを常に同
も の の、 も と も と 立 ち 入 り は で き た。 後 者 で
は、前者のみである。後者では居住はできない
区域が設定され原則立ち入り禁止になったの
しかし現実には、避難者や避難自治体の側か
ら、こうした見方に対して、疑問の声や強い批
このように国の避難指示は、第1原発 ㌔㍍
圏と、計画的避難区域に出されているが、警戒
は、これら①~③の見方について、避難者や自
治体内においてすら、両者が混同されているこ
判すら出されてきた。あらためて区域再編の意
治体サイドの視点を対置することにより、検証
は、むしろ区域見直しによって、帰還困難区域
20
20
年4月に川内村、田村
区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の
テップ2の完了を受けた警戒区域及び避難指示
本部によって示された
(原子力災害対策本部「ス
り、法律上は別の事柄である。ともに市町村長
災害対策基本法では、警戒区域の設定は第
条、避難指示は第 条にそれぞれ定められてお
はない。
のである。
再編の「落とし穴」―
の権限に属するが、原子力災害対策特別措置法
区域再編に至る議論の過程では、避難指示区
域の住民の間にも、賛否両論があった。たとえ
減額・打ち切り
市、南相馬市から区域再編が始まり、順次実施
にもとづき、原子力緊急事態が発生すると、国
検討課題について」
)
。
年8月、川俣町の再編により完了し
ば、立ち入り制限が緩和されることに関して、
されて、
が市町村長に対して警戒区域の設定や避難の指
入りを自由にしてほしい(あるいは制限を緩和
その後、4月 日に、国は第1原発 ㌔㍍圏
を、あわせて警戒区域に設定し、原則立ち入り
22
20
年3月
日
他方、区域再編に対して懸念する声も出され
価と区域見直しを関連づけたためである。
に決定した「第二次追補」で、不動産の被害評
という期待が高まった。紛争審が
で、区域再編が進むことで損害賠償も前進する
また、避難指示区域の見直しが、区域内の不
動産に関する被害評価の前提とされているの
たいなどの理由による。
すい。3月 ~
㌔㍍圏まで広
両者に関連する二重の意味を併せもっているか
日 夜 に は、 避 難 指 示 区 域 は
がった(第2原発周辺にも避難指示が出された
から避難の継続を求める地域)
、および「帰還
禁止とするより厳しい規制措置をとった。また
㍉シーベルト超で、被曝量低減の観点
㍉シーベ
困難区域」
(5年を経過しても年間
(年間
3区域とは、
「避難指示解除準備区域」(年間 が、第1原発周辺の避難指示区域とほぼ重なっ
積算線量 ㍉シーベルト以下)
、「居住制限区域」 ていたため、ここでは略す)。
指示区域を新たに3区域に見直すことである。
20
12
同日、その北西に隣接する計画的避難区域を新
16
解くことであり、②についてはこれまでの避難
て、同心円状に避難指示区域を設定・拡大した。 いる。これは荷物を持ち出したい、墓参りをし
11
らである。すなわち、①については警戒区域を
11
㍉シーベ
12
12
11
域の住民アンケートを見ても、一時帰宅や立ち
見方から検討していきたい。なぜこれら二つを 年3月 日の原発事故の発生から翌4月ま
同時に扱うかというと、
区域再編という言葉が、 での経緯を振り返ると、両者の違いが理解しや
してほしい)という意見が少なからず出されて
区域再編を歓迎する声があがった。避難指示区
た=前㌻図。
63
示などを行なう権限が認められている。
60
となった地区に新たにバリケードが設けられた
とが少なくない。しかし、 ㌔㍍圏への立ち入
26
ここでまず、区域再編に関する前記①と②の
12
広島ジャーナリスト
20
していきたい。
12
「 事 故 収 束 」 り制限をなくすためであれば、警戒区域を解除
区 域 再 編 の 基 本 的 な 考 え 方 は、
宣言を受けて、 年 月 日に原子力災害対策 することで足り、避難指示区域まで見直す必要
11
日、国は第1原発を中心とし
13
20
ルトを下回らない恐れのある、年間
50 20
20
≪ 106 ≫
た。たとえば、住民以外も立ち入りができるよ
解除時期が事故後6年に満たない場合、その年
うになることで、
治安に関する不安が高まった。 数に応じて賠償額が減らされる(家財について
帰還困難区域より低額)。もう一つは、精神的
そのうちどれを重視して移住先を定めるか、選
択を迫られた。
故前と比べて高いとすれば、より安全な「環境」
だろう。だが、役場の移転先でも放射線量が事
には、避難者は役場移転先の近傍に居住すべき
会・政治」的機能にアクセスしやすくするため
も、居住制限区域と避難指示解除準備区域は、 避難自治体では、住民だけでなく役場機能も
移転を強いられた。そうしたいわば地域の「社
る人びとが増えることで、放射線防護も課題と
苦痛に対する慰謝料の打ち切りである。
また、自治体職員を含め、旧警戒区域に立ち入
なってくる。
警戒区域の解除と一体になっているため(区域
さらに、区域再編の前提にある「事故収束」
避難指示の解除時期は、このように賠償の減
が疑問視されていることも挙げられる。原発が 額や打ち切りに直結している。しかし、それが
まだ危険な状態にあるのだとすれば、警戒区域
立ち入りの制限を柔軟に運用していくというや
域再編の「落とし穴」が隠れているのではない
点が十分に意識されていないようだ。ここに区
は、これらとは別のところにあるかもしれない。
たとえば雇用機会という点で最善の居住地域
るかもしれない。あるいはまた「経済」の観点、
を求めて、さらに遠くへ移住する必要に迫られ
り方もあっただろう。
か。
を解除するのではなく、住民の要望を受けて、 再編の「二重性」)、被害者の間では、この問題
住民や自治体からみれば、以上のように区域
再編は「両刃の剣」である。ここで述べてきた
ている。避難指示区域の住民たちは、これまで
前述のとおり現在、避難者たちに対して、国
の政策による原住地帰還への方向づけがなされ
点 が 十 分 に 検 討 さ れ る こ と の な い ま ま、 国 に
「引き裂かれた地域」の再生とは
よって押し切られてしまった感が否めない。
きたのだが、それとは逆方向の力が作用してい
国の指示によって「強制的」に避難させられて
次に、区域再編に関する前記③の見方の検討 筆者はこれまで「地域が引き裂かれる」構造
へと進もう。
先ほど触れたように住民の間では、 に着目して、原発事故がもたらした地域社会の
~
ている。
づけが、避難者に新たな精神的苦痛を生じさせ
㌻)。「地域」は、 いわば諸要素の「束 」 原因が解消されていないために、帰還への方向
区域再編で不動産の賠償が進むのではないか、 被害を論じてきた(前掲拙著「原発賠償を問う」 るのだ。ところが、避難指示のおおもとにある
という期待があった。
「第二次追補」では、被
であり、一定の範域に「自然環境、経済、文化
として存在することで、人びとの生産・生活の
おおもとの原因とはいうまでもなく、原発事
故とそれにともなう環境汚染である。これまで
年7月)において、区域再編
場として機能する(中村剛治郎「地域政治経済
も、国の「事故収束」宣言は、実態から程遠い
述の賠償基準(
学」有斐閣、 年、 ㌻)。
から4月にかけて、第1原発で使用済燃料プー
がむしろ賠償の減額をもたらすことが明確に
なってきた。
放射能汚染のない環境、ある程度の収入、生
活物資、医療・福祉・教育サービスなどが手の
60
とができない。しかし原発事故によって、これ
になった。
と強く批判されてきた。事故後2年の 年3月
避難指示区域の見直しにより新たに設定され
る3区域に対して、自治体ごとに、避難指示解
ル冷却装置などの停電や、汚染水漏れが明らか
た。しかしその後、経産省と東電の公表した前 (社会・政治)」という複数の要素が一体のもの
害評価の方法は具体的に決められてはいなかっ
35
除の見込み時期が決められる。前述のように、 届く範囲になければ、私たちは暮らしていくこ
避難指示の解除時期は、次の二つの点で損害賠
2013.12.20
30
償と関係している。一つは、不動産に関して、 ら諸要素 の束が「解体」され、避 難者たちは、 地元紙は、3月の停電事故を受けて「冷却機
13
04
12
≪ 107 ≫
あった」と社説で指摘し、
「住民の帰還意識が
楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛
原子力被災自治体における住民意向調査結果 報告書」によれば、避難自治体(この調査では
日常生活のなかで「被曝を避ける権利」を保障
していかなくてはならない。
びとの要求だった。しかし避難指示が解除され
これまで「避難する権利」「被曝を避ける権利」
は、「自主避 難者」など、避難指示 区域外の人
福島の人びとの間では
「事故は収束していない」 尋ねたところ、戻らないという回答が2~4割
れば、国の指 示で避難させられ た人たち(
「強
が遠い将来ならば、戻れないのと同じである。 帰還に困難を感じている住民が、相対的に多数
した大熊町長の発言にあるように、汚染の低減
林や農地について、疑問視する声が多い。前述
を占めることを物語っている。戻らない理由と
戻りたいという回答より多い。これは、原住地
7割)が、東電の謝罪と除染、慰謝料の増額を
は、 年7月末までに約1万5千人(町民の約
人たちが次々と訴訟を提起している。浪江町で
福島県をはじめ各地で、避難指示区域内・外の
・6%にの ぼった。戻らないと いう回答は、
原発事故による権利侵害を訴え、救済を求め
7町村のすべてで、現時点で(あるいはすぐに) る取り組みも広がりつつある。 年 月以降、
「強制避難者」の「自主避難者」化
を含めて事故後6年は戻れないとしたのは、こ
避難自治体が、インフラ復旧などに要する期間
後、賠償も打ち切られたことに批判が高まって
月、住民説明会もなく指定解除がなされ、その
ない。伊達市の特定避難勧奨地点では、 年
申し立てに参加した。避難者の生活再建とかけ
離れた「復興」政策のもとで、こうした動きは
拡大せざるをえないだろう。
広島ジャーナリスト
能停止が続けば、再び大事故につながる恐れも
低下する恐れがある」という避難自治体の首長
日 付 )。 尾村、飯舘村の7町村)の住民に帰還の意向を
台 を 占 め た。 調 査 対 象 や 期 間、 回 答 の 選 択 肢
制避難者」)も、これらの権利を求めていく必
年3月
というのがむしろ常識であり、それを理由に避
などが町村によって異なるが、戻らない(ある
要に迫られる。避難指示の解除は、いわば「強
の 声 を 掲 載 し た( 福 島 民 友
難をしているという人もいる。住民の不安は収
いは戻りたいと思わない)という回答が、最も
しかも、国による避難指示解除の目安は、年間
しては、「放 射線量」や「原発の安 全性」に対
また、引き続く放射能汚染も、帰還の障害に
なる。除染の効果があがればよいが、とくに山
㍉シーベルトである。これは通常時
求めて、原子力損害賠償紛争解決センターへの
の被曝限度1㍉シーベルトよりかなり大きい値
だから、小さな子どもを抱えた世帯などで、帰
還へのためらいが生まれてもまったく不思議で
の点に関係している。地域を構成する諸要素の
いる。
るべきで ある。同時に、帰還した 人たちにも、
12
申し込みはファクス 082-231-3005 かメー
ル [email protected] ▽紀伊国屋書
店広島店、フタバ図書などでも好評発売中
はない。
うち、
「環境」
(ここでは放射線量)だけに着目
「引き裂かれた地域」の再生には多年を要す
さらに問題は、単純に放射線量が低減するだ けでは、人びとは戻れないということである。 る。拙速な避難指示の解除は避けなければなら
して住民を戻そうとしても無理である。コミュ
12
いう人が出てくるだろう。その権利は認められ
12
12
被爆者とABCC㊥ 相良カヨ
国の「だまし討ち」と闘う 本田博利 45
避難指示の解除後も、それぞれの事情に応じ
て、被曝を避けるための「避難」を続けたいと
年度 ニティなど、他の諸要素も回復しなければ、帰
年5月に公表した「平成
特集「平和宣言に何を読み取るか」
戦後 70 年 広島の役割は 加戸靖史
首相にぶつけられた長崎の思い 樋口岳大
核兵器禁止条約をめざせ 川崎哲
平和祈念式・8月報道 座談会で振り返る
「国際平和拠点ひろしま構想」を問う
ストーン&カズニック、広島で語る
何が起きてもおかしくない 若松丈太郎
豪州ウラン採掘 深刻な影響 P・ワッツ
積算線量
する不安を挙げた人が多い。
22
まることがない。
制避難者」の
「自主避難者」
化を意味するからだ。
13
低い楢葉町でも ・3%、最も高い大熊町では
20
24
13
広島ジャーナリスト第 14 号
20
還は進まないだろう。
復興庁が
13
原発事故当時
子どもたちの人生狂わす原発
日現在
人が手術で甲状腺癌と診断さ
歳以下を対象にした「福島県小児甲状腺超音波予備検査」は9月
人が甲状腺癌もしくは癌疑いとされ、
青木 克明
代では最多の癌だが、
歳以上であり、もっともおとなしい癌である。子どもの甲状腺癌を見つけ出して手
はチェルノブイリの空白を埋める疫学調査の役割が強い。甲状腺癌は
れた。最終的には100人に達することが予測される。予備調査は県民の不安にこたえるより
で3分の2が終了し、
30
回実施し379人
術をするのは原発事故が招いた異常事態である。福島の子どもたちは原発によっていじめられ、
人生を狂わされている。原発被災者の要望にこたえて甲状腺エコー検査を
が体験した。今後も被災者に寄り添う活動を継続していきたい。
「重篤な甲状腺被曝を受けた子どもは限定的で
あると推定される」と述べている。
チェルノブイリと比べて福島の子どもたちの
甲状腺等価線量はかなり低く、健康に影響は出
な い で あ ろ う と さ れ た が、 他 県 に 移 住 す る 子
歳以下であった
万人に対して生
ど も が 後 を 絶 た な い た め、 福 島 県 は 事 故 当 時
0歳から
月から開始した。
涯にわたり甲状腺超音波検査を行う事を決め、
2011年
検査に使用するポータブル超音波検査機は福
島原発1、2号機を造ったゼネラルエレクトリ
ック(GE)社から購入した。GEは原発建設
でもうけ、原発が壊れた時にももうけた。
この春にはライオンズクラブから2台の超音
波検診車が寄贈された。搭載されているポータ
ブル超音波検査機は、4号機を造った日立から
寄贈された。
小児甲状腺検査のプロデューサーは福島県立
医大副学長を務めた山下俊一・長崎大教授であ
った。甲状腺被曝線量が100㍉シーベルトに
ンポジウム「被ばく医療の新たな挑戦 国
: 際貢
献・そして福島」で次のように述べている。
る。山下教授は今年2月9日に長崎市で開かれ
の3市町村で合計1080人の子どもの甲状腺
[1]
相当する毎時0・2㍃シーベルト以上の被曝を
1 福島甲状腺検査のテキストはチェルノブイ
リ笹川プロジェクトによるバス検診
た原爆被爆者指定医療機関等医師研究会でのシ
福 島 原 発 事 故 後、 チ ェ ル ノ ブ イ リ の よ う に
小児甲状腺癌が多発するのではないかとの不
受けた子どもはおらず、田代聡・広島大教授は
%は毎時0・ ㍃シーベルト以下であ
55
安にこたえるた
れず、
を シ ン チ レ ー シ ョ ン サ ー ベ イ メ ー タ ー で[検 査
した。ヨウ素131は全体の ・4%で測定さ
11
め、 原 子 力 安 全
04
年
億円
1962年に創設された長崎大原爆後障害医
療研究施設は国際社会還元型の活動を行い、
年にはチェルノブイリ笹川プロジェクト
万人
50
死亡例は
20
36
万人の子どもの甲状腺検診をした。これ
16
59
18
18
によって検診バスを提供し5年間に
10
2013.12.20
26
保安院は3月
91
99
間に
26
日から 日にか [ 1] シ ン チ レ ー シ ョ ン サ ー ベ イ メ ー タ ー は、 放 射 線
測 定 器 の 一 つ。 ガ ン マ 線 や エ ッ ク ス 線 と 反 応 し て 微 弱
けて、いわき市、 な 光 を 発 す る 物 質 シ ン チ レ ー タ ー を 使 い、 放 射 線
(
)
のエネルギーや線量を測定する。
30
川 俣 町、 飯 舘 村
20
50
10
福島の甲状腺検査
「疫学調査」の色彩
≪ 108 ≫
≪ 109 ≫
が福島の教科書となっている。
超音波検査は妊婦検診で広く活用されるよう
に、その場で画像を一緒に見て説明し印刷して
%を占めており、有所見者の割合
の検査協力者を集めることが困難であったため
歳以上が
が増えた一因となっている。
提供できるが、福島ではそのメリットが活かさ
年には在外被爆者、放射線被曝事故被害者
の救済に長崎が有するヒバクシャ医療の実績成
次検査が必要と判定された。2次検査の終了者
9月 日現在、対象者の約3分の2が1次検
査を終了し、0・7%にあたる1559人が2
70
㍉以下ののう胞はA2、5
な悪性所見があればCと判定される。A1、A
年度からの本格検査まで再検査は必要な
人、本格調査での再検査でOKが240人、
扱い(暫定基準)」をもとに、所見なしはA1、 はまだ897人であるが、結果は、所見なしが
30
半年~1年後に超音波による再検査が必要なも
のが325人、甲状腺癌の可能性があり穿刺細
いが、Bは福島県立医大で順次2次検査を受け
年 少 は 6 歳 女 児 だ っ た。
人が甲状腺癌もしくは癌疑いと判定された。最
胞診を実施したものが277人であり、うち
2011年3月 日には福島に入った。福島
医大の疲労困ぱいした職員には、福島はチェル
る必要があり、Cはただちに受診が必要との判
人が乳頭癌であった
人が手術を終了し、
なっている。
甲状腺癌は女性に多いが、最初に公表された
5月 日現在の報告では男性 人、女性 人で
見者は福島県立医大で一括管理される仕組みに
59
女比は1対1・ で女性が多くなってきている。
27
年度には原発周辺の 自治体で検査が終了
し、 年度には福島市など県の中央部での検査
14
14
男女同数であり注目された。今回の報告では男
27
福島県小児甲状腺超音波検査は出張検診で実
施されている。検査担当者は1人当たり100
わきなどの検査が行われている。受診率は対象
査が必要とされた325人とともに福島県立医
細胞診検査で悪性ではないと判定された
218人は、半年~1年後に超音波による再検
る。画像を入手するためには戸籍謄本をとり、 長崎、甲府、弘前の約4千人の子どもたちの検
後日、判定委員会で判定して結果のみ郵送され
見が出るとすれば、2年間の予備調査により癌
を 受 け る 事 と な る。 今 後 も 同 じ 比 率 で 異 常 所
見は加齢とともに増加する。福島での受診者は
査がされた結果と思われる。甲状腺の超音波所
も達した。わずかな所見も見逃さない方針で検
る。
の定期検査の必要者は約千人に達することにな
70
地域別では原発に近い 自治体では癌もしく
は 癌 疑 い は 人( 手 術 後 に 良 性 と 診 断 さ れ た
44
歳以下の方が多いが、弘前、甲府では乳幼児
13
13
かない。
[2]アジア地域の貿易独占権を与えられ、オランダな
ど の ア ジ ア 進 出 の 先 兵 と な っ た「 東 イ ン ド 会 社 」 の 逆
展開を意味するのであろうか。 10
手数料を払って福島県に情報開示請求をするほ
もしくは癌疑いは約100人、半年~1年ごと
40
査ではのう胞などの所見ありが %から %に
大甲状腺内分泌外科で保険診療による定期検査
者の %という高さである。
2 今の検査の目的は精度の高い疫学調査
26
~150人を平均3分で検査して8枚の画像を
が終了し、 年度には原発から離れた会津、い
13
記録する。
所見をその場で知らせることはせず、 受診者の約 %にのう胞などの所見があった
ことが注目されたが、対照群として実施された
82
13
36
11
12
るよう伝えた。
ノブイリとは違う、リーダーはぶれずに踏み止
2は
55
でヒバクシャの診療にあたる医師の研修受け
入れ、専門家の派遣を行っている。
「魔法の火」 5㍉以下の結節か
20
である原子力の防災にかかわる「防人海援隊」 ㍉以上の結節、 ㍉以上ののう胞はB、明らか
[2]
「西インド会社」と自
[ 認している。
20
定である。ただしC判定は1人にすぎず、有所
14
まり、立ち続ける覚悟と見識が必要、胆をすえ
18
広島ジャーナリスト
11
果を活かすため、NASHM 長
( 崎・ヒバクシ れていない。
ャ医療国際協力会 が
) 設立された。チェルノブ 超音波検査は日本乳腺甲状腺超音波医学会の
イリ周辺国、在外被爆者が多い韓国・米国など 「甲状腺超音波検診における結節性病変の取り
92
≪ 110 ≫
1 人 は 除 い て い る ) で 受 診 者 の 0・0 3 1 %、 福 島 小 児 甲 状 腺 検 査 の 責 任 者 で あ る 鈴 木 眞
一・福島県立医大甲状腺内分泌外科教授は「こ
状腺検査が必要か」について以下のように述べ
ポジウムが行われた。鈴木教授は「なぜ今、甲
までされてこなかった。
1、日本では小児甲状腺腫瘍の疫学調査はこれ
島原発事故と低線量被曝の影響」と題したシン
の甲状腺癌は原発事故後の影響で起こったもの
ている。
人で受診者の0・
か」との疑問に次のように答えている。
(手術で確定した患者数は未発表)
福島市など県の中央部では
032%であった。今後、原発から離れた地域
1、 福 島 で の 線 量 が 圧 倒 的 に
㍉シーベル
2、今まで施行されていなかった検診をすれば
低 い( 最 大 で も
トを超える小児はいない?)。
3、今後、被曝による増加があるか否かを確認
ゆっくり育つ甲状腺腫瘍が多く発見されること
するためにも、今の甲状腺の状態を把握するこ
2、 放 射 誘 発 甲 状 腺 癌 の 潜 在
島はいまだ2年。
は容易に想像がつく。
3、 被 曝 時 年 齢 が 若 い ほ ど リ
とが重要である。
ェルノブイリで認められた乳
4、 通 常 の 乳 頭 癌 で あ り、 チ
癌もしくは癌疑いの群は甲状腺ホルモンの異常
めて全員に血液と尿検査がおこなわれている。
福島県立医大での2次検査では甲状腺エコー
の再検査で異常所見なしと判定されたものも含
[3]
者はいなかった。腫瘍マーカーであるサイログ
頭 癌 亜 型 で は な い、 ま た 多 発
均年齢は 歳。
スクが高いが今回の症例の平
期間は最短で4~5年だが福
50
係 な く、 既 に で き て い た と 思
れ た 可 能 性 が 高 い。 被 曝 と 関
う ち に 早 期( 若 年 ) に 発 見 さ
た よ う な 甲 状 腺 癌 が、 小 さ い
今までは成人で認められてい
正常であり、ホルモン異常を疑う症状がなけれ
筆者は外科医として甲状腺の診断と治療にも
かかわってきた。甲状腺の大きさと内部構造が
ないとのことである。
も多かったが、細かい統計計算は今回はしてい
抗体(TPOAb)の異常者はその他の群より
たちのベースラインの甲状腺
癌の頻度となる。
[3]橋本病 慢性甲状腺炎による甲状腺機能低下症状。
九州大の橋本策医師が1912年にドイツの学術誌に
こ の 病 気 の こ と を 発 表 し た こ と か ら、 こ う 呼 ば れ る こ
とになった。 わ れ る。 こ れ が 福 島 の 子 ど も
以 上 の こ と か ら、 高 精 度 の ロ ブ リ ン、 橋 本 病 の[診 断 に 使 う 抗 サ イ ロ グ ロ
健 診 を 行 っ た こ と に よ っ て、 ブリン抗体(TgAb)、抗ペルオキシダーゼ
性でもない。
15
6月に広島で開かれた第
回 原 爆 後 障 害 研 究 会 で は「 福
54
2013.12.20
での癌発見率がどうなるのか注目される。
市町村別悪性もしくは悪性疑い者数=9月 30 日現在
44
≪ 111 ≫
事故直後には甲状腺機能低下をきたしていたか
であった。事故直後からのデータは空白である。
基礎に精度の高い癌登録制度を構築してきてい
福島県など原発立地県では癌登録制度のない
ところが多い。広島県では原爆被爆者の調査を
らであり、1992年の調査ではほぼ正常範囲
液検査を実施することはしていない。細胞診で
もしれないが、再生機能が働いて正常化したの
る。
㍉の結節に対する精密検査として血
甲状腺癌と判明すれば手術の前に血液検査を実
ではないかと推測する専門医もいる。
ば、5~
施している。
チェルノブイリの子どもたちに甲状腺にかか
わる血液検査が実施されたのは癌が多発してか
尿中ヨウ素量はヨウ素の摂取量を反映してい 年度の広島県の甲状腺癌罹患数は女性が約
るが、悪性とその他で差はなかった。 400人、男性が約100人だった。乳癌(男
ちに比べてヨウ素131の甲状腺へ
であったチェルノブイリの子どもた
量 が 多 い の で、 慢 性 的 に ヨ ウ 素 不 足
日本人は海藻などからヨウ素の摂取
代では前半が3・3人、後半が6・9人であり、
人口 万人当たりの年齢別癌罹患率では甲状
腺癌は 代前半で1・5人、後半で0・7人。
にはない。
性が1%)を除けば男女比が4倍の癌は、ほか
代では最も多い癌である(グラフ参照)
。
10 10
を 行 い、 画 像 を 提 供 す る な ど 個 々 の
2014年度から本格検査が始ま
る が、 今 後 は 検 査 の 場 で 所 見 の 説 明
を埋めるのが第一の目的のようだ。
をおこなってチェルノブイリの空白
状腺にかかわる精度の高い疫学調査
り も、 被 曝 の 影 響 が 出 る 前 に 小 児 甲
今行われている予備調査は個々の
子どもたちの不安を解消することよ
チェルノブイリとの比較は今後発
表されるであろう。
である。
数の比は甲状腺癌は
広島県癌登録によると、乳癌は 代での死亡
もあるが、甲状腺癌は 代から発症するものの、
要がある。
明されているが、経緯を慎重に見守っていく必
音波検査で根こそぎ見つかったに過ぎないと説
福島での 万人当たりの小児甲状腺癌発見率
は、原発近くが 人、中央部が 人となる。今
望まれる。
甲状腺癌の術後には甲状腺ホルモン低下状態
となる。広島共立病院で 年5月から 年8月
20
受診者の不安に応えるための改善が
きた。
の取り込みは少ないだろうとされて
08
20
31
32
13
人で
対1で最も死ににくい癌
歳以上である。発症登録数と死亡登録
30
後 年以上かけて見つかるはずの小さな癌が超
10
までに甲状腺癌で手術を受けられた方は
44
11
死亡は
10
15
50
10
3 甲 状 腺 癌 は 代 で は 最 多 だ が、 あった。うち 人は術後に甲状腺ホルモン剤の
最もおとなしい(広島県癌登録から) 内服が必要となり、 人( %)は今も継続さ
20
37
30
68
広島ジャーナリスト
10
≪ 112 ≫
ないにもかかわらず、未成年の小さな甲状腺癌
で見つかって手術をしても手遅れになることは
ばならない患者さんは多い。成人してから触診
れている。一生ホルモン剤の服用を続けなけれ
もある。甲状腺癌の9割を占める乳頭癌は特徴
は誰しも嫌であり、痛みを伴い、出血すること
細胞診という検査を行う。首に針を刺されるの
し、針穴に入った細胞を顕微鏡で観察する穿刺
昨年4月から広島市災害支援ボランティア本
部など6カ所で 回の検査を行い、延べ379
ている。
に記録しておき、後日リポートとともに郵送し
相談にもこたえている。画像はハードディスク
地は福島が
人が受診した。おとな
%▽
%、居住
的な超音波像をしており、細胞診とよく一致す
るので癌の可能性が高い場合にのみ実施してい
%▽子ども
を超音波検査で見つけだして手術をして生涯に
わたるホルモン剤の内服治療を開始することは
%▽関東在住が
%
%―で、東日本からの移住者が
ない。福島の子どもたちは一生、原発にいじめ
はずである。原発が招いた異常事態というほか
り国と東電が責任を持って子どもたちへ最善の
原発推進の国策によって起きた原発事故が招
いた小児甲状腺癌の心配には福島県が窓口とな
者が多かったためと考えられる。
福島で悪性の割合が低かったのは、見つかっ
た結節が悪性ではないとの証明を強く望む受験
らは原発が何らかの影響を及ぼしていた可能性
えないが、2人とも福島で暮らしていたことか
状腺癌が2人見つかったのは異常に多いとは言
は広島共立病院で受診してもらい、相談に乗り、
避難者のグループに対する甲状腺超音波検査
は今後も年4回継続する予定である。希望者に
成人が初めて甲状腺超音波検査を受けた場
合、約1%に癌がみつかるとの報告があり、甲
であった。
られるのである。
検査を継続し、治療が必要となった場合には公
広島共立病院では年間3千人余りの乳癌検診
を行っている。マンモグラフィーと呼ばれるレ
ントゲン検査が基本だが、診察の際、全員に乳
必要な検査を行うなどの活動も合わせて行って
出張乳癌検診の経験をもとに、避難者の要望
に応えて出張甲状腺超音波検査を行っている。 いる。今後も原発被災者に寄り添う活動を継続
腺と甲状腺の超音波検査を行っている。マンモ
グラフィーでは異常がなくても超音波で見つか
使用している機械は福島と同じGE社製であ
( あ お き・ か つ あ き 広 島 医 療 生 協 副 理 事 長、
医師)
していきたい。
る乳癌が約3割あり、甲状腺癌も乳癌とほぼ同
所見があればその場でしっかり説明し、健康
る。
5 原発被災者への甲状腺超音波検査体験
4、甲状腺結節精密検査 福島と広島共立病院
術を受けた。2人とも福島から広島への移住者
った。成人女性2人は甲状腺癌と診断されて手
子どもたちに異常はなかったが、成人女性4
人、成人男性1人に精密検査が必要な所見があ
多い(小数点以下四捨五入)。
▽広島在住が
東日本から広島に移住が
%▽福島から広島に移住が
常識では考えられない。
る。
%が悪性だった。広島共立病院では
福島では1千人に1人が甲状腺穿刺細胞診検査
福島市の高校の先生から「うちの学校でも、 福島小児甲状腺調査と広島共立病院乳癌検診
この夏休みに高3の女子が甲状腺の手術を受け での甲状腺癌検査結果を比較した。
ることになっています」と聞いた。原発事故さ
えなければ、高校時代最後の夏休みを楽しみ、 を受けて
45
の比較
%が悪性だった。
15
10
55
11
は否定できないであろう。
て
55
11
11
費で賄う仕組みを確立するべきである。
り、癌と診断されて、手術を受けることになる
2人もできたあとで甲状腺にしこりがみつか
大学に進学し、恋愛して、結婚し、子どもの1、 1千人に4・4人が甲状腺細胞診察検査を受け
21
数が見つかるからである。悪性を疑う所見があ
れば超音波で観察しながら注射針を腫瘤に刺
2013.12.20
73
准教授が
非人道的なベトナムへの原発輸出
月
人が聞いた。講演要旨は以下の通り。
日、
広島市中区の広島国際会議場研修室で講演し明らかにした。グローバリゼー
ベトナムへの原発輸出が持つ非人道性を、京都大大学院でベトナム現代史を専攻する伊藤正子
社会主義共和国での原発稼働が現実味を帯びている。一党独裁政権で市民が情報統制下にある
福島原発事故で「脱原発」の機運が高まる国内世論を横目に、安倍晋三首相が世界で「原発
セールス」を続けている。中でも、日本、ロシア、韓国の支援を受け建設計画が進むベトナム
伊藤 正子
年広島市安佐南区生まれ。
1988 年東京大文学部東洋
(学術)取得。06 年から京
史 学 科 卒。2003 年 に 博 士
都大大学院アジア・アフリ
カ地域研究研究科准教授。
ベトナム現代史専攻。著書
に「戦争記憶の政治学―韓
国軍によるベトナム人戦時
(平凡社、2013 年)、「民族
虐殺問題と和解への道―」
という政治―ベトナム民族
分類の歴史と現在―」(三
元社、2008 年)など。
年だ。
館では大ベトナム展があり、かなりの入場者を
から日本に原発建設を手伝ってほしいと要請が
[ 98
ベトナムでは開放政策「ドイモイ」が1
6年末から始まった。 年代後半にベトナム側
だ。5月の終わりには核拡散防止条約に入って
日越外交関係樹立 周年で、さまざまな交[流
1]
行 事 が 行 わ れ て い る。 フ ァ ン・ ボ イ・ チ ャ ウ いないインドと、早期に原子力協定を結ぶこと
[
で合意した。
その中にインフラのシステム輸出として「原子
力産業の国際展開を積極的に支援するとある。
緩和や地球温暖化防止に貢献する観点から原子
国原子力産業の技術、人材を維持するという観
発導入支援に関する協力覚書を2000年に交
きちんと総括 してほしい。「戦略 」では、わが
点に加えて世界的なエネルギー需給のひっ迫の
年9月に日本で民主党政権ができると官
ベ ト ナ ム 国 会 は 一 院 制 で「 ベ ト ナ ム 祖 国 戦
て打ち出された。
輸出するということが経済成長戦略の一つとし
の確保、低利融資などもセットにして丸抱えで
り、原子炉の建設だけでなく運転や保守、燃料
民一体で取り組むことが政権の大きな目標にな
09
90
という民族運動家について日越のテレビ局が合
25
同でドラマを作り放映していた。九州国立博物
10
泉政権の時に原発輸出計画が始まった。これは
記録したという。そういう中で唯一大きな懸念
あり、日本はそれにこたえて日越原子力協力連
力、水、鉄道」が書かれている。
09
40
[1]ファン・ボイ・チャウ 1867~1940。ベ
ト ナ ム 民 族 主 義 運 動 の 指 導 者。 代 か ら 反 仏 独 立 運 動 わ し た。 日 本 側 の 輸 出 政 策 が 明 確 に な っ た の
に 参 加。 年 に 来 日、 フ ラ ン ス の 要 請 で 日 本 政 府 が
年 に 国 外 退 去 措 置。 そ の 後 渡 っ た 中 国 で 年 に 逮 捕、 [2]ドイモイ 1986年の第6回共産党大会で採択
さ れ た ス ロ ー ガ ン。「 刷 新 」 の 意 味 で 市 場 原 理 の 導 入、
ベトナムに軟禁状態のまま没す。「 The Partner~愛し
対 外 開 放 政 策 な ど が 入 れ ら れ た。 経 済 面 で 成 果 が あ っ
き 百 年 の 友 へ ~」 の タ イ ト ル で T B S と ベ ト ナ ム 国 営
テレビ(VTV)が合同でドラマ化、9月に放映した。 たとされる。 05
[2]
材料が原発輸出の問題だ。
絡委員会を設置して動き始めた。ベトナムに原
小 泉 さ ん は 最 近 脱 原 発 を 言 っ て い る が、 小
不透明なベトナム現地調査
ルギー戦略を発表した
は、小泉純一郎内閣で経済産業省が新国家エネ
い と う・ ま さ こ 1964
子力委員会ができ、日本の原子力産業協会と原
ションを問う広島ネットワークが主催し、市民約
20
今年の5月の連休の前後に安倍首相がトル
コ、アラブ首長国連邦を訪れ原子力協定を結ん
60
10
06
核の危険 知らされぬ庶民
≪ 113 ≫
広島ジャーナリスト
≪ 114 ≫
日本で民主党政権成立。官民一体で原発「丸ごと輸出」
を経済成長戦略の一環として推進
12 月
グエン・タン・ズン首相が訪露、メドベージェフ大統
領と原発建設協力覚書に調印。ニントゥアン原発第1
期工事分受注
2010 年 5月
仙石由人国家戦略担当相(当時)が訪越。帰国後、ベ
トナム側の要求に基づき放射性廃棄物の処理などを含
む包括支援策をまとめる
6月
ベトナム政府が 2030 年までに原子力発電所を8カ所
計 14 基(計 1500 万㌔㍗)建設・稼働するとした原発
開発方針
7月 28 日 原発予定地のベトナム住民 12 人が福島原発などを視
10 月 31 日 菅直人首相訪越
2011 年 1月
日越ベトナム原子力協定署名
9月 28 日 日本原電とベトナム電力公社で原発の実施可能性調査
契約締結
10 月 31 日 ベトナムのグエン・タン・ズン首相来日、野田首相と
会談し、共同声明で原発建設は従来通り推進と確認
12 月9日
参院本会議で原子力協定を一括可決(ベトナム、ヨル
ダン、韓国、ロシア)
2012 年 3月 28 日 李明博・韓国大統領とズン首相の会談で韓国が第5、
6号機を受注
5月 15 日 人気ブロガーのグエン ・ スアン ・ ジエン氏らが、原発
を輸出しないよう日本政府に請願する署名集めをネッ
トで開始
2013 年 1月 16 日 安倍首相、最初の外国訪問で訪越、原発輸出継続を確
認
2013.12.20
09
い。その国会で原発計画が承認された。この時
野田佳彦政権が成立。再び原発輸出に力
る。
9月2日
受注するのは日本かフランスと言われていた
が、伏兵がいた。グエン・タン・ズン首相が
3月 11 日 東日本大震災、福島原発事故。菅首相は脱原発に転換
[3]
~8月3日 察
[3]グエン・タン・ズン 1949~。第6代ベトナ
ム 社 会 主 義 共 和 国 首 相。 ベ ト ナ ム 戦 争 中 は 南 ベ ト ナ ム
解放民族戦線で活動。2006年から首相。
11 月 25 日 ベトナム国会でニントゥアン原発建設計画を承認
ているので、制度上からも独立組織とは言い難
1月1日発効)
2009 年 9月
政府案を否決したり、昨年末には汚職まみれと
ベトナム第 12 期第3回国会で原子力法成立(2009 年
線」が議員候補を選任する。労働組合、退役軍
日越政府が「原子力協力文書」に署名
6月
の承認が原発計画撤回の大きなネックになって
ム政府が決定
5月
人会、農民会、青年会などが集まって作る政治
2020 年時点で原発を 100 万㌔㍗×4基にするとベトナ
いるとベトナムの反原発知識人たちは言ってい
の推進」をうたう
2008 年 4月
言 わ れ て い る グ エ ン・ タ ン・ ズ ン 首 相 に[経 済
政策失敗で引責辞任を迫る議員が出たりしてい
第1次安倍内閣とベトナム政府が共同声明で「原子力
る。しかし、三権分立ではなく三権分業と言っ
小泉政権下で経済産業省が新国家エネルギー戦略発表
社会統合体だ。共産党員でなくても制度上は立
2006 年 5月
10 月
候補できるが、家族に地主や資本家がいたりす
導入支援に関する協力覚書」調印
ると残れず、結局は共産党員しかほぼ認められ
ベトナム原子力委員会と日本原子力産業協会が「原発
ない。国会は独自性がないと言われてきたが最
2000 年
近、日本が建設する予定だった新幹線は不要と
ベトナムへの原発輸出問題経緯
≪ 115 ≫
年
月に訪露、覚書に調印して1、2号機の原
めた。次の月から調査が始まり、1年半かけて
年3月までに国会に結果を報告となっていた
[4]
付)。[日本の税金を
分からない。
億円も使って何をしたか
出ており、調べたのは気象、海象、地形、地質
が、公表されなかった。資金 億円は日本から
発建設をロシアが受注した。潜水艦をベトナム
に輸出することと抱き合わせでやったため、急
など、適地性の評価、原発の基本設計、炉型評価、 600世帯が住む。省は日本で言う県で県が郡、
ベトナムで原発建設が予定されるニントゥア
ン省ニンハイ県ヴィンハイ社タイアン村には約
きょ決まったらしい。日本はその前年にアラブ
年に発電を
社が行政村にあたる。自然村がいくつか集まっ
年と
で、 ベ ト ナ ム の 3、4 号 機 受 注 に 力 を 入 れ た。 経済・財務分析によるプロジェクトの成立性評
万人いる(
万人弱で、う
年統計)
。チャム
番目。ベトナムの総人口は8584万人で、
している少数民族が
チャム族は約
は
あり、その中で人口規模
ち約 %がチャム族。ベトナムには国家が認定
く住む。ニントゥアン省は人口
予定地周辺はベトナムの少数民族チャム族が多
タ イ ア ン 村 自 体 は 多 数 派 キ ン 族 の 村 だ が、
再定住区わずか2㌔先
約1兆円。
始めると言われている。事業規模は2基合計で
2基建設を受注している。
て行政村を形成する。日本は100万㌔ワット
日に当時の菅直人首相が訪越してグ
価である。追加資金5億円を随意契約で日本原
月
月 日
10
22
年
ことを東京新聞がスクープした( 年
12
エン・タン・ズン首相と会談、その場で原発3、 電に出しているが、これが復興資金からだった
年1月に日越
力発電が、ベトナム電力公社と契約、導入可能
29
タイアン村の漁村風景
4 号 機 を 受 注 し た。 同 時 に レ ア ア ー ス 開 発 の
パートナーも日本に決まった。
菅首相は脱原発に転じたが、野田政権になっ
てまた推進に変わった。 年9月には日本原子
震災が起きた。
した。日本はこれを承認しないうちに東日本大
原子力協定に署名し、ベトナム側は2月に承認
11
21
09
10
性調査(
【注】外務省ホームページから取得した
地図にタイアン村の位置を追加した
60
が、 世紀にベトナム王朝に滅ぼされた。宗教
的には土着化したイスラム教とバラモン教を信
仰している。
ニントゥアン省の北側にフランス植民地時代
[4]一面トップ。見出しは「震災復興予算/原発輸出
調査にも流用/インフラ関連世界で 億円」。3面に関
連 記 事「 被 災 地 そ っ ち の け 復 興 予 算 / 国 会 ノ ー チ ェ ッ
ク」 85
11
広島ジャーナリスト
12
首長国連邦の原発建設も韓国にとられた。それ
20
13
25
53
族はチャンパ王国をベトナム中部に持っていた
16
31
=FS)実施を決
feasibility study
ニントゥアン省
タイアン村
12
14
19
10
≪ 116 ≫
ネーをぶら下げられて乗ってしまったと想像が
比 べ る と 明 ら か に 貧 し い。 省 の 幹 部 が 原 発 マ
アン省は観光開発がうまくいかず、南北の省に
れなりに裕福だ。その二つに挟まれたニントゥ
トゥアン省もドイモイが始まって開発され、そ
裕 福 な と こ ろ だ。 ニ ン ト ゥ ア ン 省 の 南 側 ビ ン
からの有名な観光地ニャチャンがあり、非常に
ビデオにそのままベトナム語の訳を付けて1時
るという話だった。その後、日本の原発のPR
速道路、水路を造ると表明し、最後に原発も造
レビで流れた。ホーチミン市から高速鉄道、高
済投資計画を説明しているというニュースがテ
いう。ラオスは海がなく、蛋白源をメコン川の
と、一番影響を受けるのがラオスの人たちとも
あるといわれる。メコン川に放射能が降り注ぐ
があればカンボジア、タイ、ラオスにも影響が
年 月 日にホーチミン市に出張した際、 には断層があると地質学者が警告している。こ
ニントゥアン省でグエン・タン・ズン首相が経 の辺は ~3月だと北東の季節風が吹く。事故
えたのではないか。
魚に頼る人が多い。
様を祭っている村がある。ロシアの建設予定地
つく。
間近く流していた。
ベトナムの計画では 年までに 基を造る。
全 部 で き て も、 電 力 の 8 % に 過 ぎ な い。 日 本
が狭いということもあり、住居を立ち退かせな
があり、沖合にはサンゴ礁がある。現金収入は
園という、絶滅危惧種のアオウミガメの産卵地
このように、偏った安全神話が日本から持ち
込まれている。タイアン村はヌイチュア国家公
る。ドイツはニントゥアン省南のビントゥアン
に恵まれ風も強く水力、風力発電は可能性があ
な電力を賄うことにはならない。ベトナムは水
は、原発事故前で
%弱なので、そんなに大き
いと敷地がとれない。タイアン村では、人々が
少ないが暮らしは安定しており漁業、エビの養
省で、政府開発援助(ODA)で風車を建設し
日本だと、少なくとも人がいないところに原
発を造ったと思うが、タイアン村の場合、海岸
あまり動きたくないということで2㌔弱先に再
殖、製塩のほか農業も、ブドウ、ニンニク、ネ
報で安全性を信じてしまっている人
日本の原発ムラなどから仕入れた情
ら と あ き ら め る 人 た ち。 も う 一 方 は
ンを持ちネットカフェもあるのでインターネッ
たい情報は出てこない。都市の人たちはパソコ
は新聞もテレビも検閲制度があり、本当に知り
一番大きな問題は、一党独裁による情報統制
で情報が地元に伝わらないことだ。ベトナムで
襲来から100年はたっていると思
うちの一人グエン・スアン・ジエンさんのブロ
日に、日本政府に
グを見ていたら、昨年5月
を 超 す 津 波 が 来 た と 言 わ れ て い る。 いうことで人気のブロガーが何人かいる。その
トで情報を得ている。ブログをやる人がここ3
たちだ。
年ぐらいで激増し、本当の情報が載っていると
一党独裁による情報統制
25
フィリピン沖で地震が起きると津
波 が こ こ を 直 撃 す る。 過 去 に も 8 ㍍
地域住民は大きく二つのタイプに
分 け ら れ る。 一 つ は 国 家 の 決 定 だ か
多い。
ないが、国家事業なのでしかたないという声が
定住区が造られている。事故があれば瞬時で終
事故が起きても影響は大きくないと省幹部が考
わりという距離だが、ベトナムでは安全神話し
10
ている。
10
か伝わっていない。
人口密度が低い地域のため、 ギなどを生産する。本音ではみんな移転したく
14
12
う が、 タ イ ア ン 村 周 辺 で は 津 波 の 神
15
2013.12.20
30
11
≪ 117 ≫
原発輸出をしないでくれと訴える署名を集めよ
田首相と玄葉光一郎外相に送った。
ベトナムは2人っ子政策をとっており、人口も
原発の建設支援は無責任、非人道的、非道徳と
間で626人もいた。宣言文では、日本による
報メディア局の取り調べを受けたが、あまりに
そ の 後、 事 実 上 の 公 安 局 で あ る ハ ノ イ 市 情
れだけの人が署名したのは大きな意味がある。
弾圧の可能性もあるベトナム社会で、実名でこ
あるいは盗電も多いので、それを整理すれば節
ら火が出るのを何度も見た。送電線の接続不良、
いわれる。ハノイやホーチミン市で私も電線か
ベトナムでは送電線がちゃんと張られておら
ず、3分の1近くが送電ロスで消えているとも
は疑問がある。
日 本 政 府 は 返 答 し な い ま ま 今 ま で 来 た が、 大きく増える見込みがない。電力不足というの
言っている。当時、日本ではすべての原発が止
も 有 名 人 な の で 結 局 7 5 0 万 ド ン、 日 本 円 で
とだった。ブロガーの中にも、こうした罪に問
を倒そうとする活動に対する罪を適用されるこ
力不足」
を刷り込まれている部分がかなりある。
節 電 意 識 を 持 て ば 不 足 す る と は 思 え な い。
「電
20
輸出するのは筋が通らないと言っていた。この
とする意見が多数と聞くが、その一方で他国に
出すべきではない、日本では原発を廃止すべき
汚職や腐敗の蔓延などからして日本は原発を輸
国の李明博大統領(当時)がグエン・タン・ズ
がロシアで研修を受けている。昨年3月には韓
ロシアの原発について少し触れると、日本よ
り計画は進んでいて何百人もの労働者、技術者
府高官が思いこんでいるところがある。
ン首相と会談し、5、6号機を受 注した。ニン
内容は4月9日付毎日新聞「特集ワイド」に詳
しく書いてある。
ちらつくアメリカの影
ベトナムが原発にこだわる理由として電力不 トゥアン省の北のビンディン省に造る。ただ、
足があると日本側の推進派の人はよく言うが、 日本の方が進捗状況は進んでいる。
この電力予測を作っているのは日本のコンサル
タント会社だ。この2年ぐらいベトナム経済は
低迷しており、東南アジアの周辺国と比べても
経済成長率は低い。5%ぐらいだ。しかし、電
日本は、悲惨な原発事故を起こして自国の問
力予測は8~9%の成長率で計算されている。 題も解決できないまま外国に輸出するのは人道
広島ジャーナリスト
うというのがあった。実名で署名する人が3日
まっていたので、日本で止めておいて他国で造
3万円ぐらいの罰金刑になった。恐れていたの
ベトナム戦争に貢献した兵士だと名乗る人
電できるのではないか。ホテルの冷房も4度と
るのは非道徳、非人道的だと非難していた。
は刑法 条のベトナム社会主義共和国に反対す
国家が国の発展のためにやろうとしている政策
15
今年3月、ハノイでジエンさんから話を聞い 核兵器も持っている。先進国になるのなら、中
た。ベトナ ムの技術レベル、政府 の行政能力、 国との対抗上持たなければならない技術だと政
と死刑になる。
に反対するのは許せない、というのが彼らの主
タイアン村の移住予定地に立つ未来予想図
集まった署名はハノイの日本大使館と当時の野
張で、
ブログ上からは削除させられた。しかし、 われる人がいる。懲役 年とか 年、悪くする
79
やっかいなのは、底辺にあるナショナリズム
だ。北から侵略を繰り返してきた中国が原発も
か5度とかに設定して、冷蔵庫のように冷やす。
たちが3、4人、ジエンさんが勤める国立ハン
ノム研究所に押し入って文書の削除を迫った。 る宣伝をした罪、あるいは刑法 条の人民政権
88
≪ 118 ≫
原発建設にODAは使えない。原発建設に融資
上問題ではないかと思う。国内での新設は難し
必ずアメリカの影がちらつくが、この原発輸出
ばいいのかという批判につながる。
大義がない。 排除されている。日本が抱える問題の背後には
いので海外に活路を求めるというのは、儲かれ
の問題もそうだ。
いる。再生可能エネルギーの可能性はまったく
保障のために絶対に必要な要素と位置付けても
が 独 立 宣 言 を[し た 時 の 文 書 に あ る の で 国 民 は
知っているが、政府要人が他国の高官と会う時
く の 人 が 亡 く な っ た こ と も、 ホ ー・ チ・ ミ ン
の国に適用している。日本軍占領下の飢饉で多
代初めに対米関係改善のため打ち出し、すべて
も一切持ち出さない。その辺が中韓とは違って
[5]
してはいけないと、日本も加盟している経済協
いる。今は過去を問わずに日本の援助に素直に
れる。借金の返済も確実である。そのため、日
力開発機構(OECD)の規則で決められてい
本のベトナムに対する信頼は厚い。
感 謝 し て く れ る。 O D A で 学 校 を 建 て れ ば プ
日本は隣国の中国、韓国とは仲良くできてい
ないが、原発以外はベトナムとは何の懸案もな
るからだ。それ以外の送電線や資材を運ぶ港、 もたれ合いの中の「良好」な関係
い。しかし、歴史をさかのぼると、 年冬から
道路の整備などはODAで賄う。
日米同盟に関する第3次アーミテージ報告が
昨年8月に出された。福島大の坂本恵教授の発
機にある。
家で満足するのか決断を迫られており重大な転
したといわれる。ベトナム戦争中の死者に匹敵
飢饉が発生し、ベトナムでは200万人が餓死
本軍が占領していた時期に、ベトナム北部で大
し合わないもたれ合いの関係、カッコ付きの「良
しない。カネだけを確実に出してくれる。非難
りもするが、人権侵害について日本は何も非難
先ほどのジェンさんの例にもあるが、ベトナ
ムでは政府方針と違うことを言うと逮捕された
レートを付けて「日本の援助です」と言ってく
表からの引用だが、
・原発の再開は日本にとって正しく責任ある一
する数だ。死者数には諸説あるが、かなり多く
年、当時仏印と呼ばれたインドシナ半島を日
歩である。
好」な関係がある。そういう中で原発が輸出さ
エネルギー安全保障が前面に押し出されてい
て、それが最大の特徴だ。
から取り組むべきだ。
・そのためには韓国との歴史問題に日本は正面
状況になった。日本軍が現地調達で米を強制的
鉄道が連合軍の爆撃を受け、米を輸送できない
多くの人が亡くなることはなかった。この年は
コンデルタで作った米を北へ輸送していたため
しば食糧が不足する年があった。通常は南のメ
ラデシュより人口密度が高い。そのため、しば
が、狭くて人口が多く、スポット的にはバング
の一般の人たちとつながらないといけない。そ
交流があるが、そうではないルートでベトナム
的に両国共産党の関係、あるいは関係団体との
代からの発言が目立っている。日越交流は歴史
引退した国会議員や知識人、
ブロガーの人を例にあげたが、ここ2年ぐらい、
れようとしていることに危機感を持つ。先ほど
中でも原子力エネルギーの利用が最初にあげ
られた。日本政府が大飯原発を再稼働させたこ
ベトナム北部には紅河デルタの平野がある
の人が亡くなったのは確かだ。
とにも触れ、正しい責任ある一歩と評価してい
に徴発したことも食糧不足に拍車をかけた。日
歳代より上の世
年までに二酸化炭素の排出量を
る。 日 本 は
本では、この事実はほとんど知られていない。
が重要である。
・地域の安定と繁栄には日米韓の強い同盟関係
・日本は一流国家であり続けたいのか、二流国
44
しかし、ベトナムは過去にふたをして未来に
向かおうというスローガンを掲げている。 年
60
[ 5] ベ ト ナ ム 独 立 宣 言 日 本 が 降 伏 文 書 に 調 印 し た
1 9 4 5 年 9 月 2 日、 ベ ト ナ ム 民 主 共 和 国 初 代 国 家 主
席ホー・チ・ミンが出した。
「フランスと日本の二重の
く び き に 服 従 し、 同 胞 2 0 0 万 人 が 飢 餓 で 死 ん だ 」 と
ある。 2013.12.20
45
%削減すると国際公約してい
1990年比で
るが、それを果たすためには原発再稼働が唯一
の道と言っている。原子力は日本の包括的安全
90
25
20
ていないこともあり、関心が持たれてない。日
中国との領土問題ではベトナム国民全体が反
中国でまとまるが、原発に関しては情報が流れ
ことができたらいい。
ういうルートで原発予定地の住民に情報を送る
し た こ と が あ る。 働 き か け て い ま す と 返 事 が
働きかけるべきだと共産党にネットで意見を出
A 日本の共産党はベトナムに独自のルートを
持っているわけだから、原発輸出をやめるよう
と思うが。
共産党の人こそ原発を造らないよう言うべきだ
方をしないと入れないので、外国からの反原発
い。政府が切っているネットには特殊なつなぎ
係者だ。ネットも、ベトナムでは自由にできな
A 大学も取り締まりが厳しく、反政府的な動
きはしにくい。やっているのは一部の引退した
知識人と勇気あるブロガーと一部のマスコミ関
本が輸出しようとしているヨルダンやリトアニ
情報も入手しにくい。
らしいが、内政干渉になるという理由で留保が Q 枯れ葉剤被害と放射能汚染は共通するもの
付いているようで、非常に弱い表現のようだ。 があると思うが、枯れ葉剤汚染の研究に携わる
ア、
トルコでは非常に強い反原発運動があるが、 あった。原発はやらない方がいいと言っている
ベトナムでは組織できていない。社会制度的に
も無理なのだが。
メリカが南ベトナム政府を支えていた時代に
A 枯れ葉剤関係者からは出ていない。声をあ
げているのは原子力関係者で、ダラットに、ア
医学者、知識人から放射能汚染を危惧する声は
する人が激増していて留学生も多い。韓国から Q ベトナムでの原発建設に関する法的整備は
の留学生を追い抜くのでは、というぐらいだ。 どうなっているか。また、福島で事故を起こし
作った実験炉があり、そこの元研究所長のファ
原発事故が起きれば他国にも迷惑がかかるの
て原因がはっきりしないうちに原発を輸出する
出ていないか。
ことは問題と思うが、その辺の考えは。
う言い方をしている。越僑(海外在住ベトナム
で、私自身は原発は内政だとは思わないが。
そうした人たちと交流したりできれば、福島原
A 法整備は後になっているが、法律はどんど
んできている。工事が始まるまでには表面的に
人)がかなり反対している。
日本でできることとして、まず原発輸出に反
対していかないといけない。ベトナムから来日
発事故の現状を個人的に伝えていくことができ
は整うはずだ。ベトナムに情報統制がなく、日
が悪化した時に一時核武装論が出たのは確かな
A 年代後半に党の中で核武装論は出ていた
ようだ。その後立ち消えになったが、中越関係
ム・ズイ・ヒエンという人が「時期尚早」とい
るのではないか。
本が原発を売ろうとしているヨルダンやトルコ
Q ベトナムの軍部あたりで核武装すべきだと
いう論はないか。
ら外国人が文句を言う筋合いはないが、実際は
と同レベルに情報アクセスができる状況で、そ
地 元 の 人 は 安 全 神 話 し か 知 ら な い。 福 島 の 原
ようだ。今は聞いたことがない。
流れるのは
安全神話だけ
発 事 故 も、 1 カ 月 ぐ ら い た つ と ベ ト ナ ム で は
のうえでベトナム人の総意で原発やりたいのな
Q ベトナムの人たちに放射能の危険性はどの
程度知られているか。
侵されている国に対する原発輸出は、より問題
《会場との質疑》
A ベトナム庶民は、放射能の危険性について
ほとんど知らない。知識人でも原発に関心を持
が大きいと思う。
いる限りでは安全神話しか流れていない。
Q ベトナムで、例えば大学で原発反対運動は
Q 日越の共産党の関係は良好と聞いている。 あるのか。
ニュースが流れなくなった。国民の知る権利が
つ人は限られている。普通にテレビなどを見て
≪ 119 ≫
70
広島ジャーナリスト
県 生 ま れ。
日本社会事
業 大 卒。 東
京 で 医 療
ケースワー
カーとして
勤 務。 広 島
被爆者のサークル活動や女性団
へ 転 居 後、
体の活動を行う。81 年から原
爆被害者相談員の会に参加し、
相談活動、研究会、被爆者の自
分 史 づ く り に か か わ る。2003
年から長崎県平戸市在住。
れたABCC日本側協議会、同年にワシントン
た行動について、被爆者を侮辱し、治療・健康
費で国際収支も悪化し、ドル不安を起こしたた
かりで、1965年からは急増したベトナム戦
1961年から米本国の財政赤字は増加するば
にひろがっていたABCC批判―資料の公開を
とって軽視できない問題は、地方から中央まで
早急に増額を望めなかった。さらにABCCに
一方である日本側の資金提供も当時の状況では
が A B C C の 運 営 に 影 を 落 と し 始 め て い た。 CCとしては苦境に立たされたが、共同研究の
えであった。本国からの資金援助にたよるAB
たく噛み合わないもので、ABCCは日米両国
水協の抗議や要求の内容と所長との会見はまっ
ために調査団を受け入れるよう求めていた。原
標本等について科学者への公開と、実態視察の
要 求 書 を 手 渡 し た。 要 求 書 は 資 料、 調 査 結 果、
がダーリング所長に面会を求め、日本原水協の
ていた。1966年8月の原水爆禁止世界大会
95
文を生かし、なお疑問のある個所は「ママ」とルビを振っ
文の通りとした。その他の用法についても、できるだけ原
た。かぎかっこの用法は、原文のルールに従った。
月」は「●カ月」とした。「被爆」
「被曝」の使い分けは原
と「●人」の表記のばらつきは「●日付」「●人」
で統一、「●ヵ
のスタイルを変更した。
「●日付」と「●日付け」、「●名」
[注]横組みの原文を縦組みにしたため、一部の数字表記
83
撤退すること 」120)
が盛り込まれた。さらに翌
年の1967年7月には日本原水協のABCC
で採択された決議で、 A
「 BCCが調査で得た
いっさいの標本、資料研究結果を日本に返還し、
【おことわり】今号では、広島大平和科学研究所が発
の相良カヨ
行したIPSHU研究報告シリーズ No.23
論文のうち、 ~ ㌻までと注を転載しました。
め、米政府当局は財政引き締めを強行せざるを
ダーリング所長就任から
68
論文再見
10
67
1996年
年以降は増員した年はない。 118)
年目の 年に開か
研究統合計画のために人員補充は必要とされ 動は分裂していたが、ベトナム反戦運動の盛り
たが、
1960年を境に次第に職員数は減少し、 上がりのなかで、ABCCへの批判は強められ
求める科学者たちの動きである。原水爆禁止運
するように と
」 い う 勧 告 が 採 択 さ れ た。 119) 変きびしいものであった。9月には広島県原水
研究継続については米原子力委員会も同様の考 協のデモがABCCにむけて行われ、代表2人
管理に大切な資料を奪取し、被爆者救援に支障
を与えたことは、人道上の犯罪行為だとする大
原水協の主張は、ABCCのこれまでとってき
さ が ら・ か よ 1938 年 栃 木
で開かれたABCC諮問委員会では、 研
「 究計
画は信頼出来る結果が得られるまで研究を継続
第三章 放影研発足まで
第 三 章 新 た な「 日 米 共 同 研 究 体 制 」 ―
放影研発足まで
第1節 ABCC返還要求の高まりと日米協議
相良 カヨ
えなかった。
ABCCの体制立て直しが着実に進んでい
た 一 方 で、 米 国 の 国 家 財 政 の 悪 化 と い う 問 題
㊦
への抗議文がABCC所長に手渡された。日本
2013.12.20
被爆者とABCC
≪ 120 ≫
≪ 121 ≫
学者に提供している」とし、撤退要求には「日
「ABCCのすべての資料は専門家、医者、科
ない。
希望するか否かに拘らず押しつける気持ちは
米国はABCCの調査が本当に日本の利
4 益につながると考えるが、この調査を日本が
推進協議会が、市長を通じて外務省に働きかけ
動きがあった。市長の諮問機関である平和文化
1969年から1970年にかけて、地元広
島においてもABCC問題への対応についての
ダーリング所長は休暇帰国中に米ABCC諮問
えを述べている。しかし政府は何ら積極的態度
は示さなかった。現状打開の提案に応えない日
本 側 へ の ダ ー リ ン グ 所 長 の い ら だ ち は つ の り、
として「日本側としても今後のあり方について、
ついて積極的話し合いに応ずるわけにはいかな
の公式な申し入れがない以上、ABCC問題に
は交渉に応じなかった。要するに米国政府から
である。
「ABCC年報―1967―1968」 の ま ま で …」 と 答 弁 し た。 122
)6月には米国
原子力委員会の交渉団が来日したが、日本政府
通じてアメリカ政府に働きかける」方針を決め、
用研究の機関として、再出発させるよう政府を
た。全施設を日本に無償返還し、原子力平和利
き受けるとなると相当額の予算を必要とするこ
足らずしか支出しておらず、これを日本側が引
いして、日本側は予研支所経費として5千万円
解決を考えていたようである。
から、それを先行させ、その後にABCC問題
返還をめぐる外交交渉が大詰めにきていたこと
ン・ショックである。1971年8月
日、ニ
クソン大統領は、ドル、金の交換停止を含むド
広島ジャーナリスト
の機関であることを強調し、資料等についても
本政府が正規の手続きをとって指示するならA
これにたいする日本政府の対応はどうだった
か。厚生省も外務省もABCC所長の見解を米
時期に至ったと思う。
BCCはすぐに退去する」と切り返している。
5 日米両国 はしかるべき政府機 関を作り、 る方針を決め、山田節男市長も市民の立場から
ABCCにおける日米の役割の公式な再検討 意見をまとめて政府に注文をつける、という考
121)
一方ABCCに組織されていた労働組合も、
賃金格差の改善などを要求してストや平和公園
でのデモ、座り込みなどをくり返していた。原
委員会と協議し、この提案への支持をとりつけ
水協などのABCC撤去要求はABCC労働者
にとっては雇用問題につながるため、労働組合
国の公式提起とは見ず、静観の構えであった。 「責任の公平分担」 124)
を強調していた。広島
のマスコミはABCC問題の記事を載せ、結論
の危機意識は強まったようである。
もっと積極的で長期的な展望をはっきり打ち出
ABCCの資料は日米両国の共有物であ
1 る。米国が引き揚げる場合は資料の原本を日
山田市長も同協議会とともに運動するこ
126)
とに同意していた。当時の米国政府はABCC
こうしたさまざまな問題の打開策としてダー て帰国した。1969年2月の衆議院予算委員
リ ン グ 所 長 が 提 案 し た の は、
「 日 本 側 の 善 処 」 会での質問にたいし、厚生省村中局長は「現状
本に残し、米国が必要なものは複写する。合
いというのが日本政府の考えであったが、「当
問題を取り上げなかったわけではないが、沖縄
す べ き で は な い か 」 125)
と 述 べ た。 広 島 市 原
爆 被 害 者 協 議 会 も「 A B C C の 役 割 は 終 わ っ
意事項を協識したい。同様に、ABCCの建
時の予算でアメリカ側の 億円以上の支出にた
に掲載された提案の要点は、
物も引き揚げの際譲渡を希望するかどうかを
厚生省に打診する。
ABCCの研究の優先性、管理機構、職
2 員の確保と配置、運営資金について、米国政
1971年になって秋から日米外交交渉に入
るめどがついた。ところが、問題は意外なとこ
第2節 地元広島のABCC返還問題をめぐる
ろから進展することになった。いわゆるニクソ
とから、当たらず触らずの態度をとっていたと
財政的支援に対する責任分担の再配分をはか
動き
)
ABCCが日本の法律のもとで「法人」 いうのが実情のようであった。」 123
3 として再編成され、専門的指導、職員派遣や
るべきではないか。
15
府が日本政府と協識するよう望む。
10
≪ 122 ≫
行し、円切り上げとなった。これがABCCに
外援助の削減を実施した。ドルは変動相場に移
ル防衛策を打ち出し、政府関係支出の削減、対
合は続いて9月下旬に、ABCC再編の基本構
めてABCCの法的地位の問題を提起した。組
持つこと、という内容で、労働組合としてはじ
めていた。労働条件の改善、雇用の確保といっ
労働組合としては既にABCCの危機がいわ
れ出した2年前からこうした構想を検討しはじ
第三章 新たな「日米共同研究体制」―放影研発足まで
評価し、今後のあり方をどう考えていたかとい
た組合要求から踏み込んで、ABCCの再編構
深刻な影響をもたらすことは明らかであった。 想案を発表した。 )その骨子は、
127
想を出したことは注目に値するが、広島ではこ
従業員の賃金問題にはねかえることは必須であ
科学技術庁を主管とする法人にする。
1 るだけに、ABCC労働組合は8月末に緊急の
米学士院と共同し、原子力基本法の平和、 れが火付け役となってABCCのあり方の論議
2 がひろがった。ABCCの調査研究活動をどう
民主、自主、公開の4原則を尊重する。
3.米国側の原爆傷害初期調査
第3節 「合同調査団」の活動とABCCの成立
1.マンハッタン管区グループ
2.米国太平洋陸軍総司令部軍医団グループ
3.米海軍調査団
4.「合同調査団」への日本側の協力のとりつけ
5.広島における「合同調査団」の活動の実態
6.アメリカにおけるABCCの発足―手続きと経過
1.日本側からみたABCCの成立
2.「ABCC―予研」の共同研究と日本人科学者
第二章 ABCCは何を明らかにしたか
第1節 ABCC―予研プログラムの展開 占領期 (1945―1951)
1.ABCC「年表」にみる占領期の調査研究
2.占領期の被爆者調査の特徴
3.占領期のABCCの調査研究の内容について
a)遺伝学的調査
b)白血病調査
c)胎内被爆児調査
4.1950 年国勢調査とABCC
第2節 ABCC―予研プログラムの展開 独立後 (1951―1974)
1.ABCCと原爆災害研究の独立後の変化
2.新たな研究統合計画―フランシス勧告による立て直し
第3節 日本人科学者の「協力」と「批判」
第4節 二人の米国人科学者―レイノルズとリフトン
第1節 ABCC返還要求の高まりと日米協議
第2節 地元広島のABCC返還をめぐる動き
する基本的な姿勢がうかがえる。ABCCの基
い う 姿 勢 で あ る。 こ の 後 A B C C 問 題
は、社会党国会議員が国会に持ち出し、
政 府 か ら「 日 米 政 府 間 で 今 後 の 存 続、
機構について協議する」という回答を
引き出したのである。
松 坂 義 正 は、 原 対 協 副 会 長 と い う 第
三者的立場からABCC問題につい
て、 新 聞 に 投 稿 し、「 … 占 領 時 代 の 残
滓ともいうべきABCC問題を解決す
る絶好の機会が訪れている。そのため
には中央の情勢をみつめながら、早急
起をのぞむ。」 128
)と述べた。
の斡旋、指導に市長、市議会議長の奮
る こ と が 必 要 で あ る。 … A B C C 問 題
… 政 府、 国 会 な ど 関 係 各 方 面 に 進 言 す
民主的に各階層の幅広い意見を集約し
に 地 元 市 民 や 関 係 者 の 意 見 を ま と め、
おわりに―被爆者とABCC
こうした声やABCC労組からの要
2013.12.20
要望書を政府に提出した。組合の要望は、 l
(
)
ABCCの立場について日米両政府間で早急に
2.占領体制下で禁じられた日本側の研究
うことでは、労使協調で問題解決に当たろうと
1.日本側の調査
原子力平和利用にも起こりうる環境汚染
3 などの解決のためにも調査研究を行う。
第2節 原爆災害の初期調査
協議し、身分と労働条件を保障する法的措置を
第1節 広島「原爆市長」のとまどい
本路線上で、部分的な意味での改善を求めると
第一章 ABCCはなぜ必要だったか
財政は日本政府、米学士院の分担金でま
4 かなう。
被爆者とABCC
確 立 す る こ と、 2
( 円
) 切り上げで起こる賃金
切り下げと合理化を避けるため、政府は責任を
はじめに
第4節 日本におけるABCCをめぐる論議
≪ 123 ≫
望にこたえる形で、山田市長は市民の意見を聞
日に開いた。この会に
合するよう構成、運営さるべきこと。
の原則に立って調査、研究、福祉、医療が結
もとでの法人化を求める。
ABCCの日本移管の政府交渉と日本の法律の
・7・
広島市議会意見書採択。日本への
全面移管と政府の責任による運営をもとめる。
・2 広島県議会も同様の意見書採択。
・7~8 政府、国会議員などのABCC視
察と所長、労組などとの懇談。
・8・6 第 回原水爆禁止世界大会で決議。
ABCCの設備、資料を接収し、日本の自主的
管理を求める。
・8・ マスコミ各紙がABCC問題を報道。
日本移管への絶好のチャンスとして、国民合意
として真に被爆者のための研究機関をめざす日
米交渉の早期開催を、という論調。
れまでの方針への批判を具体的に日本側の対案
学、医療、行政の関係者を含めてABCCのこ
て は、 A B C C の 歴 史 を 踏 ま え、 被 爆 者 や 医
ものだという。確かにこの時点での解決策とし
CC問題の政治的解決の大きな拠り所となった
き調査研究をすることを日本政府が承認したと
交渉は始まっており、米国がABCCで引き続
理の世論が盛り上がっていた一方で、既に日米
「 口上書」は重要な意味を持ってい
上記の 新
る。地元をはじめ広範なABCC返還、日本管
●日米交渉の問題点
から 米
「 政府機関 に
」 改め、ABCC職員の外
交特権を廃止することとし、4月2日に伝達。
日
広島ジャーナリスト
く会を1972年5月
座長 広島大学学長 飯島宗一
幹事 広島原対協副会長 松坂義正
出席した顔ぶれは、県、市の原水協、広島大学、 ●ABCCのあり方を検討する会のメンバー
人である。被爆者
被爆者グループ、被団協、医師、牧師、YMCA、
原対協などを代表する人々
問題にかかわってきたこれらのメンバーからA
〃 広島県医師会長 大内五良
〃 県医師会常務理事 藤井康平
状のままでの調査研究には納得出来ない」とい
広大原医研所長 岡本直正
BCCに対する不満が相次いだ。そして、「現
う点で一致した。また日本政府の責任回避の姿
前広大原医研所長 志水 清
広島市衛生局長
竹本 毅
広島市医師会長 藤堂直樹
広大付属病院院長
百々次夫
( 究の主体性 )
研
1.被爆者に関する医学的研究の主体性は日
本側がもつこと。
として提出したものとして評価できるものであ
人 お よ び 市 民 と 密 接 な 接 触 を 保 ち、 必 要 な
に外務省で政府間交渉が開かれた。
いうことである。いわば返還要求は肩透かしを
データの公開性が保障さるべきこと。
長 崎 市 議 会 で 意 見 書 採 択。
くったようなものである。1973年4月
1 9 7 2・7・
この後のABCC問題が政府間協議で取り上
げられるまでの動きを追ってみると、
( 爆者主体の原則 )
被
現状の長所は十分取り入れ、被爆者主体
1.
10
25
広島市長、市議会議長、各方面に送られ、AB
・ ・ ABCCダーリング所長任期切れで
広島原対協常務理事 原田東岷
退任。後任は Leroy Alen
広島県衛生部長 湯沢信治
・2・ 日米交渉の第1段として 新
「 口上書」
松坂義正によれば、この意見書は各項目の具
体的説明と参考事項が別紙でつけられており、 交換。 年の口上書の 駐
「 日大使館付属機関 」
広島大医学部長 小林宏志
広島原爆病院院長
重藤文夫
勢にも不満が集中し、日本側が主体的に管理、
運営に当たるべきだという意見が大勢であっ
た。 129)
山田市長の要請でこの後医学、医療関係者に
よる「ABCCのあり方を検討する会 が
」 開か
日に意見書がまとめられた。
れ、7月
( 領行政の残渣払拭 )
占
1.占領行政時代継続の現状を断ち切り、そ
の存在、基礎を明確にしたる研究所とするこ
18
ろう。
12
11
( 機関との交流、データの公開性 )
他
1.他の大学、研究機関、医学機関等と交流
し得る組織とし、特に被爆地の医学人、医療
と。
26
52
12
72
72 10
72
72
72
73
20
≪ 124 ≫
る。また、ABCCと日本の原子力の研究機関
米折半とし、日本の法律に基づく特殊法人とす
が十分参加出来るようにするが、財政負担は日
国の基本方針は「ABCCの研究計画に日本側
米代表は原子力委員会と米国学士院―学術会
議の委員4人が乗り込んでいる。この交渉で米
保持及び福祉に貢献するとともに、人類の
病を調査研究し、原子爆弾の被爆者の健康
の 法 人 は、 平 和 目 的 の 下 に、 放 射 線 の
「 こ
人体に及ぼす医学的影響及びこれによる疾
を次のように定めた。
ERF 」)である。正式スタートは、1975 く勢力にとっても、広島・長崎は「核時代の原
年4月1日である。新しい法人組織は「目的」 点」であり続けている。
保健の向上に寄与することを目的とする。」 研に移行するまでのおよそ
年間に限って辿っ
) の稿で私は、原爆投下直後から始まっ
1 こ
た被爆者の調査研究を、ABCCが成立し放影
おわりに―被爆者とABCC
との調整をする。職員の問題では将来は予研の
職員にして給与も厚生省が負担する、
」という
米国の財政事情悪化ということからABCC
の再編、返還要求が具体的にだされ、それらを
特に被爆地広島・長崎における医師たちの活動
現場の未知への挑戦として取り組まれてきた。
てみた。原爆放射線の人体への影響を明らかに
これに対する日本政府の姿勢は「ABCCの
あり方についての継続的検討と財政負担につい
めぐる論議と世論の盛り上がりのなかでは、A
には、被爆者医療にむすびついた調査研究の重
ものである。
ても研究費、器材費なら努力する、ABCCの
BCCの体質そのもの、あるいは目的とするも
示唆的である。この段階から米国は法人化した
ときに実現する。この意味でもこの日米交渉は
)米国との交渉で出した方針の基本的部分
130
は、その後放影研としてABCCが再編される
あった。米国側にとってはこれまでと変わらず
の調査研究はそのまま継続されるという選択で
財政負担を受入れ、実質的な意味でのABCC
える上で示唆に富んでいる。
倫理や、今日につながる地域医療のあり方を考
てはそうした国民世論を背負って交渉に臨むは
占
( 領下の制約や資金的問題など と
) 悪戦苦闘
ずであっ た。しかし結果は、対等 な組織構成、 した歴史が多くある。それらは医療人としての
するという医学的研究は、多くの研究者、医療
研究で日米相互の主体性を認めるべき」という
要性を認識しながら、それを困難にした諸条件
131)
もので、
日本移管という方向では考えていない。 のへの日本側の不満が噴き出し、日本政府とし
ABCCは日米同数の理事構成としたり、調査
広島におけるABCC活動と医師たちの関わ
りを知るために、被爆者医療にとりくんだ医師
タが得られるうえに、財政的にも負担は半減す
研究への日米対等とするなどの、日本が受入れ 「原子力平和利用」を名目として被爆者のデー
ることは、数多くの被爆者が治療をもとめてく
やすい条件を揃えようとしている。
8月の田中―ニクソンの日米首脳会談でもA
BCC問題が議題となり、結局米国に押し切ら
る医師と、ABCCとの関係がずっと好ましい
ここで詳
132)
しく紹介出来ないが、ABCCとの関連で言え
の 記 録 な ど に も あ た っ て み た。
れるかたちで、
「1974年度から財政の折半、 ABCC問題は日米両国の戦後の歩みを象徴
するものであり、かつ核時代の現代が直面して
るわけであるから、いわば百点満点の成果であ
管理、運営の対等化」が決まったのである。こ
協力のもとにあったとは言えないということで
データの持つ意味が大きいかを教えている。核
んだなら、被爆者医療はもっと前進し、被爆者
が資料を公開し、医師と協力して医療に取り組
ろう。
の原則合意を受けてさらに日米交渉によって、 いる放射線被爆(被曝)の人体への影響につい
ある。 万人もの被爆者データを持つABCC
るなかで、未知の〝原爆症〟を解明しようとす
ABCCの新たな体制が合意されるに至った。 て、いかに広島・長崎の原爆放射線の調査研究
こ れ が 今 日 の「 財 団 法 人 放 射 線 影 響 研 究 所 ―
兵器廃絶をもとめる側にも、核兵器にしがみつ
2013.12.20
30
Radiation Effects Research Foundation(R
10
≪ 125 ≫
福祉につながっていたであろう。もっともAB
医の目をもっと大切にして、活発に交流す
心のようだ。被曝者と日常的に接する臨床
の非公開性の前ではそれらの言葉はむなしく響
CC側は被爆者の検査結果を主治医に連絡し、 く。私たちはこうしたABCCの調査研究の歴
しかし、占領期は勿論のこと、独立後において
う問題ではな くて、医学とは「その 最初から、
医学の専門的な知識はないが、素人だからとい
ことになる。現地の人たちが主体性をもっ
と、ABCCが広島でやった愚を繰り返す
人たちでなくてはダメ。その基本を忘れる
べきだと思う。…ヒロシマからどこかへ出
史から、本来のあるべき調査研究とはなにか、
も、疾病と放射線被爆との因果関係を解明する
人間自身について、あるいはその疾病について、
て被害を調べ、被害者を治療出来るように
また医師からの検査依頼にも応えたサービスを
ために必要な基本的データの公開にはABCC
いかに知識が乏しくとも、つねに人間の病気を
するには、どんな方法があるか―。世界の
かけていって、被害を調べるのも一つの方
は積極的ではなかった。
予防し、治療するための技術を内容とした、目
ヒバクシャヘの援助を考えるうえで忘れて
法。しかし、調査の主体はあくまで現地の
広島の開業医であった於保源作は、1953
年から市役所の死亡診断書1万1400枚を1
的の明確な科学であった。それゆえに医学は、
に判断しなければならないと思う。私にしても
枚ずつチェックし、広島の被爆者のガン死亡率
生物学と区別され、独立した学問技術の体系を
はならない視点だと思う。」 136)
な し て き た。」 135)
と い う 観 点 か ら す る な ら、 2)1957年の「原爆医療法」制定、19
ABCCの行ってきた研究は多くの問題点を持 68年の「原爆特別措置法」制定以来、被爆者
してきた、
資料も公開してきたというであろう。 被害調査は何のためになされるべきかを主体的
が全国平均を上回ることをつきとめ、統計的に
つと言わねばならない。
まとめてそれを発表した。於保にたいしてAB
CCはどのような対応をしたのか。
「老人にガ
の疾病が原爆放射線被爆に起因するかどうかの
ンはつきもの」とせせら笑っていた者もいれ
旧ソ連 ロ
ば、あるABCCの若い医師は訪問して来て、
( シア の
) チェルノブイリ原発事故 「認定」をめぐる問題が、被爆者医療と福祉の
や核実験の被害者救援に、ABCC―放影研の 充実の観点から被爆者にとって大きな壁となっ
あ る。 134)
これは被爆者医療をすすめようと
する立場の臨床医にたいするABCCの対応の
が多いことを認めたのはそれから6年も後で
されてしまった。ABCCが被爆者のガン発生
ていたので、この論文は日本人医師からも無視
だが、その当時はABCCが絶対的権威をもっ
う。 133)
於保医師が被爆者の白血病とガン死
について論文を発表したのは1956年のこと
言に私は同感する。
方としても、前述の於保医師のつぎのような発
力や援助のあり方としても、調査や治療のあり
ものとならないか、ということである。国際協
られる放射線障害の危険性も過小に評価された
事実とするなら、他の核被害者にあてはめてみ
ように、ABCCのデータの偏りや過小評価が
か。私が危惧するのは、もしこれまでみてきた
る。このことを手放しに喜んでいいものだろう
データや実績を生かした国際協力が行われてい
爆者援護法制定の要求をしりぞけた「基本懇」
して切り捨てようとする姿勢を示している。被
に放射線被爆の影響の過小評価を科学的根拠に
を も と に 主 張 を 展 開 し、 そ れ が 被 爆 者 の
137)
利益につながる方向で考えるのでなく、明らか
CC―放影研の調査研究データによる被爆線量
被告側として登場する厚生省は、一貫してAB
二審福岡高裁で継続中である。こうした訴訟の
と裁判で争われ、現在は長崎の「松谷訴訟」が
ている。過去にも「石田原爆訴訟」「桑原訴訟」
あまりしゃべらないでくれ といい「先生は
「
」
何年病理学を研究されましたか と
」 尋ねたとい
一例である。ABCCが〝サンプル〟として得
た一連の考え方によっていた。
の意見書(1980年)の基本的立場もそうし
たデータが被爆者医療のために、人類平和のた
ロシマとソ連チェルノブイリとの医学
「ヒ
交流が進んでいるといっても、研究医が中
めに貢献するものであると誇っても、ABCC
広島ジャーナリスト
≪ 126 ≫
るという憤怒すべき不合理性は、もっと広く知
果が被爆者福祉の充実を阻む理屈に使われてい
の被爆者の資料として、ABCCへの協力の結
C の 調 査 研 究 か ら 導 か れ た も の で あ る。 多 く
「2㌔以内の直爆被爆者のみには、放射線被
爆の影響が強いと認める」という考えはABC
者の間で論争が続いているからである。
めぐっては不明の点が多く、今もなお科学
量は低レベルで、低レベル放射線の影響を
に比べると、アメリカの被害者が受けた線
ないのか。それは、原爆被爆者の被曝線量
害者は、一部を除いて因果関係を認定され
3)昨年 月に成立をみた「原爆被爆者援護
法」のなかに「認定制度」がこれまでと変わら
は再認識しなければならない。
者の問題につながっているということを私たち
の問題につながり、またチェルノブイリの被害
も広島・長崎の被爆者の問題は米国の核被害者
いているが、この稿ではふれない。それにして
らされなければならないと思う。全被爆者の約
在の被曝線量の安全防護基準は、…職
現
業人は年間5レム、一般人はその 分の1
じかに知ったのだが、その時話された「認定患
の訴えを聞き、米国における核被害の深刻さを
ソルジャーとネバダの核実験場の風下地区住民
の国際シンポジウムの席で、
米国のアトミック・
だろうか。私は1993年にあった原水協主催
本の現状を、被爆者自身どれくらい知っている
が…1981年になって明らかにされ、安
めぐって従来からの定説を覆す新しい数値
タなのである。ところがこの…放射線量を
広島・長崎への原爆投下時の放射線量デー
(ICRP)が最有力根拠に利用したのは
この基準をまとめた国際放射線防護委員会
り深刻な問題となる可能性もある。認定制度の
被爆 年を前にしても被爆者の健康不安は消
えず、低線量被爆の身体影響などがこれまでよ
後にいくつもの課題を残したといえる。
被団協をはじめ、被爆者と広汎な国民の念願
で あ っ た「 被 爆 者 援 護 法 」 の 制 定 で は あ る が 、
の 0・5 レ ム と 定 め ら れ て い る。 そ し て、 える。
ず残されたことは、重大な問題であると私は考
者はたった1%」という事実に奇妙な符合を覚
存在が被爆者への救済を阻む根拠となり、その
展した。」 2
( 22―223㌻)
放射線量」の解析が完了していないということ
へ と 研 究 が す す ん で い る。 日 米 双 方 の 学 者 に
発生の関係、低レベル放射線の危険性の見直し
こうして、それまで一般的に認められてきた
値である「T D」 1
( 965年暫定線量)の
見直しが行われ、ガンマ線や中性子線量とガン
あった。
救済と核兵器禁止の運動が追求すべき課題が
と認定制度の廃止を求める根拠があり、被爆者
事実にこそ、ABCC―放影研のデータの公開
がある。春名幹男の『ヒバクシャ・イン・US
よ る「 原 爆 放 射 線 量 再 評 価 の 日 米 合 同 ワ ー ク
被爆者と同じように、…脱毛や吐き気など
影研が調査研究から導きだした放射線のリスク
年7月に公表されたが、これまでABCC―放
広島・長崎の被爆者がその被害の真実を訴え、
かし、世界で最初の放射線被爆の影響を受けた
評価を受ける働きをしたというべきだろう。し
よる被爆者をつくらないという点で、世界的な
の急性症状を訴え、さらに…ガン・白血病
かつ救済をかちとるための医学的科学的根拠と
くうえでも「広島・長崎の被爆者が受けた被曝
A』
(岩波新書、 1985
年)に、このことに関連
するつぎのような記述がある。
「核兵器禁止と被爆者救援」を車の両輪にた
とえて展開されてきた運動は、新たな核戦争に
ショップ」が 年以来続けられた。 年に広島・
長崎の新しい原爆線量「DS 」が確定され
まま存在して認定を左右する基礎となっている
バックにABCC―放影研のデータが非公開の
50
「ア
メリカの核被害者にとって最大の問題
は、因果関係の立証である。広島・長崎の
の救済が進まない背
米国のヒバクシャ 138)
景には、米国における核被害を明らかにしてい
全基準の根拠を揺るがせるほどの論議に発
1%しか認定被爆者として認められていない日
12
えた。
10
評価が過小であったことが明らかになった。こ
87
86
れ以降現在もこの問題に関する研究、論議が続
86
といった晩発性の障害が発生している。
れではなぜ、アメリカではこれらの被
そ
2013.12.20
65
83
≪ 127 ≫
年にもおよぶ調
しいということである。
民主、公開」を原則とする調査研究であってほ
して、ABCC―放影研のデータに依存せざる
兵器の開発・実験・拡散、原子力発電に伴う被
を得なかったのは問題である。求められるべき
曝や環境汚染の問題の研究や政策に利用され、
は、原爆被害の全体的実相解明という期待にも
しかもそれらが米国を中心とする核保有国の重
応える放射線影響研究であり、それが実現する
要な課題として取り組まれたことにより、被害
ならば、結果として認定制度の根本的改善を含
者救済につながらない調査研究でしかありえな
む被爆者救援、医療の充実につながる調査研究
かったということである。
である。
この歴史的現実をふまえて最後に私が望むこ
科学の分野で広島・長崎の風化はありえず、
とは、被爆者の、人類の幸せにつながる研究が
むしろ今日的問題であり続けているといわれ
新たに構築されること、それは、「平和、自主、
る。ABCCの成立経過や、
査研究の歴史からいえることはなにか。
それは、
原爆投下が人間にもたらした影響の研究が、核
開かれた『
米の核被害者数の総数を100万人と推定し
万人、△核
万人、△ネバダの風下と太平洋
た。その内訳は、△原爆復員軍人
実験場作業員
万人、△核兵器関連施設の従
万 人、 △ ウ ラ ン 鉱 山 労 働 者 1・5 万 人、
地域の風下住民
―。大ざっ ぱな推定数で、多少問 題はあるが、
それにしても、この数字は核超大国イコール核
被害大国、という現実を象徴するものではない
だろうか」とある。
相良カヨさんの「被爆者とABCC」
(3
回続き)は、これで終わります。
広島ジャーナリスト
広 島 原 爆 障 害 対 策 協 議 会『 原 爆 医 療 史 』
132)
年、 同『 被 爆 者 と と も に ― 続 広 島 原 爆 医
1961
療史』
年、 広 島 市 医 師 会『 ヒ ロ シ マ 医 師
1969
の カ ル テ 』 1989
年、 そ の 他 医 師 個 人 の 著 書 な
ども読んだ。
於 保 源 作『 面 影 ― 原 爆 ガ ン と 取 組 ん だ 町
133)
医者』自費出版、 1993
年、 、108㌻。
前掲書、 ㌻。
134)
杉原芳夫「ABCC問題について」『日本
135)
の科学者』 1967.12,Vol.1.2.No.3.p.32.
於保源作、前掲書、 ― ㌻。
136)
「昭和六十三年(行ウ)第三号原爆被爆者
137)
医療給付認定申請却下処分取消請求事件判決」
86
(平成5年5月 日判決言渡)で被告厚生省の
議と論議のすえABCCはこの指令の適用除外
主張にふれている。
となったが、…米国公衆衛生局はこの指令適用
春名幹男『ヒバクシャ・イン・USA』(岩
138)
となり、1969年7月から派遣員が減員され、
波 新 書、
年。 221
㌻)
「1984年 月に
1985
年全米放射線被害者大会』で、全
…開業医の病理組織検査を医師不足を理由に広
島市医師会にたいして断らざるを得なくなっ
た。」こうし たことから、ダーリン グ所長の発
10
注
松 坂 義 正「 A B C C に 関 す る 研 究 ノ ー ト
118)
―その3―」
『広島医学』 Vol.35,No.2,p.61.
㌻。
84
85
△広島・長崎の日系・韓国系被爆者1000人
業員
25
前掲論文、
119)
84
26
12
言がなされた。米国の財政的苦境とABCC継
松坂義正、前掲論文、 ㌻。
130)
放 影 研「 放 影 研 ニ ュ ー ス・ レ タ ー」
131)
Vol.1,No.1,1975.5,p.7.
84
25
第 回 原 水 爆 禁 止 世 界 大 会「 原 爆 投 下 の
120)
ママ
ママ
責 任 を 追 求 し、 被 爆 者 と の 連 帯 を 堅 め、 救 援
年8月7日、 続の活動をどうするか、という悩みであった。
1966
昭和 年5月 日付『読売新聞』『朝日新
129)
聞』『毎日新聞』参照。
20
活動を強化するための決議」
『中国新聞』昭和 年4月 日号。
125)
松坂義正、前掲論文、 ㌻。
126)
12
前掲論文、 ㌻。
127)
『中国新聞』昭和 年2月 日号。
128)
45
47
広島にて。
『 A B C C 年 報 ― 1 9 6 7 ― 1 9 6 8』
121)
― 221
㌻。
214
㌻。
63
68
松坂義正、前掲論文、
122)
前掲論文、 ㌻。
123)
前掲論文、 ㌻。
「米国政府が1968年
124)
2月に国際収支改善のため海外派遣員の大幅縮
64
25
50
63
小政策を断行し、ABCCも直接影響を受ける
12
61
63 63
立場にあったが、ダーリング所長らの熱心な協
47
12
藤居平一さんのこと
広島市原爆被害者の会(片山春子会長)主催の「藤居平一さんを語る会」が
日、広
宇吹 暁
人余りと盛況だった。私も藤居さんの思い出を
月
16
に投稿したものの再掲で、お許しをいただいた。なお、追想原稿では、お名前を伏していた方
し、現在の私は、あらためて稿を起こせる環境にないので、藤居さんの追悼文集(『人間銘木』
の寄稿依頼があった。藤居さんの人柄と事績を紹介することのできる貴重な機会である。しか
語る機会を与えていただいた。折しも『広島ジャーナリスト』編集部から、藤居さんについて
島市中区の平和ビルで開催された。参加者は
11
『人間銘木 藤居平一 追想集』(編集・
「藤居平
一追想集 」編集委員会、発行者・藤居美枝子、
発行日1997年4月 日=藤居氏の一周忌)
研究班(庄野直美 2
[ 012年2月 日没 班
]
長 ) の 仕 事 で 同 研 究 室 に 出 入 り し て い ま し た。
私は、日本人の核意識をテーマとする文部省の
室 の 2 箱 の 段 ボ ー ル の 中 に あ り ま し た。 当 時、
17
会話がつながりました。シナリオどおりにはな
この研究が一段落ついた7月、北西教授は、私
に、この資料を生かしてほしいと託されました。
[1]
聞けば、それは、石井金一郎広島大教養部教授
[1967年6月 日没]が[日本の原水爆禁止
運動の歴史をまとめるために藤居さんから借用
したもので、石井教授の死後、同教授が預かっ
ていたとのことでした。
私は、大学卒業後約6年間、広島県史編さん
室に勤務し、今堀誠二[1992年 月9日没]
・
関する資料は、かなりのものに目を通していた
みました。「 良く知っている。快男児 だった」。 つもりでいました。しかし、「藤居資料」(簿冊
と話題を変えてみました。ドクターの表情が緩
窮地に立った私は、「藤居さんをご存知ですか」 資料編』編纂業務に従事しており、原爆問題に
予定されています。カメラは回り続けています。 熊田の両 先生の指導の下で、『広 島県史・原爆
極的な役割(藤居さんから学んだことです)が
のお名前を本稿では掲載している。また、死亡者の没年月日を付け加えた。
「先生は、原水爆禁止運動について、どう思
われますか」
、
「忘れた」
。
「先生は、第1回原水
爆禁止世界大会の中で重要な役割を果たされて
月のある日、原
います。何か思い出されることは、ありません
か」
、
「忘れた」
。1995年
爆医療法制定当時に広島市の医師会の幹部だっ
20
10
90
25
26
29
います。それは、広島大法学部の 北西 允 研究
まこと
りませんでしたが、インタビューを無事終える [1]石井教授死亡の翌日の『中国新聞』(1967年6
たドクター[原田東岷先生。1999年6月
月 日)は、「原爆医療法の制定を政府に要求するのは
日没]のお宅で、
数回繰り返されたQ&Aです。 ことができました。
被 爆 者 の 権 利 だ。 団 体 を つ く っ て 運 動 を や る べ き だ ―
それまで、
「原爆医療法の成立」
(広島大学テレ 私自身が藤居さんに初めてお会いした(熊田 と 主 張 さ れ ま し て ね。 こ れ が 日 本 被 団 協 の で き る き っ
ビ公開講座用の1テーマ)過程について、打ち 重邦先生[2013年1月 日没]の紹介)のは、 かけにもなった」との藤居談話を掲載している。なお、
解 け て お 話 し て く だ さ っ て い た ド ク タ ー の 顔 1980年4月 日のことです。しかし、その 同教授は、死亡1年前の寄稿文に、「私は、出征中に原
爆 で 父 母 と 妹 を う し な っ た 被 災 者 で あ る 」(「 ヒ ロ シ マ
が、突然無表情になりました。私のシナリオで 3年前の1977年に「藤居資料」に出会って は発言する③」、『朝日新聞』8月3日)と記しており、
藤居さんと共通する体験の持ち主であった。 は、原水禁運動が原爆医療法成立に果たした積
2013.12.20
12
21
原爆被害問題研究の恩師
≪ 128 ≫
22
≪ 129 ≫
ほとんどは、初めて目にするものでした。学生
1984年まで続きました。その録音テープ
年 か ら 始 ま っ た 藤 居 さ ん へ の 聞 き 取 り は、
歩 み は、 藤 居 さ ん と と も に あ り ま し た。 翌
1982年3月には、草月流の勅使河原宏家元
き て い て よ か っ た 」 の 関 係 者 と の 出 会 い で す。
は、原水爆禁止日本協議会が製作した映画「生
し て く だ さ い ま し た。 中 で も 忘 れ ら れ な い の
女の会の会員だった人たちと一緒に参加させて
が出席された同派の広島支部の会合に、原爆乙
1月号)にわたり、まとめさせていただきま
招いて、広島市の平和記念館で同映画の上映会
4373冊、文書綴・ノート類は
冊3897
パ ン フ レ ッ ト・ 逐 次 刊 行 物 合 わ せ て 9 0 1 点
原水爆禁止運動分裂までのもの)は、単行本・
し た。 こ の 間 に 整 理 し た 資 料( 1 9 6 3 年 の
資 料 と の 格 闘 は、 1 9 8 5 年 6 月 ま で 続 き ま
は、この上映会から5日後のことでした。この
竹内さんから日本原水爆被害者団体協議会の
初期資料である「平和会館資料」を借用したの
だきました。
が、私も映写技師として裏方を勤めさせていた
27
点、一点資料1287点に及ぶものでした。
55
1995年 月 日夜、藤居さんから自宅に
電話がありました。日赤病院からとのことで、
26
ごい剣幕でどなられたかと思うと、電話が切れ
機器のことを話されました。しかし、突然、す
議のことや、広島大原医研に新たに導入された
7月下旬に広島で開催されたパグウォッシュ会
10
広島ジャーナリスト
冊、一点資料も含めた総点数は429点)の
時代、数人の先輩から、歴史研究を志すものに
本に及ん でいます。
日没])
は、120 分テープで
居資料」と出会った私は、
とっさに「これだ!」 ター資料調査室発行の『資料調査通信』に「ま
いただきました。また、同年7月には、藤居さ
そ の 成 果 は、 広 島 大 原 爆 被 災 学 術 資 料 セ ン
どうてくれ―藤居平一聞書」として8回(第
(この映画の助監督[2001年4月
はいつか自分の研究を方向づける資料との運命
5号1981年 月号から第 号1984年
的な出会いが訪れると聞かされていました。「藤
と思いました。早速、勤務先の原爆放射能医学
を作成しました。この経緯を熊田先生に伝えた
した。
日没]でした
を開催しました。関係者の招待に奔走されたの
ところから、資料の主であった藤居さんとの出
年の間の私の原爆被害問題研究の
15
広島大原爆放射能医学研究所附属原爆被災学術資料センター資料調査室の通信の
表紙。「まどうてくれ」は、藤居さんの自筆
それから
は竹内武さん[2005年1月
29
藤居平一氏の略歴(ふじい・へいいち)1915 年 8 月 7 日、
広島市の銘木店の長男として誕生。45 年 8 月、広島への原
爆投下で父と妹を失う。中国大陸から復員後、早稲田大を卒
業。56 年8月、日本原水爆被害者団体協議会初代事務局長。
96 年 4 月 17 日、病のため死去。80 歳。
この作業の中で、藤居さんは、原爆被爆者
運動草創期に活躍された多くの人々に紹介
12
会いが実現したわけです。
んの発案で、映画に出演された主だった方々を
研究所で、整理に取りかかり、8月末には目録
14
60
13
≪ 130 ≫
が 生 じ た も の と 思 い、 再 び 電 話 が か か る の を
てしまいました。病室の電話の接続にトラブル
の作業に応じてくださった気持ちを、「紙の碑
居さんをご存知ですか」と聞いてみました。即
年間に、大きく変わりました。「まどうてくれ」 たのです。何から話してよいか迷った私は、「藤
でした。1955年当時、塩先生にとって藤居
座に出た答は、「日本被団協を作った人でしょ」
は、「 過 去 」 に あ っ た わ け で す。 と こ ろ が、 そ
さんは雲の上の存在だったそうです。しかし、
待っていましたが、
かかっては来ませんでした。 を残したい」と語られていました。いわば関心
そして、これが、私が聞いた藤居さんの最後の
の後、関心が「現在・未来」へ移りました。時
かったことがあるとのことでした。初対面の会
声となりました。
「藤居平一聞書」のために録
話が、これを機にはずんだことは言うまでもあ
期的には、1990年前後と記憶しています。 しばしば原水爆禁止運動関係の会合でお目にか
者対策基本問題懇談会の答申に対する批判や原
た。そして、最後の声も同病院内からのもの。 この頃から藤居さんは、私にしばしば原爆被爆
音テープを取り始めたのは日赤病院の病室でし
私には、入院生活の合間に藤居さんからお話を
プ」の組織化への協力を要請されました。しか
りません。
し、私には、荷が重すぎて積極的な回答ができ
うかがっていたような印象があります。
今では、 爆被害を調査・研究する「医者・科学者グルー
翌朝すぐにお見舞いにいくべきだったと悔やん
に頂いて帰りましたが、同社の高瀬さんが丁寧
ます。しかし、藤居さんは、長野の組織の状況
の4県の被爆者組織で出発したことになってい
では、日本被団協は、広島・長崎・愛媛・長野
同じ年の7月8日、私は、信濃毎日新聞社に
1956年当時の長野県内の被爆者組織につい
でいますが、
その時は、
死につながる病とは思っ
ません。その度に励ましとお叱りを受けました。 て問い合わせの電話を入れました。
「藤居資料」
藤居銘木に残された資料を1996年7月 日
てもいませんでした。
藤居さんの原爆被害に対する関心は、この
に準備されたその資料からは、お亡くなりにな
ピック関連の取材で手一杯であるが、あなたが
をご存知なかったのです。同社からは、オリン
まれていた様子が伝わってきました。
ることができる、それによって当時の状況を知
私は、藤居さんの「現在・未来」の課題には
お役に立つことができませんでした。しかし、
をいただきました。
長野に調査に来れば、そのこと自体を記事にす
藤居さんは、私に多くの宿題を残して逝かれ
ました。「庶民の歴史を世界史にする」、これは
る手がかりが得られるのでは、との親切な回答
年間、私は原爆手記の収集と分析を
のレポートと考えています。
さんととともに続きます。
在住の宮川裕行先生が、友人である塩伸一先生
(うぶき・さとる、元大学教員)
部を原文から変えています。 (編集部)
※広島大学を広島大としたほか、仮名遣いの一
私の「過去」との取り組みは、これからも藤居
1996年6月8日の夜、私は広島駅前の飲
み屋で、二人の先生と同席していました。広島
行ってきましたが、この作業を私は藤居さんへ
す。過去
藤居さんから私が聞いた好きな言葉の一つで
る直前まで、藤居さんがこれらの問題と取り組
30
(日本の平和運動のリーダーの一人。[筆名 林
:
日没])に、原水 爆禁
茂夫・20 04年7月
18
止運動に関心を持つ私を引き合わせてくださっ
2013.12.20
10
15
11 月 16 日、藤居平一さんを語る会で思い出を話す筆者
平和主義」は表裏一体
「消費税」踏み台に強国めざす
斎藤 貴男
安倍政権の「成長戦略」と「積極的平和主義」は表裏一体ではないか。ジャーナリストの
斎藤貴男氏が 月3日、広島市でこう示唆した。同氏は日本弁護士連合会第 回人権擁護大
56
大企業の対外活動を守り権益確保などを推進していく新たな安全保障体制の構築、それが「積
その基本は新自由主義的な構造改革と古き良き
大学は商学部に入ったが、在学中に父親が亡く
私は1958年、東京の池袋の生まれで実家
は鉄くず屋をしていた。後を継ぐということで
も言ってきたが実際は、過大な公共事業などへ
のために使われると大蔵省そして財務省はいつ
の中で財政危機を口実に国債償還、財政健全化
られる可能性はあると思う。しかし、先に述べ
P(国内総生産)、日銀短観がかなり引き上げ
の流れを満足させようとするものだ。今後GD
2010年7月に出した「消費税のカラクリ」 前をはねていた。アベノミクスは保守層の両方
今回の増税について社会保障に使うと言わ
思っているのではないか。帝国主義を目指して
だ。安倍首相は世界の強国の仲間に入りたいと
たように人々の生活の向上にかかわるかは別
れてきたが、基本的には全部うそである。公共
のあぶく銭として使われてきたと指摘した。
歳を過
10
なり卒業後、日本工業新聞に入って鉄鋼業を3
年間担当。その後雑誌記者などを経て
最初に私の略歴を述べたしだいだ。
合、
これまで歩んできた経験が大きく影響する。
ぎて独立した。格差、不平等問題に向き合う場
30
広島ジャーナリスト
さいとう・たかお 1958年東京生まれ。新聞
記者、週刊誌記者を経てフリー。放送倫理・番組向
上機構(BPО)放送倫理検証委員会委員。
著書に「機
会不平等」
「『東京電力』研究 排除の系譜」「安倍
改憲政権の正体」
「ポスト成長神話の日本経済―『ア
ベノミクス』を問う」
「ルポ 改憲潮流」「民意のつ
くられかた」など多数。
事業、経済対策に使うのだ。為政者は成長戦略
が、わが国にとっていいというが、何をもって
「成長」というのか。日銀の短観(全国企業短
期経済観測調査)が個人の生活とどうかかわっ
後に経団連(日
ているのか。経済成長と社会全体がよくなるこ
とを同一視はできない。3・
本経済団体連合会)は成長戦略を発表した。そ
年の5%への引
こには法人減税が盛り込まれていた。法人減税
は1989年の3%消費税、
き上げでもセットにされていた。
月1日、消費税について来年4月から現行
の5%から8%へ引き上げることを安倍晋三首
時代の自民党の経済政策であった公共事業、す
極的平和主義」の内実と述べた。講演の要旨は次の通り。 文
( 責・編集部
相が表明した。その後になって新聞は「話が違
なわち土建政治である。土建政治で自民党は上
アベノミクスは解雇をやりやすくする特区を
つくろうとしているが、まさにブラック特区だ。
う 」 と 批 判 め い た 記 事 を 載 せ て い る が、 私 は
)
質を持つと指摘した。その消費税収の増大を大企業優遇策に回すのが「成長戦略」であり、
げられる消費税は逆進性があるばかりでなく、弱いものへ次々と負担をしわ寄せしていく本
会シンポジウム第3分科会「
『不平等社会』日本の克服」の講師として登壇。税率が引き上
10
「社会保障費 に 回 す 」 は ウ ソ
11
97
「成長戦略」と「積極的
≪ 131 ≫
≪ 132 ≫
いるように見える。
とになる。例えば時計部品メーカーが増税分を
になり節税することができる。非正規雇用が進
む一因になっている。日本の全雇用者のうち非
%近くを占めるようになっている。
一般に消費税といえば小売店と消費者に限定さ
私 の 場 合 を 話 す と、 年 近 く 前 に 年 収 が
1千万円になった。講演先や出版社は消費税を
ずだ。
部品メーカーなどに対して上乗せ分を支払うこ
輸出免税というのもある。メーカーが米国に
輸出するとする。消費税は国内の税制だから米
正規が
れると思い込みがちだが、そうではない。原則
とになる。その差を輸出メーカーがかぶれば、
消費税といえば、逆進性が問題にされる。物 上 乗 せ し て 親 会 社 に も っ て い く と、 親 会 社 は
価が上がって貧しい人に負担がかかる。私はマ 「価格据え置きの工場はいっぱいあるから、お
す べ て の 流 通 段 階 で の 問 題 だ。 消 費 税 と い う
上乗せして払ってくれて、後に私が納税するの
スコミ的に問題にされていない点を語りたい。 前のところは2度と来なくていいよ」というは
ネーミング自体が間違っている。ヨーロッパで
だが税金分を乗せてくれない所もある。そこで、 採 算 が 悪 く な る。 と い う こ と で 輸 出 額 に 0 %
消費税はすべての段階でかかる。納税義務者に
カーは下請け工場からいろいろな部品を買う。 してくれないと困るというと、斎藤は税金の話
仕 入 れ、 問 屋 は メ ー カ ー か ら 買 い 付 け、 メ ー
時 計 を 例 に と っ て み る。 時 計 店 は 問 屋 か ら
ばかりしていると腹を立てられる始末だ。それ
るようになった。私が納税するのだから上乗せ
いちいち消費税のことについて担当者に説明す
る。いうなれば弱い者の富を強いものへ移して
品メーカーに値引きさせていることも考えられ
ラマイゼロになるかもしれないが建前の話。部
いたマイナスの消費税が還付される。帳簿上プ
を 掛 け て、 ゼ ロ 円 か ら 国 内 で の 上 乗 せ 分 を 引
いるのだ。ちなみにトヨタでは約3千億円の還
付になるという。
法人税率が外国に比べて高いとよくいわれ
る。経団連の担当者に聞くと、表面税率は世界
禁 句。 企 業 努 力 に よ っ て 税 を 負 担 す
る と 打 ち 出 し た い。 問 題 は 企 業 努 力
一高いが特別措置を入れると先進国の中では低
が あ る。 従 業 員 の 給 与 は 対 象 に な ら
込 ま れ る。 仕 入 れ 税 額 控 除 と い う の
小 問 屋、 下 請 け 町 工 場 は 倒 産 に 追 い
か っ た ら 自 分 が つ ぶ れ て し ま う。 中
こ と に な る。 弱 い も の い じ め を し な
い。 弱 い 方、 弱 い 方 へ し わ 寄 せ る
た業者も同じことをやらざるを得な
加 え て 仕 入 れ 先 を 泣 か す。 泣 か さ れ
るのが正しいとしている。
なく目的になっている。阻害するものを排除す
それが他のものは犠牲にしていいと、手段では
あるのか。多くの人が幸せになる手段である。
だくっているだけだ。経済成長はなんのために
発展というわけにはいかず、弱いものからふん
削減、企業利益の拡大に走っているが国全体の
みえたが、安倍政権と財界はひたすら人件費の
ることは好まないというプライドがあるように
の 時 給・ 給 与 の カ ッ ト、 リ ス ト ラ。 い方だという。世間をだましてまで優遇を受け
が ど の よ う に な さ れ る か だ。 従 業 員
こ と は 禁 止 に な っ た。 店 長 に と っ て 値 上 げ は
ス ー パ ー が「 税 還 元 セ ー ル 」 と 打 ち 上 げ る
ついては、1千万円以上の事業者という規定が
あらゆる段階で弱い方が、負担を強いられるこ
あるが担税者についてはどこにも規定がない。
ならもういいやと引き下がったりしてきた。
国で価格に上乗せはできない。一方、国内では
は付加価値税といっている。
40
な い が、 派 遣 会 社 へ の 支 払 い は 対 象
2013.12.20
10
≪ 133 ≫
官は憲法9条が邪魔になると言っていた。
いうことになる。自民党の中谷元・元防衛庁長
ない。邦人が危ないと自衛隊による車両出動と
ンフラ輸出を進めると現地で衝突が起こりかね
リアにおける石油プラント襲撃事件のようにイ
惨になる。それは避けられない。日本は来る所
かろうか。
のイギリス、東の日本をめざしているのではな
だ。その紹介、考察をしている。安倍政権は西
益に反しない限り爆撃してもいいとする考え方
主義世界をくつがえすような勢力に対しては国
軽視される憲法の生存権
内需が細るのでインフラ売り込みでもうけよ
うということだが、これは侵略と外国から受け
条の生存権、国の生存権保障義務
が事実上ほごにされている。兵庫県小野市では
いる。憲法
経済成長第一主義の流れが極めて加速して
生活保護受給者がパチンコしているなどの情報
止められかねない。帝国主義の発想に近いのだ。 まできた。新しい価値をみいだして、今の流れ
財界と自民党ははっきりとはいわないが、多国
なく、紛争は外交で解決していくということだ。
から十までゼネコン、鉄道会社などが引き受け
備のプランづくりから建設、運転、維持まで一
発電所、空港など諸外国のあらゆるインフラ整
はアメリカのプードルと言われたが、善のため
ア元英首相の政策を取り上げている。ブレア氏
理的な戦争」という本を書いて、トニー・ブレ
谷雄一慶応大教授も委員に入っている。彼は「倫
は、座長をしている北岡伸一氏のまな弟子、細
経 済 大 国 を 目 指 す 以 上、 格 差 社 会 が よ り 悲
提供を求める条例ができた。保護を受けている
これまではあまり派手にやってこなかったが、 に抗していくしかないと思う。
れが「積極的平和主義」の内実だ。一般のそれ
進めていくには軍事力が必要になってくる。こ
人間が遊んではいけないのか。これでは相互監
条は
条は怖いな
視社会になる。自民党の憲法改正草案の
て「国会の議決に基づいて、これを行使しなけ
籍企業が世界で好き勝手にできる状態にすると
とは、天と地のちがいがある。平和とは戦争が
ればならない」とあるのだが、草案は「財政の
経済同友会が自衛の概念を変えるように提言し
健全性は、法律の定めるところにより、確保さ
は憲法違反ということになる。
さらに自由世界を維持していくための国際秩序
いう考え方だ。世界中に広がっている日本企業
安倍首相が世界の強国を目指していることを
もろに感じる。訪米した際、現地のシンクタン
も入れている。これについてアメリカはもろに
るというものだ。民主党が打ち出したパッケー
の戦争という政策を打ち出したのである。自由
政府の安全保障と防衛力に関する懇談会に
ジ型インフラ海外展開を引き継いでいる。石油
インフラシステム輸出と結びついている。鉄道、
明している。それはただの平和主義ではない。 自衛と考えている。
て い る。 国 土・ 国 民 に 加 え て 在 外 資 産・ 権 益、
クでの講演で「積極的平和主義」を目指すと表
れなければならない」と付け加えている。これ
条は、財政処理の権限とし
現行憲法と変わらないが、草案の
25
の権益を守るのが自衛隊の役割になる。4月に
あと思う。現行の
83
だと福祉費削減など財務省の対策に逆らうやつ
83
やガスなど資源の権益確保に加えて、アルジェ
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私の中沢啓治さん 渡部久仁子
アジアへの戦争責任明確化を 田中利幸
「慰安」の名称に日本軍の犯罪性 梁澄子
沖縄リポート 松元剛
被爆者とABCC㊤ 相良カヨ
上関原発をどう止めるか 木原省治
平和憲法の原点と現点 河上暁弘 特集「
『核と人間』のいま」
分断された地域、暮らし、家族 若松丈太郎
放影研交え「黒い雨」シンポ
対談 S・リーパー A・ビナード
あれしきの被曝で何を騒ぐかと。 澤野重男
事故は収束していない 佐藤和良
忘れられぬ2年前 青木達也
原発は社会を分断する 木原省治
「脱原発」決断に至るドイツの歩み 田村栄子
特集「すべての核に『NO』といえない日本」
被爆国の立場なし 平岡敬
市民の力が問われている 森瀧春子
ホンネの核政策前面に 浅井基文
特集「
『虐殺』
『慰安婦』問題と『原爆』
」
広島ジャーナリスト第 12 号
広島ジャーナリスト第 13 号
25
広島ジャーナリスト
自由、人権、民主主義求め苦闘
た。その現実からから目をそらすことなく、「ア
ラブの春」満3年を考える。
エジプト
同胞団弾圧下で進む政治日程
年 7 月 3 日 の ク ー デ タ ー 後、 シ ー シ 国 防
相が主導権を握る軍と暫定政権は1952年の
7月革命以来、歴代の軍人大統領政権でさえや
イエメン、リビアで独裁政権を倒し、世界に希
時代のままで、モルシ政権とはことごとく対立
開した(前号参照)。大部分がムバラク前政権
がった民主 化決起は、チュニジア、 エジプト、 らなかった、ムスリム同胞団弾圧を無慈悲に展
望 と 期 待 を 広 げ た。 し か し、 民 主 的 な 選 挙 で
してきた司法当局は、モルシ大統領と同胞団主
軍事力を総動員して民主化
シリアではアサド政権が
を開かねばならない」と発言、検察の起訴状に
い」「
(軍が停止した)憲法に従えば、特別法廷
エジプトの正当な大統領だ。裁判に正当性はな
日、 集 会 や デ モ を
でのすべての政治的行為、集会、行進などを対
法律」は全文
25
2010年 月 日、チュニジアの田舎町シ
ディブージドで始まった「アラブの春」(サウ
選 ば れ、 1 年 間 新 た な 国 づ
要幹部、政権幹部ら
月4日初公
人を、殺人扇動(有罪は
くりに努力したエジプトの
死刑か無期)などの罪状で起訴、
勢 力 を 弾 圧、 過 酷 な 内 戦 と
対して、被告は全員、無実を主張した。モルシ
判を開いた。出廷したモルシは裁判長に「私は
な っ た。 人 口 2 3 0 0 万 人
の罪状は、大統領官邸を包囲した反モルシ勢力
月
かし、信頼に足る証拠も、証言も、報道もない。
のデモ隊に対し、警護隊に発砲させた容疑。し
月半ば
万人を超える生命
の こ の 国 で、 こ の
までに
が 失 わ れ、 二 百 数 十 万 人 が
そして暫定政権は
厳しく規制する新法を施行した。即日発動、イ
国 外 に 逃 れ、 九 百 数 十 万 人
が 国 内 難 民 と な り、 い ま も
スラムの最高学府アズハル大学内での学生デモ
未来への希望が残酷に失わ
象にしている。
条。「公的な場所・道路・広場」
れ た の だ。 歴 史 豊 か な 美 し
一 人 の 生 命、 家 族、 生 活、 を解散させた。この「抗議行動とデモに関する
増 え 続 け て い る。 そ の 一 人
24
11
17
ラ=アラブ革命)から満3年。アラブ諸国に広
坂井 定雄
モルシ大統領は軍のクーデ
11
15
11
12
い国土が無残に破壊され
2013.12.20
ターで打倒された。
イギリスの公共放送BBCニュース電子版は 11 月4日、
「モルシ前大統
領、法廷で『私は大統領だ』と発言」の見出しで、追放されたエジプト
の指導者モルシ氏がカイロで開かれた裁判に出廷し、私は大統領であり
裁判は違法だと述べたと報じた。映像はエジプトのテレビが伝えた法廷
に着いたモルシ氏(右から3人目)
12
13
「アラブの春」3年
≪ 134 ≫
≪ 135 ≫
民の権利、民主主義を抑圧した独裁者だった。 ほどの小グループが新登場、注目された。
を倒せ」を叫ぶ「革命の道」と称する400人
3日前に文書で警察書に届け、許可を得なけれ
しかし、いまでも、多くの国民や軍人、政治運
民兵集団)
によって残酷に弾圧した。
弾圧によっ
府運動に転化、全国に広がり、首都郊外から地
やして、ムバラク政権時代の与党国民民主党や
回選挙で選挙法を改定し、非政党枠を大幅に増
中核になった。 政府軍の空爆、陸軍 の砲撃は、
が離脱して自由シリア軍を結成、反政府勢力の
域への空爆を開始。政府軍からは反政権の将兵
ル派、世俗派、左派は、 月、統一名簿で選挙
な反政権勢力の「救国戦線」を結成したリベラ
月
日にタハリール広場で行われ
脳部)の人道的、政治的犯罪は、中東の現代史
の最悪の事例となった。
広島ジャーナリスト
同 法 の 要 点 は 次 の 通 り ― ① 集 会 や デ モ は、 の輝ける国際的指導者だったが、国内的には国
ばならない。許可申請書には日時、場所、行進
ア サ ド 政 権 は、 エ ジ プ ト の ム バ ラ ク 政 権 崩
シリア
壊直後からシリア南部と首都周辺の町から始
米ロ合意後深まる人道危機
軍 と 暫 定 政 権 は、 大 統 領 選 と 議 会 選 挙 で ム
まった、住民の民主化要求の集会とデモを当初
動者、メディアの有力者にはナセル信奉者が多
スリム同胞団系の候補者を排除しようとしてい
く、シーシもその一人だ。
動、公共交通機関や交通の流れの妨害、警察官
る。すでに同胞団の団体登録を取り消し、法的
ルートのほか、目的、要求、スローガンを記載
への攻撃、さらには覆面した参加者も禁止され
しなければならない②治安、公的秩序、生産活
る③内務大臣と各地の治安責任者は集会やデモ
宗教政党を禁止して、同胞団の政治参加の道を
同様の政党本位の選挙制度だったが公正に実施
方都市まで反政府勢力の支配地域が拡大した。
万エジプトポン
て民主化要求はアサド政権の打倒を目指す反政
を禁止することができる④違反者への罰則は、 基盤を奪った。新憲法とそれに基づく選挙法で、 から治安警察とシャビーハ(政権が雇う乱暴な
2―5年の投獄および5万―
閉ざせるのか。 年末の議会選挙では、従来と
軍 と 暫 定 政 権 は、 修 正 憲 法 の 制 定、 大 統 領
され、ムスリム同胞団の政党「自由公正党」が
ドの罰金。
選挙、立法議会の選挙を目指す政治日程を推し
ア サ ド 政 権 は 軍 を 動 員、 反 政 府 勢 力 支 配 地
して、来年1月までに国民投票にかける運びに
政財界の有力者、富裕層、地主らが個人で立候
人の憲法起草委員会は、修正憲法案を決定
月の国
なっている。この憲法案が2012年
言論・表現の自由、結社と政治活動の自由をど
戦を戦うことを決めた。「救国戦線」の指導者で、 政権はそれを拒絶し、直ちに全面的な武力弾圧
から村落まで破壊と殺戮が広がった。
こまで継承するか、軍事裁判や巨大な経済特権
を開始した。それによってアサド政権は多大な
停止)が保障し、
高く掲げた国民の基本的人権、
など、軍の権限をどこまで制約できるか、大統
暫定政権の副大統領に就任したが、暫定政権に
ま た、
事務局長もこの統一名簿作りに加わった。
したエルバラダイ前IAEA(国際原子力機関) 政権(アサド一族、バース党、軍、治安機関首
アサド政権が当初から民主化要求に対話で対
応し、政治的解決をすることは可能だったが、
領、内閣、議会の権限・役割の明確化など、重
人命と国民生活、国土を破壊し続けた。アサド
大 統 領 選 挙 で は、 ク ー デ タ ー を 主 導 し た 軍
10
た革命犠牲者記念碑設立集会で「軍事政権を倒
1年前の秋には、首都ダマスカス周辺、北部
せ、革命の裏切り者(軍、ムバラク勢力、同胞団) の大都市アレッポの大半、中部の第3の都市ホ
18
のトップ、シーシ国防相が大統領選挙に出て勝
利し、就任する可能性がある。エジプトではナ
セル以来、サダト、ムバラクへと軍人が大統領
の政権だった。ナセルは民族解放・非同盟運動
11
要な問題点が多い。
よる同胞団座り込み強制排除に抗議して、辞任
一 方、 選 挙 に 備 え て、 モ ル シ 政 権 下 に 強 硬
反政府勢力支配地を重点に無差別に拡大、都市
42
補できる制度に変えようとしている。
だ
全議席の ・7%を占めた。軍と暫定政権は次
11
進めている。本誌発行までに、暫定政権が選ん
10
民投票で承認・制定された憲法(クーデターで
12
50
≪ 136 ≫
日までに、
急増し始めた。さらに、アサド政権がこれまで
作業は順調に進んでいる。
を開始した。OPCWの発表した日程に従って
約1千㌧の化学兵器全部を廃棄するための作業
CW)が実施機関となり、来年6月
支援してきたレバノンのシーア派武装勢力ヒズ
都市や町の破壊がひどくなり、死傷者と難民が
力が支配し、アサド政権を崩壊か和平交渉によ
ボラが、大挙越境、アサド政権を支援して戦闘
ムスをはじめ全国の6割以上の地域を反政府勢
る解決へと追い詰め始めていた。しかし、政権
全面廃棄をシリアが、しかもこの時点で受諾し
過酷に取り調べ、反政府勢力を殺害
ちは見逃したが、男たちは捕まえて
開始。必死に脱出した女性や子供た
食料、電気、医療を断ち切る作戦を
支配地域を分断、包囲、孤立させて
ら南方のヨルダン国境に至る反政府
がアサドを動かしたのだろう。そして米ロ合意
国のロシアが、おそらくプーチン大統領の決断
と判断したからに違いない。シリアの最大支援
力が優勢になり、アサド政権が崩壊に向かう、
用機と飛行場の大半が破壊されれば、反政府勢
の勝利が予測できる反面、もし米軍の攻撃で軍
ボラの参戦で政権側が優勢に転じており、内戦
シリアとロシアが、シリア軍の空爆強化とヒズ
たことは、欧米にとっても全く予想外だった。
した。この首都周辺作戦の中で、化
がアサド政権を救うことになった。
化学兵器廃棄の責任を国際社会に負ったシ
日、シリア軍はダマスカス
リア政府は「アサド政権が空爆を強化するだろ
う」との反政府勢力側の予測通り、9月以降、
郊外の反政府側の町を、化学兵器で
日、オバ
月末までに首都周辺で五つの町
と議会内の反対が強く、オバマが躊
行の決意を表明した。しかし、世論
化。全市の奪回とともに、トルコからの反政府
反政府勢力支配地域への爆撃と砲撃をさらに強
部のシリア第2の都市アレッポとその周辺で、
を反政府側から取り戻した。 月に入って、北
攻勢を強化、
躇しているなか、9月9日にロシア
勢力への支援ルートを切断しようとしている。
理下に置く」と提案。翌
欧 米 の 軍 事 支 援 の 下、
年
月にカダフィ
部族民兵割拠、暫定政権は弱体
リビア
日、シリ
マ米大統領はシリアへの武力行使決
上の住民が死亡した。同
攻撃、1429人(米政府発表)以
8月
学兵器も使用したのだ。
政 権 側 は 8 月 ご ろ か ら、 首 都 周 辺 の 町 々 か
イスラエルの核兵器に対抗する化学兵器の
側は昨冬を前に、それまで、政権支持勢力のイ
21
府勢力を押し返し始めた。
に加わり、ホムスなどの支配を奪い返し、反政
%程度)住民への被害に配慮して限定し
ていた空軍による地上爆撃を、無差別に拡大、
口の
スラム教アラウィ派(シーア派の一分派、総人
30
が突如「シリアの化学兵器を国際管
10
28
10
11
10
15
決議、国連化学兵器禁止機関(OP
11
2013.12.20
21
12
イギリスの公共放送BBCニュース電子版は8月 日、「シリア内戦
アが受諾を発表。 日には米ソ外相
化学兵器攻撃で数百人殺害」の見出しで、シリア反政府勢力によると、
水曜( 日)早朝、ダマスカス郊外グータ地区の反政府勢力への攻 会談で全面廃棄に合意、米国はシリ
撃で毒ガス弾が撃ち込まれ、数百人が殺された、と報じた。映像は ア攻撃を取りやめた。国連安保理も
喘ぎ身を震わせる住民
21
≪ 137 ≫
政権が崩壊、反政府勢力の連合組織「国民評議
憲法制定から正式政権発足への民主化プログラ
ムがなかなか進まない。その最大の障害は、欧
米の空爆支援を受けて、カダフィ政権を打倒し
た多数の民兵勢力が、武装解除せず、首都トリ
ポリでさえ、近くのミスラタ市の強力な民兵勢
月には、議会がCRPのマルズーキを大
部を中心とした民兵勢力によるカダフィ政権打
に決起したのもベンガジの市民たちだった。東
た。「アラブの春」でカダフィ政権打倒へ最初
月には国民的人気の高い野党政治指導者が暗殺
済の停滞が続き、反政府デモが常態化、今年2
政権がスタートした。しかし、政治的対立、経
統領、ジェバリを首相とするアンナハダ中心の
た。
倒後、西部の民兵勢力も首都に入り、以後、ミ
され、政治的危機が深まった。ジェバリ政権は
偏り、差別されていると強い不満をいだいてい
スラタ民兵をはじめ一部がとどまり、政府と議
総辞職し、政治的対話によって、全主要政党が
カダフィ打倒後、首都はじめ全国の都市で、 参加する新政権を作る努力が、アンナハダ中心
会に圧力をかけ続けてきた。
ゆっくり民主化が進む
イエメン
入していない。
民主化を求める多様な市民活動が始まったが、 に進められている。3万6千人の軍は政治に介
政治勢力間の対立、民兵勢力の圧力が、リビア
一 方、 軍 の 崩 壊 で カ ダ フ ィ 政 権 が 厳 重 に 管
の民主的な国づくりをさまたげている。
理していた莫大な兵器が無管理状態になり、持
年 1 月、 エ ジ プ ト と ほ ぼ 同 時 に 始 ま っ た、
イエメンの民主化決起は、サレハ独裁政権打倒
日には民兵勢力の銃撃で、
たが、全国の民兵勢力と莫大な武器を野放しに
ア空軍への攻撃でカダフィ政権打倒を成功させ
米、 英、 仏 3 国 は 軍 事 介 入 し、 お も に リ ビ
を受けているサウジアラビアはじめ湾岸諸国に
と軍内部の穏健派が離反した。結局、経済支援
きず、多数の死者を出すことを避けた。政権内
が、軍と治安警察による大規模な弾圧を継続で
年前半に憲法改正、立法議会選挙、正式政権の
「 国 民 対 話 会 議( N D C )
」 が 設 立 さ れ、 来
に権限移譲した。
したまま、手を引いてしまった。3国の責任は
スラム主義政党アンナハダが第1党、リベラル
月の制憲議会選挙でイ
する主要産油地域の東部の住民は、石油の富の
せたチュニジア。 年
信記者)
「アラブの春」の発端となった、ベンアリ独 発足へと民主的な国づくりが進みそうだ。
裁政権を打倒した「ジャスミン革命」を成功さ (さかい・さ だお 龍谷大名誉 教授、元共同通
新政権づくりに全主要政党参加
チュニジア
配慮したサレハは辞任し、 月にハディ大統領
11
大きい。
ち出されて、アフリカと中東に拡散した。それ
軍は崩壊し、
新政権は新しい国軍を発足させて、 が、とくに北アフリカで活動する反政府武装勢
月には
をめざした。サレハは決起への弾圧を開始した
月にゼイダン首相が、
、
人の市民が死亡した。しかし市民
月
0といわれる民兵組織を基礎に、政権を維持し
カ ダ フ ィ 独 裁 政 権 は、 全 国 の 部 族、 1 7 0
たちの行動は、その後もひるまず続いている。
少なくとも
いるが、
勢力の即時退去を強く要求、デモを繰り返して
事件も発生した。トリポリの市民たちは、民兵
と民兵の地元の幹部たちとの交渉で解放された
情報機関の幹部が、民兵勢力に誘拐され、政府
トリポリでは
力が居座っている。カダフィ政権時代のリビア
12
民兵勢力を吸収しようとしてきたが、
進まない。 力や国際テロ・グループに広がった。
12
てきた。しかし、第2の都市ベンガジを中心と
11
11
政党の共和国評議会(CRP)が第2党になっ
10
16
分配がカダフィ出身の西部と首都トリポリに
11
10
15
広島ジャーナリスト
会」が暫定政権を樹立した。制憲議会選挙(
年7月)では、リベラル派の国民勢力連合が第
1党、ムスリム同胞団系の正義開発党が第2党
になり、移行政府が発足した。しかし、リベラ
年 月に、議会は元外交官のゼイ
ル勢力とイスラム勢力の対立が表面化、政情が
安定せず、
11
ダンを首相とする移行政権を発足されたが、新
12
11
43
≪ 138 ≫
ンが二つ追加されている。一つはヨットで食
た。耽美的で退廃がにおう映像は、価値紊乱
事する際、フィリップがトムのナイフの握り
者を自称する悪文作家石原慎太郎「太陽の季
節」の登場から 60 年安保までの時代の振れ
幅の中で多くの日本人に受け入れられた。
ルネ・クレマン監督の「太陽がいっぱい」
(仏伊合作、1960 年)である。地中海で放蕩
する富豪の息子フィリップ・グリーンリーフ
アングル
半世紀ぶりにその映画をスクリーンで見
方をいさめる場面。一つは映画の真ん中に挟
まれた魚市場をトムが散策するシーンだ。
■□■
これらは何を意味するのだろうか。物語の
底流にあるものは、階層的な上昇志向―ある
種の飢餓感である。ナイフの握りをいさめる
シーンは、垂直的な階層の位置関係を示唆し
リプレイ(アラン・ドロン)の奇妙な関係。
ている。魚市場の店頭の魚に宿した虚無的な
いつしかトムは、フィリップの暮らしぶりを
視線は、トムの野心を見抜いているかのよう
そっくり略奪することに野心を抱く―。
だ。こうしたシークエンスが結末の挫折に結
地中海に浮かぶヨット、ニーノ・ロータの
びつく。言い換えれば、第2次大戦を経てな
甘美なメロディ。虚無的な顔つきのアラン・
お貴族社会=アンシャンレジームが厳然と残
ドロンと性格俳優モーリス・ロネの演技が切
り結ぶ。偽装に偽装を重ねたトムは逃げおお
せたかに見えたが…。と、こんな感じだが、
半世紀をへて同じ感想をつづっては芸がな
い。この映画を今の時代にどう読みとくか。
□■■
米国人作家パトリシア・ハイスミスの原作
る。そしてトム・リプレイの性格描写にかな
りのエネルギーがさかれている。疑惑を追う
側ではなく、犯罪者の側の視点でストーリー
を組み立てるという(したがって犯人は最初
から見えている)
、ミステリーの常識を破る
設定で、心理小説の趣が強い。トムは映画ほ
ど虚無的ではなく、アメリカ的でアグレッシ
ブな性格に見える。この違いは、活字と映像
というメディアの差異や、
主演であるアラン・
ドロンの個性によるものと考えられる。
ルネ・
なりたい自分になれない物語
凶器はナイフではなくオールによる撲殺であ
では、ヤマ場の犯行現場は普通のボートで、
銀幕の向こう側
(モーリス・ロネ)と貧しい境遇の男トム・
るヨーロッパ社会と、そうでないアメリカ社
会との差異が背後に見える。そうだとすれば、
映画の最後に現れる古びた帆船はフィリップ
の「亡霊」などではなく、戦後もなお階層的
上昇を許さない旧社会の暗喩とも映る。
こうした「なりたい自分になれない物語」
は日本にもあった。飢餓の海峡をいったんは
越えたかに見えながら、秘密の暴露にあって
破綻する「飢餓海峡」
(内田吐夢監督、1965
年)、過去の悲惨な体験を知る人物が目前に
現れたことで音楽家としての名声を失う「砂
の器」(野村芳太郎監督、1974 年)。
■■□
最近では「そして父になる」(是枝裕和監
督、2013 年)が、階層間移動を思わせるストー
リーで注目されたが、登場する二つの階層―
商店主と新興サラリーマン―は、実は垂直の
位置関係にはなく、中間階級あるいは小市民
[1]
階級という水平の関係にある[
。これは何を
クレマンは原作のプロットを借用しながら、
意味するか。もはや垂直的な上昇を断念した
大胆に換骨奪胎することでこの名作を生みだ
ところでしか物語は成立しないという時代の
している。
風潮とも読める。日本社会の「大きな物語の
しかし、最大の違いは結末である。原作で
凋落」[の中で、視野にあるのは私小説的家族
はトムは疑惑を振り切って逃げおおせるが、
状況だけといえるのかもしれない。(真崎哲)
映画では土壇場でどんでん返しが待つ。さら
にいえば、映画には原作にない印象的なシー
2013.12.20
[2]
[1]丸山真男「現代政治の思想と行動」1964 年 [2]菊地史彦「『幸せ』の戦後史」2013 年 月 日付毎日新聞に村上誠一郎元行革担当 垣氏は沈黙したが村上氏は行動した。しかし、
相(自民)のコメントが載った。
「財政、外交、 後に続くものがいない。村上氏は「小選挙区制
自民党タカ派の平和ぼけ
≪ 139 ≫
エネルギー政策など先にやるべきことがあるの
家の良心として言わねばならないことも言えな
では党が公認、カネ、人事の権限を握る。政治
日付毎日)と話す。
くなっている」( 月
月 日の衆
に、なぜ安倍晋三首相の趣味をやるのか」。特
日の党総務会を途中退席、
定秘密保護法への党内からの批判である。村上
氏は
院採決では、党でただひとり棄権した。
特定秘密保護法案
各紙世論調査結果
紙名 日付 賛成 反対
12.2 25% 50%
朝日
11.12 30
42
11.12 29
59
毎日
10.4 57
15
※
読売 ―― ―― ――
11.25 26
50
日経
10.28 35
43
産経 11.19 59.2 27.9 ※
11.25 45.9 41.1
共同
10.28 35.9 50.6
[注1]※の設問は「必要だと思
うか」。その他は「賛成か反対か」
[注2]共同は中国掲載による
して 月 日付中国、斉藤豊治甲南大名誉教授
安 倍 首 相 の「 趣 味 」 の た め に、 原 発、 沖 縄、
貧困と難問が山積する日本列島は振り回されて の「罪刑法定主義に反する」もポイントをつい
26 25
ている。刑罰法規は、何が犯罪にあたり、どん
な刑罰を科すかは「法律で決めていなければな
らない」はずだが、特定秘密は国会ではなく行
政が決めることになっている。裁判では秘密指
定が適正だったかが争われるべきだが、当然被
告・弁護人に秘密内容が知らされることはない。
をかけておかないと、人の活動をいたずらに萎
罰で秘密を守ろうという場合は、よくよく絞り
法律によって「知る権利」が揺らぐと危惧され
月4日付毎日、鈴木秀美大阪大教授の「取
材源証言拒絶権の明記を」は正論だろう。この
残った記事をあげておきたい。
その悪法ぶりを逐一批判するのは、ここでの
役回りではないので避けるが、いくつか印象に
大解釈されていくのが不可避」という。これは
事を増やすために、すべての法は運用段階で拡
ン作家保阪正康氏はここで「(近代官僚は)仕
あこ う し た 法 的 不 備 と と も に、 組 織 的 な「 宿
痾」の問題を取り上げたのが、 月2日付朝日
被告側は検察に対抗できない。
月9日付朝日によると、谷垣氏は特定秘密
保護法について聞かれ「
(当時とは)状況は変
て い る が、 も と も と 憲 法 で 保 証 さ れ、 明 文 化
縮させることになりかねない」―。
わってきている面がある」と答えたという。谷
官僚制の原理だともいう。これに映画監督・作
真崎 哲
11
メディアスクランブル
[1]
の「拡大解釈は杞憂なのか」だ。ノンフィクショ
10
的に整備すべきだ。
同じ法学者の指摘と
[1]「『自分の子どもが殺されても同じことが言えるの
か』と叫ぶ人に訊きたい」
(ダイヤモンド社、2013年)
ある。そんなことより、 家の森達也氏がいう「過剰な忖度」と[「無責任
の体系」(丸山真男)が加われば「組織暴走の
記者の証言拒絶権を法
する必要がないもので
さなければならなかったか、理解に苦しむ。
穴だらけの悪法を、どうしてこんなに拙速に通
日には衆院通過、 月6日に成立した。こんな
日に閣議決定、 月7日に国会審議が始まり
村上氏は、1986年に「国家機密法(スパ いる。特定秘密保護法修正案は 月 日に政府
イ防止法)案」
(廃案)が国会に提出された時も、 から与党に提示され、 日には自公が了承。
谷垣禎一現法相らと反対意見書を党に提出。翌
年には雑誌に意見を表明した。谷垣氏も、同誌
に論文を寄稿した。
17
26
「国政に関する情報は、主権者たる国民に対
し基本的に開かれていなければならない」「刑
10
11
25
22
14
25
22
10
11
12
11
10
11
広島ジャーナリスト
≪ 140 ≫
朝日
読売
産経
中国
17
懇談会」(安保法制懇)が集団的自衛権をめぐ
日 付 朝 日、 軍 事
14
る議論を再開したが、公明の消極姿勢で来春へ
持 ち 越 し た。 こ れ に は 9 月
ジャーナリスト田岡俊次氏の「タカ派の平和ぼ
け危険」が明快だ。「日本は1人だけ泳ぐのが
遅い水泳選手が、ターンを終えたほかの選手た
日付毎日「記者の目」の「憲法
ちと反対方向に泳いでいるようなもの」
とする。
さらに、9月
改正で民意問え」がまっとうだ。集団的自衛権
の行使を認めれば他国の戦争に巻き込まれる事
態も予想され、自衛官から戦闘による死者が出
ることも考えられる。「重い選択の答えを出す
のは国民でなければならない」のは当然だろう。
死ぬのは安倍首相でも安保法制懇のメンバーで
もないのだから。
・石破幹事長の危険な白昼夢
特定秘密保護法案の国会審議が緊迫の度を増
した 月 日、自民党の石破幹事長が自らのブ
月 2 日 付 で 報 じ た。
「単なる
ログで、法案反対の市民デモをテロに例えて批
判した。各紙 が
絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり
変わらないように思います」と書き込み、2日
付で「本来あるべき民主主義の手法とは異なる
ように思います」と修正した。石破氏は、批判
を受けた部分を「撤回」したというが「一般の
人々に畏怖の念を与え、市民の平穏を妨げるよ
い
うな大音量で自己の主張を述べるような手法
は、本来あるべき民主主義とは相容れない」と
10
法案審議に先立って9月 日、首相の私的諮
問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する
日経
毎日
2013.12.20
12
29
石破発言なぜ問題か 民主主義への理解欠く
前知事の懸念 危機情報を共有できぬ
急ぐ自公 これで採決は許されず
12.5
第三者のチェック 唐突で泥縄的な新提案
強行可決 議会政治を壊す暴挙だ
12.6
反対の声を無視 民主主義と人権の危機
12.7 劣化した国会 暴走生んだ数への過信
12.8 民主主義を後退させぬ
10.24 国会はどう機密を共有するか
11.8 後世の検証が可能な仕組みに
11.17 将来の「原則公開」軸に修正を
11.23 与野党の修正案は評価できる
11.27 指定対象絞り「原則公開」確実に
12.5 「監視委」の実効性が問われる
12.8 国家安保戦略の深化につなげよ
10.20 秘密保護法案はさらに見直しが必要だ
11.27 秘密保護法案の採決強行は許されない
12.5 秘密保護の新提案議論尽くせ
12.7 「知る権利」揺るがす秘密保護法成立を憂う
10.22 報道の自由踏まえ成立を
11.22 最後まで丁寧に議論せよ
11.27 成立に向け大きな前進だ
12.6 残念な会期末攻防の混乱
12.8 適正運用で国の安全保て
10.26 保障されぬ「知る権利」
11.19 なぜそんなに急ぐのか
11.27 国民の懸念置き去りに
12.4 テロの定義があいまい
12.6 議論尽くしたといえぬ
12.8 自由な社会守れるのか
12.4
11.18 刑事裁判 「秘密」のまま処罰とは
11.20 与党・みんな合意 まるで修正に値しない
11.22 維新も修正合意 まるで擦り寄り競争だ
11
12.3
スパイラル」が出来上がる。歯止めは必要で、 源・都留文科大非常勤講師)だという。
毎日
成立ありきの粗雑審議
身近な情報にも影
この修正はまやかしだ
11.20
外交の闇を広げる恐れ
11.22 「翼賛野党」の情けなさ
10
11.23 これで採決などできぬ
11.24 自己規制の歴史に学ぶ
11.26 福島の声は「誤解」か
11.27 民意おそれぬ力の採決
11.28 欠陥法案は返品を
12.2 裁きを免れる「秘密」
12.3 石破発言で本質あらわ
12.4 国会が崩す三権分立
12.5 採決強行は許されない
12.6 民主主義に禍根を残すな
12.7 異様な光景の果てに
12.8 憲法を骨抜きにする愚挙
10.21 この法案には反対だ
10.26 国会は危険な本質見よ
11.5 国民の知る権利 制約され生活を脅かす
11.6 国の情報公開 「不都合」隠される懸念
11.7 国政調査権 国会が手足を縛られる
11.8 審議入り 重ねて廃案を求める
11.10 テロ・スパイ捜査 歯止めが利かぬ懸念
11.12 歴史研究 検証の手立てを失う
11.13 強まる反対世論 与党は考えを改めよ
11.14 野党の対応 成立阻止が目指す道だ
11.15 報道の自由 「配慮」では守れない
11.16
11.29 テロの定義 あいまいで乱暴すぎる
12.2 適性評価 民間人監視される懸念
そのブレーキは「一定期間が経った秘密情報を
11.25 ツワネ原則 世界の流れも知ろう
11.26 不十分な審議 強引な採決は許されぬ
11.27 民主主義の土台壊すな
11.28 (参院)論戦スタート 2院制の意義を示せ
最終的に公開するよう義務づけること」(瀬畑
市民の自由をむしばむ
11.12 極秘が支えた安全神話
特定秘密保護法案をめぐる各紙社説見出し
11.8
【注】項目で「特定秘密保護法案」に類するものは省いた。
2行見出しは1行目だけ掲載。 月以降の広島市内版をも
とに作成
10.18 疑問の根源は変わらぬ
10.26 この法案に反対する
10.30 首相動静も か?
11.6 社会を萎縮させる気か
≪ 141 ≫
考えた小手先の対応であろう。
いう認識は変えておらず、国会審議への影響を
HK幹部に要請したと、 年に朝日新聞が報道
安婦」に関する番組で公平、公正にやるようN
各紙は社説で肯定的な評価を打ち出した。国
会で民法改正が成立し規定は削除されたが、改
正案提出へ向けた自民党内の調整が遅れた。保
守的な家族観を持つ議員が「家族制度が崩壊す
日付朝日によると「憲法がムチャ
両院の委員人事可決を受け9日付で「NHKの
裁が言ったら変えなければいけないのか」と
クチャだからこういう判決が出る」
「なぜ最高
日付社
められない」
。現行憲法は「表現の自由」を無
並びにそれを目的として結社をすることは、認
安全保障会議(日本版NSC)の事務局である
を提示」と報じたほか、サンデー毎日が、国家
週刊誌では「週刊金曜日」 月8日号が「安
倍晋三首相、NHK経営委員に『お友達』4人
域踏み込む」と見出しを立てた。
閣法制局長官人事と合わせ「安倍主導人事 聖
とした。3日付日経はこれまでの日銀総裁や内
家族から個人へという流れに拍車をかけてい
やコンビニ店普及による消費の個人化などが、
用形態の変化→非正規雇用による貧困層の増大
るのは時代の趨勢であろう。加えて、近年の雇
日付で「自民 保守派の壁」と伝えた。
戦前の天皇制から象徴天皇制に変わったこと
で、旧来の天皇制を支えてきた家父長制が崩れ
説で「自民党は思い上がるな」と批判、
月
条件で保障するが、自民案には制限がつく。こ
国家安全保障局局長に安倍氏に近い谷内正太
る。「家族の多様化」の背景だ。
月5
れで取り締まれないか、と石破氏は考えたと推
郎・内閣官房参与が就任の見通しであることや
測する。そうだとしたら危険な白昼夢である。
・メディア統制を狙う?
東京五輪組織委員会会長の観測をまじえ「安倍
の秩序を害することを目的とした活動を行い、 道介入』との世論の反発が強まる可能性もある」 いった暴論も出たようだ。毎日は
会長人事に政権の意向が働くことになれば、『報
月
る」と抵抗したためだ。法務部会のやりとりを
3日付朝日、毎日や4日付中国は社説で、秘 した。「政治とメディア」の観点で安倍氏の対
密保護法と関連付け「テロの定義があいまい」 応には疑問符が付く。
報じた
条(表現の自
と批判した。この指摘は正しいだろう。しかし、 そこで 月2日付毎日社説が経営委員人事を
もう一つ重大な懸念がある。自民が昨年4月に 「限度超えた安倍カラー」と批判。朝日は衆参
決めた日本国憲法改正草案の第
10
人は再任)の国会同意人事案を公明に提示、同
た。経営委員の任期切れに伴い、5人(うち1
1日付読売が「交代の公算」と大見出しで報じ
の隠された野望」とワイド記事に仕立てた。
24
人になり、新会長人事には首相
け」とする市民の声を取り上げたのが
月
日
日にあった秋の園遊会で想
民法の規定が「法の下の平等に違反する」と最
月
付朝日だった。
赤坂御苑で
高裁が9月4日に決定を出し、1995年の「合
憲」判例を見直した。
29
庭教師を務めた人物もいる。安倍政権下で任命
された委員は
安倍氏は官房副長官当時の2001年、「慰
31
の意向が反映されるわけだ。
11
・不気味な「保守の壁」
簡潔で格調がある。ところが、自民党の憲法改
12
会長選出には9人の同意が必要だが、新委員は
12
正草案では「家族は互いに助け合わなければな
結婚していない男女間に生まれた子(婚外子)
の遺産相続分を法律上の夫婦の子の半分とする らない」と付け足した。これを「秩序の押し付
12
露骨に安倍氏に近い人物が並ぶ。少年時代、家
るか。仕組みはこうだ。経営委員
人の尊厳」と「両性の本質的平等」をうたい、
11
すと思われる。昨年 月に亡くなったベアテ・
こうした情勢を見越してか、松本氏は 月5
日の定例会見で続投を否定した(6日付各紙)。 シロタ・ゴードンさんの執筆で知られるが、「個
11
人のうち、
11
意したためだ。それがなぜ新会長人事に影響す
24
広島ジャーナリスト
05
来年1月 日に任期満了となるNHKの松本
正之会長(元JR東海副会長)について、 月
31
由)2項にはこんな文言がある。
「公益及び公
11
「ムチャクチャ」とされた憲法だが、 条「家
族生活における個人の尊厳・両性の平等」を指
10
21
24
10
10
≪ 142 ≫
定外のことが起きた。山本太郎参院議員が天皇
に手紙を渡し、直後に記者団に「原発事故の現
状を伝えたかった」と説明した。
これに「天皇の政治利用に自覚がない」(
月2日付読売)
、「礼失する山本議員の行為」(同
産経)などと、保守系メディアを中心に厳しい
批 判 が 出 た。 朝 日 は、
「 厳 重 注 意、 皇 室 行 事 へ
JCJと「広島ジャーナリスト」
日本ジャーナリスト会議(JCJ)は敗戦
から 年後に、新聞、放送、出版などジャー
ナリズムの現場から「ふたたび戦争のために
ペン、カメラ、マイクをとらない」を合言葉
に発足した。広島支部は広島を拠点に活動す
る報道各社の記者らが1967年に結成。所
属企業の枠を越えた共通の表現の場として
「広島ジャーナリスト」を発刊したが、活動
の停滞によって1980年代に刊行が途絶え
ていた。 年近い休止期間を経て、自由な言
論の場の再生をという声が高まり、2010
年7月に季刊誌として復刊した。真実に迫り、
信頼されるメディアを目指す。
10
日付毎日「更
21
月1日付で編集長についた小境郁也氏(
月8日付で突然懲戒解雇となった。9日付
朝日の報道を受けて翌日付各紙が報じたが、朝
日明らかにした。いずれも同じ写真記者の撮影
じ選手の別打席の写真を配信していた。9月
が
ようとしたと疑われかねない例」とした。
日側は「重大な就業規則違反」としただけで理
のプロ野球3試合で、本塁打の写真と偽って同
橋下徹大阪市長の出自をめぐる「週刊朝日」 取材の矛先を鈍らせる」と批判した。
の記事が問題化し、更迭されたのを受けて昨年
このほかにもメディアで働く人間の不祥事が
) 相次いだ。共同通信社は昨年5月から今年7月
月
た。山田健太専修大教授は
皇后の出席のもと「天皇陛下万歳」を叫んだこ
53
由 を 明 ら か に し な か っ た。 な ぜ 処 分 は 8 日 付
とを、
「時の権力が組織的に(天皇を)利用し
12
「主権回復の日」に、安倍首相らが式典で天皇
の出席禁止」という参院の処分が出た翌日の9
30
迭理由、なぜ伏 せる」で「自らに 甘い体質は、
10
日付で「天皇と政治 越えてはならない一線」 ・続くメディアの不祥事
と社説で指摘。山本議員の行動とともに4月の
11
「主権回復の日」前後に、本土の新聞で天皇
出席を「政治利用」と指摘したのは4月 日付
10
と週刊新潮(同)が編集長の「悪質セクハラ」
所の主任研究員が音響設備会社と取引を装い、
月 日付読売が「NHK職員 架空発注か」
と報じ、翌日付で各紙が追った。放送技術研究
日号) で偽装写真は計7枚あり、懲戒解雇となった。
を報じたからである。週刊文春が内容的に詳し
NHKから同社に約279万円を振り込ませて
は、山本議員の行動を取り上げた
月
日経社会面「
『主権回復』式典に天皇陛下 『原
則』から逸脱の懸念」だけだった。沖縄では琉
く、直接問題となったのは女性契約記者へのセ
いた疑い。研究員は百数十万円相当の物品を受
式典』出席と、どちらが
月 日には、番組制作費約1億4千万円を
私的に着服したとしてテレビ朝日の社員が懲戒
16
だったか。翌日発売の週刊文春(
球新報が4月 日付で「天皇の式典出席 政治
利用ではないか」と社説で訴え、沖縄タイムス
クハラのようだ。小境氏は「付き合えば社員に
説で「天皇の『4・
月3日付社
してやる」と迫ったという。就活の女子大生に
け取ったという。懲戒免職となった。
だった。決定的場面を取り損ねたためで、調査
17
関係を迫り5月に懲戒解雇された共同通信の人
天皇の政治利用度が高いのか」と問うた。
日
月9日付で週刊アエラ副編集長から週刊朝
日編集長についた長友佐波子さんは 月 日号
日発売)で就任あいさつを掲載したが、こ
25
お断り
「シリーズ・戦争体験を語る」は
休みました。
解雇された。
21
17
10
10
10
10
森 達 也 氏 が い う「 騒 動 後 に 社 会 と メ デ ィ ア 事部長と大差はない。サンデー毎日も 月
にあふれた言葉は『政治利用』だけではなく、 号( 日発売)で2㌻の記事にした。
『非礼』や『失礼』
、そして『不敬』でした。こ
の国の『内なる天皇制』はこれほど強固だった
15
10
15
こでも前任者の処分理由は明らかにしなかっ
2013.12.20
29
月 日付朝日)が、 (
27
11
28
のかと感じ入りました」
(
実感として迫る。
11
27
11
19
≪ 143 ≫
THE BOOK
いかり
「沖縄の< 怒 >日米への抵抗」(ガバン・マコー
(敬称略)
「原発ホワイトアウト」
(若杉冽著)
マック+乗松聡子著)
特定秘密保護法が強行成立した 12 月6日、経
捨て石にされ、「同盟」に翻弄され、基地に虐
済産業省が新たなエネルギー基本計画の素案を示
げられた沖縄。その姿を浮き彫りにした。
した。民主党政権が掲げた「原発ゼロ目標」を否
沖縄は「劇場的国家」であったという。まず、
定し、原発を重要なベース電源と位置付け、建て
薩摩侵攻によって幕藩体制に取り込まれた時代。
替えや新増設の道を開いた。本書は、安倍晋三政
琉球国は、中国との冊封関係を維持するため「独
権になってから福島事故などなかったかのように
立」を装う一方、江戸上がりの使節団は中国風衣
進む「原発回帰」の舞台裏を霞が関のキャリア官
服を着ていたという。そうして江戸幕府は
「異国」
僚が小説の形をとって描き、自民党や東京電力、
琉球の使節団に忠誠を誓わせた。第2幕は 1972
電気事業連合会、経団連、経産省など政財官の原
年に始まる。施政権「返還」は実は「購入」だった。
子力ムラの暗躍を内部告発している。
「返還」とは名ばかり
電力業界が表向きは
で米軍「占領」が続け
企業の政治献金を廃止
られた。米軍駐留を望
したが、電力会社の資
んだのはアメリカでは
材や工事などの発注先
なく日本自身であった
を組織した親睦団体に
―。日米中のはざまで
受注額の数%を預託さ
たどった歴史を語るの
せる方法で数百億円の
に「劇場的国家」ほど
政治献金を集め、この
適切な言葉もない。
集金・献金システムが、
この言葉は様々な概
構造改革路線でゼネコ
念に波及する。太平洋
ンや医師会の利権が痛
戦争末期の沖縄戦、民間人は軍に「集団死」を強
めつけられるなかで日本で最大最強の利権とな
いられた。
教科書検定問題や大江健三郎
「沖縄ノー
り、日本の政治社会を支配している状況を政財官
ト」名誉棄損裁判でも「軍関与」論争があったが、
の実在人物・団体をモデルに語るという内容だ。
派生する問題として、当時使われた「集団自決」
本書は9月 11 日に発行されたが、その後も原
は軍の役割を過小化してはいないか、という批判
発をめぐる動きは本書に記す原子力ムラの筋書き
があった。この視点に立ち、この書では「強制集
通りに展開している。ストーリーは、雪国の原発
団死」を使う。戦後 60 年余を経てなお虚構性を
が再稼働後の大晦日深夜、敷地外の送電塔が外国
含み、
歴史的事実が確定しない沖縄の現実を見る。
の工作員によって爆破され、ホワイトアウトと呼
米軍駐留も虚構に満ちている。沖縄での米軍の
ばれるような猛吹雪のため非常電源や電源車が機
存在を裏付けるのは日米安保条約だが駐留の主力
能せずメルトダウンが始まるシーンで終わる。
は海兵隊で、日本の防衛にあたっているわけでは
脱原発弁護団全国連絡会の海渡雄一弁護士は
なく、これまでベトナム、湾岸、イラク、アフガ
「フィクションだからと言いわけできるように書
ン戦争に出動した。沖縄の方言でウソを
「ユクシ」
いているようだが、秘密保護法ではこのような方
という。沖縄県民は「抑止」=ユクシ(ウソ)と
法での内部告発も処罰される危険性を帯びてく
揶揄するのだそうだ。
る」と指摘する。秘密保護法が成立した今、福島
沖縄は歴史的に「劇場性」をまとうことを強い
の悲劇を「2度目の喜劇」として繰り返さぬため
られた。そこで生じた虚構のベールを丹念にはが
に、この内部告発をしっかり受けとめなければな
した書だ=北透。
(法律文化社、2800 円=税別)
らないだろう=堺真知。(講談社、1600 円=税別)
広島ジャーナリスト
≪ 144 ≫
THE BOOK
「『幸せ』の戦後史」(菊地史彦著)
社会組織の変容とともに、上部構造である社会
(敬称略)
「アメリカ・メディア・ウォ―ズ ジャーナリズ
ムの現在地」
(大治朋子著)
意識も変化する。この社会意識を手掛かりに戦後
著者は防衛庁(当時)の違法・不正行為を明
史を再構築する。著者によると入り口は三つあ
らかにした調査報道などで知られる毎日新聞記
り、一つは労働、一つは家族、あと一つはアメリ
者。ワシントン支局勤務の4年間、メディアの
カである。援用されるのは経営戦略論、サブカル
動向を幅広く取材した。アメリカの新聞業界は広
チャー、映画、流行歌、文学作品。語られるのは
告収入の激減で記者5人に 1 人が職を失う時代に
「幸せ」あるいは「不幸せ」のかたちである。
入った。インターネット、ソーシヤルメディアの
「第Ⅰ部 壊れかけた労働社会」では、日経連
進展は著しく、新聞社も紙とウエブ課金化との2
のあるリポートを取り上げる。90 年代以降、非
本立てで増収策を探る。
正規雇用シフトを生みだした、
悪名高い
「雇用ポー
今年8月、世界を驚かせたのがアマゾン創業
トフォリオ」
。終身雇用
者 に よ る ワ シ ン ト ン・
=年功序列の破壊を招
ポスト紙の買収だった。
き「能力評価から成果
近年のメディア業界の
評価=成果主義=への
構 図 は、 新 聞 と い う ソ
転換」へと労働現場を
フト系対テクノロジー
向かわせる。人々のさ
系 で あ っ た。 そ の 両 者
さやかな未来=幸せ感
が「 結 婚 」 し た の で あ
が潰されていく。
る。 ウ オ ー タ ー ゲ ー ト
「第Ⅱ章 家族の変容
事件を取材したバーン
と個の漂流」では「豊
ス タ イ ン 記 者 は、 ソ フ
かさを是とする社会意
トと技術が融合して新
識」「階層の上昇という趨勢」に対抗する視線の
存在を見いだす。例えば「キューポラのある街」
たなビジネスモデルを作る試みとコメントした。
アメリカでは「新聞衰退」が論じられながらも、
のジュン(吉永小百合)である。その流れは山田
ニュースの消費量は高まっている。パソコンや携
洋次監督「男はつらいよ」に引き継がれる。
帯電話が加わってニュースに触れやすくなってい
第Ⅲ部は「アメリカの夢と影」
。アメリカが日
るからだ。そこには落とし穴もある。地球の向こ
本にもたらした顕著なものはフォーディズムに端
う側の情報でも瞬時に知ることができるが、生活
を発する大量生産・大量消費の夢である。この消
の質の向上に役立つ地域のニュースは新聞力の弱
費社会も 70 年代には消費の個体化=コンビニや
体で希薄な内容になりがちだ。
ウォークマン=の出現によって変容する。
求められるのは行政、議員らを対象にした調
こうして著者は、戦後史という自画像を、
「豊
査報道である。その役割を担う主役に躍り出よう
かさ」という緩やかだが強固な概念を軸に描き出
としているのがNPOだ。既存の新聞社と連携し
す。労働は豊かさの手段であり、家族は豊かさを
てネットを張り、的を絞った取材で成果を挙げる。
分かち合う場であり、アメリカは豊かさの手本で
著者はその事例を紹介。アメリカの現場記者につ
あったという構図がそこにある。そして「
『幸せ』
いて「大切なのはあくまでジャーナリズムという
に近づくために、戦後の日本人が重ねてきた努力
ソフトウエアで民主主義社会に不可欠。それを守
や苦労や失敗が少しむなしく見える」という苦い
るためにも記者個人の意識、取り組みが重要と一
感慨を残して著者はこの書を閉じている=真崎
人ひとりが強く認識しているように見えた」とい
哲。 (トランスビュー、2800 円=税別)
う=浜風子。 (講談社現代新書、780 円=税別)
2013.12.20
呼称の踏切がある。
「旧軍需部踏切」
。その
呉市のJR呉線吉浦駅近くに変わった
き後に刊行委員会の手で世に出た。
順次出版。戦時篇の中巻は戦後、弘中氏亡
成。「 大 呉 市 民 史 」 と し て 昭 和 篇 上 巻 ま で
日米開戦1年前の 年には、こんな内容の
の 丸、 防 げ ス パ イ 」 な ど 標 語 ま み れ に も。
器 持 つ 敵 よ り も、 姿 な き ス パ イ 」「 護 れ 日
を衝く」などの映画鑑賞が奨励された。「武
に配布された。「スパイは君だ」「スパイ団
はかるたが印刷され、呉署を通じ各防諜団
巻き込まれた。内務省など選定の防諜いろ
「機密」を前に、人々は「防諜」の渦に
先には旧海軍の敷地を引き継いだ海上自衛
隊呉補修補給所・貯油所が広がる。その自
衛隊を国防軍、強兵へと復古させて、戦前
の「軍拡」の失敗を繰り返しかねない泥沼
に 安 倍 政 権 は、 は ま り こ も う と し て い る。
その先触れが特定秘密保護法。民意を押さ
えつけた軍事機密が今また人々の前に立ち
かつて呉での戦艦大和の建造は最高機
ものもある。強力な世界性を有する国際社
交団体のロータリー俱楽部が、世間の疑惑
月
編集後記
異 様 な 光 景 だ っ た。
特集「平和宣言に何を読み取るか」
戦後 70 年 広島の役割は 加戸靖史
首相にぶつけられた長崎の思い 樋口岳大
核兵器禁止条約をめざせ 川崎哲
平和祈念式・8月報道 座談会で振り返る
「国際平和拠点ひろしま構想」を問う
日の自民党本 部。
申し込みはファクス 082-231-3005 かメー
ル [email protected] ▽紀伊国屋書
店広島店、フタバ図書などでも好評発売中
替えで新庁舎に249台もの「防犯カメラ」
た。さて話を今に戻そう。呉市は庁舎建て
て、 各 町 内 会 へ 5 部 ず つ 配 り 回 覧 を 求 め
て い た。 防 諜 パ ン フ レ ッ ト を 自 費 購 入 し
当時の呉市長は相互監視の先頭に立っ
6日、緊急総会を開いて解散を決議した。
運び。対する野党の、共闘さえ組めない無力
をことごとく無視した連日の強権的な審議の
かった。特定秘密保護法をめぐる、市井の声
に例えた▼異様な光景はその日だけではな
の怒りのリポートは、
石破氏を「琉球処分官」
れ、苦渋の会見だったに違いない。沖縄から
普天間移設先として「辺野古容認」をのまさ
わばっていた。拳を握りしめる 議員もいた。
庁舎で最多。市は職員の暴力被害などへの
対応策として必要だと説明しているが、市
民監視に自ら踏み込むことにもなる。折も
折、海上自衛隊からひそかに要請があった
のではないかと、つい勘繰りたくもなる。
(浜風子)
(真崎)
出した結果とはいえまい。
る。これらの政治的光景は、断じて民意を抽
泉ととらえる安倍政権の立ち居振る舞いであ
大の異様な光景は「秘密」の保持を権力の源
翼賛政党であることを暴露した▼そして、最
選択する愚挙まで犯した。維新 とみんなは、
ぶり。民主は参院本会議で、一時「棄権」を
設 置 を 計 画 し て い る。 中 国 新 聞 に よ る と、
5人が並んで座った。どの顔もうつむき、こ
会見する石破茂幹事長の横に沖縄県選出議員
25
広島ジャーナリスト第 14 号
2007年末以降に工事入札した全国 市
を除くために各地で解散が進み広島も9月
ストーン&カズニック、広島で語る
何が起きてもおかしくない 若松丈太郎
豪州ウラン採掘 深刻な影響 P・ワッツ
被爆者とABCC㊥ 相良カヨ
国の「だまし討ち」と闘う 本田博利 11
40
ふさがろうとしている。
密として秘匿され、当局の監視は市民の日
常生活に細かく及んで人々を委縮させた。
横浜弁護士会が1987年に出版した「資
料 国家秘密法」は、呉市民の多くの災難
を紹介している。軍機保護法、要塞地帯法
で花見客の写真撮影違反を憲兵隊が注意。
呉から宮島までの海水浴場を憲兵が巡視。
要塞地帯法の厳重化でとばっちりも。知事
認可だけで、同法の許可を受けない建築に
は撤去を命じることになり、
その槍玉に「住
宅に近接して付属建物二坪の工事に着手し
たのを検挙さる」
。
これらの事例を記録していたのは広島、
呉で記者をした弘中柳三氏。明治以降の地
元新聞から目につく記事を抜き出して集大
28
風訊帖
≪ 145 ≫
安倍政権は軍拡の泥沼にはまり込むのか
広島ジャーナリスト
広島ジャーナリスト第 15 号
▽ 2013 年 12 月 20 日発行
▽発行所 日本ジャーナリスト会議広島支部
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