“ロジ”達の`モノ`ウォッチング `Things`-Watching by “Logistics`s” 共用

“ロジ”達の‘モノ’ウォッチング
‘Things’-Watching by “Logistics’s”
MegumiCoLabo
共用サービスの成功はインフラと運営の統合で
-カーシェアーサービスで都市問題の解決も-
2015.7 MegumiCoLabo Co-Reflector 相田 剛
本年 12 月にパリで開催される COP21〔国連気候
変動枠組み条約第 21 回締約国会議〕の議長国を務め
るフランスでは、
原子力発電への依存率引き下げ
(現
在 75%→2025 年 50%)や温暖化ガス排出削減など
エネルギー政策の審議が続いています。
駐日フランス大使ティエリー・ダナ氏は、地球温
暖化による将来の壊滅的な打撃を食い止めるには世
界規模の断固たる行動が必要で、日本はその大切な
パートナーであり、大きな役割が期待される、と訴
えます〔朝日新聞 2015.4〕
。
そのダナ大使は、在日フランス商工会議所主催の
「フランス・京都(関西)経済フォーラム〔2015.6〕
」
の挨拶でも、フランスと日本との協力連携の重要性
を指摘しました。2050 年に世界人口が 95 億人を超
え、しかも都市に集中するという予測は、2 百万人
規模の都市が毎年 10 ヵ所ずつ出現するようなこと
で、とりわけ都市の課題は大きい。政策、即ち認識
の問題でもあるが、解決に向けた取り組みには国や
企業の枠を超えて協力・連携をする必要がある。そ
れは資金以外にも技術やノウハウにおいても同様で
あるとし、その例として、エネルギー課題における
Smart City やアフリカなどの地域課題をあげました。
また、オバマ米大統領は、ケニアとの両国政府で
共催された起業化サミット(ナイロビ 2015.7.25)
に出席し、世界で最も成長著しい地域の一つアフリ
カでの経済協力を一層推し進めていく考えを強調し
ました〔2015.7 朝日新聞〕。
世界でさらに約 22 億人が増加する 2050 年には、
都市部への人口の集中は、先進国で 90%に、8 億人
増と見られるアジアで 65%、12 億人増のアフリカ
で 60%近くに達するとの国連推計もあります〔藤堂
安人氏 日経 BP クリーンテック研究所 日本経済新聞
(以下日経と略)電子版 2013.7、及び国連世界人口予
測 2012〕
。
これは大きなロジスティクス課題でもあります。
◆
今回は、このフォーラムで報告の「EV カーシェ
アリングの成功事例『パリのオートリブ』とその秘
訣」
(アーノー・ラストゥール代表取締役社長 KK
SDV Japan)についてご紹介します。
2011 年に仏のパリで始まった「オートリブ」プロ
ジェクトは、乗り捨ての EV〔電気自動車〕カーシェア
ーサービスを提供し、郊外からパリ市内への通勤や、
日中の市内移動、休日の買い物などに利用されていま
す。これはフランスのボロレ複合企業グループの 3 事
業の 1 つで、都市の Blue Solutions でもあります。
◆
仏では「賢い電気の使い方」推進に、EV 開発も含め、
国の強いリーダーシップがあるようだとの報道〔日経産
業新聞 2014.7〕もありますが、今般、EV で世界最大規
模の初サービスを成功させた秘訣を直接伺いました。
Autolib’ Paris Project は、2011 年 12 月のサービス
開始から半年後の 2012年 6月には、EV台数は 1,740
台、登録メンバー数は 31,607 人(法人含む。プレ
ミアムと合計)で、メンバー当りの利用回数は月平
均 8 回になりました。本年4月には EV3,000 台が
275,000 人に利用され、
利用回数は月平均約 32 回と
みられます。1 日平均では 14,000 回で、週末の最高
は 17,000 回(2014.5)になります。その特徴は、
第 1 に、100%EV というサービスの内容で、環境
に優しく、臭いゼロ、ノイズゼロということです。
第 2 は、開発スピードです。2011 年 2 月の契約
締結から 7 ヵ月で開発・設置し、同年 10 月には運
用試験を、12 月にはサービスを開始したのです。
第 3 は、リアルタイムに空車や駐車スペースの情
報が利用できるということです。また、どこからで
Copyright© MegumiCoLabo All Right Reserved. 【無断複製転載を禁ずる】
“ロジ”達の‘モノ’ウォッチング
‘Things’-Watching by “Logistics’s”
も質問センターからのサポートが受けられます。
第 4 は、面倒なく車の利便性(利用)を手にでき
るということです。個人・事業者別の料金メニュー
ついても配慮されています。
MegumiCoLabo
積載率を 3 割向上させ、配送ルートも効率化するこ
とでトラック台数を削減すると発表しました〔日経
産業新聞 2015.6〕
。
これらは事前の登録・オーダー型でオートリブの
オンデマンド型とは異なりますが、タクシー配車で
のオンデマンド・サービスも拡大しています。
この 6 月に米ウーバーテクノロジーズ(スマホで
タクシーの配車サービスを提供)はサンフランシス
コ本社で 5 周年の記念イベントを開催しました。
2011年 6月開始以来世界 58ヵ国 300都市に拡大し、
契約運転手は 10 万人を超えたといいます。さらな
る拡大を目指す中で、革新性からくる行政との摩擦
やドライバーなど同業会社との競合もあるといいま
す〔小川義也氏 日経産業新聞 2015.6〕
。
飲食店予約サービスでも、リクエスト型やオファ
ー型からリアルタイム型が主流になる傾向だといい
ます〔日経産業新聞 2015.7〕
。
「統合・リアルタイム サ
そこから学んだ成功の秘訣については表に列記し
ていますが、そのカギとして強調していたのは「イ
ンフラの迅速導入」です。その設備、装置の、従っ
て手続きの統一性が重要なのです。
そして、複数の事業体が収益性で衝突し失敗した
ロンドンの事例も紹介し、運営管理における単一の
事業体の重要性も指摘します。
ービス」モデルはユーザーだけでなく輸送手段側に
も新しい価値を創出します。
IoT の時代に「共用サービス」もインフラや車両
以外にも、ドライバーや積載バッテリーなどの事業
手段さらには運行時の情報なども共用する“Shared
Goal”モデルへの深化が期待されます。
同時に、便利で賢いインターネット、IoT のリス
また、他人が使う「共用」を嫌う利用者の心の壁
クにも対応が必要です。今月 24 日、米 FCAUS(旧
にも触れ、その乗り越え要因に「社会に善い」サー
クライスラー)は、ネットに繋がり頭脳をもつ車両
ビスへの参加という認識も挙げました。
がハッキングにより運転の安全性を脅かされること
アプリケーションによる情報共有が仮想システ
ムとして実現している「社会的意味」を実感させて
くれるのでしょう。
が判明した、と 140 万台のリコールを発表しました
〔日経電子版 2015.7〕
。
また、ノキアのネットワーク部門副社長ジュゼッ
◆
ペ・タルジア氏は、特にモバイルにおけるウイルス
「共用サービス」については、日本でも、1997
のリスクを訴えます〔日経産業新聞 2015.6〕。ロボッ
年開始(2000 年 9 月から Web 化)の統合配車®サ
ト、ドローン、運転支援、自動運転などが社会に参
ービスがあります。車両やドライバーの共用を、所
加しつつあります。ネットワーク社会とリアルな物
有関係を変更せずに仮想統合することで、情報統合
理的社会が融合する時代には、プライバシーだけで
による積み付け、運行ルートの最適化を実現し、キ
なく安全そのものにもリスクがあることを前提に、
ャパシティ稼働率を向上(運行台数を削減)させて
タルジア氏の訴える「個々の機器と同時に高いセキ
います。
運営主体は単一ですがプレーヤーは複数で、
ュリティが求められるネットワーク自体には予めそ
参加事業者による“Shared Goal”モデルです。
の機能を組込まなければならない」のであって、統
また、TOTO では 2016 年 6 月までに共通配車シ
ステムの導入を全国に拡大し、他社との混載などで
合された対策が求められるのです。それは社会シス
テムとしてのセキュリティということでもあります。
Copyright© MegumiCoLabo All Right Reserved. 【無断複製転載を禁ずる】