乳頭異常分泌液中 CEA 測定が有用であった症例

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乳頭異常分泌液中 CEA 測定が有用であった症例
◎浅川 美保 1)、保科 ひづる 1)、貝塚 真知子 2)
諏訪中央病院 1)、諏訪中央病院 外科医長 2)
【はじめに】乳癌発見のきっかけとなる症状の多くは乳房
頭異常分泌は引き続きみられたが生検等の検査は希望され
内の腫瘤(しこり)であるが、非触知腫瘤像非形成性乳癌
ず、3~6 ヶ月おきの経過フォローで変化はみられなかった。
(非触知乳癌)も 5~10%存在する。乳頭異常分泌は、非
乳頭分泌液中 CEA 検査を実施し、結果 1000ng/ml と高値を
触知乳癌の唯一の症状であるといわれており、早期乳癌発
示した。1000ng/ml 以上を陽性とした場合の乳癌における感
見の手掛かりとして重要な所見のひとつである。また、乳
度は 59.6%、特異度は 90.3%、陽性反応的中率は 91.2%(文
頭分泌液中の CEA は、マンモグラフィや乳管造影、細胞診
献より)であり、悪性を強く疑ったためマンモトーム生検
などでは診断が困難とされる非触知乳癌の診断に有用であ
等精密検査を受けることに同意された。生検結果は、「ほ
ることが報告されている。今年から、当院で乳頭分泌液中
とんどが非浸潤性乳管癌(DCIS)であるが、一部に粘液を
の CEA 測定キット(ラナマンモカード CEA)を導入し、
伴う浸潤巣を認める」との診断にて、左乳腺部分切除術が
有用であった症例を経験したので報告する。
施行された。術後病理結果も同様であった。
【方法】H27 年 1 月~6 月までに乳頭異常分泌を主訴に来
【考察】ラナマンモカード CEA の利点は、検体採取や操作
院しラナマンモカード CEA を使用し検査を行った 9 例中
が簡単で患者への負担が軽くわずか 15 分で判定ができるこ
の高値を示した1症例について報告する。
とである。今回の症例は、乳頭分泌液中 CEA 高値を契機に
【結果】乳頭分泌液中 CEA は 9 例中 8 例が 100ng/ml 以下
さらなる精密検査の必要性を患者に説明ができ、DCIS の早
であった。症例は、60 歳代女性。H23 年に血性の左乳頭異
期発見につながったと考えられる。乳頭異常分泌 CEA の測
常分泌を主訴に来院された。超音波検査にてびまん性に低
定は、画像検査では得られない非触知乳癌の診断をすすめ
エコー域を認めるのみで、乳汁細胞診にて腫瘍細胞陰性、
るために有用であった。
マンモグラフィ検査にて有意所見なしであった。血性の乳
【連絡先 0266-72-1000】