「鳥屋野潟にくらすトラフズク」講演内容

「鳥屋野潟にくらすトラフズク」講演内容
日本自然環境専門学校 3 年 佐藤悠子
新潟市中央区鳥屋野潟公園にはトラフズクが一年じゅう暮らしています。私は3年ほ
ど前に鳥屋野潟のトラフズクに出会い、観察と研究を行ってきました。
〇トラフズクってどんな鳥?
フクロウの仲間で耳のような羽根のあるものをミミズクと呼
びますが、分類上は分かれていません。トラフズクという名前
は胸から腹にかけて虎斑のあるミミズクであることに由来しま
す。英語では Long-eared Owl、直訳すると長い耳のフクロウで
す。やはり見た目から名前がついています。
この耳のように見えるものは飾り羽で、羽角と言います。本
当の耳は羽毛で覆われているので外見上は見えませんが、目の
横にあります。左右で上下にずれていて、獲物の音源の位置を
正確に定位することができるそうです。
トラフズクの一般的な食性は、おもにネズミなどの小型哺乳
類を捕食しており、他に鳥類と昆虫も少し捕食します。獲物を
探すときは飛びながら探す方法と木の枝などにとまって探す方
法の2通りあります。獲物を発見すると、静かに近づいて足でつかみます。トラフズク
の羽の表面には細かい毛が生えており、風切羽のふちはギザギザしています。これには
消音効果があるので、獲物に気づかれずに近寄ることができます。足には指まで羽毛が
生えていますが、これは獲物を捕らえたときに、咬まれてけがをしないためと言われて
います。
トラフズクの分布はユーラシア大陸、北アメリカ大陸など世界の広い範囲に及びます。
日本では北海道と本州北部で繁殖し、本州中部以南で越冬します。新潟はそのちょうど
中間あたりにあるためか、一年じゅう生息しています。
〇トラフズクの 1 年
トラフズクは冬に集団でねぐらをとる習性があります。鳥屋野潟では多いときで7~
8羽程見られますが、他の地域では20羽以上もの大きな集団ねぐらもあるそうです。
トラフズクの繁殖期は意外と早く始まります。1月下旬頃から鳴き声が聞かれ始め、
つがいで鳴き交わします。オスのディスプレイフライトも見られます。
トラフズクは自分では巣を作らず、カラス類や猛禽類の古巣、地面のくぼみなどを利
用して営巣します。鳥屋野潟ではカラスの古巣を利用しています。トラフズクはメスだ
けが抱卵し、オスはその間見張りやメスへのえさ運びをしています。卵は白色無地で、
数は3~7個、抱卵期間は25~27日と言われています。鳥屋野潟公園女池地区では
最初のひなの巣立ちが5月18日でしたので、4月上旬から
抱卵を開始し、4月下旬頃孵化したと推測しています。鐘木
地区では5月16日に巣立ちました。女池、鐘木両地区とも
ほぼ同時に繁殖が進んでいたようです。
巣立ったばかりのひなは飛ぶことができないため、足で枝
を伝って移動します。巣立ち後2週間ほどで飛ぶようになり
ます。7月中旬頃に巣立ちびなの姿は見られなくなり、独り
立ちしたようでした。
繁殖期が終わるころはもう夏です。暑いとき、トラフズクは翼
を半開きにして少し下げた姿勢をとります。そして、くちばしを
開けてのどをふるわせて熱をにがしています。
この頃から換羽が始まります。約1か月半かけて全身の羽毛が
抜けかわります。トラフズクの象徴である羽角も、一時期抜けて
なくなります。
秋にはまた徐々に集団ねぐらを形成していきます。このように
一年を繰り返しています。
〇トラフズクの 1 日
トラフズクは夜行性なので、日没後に活動を始めます。観察では、日没後10~30
分の間に飛び立つことがほとんどでした。夜の間は狩りをして、日の出前にはまたねぐ
らに帰ってきます。日中はほとんど寝ていますが、時々羽づくろいをしたり、ペリット
(捕食した獲物の不消化物)を吐いたりしています。鳥屋野潟公園には常緑樹が多く、
建物があるため風を避けられ、人通りがあるので天敵が近づきにくいなどの理由でねぐ
らに利用していると思われます。
〇トラフズクを見つけよう、見分けよう
トラフズクの雌雄の見分けは難しいですが、メスは全体に褐色味が強く、胸の斑が太
くはっきりしています。オスは全体に白っぽく、胸の斑が細い傾向があります。しかし
中には中間的な個体もいるので、識別には注意が必要です。
成鳥幼鳥の識別は、次列風切と尾羽の横縞模様の数が手掛かりになります。成鳥の次
列風切は縞が5~6本、幼鳥では7~8本ですが、上に重なる羽根の下に数本の縞が隠
れていることがあるので注意が必要です。尾羽根では、幼鳥の方が縞の数が多く、間隔
が狭いです。
トラフズクを探す方法には下を見て探す方法もあります。
トラフズクの下にはふんやペリットが落ちています。ペリ
ットからはいろいろな情報が得られます。トラフズクが食
べた生き物や、その生き物が生息する環境から、トラフズ
クの採餌場所の推測、周辺に生息する生物相(トラフズク
ペリット
の捕食対象種に限られますが)などがわかります。
〇トラフズクの食性
私は鳥屋野潟でトラフズクのペリットを拾い集めて食性 ハタネズミ頭骨
を調査しました。
哺乳類は種類によって歯の形状が異なるため、そこで識
別します。鳥類はくちばしが入っていると識別しやすかっ
たですが、くちばしがない場合は標本と比較するなどした
ものの、わからない種類もありました。昆虫はバラバラに
なっていることが多く、識別は非常に困難でしたが、図鑑や標本と比較し、いくつかは
わかりました。
その結果、鳥屋野潟では、ハタネズミ、アブラコウモリ、ハツカネズミを主に捕食し
ていました。他には哺乳類でアカネズミ、ジネズミなど、鳥類でスズメ、ツバメ、ムク
ドリなど、昆虫類でオオコフキコガネ、アブラゼミなどが見つかりました。個体数に占
める割合では哺乳類が8割ほどとかなり多くを占めていました。
住宅街、農耕地、ヨシ原など、周辺の様々な環境に生息する生き物を捕食しているこ
とがわかりました。