豊田厚生病院 臨床検査技術科 Νο.19 平成 24 年 01 月 安静時代謝率(resting metabolic rate : RMR) 適切な食事療法や運動療法や実施するうえで、安静時代謝率(RMR)は基本となる数値ですが、計算式で算出され る値には誤差があるといわれています。そこで当院では呼気ガス分析装置 Fit-2100 を用いて正確な RMR を測定し、 栄養管理や減量指導に活用しています。 安静時代謝率(RMR)とは? 体を横たえてまったく動いていなくても、呼吸をする、心臓を動かす、体温を保つなど、様々な生命活動のため に常に使っているエネルギー(カロリー)のことを RMR といいます。通常1日の総消費エネルギー量のうち、RMR は約 70%を占めています。 RMR 測定方法 ※測定の注意事項 ○検査前の 4 時間は食事、コーヒーなどのカフェイン、たばこを控える。 ○測定中は、眠らずに静かな状態を保つこと。 <方法>①検査前約 10 分間ベッドで安静にしてもらう。 ②患者さんに専用マスクを装着し、完全に密着するように固定する。 ③約 6 分間、安静呼吸をしてもらう。 ◆診療報酬 基礎代謝測定:85 点 呼吸機能検査判断料:140 点 呼気ガス分析装置 Fit-2100 の作動原理 ・①の RMR リーダを被験者の呼気ガスが通ることで、RMR リ ーダの内部のタービンが回転し、その回転数を検出し演算 することで換気量(Ve)を測定します。 ・②の酸素センサで、サンプリングラインを通って取り込ま ディスプレイ ① れた呼気ガスを分析し、演算することで呼気中酸素濃度 (FeO2)が測定されます。 RMRリーダ ② 酸素センサ 処理部 ・吸気中酸素濃度は大気中の酸素濃度 21%を前提とし、吸気 -呼気より酸素摂取量(VO2)を算出します。求められた VO2 プリンタ部 を RMR 演算式にあてはめ、被験者の RMR を算出します。 フィットメイトの RMR 算出方法 RMR[Kcal/day]=(3.9+1.1×RQ設定値)×VO2実測値×1.4 Respiratory quotient(RQ)=VCO2/VO2 fixed at 0.85 RQ:0.85 の場合 6.9624×VO2 実測値 なぜ RMR 測定が有用なのか? RMR は、一般的に身長、体重、年齢、性別から算出(推定値)されますが、同じ年齢、性別、身長、体重の人 でも RMR が異なることがあり、推定値では1日に 500kcal の誤差があるといわれています。仮に 1 日に消費する カロリーよりも 1 日で 500kcal 多く摂取し続けると 36 週後には 12kg 増えてしまうことになります。 Fit-2100 を用いて RMR を簡単、迅速かつ正確に測定!! 個人ごとの RMR に応じた体重管理プログラムを内蔵しており、最適なカロリー摂取量と運動量による無理のな い減量プログラムを作成することができます。 ◆ 個人別ウエイト管理プログラム ・個々のエネルギー消費量に基づき、被 検者に最適な体重管理プランを作成 します。 ・目標体重を設定し、無理なく目標体重 に到達するための摂取カロリー量を 提示。 ・個人のライフスタイルに応じたメタボ リックシンドロームの改善、糖尿病を 患う方の栄養管理、減量指導などに最 適です 目標体重までの経過を予測! RMR 測定の導入によって… RMR 測定を体験した患者の食事療法に対するモチベーションは、従来の推定式を用いた食事療法に比べ高い傾 向にあり、 実際に RMR を測定し求められた目標値は、その精密性だけでなく患者へ科学的根拠に基づいて数値を 提示できることから、今迄以上に深く理解を得られ、治療に積極的に取り組んでいただけています。 更に RMR 測定によるカロリー設定は従来のエネルギー設定に比べて、厳格に管理される傾向があり、食事量に 不満の意見が出ることも予想していましたが、アンケート結果では逆に満足度が高く、栄養指導において RMR 測 定を導入した患者へのアプローチは心理的にも良い効果を得ることができていると考えられます。
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