危機介入ー医療に求めるもの 自死遺族支援の立場から

危機介入ー医療に求めるもの
自死遺族支援の立場から
2015年3月15日
第2回多職種間学際シンポジューム
医療安全の視点からの患者の自殺予防
京都大学医学部芝蘭会館 「稲盛ホール」
こころのカフェ きょうと (自死遺族サポートチーム)
代表
石倉 紘子
自己紹介
夫が42歳の時、自殺
「こころのカフェ きょうと」設立
1000人に聴く実態調査
遺族の生きにくさ
遺された人の感情1
なぜ
自責
怒り
悲しみ罪悪感
遺された人の感情2
受け入れられない
遺された人の感情3
語ることができない
・身体の不調
・家族内での孤立
・社会的に孤立
・情報不足
苦しい
死にたい
遺族の生きにくさ
社会の自殺に対する考え方
偏見 誤解 無理解 先入観
■自死した人について
■遺族にたいして
・遺族は、社会的にも家族内でも孤立している
・遺族は様々 - 立ち直りも様々
遺族は様々 立場・関係性の違い
抱えている問題の解決
○どのような状況で 手段で
○鉄道の賠償交渉
○多重債務
○住宅、親権、遺産問題解決などなど
○どのようなつながりの人を
○子どもが抱える問題は大きい
○社会資源・情報を提供
遺族支援
-遺族が抱えている問題は複雑で様々
○生活していかなければならない
○こころのケア→医療現場での支援と情報発信
○身体の不調→ 医療現場での支援と情報発信
○生活の安定⇔心のケア→医療現場から各資源の情報
発信
○情報を把握できることは生きていける道を見出せる
○生活支援+心理的ケア+情報
○遺族支援は抱えている問題の解決につながらなけ
れば!!
○わかちあいの会、語り合いの会は遺族支援の一つ
つらい日常生活から →わかちあいの会、語り合い
の会を経て→日常生活に戻る
語り、分かち合うことの意義
○辛い、苦しい体験は自分だけではない事を実感できる
○繰り返し話すことで自分の感情を整理できる
○人の体験を聞くことで、自分を客観的に見られる
○泣き、怒り、感情をありのままに吐き出すことで感情を
コントロールできるようになる
大切な人はいないけれど、
決して忘れることは無いけれど
今後の人生を生きて行こうと思える
「こころのカフェ きょうと」では
(カフェ=いろんな人が寄り集まる場所)
○安心して語り合い、分かち合う時間と場所を提
供する
○スタッフは一緒に生きて行くための手助けをす
る
○同じ時代をともに生きていく
○様々な情報を発信する、つなげる
○未遂者支援、遺族支援は自殺予防につながる
こころのカフェ きょうとで
今後も行っていくこと
• 自殺予防 自死遺族支援 未遂者支援
• 全国各地での分かち合い立ち上げの支援
• 講師派遣
• ファシリテーター派遣
分かち合いの会・フリースペース①
○分かち合いの会
○毎月第2土曜日 午後1時半から3時半まで
○昨年からは年に2回程度 夜の例会も開催
会場 ハートピア京都 参加費500円 会場費の一部他
○亡くなった人 遺された自分について語り、聞き、生き
ていく力を取り戻していける場
○フリースペース 京都市こころの健康増進センター
毎月第1、第3木曜日 午後1時半から4時まで
○参加費200円お茶、お菓子代
分かち合いの会・フリースペース②
○悩みや相談ごと、育児の悩みや趣味の話など、お茶
を飲みながら、くつろぎながらのんびり話せる場所
○初めて参加する人は個別にしっかり聞いてもらえる
ので最適な場所でもある。
○シンポジウム【四者共催 ・京都市 ・京都府 ・自死
自殺相談センター・こころのカフェきょうと】
○毎年12月
遺族交流会 講演 コンサート
(今年は 12月7日 日曜日)
開設して10年
〔2006年2月〕
○スタッフは18名 遺族も遺族でない人も
○一般ボランティアで運営されている
○月に1回の分かち合い、月に2回のフリースペース
○2007年11月京都市センターでフリースペース開設
○年に1回交流会、コンサートなど楽しいことも
(2014年は12月6日)
○年に1回京都府、市、「こころのカフェ きょうと」と
三者共催のシンポジウム(2015年は9月20日(土))
今まで参加した人の地域
京都府 京都市 滋賀 大阪 兵庫 愛知 岐阜 長野 三重 奈良
和歌山 愛媛 富山 福井 石川 新潟 島根 山口 広島 宮城
福島 北海道 東京 埼玉 神奈川 埼玉 千葉 茨城
○延べ1080人(73回) フリースペースは延べ1040人
○実数 1000人
○女性が多い(亡くした人は伴侶 子 親 兄弟姉妹)
○子どもを亡くした方が多い(13歳から50代まで子)
○男性遺族の参加少ない
○地元だと来れないが遠くだから来られる
○地元には行きやすい会が無いから来る
○最近の傾向 亡くした直後に参加
参加しての感想
○自分一人ではないことがわかった
○誰にも非難されないので安心して話せた
○遺族がスタッフをしているので安心した
○遺族ではないスタッフがじっくり聞いて、涙を
流してくれて、わかってもらえて嬉しかった
○自分の体験が何か役に立てばよいと思う。
失敗も様々
○報道との関連
○グループ分け
○スタッフの進行
○行政との連携不足で残念なことに
○その他
今後の課題
行政の仕事
○自殺予防、遺族支援、未遂者支援、うつ病等の啓発活動(地区町村でも)
○情報を発信 相談窓口の充実とリーフレット作成、個別配布
○産業と連携して職場の健康面のケアと予防策 その他
民間団体としてできること
○遺族が求めているもの、抱えている問題を把握し行政や関連機関につなげる
(例 弁護士、賠償問題の同行支援 シェルター、 保育が必要など。)
○分かち合い、語り合いの場所提供や、遺族の多様性なニーズに応えること、
それらに応じる工夫。(会の必要性を感じている遺族が参加しやすい曜日、
時間等、)
○京都では、「こころのカフェ きょうと」フリースペース開室、センターとの連携
○スタッフ研修
地域でできること
民間、地域ができる事
○いろんな立場の人、民生委員、社会福祉協議会、ボランティア
団
体、学校、行政の資源などさまざまな方々が横の連絡を取り合っ
て、具体的に優しさを行動として、つなげてくれる
○いのちの電話では電話での危機には対応してくれる
(年度末や、役所が開いていない時間にでも対応してくれる。
=命をつなげる 情報提供が少ない、具体的な支援ができない)
○医療現場での支援は大きい→命を支える現場→心身ともに支
える(気づき 声かけ 支援へ→資源につなげる)
○寺社は重要な社会資源(人的、空間的、地域的)
○一人の人を=全人的に支える
○地域の生きる力=地域の見守り、地域の気付き、地域の支え
聞き取り調査を通して見えてきたこと
(NPO法人ライフリンク)
○実態白書2008第1章より
○自殺の危機経路
○危機の進行度
○危機の複合度
○地域特性ー具体的対策が立てられる
〈例 被雇用者の自殺が多い地域の対策など)
日本の自殺の実態
【1998年から2012年まで年間自殺者3万人超
2012年から2014年 3万人を切る】
【交通事故死者数の5倍以上】
【イラク戦争で亡くなった米兵の10倍】
【自殺による深刻な影響 国内で毎年200万人】
【自殺死亡率 米国の2倍、英国の3倍】
自殺対策基本法(2006年6月成立)
第1条 目的
この法律(自殺対策基本法)は、近年、 我が国
において自殺による死亡者数が高い水準で推移し
ていることにかんがみ、自殺対策に関し、基本理念
を定め、国及び地方公共団体等の責務を明らかに
するとともに、自殺対策の基本となる事項を定める
こと等により、自殺対策を総合的に推進して、自殺
の防止をはかり、あわせて自殺者の親族等に対す
る支援の充実を図り、もって
国民が健康で生きがいを持って暮らすことのでき
る社会の実現に寄与することを目的とする
国・地方公共団体の基本的施策
① 自殺の防止等に関する調査研究の推進並びに情報の収集、整
理、分析及び提供の実施並びにそれらに必要な体制の整備
② 教育活動、広報活動等を通じた自殺の防止等に関する国民の
理
解の増進
③ 自殺の防止等に関する人材の確保、養成及び資質の向上
④ 職域、学校、地域等における国民の心の健康の保持に係る体制
の整備
⑤ 自殺の防止に関する医療提供体制の整備
⑥ 自殺する危険性が高い者を早期に発見し、自殺の発生を回避す
るための体制の整備
⑦ 自殺未遂者に対する支援
⑧ 自殺者の親族等に対する支援
⑨ 民間団体が行う自殺の防止等に関する活動に対する支援
自殺対策支援センター
NPO法人ライフリンク
2007年4月から2010年2月まで
(2008年7月中間報告)
• 遺族523人に聞いた
• 亡くなった方の生前のご様子
• 遺された方のその後のご様子
• 2013年2月 自殺実態白書2013発表
職場環境
の変化
「1000人実態調査」から見えてきた
自殺の危機経路
DV
犯罪被害
アルコール
問題
職場の
人間関係
事業不振
被虐待
過労
仕事の
悩み
いじめ
失恋
DV
性暴力
身体疾患
失業
進路に
関する
悩み
負債
子育て
の悩み
家族の
死亡
ひきこもり
病苦
うつ病
生活苦
非正規
借金の
取立苦
雇用
介護・
看病
疲れ
家族の
不和
精神疾患
自殺
高校中退
自殺はプロセスで起きていて、
その背景には平均4つの要因がある
○経路 例
○失業→生活苦→多重債務→離婚→うつ病→死
○職場のいじめ→人間関係の悪化→うつ病→死
○介護疲れ→過労→身体疾患→うつ病→死
○性的虐待→うつ病→離婚→多重債務→死
○いじめ→学業不振→学内の人間関係→進路の悩み→
死
○しかし、対策がプロセスになっていない
○平均4つの機関の連携、4つの支援策の連動が必要
○現在の対策は「点」でしかない→
ライフリンク 清水康之氏より一部引用
安心して生きることができるためには、
どんな社会ならいいの?①
一緒に考えましょう!!!
○働き方を考えてみませんか?
○家族とのすごし方を考えてみませんか?
○働く人の命が守られるために企業に強制力
が強い労働者保護法制を作る準備をしませ
んか?
安心して生きることができるためには、
どんな社会ならいいの?②
〈今後の課題)
○子ども、学生たちが、喜んで学校に行き友達をたくさん作って意欲的に学び、
楽しく
遊べる場所を保証し、人間として生きる力を養う教育を考えてみませんか?
○こころや身体にハンディを持っていても自分らしく生きる事のできる社会を考
えせんか?
○高齢者が安心して年を重ねられる社会について考えてみませんか?
○母親父親が安心して楽しみながら子どもを生み育てる環境を整えませんか?
○心を育て、生きる力をつける自然を、さらに豊かなものにして次世代に伝え
ていく努力をしませんか?
○自殺は、ゼロにすることは難しいですが、減らすことは出来ます。
みんなで考えましょう!! ~生きごこちのいい社会を目指して~
どうしたら実現するでしょう!!!
サバイバーチーム(自殺後に残された家族、
未遂者も含む)たちによる『権利宣言』の概要
私たちには次の権利がある
・罪責感から自由である権利
・自殺の責任を否定る権利
・自分の感情を表現する権利
・官憲、家族から疑問について説明を受ける権利
・希望、平和、尊厳を維持する権利
・自殺を理由に批判されない権利
・カウンセリングやサポートグループからの支援を受ける権利
・新しい出発と生きる権利、他
・(自殺の権利と遺されたものが悲しまない権利という相反する二つの権利があ
る。しかし、自殺の権利を主張して自殺を思い巡らせている人は、遺されるであ
ろう家族の、又恋人の、さらにはあなたを愛している、多くの周りの人々の悲し
みについても想像力を持って欲しい。)カッコ内一部石倉
・Jackson, Jeffery:The SOS Handbook for Survivors of Suicide, American
Association of Suicidology,2003
参考
アメリカの自殺予防学会
○希望を持って生きることができる社会になるために
○ひとりの絶望と命を支えるために
○関係者全員が総力挙げて取り組むことで、社会は変わるので
はないでしょうか?
○死ななくてもいい社会になるために、
智恵を出し合い、実現に向けて行動しましょう。
ご静聴有難うございました