大邦法律速報-2015年11号

大邦法律速報
DeBund Newsletter
<2015 年 11 月号· Executive Summary>
進入本期 Newsletter
ビックネームの「コカ・コーラ」と「ペプシコーラ」が米国でコーラの名称とコーラのボトルの形を巡って知財紛
争が勃発したとしたら?それはあり得ない話なのでしょうが、中国では、お茶の飲料ビジネスで、そのような類
の係争事件が、今、起こっています。中国では両方とも誰でも知っているプランドですが、薬用成分を含む、
広州の伝統的な甘みのあるハーブティーである涼茶の「王老吉」と「加多宝」の間で紛争が発生し、現在、最
高裁で争われています。
涼茶の「王老吉」は広州を発祥の地とし、その後、商標権は、広州薬業集団に引き継がれました。他方、19
90年代に香港の加多宝社が「王老吉」の商標のライセンス許諾を受けて、中国全域で多額のマーケティン
グ・コストを投入して、「王老吉」をベストブランドに育て上げ、特徴あるデザインを付した赤色の缶が中国全国
の消費者の間で広く浸透しました。ところが、2010年に商標ライセンス契約の期限切れと共に、ライセンス料
の額について紛争が発生し、両者は喧嘩別れをしました。結果としては、商標権者の広州薬業集団は「王老
吉」のブランドを取り戻し、赤色の缶で、自社販売を開始しました。これに対し、「王老吉」のブランドを失った
加多宝社は、従来の特徴あるデザインが付された赤色の缶に「加多宝」のブランドを付けて同様の味の涼茶
の販売を継続。昔、日本でリポビタン D の宣伝が華やかりし時代がありましが、それを遥かに上回る規模での
テレビ宣伝もふくめ、巨額のコストを投入して、「王老吉」から「加多宝」へのプランド名称の転換作戦を展開し
ました。ブランドについては、一方は「王老吉」、他方は、「加多宝」と異なりますが、両者が特徴あるデザインと
赤色の缶を共通して使っており、このことが、知財紛争を惹起しました。さて、裁判は今後、どのように展開し
ていくのでしょうか。「加多宝 vs 王老吉、商品パッケージの無断使用紛争に関する考察」では、この最高裁で
の争点を論じた上で、今後、ブランドを軸に中国ビジネスを展開するに企業に対して、留意すべき諸点につ
いて問題提起をしています。
中国では、経済の発展を踏まえ、外国人就労者へのニーズも年々、変化していく中で、外国人就労者に対
する中国の労働関係法規の適用問題が重要な課題となって来ています。経済発展の段階が異なる各省の政
策の影響を受けている面があり、その取扱いが、各省によってまちまちです。上海市では、外国人就労者の
管理を図るために、先ず、「就業証」の取得が必要とされ、中國労働関係法規の下での一定の保護が与えら
れ、また、会社等と就労者との間で個別に締結される労働契約に基づき、就労者の権利・義務が確定される
としています。「中国国内で就労する外国人に関わる労働関係法令の適用問題に関する考察」では、外国人
就労者への法適用の概観を説明の上、今後の課題について述べています。
以上
ご提示:大邦法律速報の版権は上海大邦法律事務所に帰属しています。ご興味のある皆様方を中心にご参考まで
にお送りさせて頂いてます。News Letter 中の文章は、弊事務所弁護士の正式な法的意見を提供するものではあり
ません。リーガル・サービスの提供が必要な場合は弁護士へその旨具体的にご相談下さい。お問い合わせ、配信の
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⿻IP in China
Summary
加多宝 vs 王老吉、商品パッケージの無断使用紛争に関
する考察
(by 楊鴻)
2014 年 12 月、広東省高等裁判所は、加多宝社と広州医薬グ
ループ及びその子会社がお互いを相手取って、提起した二件の
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商品パッケージの無断使用を巡る不正競争訴訟に対し、加多宝
社に対して関連商品パッケージの使用の差止及び1億5千万元
DeBund Newsletter
の損害賠償の支払うを命じる一審判決下した。今回の紛争事件
-------------------------
は大きな反響と議論を巻き起こしている。本稿ではその問題の
2015.11
No.113
核心となる商品パッケージの権益の帰属について、考察を行う。
…… 「全文」
⿻労働人事
中国国内で就労する外国人に関わる労働関係法令の適
用問題に関する考察
(by 孫薇)
目下、中国で施行されている労働法規の中、
「労働法」、
「労働
契約法」、「労働契約法実施条例」は法的地位が最も高い国家的
レベルの法律である。中国国内に就労する外国人は、上記の中
国労働法律の規定を全て、適用することができない。司法実務
から見れば、外国人就労者に関わる労働関係法令の適用は各地
区によって、大きな差異が存在すると言える。…… 「全文」
(表 題 をクリックすると全 文 が
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個人所得税の新政策を導入
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2015. 11. 01
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IP in China
加多宝 vs 王老吉、商品パッケージの無断使用紛争に関する考察
文/楊鴻
(上海大邦法律事務所)
目 次 に戻 る
飲料の商品パッケージの無断使用に関する不正競争事件に関し、2014 年 12 月、広東省高等裁判
所は、加多宝社(商標の使用権者)と広州医薬グループ及びその子会社の王老吉大健康社(商標
権者)の両者がお互い相手に対して提起していた二件の訴訟に対し、一審判決を下した。商標の
使用権者である加多宝社を原告とする一件目の訴訟においては、同社の請求が全て、却下される
判決が下された。商標権者である広州医薬グループを原告とする二件目の訴訟においては、加多
宝社に関連商品パッケージの使用の差止及び1億5千万元の損害賠償金の支払いを命じる判決
が下された。一審判決を不服とする加多宝社は、最高裁に上訴した。最高裁は 2015 年 6 月から、
法廷審理を始めているが、現時点では、未だ最終判決が下されていない。今回の紛争事件は中国
で大きな反響と議論を巻き起こしている。本稿では、事件の概要を紹介すると共に、今回の紛争
事件の問題の焦点となっている商品パッケージの権益の帰属について、検討する。
一、 事件背景
1988 年より、広州医薬グループの前身である広州羊城滋養品工場は、中国の商標局に、数種類
の飲料商品に対し、
「王老吉」の文字及び図形商標を出願、登録した。1995 年から 1997 年まで、
商標等の権利者である広州医薬グループの前身である羊城薬業は、鴻道グループと「王老吉」商
標の使用許諾契約及び補充契約を締結し、鴻道グループが「王老吉」商標を使用して赤色の紙パ
ック及び缶入りの王老吉涼茶を生産することを許諾すると同時に、自社が以前から生産、販売し
ている緑色の紙パックの王老吉涼茶を引き続き、生産、販売することができ、両者は、二種類の
商品について夫々、異なるパッケージを使用する旨を合意した。その後、鴻道グループは、加多
宝社を設立し、赤缶入りの「王老吉」ブランドの涼茶を生産し始めた。1995 年以降、鴻道グルー
プは、王老吉涼茶のパッケージのデザイン(赤の基調色及び関連文字の色彩)について、意匠権
を登録した。他方、羊城薬業は、民営化改革を経て、広州医薬グループに社名を変更したので、
2000 年以降は、広州医薬グループが、鴻道グループ(加多宝社)と商標使用許諾契約を締結する
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こととなった。両者間に紛争が発生し、2012 年、中国国際経済貿易仲裁委員会は、2002 年以降
に締結された商標使用許諾契約が無効であるとの仲裁裁決を下した。それによって、鴻道グルー
プは「王老吉」のブランドを使用できなくなってしまった。その後、鴻道グループはその傘下の
加多宝社を通じて、赤缶入りの「加多宝」ブランドの涼茶を生産し始めた。一方、広州医薬グル
ープは、その子会社の大健康社を通じて、同じ赤缶入りの「王老吉」ブランドの涼茶を生産し始
めた。両者が内容物が同様であるお茶飲料であって、同じ赤い缶で図柄が酷似しており、商品名
のみが異なる(
「加多宝」と「王老吉」
)製品を売るという事態に発展した。
2012 年 7 月 6 日、加多宝社は、北京第一中等裁判所に、王老吉・大健康社を相手取って、訴訟
を起こした。同日、広州医薬グループは、広州市第一中等裁判所に、加多宝社を相手取って、訴
訟を起こした。その後、最高裁は、広東省高等裁判所を上記の二件の訴訟の管轄裁判所と指定し
た。加多宝社と広州医薬グループは共に、相手方による商品パッケージの無断使用が、不正競争
行為に該当するとして、其々が相手方に対し、関連商品パッケージ使用の差止及び在庫商品の廃
棄を求めた。更に、加多宝社は 3096 万元、広州医薬グループは 1 億 5 千万元の損害賠償を請求
した。広州の高等裁判所は審理を経て、冒頭に述べた通り、加多宝社が完全敗訴となる判決を下
した。
本件判決は「不正競争禁止法」を主な根拠法としている。同法第五条第二項は、
「事業者は、他
人の著名商品の特有の名称、包装、装飾を無断に使用し、又はそれらと類似する標識を使用して
混同を生じてはならない」と規定している。
二、一審判決及び関連分析
(一)判旨
1.著名商品及び商品パッケージの認定
一審裁判において、王老吉・大健康社は次のように主張した。本件に係る著名商品は、
「王老吉」
商標を有する王老吉涼茶である。そして、
「王老吉」商標は、広東省で著名商標に認定されており、
王老吉涼茶は元々、高い知名度を有する商品として広く知られており、1996年、赤缶入りの
涼茶商品が発売されてから有名になったわけではない。一審裁判裁判所は、その主張を受入れた
上で、本件に係る著名商品について、関連商品で一般的に用いられておらず、且つ顕著な特徴を
有し、消費者に他社の同類商品と区別させることができる商品名称と解することが相当であると
認定した。更に、本件に係る商品パッケージのデザインについて、
「王老吉等の黄色い文字、赤い
基調色等の色彩、図案及びそれらの配列を含む全体的なもの」と認定した。
2.商品パッケージの権益帰属への認定
商品パッケージの権益帰属について、裁判所は次のような見解を示した。本件に係る商品パッ
ケージは商標と一体不可分に結合され、全体として出所識別機能を果たしている。一般消費者が、
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法律上の商標権と商品パッケージの意匠権を区別できる可能性は非常に低いと考えられる。加多
宝社は、赤色の缶入りの「王老吉」ブランドの涼茶商品の知名度の向上に、多大な貢献をした。
しかしながら、加多宝社は、商標権者である広州医薬グループから商標の使用許諾を受けて、商
標の使用権者として事業を展開していたので、それによって、生じたのれんは、著名商品である
王老吉涼茶に附属されるものであり、商標権者である広州医薬グループに帰属させるべきである。
加多宝社は、商標使用許諾期間が満了した際に、当該商標が付されている商品パッケージを、商
標権者の広州医薬グループに返還する必要がある。加多宝社は、赤色の缶入りの「王老吉」ブラ
ンドの涼茶の生産・販売のために、過去、巨額の資金及び宣伝費用を投じたが、同商標の使用許
諾期間に多大な利益を上げていたことから、既に十分な見返りを得たと言える。商品パッケージ
の返還は、商標使用許諾契約を締結した際に、予見できたことであると考えられるので、加多宝
社の利益に対して損害を与えおらず、不公平も生じていないと判断される。また、加多宝社の鴻
道グループがこの商品に関連するパッケージをデザインし、そのデザインについいて、意匠権を
登録しているとの主張について、裁判所は、意匠権と商品パッケージは異なる法律の下で調整・
規制を受ける権利であり、本件裁判においては、加多宝社の商品パッケージ権益への主張を支持
することができないと判定した。
上記の見解に基づき、裁判所は、赤缶入りの王老吉涼茶の商品パッケージの権益が広州医薬グ
ループに帰属するとの判決を下した。
(二)弁護士による分析
本件判決の論理展開は次の通りである。広州医薬グループは、高い知名度を有する「王老吉」
商標の所有者である。加多宝社は、広州医薬グループからの許諾を受けて、
「王老吉」ブランドの
涼茶を生産・販売していた。当該商品が著名商品になったのは、
「王老吉」商標が大きなブランド
価値を有するからである。商品パッケージが商標と一体不可分に結合されていることから、それ
によって生じたのれんも、商標所有者の広薬グループに帰属させるとすることが適切である。し
かしながら、筆者は、この結論が法律の規定に沿う合理的なものであるか否かは、まだ検討する
余地があると考えている。
1.
著名商品の認定
先ず、裁判所は、著名商品が出所識別機能又は顕著性を有すると認定している。しかしながら、
不正競争禁止法によれば、商品自体ではなく、商品名称及びパッケージ等が自他商品識別機能を
有するとされているので、裁判所が著名商品を「商品名称」と認定したのは、論理的整合性が成
り立たないと言える。商品パッケージ及び名称は、著名商品に含まれている出所識別機能を有す
る標識であり、著名商品そのものではないと考えられる。裁判所は著名商品をその下位概念であ
る商品名称と解釈し、著名商品の認定に、同様に重要な機能を担っている商品パッケージを一切、
考慮に入れていないことは適切ではないと言える。
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次に、裁判所は、商標権を最も重要な考慮要素とした。商標の他に、商品パッケージも商品知
名度の向上に、重要な役割を果たしているにも関わらず、裁判所はそのような事実を見落とし、
商標権を「著名商品」の認定に際して唯一の考慮要素にした。
「不正競争禁止法」第五条第二項は、
商品パッケージが法によって保護される旨を規定している。著名商品は、当該条項における「商
品名称、包装、装飾」に基づき、成り立つ概念である。王老吉の商品名称を著名商品と認定する
ことは、王老吉の文字以外の商品パッケージの色彩(赤缶)、フォント及び文字の色彩(黄色い)
等要素が商品知名度の向上のために、重要な機能を担っていることが全て否定されることを意味
することであり、裁判の方向性を決めたものであると言っても過言ではないであろう。
2. 商品パッケージの認定
裁判所は、本件に係る著名商品のパッケージから王老吉の文字を切り離すことができないと認
定し、上記の商品パッケージの独立性を否定した。しかしながら、商標又は商品名称としての「王
老吉」の文字が、本件の係争対象となる商品パッケージの必要不可欠の構成要素に該当するか否
かはまだ疑問が残されている。筆者は、たとえ、
「王老吉」の文字が係争対象となる商品パッケー
ジの不可欠の構成要素に該当するとしても、それは特定の文字ではなく、これらの文字の配列、
形状、色彩等の図案要素を指していると考えている。具体的な文字は文字商標の範疇に属するも
のである。商品パッケージのような視覚を通じて、美感を起こさせるものとは大きな違いが存在
すると言える。裁判所は「王老吉」という特定の文字が、商品パッケージの必要不可欠且つ最も
重要な構成要素であると認定した。しかしながら、筆者は、本件に係る商品パッケージの赤い基
調色、字体、色彩及びそれらの要素の組み合わせが、
「商標法」以外の法律の保護を受けるか否か、
つまり、加多宝社が主張している意匠権に基づく法的保護を受けられるか否かは、大いに議論す
る余地があると考えている。
3. 商品パッケージ権益の帰属
商品パッケージ権益の帰属問題は上記の著名商品及び商品パッケージの認定結果に係ってい
ると言える。裁判所は、
「王老吉」商標又は商品名称を直接、著名商品と認定し、
「王老吉」の文
字を本件の係争対象となる商品パッケージの必要不可欠且つ最も重要な構成要素に該当すると
して、
「王老吉」商標又は商品名称の所有者が関連商品パッケージの所有者であるとの結論を導き
出した。しかしながら、その結論には、下記の問題点が存在する。
第一に、一審裁判所は、重要な事実証拠を見落としている。加多宝社が提出した証拠によれば、
加多宝社が赤缶入りの王老吉涼茶を生産、販売していたが、それと同時に、広州医薬グループは、
緑の紙パックの王老吉涼茶を生産、販売していた。上記の商標使用許諾契約にも、両社が其々、
異なる商品パッケージの王老吉涼茶を生産・販売することができる旨の条項が盛り込まれている。
本件において、原告と被告が其々、
「王老吉」の文字商標が付された商品を販売していることから、
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王老吉商標のみによってが、判決文に述べた自他商品識別機能を果たしていないことは明らかで
あり、二種類の涼茶商品の異なるパッケージが、独立して出所識別機能を発揮しているのは否定
できない事実である。具体的には、包装材質(アルミ缶と紙パック)、商品パッケージの基調色と
文字の色彩の組み合わせ(赤い基調色に黄色い文字、緑の基調色に赤い文字)等の違いが挙げら
れる。
第二に、
「不正競争禁止法」第二条(即ち、
「不正競争禁止法」の一般原則条項)における公平
の概念をどのように理解するかは、本件訴訟の重要なポイントとなっている。裁判所は、加多宝
社が、商標権者の広州医薬グループと商標使用許諾契約を締結した際に、商標使用許諾期間が満
了した場合には、商品パッケージを商標権者に返還する必要があることを予め知っておく必要が
あると判定した。しかしながら、
「商標法」と同等の効力を有する「不正競争禁止法」第二条が、
商品包装が法によって保護される旨を規定している以上、加多宝社に対し、商標使用許諾契約を
締結した際に、商品パッケージの返還をそのように予見すべきであると要求することは果たして
公平と言えるであろうか。また、
「貢献による権益帰属原則」は知的財産権訴訟審理の一般的な原
則である。裁判所は、加多宝社の商品知名度の向上に対する貢献に言及したにも拘らず、それに
よって生じた全ての権益が商標所有者の広州医薬グループに帰属すると判定したのは、論理的矛
盾が存在すると言える。
三、 企業の商標許諾及び管理の注意点
現時点では本件訴訟の最終判決がまだ下されていない段階であるが、企業は今回の紛争事件の
教訓を汲み取り、商標、商品パッケージを管理する際、下記のポイントに留意する必要があろう。
第一に、商標使用許可契約を締結する際、商標権者は自身が同種の事業を展開するか否かを確定
させる必要がある。同種の事業を展開する場合は、自社の商品と商標使用権者の商品を区別する
必要があるか否かを確認する必要がある。第二に、商標使用許可契約が二つ又はそれ以上の事業
者の間で締結される場合には、商品パッケージが重要な出所識別機能を果たすことになると考え
られるので、商品パッケージの具体的デザイン、関連権利の帰属、使用権の分配等について、明
確に定めておくる必要がある。商品パッケージを設計する際には、簡単な色彩や図案ではなく、
著作権、意匠権の保護対象となるような独創的なデザインを取り入れ、関連知的財産権の帰属を
明確に定めておく必要があろう。商標使用許可契約を締結する際には、上記の諸点について細心
の注意を払い、契約条項について詳細に取り決めを行うことは、今回のような紛争事件を回避す
るための有効な措置であると言えよう。
(本稿は 2015 年 7 月にて書き終えたものである)
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労 働 人 事
中国国内で就労する外国人に関わる労働関係法令の適用問題に関する考
察
文/孫薇
(上海大邦法律事務所)
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中国国内で就労する外国人労働者とその使用者にとって、外国人就労者に関わる中国の労働関
係法令の適用問題は、両者の労使関係に関わる重要な課題であり、実務上でも、注目度の高い問
題であると言える。本稿では、外国人就労者に関わる中国の労働関係法令の適用問題について考
察する。
現在、中国で施行されている労働法規の中で、
「労働法」、
「労働契約法」、
「労働契約法実施条例」
は法的地位が最も高い国家的レベルの法律である。その内、
「労働法」第二条は、その適用対象を、
「中国国内の企業、個人経済組織、国家機関、事業単位、社会団体並びにそれらと労働関係を結
んでいる労働者」と定めている。また、
「労働契約法」は、その適用対象を拡大し「民営非企業単
位等の組織」もカバーしており、また、労働争議の範囲について、労働契約の締結、履行、変更、
解除又は終了に伴って生じる紛争と定めている。更に、
「労働契約法実施条例」により、法に従っ
て設立された会計事務所、法律事務所等のパートナージップ組織及び基金会も、新たに「労働契
約法」の適用対象に追加されている。このように、
「労働法」及び「労働契約法」の適用範囲は拡
大されつつある。しかしながら、各地の司法実務から見れば、二つの法律が、上記の使用者とそ
の雇用する全ての労働者との間に生じる労働争議に、全面的に適用されるわけではないことが明
白である。
中国国内に就労する外国人もその適用対象外とされている。
総じて言えば、中国国内に就労する外国人は、中国労働法律・法規及び政策における労働時間、
労働安全、最低賃金の三つの労働基準の法的保護を受けることができる。その他の権利及び義務
は、外国人労働者と使用者の合意に基づき、確定されることになる。
本稿における中国国内に就労する外国人とは、中国国内の使用者と直接に労働契約を締結し、
中国国内で勤務する外国人(就労期間を問わない)
、及び中国に 3 ヶ月以上就労する外国人(労働
契約を締結した使用者が国外法人であるか否か、労働報酬が国外から支払われるか否かを問わな
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い)を指す(但し、技術譲渡契約を履行する外国人エンジニア及び専門家は除かれる)
。尚、ここ
における外国人は広義に解釈する必要があり、定住資格を取得していない外国人のみならず、無
国籍者も含まれていると考えられる。その他、香港特別行政区、マカオ特別行政区、台湾地区の
住民が中国国内の使用者と労働契約を締結する場合も、上記と類似する特別法規が適用される。
「外国専門家証」及び「外国専門家の中国における就職許可証」を取得した外国人を除き、中
国国内で就労する外国人及び無国籍者は、労働行政部門の関連機関に労働許可を申請し、就労ビ
ザ、就労証及び居留証を取得する必要がある。香港特別行政区、マカオ特別行政区、台湾地区の
住民も、関連法律に基づき、就労証を取得する必要がある。就労証を取得していない場合は、不
法就労と看做されることになる。
司法実務から見れば、外国人就労者に関わる労働関係法令の適用は各地区によって、大きな差
異が存在すると言える。
労働部、公安部、外交部、対外経済貿易部が 1996 年 1 月 22 日に、発布した「外国人の中国に
おける就労管理規定」
(労部発「1996」29 号文)は、
「使用者がその雇用する外国人に支払う賃金
は、当地の最低賃金を下回ってはならない」、「中国に就労する外国人の労働時間、休息・休暇、
労働安全衛生、社会保険は国家の関連規定に従う」と規定している。また、上海市労働局による
「外国人の中国における就労管理規定の徹底実施に関する若干意見」の配布に関する通知(滬労
補発「1998」25 号)第十六条によれば、使用者は労働契約を通じて、その雇用する外国人労働者
と、雇用期間、ポスト、労働報酬、保険、労働時間、雇用関係解除の条件、違約責任等の労使双
方の権利及び義務を定めることができる。また、上海高等裁判所による「労働争議事件の審理に
おける問題に関する回答」
(滬高法民一「2006」17 号)第二条は、
『当事者が「外国人の中国にお
ける就労管理規定」第 22 条、23 条における最低賃金基準、労働時間、休息・休暇、労働安全衛
生、社会保険等の労働基準の適用を求める場合、裁判所はそれらを支持すべきであるとしている。
当事者が上記に定められていない労働権利及び義務を約定し又は履行する場合には、当事者が締
結している書面の労働契約、別途協議、その他の協議又は実際の履行内容等に基づき、その労働
権利及び義務を確定することができる。当事者が上記に定められている基準を上回る労働条件や
待遇を求める場合は、裁判所はそれを認めないこととする』と規定している。
上海市は外国人労働者に対する管理を図るために、
「就業証」を取得しなければならない旨の規
定を設けている。しかしながら、
「就業証」を取得した外国人労働者であっても、
「労働法」、
「労
働契約法」の規定が全て、適用されるわけではない。一方、
「就業証」を取得していない場合は、
不法就労と看做されるが、不法就労の場合においても、外国人労働者と使用者は、その締結して
いる労働契約に基づき、それぞれの義務を履行し、権利を行使することができる。
中国では、各地で其々、外国人の就労事項に関する細則規定を設けており、法規同士がお互い
に矛盾するところもある。例えば、外国人の「就業証」については、下記のような異なる規定が
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存在する。
広東省及び浙江省は上海市と異なっている規定が設けられている。外国人労働者が「就業証」
を取得していない場合には、労使双方の関係が、労務関係(雇用関係)と看做され、使用者は外
国人労働者の提供した労務に対し、給与を支払う必要があるが、労働法における残業代、労働契
約解除又は終了する際の法定補償金(賠償金)、契約を締結していない場合における 2 倍の給与
の支払等の規定は適用されないとされている。一方、
「就業証」を取得している場合には、労使双
方の関係が労働関係と看做され、上記の労働法の規定を適用することが可能となる1。
一方、黒竜江省、山東省は、
「就業証」を取得していない労働争議事件は受理しないとしている
。
2
中国では、各地区によって、外国人就労者に関わる労働関係法令の適用に、大きな差異が存在
することから、同類の案件であっても、その管轄地区によって、異なる判決が下されることも屡々
起きている。また、各地の政策も、労働事情の変化に伴って、変更されつつあるので、今後も、
その動向を注視する必要があろう。
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1
『広東省高等裁判所、広東省労働争議仲裁委員会による「労働争議調停仲裁法、労働契約法の適用に関わる若
干問題についての指導意見(2008 年 6 月 23 日、粤高法発「2008」13 号」
)第十八条、浙江省高等裁判所によ
る「労働争議事件の審理における若干問題に関する意見(試行)
」
(2009 年 4 月 16 日)第四条』
2
『黒竜江省人力資源・社会保障局による「労働争議事件の審理の若干問題に関する処理意見(二)
」
(2012 年
9 月 10 日、黒人社発「2012」65 号)第四条、山東省労働庁、山東高等裁判所による「労働争議事件の審理にお
ける若干問題に関する規定」
(1998 年 6 月 10 日、魯労発「1998」147 号)第二条』
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新 法 速 報
1、 「市場参入のネガティブ・リストの実施に関する意見」の発布/国務院
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国務院(2015 年 10 月 19 日)は、
「市場参入ネガティブ・リストの実施に関する意見」及び具
体的な実施プランを発布し、市場参入ネガティブ・リスト制度を全面的に導入する方針を明らか
にした。2015 年 12 月 1 日から 2017 年 12 月 31 日にかけて、一部の地域で市場参入ネガティ
ブ・リスト制度を実施し、全国統一のリストの策定や関連体制・仕組みを構築する。2018 年から
全国的に、統一される市場参入ネガティブ・リスト制度を実施する。市場参入ネガティブ・リス
トには、中国国内で市場参入禁止又は制限される業界、分野、業務が掲載されており、それ以外
の業界、分野、業務については、各市場主体による平等な参入が認められている。
(情報元:中国政府網ウェブページ)
2、 「食品の経営許可審査通則(試行)」の発布/国家食品薬品監督管理総局
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国家食品薬品監督管理総局(2015 年 9 月 30 日)は、「食品の経営許可審査通則(試行)」を
発布した。
「通則」は、食品薬品監督管理部門が、事業者業態、食品経営項目、リスク評価等
に基づき、食品の経営許可の申請に対し、分類して審査を行うことを明らかにした上で、審査
要件について明確に規定している。 (情報元:国家食品薬品監督管理総局ウェブページ)
3、 張江国家自主イノベーション模範区に於いて個人所得税の新政策を導入
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上海地方税務局(2015 年 10 月 8 日)は、
『「財政部、国家税務総局の中関村自主イノベーシ
ョン模範区の税収示範政策の適用範囲拡大の関連問題についての通知」における個人所得税に関
する新政策の徹底実施に関する意見』を発布した。必要な申請、登録の手続きを済ませた納税者
が、自主的に、期間分けの納税プランを策定することを認める方針を明らかにした。
(情報元:上海地方税務局ウェブページ)
今月号写真
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今月号写真:人形屋
撮影者:
孫斐然
弁護士
写真説明: 人形屋ショーウインドー。
本ニュースレターに掲載されている文章は弁護士個人の見解であり、当事務所の意見を代表するものではありませ
ん。皆様へご参考までにお送りさせていただいており、弁護士の正式な法的意見ではありません。当事務所又は弁護
士は、読者が本ニュースレターに含まれる情報をもとにして行なわれた如何なる行為に対しても法的責任を負いませ
ん。具体的な問題がございましたら、またリーガル・サービスが必要な場合は弁護士に直接ご相談ください。お問い合
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