書評を読む - ヒョーロン・パブリッシャーズ

HYORON Book Review
私のおすすめ この1冊!
一般臨床医が手がける 乳歯列期から目指す
“永久歯列期正常咬合”獲得への道
町田幸雄・関崎和夫 編著
A4 判・168 頁・定価(本体 9,500 円+税)
2015 年2月 18 日 ヒョーロン・パブリッシャーズ刊
有田 信一
長崎県長崎市・ありた小児矯正歯科
日本小児歯科学会専門医指導医/日本矯正歯科学会認定医
■すぐに購入した本書
を積極的に行うべきである.そのた
真に加え,診断の際に重要なセファ
本書『一般臨床医が手がける 乳
めには,一般臨床医のための教本が
ロの計測の数値が掲載されており,
歯列期から目指す“永久歯列期正常
必要であり,本書はその教本として
診断の重要性が強調されている.
咬合”獲得への道』が発刊されたこ
企画された」となる.つまり,
「一
また,治療法や装置の限界にも触
とを知り,すぐに購入した.本書の
般臨床医が手がける」の意味は,
「一
れており,安易な拡大や抜歯につい
タイトル中の「一般臨床医が手がけ
般臨床医でもできる小児への対応
ても警鐘を鳴らしていることは,大
る」「乳歯列期から目指す」
「 永久
(咬合誘導)」ではなく,「一般臨床
歯列期正常咬合 獲得への道」の3
医が行うべき小児への対応(咬合誘
■伝統的で,かつ新しい咬合誘導
つの句に,私の脳が即座に反応した
導)
」だったのである.
本書は,乳歯の歯冠修復,歯髄処
からである.
本書の執筆者をみると,小児歯科
置,そして乳歯義歯をはじめとする
■一般臨床医が手がける?
医,矯正歯科医そして一般臨床医が
保隙装置の項目もあり,いわゆる伝
まず,気になったのが「一般臨床
それぞれの単元を執筆し,小児歯科
統的な咬合誘導の本である.同時に,
医が手がける」というタイトルであ
医の町田幸雄氏と一般臨床医の関崎
MFT や態癖の項目が加わり,新し
る.私は,基本的に
「一般臨床医
(家)
和夫氏が編集を担当する様式で構成
い咬合誘導の教本となっている.
のための」とか,「一般臨床医(家)
されている.企画初期の段階から,
本書は斬新的な本ではない.しか
が手がける」というタイトルは好き
一般臨床医と小児歯科医,矯正歯
し,伝統的な咬合誘導の理念をデー
ではない.多分,一般臨床医と専門
科医が 一般臨床医が手がける咬合
タで表現することを目指した真摯な
医は互いに協力し合いながら,医療
誘導の質を高めたい という意図を
咬合誘導の本であり,町田氏と関崎
の質を高めていく必要があると思っ
もって,企画されたようである.
氏が意図した一般臨床医が手がける
ている私には
「一般臨床医のための」
■データに基づいた症例提示
際の教本になる本である.
という言葉が「一般臨床医でも可能
町田氏には,乳歯列期から永久歯
*
な」という意味合いに聞こえるから
列期に渡る期間に2カ月毎に採得し
早期治療の価値は高いと実感して
であろう.
た模型を元とした約 100 症例分の縦
いる小児歯科医や矯正専門医も少な
本書の序説を読むと,
「なぜ一般
断的なデータがある.そして,町田
くない.私自身も不正咬合の病因や
臨床医が手がけるというタイトルに
氏と関崎氏が主催する町田塾では,
顎口腔領域の成長発達の臨界期を考
なったか」についての経緯が書かれ
これらのデータの活用を目的とした
慮すると,早期治療は効果的である
ていた.この部分を私なりに要約す
活動が行われている.本書の著者の
と考えている.しかし,残念ながら
ると,「不正咬合を最も早く発見す
多くはこの町田塾の参加者であり,
歯科矯正の早期治療を支持する評価
る機会が多い一般臨床医が不正咬合
これらのデータが本書にも大いに活
は定まっていない.本書には,その
に対応することが望ましく,それに
用されている.
ような早期治療の価値を何とかした
は十分な知識をもった者が咬合誘導
症例の提示の仕方では,口腔内写
いという意欲を感じることができた.
いに評価したい.