解剖学・生理学 サブノート 岐阜保健短期大学医療専門学校 東洋医療学科 柔道整復科 2 【解剖学・生理学 基礎】 ≪人体の構成要素≫ ・生物(ヒト)は細胞*)からできている *)細胞 = 生命の単位 ・細胞は分子からできている ヒトは多細胞生物(60 兆個の細胞) ・分子は原子が共有結合*)してできている *)電子を共有することで結合 ヒトは細胞と細胞間を埋める組織からなる * 原子(元素) → 分子 → 細胞 → 組織 → 器官 → 生物 『ヒトを構成する主な元素』 ・酸素(O),炭素(C),水素(H),窒素(N),カルシウム(Ca),リン(P)など 酸素(O)63%,炭素(C)20%,水素(H)9%,窒素(N)5%,カルシウム(Ca)1%,その他 2% 『ヒトを構成する主な分子』 ・水,蛋白質,核酸,糖質,脂質など 炭素を中心にして,酸素や水素や窒素などが結合したものを有機化合物(有機物)という ヒトを構成するアミノ酸や蛋白質,糖,脂質,核酸などはいずれも有機物 ≪細胞の構造≫ ①細胞膜 :脂質二重層(主にリン脂質からなる) ところどころに蛋白質が分布 性質…半透膜 水,脂肪酸,脂溶性の物質は透過させる イオン,グルコース,アミノ酸などは透過しない(通さない) *細胞は細胞膜によって外界と仕切られている ②核 :DNA が含まれる *核小体:リボソーム RNA の合成と貯蔵 ③リボソーム ④粗面小胞体 蛋白質の合成 ⑤ゴルジ装置 :蛋白質への糖の付加や濃縮,分泌顆粒の形成などリソソームの形成 ⑥ミトコンドリア :ATP(アデノシン三リン酸)の産生 *内外二重の膜・クリステ・マトリックス・クエン酸回路 ⑦滑面小胞体 :脂質の合成,Ca イオンの貯蔵,ステロイドホルモンの合成など ⑧リソソーム :細胞内消化・分解 (ライソソーム・水解小体) *その他 ・ペルオキシソーム:酸化作用 ・中心小体:染色体を引き寄せる中心となる ・細胞骨格:a)微細管(微小管) … 紡錘糸を構成 b)中間径フィラメント … 細胞形態を維持 c)マイクロ(アクチン・微細)フィラメント … アメーバ様運動や筋の収縮 ♪解剖学・生理学サブノート♪ 3 # ホメオスタシス:生体の内部環境が一定に保たれていること ♪ ・生命(細胞)を維持するためには細胞外液(内部環境)を一定に保たなければならない ・細胞や器官は,内部環境の恒常性維持(ホメオスタシス)のために働く *からだの外の環境を外部環境という *生物には生命維持機能の他に種族保存機能がある *細胞は細胞外液(内部環境)の中で生活している(皮膚や粘膜除く) 蛋白の合成 *20 種類のアミノ酸から作られる A.核:DNA が含まれる 『DNA(デオキシリボ核酸)』 :遺伝情報が含まれる(原本) ・リン酸,糖(デオキシリボース ),塩基により構成されるヌクレオチドが 二重らせん構造をつくる *塩基:アデニン,グアニン,シトシン,チミン ・DNA はヒストン(蛋白質)に巻きついてクロマチン(染色質)を構成 ・分裂期に染色体としてみえるようになる *染色体(23 対):常染色体…22 対 性染色体…1 対 『RNA(リボ核酸)』 :DNA の一部を転写して蛋白を合成する *塩基:チミンの代わりにウラシル *核小体で合成される RNA 1.リボソーム RNA:リボソームの合成 *核内で合成される RNA 2.メッセンジャーRNA :DNA のコード配列の情報をリボソームへ渡す 3.転移 RNA :蛋白合成に必要なアミノ酸を運ぶ ※RNA のはたらき リボソームでの蛋白合成に関与 リボソーム RNA の合成→ リボソームの合成→蛋白の合成 B.粗面小胞体 ・リボソームの付着した小胞体 ・蛋白質合成の場 C.ゴルジ装置 ・蛋白の成熟・加工・濃縮 ・分泌顆粒の形成 ♪解剖学・生理学サブノート♪ 4 【組 織】 ◆ 細胞 → 組織 → 器官 → 器官系 ◆ A.上皮 組織 B.支持 組織 C.筋 組織 D.神経 *これらの組織が集まって器官を形成する 例えば,胃 組織 ≪A.上皮組織≫ ・単層扁平 上皮:血管やリンパ管 の上皮 ・単層立方上皮:甲状腺の腺上皮,汗腺上皮(特にエクリン腺) 上皮:胃腸 の粘膜上皮 ・単層円柱 ・多列(線毛)上皮:気道上皮 ・移行上皮:腎盤,尿管,膀胱 の上皮(泌尿器の上皮) ・重層扁平 上皮:皮膚の表皮,口腔・食道・肛門管の上皮 (刺激を受けるところ) ≪B.支持組織≫ *いろいろな組織や器官の間を埋める組織 特 徴:細胞がまばらに散在.多量の基質 *中胚葉から発生 分 類:1) 結合 組織 2) 軟骨 組織 3) 骨 組織 4) 血液リンパ B-1 結合組織 ⅰ)線維性結合組織とⅱ)脂肪組織に分類 『b-1-ⅰ 線維性結合組織』 ◇特 徴◇ ・細胞成分(少ない)と細胞外基質(多い)からなる *細胞成分:線維芽細胞,脂肪細胞,肥満細胞,組織球,形質細胞 *細胞外基質:膠原線維,弾性線維,細網線維,組織液,プロテオグリカンなど 細胞じゃない成分・細胞成分で一番多いのは線維芽細胞 ↓ ほとんどの結合組織に存在 ◇分 類◇ コンドロイチン硫酸・ヒアルロン酸:グリコサミノグリカンのひとつ a)密性結合組織 ・多量の膠原線維.線維束を形成して密に配列する ・その他の基質や細胞は少ない.細胞の大部分は線維芽細胞 ・腱,靭帯,皮膚の真皮など b)疎性結合組織 ・膠原線維はまばら.弾性線維や細網線維もある ・液性の基質と多種の細胞が存在 ・皮下組織,粘膜下組織など 『b-1-ⅱ 脂肪組織』 ・多量の脂肪細胞を含む.皮下脂肪 グリコサミノグリカン:2 糖の繰り返し単位から構成されている長い鎖状構造の多糖.大きく 7 グルー プに分類される.コンドロイチン硫酸,ヒアルロン酸,ケラタン硫酸,ヘパリンなど ♪解剖学・生理学サブノート♪ 5 ♪ B-2 軟骨組織 ◇特 徴◇ ・軟骨細胞とそれから産生された軟骨基質よりなる ・軟骨基質:膠原線維・弾性線維やプロテオグリカン 水分を多く含む (ムコ多糖とタンパクが結合したもの) ・血管,神経,リンパ管を欠く ・石灰化されていない ◇分 類◇ a)硝子軟骨:水分多い 例) 骨端軟骨・関節軟骨・肋軟骨・気管軟骨 b)弾性軟骨:弾性線維が多い 例) 耳介軟骨 c)線維軟骨:膠原線維が多い 例) 椎間円板・関節円板 *喉頭蓋軟骨… プロテオグリカン:糖側鎖としてグリコサミノグリカンを有する蛋白質の総称 ◆細胞外基質とは? … 細胞以外の成分.ほとんどの結合組織に存在 ・膠原線維:コラーゲンで構成.張力に強い.弾性はない ・弾性線維:エラスチン・フィブリリン.弾力性がある(1.5 倍くらい) ・細網線維:成分は膠原線維に似る.線維は細く,網目や格子状を形成する. 肝臓・脾臓・リンパ節などの臓器を支える ・その他の成分:組織液・プロテオグリカン・ヒアルロン酸など プロテオグリカン:糖側鎖としてグリコサミノグリカンを有する蛋白質の総称 *コラーゲン:蛋白質のひとつ.30 種類以上ある. Ⅰ型は真皮・靭帯・腱・骨,Ⅱ型は軟骨に多い 血液・神経組織については別項参照 ♪解剖学・生理学サブノート♪ 6 【B-3 骨組織】 ≪骨の役割≫ 1.支持:身体の支柱 2.運動:関節運動 3.保護:内臓諸器官の保護 4.造血機能:骨髄で血球の産生 5.電解質の貯蔵:カルシウム,リンなどの貯蔵 ≪各名称≫ ①関節軟骨 ②海綿質 ③髄 腔 ④緻密質 ⑤骨膜 ⑥介在層板 ⑦外基礎層板 ⑧内基礎層板 ⑨骨層板(ハバース層板) ⑩ハバース管 ⑪フォルクマン管 ⑫シャーピー線維 ≪骨の構造 その 1≫ 『骨組織』… a)骨細胞と b)骨基質からなる a)骨細胞:骨小腔の中に存在し,多数の細長い突起を出す b)骨基質:構造上,緻密質と海綿質に分けられる 「主な成分」 :リン酸カルシウム・コラーゲン・水分など b-1)緻密質:層板構造 「緻密質=骨皮質(皮質骨)」 *主に骨幹 b-2)海綿質:骨梁構造 骨小柱が網目状(スポンジ状)を呈する 小腔は骨髄で満たされる *主に骨端・短骨・扁平骨 ≪骨(緻密質)の構造 その 2≫ 1.骨単位(オステオン):ハバース管 を中心に層板構造を作る(ハバース層板) 2.介在層板:ハバース層板の間隙を満たす層板 3.外・内基礎層板:骨の外・内面に沿って平行に走る層板 4.フォルクマン管 :ハバース層板を横切る管.血管が通る 5.シャーピー線維 :骨膜から骨へ侵入する線維 骨膜と骨組織を固く結合させる ♪解剖学・生理学サブノート♪ 7 ♪ ≪骨の構造 その 3≫ ①骨端:二次骨化点.骨端核 短骨・扁平骨などの辺縁部にも ②骨端軟骨(成長期):骨の長さ の成長が行われる 骨幹と骨端の間 レントゲンに写らない.軟骨性骨化 海綿骨を作る ②’骨端線(成人):骨端と骨幹が接合した痕跡 ③骨幹端:多くの血管が進入 炎症起こしやすい 骨幹の端で太い部分。 ④骨幹:長骨の幹.一次性骨化点 緻密質がメイン #骨膜:骨の表面を包む結合組織.関節面にはない.血管,神経に富む 骨の太さ の成長が行われる.膜性骨化 骨皮質(緻密質)を作る 『骨 髄』 :細網組織のひとつ.長骨の髄腔と海綿質の小腔に存在 *赤色骨髄:造血作用をもつ *黄色骨髄:造血作用をもたない脂肪組織 # 胎児や乳幼児ではすべて赤色骨髄だが,成人では長骨の骨端,短骨,扁平骨のみ ≪骨の形状による分類≫ 1.長骨:両端(骨端)は太く,中央(骨幹)は細い 骨幹の内部は空洞(髄腔)となり,骨髄をいれる ex)上腕骨,橈骨,尺骨,中手骨,大腿骨,脛骨,腓骨,中足骨など 2.短骨:ex)手根骨,足根骨,椎骨 3.扁平骨:ex)頭頂骨,前頭骨,後頭骨,肩甲骨,肋骨 4.含気骨:ex)上顎骨,前頭骨,篩骨,蝶形骨,側頭骨 ♪解剖学・生理学サブノート♪ 8 ≪骨の発生≫ 解剖学 p24 1.膜性骨化 (結合組織性骨化・線維性骨化):間葉細胞が骨芽細胞に分化 ex) 頭蓋骨 (頭蓋底を除く),鎖骨 2.軟骨性骨化 :軟骨細胞が変性・石灰化し,次第に骨に置き換えられる ex) 大部分の骨 ≪骨 化≫ 軟骨性骨化に限る*短骨・扁平骨の構造は骨端と同じ ・一次骨化点:胎生期に軟骨が骨に置き換えられる *骨幹 ・二次骨化点:生後に軟骨が骨に置き換えられる *骨端・短骨・扁平骨 【骨の連結】 1.線維性の連結:①縫合 ②釘植 ③靱帯結合 2.軟骨性の連結:①軟骨結合 ②線維軟骨結合 3.滑膜性の連結(狭義の関節) ・相対する骨端は関節軟骨で覆われ,関節包により包まれる ・関節包内には関節腔とよばれる空隙が存在する ≪関節の構成≫ ①骨膜 ②関節頭 ③関節軟骨 ④線維膜 ⑤滑膜 ⑥関節腔 ⑦関節窩 関節軟骨:硝子軟骨 *成分:軟骨細胞,コラーゲン,プロテオグリカン,水など 血管,神経,リンパ管はない 関節の滑動を助ける,衝撃を和らげる,潤滑性,圧縮力の分散 etc *④⑤を合わせて関節包とよぶ 線維膜:関節包の外層 関節包の補強.一部は靭帯を構成する 滑 膜:関節包の内層 疎性結合組織 滑液のヒアルロン酸濃度:0.3~0.4% ヒアルロン酸の分泌.異物を貪食 ヒアルロン酸:粘性を持つ ★滑液(関節液):血漿濾過液にヒアルロン酸などが加わったもの.関節の潤滑.関節軟骨の栄養 ♪解剖学・生理学サブノート♪ 9 【輸送の種類】 ♪ ≪受動輸送≫ 生理学 p18~19 ・拡散:物質が高濃度の方から低濃度の方へ移動する 例)肺胞でのガス交換 ・浸透:半透膜を介して溶媒(水 )が移動すること 溶質が溶媒を引きつける *細胞膜は半透膜に近い性質を持つ 例)濃度の低い溶液から濃度の高い溶液へ水が移動する. ・ろ過:主に毛細血管壁を介して起こる 『ろ過の定義』 :膜または他の隔壁を通して,その隔絶される 2 液間の 圧差で液体が押し出される過程 *膠質浸透圧:蛋白質(主にアルブミン)による水をひきつける力 毛細血管壁は,水以外に小さな分子やイオンも通すが大きな分子は通さない. ≪能動輸送≫ ・ATP の分解によって生じるエネルギーを使い, 濃度勾配や電位勾配に逆らって行なわれる輸送 例)ナトリウムポンプ:3 個の Na を細胞外へ 2 個の K を細胞内へ ・二次性能動輸送: 【体液・血液の区分】 1.体 液:体重の 60% 生理学 p24・p193~ ・細胞外液:血漿と組織液(リンパ・脳脊髄液・消化液など) ・細胞内液 2.血 液:体重の 8% ・血漿:水・蛋白質・無機塩類など ・細胞成分:赤血球・白血球・血小板 『血漿浸透圧』(電解質で維持) 食塩水と等張(生理食塩水) =290mOsm/l *0.9% 『水素イオン濃度(pH)・酸塩基平衡・酸とアルカリ』 *体液(細胞外液)の pH は約 7.4 細胞内液は 7.2 ・pH=7 を中性とし,値が小さくなると酸性,大きくなるとアルカリ性となる ・酸とは:水素イオン(H+)を出す(与える)物質 ・アルカリ(塩基)とは:水素イオン(H+)を受け取る物質 ♪解剖学・生理学サブノート♪ 10 【血 液】 ≪血漿蛋白≫ 生理学 p24 病理学・浮腫,免疫,循環障害など *主に肝臓 で生成 ・アルブミン:膠質浸透圧の維持,担送機能,栄養機能,pH 緩衝作用 ・グロブリン:免疫機能(γグロブリン) ・フィブリノゲン:血液凝固機能 ※血清・・・血漿からフィブリン(線維素)を除いたもの ≪細胞成分≫ 生理学 p25~ 病理学・ビリルビン代謝,免疫,循環障害など *骨髄 で多能性血液幹細胞からつくられる 1.赤血球:無核.450 万~500 万/mm3 ・主成分:ヘモグロビン(血色素) (鉄を含むヘムと蛋白質のグロビン) ・主な働き:酸素の運搬.他に二酸化炭素の運搬,pH の緩衝作用 新生促進するもの ・酸素解離曲線:Hbと酸素の結合力を表す. ・造血因子:エリスロポエチンなど 副腎皮質・甲状腺ホルモン ・赤血球(ヘモグロビン)の処理:脾臓 *脾臓でビリルビンが形成され,肝臓へ運ばれる 2.白血球:有核.3500~9000/mm3 ・分類:顆粒球…好中球・好酸球・好塩基球 無顆粒球…単球,リンパ球 ・主な働き:免疫機能 ・造血因子:コロニー刺激因子 3.血小板:無核.12 万~40 万/mm3 ・主な働き:止血作用(一次止血) ・造血因子:トロンボポエチン ♪解剖学・生理学サブノート♪
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