アピ シリーズは世界の標準法として細菌同定検査をリードしていきます No.5 2004 年 8 月 いつも弊社アピ製品をご愛顧いただきありがとうございます。「api news」では、日頃アピ製品をご利用のお客様に細菌 検査に関する情報をご紹介させていただいております。今回は、“Vibrio vulnificus 感染症”について特集致しました。 ◆Vibrio vulnificus 感染症とは Vibrio vulnificus は海水や魚介類から検出されるグラム陰性桿菌で、主に肝硬変、アルコール性肝炎などの肝障害をも つ患者や、糖尿病、各種悪性腫瘍により免疫力の低下した患者に日和見感染症を引き起こします 1)。Vibrio vulnificus 感染症には①胃腸炎型、②創部感染型、③敗血型の3型があり、特に創部感染型と敗血型は極めて急激な転帰をと り、死亡率も高いため、治療には早期診断が必須です。そのため、本菌の迅速な分離、同定が最も重要となります。本 邦での報告は 1978 年以来 100 症例を超えますが、一般的には認識が低い感染症です1)。本感染症の 90%以上は 7 月から 9 月にかけて夏場に発病することが多く、本邦では西日本、とくに九州に多いといわれています2)。 ◆Vibrio vulnificus 感染症の発症要因 胃腸炎型と敗血型は汚染食品の経口接種によって起きます。胃腸炎型は便から菌が分離されますが、敗血型は腸か ら菌が血管内に入り発病するため、血液や皮膚病変から菌が分離されます。創部感染型は、創部から菌が直接進入す ることによって起こります。発症の要因は、主に肝硬変患者の血清鉄の上昇により、溶血が起き、蛋白質分解酵素により ヘモグロビンが分解され、この鉄を利用して V.vulnificus が急激に増殖するためといわれています1)。 ◆Vibrio vulnificus の生化学的特徴 1) 特徴 形態 備考 グラム陰性桿菌 (やや湾曲した短いバナナ状、あるいはコンマ状の菌体) 集落性状 ①血液寒天培地にて 35℃18 時間培養後、直径 2∼4mm の S 状、 淡黄色のコロニーを形成、周囲に溶血環を呈する ②TCBS またはビブリオ寒天培地では青緑色のコロニー 生化学的 性状 オキシダーゼ(+)、運動性(+)、乳糖分解性(+) 3%塩化ナトリウム加培地できわめてよく発育 8%の濃度では発育が抑制される ※ヒトの感染症に関与する生物型Ⅰは インドール陽性 ※10∼20%に白糖分解陽性株存在 ※腸炎ビブリオとの鑑別 乳糖分解性(−) ◆治療 感受性:ペニシリン、セフェム、カルバペネム、テトラサイクリン等 1) 症状が進行してからの薬剤投与は無効であるため、V.vulnificus の治療は、早期診断と早期の抗菌薬投与が重要です。 最近の研究では、臨床由来株において EM, TC, DOXY, MINO, CP, NA, CPFX に対して高い感受性を示し、ABPC, PIPC, CER, CEZ, CPZ, CTX,CMZ, LMOX, MEPM, KM 等の β−ラクタム系およびアミノグリコシド系薬において耐性 を示す株が認められたとの報告があります3)。 写真1 V.vulnificus のグラム染色像1) 写真2 V.vulnificus のコロニー1) 写真提供:玉名中央病院 検査科 永田邦昭先生 ◆API 製品では V.vulnificus はアピ 20( 品番 20107 )、ラピッド 20 プレート( 品番 20701 )、アピ 20NE( 品番 20057 )、アピ 50CHE( 品番 50430 )、ID 32 E アピ( 品番 32407 )、ラピッド ID 32E アピ プレート( 品番 32700 )、ID 32 GN ア ピ( 品番 32107 )のデータベースに含まれています。※V.vulnificus の 10∼20%に存在する白糖分解菌は他菌種 ( V.alginolyticus, V.cholerae, Aeromonas hydrophila, A.sobria 等 )と誤同定されることがありますのでご注意下さい。 Rapid ID 32 E アピ プレートで V.vulnificus を試験すると下記のような結果となります。 Rapid ID 32 E V3.0 Profile:02421066703 Vibrio vulnificus %id=99.9, T=1.00 ※引用・参考文献※ 1)「Vibrio vulnificus 感染症」 労働福祉事業団熊本労災病院 佐藤泰彦・森口美琴 検査と技術 vol.31 no.9 2003 年 9 月 p774-779 2)「Vibrio vulnificus 敗血症型の1救命例」 医療法人八木厚生会八木病院外科 八木博司 感染症学雑誌 第77巻 第3号 3)「Vibrio vulnificus 感染症に関する基礎的研究:環境由来株とヒト臨床由来株の血清型別状況および薬剤感受性 試験」 麻布大学環境保健学部微生物学研究室 大仲賢二 感染症学雑誌 第78巻 第2号 ◆おかげさまで API は生誕35周年をむかえました!◆ 写真3 API の原型 フランスの生物学者 Dr. J.ビシア( Jean Buissiere )により原型が考案さ れ、その画期的デザインと簡易性、迅速性が細菌同定の分野に大変革をも たらした API は、1969 年 7 月に誕生してから今年で 35 周年を迎えました。 現在、API の同定可能菌種は 550 種を超え、世界中で細菌同定のスタンダ ードとされています。API が誕生したフランスのラ バルム( La Balme )の工 場では、現在も細菌学に関する研究、開発が進められると共に、多くの製 品が製造されています。 ☆ 「api news」に関する皆様からのご意見・ご感想をお待ちしております。☆
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