地域包括ケアシステムのコアになる「総合診療医」

地域包括ケアシステムのコアになる
「総合診療医」
前野哲博・筑波大学医学医療系地域医療教育学教授の
「全国大会記念 茨城プライマリ・ケア懇親会」
での講演より
昨年 12 月 6 日、土浦市内で開かれた「全国大会記念 茨城プライマリ・
年くらいかかります。つまり、端的
ケア懇親会」で、前野哲博・筑波大学教授が「暮らしをサポートする地域
に言うと10 年前にあたる2015 年
医療」というテーマで講演された。ここでは、講演の中から、総合診療医
に始めないと間に合わないのです。
に関する部分の要旨を紹介する。
では、それをどうやって進めて
いくか。これからの医療は地域
◆
での暮らしに重点が移っていき
いま、
「総合診療」が脚光を集めて
療人を計画的に養成していかなけれ
ます。地域医療とは、一言でい
います。その背景には、これから急
ばいけません。
えば「暮らし」です。人々が生活
する場にある医療、予防、保健、
速に進む超高齢社会への対応があり
翻って大学の医学部はどういうとこ
ます。同時に新しい専門医制度改革
ろでしょうか。附属病院は大学の教
健康増進、福祉、生活支援、介
が 2 年半後に迫っており、医師はそ
育の場でありながら、特定機能病院
護、さまざまな問題が絡んできま
れぞれの診療科の体系的な教育を
として位置づけられています。特定
す。地域で住み慣れた家で、普
受けて、それぞれの専門医になるこ
機能病院は特定の機能しか有しない
段の暮らしの中で安心して暮らせ
とがシステム化されます。そうすると、
病院であり、その機能の中には地域
るための、いわゆるヘルスケアプ
ますますプライマリ・ケアの担い手が
包括ケアとか、患者をまるごと診ると
ロフェッショナルとしての関わりが
いなくなってしまう危惧があります。
か、継続的に診るといった要素は入っ
総合診療です。
総合診療と言うと、
高齢化が進むと、専門医が専門領
ていません。つまり、大学病院は地
よく鑑別診断、NHKの「ドクター
前野哲博教授
域だけ診ていれば良いという時代で
域医療を教えられる病院ではないの
G」のようなイメージで語られることが
のために教育を受けた人ではなくて、
はなくなります。地域包括ケアシステ
です。これは機能上やむを得ないの
多いのですが、それは総合診療のご
そういうことが好きで、そういう能力
ムは、
一言でいえば、
人々は病気を持っ
です。専門医制度が大きく変わると、
く一部にすぎません。
に長けておられて、そして患者を放っ
ていても地域で医療や介護、支援を
ますます総合診療能力がつきにく
くな
総合診療、プライマリ・ケアを実
ておけない人がいつの間にかやって
受けながら暮らしていくことです。そ
りますから、地域包括ケアのコーディ
践していくキーワードは多職種連携で
いるというところがあります。今後は、
して、どうしても必要な時だけ病院に
ネートを行う医師を最初からその目的
す。多職種連携はどの医療領域で
すべての医師がそのことを理解して
入院する。病院も徹底的に機能分化
で養成していかなければいけません。
も重要で、手術室での多職種連携、
実行に移せるよう、きちんと体系的に
が進み、急性期医療が済んだら今ま
それが総合診療専門医です。
病棟での多職種連携と、いろいろあ
育てていかなければなりません。そ
でよりもより早く地域に戻す形になっ
その養成は当然、地域でしかでき
りますが、地域というのはもっと職種
のためには多職種に対する理解や尊
ていきます。このような時代には、す
ません。2025 年に戦力となる人材が
が広く、もっと複雑に込み入っていて、
敬も非常に大事ですが、リーダーシッ
べての医師が総合診療的な視点を持
育っているためには、その5 年くらい
もっと幅広くて、ある意味で高度な連
プや組織マネジメントといったスキル
つ必要がありますが、とくに地域包
前には教育が整っていなければいけ
携が求められる領域です。今、多職
もきちんと教育に中に取り入れていか
括ケアシステムのコアになっていく医
ないし、その教育を整備するのにも5
種連携に取り組んでいる先生方はそ
なければならないのです。