九州工業大学学術機関リポジトリ Title 移動体の速度計測を用いない軌道追従制御に関する研究 Author(s) 束, 攀峰 Issue Date 2014-12 URL http://hdl.handle.net/10228/5512 Rights Kyushu Institute of Technology Academic Repository 移動体の速度計測を用いない軌道追従制御 に関する研究 Research on Trajectory Tracking Control of Mobile Entity Without Using Velocity Measurements 九州工業大学大学院 工学府 機械知能工学専攻 博士後期課程 束 攀峰 平成 26 年 12 月 目次 第1章 緒論 5 1.1 背景と目的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5 1.2 従来の研究と本研究の特色 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 1.2.1 二輪移動ロボットの軌道追従制御 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 1.2.2 車両の車線追従制御 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7 本論文の構成 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7 速度計測を用いない二輪移動ロボットの軌道追従制御 9 2.1 二輪移動ロボットの運動方程式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9 2.2 適応軌道追従コントローラの設計とその解析 . . . . . . . . . . . . . . . . . 12 1.3 第2章 2.2.1 キネマティックコントローラ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12 2.2.2 進行方向速度を含まない誤差方程式表現 . . . . . . . . . . . . . . . 15 2.2.3 適応軌道追従コントローラの設計 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 22 2.2.4 軌道追従システムの安定解析 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 24 2.3 数値シミュレーションを用いた軌道追従性能の検証 . . . . . . . . . . . . . 27 2.4 まとめ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 35 第3章 車両の適応車線追従制御 37 3.1 車両の運動方程式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 38 3.2 適応車線追従制御の設計とその解析 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 42 3.2.1 車線曲率推定 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 42 3.2.2 理想状態信号の設計 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 45 3.2.3 適応車線追従制御の設計 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 47 3.2.4 車線追従システムの安定解析 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 52 3.3 制御性能改善手法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 57 3.4 数値シミュレーションを用いた制御性能の検証 . . . . . . . . . . . . . . . 60 3.5 まとめ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 66 3 第4章 結論 69 A 付録 A . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 85 B 付録 B . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 89 C 付録 C . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 92 4 第1章 1.1 緒論 背景と目的 近年,移動体に関する研究が盛んに行われている.例えば,人々の生活に欠かせない自 律移動ロボットに関する研究や車両に関する研究などである. 東日本大震災(2011 年 3 月)等の災害を経験したことにより,作業員の立ち入りが困 難となった状況において,速やかに状況把握,機材等の運搬,復旧活動を行うための災害 対応ロボットの開発が注目されている [1] .災害対応ロボットには,無人化施工機械を含 む陸上移動調査・作業ロボット [2]−[40] ,水中移動調査・作業ロボット [41]−[52] ,無人飛行ロ ボット [53]−[68] などがある.本論文では,陸上移動調査・作業ロボットに注目して研究を 行っている.陸上移動調査・作業ロボットにおいては,クローラ型 [2]−[4] ,蛇型 [5] ,歩行 型 [6],[7] ,車輪型 [8]−[40] など,様々なものが開発されている.蛇型ロボット,歩行型ロボッ トと比べ,車輪型移動ロボットは高い移動性をもち,機構が簡単かつ制御が容易であり, 平地走行に適している.また,クローラ型の移動ロボットと比べ,よりコンパクトな機構 設計が可能であり,狭い環境で移動することができる.車輪型移動ロボットの制御では, 一般に位置情報ならびに速度情報(ヨーレート,進行方向速度:以下車速と略記する)が 必要となる.ヨーレートはヨーレートセンサを用いて精度良く計測できる.しかし,一般 に,車速の高精度計測は困難である. 車両に関しては,高速道路での走行安全性を改善するための研究が盛んに行われている [71]−[110] .高速道路では,わずかな操縦ミスが交通事故に結びつく.事故が発生した場合, 重大事故に発展することが多い.高速道路での死亡事故率は,高速道路以外の通常道路の 約 2.8 倍である [71] .このため,高速道路での安全性向上のための操縦サポート手法開発は 急務である.この問題を解決する手法の一つとして,AHS (Automated Highway System) 技術が開発された [72]−[77] .この技術は,人間を操縦から解放し,車両を車線に沿って走行 させる車線追従技術である [87]−[111] .車線追従では車線との相対距離情報(横方向偏差,相 対ヨー角),速度情報(車速,横方向速度,ヨーレート)が必要となる.一般的に,ヨー レート計測では高精度計測が可能であるが,車両の高精度速度計測は非常に難しいのが現 状である.本論文では,速度計測を利用しない制御法を目指し,その第一歩として,車体 の横方向速度を利用しない制御法を開発する. 5 本論文で開発した制御システムの特徴は以下の節に示す. 1.2 1.2.1 従来の研究と本研究の特色 二輪移動ロボットの軌道追従制御 二輪移動ロボットは非ホロノミック特性を有する.このため,通常の状態フィードバッ クコントローラによって二輪移動ロボットを軌道に追従させることができない [8] .制御が 非常に難しいため,初期の研究においては,キネマティックモデルのみに着目したキネマ ティックコントローラが提案された [10]−[15] .提案されたコントローラは移動ロボットのダ イナミクスを考慮せずにロボットと軌道の相対位置を制御するコントローラである.しか し,移動ロボットの移動速度が速くなるに従い,移動ロボットのダイナミクスが軌道追従 性能に大きく影響してくる.高速移動時に良い軌道追従性能を実現するには,移動ロボッ トのダイナミクスを考慮してロボットを制御する必要がある.この問題に取り組むため, 移動ロボットのダイナミクスを考慮した軌道追従コントローラが提案されている [16] .文 献 [16] の手法では,ロボットパラメータの正確な値が必要である.このため,ロボット のパラメータ値が大きく変化すると,制御システムが不安定になる可能性がある.この問 題を解決するため,ロボットパラメータに対してロバスト性を持つコントローラが提案さ れた [17]−[31] .文献 [17]-[31] では,制御入力としてロボットの車輪トルクが用いられてい る.しかし,実際にロボットを制御する場合,車輪を駆動するモータ特性を考慮する必要 がある.このことに基づき,モータ特性を考慮したコントローラが提案された [32]−[35] .こ れらのコントローラでは,ロボットの位置,車速,ならびに,ヨーレート計測が必要とな る.しかし,一般に高精度の車速計測は困難である. 二輪移動ロボットの車速計測を用いないコントローラも提案されている [36], [37] .しかし, 文献 [36]-[37] ではロボットパラメータが既知である必要がある.さらに,モータ特性が考 慮されていないという問題もある.ロボットパラメータに対しロバストな制御法も提案さ れている [38]−[40] .文献 [38] の手法では,重心位置が車軸に制限されている.文献 [39] の 手法はロボットパラメータに対してはロバストであるが,モータ特性を考慮していない. 本研究では,上記問題を解決するため,モータ駆動型二輪移動ロボットの車速計測を用 いない適応制御手法を提案する. 6 車両の車線追従制御 1.2.2 近年,既存の高速道路において安全に,かつ,より多くの車両を走行させるため,前輪 操舵を用いた車線追従手法が種々提案された [87]−[97] .提案された車線追従コントローラで は前輪操舵だけを用いて制御が行われる.しかし,前輪操舵のみを用い,車両の二つ状態 量 (車両と車線の相対横距離と相対ヨー角) を設計者が望むように制御するのは困難であ る.このため,文献 [87]-[97] で提案されたコントローラでは,主に車両と車線との相対 横距離が制御される.しかしながら,良い車線追従性能を実現するためには,車両と車線 との相対横距離だけでなく,相対ヨー角も同時に速くゼロに収束させる必要がある.この 問題を解決するための一つ方法として,ステアバイワイヤ技術 [98]−[100] を利用して車両の 前後輪を独立操舵する制御手法が提案された [101]−[104] .しかし,提案された制御手法では, 車両のすべて或は一部のパラメータ値が既知である必要がある.このため,これらのコン トローラを用いた車両システムにおいて,車両パラメータ値が大きく変化する場合,車両 システムが不安定になる可能性がある.また,これらの手法では,車両の横方向速度計測 を必要とする.一般に,車両横方向速度を精度良く計測することは非常に困難である. 上記の問題を解決するため,車両の横方向速度を利用しない制御手法が提案された [106]−[110] .文献 [106]-[108] では,車両パラメータ値が必要である.文献 [109] と [110] で は,車両パラメータ値を必要としない.しかし,提案された適応コントローラの構成は複 雑であり,非常に多くの積分器が含まれている.このため,これらの適応コントローラを 実車両に実装するには,計算速度の速い高価な計算機を必要とする. 本研究では,文献 [109],[110] で開発された適応コントローラより,簡単な構成の適応 車線追従操舵法を提案する.まず,車両の横方向速度の計測信号を利用せず,そして,構 成が簡単な適応コントローラの開発するため,車両の新しい運動方程式表現を提案する. この新しい運動方程式表現に基づき,適応操舵コントローラを開発する. 1.3 本論文の構成 前節で述べたように,本論文では,速度信号を用いない移動体の軌道追従制御手法を提 案する.本論文は 5 章より構成され,第 1 章は緒論であり,本文は第 2 章から始まる. 第 2 章では,二輪移動ロボットの軌道追従制御を示す.まず,二輪ロボットの非ホロノ ミック特性に対して,キネマティックコントローラを利用して理想モデルを生成する.次 に,ロボットのダイナミクスを考慮した車速計測を必要としない誤差方程式の表現を提出 する.実際のロボット状態信号が理想モデルにより生成した理想状態信号に追従させる 適応コントローラの設計と安定解析について言及する.最後に数値シミュレーションを行 7 い,提案したコントローラの有用性を確認する. 第 3 章では,前後輪操舵を用いた適応車線追従制御法を提案する.まず,車両横方向速 度を用いないため,車両の新しい運動方程式表現を示す.次に,未知な車線曲率に対する 曲率推定法を示す.そして,この推定された曲率を利用して車両と車線の相対横距離と相 対ヨー角をゼロに収束する理想車両状態信号を生成する.次に,車両の横方向速度を用い ない適応車線追従コントローラを示す.最後に数値シミュレーションを行い,提案したコ ントローラの有用性を確認する. 第 4 章では,結論及び今後の課題を述べる. 8 第2章 速度計測を用いない二輪移動 ロボットの軌道追従制御 この章では,車速を用いない二輪移動ロボットの適応軌道追従コントローラを提案する. 提案する適応軌道追従コントローラは,ロボットの重量,慣性モーメント,重心位置およ びアクチュエーターのパラメータ変化に対しロバスト性能を有する.2.1 節では,移動ロ ボットのダイナミクス運動方程式を導出する.2.2 節では,キネマティックコントローラ の出力信号を理想信号として,二輪移動ロボットの挙動をこの理想信号に追従させるため のように適応コントローラを開発する.2.3 節では,数値シミュレーションを用いて,設 計した適応軌道追従コントローラの有用性を検証する.2.4 節では,まとめを述べる. 2.1 二輪移動ロボットの運動方程式 電気モータのダイナミクス特性を考慮した二輪移動ロボットの運動方程式は次式で表現 できる [40] . (2.1.1) Mp v̇(t) + Dp (t)v(t) = Hp Krw um (t) Mp = (H T )−1 M H −1 + Hp RJ1 RHpT , Dp (t) = Dp1 θ̇(t) + Dp2 Dp1 = (H T )−1 V1 H −1 , Dp2 = Hp RDRHpT , Krw = RK [ ] [ ] [ ] m 0 1 a 1 1 M= ,H = , Hp = 0 ic + md2 0 1 l1 −l2 ] [ 0 −md , R = diag[1/r1 , 1/r2 ] V1 = md 0 ] [ 2 2 J1 = diag ja1 + η(1) jm1 , ja2 + η(2) jm2 [ ] 2 2 D = diag da1 + η(1) (dm1 + ke1 kt1 /Rregist1 ), da2 + η(2) (dm2 + ke2 kt2 /Rregist2 ) ] [ K = diag η(1) kt1 /Rregist1 , η(2) kt2 /Rregist2 T T v(t) = [vp (t), θ̇(t)] , um (t) = [um1 (t), um2 (t)] 9 (2.1.2) Y Left wheel θɺ(t ) 2r2 d a C.G. Robot body P vP (t ) Right wheel l2 θ (t ) 2r1 l1 X 図 2.1: Wheeled Mobile Robot (WMR) Model Mp ,Dp1 は車輪型移動ロボットの特性を表す正定行列とひずみ対称行列を表している.ま た,Dp2 ,J1 ,D,Krw はモータを表す正定行列, 正定対角行列並びに定数を示している. なお,図 2.1 並びに運動方程式中に存在する記号の意味は表 2.1 にまとめる.重心点 C.G. と参照点 P の横距離 a が正の場合は重心点 C.G. が参照点 P の右側であり,a が負の場合 は重心点 C.G. が参照点 P の左側であることを意味する.重心点 C.G. と参照点 P の縦距離 d が正の場合は重心点 C.G. が参照点 P の前方であり,d が負の場合は重心点 C.G. が参照 点 P の後方であることを意味する. ここでの制御目的は車輪型移動ロボットを目標軌道に追従させることである.この制御 目的を達成するために以下の仮定を設ける. A1: 運動方程式中の行列 Mp ,Dp1 ,Dp2 ,J1 ,D,Krw は未知である. A2: 参照点 P から車輪までの距離 l1 ,l2 は既知である. A3: 進行方向速度 vp (t) は計測できない.しかしながら,車輪型移動ロボットの位置信号 q(t) = [x(t), y(t), θ(t)]T 並びにヨーレート θ̇(t) は計測可能とし,ヨーレートの一階 微分 θ̈(t) は利用可能とする.ただし,x(t),y(t),θ(t) はそれぞれ参照点 P の座標と ロボットのヨー角である. 10 表 2.1: Notation of Robot C.G. P m, ic l1 , l 2 r1 , r 2 a, d vp θ̇ um1 , um2 ja1 , ja2 jm1 , jm2 η(1) , η(2) da1 , da2 dm1 , dm2 ke1 , ke2 kt1 , kt2 Rregist1 , Rregist2 center of gravity of WMR reference point WMR mass and moment of inertia around C.G distances from P to right wheel and left wheel radius of right wheel and left wheel distance between P and C.G. longitudinal speed of WMR angular velocity of WMR input voltage of right motor and left motor moment of inertia on the part of actuator moment of inertia on the part of motor gear ratio viscosity resistance on the part of actuator viscosity resistance on the part of motor back EMF constant torque constant armature resistance A4: 初期速度ベクトル v(0) は有界である. A5: 参照速度 vd (t) 及び参照ヨーレート θ̇d (t) の一階微分 v̇d (t),θ̈d (t) も利用可能である. A6: 車輪型移動ロボットの初期状態 q(0) = [x(0), y(0), θ(0)]T 並びに目標位置信号の初期 状態 q d (0) = [xd (0), yd (0), θd (0)]T は有界である. A7: 重心点 C.G. と参照点 P の横距離 a は ( l1 > a)> −l2 を満足する.ロボットパラメー 2 (ja2 + η(2) jm2 ) l2 l2 ic 1+ − 4 < 0 を満足する. タ値が関係式 1 − 4 2 r2 m l1 l1 m 11 2.2 2.2.1 適応軌道追従コントローラの設計とその解析 キネマティックコントローラ 設計問題を簡単にするため,移動ロボットのダイナミクスを含まないキネマティックモ デルを目標軌道に追従させることを考える.車輪型移動ロボットの位置信号 q(t) とその 目標位置信号 q d (t) との追従誤差を次のように定義する. e(t) = q(t) − q d (t) = q [ e x e(t) ye(t) θ(t) ]T (2.2.1) e = θ(t) − θd (t) x e(t) = x(t) − xd (t), ye(t) = y(t) − yd (t), θ(t) ただし,xd (t),yd (t),θd (t) はそれぞれ参照点 P の目標座標とヨー角である.非ホロノ ミック特性を有する車輪型移動ロボットに対する追従コントローラを容易に設計するた め,次式のような新たな位置誤差信号 ω(t),z(t) = [z1 (t), z2 (t)]T 並びに速度の補助信号 u(t) = [u1 (t), u2 (t)]T を定義する [21],[22] . w(t) z1 (t) = z2 (t) e cos θ(t) + 2 sin θ(t) −θ(t) e sin θ(t) − 2 cos θ(t) 0 −θ(t) 0 0 cos θ(t) sin θ(t) ) f (t) = 2 θ̇d (t)z2 (t) − vd (t) sin (z1 (t)) , J = x e(t) ye(t) 1 e 0 θ(t) (2.2.2) u(t) = T (t)−1 v(t) − f u (t) ] [ ] [ fT (t) 1 θ̇d (t) f u (t) = , T (t) = e 1 0 vd (t) cos θ(t) 1 fT (t) = (w(t) + z1 (t)z2 (t)) 2 式 (2.2.2) を微分し,式 (2.2.3) を用いて表現すれば次式を得る. ω̇(t) = u(t)T J T z(t) + f (t) ż(t) = u(t) ( [ 0 −1 1 0 (2.2.3) (2.2.4) (2.2.5) ] (2.2.6) ω(t) 及び z(t) を安定化できれば車輪型移動ロボットの位置信号 q(t) と目標位置信号 q d (t) e(t) も安定化することができる.しかしながら,z(t) を直接安定化することは困 の誤差 q 難である.文献 [21] と [22] では,目標位置との相対位置信号 z(t) 及び ω(t) を安定化する ため,速度補助信号 u(t) は入力として扱われ,次式で与えられる. u(t) = ua (t) − k2 z(t) 12 (2.2.7) δ̇d (t) ż d (t) = (σ(t) + w(t)Ω1 (t)) Jz d (t) + z d (t) δd (t) k1 w(t) + f (t) σ(t) = δd (t)2 δ̇d (t) Ω1 (t) = k2 + w(t)σ(t) + δd (t) −α1 t 2 2 δd (t) = α0 e + ε1 , ∥z d (0)∥ = δd (0) ua (t) = σ(t)Jz d (t) + Ω1 (t)z d (t) (2.2.8) ここで,ki (i = 1, 2),αj (j = 0, 1),ε1 は正の設計パラメータである.ただし,ε1 はロボッ トの位置誤差信号の許容誤差を表している. Remark 1: 式 (2.2.8) に示した補助信号 z d (t) の微分式より,z d (t)T z d (t) の微分値は次式と なる. ( ) δ̇d (t) d T T T (z d (t) z d (t)) = 2z d (t) ż d (t) = 2z d (t) (σ(t) + w(t)Ω1 (t)) Jz d (t) + z d (t) dt δd (t) (2.2.9) 行列 J は歪対称行列であるため,z d (t)T Jz d (t) = 0 となり,次式を得る. d δ̇d (t) (z d (t)T z d (t)) = 2 z d (t)T z d (t) dt δd (t) (2.2.10) 式 (2.2.8) に示した補助信号 z d (t) の初期値により,z d (t)T z d (t) の解は次式となる. z d (t)T z d (t) = ∥z d (t)∥2 = δd (t)2 (2.2.11) z d (t) と δd (t) の関係式 (2.2.11) から,∥z d (t)∥ が許容誤差 ε1 に収束することがわかる. Remark 2: キネマティックコントローラ入力 u(t) を用いることにより,次の関係式が満足 される. e(t) ω̇(t) = −k1 ω(t) + ua (t) J z T e(t) + ω(t)Jua (t) ė = −k2 z z(t) e(t) = z(t) − z d (t) z (2.2.12) 1 1 e(t) を用いて,キネマティッ e(t)T z ω(t)2 + z 2 2 クコントローラの制御性能を調べる.正定値関数 Vk (t) を微分し,関係式 (2.2.12) を代入 そして,文献 [21] により,正定値関数 Vk (t) = 13 すると,次の微分式を得る. e(t)] + z e(t)T [−k2 z e(t) + ω(t)Jua (t)] V̇k (t) = ω(t)[−k1 ω(t) + ua (t)T J z (2.2.13) そして,式 J T = −J を用いれば,次の関係式を得る. e(t)T z e(t) V̇k (t) = −k1 ω(t)2 − k2 z ≤ −2min(k1 , k2 )Vk (t) (2.2.14) min(p, q) は p,q の小さい方の値を取得する.微分式 (2.2.14) から,Vk (t) は次の上界が存 在する. e(0)) Vk (t) ≤ e−2min(k1 ,k2 )t Vk (ω(0), z (2.2.15) e(t) が次の上界式を満足する. 追従誤差 ω(t),z e(t))∥ ≤ e−min(k1 ,k2 )t ∥ψ 1 (ω(0), z e(0))∥ ∥ψ 1 (ω(t), z (2.2.16) e(t)) = [ω(t), z e(t)T ]T ∈ R3 である. ただし,ψ 1 (ω(t), z e(t) は有界信号であり,そして,設計パラメー 式 (2.2.16) より,追従誤差信号 ω(t),z タ k1 ,k2 を用いて追従誤差性能を改善できることがわかる.補助信号 ∥z d (t)∥ の関係式 ∥z d (t)∥ = α0 e−α1 t + ε1 と式 (2.2.16) より,位置誤差信号 z(t) は次の上界式を満足する. e(0))∥ + α0 e−α1 t + ε1 ∥z(t)∥ ≤ ∥e z (t)∥ + ∥z d (t)∥ ≤ e−min(k1 ,k2 )t ∥ψ 1 (ω(0), z (2.2.17) 位置誤差信号 ω(t) と z(t) の関係式 (2.2.16),(2.2.17) と関係式 (2.2.2) を用いると,位置誤 e(t) は次の関係式を満足する. 差信号 q e |e x(t)|, |e y (t)|, |θ(t)| ≤ β0 e−γ0 t + β1 ε1 (2.2.18) ただし,β0 ,β1 と γ0 は正の定数である. 図 2.2 にキネマティックコントローラ (2.2.7),(2.2.8) を用いたキネマティック制御シス テムの構成を示す.Remark 2 で示したように,この制御システムにおいて,二輪移動ロ ボットと目標位置信号との誤差 ∥e q (t)∥ が β1 ε1 より小さな値に収束する.なお,図 2.2 な らびに以下に示すブロック線図において,赤い色の記号は計測できない信号あるいは未知 パラメータを含んだ行列を意味する. 14 Ideal trajectory u (t ) Kinematic system q (t ) ++ qd ( t ) − − qɶ ( t ) A (t ) ω ( t ) ω ( t ) z ( t ) Kinematic controller zɶ ( t ) + − 0 z t d ( ) 図 2.2: Block Diagram of Control System With Kinematic Controller 2.2.2 進行方向速度を含まない誤差方程式表現 キネマティックコントローラを利用してキネマティックモデルを目標軌道に追従させる ことができる.しかし,ロボットの運動ダイナミクスを考慮すると,キネマティックコン トローラで生成された信号 u(t) を直接利用することができない.このため,図 2.3 に示 したように,キネマティックコントローラで生成された信号 u(t) を理想信号 ud (t) に変更 する.信号 u(t) が理想信号 ud (t) に収束すれば,制御目的を達成することができる.そ e (t) = u(t) − ud (t) を定義する.追従誤差システムは図 2.4 に示す.文献 こで,誤差信号 u [87] と同様の解析を行えば,次式を得る. e (t) = T (t)−1 v(t) − f u (t) − ud (t) u e (t) ω̇(t) = gω (t) + z(t)T J u ė = g (t) + u e (t) z(t) ze 15 (2.2.19) (2.2.20) Ideal trajectory um ( t ) u (t ) Dynamic system q (t ) Kinematic system ++ qd ( t ) − − qɶ ( t ) A (t ) ω ( t ) ω ( t ) z ( t ) ud ( t ) Kinematic controller zɶ ( t ) + − 0 z t d ( ) 図 2.3: Block Diagram of Control System With Dynamic System e(t) − k1 ω(t) gω (t) = ua (t)T J T z e(t) − ω(t)Jua (t) g (t) = −k2 z (2.2.21) ze e (t) = 0 の時 ここで,gω (t),g ze(t) は進行方向速度 vp (t) を含まない既知信号である.u e(t) が漸近安定となる. Remark2 により,ω(t),z 式 (2.2.3) に速度信号が含まれているため,式 (2.2.19) 第一項の速度ベクトル v(t) に進行 方向速度 vp (t) が含まれることになる.このため,v(t) を仮想入力と考えてコントローラを 設計するのは困難である.この問題を解決するため,次の定理 2.1 に,式 (2.2.19),(2.2.20) が利用可能な信号 µ(t),ξ(t) と未知行列 Θ を用いて表現できることを示す. 定理 2.1:式 (2.2.19),(2.2.20) を次式で表現することができる. e (t) = T (t)−1 Mp−1 Hp Krw (µ(t) − Θξ(t)) u 16 (2.2.22) Ideal trajectory Tracking Error System ud ( t ) um ( t ) Dynamic system u (t ) − uɶ ( t ) + u (t ) + + Kinematic system q (t ) ++ qd ( t ) − − qɶ ( t ) A (t ) ω ( t ) ω ( t ) z ( t ) ud ( t ) Kinematic controller zɶ ( t ) + − 0 z t d ( ) 図 2.4: Block Diagram of Mobile Robot With Kinematic Controller T ω̇(t) = gω (t) + z(t) JT (t) −1 Mp−1 Hp Krw (µ(t) − Θξ(t)) ė = g ze(t) + T (t)−1 Mp−1 Hp Krw (µ(t) − Θξ(t)) z(t) (2.2.23) µ(t) = e um (τ )dτ 0 [ ] −1 −1 −1 −1 −1 −1 Θ = (Mp Hp Krw ) ė (Hp Krw ) Dp1 (Hp Krw ) Dp2 −(Mp Hp Krw ) T (0)z(0) ξ(t) = ξ 1 (t) + ξ 2 (t) ] [ T T T −αt T T −αt T ξ 1 (t) = g z (t) θ̇(t)η(t) − θ̇(0)η(0) e η(t) − η(0) e 0 ( ) −αt g z (t) = αη(0) + T (0)g ze(0) + T (0)g u (0) e − αη(t) − T (t)g u (t) [ ] T ξ 2 (t) = ξ 21 (t)T ξ 22 (t)T ξ 23 (t)T ξ24 (t) (∫ t ) −α(t−τ ) 2 ξ 21 (t) = e (α η(τ ) − αf η (τ ))dτ ∫ t −α(t−τ ) 0 (2.2.24) 17 ( ∫ t ) −α(t−τ ) ξ 22 (t) = − e ((αθ̇(τ ) + θ̈(τ ))η(τ ) − θ̇(τ )f η (τ ))dτ 0 ( ∫ t ) −α(t−τ ) ξ 23 (t) = − e (αη(τ ) − f η (τ ))dτ , ξ24 (t) = e−αt T η(t) = [x(t) cos θ(t) + y(t) sin θ(t) , θ(t)] , g u (t) = −f u (t) − ud (t) T f η (t) = −[(−x(t) sin θ(t) + y(t) cos θ(t))θ̇(t) , 0] 0 (2.2.25) e(t) は次の微分式を満足する. 定理 2.1 の証明:式 (2.2.3) と (2.2.20) を用いれば z ė = g ze(t) + T (t)−1 v(t) + g u (t) , g u (t) = −f u (t) − ud (t) z(t) (2.2.26) 両辺に T (t) をかけ,更に両辺に (p + α) をかけ,そして式 (2.1.1) の関係を用いて整理すれ ば次式となる. ( ) ( ) ė − T (t)g ze(t) = −Mp−1 Dp (t)v(t) + Mp−1 Hp Krw um (t) + αv(t) (p + α) T (t)z(t) + (p + α) (T (t)g u (t)) p≡ d dt (2.2.27) α は正の設計パラメータである.ここで,t を τ に変更し両辺に e−α(t−τ ) を掛け積分すれ ば次式を得る. ∫ ∫ t ) −1 ė ) − T (τ )g ze(τ ) dτ = −Mp e (p + α) T (τ )z(τ e−α(t−τ ) Dp (τ )v(τ )dτ 0 0 ∫ t ∫ t + e−α(t−τ ) (p + α) (T (τ )g u (τ )) dτ + e−α(t−τ ) αv(τ )dτ + Mp−1 Hp Krw µ(t) 0 ∫0 t µ(t) = e−α(t−τ ) um (τ )dτ , µ(0) = [0, 0]T t −α(t−τ ) ( 0 (2.2.28) 式 (2.2.28) の右側に関係式 η̇(t) = v(t) − f η (t) η(t) = [x(t) cos θ(t) + y(t) sin θ(t) , θ(t)]T T f η (t) = −[(−x(t) sin θ(t) + y(t) cos θ(t))θ̇(t) , 0] 18 (2.2.29) を用いて整理すれば,式 (2.2.28) の両側は次式となる. ] [ ė − T (0)g ze(0) ė − T (t)g ze(t) − e−αt T (0)z(0) 左辺 =T (t)z(t) (2.2.30) 右辺 = − Mp−1 Dp (t)η(t) + e−αt Mp−1 Dp (0)η(0) − T (t)g u (t) + e−αt T (0)g u (0) ∫ t ( ) −1 + Mp e−α(t−τ ) αDp (τ )η(τ ) + Dp1 θ̈η(τ ) − Dp (τ )f u (τ ) dτ ∫ t 0 ∫ t −α(t−τ ) −αt + e αT (τ )g u (τ )dτ + αη(t) − αη(0)e − e−α(t−τ ) α2 η(τ )dτ 0 ∫0 t ( ) + e−α(t−τ ) α f η (τ ) − T (τ )g u (τ ) dτ + Mp−1 Hp Krw µ(t) (2.2.31) 0 式 (2.2.30),(2.2.31) より次式を得る. T (t)z(t) ė =T (t)g ze(t) − Mp−1 Dp (t)η(t) − T (t)g u (t) + αη(t) + Mp−1 Dp (0)η(0)e−αt ∫ t ( ) −α(t−τ ) −1 e αDp (τ )η(τ ) + Dp1 θ̈η(τ ) − Dp (τ )f u (τ ) dτ + Mp 0 ∫ t ∫ t −α(t−τ ) 2 − e α η(τ )dτ + e−α(t−τ ) αf η (τ )dτ + Mp−1 Hp Krw µ(t) + g z0 e−αt , 0 ( 0 =T (t)g ze(t) + Mp−1 Hp Krw µ(t) − (Hp Krw )−1 Dp (t)η(t) + (Mp−1 Hp Krw )−1 αη(t) − (Mp−1 Hp Krw )−1 T (t)(f u (t) + ud (t)) + (Hp Krw )−1 Dp (0)η(0)e−αt ∫ t ( ) −1 + (Hp Krw ) e−α(t−τ ) αDp (τ )η(τ ) + Dp1 θ̈η(τ ) − Dp (τ )f u (τ ) dτ 0 ) (∫ t ∫ t −α(t−τ ) 2 −α(t−τ ) −1 −1 e α η(τ )dτ − e αf η (τ )dτ − (Mp Hp Krw ) 0 0 ) −1 −1 −αt + (Mp Hp Krw ) g z0 e , (2.2.32) ė − αη(0) − T (0)g ze(0) + T (0)(f u (0) + ud (0)) g z0 =T (0)z(0) 式 (2.2.32) を整理すると式 (2.2.22) と (2.2.23) を得ることができる. (証明終) 提案された誤差方程式 (2.2.22) と (2.2.23) において信号 µ(t) を入力補助信号として,速 度信号を用いない適応コントローラを考える.しかし,駆動行列 Mp−1 Hp Krw は正則であ るが,正定行列ではない.このため,安定な適応コントローラを設計することは困難であ る.安定な適応コントローラを設計するため,駆動行列 Mp−1 Hp Krw を変形することを考 19 える.駆動行列 Mp−1 Hp Krw の主座小行列式 ∆i ,i = 1, 2 は次式で表現できる. kr1 (mp3 − mp2 l1 ) ∆1 = (mp1 mp3 − m2p2 )r1 ∆2 = det(Mp−1 Hp Krw ) = det(Mp−1 )det(Hp )det(Krw ) j2 l1 l2 j2 l22 mp3 − mp2 l1 = + 2 + a2 m + d2 m + m(al1 + 2 r2 r2 [ ] [ ] [ mp1 mp2 kr1 0 Mp ≡ , Krw ≡ , J1 ≡ mp2 mp3 0 kr2 ic ) m ] j1 0 0 j2 det(Mp ) > 0, det(Krw ) > 0, det(Hp ) = −l1 − l2 < 0 (2.2.33) 仮定 A7 より,重心位置 a が変化しても関係式 mp3 − mp2 l1 > 0 である.そして行列 Mp が 正定行列であることより,主座小行列式が ∆1 > 0 であることがわかる.行列 Mp ,Krw と 行列 Hp の行列式の正負より,主座小行列式は ∆2 < 0 である.式 (2.2.33) より,駆動行列 Mp−1 Hp Krw の主座小行列式 ∆i ,i = 1, 2 の符号が sgn(∆1 ) = 1,sgn(∆2 ) = −1 となるこ とを確かめることができる.このとき,駆動行列 Mp−1 Hp Krw は次式で表現できる [69], [70] . Mp−1 Hp Krw = Q(∆ + Ω) Q= ∆= q1 q3 q3 q3 (q2 + q3 ) q4 + q1 sgn(∆1 ) 0 [ ] 0 0 σm sgn(∆2 ) , Ω = 0 0 sgn(∆1 ) (2.2.34) q2 + q3 T −1 T −1 σm = , q1 = a Mp Hp Krw a, q2 = a Mp Hp Krw b q1 T T −1 −1 q3 = b Mp Hp Krw a, q4 = b Mp Hp Krw b T T a = [1 0] , b = [0 1] (2.2.35) ここで,Q は未知な正定行列である.式 (2.2.34) を用いれば,式 (2.2.22) は次式で表現で きる. e (t) = T (t)−1 Q(∆ + Ω)(µ(t) − Θξ(t)) u 20 (2.2.36) ロボットに適応制御を応用するため,式 (2.2.36) を次式ように整理する. e (t) = T (t)−1 Q(∆µ(t) + Ωµ(t) − (∆ + Ω)Θξ(t)) u = T (t)−1 Q(∆µ(t) + [σm 0]T bT µ(t) − (∆ + Ω)Θξ(t)) (2.2.37) 式 (2.2.37) を更に整理すると次式を得る. e (t) = T (t)−1 Q(∆µ(t) − Θz ξ z (t)) u [ Θz = [(∆ + Ω)Θ θ 1 ], θ 1 = (2.2.38) ]T σm 0 ξ z (t) = [ξ(t)T bT µ(t)]T = ξ z1 (t) + ξ z2 (t) ξ z1 (t) = [ξ1 (t)T 0]T , ξ z2 (t) = [ξ2 (t)T bT µ(t)] T (2.2.39) e (t) を (2.2.23) に代入すると,次の式を得る. 式 (2.2.38) で表した u ω̇(t) = gω (t) + z(t) JT (t) Q(∆µ(t) − Θz ξ z (t)) ė = g (t) + T (t)−1 Q(∆µ(t) − Θz ξ (t)) z(t) T −1 ze (2.2.40) z 信号 µ(t) の一階微分は利用可能な信号である.ξ z1 (t),ξ z2 (t) は進行方向速度 vp (t) を含 まない既知の信号ベクトルである.また,ξ z2 (t) の一階微分も利用可能な信号である.図 2.4 の追従誤差システムを等価したシステムのブロック線図を図 2.5 に示す. 21 Ideal trajectory Tracking Error System Θ zξ z ( t ) um ( t ) ∆ s +α µ (t ) − + T (t ) Q −1 uɶ ( t ) u (t ) + + Kinematic system q (t ) ++ qd ( t ) − − qɶ ( t ) A (t ) ω ( t ) ω ( t ) z ( t ) ud ( t ) Kinematic controller zɶ ( t ) + − 0 z t d ( ) 図 2.5: Equivalent Transformation of Tracking Error System 2.2.3 適応軌道追従コントローラの設計 e (t) を零とすることができれば,式 (2.2.20),(2.2.38) の誤差信号 ω(t) と z e(t) が次 もし u 式となる. e(t) ω̇(t) = −k1 ω(t) + ua (t)T J T z ė = −k2 z e(t) − ω(t)Jua (t) z(t) (2.2.41) e(t) が漸近安定になることがわかる.もしロボットパラ 式 (2.2.41) より,簡単に ω(t) と z e (t) において,信号 メータを含んだ行列 Θz が既知であれば,式 (2.2.38) 中の誤差信号 u e (t) が零となる. µ(t) が次式で生成されれば,u µ(t) = [µ1 (t) µ2 (t)]T µ1 (t) = aT [∆(∆ + Ω)Θξ(t)] + σm µ2 (t) µ2 (t) = bT [∆(∆ + Ω)Θξ(t)] (2.2.42) a,b は式 (2.2.35) で定義される.しかし,Θz は未知行列であるため,式 (2.2.42) で示し b z (t) を用いた新たな た信号 µ(t) を生成することができない.このため,Θz の推定行列 Θ b z (t)ξ z (t) を定義する.この誤差信号 µ e (t) を用いて式 (2.2.38) 誤差信号 ∆e µ(t) = ∆µ(t) − Θ 22 を表現すれば次式を得る. e z (t)ξ z (t)) e (t) = T (t)−1 Q(∆e u µ(t) − Θ (2.2.43) e(t) を次式のように書き換える. 同様に,式 (2.2.40) から,誤差信号 ω(t),z e ω̇(t) = gω (t) + z(t) JT (t) Q(∆e µ(t) − Θz (t)ξz (t)) e z (t)ξ (t)) ė = g (t) + T (t)−1 Q(∆e z(t) µ(t) − Θ T −1 ze (2.2.44) z e (t) は次の微分方程式を満足する. このとき,誤差信号 µ b z (t)G12 (t)e ė = −αe µ(t) µ(t) + um (t) − g µe (t) − ∆Θ u(t) (2.2.45) ḃ z (t)ξ z (t) + ∆Θ b z (t)g 11 (t) + ∆Θ b z (t)ξ̇ z2 (t) + α∆Θ b z (t)ξz (t) g µe (t) = ∆Θ G12 (t) = Ξ11 (t)T (t) + Ξ12 ξ 16 (t) [ ]T Ξ11 (t) = −αI2 θ̇(t)I2 I2 0 × b 0 × b [ ]T Ξ12 = I2 0 × I2 0 × I2 0 × b 0 × b 1 ξ 16 (t) = T (Gua1 (t) − k2 I2 ) − Lg u (t)z(t)T (J + Ls ) 2 ( ) k1 1 T T Gua1 (t) = (J + ω(t)I ) + σ(t)I (J + ω(t)I )z (t)g (t) z (t)z(t) J + 2 2 2 d d f 2 δd (t)2 δd (t)2 T g f 2 (t) = [−2vd (t)cos(z1 (t)) 2θ̇d (t)] [ ] [ ] 1 0 0 1 L= , Ls = 0 0 1 0 (2.2.46) e (t) の微分式の導出は付録 A に示している.なお,g µe (t),G12 (t) は既知信号である.ま µ e (t) の収束性能を改善するための正の設計パラメータである. たαはµ e(t),µ e (t) を安定化するための入力 um (t) を 誤差信号 (2.2.44) と (2.2.45) に対し ω(t),z 次式のように設計した. ) ( T T Tb T −1 T b e(t) + G12 (t) Θz (t) ∆e e (t) + ∆Q(t) (T (t) ) −ω(t)J z(t) − z µ(t) um (t) = − β µ + g µe (t) (2.2.47) b z (t) e (t) の収束性能を改善するための正の設計パラメータである.また,Θ ただし,β は µ 23 Ideal trajectory Θ zξ z ( t ) um ( t ) ∆ s +α µ (t ) − + µɶ ( t ) T (t ) Q + Controller − −1 uɶ ( t ) u ( t ) + + q (t ) Kinematic system ++ qd ( t ) − − qɶ ( t ) A (t ) Adaptive Controller ˆ (t )ξ (t ) Θ z z ω ( t ) ω ( t ) z ( t ) ξz (t ) ˆ (t ) Θ z ud ( t ) Estimator Kinematic controller zɶ ( t ) + − 0 z t d ( ) 図 2.6: Block Diagram of Control System With Adaptive Controller b は Q の推定信号をそれぞれ表している.推定信号 Θ b z (t),Q(t) b はそれぞれ は Θz の,Q(t) 次式のように設計した. ( ) −1 T Tb T T T ḃ e(t) ξ z (t) Γm Θz (t) = (T (t) ) G12 (t) Θz (t) ∆e µ(t) − ω(t)J z(t) − z ( ) ḃ = Γ(T (t)−1 )T ω(t)J T z(t) + z b z (t)T ∆e e(t) − G12 (t)T Θ e (t)T ∆ Q(t) µ(t) µ (2.2.48) 正定行列 Γm ∈ R8×8 , Γ ∈ R2×2 は推定器の設計パラメータである.制御入力 (2.2.47) と 推定器 (2.2.48) を用いた制御システムを図 2.6 に示す. 2.2.4 軌道追従システムの安定解析 システム (2.2.44)-(2.2.48) について安定解析を行う.リアプノフ関数の候補を次のよう e = Q − Q(t) b である. に定める.ただし,Q(t) e (t) e(t) + µ e (t)T µ e(t)T z V (t) = ω(t)2 + z e T −1 e e z (t)T QΘ e z (t)Γ−1 + tr[Θ m ] + tr[Q(t) Γ Q(t)] 24 (2.2.49) 式 (2.2.21),(2.2.44) と (2.2.45) を用いてリアプノフ関数の候補 V (t) を微分すれば次式を 得る. e (t) e(t)T z e(t) − 2αe µ(t)T µ V̇ (t) = − 2k1 ω(t)2 − 2k2 z ( ) b z (t)G12 (t)T (t)−1 Q∆e e(t)T T (t)−1 − µ e (t)T ∆Θ + 2 ω(t)z(t)T JT (t)−1 + z µ(t) ( ) b z (t)G12 (t)T (t)−1 − ω(t)z(t)T JT (t)−1 − z e z (t)ξ z (t) e (t)T ∆Θ e(t)T T (t)−1 QΘ +2 µ e T Γ−1 Q(t)] ḃ e z (t)T QT Θ ḃ z (t)Γ−1 ] − 2tr[Q(t) + 2e µ(t)T (um (t) − g µe (t)) − 2tr[Θ m e(t)T z e(t) − 2αe e (t) = − 2k1 ω(t)2 − 2k2 z µ(t)T µ ( ) b z (t)G12 (t)T (t)−1 Q(t)∆e b e(t)T T (t)−1 − µ e (t)T ∆Θ + 2 ω(t)z(t)T JT (t)−1 + z µ(t) ( ) e T (T (t)−1 )T ω(t)J T z(t) + z b z (t)T ∆e e(t) − G12 (t)T Θ e (t)T ∆] + 2tr[Q(t) µ(t) µ ( ) T T −1 T Tb T T e e + 2tr[Θz (t) Q (T (t) ) G12 (t) Θz (t) ∆e µ(t) − ωJ z(t) − z (t) ξz (t)T ] e z (t)T QT Θ ḃ z (t)Γ−1 ] − 2tr[Q(t) e T Γ−1 Q(t)] ḃ − 2tr[Θ + 2e µ(t)T (um (t) − g µe (t)) m (2.2.50) 式 (2.2.50) に式 (2.2.47),(2.2.48) を代入すれば次式を得る. e(t)T z e(t) − 2αe e (t) − 2β µ e (t)T µ e (t) ≤ 0 V̇ (t) = −2k1 ω(t)2 − 2k2 z µ(t)T µ (2.2.51) 式 (2.2.51) より,正定値関数 V (t) に含まれたすべての信号が有界であることを確認できる. e(t),µ e (t) が零へ収束するこ さらに,Lasalle-Yoshizawa の定理 [114] より,誤差信号 ω(t),z b ともわかる.正定値関数 V (t) に含まれる信号の有界性より,信号 ∥z(t)∥, ∥µ(t)∥,∥Θ(t)∥ b と ∥Q(t)∥ も有界である.信号の有界性により,入力信号 um (t) も有界である.したがっ て,提案したコントローラを用いた制御システムが安定であることがわかる. Remark 3: 関係式 (2.2.51) より, e (t)) e (t) + µ e (t)T µ e(t) + µ e (t)T µ e(t)T z V̇ (t) ≤ −2min(k1 , k2 , α, β)(ω(t)2 + z e z (t)T QΘ e z (t)Γ−1 ] + tr[Q(t) e T Γ−1 Q(t)] e ≤ −2min(k1 , k2 , α, β, 1)V (t) + tr[Θ m 2 −1 2 e e ≤ −2min(k1 , k2 , α, β, 1)V (t) + λmax [Γ−1 m ]λmax [Q]∥Θz (t)∥ + λmax [Γ ]∥Q(t)∥ (2.2.52) 正定値関数 V (t) に含まれる信号の有界性より, e z ∥2 ), ρ(∥Q∥ e 2 )) V̇ (t) ≤ −2min(k1 , k2 , α, β, 1)V (t) + max(ρ(∥Θ 25 (2.2.53) 2 e z ∥2 ),ρ(∥Q∥ e 2 ) はそれぞれ ∥Θ e z (t)∥2 ,∥Q(t)∥ e ただし,ρ(∥Θ の正の上界値である.max(p, q) は p,q の大きい方の値を取得する.式 (2.2.53) より, V (t) ≤ e−2min(k1 , k2 , α, β, 1)t V (0) + −1 e 2 e 2 max(λmax [Γ−1 m ]λmax [Q], λmax [Γ ])max(ρ(∥Θz ∥ ), ρ(∥Q∥ )) . 2min(k1 , k2 , α, β, 1) (2.2.54) e(t),µ e (t) は次の不等式を満足する. ロボットのダイナミクスを考慮した追従誤差 ω(t),z e(t), µ e (t))∥ ≤ e−min(k1 ,k2 ,α,β,1)t ∥ψ 2 (ω(0), z e(0), µ e (0))∥ ∥ψ 2 (ω(t), z 1 ( −1 e 2 e 2 )2 max(λmax [Γ−1 m ]λmax [Q], λmax [Γ ])max(ρ(∥Θz ∥ ), ρ(∥Q∥ )) + 2min(k1 , k2 , α, β, 1) (2.2.55) e(t), µ e (t)) = [ω(t), z e(t)T , µ e (t)T ]T ∈ R5 である. ただし,ψ 2 (ω(t), z 理想信号 ∥z d (t)∥ の関係式 ∥z d (t)∥ = α0 e−α1 t + ε1 と式 (2.2.55) を用いれば,位置誤差信 号 z(t) は次の不等式を満足する. e(0), µ e (0))∥ ∥z(t)∥ ≤ ∥e z (t)∥ + ∥z d (t)∥ ≤ e−min(k1 ,k2 ,α,β,1)t ∥ψ 2 (ω(0), z 1 ( −1 e 2 e 2 )2 max(λmax [Γ−1 m ]λmax [Q], λmax [Γ ])max(ρ(∥Θz ∥ ), ρ(∥Q∥ )) + + α0 e−α1 t + ε1 2min(k1 , k2 , α, β, 1) (2.2.56) 位置誤差信号 ω(t) と z(t) の関係式 (2.2.55),(2.2.56) と関係式 (2.2.2) を用いると,位置誤 e(t) は次の関係式を満足する. 差信号 q e e z ∥2 ), ρ(∥Q∥ e 2 )) 12 |e x(t)|, |e y (t)|, |θ(t)| ≤ β2 e−γ1 t + β3 ε1 + β4 max(ρ(∥Θ ただし,β2 ,β3 ,β4 と γ1 は正の定数である. 26 (2.2.57) 2.3 数値シミュレーションを用いた軌道追従性能の検証 前節で提案した適応軌道追従コントローラを用いた制御システムの数値シミュレーショ ン結果を示す.シミュレーションに用いる車輪型移動ロボットのノミナル値を表 2.2 に示 す.提案した適応軌道追従コントローラの有用性とロバスト性能を確認するために,ロ ボット実際のパラメータ値が表 2.3 に示したように大きく変わった場合ロボットの状態を 調べる.表 2.3 に示すように,数値シミュレーションで用いた二輪移動ロボットにおいて は,左右車輪の半径が同じでなく,そして,左右モータも異なった特性を持っている. ロボットんのパラメータ値から,ロボットの左右車輪の半径が一致していない,そして ロボットの左右モータも違いダイナミクス特性を持っている. 表 2.2: Nominal Values of Robot Parameters signal unit value m [kg] 20 ic [kgm2 ] 7 l1 , l 2 [m] 0.2 , 0.2 r1 , r 2 [m] 0.1 , 0.1 a, d [m] 0.1 , 0.1 ja1 , ja2 [kgm2 ] 5.0 × 10−3 , 5.0 × 10−3 jm1 , jm2 [kgm2 ] 2.1 × 10−3 , 2.1 × 10−3 η(1) , η(2) [-] 160 , 160 da1 , da2 [Nmrad/s] 2.0 × 10−3 , 2.0 × 10−3 dm1 , dm2 [Nmrad/s] 3.6 × 10−5 , 3.6 × 10−5 ke1 , ke2 [Vs/rad] 0.126 , 0.126 kt1 , kt2 [Nm/A] 0.126 , 0.126 Rregist1 , Rregist2 [Ω] 4.42 , 4.42 27 表 2.3: Real Values of Robot Parameters signal unit m [kg] value 20×2 2 ic [kgm ] 7×1.5 l1 , l 2 [m] 0.2 , 0.2 r1 , r 2 [m] 0.1×1.3 , 0.1 × 0.7 a, d [m] 0.1 , 0.1 ja1 , ja2 [kgm ] 5.0 × 10−3 × 1.5 , 5.0 × 10−3 × 0.5 jm1 , jm2 [kgm2 ] 2.1 × 10−3 × 1.5 , 2.1 × 10−3 × 0.5 η(1) , η(2) [-] 160 , 160 da1 , da2 [Nmrad/s] 2.0 × 10−3 × 1.5 , 2.0 × 10−3 × 0.5 dm1 , dm2 [Nmrad/s] 3.6 × 10−5 × 1.5 , 3.6 × 10−5 × 0.5 ke1 , ke2 [Vs/rad] 0.126 × 1.5 , 0.126 × 0.5 kt1 , kt2 [Nm/A] 0.126 × 1.5 , 0.126 × 0.5 Rregist1 , Rregist2 [Ω] 4.42 × 1.5 , 4.42 × 0.5 2 設計パラメータは次のように設定した.k1 = 1,k2 = 1,α = 1,β = 10,Γm = I8 , Γ = 10I2 ,α0 = 0,α1 = 0,ただし,Ii は i 次の単位行列である.キネマティックコントロー ラに用いる誤差 ε1 を ε1 = 0.1 と設定し,初期状態 q(0),q d (0) を q(0) = [−0.10, 0, 0]T , q d (0) = [0, 0, 0]T とした.初期理想信号 z d (0) は z d (0) = z(0) とした.図 2.7 にロボット が追従すべき理想軌道,理想位置,理想ヨー角,理想車速,理想ヨーレートを示す. 28 33 51 551 789 [ m] yd ( t ) [ m ] 2 1 3 0 -1 2 0 20 (b) 40 60[s ] 40 60[s ] 40 60[s ] xd ( t ) 1 0 -1 [m] 0 (a ) 1 qd ( t ) 2 xd ( t ) [ m ] [ rad ] 6 3 4 2 2 1 0 0 20 40 ( c) [ m/s] 60[s ] yd ( t ) 0 0 20 ( d ) θ (t ) [ rad/s ] d 0.2 0.1 0.1 0 0 20 40 (e) v pd ( t ) 60 [s ] 0 0 20 (f ) θɺd ( t ) 図 2.7: Performances of Ideal Signals e(t),µ e (t) の応 図 2.8 に制御ロボットシステムにおいて漸近安定となる誤差信号 ω(t),z 答を示す.入力電圧の応答を図 2.9 に示す.図 2.8 に示すように,制御ロボットシステム 29 e(t),µ e (t) は素早く零に収束していることがわかる. において,誤差信号 ω(t),z [ rad ] [m] 0.01 0 -0.0005 0 0 20 40 ( a ) ω (t ) 0.008 60 [s ] 0 20 (b) 40 60 [s ] 40 60 [s ] zɶ1 ( t ) [m] 0.004 0 0 -0.004 0 20 40 (c) 60 [s ] zɶ2 ( t ) -0.01 0 20 ( d ) µɶ ( t ) 1 0 -0.01 -0.02 0 20 ( e ) µɶ 2 ( t ) 40 60 [s ] e(t) = [e e (t) = [e 図 2.8: Performances of Error Signals ω(t), z z1 (t), ze2 (t)]T , µ µ1 (t), µ e1 (t)]T 30 [V] [V ] 60 30 40 20 20 10 0 0 20 60 [s ] 40 (a ) u m1 ( t ) 0 0 20 40 (b) 60[s ] um 2 ( t ) 図 2.9: Performances of Input Signal um (t) = [um1 (t), um2 (t)]T 図 2.10 にロボットの車速と理想速度との誤差応答,ならびにヨーレートと理想ヨーレー トとの誤差応答を示す.図 2.11 にロボットの位置と理想位置との誤差応答,ならびにヨー 角と理想ヨー角との誤差応答を示す.また,図 2.12 に制御ロボットシステムの軌道を示 す.ピンク色の破線が理想軌道であり,黒色の実線がロボットの軌道である.図中の赤色 矢印はロボットの進行方向を示し,五角形の記号及び時刻は示された時刻のロボットの位 置を示す.図 2.10,図 2.11 に示すように,誤差応答は零に収束していないが,誤差の絶 対値は設計パラメータ ε1 の値 0.10 より小さくなっている. [ rad/s] [ m/s ] 0.006 0 0.004 -0.01 0.002 0 0 -0.02 20 (a ) 40 v p ( t ) − v pd ( t ) 60 [s ] 0 20 40 ( b ) θɺ ( t ) − θɺ ( t ) d 図 2.10: Performances of Velocity Error Signals 31 60[s ] 0.2 [m] 0.2 0.1 0.1 0 0 -0.1 -0.1 0 20 40 ( a ) xɶ ( t ) 60 [s ] [ m] 0 20 40 ( b ) yɶ ( t ) [ rad ] 0 -0.01 -0.02 0 20 40 60 [s ] ( c ) θɶ ( t ) 図 2.11: Performances of Position Errors and Yaw Angle Error 0 -0.01 -0.02 0 20 40 60 32 60[s ] [m] 3 40 [s ] 3 2 y (t ) 2 20 [s ] 1 1 60 [s ] 0 [s ] 0 -1 0 x (t ) 1 2 [m] 0 0 図 2.12: Trajectory of Wheeled Mobile Robot 3 図 2.13 に設計パラメータ ε1 を 0.10, 0.05, 0.01 と変化させた場合のロボットの位置と理 2 想位置との誤差応答を示す.図 2.13 に示すように,設計パラメータ ε1 を小さく設定する ことにより,追従誤差の絶対値の大きさを小さくできることがわかる. 33 1 [ m] [m] 0.11 0.11 0.01 0.01 -0.09 -0.09 -0.19 0 20 40 ( a ) xɶ ( t ) ( ε 1 = 0.10 ) 60 [s ] -0.19 0 ( b ) yɶ ( t ) (ε 0.11 0.11 0.01 0.01 -0.09 -0.09 -0.19 20 ( c ) xɶ ( t ) (ε 40 1 60 [s ] 1 60 [s ] = 0.10 ) -0.19 0 20 ( d ) yɶ ( t ) (ε = 0.05) 40 1 60 [s ] = 0.05 ) [m] [m] 0.11 0.11 0.01 0.01 -0.09 -0.09 -0.19 0 40 [m] [m] 0 20 20 ( e ) xɶ ( t ) (ε 40 1 = 0.01) 60 [s ] -0.19 0 20 ( f ) yɶ ( t ) (ε 40 1 = 0.01) 図 2.13: Performances of Position Errors When ε1 = 0.10, 0.05, 0.01 34 60 [s ] 2.4 まとめ ロボットの車速計測を用いない新しい軌道追従手法を提案した. まず,ロボットの駆動モータ特性を考慮するため電気モータ特性を考慮した二輪移動ロ ボットの運動方程式を導出し,この運動方程式を基に制御法を開発した.以下に本章で得 られた結論を述べる. 1. 二輪移動ロボットの運動方程式には車速が含まれる.このため,この運動方程式を 基にして制御法を直接開発した場合,コントローラに車速が必要となる.この問題 を解決するため,車速計測を用いない新しい運動方程式表現法を提案した. 2. 新しい運動方程式表現法を基に,左右モータダイナミクス特性が異なる場合でも, 安定な軌道追従が可能となる適応軌道追従制御法を開発した. 3. 開発された適応軌道追従制御を用いたロボットシステムが安定であることを理論的 に示した. 4. 数値シミュレーションを実行することにより,左右モータダイナミクス特性が異な る場合でも,開発した適応軌道追従制御を用いたロボットシステムにおいて非常に 良い追従性能が実現できることを示した. 5. 数値シミュレーションを用いて,設計パラメータ ε1 を小さくすることにより,最大 軌道追従誤差を小さくできることを示した. 35 第3章 車両の適応車線追従制御 本章では,前後輪独立操舵できる車両に対して,車両横方向速度の信号を必要としな い適応車線追従コントローラを提案する.提案する適応車線追従コントローラは,車体 重量,慣性モーメント,重心位置やコーナリング剛性の車両パラメータの未知変化に対し ロバスト性を有する.3.2 節では,横方向速度信号を用いないため車両モデルの新しい表 現を示す.3.3 節では,従来手法の目標車線の曲率推定法を示す,そして,車両が車線に 追従するため理想状態信号を設計する.3.4 節では,車両状態信号が理想状態信号に追従 し,相対横変位,相対ヨー角が零に収束し,適応操舵コントローラを開発する.3.5 節で は,追従性能を改善する手法を示す.3.6 節では,開発した適応操舵コントローラの有効 性が数値シミュレーションを用いて検証する. yF Vehicle body Pc Front wheel 1 uf ρ Rear wheel vc vp ur εr ε C.G. P yr h vx lf Target lane εd lr xF 図 3.1: Two-Wheeled Vehicle Model 37 表 3.1: Notation of Vehicle C.G. P, Pc yr εd ε εr ρ m, ic vx vp , v c lf , l r kf , k r h uf , u r center of gravity of vehicle reference point and center of curvature relative lateral distance between P and target lane yaw angle of target lane yaw angle of vehicle relative yaw angle between vehicle and target lane curvature of target lane vehicle mass and moment of inertia around C.G. longitudinal velocity of vehicle lateral velocity of vehicle at P and C.G. distance from P to front wheel and rear wheel front and rear wheel cornering stiffness distance from P to C.G. front and rear wheel steering angle 車両の運動方程式 3.1 本章で考える車両二輪モデルを図 3.1 に示す.なお,図中ならび車両モデルにおいて用 1 いられている記号の説明を表 3.1 に示す. は高速道路 (曲線の場合) の半径を示す.高速 ρ 道路で車両が走行する場合,車両と車線相対ヨー角εr (t) = ε(t) − εd (t) ならびに前後輪の 操舵角 uf (t),ur (t) は微小であるものと考えられる.また,車両の進行方向加速度 v̇x (t) が小さいことを仮定する.これらのことを考慮すれば,車両の運動方程式は次式で与えら れる. −1 ẋ(t) = vx (t)cx bT q c (t) x x(t) + q p (t) − bx vx (t)ρ(t), q p (t) = J (3.1.1) −1 T q̇ c (t) = −vx (t)cx bT x q c (t) + Bc (u(t) − vx (t) Hpj q c (t)) (3.1.2) T T x(t) = [yr (t), εr (t)] , u(t) = [uf (t), ur (t)] q c (t) = [vc (t), ε̇(t)]T , q p (t) = [vp (t), ε̇(t)]T ] [ [ 1 1 1 , J= Bc = M −1 Hpj K, Hpj = (J −1 )T Hp , Hp = 0 ℓf − ℓr M = diag[m, ic ], K = diag[kf , kr ], cx = [1, 0]T , bx = [0, 1]T 38 (3.1.3) ] h 1 (3.1.4) 上式において,状態 q c (t) と q p (t) は車両の重心と参照点のそれぞれの速度状態量であり, 車両の横方向速度信号を含んでいる.状態 x(t) は車両とターゲット車線の相対位置信号 である.操舵入力 u(t) は車両前輪舵角 uf (t) と車両後輪舵角 ur (t) である. もし相対距離 yr (t) と相対ヨー角 εr (t) = ε(t) − εd (t) が零に収束すれば,車線追従制御 が達成される.すなわち,この制御目的は,相対位置状態 x(t) を零に収束させる追従制 御法を開発することである.この目的を達成するために,車両に関して以下の仮定を設け る. A1: 車両重量 m,慣性モーメント ic ,コーナリング剛性 kf ,kr ,ならびに参考点から重 心点までの相対距離 h は未知パラメータである.ただし,m > 0,ic > 0,kf > 0 と kr > 0 である. A2: 参照点 P から前後車軸までの距離 lf と lr は既知である.車両速度 vx (t),加速度 v̇x (t), ヨーレート ε̇(t),ならびに,車両と車線との相対距離 yr (t),相対ヨー角 εr (t) は計 測可能である. A3: 関係式 ρmic ≥ m を満足する既知な有界定数 ρmic が存在する. ic A4: 車両速度に関し,v x ≥ vx (t) ≥ v x > 0 の関係を満足する下限値 v x と既知な上限値 v x が存在する.また,ρv̇ ≥ |v̇x (t)| の関係を満足する上限値 ρv̇ が存在する. A5: 目標車線の曲率 ρ(t) は未知であるが有界である. A6: 初期値 x(0) と q p (0) は有界である. 一般に,車両の車線追従コントローラは,ダイナミクス方程式 (3.1.1) と (3.1.2) に基づ き参照点 P における速度状態 q p (t) = [vp (t), ε̇(t)]T を用いて開発される.車両ダイナミク ス方程式 (3.1.2) の駆動行列 Bc は一般な未知行列である.もし,駆動行列 Bc が正定行列 と正定対角行列の積として表現できれば,安定な適応コントローラを設計できる.この問 T q c (t) = HpT q p (t) を導入する.行列 Hpj は 題に対処するため,次の新しい状態 z(t) = Hpj 未知行列であるが,行列 Hp は既知行列である.状態 z(t) を用いた運動方程式は次式で与 えられる. T −1 ẋ(t) = vx (t)cx bT x x(t) + (Hp ) z(t) − bx vx (t)ρ(t) (3.1.5) ż(t) = −vx (t)−1 Az (t)z(t) + QKu(t) (3.1.6) −1 T −1 T T Hpj cx bT Az (t) = vx (t)2 Az1 + QK, Az1 = Hpj x (Hpj ) , Q = Hpj M 39 (3.1.7) 仮定 A1 において,行列 M が正定行列であるため,行列 Q は正定行列となる.状態 z(t) を用いた場合,高周波ゲイン駆動行列は正定行列 Q と正定対角行列 K の積を用いて表現 される. 車両ダイナミクス (3.1.6) に基づいて横方向速度の信号が必要としない適応車線追従コ ントローラを開発するため,新しい車両ダイナミクス表現を次の補題 3.1 に示す.新しい 車両ダイナミクス表現式の導出には次の関係式を用いる. (p + qz )B(p)[z(t)] = (p + qz )[vx (t)QKu(t)] + dz QKu(t) − F (t)z(t) B(p) = vx (t)pI2 + Az (t) + dz I2 F (t) = −R(t)Az (t) − dz qz I2 , R(t) = −vx (t)−1 dz (3.1.8) d ,qz は正の設計パラメータ,dz は状態 z(t) の安 dt 定性を保証するため導入した正の設計パラメータである.また,Ii は Ii = diag[1, ..., 1] ∈ 式 (3.1.8) において,p は微分演算子 p ≡ Ri × i である. 補題 3.1: ダイナミクス表現式 (3.1.6) を次式で表現することができる. ż(t) = −vx (t)−1 (Az (t) + dz I2 )z(t) + QK(u(t) − Θ(t)ξ z (t) − ω z (t)) (3.1.9) Θ(t) = [ϕe−qz t , (QK)−1 ] ∈ R2×3 (3.1.10) −1 ϕ = −v −1 x (QK) [dz z(0) + F (0)gx (0)] 3 ξ z (t) = ξ z1 (t) + ξz2 (t)cT x x(t) ∈ R [ ( ∫ t −1 ξ z1 (t) = vx (t) v x , e−qz (t−τ ) F1 (τ )g εx (τ ) − qz F1 (τ )g x (τ ) 0 )T ]T − dz v̇x (τ )Az1 g x (τ ) dτ F1 (t) = dz (vx (t)Az1 − qz I2 ), g x (t) = HpT cx cT x x(t) ( ) g εx (t) = HpT bx ε̇(t) − vx (t)cx bT x x(t) T T −1 T ξ z2 (t) = [0, vx (t) (F1 (t)Hp cx ) ] [ ( ∫ t −1 −1 −qz (t−τ ) −1 ω z (t) = vx (t) vx (t) dz g x (t) + e dz − u(τ ) + vx (τ ) g εx (τ ) 0 ) ] −1 −2 − qz vx (τ ) g x (τ ) + vx (τ ) v̇x (τ )g x (τ ) dτ (3.1.11) 補題 3.1 の証明: 式 (3.1.6) より,[vx (t)pI2 + Az (t)]z(t) = vx (t)QKu(t) の関係を満足する 40 ことをわかる.この関係と式 (3.1.6) を用いて,式 (3.1.8) を導出することができる. T T T −1 T −1 T そして,式 (3.1.1) より,関係式 cT x (Hp ) z(t) = cx ẋ(t)−vx (t)bx x(t) と bx (Hp ) z(t) = ε̇(t) を得る.この関係式を用いれば,次の式を得る. T T −1 z(t) = HpT [cx cT x + bx bx ](Hp ) z(t) = ġ x (t) + g εx (t) (3.1.12) 式 (3.1.12) を利用して式 (3.1.8) の右側に代入すると,次の式を得る. (p + qz )B(p)[z(t)] = (p + qz )[vx (t)QKu(t)] + dz QKu(t) − F (t)(ġ x (t) + g εx (t)). (3.1.13) 記号 τ を用いて式 (3.1.13) の時間 t を表現し,式 (3.1.8) の両辺に e−qz (t−τ ) を掛け,0 から t まで積分すると,次式の関係が得られる. ∫ t ∫ −qz (t−τ ) t (p + qz )B(p)[z(τ )]dτ = e−qz (t−τ ) (p + qz )[vx (τ )QKu(τ )]dτ ∫ t ∫ t0 − e−qz (t−τ ) dz QKu(τ )dτ − e−qz (t−τ ) F (τ )(ġ x (τ ) + g εx (τ ))dτ e 0 0 (3.1.14) 0 式 (3.1.14) に次の式を代入し,整理すると,式 (3.1.9) を得る. ∫ t −qz (t−τ ) e 0 ∫ = B(p)[z(t)] − (vx (0)QKu(0) + dz z(0))e−qz t t 0 ∫ (p + qz )B(p)[z(τ )]dτ e−qz (t−τ ) (p + qz )[vx (τ )QKu(τ )]dτ = vx (t)QKu(t) − vx (0)QKu(0)e−qz t t e−qz (t−τ ) F (τ )ġ x (τ )dτ ∫ 0 = F (t)g x (t) − F (0)g x (0)e − e 0 ( ) −2 × qz F (τ ) + dz v̇x (τ )Az1 − dz vx (τ ) v̇x (τ )QK g x (τ )dτ ∫ t −qz (t−τ ) e F (τ )g ϵx (τ )dτ 0 ( ) ∫ t −qz (t−τ ) −1 = e F1 (τ ) + dz vx (τ ) QK g ϵx (τ )dτ −qz t 0 (証明終) 補題 3.1 より,以下の結論を得る. 41 t −qz (t−τ ) (3.1.15) −1 T R1: 行列 Az1 は Az1 = HpT cx bT x (Hp ) と変更できるので,行列 Az1 は既知な行列である. そして,仮定 A2 と A4 に基づいて,リグレッサーベクトル ξ z (t) とベクトル ω z (t) が利用可能な信号であることを簡単に確かめられる.そして,リグレッサーベクト ル ξ z (t) の一回微分式 ξ̇ zi (t), i = 1, 2 も有用な信号である.横方向速度信号を用いな い適応コントローラの開発において,リグレッサーベクトル ξ z (t) の特性は非常に 重要である. v 2x ≥ 1 の関係を満足する.この関係は,提案された適応 vx (t)2 コントローラの制御性能を改善するため必要な特性である. R2: ξ z (t) は ξ z (t)T ξ z (t) ≥ R3: 以下で開発する適応推定器により推定される.行列 Θ(t) に含まれる要素の数とベ クトル ξ z (t) に含まれる積分器の数はそれぞれ 6 と 2 である.文献 [109],[110] で, 提案されたダイナミクス表現式の未知行列の要素の数とグレッサーベクトルに含ま れる積分器の数はそれぞれ 14 と 6 である.このことより,文献 [109] と [110] で提 案された適応コントローラと比べ,表現式 (3.1.9) に基づいて開発される適応コント ローラの構造は簡単となる. 3.2 適応車線追従制御の設計とその解析 以下において,記号 L[·],L−1 [·] はラプラス変換と逆ラプラス変換を表している. 3.2.1 車線曲率推定 T −1 文献 [109] で提案された車線曲率推定法を採用する.式 (3.1.1) と bT x (Hp ) z(t) = ε̇(t) から,vx (t)−1 bT x x(t) の微分式を得る. dvx (t)−1 bT x x(t) = vx (t)−1 ε̇(t) − ρ(t) − vx (t)−2 v̇x (t)bT x x(t) dt (3.2.1) 関係式 (3.2.1) を用い,車線速度を含んだ未知な車線曲率の推定信号 ρbv (t) を次のように設 計する. L[b ρv (t)] = ωn L[vx (t)b ρ(t)] s + ωn 42 (3.2.2) [ −ωn2 T −1 −2 L[b ρ(t)] = 2 sL[vx (t)−1 bT x x(t)] − L[vx (t) ε̇(t) − vx (t) v̇x (t)bx x(t)] s + 2ωn ζs + ωn2 ] −1 T − vx (0) bx x(0) (3.2.3) ここで,ωn と ζ は正の設計パラメータである.設計された曲率推定 ρb(t) と実際の曲率 ρ(t) の関係を表すため,式 (3.2.1) を式 (3.2.3) に代入すれば, [ ] ωn2 L[b ρ(t)] = 2 L[ρ(t)] s + 2ωn ζs + ωn2 (3.2.4) の関係式を得る. 高速道路を走行する場合,目標車線は直線車線と円形車線との結合された車線となる. ある区間の車線に沿って走行する場合,車線曲率と車速は一定であるとを考えられる. したがって,車両が直線車線或は円形車線に沿って走行する場合,車線曲率 ρ(t) が一定 値 ρ になり,車速 vx (t) も一定値 v になる.この場合,式 (3.2.2) と (3.2.4) により,推定 信号 ρbv (t) が真値 v ρ となる.したがって,推定値 ρbv (t) は真値 v ρ に収束し,推定誤差 ρev (t) = vx (t)ρ(t) − ρbv (t) は零に収束する. 図 3.2 に設計パラメータ ωn を変化させた場合の曲率の推定値の応答を示す.なお,曲率 の推定値 ρb(t) が振動的にならないように設計パラメータ ζ は ζ = 1 と設定した.図 3.2(a) は推定値 ρb(t) の応答である.図 3.2(b) は推定誤差 ρ(t) − ρb(t) の応答である.図 3.2(a) に示 すように,目標車線の曲率 ρ(t) が一定の場合,曲率の推定値 ρb(t) と真値 ρ(t) が一致する. 図 3.2 に示すように,ωn を大きくすることによって,曲率の推定値が真値に近づき,推定 誤差が小さくなり,曲率推定性能が改善されることがわかる.図 3.2(a) に示すように,曲 率の推定値 ρb(t) に振動が起きていない. なお,仮定 A2 により,推定信号 ρbv (t) が利用可能な信号から生成できることが明らか である.そして,推定信号 ρbv (t) の一回微分と二回微分も利用可能な信号である.この特 性も速度を用いない適応車線追従制御の設計に有用である. 43 [1/m ] [1/m ] ρ 0.003 0.002 0.002 ωn = 15 ωn = 5 ωn = 5 0.001 0 0 100 (a ) 200 ωn = 15 200 300 0 -0.002 [ m] 300 ωn = 5 ωn = 5 0 100 ( b ) ρ ( t ) − ρˆ ( t ) Responses of curvature estimation 図 3.2: Performance of Estimating Curvature 2 0 vx ( t ) ρ ( t ) -2 0 100 200 300 ( H Tp ) bx + − + −1 1 x (t ) s vx ( t ) cx bxT z (t ) D1 T Hp + z (t ) x − 1 s zɺx ( t ) 1 s D3 bx ρˆ v ( t ) − − + D2 図 3.3: Block Diagram of Virtual Control System 44 + [m] 3.2.2 理想状態信号の設計 相対位置状態 x(t) を用いた運動方程式 (3.1.5) において,行列 Hp とベクトル bx ,cx は 既知である.このことより,もし z(t) が仮想入力として利用できれば,図 3.3 に示す構成 の制御系を用いて,相対位置状態 x(t) を零に収束させることができる.そして,仮想入 力の設計には車両が目標車線に追従する過渡特性も重視する必要がある.ここでは,文献 [109] で提案された過渡状態設計法を採用する.過渡状態を設計するため,次の信号 z x (t) を導入する.仮想入力 z(t) は次のように設計される. z(t) = HpT [bx ρbv (t) + z x (t)] (3.2.5) z̈ x (t) = −D1 x(t) − D2 z x (t) − D3 ż x (t) z x (0) = ż x (0) = [0, 0, 0]T (3.2.6) Di = diag[gi1 , gi2 , gi3 ], i = 1, 2, 3 ここで,Di , i = 1, 2, 3 は対角設計行列である.行列 Di , i = 1, 2, 3 を用いれば,相対位 置状態信号 x(t) の収束性能を設計することができる.新しい追従信号 η(t)T = [x(t)T , z x (t)T , ż x (t)T ] を用いれば,式 (3.2.5) と (3.2.6) に示す入力 z(t) を用いた制御システムは, 式 (3.1.5) より,次式で与えられる. η̇(t) = Aη (t)η(t) − Cη bx ρev (t) η(t) = [x(t)T , z x (t)T , ż x (t)T ]T vx (t)cx bT I2 0 × I2 x Aη (t) = 0 × I2 0 × I2 I2 −D1 −D2 −D3 Cη = [I2 , 0 × I2 , 0 × I2 ]T ∈ R6×2 (3.2.7) ∈ R6×6 (3.2.8) ここで,ρev (t) = v ρ − ρbv (t) は車速を含んだ車線曲率の推定誤差である.前節で述べたよ うに, lim ρbv (t) = v ρ となり,曲率推定誤差 ρev (t) = 0 となる.このとき,式 (3.2.7) は次 t→∞ 式となる. η̇(t) = Aη η(t) ここで,新しい状態 η c (t) = [cT x x(t), cT x z x (t), (3.2.9) T cT x ż x (t)] T T T η b (t) = [bT x x(t), bx z x (t), bx ż x (t)] 45 (3.2.10) を定義すれば,式 (3.2.7) のシステムを次式で表現することができる. η̇ c (t) = Aη1 η c (t) + cη1 vx (t)cT η1 η b (t) η̇ b (t) = Aη2 η b (t) 0 1 0 Aηi = 0 1 0 −d1i −d2i −d3i cη1 = [1, 0, 0]T , i = 1, 2 (3.2.11) 式 (3.2.11) より,行列 Aηi ,i = 1,2 が漸近安定となるように設計パラメータ dji ,j = 1, 2,3,i = 1,2 を設定すれば,式 (3.2.7) のシステムは漸近安定となり,状態 η(t) が零へ収 束する.したがって,設計パラメータ dji ,j = 1,2,3,i = 1,2 を用いて,相対位置状 態 x(t) を含んだ状態 η(t) の零への収束性能を設定することができる.ここでは,参考文 献 [109] で示されている Di ,i = 1,2,3 の設計方法を用い,Di を設計する.式 (3.2.11) のシステム行列 Aηi ,i = 1,2 の特性多項式が (s + 0.1φ)3 と (s + 0.4φ)3 となるように,設 計パラメータ dji ,j = 1,2,3,i = 1,2 d11 = (0.1φ)3 , d21 = 3(0.1φ)2 , d31 = 3(0.1φ) d12 = (0.4φ)3 , d22 = 3(0.4φ)2 , d32 = 3(0.4φ), φ = 30 . (3.2.12) とする.なお,式 (3.2.12) の φ は相対位置状態 x(t) の過渡応答設計を簡単にするため導入 された正の設計パラメータであり,相対位置状態 x(t) の零への収束性能を設定すること ができる. 図 3.4 に φ を変化させた場合の相対横変位 yr (t) の応答を示す.一般に,高速道路での 車線追従制御は,コーナリング中ではなく,直線車線において開始されるものと考えられ る.そして,このとき,相対ヨー角 εr (t) はほぼ零である.このことを考慮し,図 3.4 の シミュレーションでは,相対横変位 yr (t) の初期値を yr (0) = 1m と設定した.相対ヨー角 εr (t) の初期値は εr (0) = 0 である.図 3.4 に示すように,設計パラメータ φ を大きくする ことによって,相対横変位 yr (t) の零への収束性能が改善されることがわかる.また,図 3.5 に,車速 vx (t) を変化させた場合の相対横変位 yr (t),相対ヨー角 εr (t) の応答を示す. 図 3.5 に示すように,車速が変化しても,各相対位置応答にほとんど変化が生じないこと がわかる. 46 1.2 [ m] y 0.8 0.4 r ϕ = 50 ϕ = 30 ϕ = 20 0 0 100 200 300 [m] 図 3.4: Response of Virtual Control System (φ = 20, 30, 50) 0 1.2 0 [deg ] [m] 0.8 0.4 1 -2 vx = 100km/h vx = 120km/h -4 vx = 80km/h 0 0 vx = 100km/h 100 200 (a ) 2 200 0 300 vx = 80km/h -0.4 0 -8 0 100 300 [m] -4 -1 0 100 200 300 r 図 3.5: Response of Virtual Control System (vx = 80, 100, 120km/h) 0 3.2.3 適応車線追従制御の設計 -2 仮想入力 3.2.5 により,良好な車線追従制御ができるが,車両のダイナミクスが考慮し 0 100 200 300 ていない.このため,速度状態 z(t) を直接に入力として利用することはできない.そこ で,図 3.6 に示したように,z(t) が入力として利用可能であると仮定して設計された入力 を理想速度状態 z d (t) と考え,追従誤差 z e (t) = z(t) − z d (t) が零となる入力 u(t) を開発す る (図 3.7).もし,z e (t) が z e (t) = [0, 0]T となれば,良好なロバスト車線追従性能と良好 な過渡性能を実現できる.そして,追従誤差 z e (t) が零に収束すれば,相対位置状態 x(t) も零に収束し,制御目的が達成される.このことを実現するため,追従誤差 z e (t) に関す る微分方程式を導出すれば,次式となる. 47 20 vx = 120km/h (b) ε yr 100 [m] vx ( t ) ρ ( t ) u (t ) QK + z (t ) 1 (H ) T s − bx − + −1 p x (t ) 1 s + vx ( t ) cx bxT vx ( t ) Az ( t ) −1 D1 zd ( t ) + z (t ) x T Hp zɺx ( t ) 1 s − − 1 s − + D3 bx ρˆ v ( t ) + D2 図 3.6: Block Diagram of Lane Keeping System With Dynamic System vx ( t ) ρ ( t ) Tracking Error System zd ( t ) u (t ) QK + 1 − s z ( t ) − ze ( t ) + + z (t ) (H ) T + −1 p + bx − x (t ) 1 s + vx ( t ) cx bxT vx ( t ) Az ( t ) −1 D1 zd ( t ) H Tp + z (t ) x − bx ρˆ v ( t ) 1 s zɺx ( t ) 1 s D3 − − + D2 図 3.7: Block Diagram of Lane Keeping System With Velocity Measurement 48 + ż e (t) = − vx (t)−1 dz z e (t) − vx (t)−1 QKz e (t) − vx (t)Az1 z e (t) + QK(u(t) − Θ(t)ξ z3 (t) − ω z2 (t)) ξz3 (t) = ξ z1 (t) + [0, ξ u1 (t)T ]T + ξ z2 (t)cT x x(t) ξu1 (t) = ż d (t) + vx (t)−1 dz z d (t) + vx (t)Az1 z d (t) ω z2 (t) = ω z (t) + vx (t)−1 z d (t) (3.2.13) (3.2.14) ここで,文献 [109],[110] で導出された追従誤差を次式に示す. ż e (t) = −vx (t)−1 dz z e (t) + QK(u(t) − Θ(t)ξ(t) − ω z (t)) (3.2.15) z e (t),dz ,vx (t),QK と u(t) は本研究で定義された信号と同じ定義であり,Θ(t) ∈ R2×7 は未知行列であり,ξ(t) ∈ R7 ,ω z (t) は既知なベクトルである.追従誤差方程式 (3.2.15) の右辺最終項が零になれば,追従誤差は漸近安定になる.しかし,本研究の追従誤差方程 式 (3.2.13) では項 Az (t)z e (t) = (vx (t)2 Az1 + QK)z e (t) が存在するため,追従誤差方程式 (3.2.13) の右辺最終項が零になっても,追従誤差 z e (t) の安定性を保証できない.このた め,文献 [109],[110] と異なった,新しいコントローラを設計する必要がある. 安定な車線追従コントローラを設計するため,追従誤差方程式 (3.2.13) を次の式のよう に書き換える (図 3.8). ż e (t) = − vx (t)−1 dz z e (t) − (1 − β(α, t))vx (t)−1 QKz e (t) − β(α, t)vx (t)−1 QKe z e (t) ee (t) + QK(u(t) − Θ(t)ξ u (t) − ω e (t)) − vx (t)Az1 z (3.2.16) ee (t) = z e (t) − z be (t) z ee (t) − β(α, t)vx (t)−1 QKe ėe (t) = −αe z e (t) z z e (t) − vx (t)−1 dz z −1 − (1 − β(α, t))vx (t) QKz e (t) + QK(u(t) − Θ(t)ξ u (t) − ω e (t)) ξ u (t) = ξ z1 (t) + [0, ξ u2 (t)T ]T + ξ z2 (t)cT x(t) x be (t) ξ u2 (t) = ξ u1 (t) + vx (t)Az1 z be (t) ω e (t) = ω z2 (t) + β(α, t)vx (t)−1 z β(α, t) = δ(α, t) α1.5 < 1, γ > 0, δ(α, t) = , α>0 γ + δ(α, t) 1 + α1.5 e−αt 49 (3.2.17) (3.2.18) (3.2.19) Tracking Error System Θ ( t ) ξu ( t ) u (t ) − + − QK ωe ( t ) vx ( t ) ρ ( t ) v x −1 ( t ) d z −1 +vx ( t ) (1 − β ( t ) ) QK + − ze ( t ) 1 s − vx ( t ) Az1 −1 +vx ( t ) β ( t ) QK z (t ) + + ( H Tp ) −1 bx + − + 1 x (t ) s vx ( t ) cx bxT zˆe ( t ) − zɶe ( t ) + D1 zd ( t ) H Tp + z (t ) x − 1 zɺx ( t ) s 1 s D3 bx ρˆ v ( t ) − − + + D2 図 3.8: Equivalent Transformation of Tracking Error System be (t) は追従誤差 z e (t) の推定信号である.そして,式 (3.2.16) の右辺最終項が零 ただし,z となれば,設計パラメータ β(α, t) を用いて追従誤差の漸近安定性を保証できる.なお,シ ステムの制御性能を改善するため,設計パラメータ α を導入している.新しい追従誤差 方程式 (3.2.16),(3.2.17) と仮定 A1-A5 に基づき,改善した車線追従コントローラを次の ように設計する. b u(t) = Θ(t)ξ u (t) + ω e (t) (3.2.20) T ḃ Θa (t) = δ̇(α, t)g x (t)ξθ (t) Γ − Hθ (t)Γ T T T T Hθ (t) = −(δ(α, t) + γ)g x (t)(ξ̇ z1 (t) + [0, ξ̇ u2 (t) ] + 0.5ξ̇ z2 (t)cx x(t)) + [δ(α, t)g εxz (t) + γ(g εx (t) − z d (t))]ξ u (t)T T T T ξ θ (t) = ξ z1 (t) + [0, ξ u2 (t) ] + 0.5ξ z2 (t)cx x(t) T b be (t) Θa (0) = (γ + δ(α, 0))g x (0)ξ θ (0) Γ, g εxz (t) = g εx (t) − z d (t) − z be (t) + hz (t) be (t) = z ba (t) + αg x (t), z ḃa (t) = −vx (t)−1 dz z z ba (0) = −αg (0) + H T [0, ε̇(0)]T hz (t) = (αI2 − vx (t)Az1 )g (t), z b =Θ b a (t) − (δ(α, t) + γ)g x (t)ξ θ (t)T Γ Θ(t) εxz x 50 p (3.2.21) (3.2.22) b ただし,Θ(t) は未知行列 Θ(t) の推定器であり,Γ ∈ R3×3 である.式 (3.2.20)-(3.2.22) より信号 ξ̇ u2 (t) を除きすべての信号が利用可能であることを簡単に確認できる.また, Az1 ġ x (t) = 0 が成立ち,信号 ξ̇ u2 (t) も利用可能であることも確認できる.したがって,提 案するコントローラは利用可能な信号から生成できる. ここで, g x (t)ξ̇ θ (t) − g x (t)(ξ̇ 1 (t) + 0.5ξ̇ 2 (t)cT x x(t)) T = 0.5g x (t)ξ 2 (t)cT x ẋ(t) = 0.5ġ x (t)ξ 2 (t)cx x(t) (3.2.23) の関係を用いて式 (3.2.21),(3.2.22) の最上段の両辺を微分することにより次の関係を得る (導出は付録 B 参照). ḃ = −(δ(α, t)e Θ(t) z e (t) + γz e (t))ξ u (t)T Γ (3.2.24) ḃe (t) = −vx (t)−1 dz z be (t) + αe ee (t) , z be (0) = HpT [0, ε̇(0)]T z z e (t) − vx (t)Az1 z (3.2.25) ėe (t) = ż e (t) − z ḃe (t) に微分式 (3.2.25) と (3.2.16) を代入すれば,推定誤差式 推定誤差式 z (3.2.17) を得る.式 (3.2.24),(3.2.25) には,実際に利用できない車両の横方向速度が含ま れている.そこで,車両の横方向速度計測を用いずに式 (3.2.24), (3.2.25) と等価なシステ ムを式 (3.2.21), (3.2.22) で構成している.設計パラメータ α が大きい値に設定される場 合,時変ゲイン δ(α, t) が速やかに大きい値 α1.5 に収束する.したがって,未知行列 Θ(t) の速い推定が期待できる.しかし,設計パラメータ α が大きくなっても,δ(α, t) の初期値 δ(α, 0) が大きくならない.このため,推定器 (3.2.24) に初期振動が発生しにくいことが期 待できる. 文献 [109],[110] で設計された未知行列推定器は 14 個の積分器を含む.リグレッサー ベクトルに含まれる積分器の数を一緒に数えると,文献 [109],[110] で提案された適応コ ントローラは 24 個の積分器を含む.しかし,本節で提案する改善した適応コントローラ では 12 個の積分器しか含まない.このため,提案する制御システムでは,コントローラ 出力の計算時間が従来法に比べ非常に短縮されることがわかる.図 3.9 に制御システムの ブロック線図を示す. 51 vx ( t ) ρ ( t ) Θ (t )ξ z (t ) vx −1 ( t )( Az (t ) + d z I 2 ) z (t ) − ze ( t ) + + d − u (t ) QK + + − − 1 s ωz ( t ) z (t ) z (t ) ( H Tp ) + bx + − + −1 x (t ) 1 s vx ( t ) cx bxT bxT εɺ ( t ) Adaptive controller D1 x (t ) zd ( t ) zd ( t ) H Tp + z (t ) 1 s − x bx ρˆ v ( t ) zɺx ( t ) 1 s D3 − − + + D2 図 3.9: Block Diagram of Lanekeeping System Without Velocity Measurement 3.2.4 車線追従システムの安定解析 開発された適応車線追従コントローラ (3.2.20), (3.2.24), (3.2.25) を用いた閉ループシス テムにおいて,次の定理が成り立つ. [定理 3.1] コントローラ (3.2.20), (3.2.24), (3.2.25) において設計パラメータ α には α > α > 0 の関係を満足する下限 α が存在するものとする.設計パラメータ γ が次の関係式を満足 する場合, γ= dz αδ(α, 0) 3 v x ρmic (3.2.26) e 閉ループシステムは安定となる.そして,追従誤差 ze (t) と推定誤差 Θ(t)ξ u (t) は漸近安定 となる. [定理 3.1 の証明] 車線追従制御システムの安定性を調べるため,次の正定値関数を考える. V (t) = VzΘ (t) + 2cq1 Vq (t) 52 (3.2.27) −1 e e ee (t) + tr[K Θ(t)Γ VzΘ (t) = γz e (t)T Q−1 z e (t) + δ(α, t)e z e (t)T Q−1 z Θ(t)T ] √ −qz t 2 , cq1 = (Vq (0) + ρv ) + (Vq (0) + ρv ) + (VzΘ (0) + ρv ) Vq (t) = cq2 e √ −1 − 1 √ √ cq2 = 2 ∥Γ 2 ∥∥ϕ∥max( kf , kr ) (3.2.28) ee (t) の微分式に代入し,次の式を得る. 適応コントローラ (3.2.20) を追従誤差 z e (t),z ż e (t) = − vx (t)−1 dz z e (t) − (1 − β(α, t))vx (t)−1 QKz e (t) − β(α, t)vx (t)−1 QKe z e (t) e ee (t) − QK Θ(t)ξ − vx (t)Az1 z u (t) (3.2.29) −1 −1 e ėe (t) = − αe z z e (t) − Q(K Θ(t)ξ + β(α, t)K)e z e (t) u (t) + vx (t) (dz Q + (1 − β(α, t))vx (t)−1 Kz e (t)) (3.2.30) 追従誤差式 (3.2.29) と式 (3.2.30) を正定値関数 V (t) の微分式に代入すれば次式を得る. ee (t) V̇ (t) = −2dz γvx (t)−1 z e (t)T Q−1 z e (t) − 2γvx (t)z e (t)T Q−1 Az1 z ee (t) − (2dz δ(α, t)vx (t)−1 + αδ(α, t))e z e (t)T Q−1 z − 2γ(1 − β(α, t))z e (t)T Kz e (t) − 2δ(α, t)β(α, t)e z e (t)T Ke z e (t) − 4γβ(α, t)e z e (t)T Kz e (t) −1 ḃ −1 e e − 2tr[K Θ(t)Γ Θ(t)T ] + 2tr[K Θ(t)Γ Θ̇(t)T ] − 2qz cq1 Vq (t) (3.2.31) 正定値関数 V (t) の時間微分を調べるため,次の関係式を利用する.設計パラメータ β(α, t) は 0 < β(α, t) < 1 を満足するので,行列 [ W (α, t) ≡ ] 2γ(1 − β(α, t))I2 2γβ(α, t)I2 2γβ(α, t)I2 2δ(α, t)β(α, t)I2 は準正定行列になる.したがって,次の不等式が成り立つ. [ 1 1 ee (t)T K 2 z e (t)T K 2 z [ ] W (α, t) 1 K 2 z e (t) ] 1 ee (t) K2z ≥0 (3.2.32) 次の不等式も用いる. ee (t) ≤γvx (t)−1 dz z e (t)T Q−1 z e (t) −2γvx (t)z e (t)T Q−1 Az1 z + vx (t)3 −1 ee (t) γe z e (t)T AT z1 Q Az1 z dz 53 (3.2.33) 以下の関係 [ e = Θ(t) e1 (t)T θ e2 (t)T θ ] ei (t) ∈ R3 , θ (3.2.34) を用いれば,次の関係式を得る. ( )2 )2 ( 1 1 T − T − e1 (t) Γ 2 ∥ + kr ∥θ e2 (t) Γ 2 ∥ ∥Γ− 21 ∥2 q 2 ∥ϕ∥2 e−2qz t e tr[K Θ(t)Γ Θ̇(t) ] ≤ kf ∥θ z ) ( 1 T e 2e T e 2e ≤ 2 kf θ 1 (t) Γθ 1 (t) + kr θ 2 (t) Γθ 2 (t) ∥Γ− 2 ∥2 qz2 ∥ϕ∥2 e−2qz t −1 T ≤ 4VΘe (t)qz2 c2q2 e−2qz t ≤ 4V (t)qz2 c2q2 e−2qz t (3.2.35) 式 (3.2.24),(3.2.25) と (3.2.32)-(3.2.35) より, 次式の関係を導出することができる. ee (t)T Q−1 z ee (t) V̇ (t) ≤ − γvx (t)−1 dz z e (t)T Q−1 z e (t) − 2δ(t)vx (t)−1 dz z ] [ 1 vx (t)3 T −1 ee (t) + 2Vq (t) 2 qz cq2 e−qz t ee (t)T αδ(t)Q−1 − γAz1 Q Az1 z −z dz − 2cq1 cq2 qz e−qz t ee (t)T Q−1 z ee (t) ≤ − γvx (t)−1 dz z e (t)T Q−1 z e (t) − 2δ(t)vx (t)−1 dz z − 2cq2 qz e−qz t (cq1 − Vq (t) 2 ) 1 (3.2.36) cq1 を含んだ項に関して,次のことを考える.cq1 が変量と考える場合,方程式 y = c2q1 − V (0) = c2q1 − 2cq2 Vq (0) − VzΘ (0) が y = 0 になった場合,cq1 の値は Vq (0) ± √ (3.2.37) Vq (0)2 + VzΘ (0) となる.しかし,パラメー タ cq1 は式 (3.2.28) で定義されている.したがって,次の関係式を得る. c2q1 − V (0) > 0 (3.2.38) 式 (3.2.36),(3.2.38) から,V (t) ≤ V (0) を証明できれば,次の関係式を得る. ee (t)T Q−1 z ee (t) ≤ 0 V̇ (t) ≤ − dz γvx (t)−1 z e (t)T Q−1 z e (t) − 2dz δ(α, t)vx (t)−1 z (3.2.39) 次に,背理法を用いて V (t) ≤ V (0) であることを示す.V (t) が V (0) より大きくなると 54 仮定する.このとき,次の関係式を満足する時刻 t1 ,t2 が存在する. V (t1 ) = V (0) ρv + V (0) ≥ V (t) > V (0) for t2 ≥ t > t1 (3.2.40) ここで,式 (3.2.28) の関係式 c2q1 > ρv + V (0) ≥ V (t) > V (0) を用いれば,関係式 cq1 − 1 V (t) 2 ≥ 0 が満足される.したがって,式 (3.2.36) より,次の関係式を得る. V (t) − V (t1 ) < 0 for t2 ≥ t > t1 (3.2.41) この結果は仮定と矛盾する.したがって,次の関係式が成立つ. V (t) ≤ V (0) for t ≥ 0 (3.2.42) 式 (3.2.39) より,正定値関数 V (t) に含まれたすべての信号が有界であることも確認でき ee (t) が, る.さらに,Lasalle-Yoshizawa の定理 [114] より,追従誤差 z e (t) ならびに推定誤差 z 零へ収束することもわかる.正定値関数 V (t) に含まれる信号の有界性と仮定 A3-A7,式 (3.2.3) と設計した Di , i = 1, 2, 3 より,信号 ∥x(t)∥,∥z x (t)∥,∥ż x (t)∥,∥z(t)∥,∥z d (t)∥ と | ρb(t)i |,i = 0,1,2 は有界である.式 (3.1.6) より,次の式を簡単に得る. [ ] [ ] ) 1 s 1 ( −1 −1 −1 L L[u(t)] = (QK) L L[z(t)] − z(0) − L[vx (t) Az (t)z(t)] s + qz s + qz s + qz (3.2.43) ∫ t 明らかに,信号 ∥ e−qz (t−τ ) u(τ )dτ ∥ も有界である.以上述べた信号の有界性から,信号 −1 0 ∥ξ u (t)∥, ∥ω e (t)∥ と入力信号 u(t) も有界であることを確認できる.したがって,提案した コントローラを利用する閉ループシステムが安定であることを確認した. e ėe (t) が零に収束すれば,z ėe (t) = つぎに,推定誤差 Θ(t)ξ (t) が零へ収束することを示す.z u e e −αe ze (t) − vx (t) dz zee (t) − vx (t)Az1 zee (t) + QK Θ(t)ξ u (t) の関係より,Θ(t)ξ u (t) は零へ収束 −1 する.上述の信号の有界性より, zëe (t) が有界であることを簡単に確かめることができる. ∫ t zėe (τ )dτ = −e ze (0) の関係を用いれば,Barbalat’lemma[115] よ このこと,ならびに, lim t→∞ 0 り,zėe (t) が零に収束することがわかる. (証明終) この定理より,図 3.9 に示した閉ループシステムは安定であることが示される.そして, e ee (t) と推定誤差 Θ(t)ξ 追従誤差 z (t) が零に収束することも示される.しかし,この定理 u 55 ではシステムの安定性しか保証できない.システムの制御性能を改善する方法を説明して いない.このため,次節で追従性能を改善する方法を提案する. 56 3.3 制御性能改善手法 コントローラ (2.2.48)-(2.2.50) を用いた閉ループシステムにおいて,以下の系が成り立つ. 系 3.2: 次の関係式を満足する定数 α を定義する. ρα ≥ α0.5 > 0, ρα = λmin [K]λmin [Γ] 1 −1 λmax [Q ] 1 + α1.5 e−2 (3.3.1) もし,設計パラメータ α が α > α を満足し,α 以外の設計パラメータを固定した場合,次 の式を満足する α と無関係な定数 ρz1 ,ρΘi e , i = 1, 2, 3 が存在する. ∥e z e (t)∥2 ≤ ρz1 e−αt + ρz1 α−1.5 2 e ∥Θ(t)ξ e u (t)∥ ≤ ρΘ1 2 −(αα) e ∥Θ(t)ξ u (t)∥ ≤ e 0.5 (t−t 1) −1 ρΘ2 e + α ρΘ3 e t1 = α−1 ln(e2 α1.5 α−1.5 ) for 0 ≤ t < t1 for t1 ≤ t (3.3.2) (3.3.3) 系 3.2 の証明: 関係式 (3.3.3) を証明するため,各状態ノルムの上限が設計パラメータ α に無関係な定数となることを示す. 正定値関数 V (t) の初期値 V (0) は設計パラメータ α に無関係な有界の値である.このこ e とより,信号 ∥e z e (t)∥,∥z e (t)∥,∥Θ(t)∥ ,∥ξ (t)∥ と ∥ξ̇ (t)∥ の上限が設計パラメータ α に u u 無関係な定数となることがわかる. まず,関係式 (3.3.2) が成立つことを示す.定理 3.1 から,次の関係式を得る. δ(α, t)λmin [Q−1 ]∥e z e (t)∥2 ≤ V (t) ≤ V (0) (3.3.4) 信号の有界性と式 (3.3.4) から,(3.3.2) を満足する正の定数 ρz1 を存在することを簡単に確 認できる. 次に,式 (3.3.3) が成立つことを示す.信号の有界性から,式 (3.3.3) の上段の式が成り 立つことがわかる.最後に,式 (3.3.3) の下段の関係が成り立つことを示す.このことを 示すため,次式の関係を用いる. ∥e z e (t)∥2 ≤ ρz2 α−1.5 , for t ≥ t1 (3.3.5) ∥ζ(t)∥2 ≤ ρζ1 e−α(t−t1 ) + ρζ2 α−0.5 , for t ≥ t1 (3.3.6) ėe (t),ρz2 と ρζi ,i = 1, 2 は α と無関係な正の定数である.また,式 ただし,ζ(t) = z 57 (3.3.5) と (3.3.6) の導出に,e−αt ≤ e−αt1 = α−2 e−2 α2 for t ≥ t1 を利用している.式 (3.3.5) e は式 (3.3.2) から導出できる.式 (3.3.6) の導出は付録 C に示す.推定誤差 Θ(t)ξ u (t) の収束 e T Q−1 Θ(t)ξ e 性能を調べるため,正定値関数 Vξ (t) = ξ u (t)T Θ(t) u (t) を考える.式 (3.2.17), (3.2.20) から,次の関係を得る. e ee (t) = −α−1 (z ėe (t) + QK Θ(t)ξ z u (t) + Qf z1 (t) + Qf z2 (t)) f z1 (t) = vx (t)−1 (dz Q−1 + β(α, t)K)e z e (t), f z2 (t) = (1 − β(α, t))vx (t)−1 Kz e (t) (3.3.7) (3.3.8) 式 (3.3.7) を用いれば,正定値関数 Vξ (t) の時間微分が次式を満足することがわかる. −1 T e T (K Θ(t)ξ e V̇ξ (t) = − 2α−1 δ(α, t)ξ u (t)T Θ(t) u (t) + Q ζ(t) + f z1 (t) + f z2 (t))ξ u (t) Γξ u (t) e T f V 3 (t) + 2ξ u (t)T Θ(t) (3.3.9) e ξ̇ u (t) + Q−1 Θ̇(t)ξ u (t) + γQ−1 z e (t)ξ u (t)T Γξ u (t) f V 3 (t) =Q−1 Θ(t) (3.3.10) さらに,次の不等式を利用して式 (3.3.9) を解析する.式 (3.3.1),(3.3.5),(3.3.6),関係式 α0.5 ≥ α−1 δ(α, t) ≥ α0.5 /(1 + α1.5 e−2 ) for t ≥ t1 と ξ u (t)T Γξu (t) ≥ λmin [Γ] を用いれば,次 の不等式を得る. α−1 δ(α, t) − 2α δ(α, t)ξ u (t) Θ(t) Q ζ(t) ≤ VξK (t) + ρξ1 α0.5 e−α(t−t1 ) + ρξ2 , for t ≥ t1 4 (3.3.11) −1 Te T −1 e T f zi (t) ≤ − 2α−1 δ(α, t)ξ u (t)T Θ(t) α−1 δ(α, t) VξK (t) + ρξ2+i α−1 , i = 1, 2 for t ≥ t1 4 (3.3.12) − α−1 δ(α, t)VξK (t)ξ u (t)T Γξ u (t) ≤ −α0.5 ρα Vξ (t) ≤ −(αα)0.5 Vξ (t), for t ≥ t1 e T f V 3 (t) ≤ 2ξ u (t)T Θ(t) α−1 δ(α, t) VξK (t) + ρξ5 α−0.5 , for t ≥ t1 4 (3.3.13) (3.3.14) e T K Θ(t)ξ e ただし,VξK (t) = ξ u (t)T Θ(t) u (t),ρξi ,i = 1, ..., 5 は設計パラメータ α と無関係 な正の有界定数.式 (3.3.11)-(3.3.14) を式 (3.3.9) に用いれば,次の関係を得る. V̇ξ (t) ≤ −(αα)0.5 Vξ (t) + ρξ1 α0.5 e−α(t−t1 ) + ρξ6 58 (3.3.15) ただし,ρξ6 は α と無関係な正の有界定数である.式 (3.3.15) から,次の不等式を得る. −(αα)0.5 (t−t1 ) Vξ (t) ≤e Vξ (t1 ) + ρξ6 α −1 ∫ t + e−(αα) 0.5 (t−τ ) ρξ1 α0.5 e−α(τ −t1 ) dτ t1 −(αα)0.5 (t−t ≤e 1) Vξ (t1 ) + ρξ6 α−1 ρξ1 1 −(αα)0.5 (t−t1 ) e α0.5 − α0.5 (3.3.16) 式 (3.3.16) から,式 (3.3.3) の下段の関係が成り立つことがわかる. (証明終) 系 3.2 より,閉ループシステムは以下の特性を有することがわかる. P1 : 設計パラメータ α を大きくしたとき,時刻 t1 は単調減少し,式 (3.3.2) と式 (3.3.3) e T ξu (t)∥ の収束性能が改 より,設計パラメータ α を用いて推定誤差 ∥e z e (t)∥ と ∥Θ(t) 善される. e ee (t) と Θ(t)ξ P2 : 推定誤差 z u (t) を用いれば,式 (3.2.20) の入力舵角は u(t) = Θ(t)ξ u (t) + −1 −1 e ee (t)−Θ(t)ξ ω ed (t)−β(α, t)vx (t)−1 z u (t),ω ed (t) = ω z (t)+vx (t) z d (t)+β(α, t)vx (t) z e (t) と表現できる.設計パラメータ α を大きくしたとき,入力舵角は真値を用いた理想 入力舵角 ud (t) = Θ(t)ξ u (t) + ω ed (t) に近づく.このことより,設計パラメータ α を 大きくすることによって,未知パラメータを推定することに起因する高周波振動は 発生しにくくなる. P3 : 設計パラメータ α を大きくしたとき,式 (3.2.20) と (3.2.25) より,追従誤差 z e (t) の 誤差方程式は ż e (t) = −vx (t)−1 dz z e (t) − (1 − β(α, t))vx (t)−1 QKz e (t) に近づくこと がわかる.追従誤差 z e (t) の収束速度は設計パラメータ dz を用いて設計できる. P4 : 提案する適応コントローラでは横方向速度の計測を必要としない. 59 数値シミュレーションを用いた制御性能の検証 3.4 提案した適応車線追従制御システムの有用性を検証するために行った数値シミュレー ションを以下に示す.車両パラメータは m = 1740[kg],ic = 3214[kgm2 ],lf = 1.4[m], lr = 1.414[m],h = 0.342[m],kf = 60000[N/rad],kr = 122000[N/rad] である.初期時刻 t = 0 において参照点 P と目標車線との相対横変位を yr (0) = 1[m] とする.相対位置状態 x(t) の初期値は x(0) = [1, 0]T ,速度状態 z(t) は z(0) = [0, 0]T である. 曲率推定と理想連結角推定の設計パラメータは ωn = 30,ζ = 1 と設定した.コントロー 2 ラの設計パラメータは qz = 1,dz = 1,Γ = I3 ,α = 500 3 ,v x = 120 ∗ 1000/602 とした. 理想過渡状態の設計パラメータは式 (3.2.12) で設計する.以下のシミュレーションにおい て用いた目標車線と車速 vx (t) を図 3.10 に示す. 図 3.11 と図 3.12 に, 設計パラメータ α を変化させた場合の前輪入力舵角 uf (t) 応答と追 ee (t) 応答を示す.なお,車両の後輪舵角応答も図 3.11 と同様の 従誤差 z e (t) の推定誤差 z b とz be (t) ではなく,真 応答となる.また,図中の uf d は,式 (3.2.20) において推定値 Θ(t) 値を用いた理想入力舵角 ud (t) = [uf d (t), urd (t)]T = Θ(t)ξ u (t) + ω ed (t) を用いたときの前 輪舵角である. 図 3.11 に示すように設計パラメータ α を大きく設定することにより,入力舵角の高周波 2 振動が小さくなり,入力舵角と理想入力舵角の誤差が零に近づくことがわかる.α = 500 3 の場合,入力舵角と理想入力舵角との誤差がほぼ零となり,入力舵角の高周波振動がなく ee (t) の初期 なっている.また,図 3.12 より,α を大きく設定することにより,推定誤差 z 振動が小さくなり,零に収束性能も改善することができることがわかる.図 3.11 と図 3.12 2 で示したシミュレーション結果より,設計パラメータ α を α = 500 3 と設定する. 90 vx [ m/s ] [m] 30 ρ =0 60 30 ρ =0 25 ρ =1/300 20 0 0 100 200 300 [ m] 0 (a) Target lane 200 0 -2 100 200 300 (b) Longitudinal velocity 図 3.10: Target Lane and Longitudinal Velocity of Vehicle 2 0 100 300 60 [ m] [deg ] [deg ] 4 4 0 0 -4 -4 0 100 200 (a ) 300 u f (α = 1) [m] 0 [deg ] 300 [m] 300 [m] u f − u fd (α = 1) [deg ] 4 0 0 -4 -4 100 ( c) 200 300 u f (α = 102/3 ) [ m] 0 100 (d) [deg ] 200 u f − u fd (α = 10 2/3 ) [deg ] 4 4 0 0 -4 -4 0 200 (b) 4 0 100 100 ( e) 200 300 [ m] u f (α = 5002/3 ) 0 100 (f ) 200 300 u f − u fd (α = 5002/3 ) 2 2 図 3.11: Steeling Performances of Front Wheel of Vehicle When α = 1, 10 3 , 500 3 61 [m] [ m/s ] [ m/s ] 0.1 0.04 0.02 0 0 -0.02 -0.1 0 100 200 (a ) 300 zɶe1 (α = 1) [ m] 0 100 200 (b) [ m/s ] 300 [m] 300 [m] 300 [m] zɶe 2 (α = 1) [ m/s ] 0.1 0.04 0.02 0 0 -0.02 -0.1 0 100 (c) 200 300 zɶe1 (α = 102/3 ) [m] 0 100 (d) [ m/s] 200 zɶe 2 (α = 10 2/3 ) [ m/s ] 0.1 0.04 0.02 0 0 -0.02 -0.1 0 100 ( e) 200 300 [m] zɶe1 (α = 5002/3 ) 0 100 (f ) 200 zɶe 2 (α = 5002/3 ) 2 2 ee (t) when α = 1, 10 3 , 500 3 図 3.12: Performances of Estimation Error z 図 3.13 に,設計パラメータ dz を変化させた場合の追従誤差 z e (t) 応答を示す.図 3.13 に示すように設計パラメータ dz を大きく設定することにより,追従誤差 z e (t) の零への収 束性能は改善されるが,追従誤差 z e (t) の過渡応答の最大値は大きくなることがわかる. 一方,dz = 1 の時,追従誤差 z e (t) の零への収束が遅くなるが,収束誤差が小さい.この ため,設計パラメータ dz を dz = 1 と設定する. 62 [ m/s ] [ m/s ] 0 0 -0.04 -0.1 -0.08 0 100 (a ) 200 300 ze1 ( d z = 1) [ m] 0 100 200 (b) [ m/s ] 300 [m] 300 [m] 300 [m] ze 2 ( d z = 1) [ m/s ] 0 0 -0.04 -0.1 -0.08 0 100 (c) 200 300 ze1 ( d z = 10 ) [m] 0 100 200 (d) [ m/s] ze 2 ( d z = 10 ) [ m/s ] 0 0 -0.04 -0.1 -0.08 0 100 ( e) 200 300 [m] ze1 ( d z = 30 ) 0 100 (f ) 200 ze 2 ( d z = 30 ) 図 3.13: Performances of Tracking Error z e (t) When dz = 1, 10, 30 図 3.14 に曲率推定の設計パラメータ ωn を変化させた場合の相対横変位 yr (t) と入力舵 角の応答を示す.ωn 以外の設計パラメータをある値に固定したとき,図 3.14 に示すよう に,ωn を大きくすると,曲率の推定値 ρb(t) が素早く真値 ρ(t) に近づくので,定常車線追 従性能を改善できる.また,このとき,相対横変位 yr (t) の過渡応答は全く変化が生じな い.この特徴を用いて,試行錯誤的に設計パラメータ ωn の値を ωn = 15 と設定する. 63 [m] [deg ] 1.2 2 0.8 ωn = 15 0.4 ωn = 5 ωn = 2 0 ωn = 15 -2 0 0 100 200 (a ) 300 [ m] 0 100 200 (b) yr ωn = 5 ωn = 2 300 [m] uf [deg ] 2 ωn = 5 ωn = 2 0 ωn = 15 -2 0 100 200 (c) 300 [m] ur 図 3.14: Performances of Relative Lateral Distance and Control Input When ωn = 2, 5, 15 [m] ( d ) u f − u fd (α = 102/3 ) 図 3.15 に設計パラメータ φ を変化させた場合の相対横変位 yr (t) と入力舵角の応答を示 す.φ は相対位置状態 x(t) の過渡応答を設計するため導入した設計パラメータである.図 3.15 に示すように,φ を大きくすると,yr (t) が素早く零へ収束し,収束性能が改善され ることがわかる.このとき,yr (t) の定常応答に大きな変化は生じない.しかし, φ を大 [deg ] きくした場合,初期入力舵角が大きくなるという問題がある.過大な初期入力舵角の発生 を防ぐため,試行錯誤的に設計パラメータ φ の値を φ = 30 と設定する. 以上の設計パラメータの設定値を用いて,車両パラメータの未知変動に対するロバス ト性を示すために行ったシミュレーション結果を図 3.16 に示す.車両パラメータは次の Case 1∼Case 3 のように変化させた. Case 1: 車両パラメータのすべての未知変動が零の場合. Case 2: 車両のパラメータを次に示すように設定した場合. m = 1740 × 1.2[kg],ic = 3214 × 1.2[kgm2 ] Case 3: 車両のパラメータを次に示すように設定した場合. m = 1740 × 1.2[kg],ic = 64 [m] [deg ] 1.2 ϕ = 50 ϕ = 30 ϕ = 20 0.8 0.4 0 ϕ = 20 ϕ = 30 -4 ϕ = 50 0 0 100 200 (a ) 300 -8 [ m] 0 100 200 (b) yr 300 uf [deg ] 0 ϕ = 20 ϕ = 30 -2 ϕ = 50 -4 0 100 200 (c) 300 [m] ur 図 3.15: Performances of Relative Lateral Distance and Control Input When φ = 20, 30, 50 3214 × 1.2[kgm2 ],kf = 60000 × 0.5[N/rad],kr = 122000 × 0.5[N/rad] 図 3.16(a),(b) に,車両パラメータが変化した場合の相対横変位 yr (t) と相対ヨー角 εr (t) の応答を示す.また,図 3.16(c) と (d) に,入力舵角応答を示す.図 3.16 に示すように,車 速変化と車両パラメータの未知変動が生じても,相対横変位 yr (t) と相対ヨー角 εr (t) に まったく変化が生じず,車両が目標車線に追従していることがわかる.さらに,図 3.16(a) と (b) に示すように,目標車線の曲率 ρ(t) が一定の場合,相対横変位 yr (t) と相対ヨー角 εr (t) が零へ収束している.したがって,車両パラメータが変化した場合でも良い車線追 従性能が実現できることがわかる. 65 [m] [m] [deg ] 1 1.2 Case1 0.8 Case1 Case2 Case3 Case3 Case2 0 0.4 0 0 100 200 (a ) 300 [ m] -1 0 100 200 (b) ε yr [deg ] 300 [m] 300 [m] r [deg ] 4 0 0 Case1 Case1 -2 Case2 -4 Case2 Case3 Case3 -8 0 100 200 (c) 300 -4 [m] 100 200 (d) uf 200 ur 100 図 3.16: Robust Performance 0 0 3.5 0 まとめ -100 -200 本章では,前後輪独立操舵を用いた車両に対して,横方向速度の計測信号を必要としな 0 10 20 30 0 10 20 30 い適応車線追従操舵コントローラを提案した.そして,数値シミュレーションを用いて提 案手法の有効性を示した.以下に本章で得られた結論を述べる. 1. 車両の通常の運動方程式表現には車両の横方向速度が含まれる.このため,この運 動方程式表現を基にコントローラを開発した場合,コントローラに横方向速度が必 要となる.この問題を解決するため,車両の横方向速度を含まない新しい運動方程 式表現を提案した. 2. 従来法における車両の横方向速度を含まない運動方程式表現では,推定すべき未知 行列の要素は 14 個である.しかし,提案した新しい運動方程式表現では,推定すべ き未知行列の要素の数は 6 個である.このことにより,適応推定器に必要な積分器 の数を減らすことができ,システムの構造が簡潔となった. 66 3. 提案した新しい運動方程式を基に,新しい適応車線追従コントローラを開発した. 4. 開発した適応車線追従コントローラを用いた車両システムが安定であることを理論 的に示した.さらに,一つの設計パラメータを設定することにより,追従性能を改 善できることも理論的に示した. 5. 数値シミュレーションを用いて,一つの設計パラメータを大きく設定することによ り,車線追従性能を改善できることを明らかにした.このとき制御入力である前後 輪操舵角応答に発生する高周波数振動が小さくなることも示した. 6. 数値シミュレーションを用いて,車線追従の定常性能と過渡応答性能が独立に設計 できることを示した. 67 第4章 結論 本論文では,移動体の軌道追従制御手法の開発を行った.一般に移動体の軌道追従制御 では,移動体の速度信号計測を必要とする.良好な制御性能を要求する場合,精度の高い 速度計測が要求される.しかし,一般に,精度の高い速度計測は困難である.この問題を 解決するため,本研究では,速度計測を用いない軌道追従制御手法を提案する.提案する 速度計測を用いない軌道追従手法は,移動体の位置計測あるいは移動体と軌道との相対位 置計測及びヨーレート計測ができる移動体に適用できる. 第 2 章において,ロボットの車速計測を用いない新しい軌道追従制御法を提案した.ま ず,ロボットの駆動モータ特性するため電気モータ特性を考慮した二輪移動ロボットの運 動方程式を導出した.この運動方程式には車速が含まれる.このため,この運動方程式を 基にして制御法を直接開発した場合,コントローラに車速が必要となる.この問題を解決 するため,車速計測を含まない新しい運動方程式表現法を提案した.つぎに,新しい運動 方程式表現法を基に,左右モータダイナミクス特性が異なる場合でも軌道追従が可能とな る適応軌道追従制御法を開発した.そして,この制御法を用いた二輪移動ロボットが安定 となることを理論的に証明した.最後に,数値シミュレーションを用いて,左右モータダ イナミクス特性が異なる場合でも,開発した適応軌道追従制御を用いたロボットシステム において非常に良い追従性能が実現できることを明らかにし,さらに,設計パラメータ ε1 を小さくすることにより,最大軌道追従誤差を小さくできることも示した. 第 3 章では,前後輪独立した車輪操舵を用いたアクティブ車両に対して,横方向速度の 信号を必要としない適応車線追従コントローラを提案した.車両の通常の運動方程式表現 には車両の横方向速度が含まれる.このため,この運動方程式表現を基に直接コントロー ラを開発した場合,コントローラに横方向速度が必要となる.この問題を解決するため に,車両の横方向速度を含まない新しい運動方程式表現を提案した.従来法における車両 の横方向速度を含まない運動方程式表現では,推定すべき未知行列の要素数は 14 個であ る.しかし,提案した新しい運動方程式表現では,推定すべき未知行列の要素の数は 6 個 である.このことにより,適応推定器に必要な積分器の数を減らすことができ,システム 構成が簡潔となった.つぎに,提案した新しい運動方程式表現を基に,新しい適応軌道追 従コントローラを開発した.そして,開発した適応軌道追従コントローラを用いた車両シ ステムが安定であることを理論的に示し,一つの設計パラメータを設定することにより, 69 追従性能を改善できることも理論的に示した.最後に数値シミュレーションを用いて,一 つの設計パラメータを大きく設定することにより,車線追従性能を改善できることを明ら かにした.このとき制御入力である前後輪操舵角応答に発生する高周波数振動が小さくな ることも示した.さらに,提案手法において,車線追従の定常性能と過渡応答性能が独立 に設計できることを示した. 70 謝辞 本研究は,九州工業大学大学院工学研究院 大屋勝敬教授のもと,大屋研究室にて行 われたものです.研究を遂行するにあたり,数多くの方にご指導とご協力をいただきまし た.ここに謹んで感謝申し上げます. 本研究の遂行にあたっては,大屋勝敬教授から,テーマの設定から研究のあり方,考え 方など終始懇切なご指導とご鞭撻を賜りました.このような形で本研究をまとめることが できたのは,ひとえに大屋先生の熱心で辛抱強い指導の賜物です.ここに心から深く感謝 いたします. また,御多忙の中,九州工業大学 田川善彦教授,瀬部昇教授,相良慎一准教授には, 在学中ならびに本論文の仕上げにあたり,親切なご指導を賜りました.ここに謹んで諸先 生方に感謝の意を表します. さらに,日頃より御協力を頂いた機械知能工学科制御工学教室教職員の皆様ならびに, 同教室大屋研究室の皆様に深く感謝致します. 最後に,私の研究生活を支えてくれた数多くの先輩,友人,知人,そして私の母親,妻, 家族に心より感謝いたします. 平成 26 年 11 月 束 攀峰 71 参考文献 [1] 災害対応ロボットセンター設立構想,産業競争力懇親会 COCN, 2014 [2] J. 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Sun, Robust Adaptive Control, Prentice-Hall, 1996 84 A 付録 A ė の導出 µ(t) e (t) は次式で表現できる. 誤差信号の定義より µ b z (t)ξz (t) ∆e µ(t) = ∆µ(t) − Θ (A.1) 両辺を時間微分し,∆−1 = ∆ と µ̇(t) = −αµ(t) + um (t) を用いれば次のようになる. ḃ z (t)ξ z (t) − ∆Θ b z (t)ξ̇ z (t) ė = µ̇(t) − ∆Θ µ(t) b z (t)ξ z (t) − ∆Θ ḃ z (t)ξ z (t) − ∆Θ b z (t)ξ̇ z1 (t) − ∆Θ b z (t)ξ̇z2 (t) = −αe µ(t) + um (t) − α∆Θ (A.2) ξ̇ z2 (t) は利用可能な信号であるが ξ̇z1 (t) には進行方向速度 vp (t) を含むために利用可能で はない.したがって,ξ̇ z1 (t) について詳しく解析を行う. ( ) ξ̇z1 (t) = Ξ11 (t)η̇(t) + Ξ12 −Ṫ (t)g u (t) − T (t)ġ u (t) + ξ 13 (t) g u (t) = −f u (t) − ud (t) [ ]T Ξ11 (t) = −αI2 θ̇(t)I2 I2 0 × b 0 × b [ ]T Ξ12 = I2 0 × I2 0 × I2 0 × b 0 × b [ ]T ( )T T −αt −αt ξ 13 (t) = (0 × b) θ̈(t)η(t) + αθ̇(0)η(0)e (αη(0)e ) 0 0 (A.3) (A.4) e (t) = T (t)−1 v(t) + g u (t) の関係を用れば η̇(t) は次 まず (A.3) の第一項の η̇(t) を求める.u 式で表現できる. η̇(t) = v(t) − f η (t) = T (t)e u(t) − T (t)g u (t) − f η (t) (A.5) 次に (A.3) の第二項に関する解析を行う.まず,Ṫ (t) を求める.(2.2.43),(2.2.44) 及び e (t) + ud (t) より ω̇(t) , ż(t) は次式となる. ż(t) = u(t) = u e ω̇(t) = gω (t) + z(t) JT (t) Q(∆e µ(t) − Θz (t)ξz (t)) e z (t)ξ z (t)) + ud (t) ż(t) = T (t)−1 Q(∆e µ(t) − Θ T −1 85 (A.6) (A.6) を用いれば Ṫ (t) は次式ように表現できる. ) 1 d 1 ( Ṫ (t) = L (ω(t) + z1 (t)z2 (t)) = L ω̇(t) + z(t)T Ls ż(t) 2 dt 2 ) ) 1 ( 1 ( e z (t)ξ z (t)) = L gω (t) + z(t)T Ls ud (t) + L z(t)T (J + Ls ) T (t)−1 Q(∆e µ(t) − Θ [2 ] [ ] 2 1 0 0 1 L= , Ls = 0 0 1 0 (A.7) 続いて,(A.6) を用いて u̇d (t) を求める. u̇d (t) = u̇a (t) − k2 ż(t) (A.8) 微分信号 u̇a (t) は次式に示す. d u̇a (t) = dt ( ( k1 ω(t) + f (t) δd (t)2 ) d Jz d (t) + σ(t)J ż d (t) + dt ( δ̇d (t) k2 + ω(t)σ(t) + δd (t) ) z d (t) + Ω1 (t)ż d (t) ) (k1 ω̇(t) + f˙(t))δd (t) − 2(k1 ω(t) + f (t))δ̇d (t) = Jz d (t) + σ(t)J ż d (t) δd (t)3 ( ( )) d δ̇d (t) + ω̇(t)σ(t) + ω(t)σ̇(t) + z d (t) + Ω1 (t)ż d (t) dt δd (t) ) ( e (t)) + gf 1 (t) + g f 2 (t)T u e (t))δd (t) − 2(k1 ω(t) + f (t))δ̇d (t) (k1 (gω (t) + z(t)T J u Jz d (t) = δd (t)3 ( e (t))σ(t) + σ(t)J ż d (t) + (gω (t) + z(t)T J u ) ( e (t))δd (t) − 2(k1 ω(t) + f (t))δ̇d (t) e (t)) + gf 1 (t) + g f 2 (t)T u (k1 (gω (t) + z(t)T J u + ω(t) δd (t)3 ( )) d δ̇d (t) + z d (t) + Ω1 (t)ż d (t) dt δd (t) ) ( ( e (t))δd (t) e (t) + g f 2 (t)T u (k1 z(t)T J u e (t)σ(t) Jz d (t) + z(t)T J u = 3 δd (t) ( )) ( ) e (t))δd (t) e (t) + g f 2 (t)T u (k1 z(t)T J u k1 gω (t)δd (t) + ω(t) z d (t) + Jz d (t) δd (t)3 δd (t)3 86 )) ( ) ( ( gf 1 (t)δd (t) k1 gω (t)δd (t) + gω (t)σ(t) + ω(t) z d (t) + Jz d (t) δd (t)3 δd (t)3 ( ) ( ) −2(k1 ω(t) + f (t))δ̇d (t) gf 1 (t)δd (t) + ω(t) z d (t) + Jz d (t) δd (t)3 δd (t)3 ( ) ( ) d δ̇d (t) −2(k1 ω(t) + f (t))δ̇d (t) z d (t) + z d (t) + Ω1 (t)ż d (t) + σ(t)J ż d (t) + ω(t) δd (t)3 dt δd (t) (( ) ) k1 1 T T e (t) = (J + ω(t)I2 ) + σ(t)I2 z d (t)z(t) J + (J + ω(t)I2 )z d (t)g f 2 (t) u δd (t)2 δd (t)2 ( ( )) k1 gω (t)δd (t) k1 gω (t) + Jz d (t) + gω (t)σ(t) + ω(t) z d (t) δd (t)2 δd (t)2 ( ) (k1 ω(t) + f (t))δ̇d (t) gf 1 (t) (J + ω(t)I2 )z d (t) − 2 (J + ω(t)I2 )z d (t) + δd (t)2 δd (t)3 ( ) d δ̇d (t) + z d (t) + Ω1 (t)ż d (t) + σ(t)J ż d (t) (A.9) dt δd (t) 式 (A.9) を次式ように示す. u̇a (t) = Gua1 (t)e u(t) + Gua2 (t)z d (t) + (Ω1 (t) + σ(t)J)ż d (t) (A.10) ) k1 1 T T (J + ω(t)I2 ) + σ(t)I2 z d (t)z(t) J + (J + ω(t)I2 )z d (t)g f 2 (t) Gua1 (t) = δd (t)2 δd (t)2 ( ) k1 gf 1 (t) Gua2 (t) =gω (t) (J + ω(t)I ) + σ(t)I (J + ω(t)I ) + 2 2 2 δd (t)2 δd (t)2 2 δ̈d (t)δd (t) − δ̇d (t) (k1 ω(t) + f (t))δ̇d (t) −2 (J + ω(t)I ) + 2 3 2 δd (t) δd (t) (A.11) 微分信号 u̇a (t) の導出に次の f˙(t) の式が用いられた. ( ) ( f˙(t) =2 θ̈d (t)z2 (t) + θ̇(t)ż2 (t) − v̇d (t)sin(z1 (t)) − vd (t)ż1 (t)cos(z1 (t)) T e (t) =gf 1 (t) + g f 2 (t) u gf 1 (t) =2(θ̈d (t)z2 (t) − v̇d (t)sin(z1 (t))) + g f 2 (t)T ud (t) T g f 2 (t) =[−2vd (t)cos(z1 (t)) 2θ̇d (t) ] 87 (A.12) (A.6),(A.10) で得られた ż(t) , u̇a (t) を (A.8) に代入すれば u̇d (t) は次式となる. e z (t)ξ z (t)) − k2 ud (t) u̇d (t) =u̇a (t) − k2 T (t)−1 Q(∆e µ(t) − Θ =Gua1 (t)e u(t) + Gua2 (t)z d (t) + (Ω1 (t) + σ(t)J)ż d (t) e z (t)ξ z (t)) − k2 ud (t) − k2 T (t)−1 Q(∆e µ(t) − Θ (A.13) (A.7)-(A.13) を用いれば −Ṫ (t)g u (t) − T (t)ġ u (t) は次式で表現できる. 1 1 −Ṫ (t)g u (t) − T (t)ġ u (t) = − Lg u (t)(gω (t) + z(t)T Ls ud (t)) − g u (t)z(t)T (J + Ls )e u(t) 2 2 − T (t)(−ḟ u (t) − u̇d (t)) 1 = − Lg u (t)(gω (t) + z(t)T Ls ud (t)) + T (ḟ u (t) + Gua2 (t)z d (t) 2 − k2 ud (t) + (Ω1 (t) + σ(t)J)ż d (t)) ) ( 1 T e (t) + T (Gua1 (t) − k2 I2 ) − Lg u (t)z(t) (J + Ls ) u 2 =ξ 15 (t) + ξ16 (t)e u(t) e z (t)ξz (t)) =ξ 15 (t) + ξ16 (t)T (t)−1 Q(∆e µ(t) − Θ (A.14) 1 ξ 15 (t) = − Lg u (t)(gω (t) + z(t)T Ls ud (t)) + T (ḟ u (t) + Gua2 (t)z d (t) − k2 ud (t) 2 (A.15) + (Ω1 (t) + σ(t)J)ż d (t)) 1 ξ 16 (t) =T (Gua1 (t) − k2 I2 ) − Lg u (t)z(t)T (J + Ls ) 2 (A.5)-(A.14) を用いれば (A.3) は次式で表現できる. ξ̇ z1 (t) =g 11 (t) + G12 (t)e u(t) (A.16) e z (t)ξ z (t)) =g 11 (t) + G12 (t)T (t)−1 Q(∆e µ(t) − Θ G12 (t) =Ξ11 (t)T (t) + Ξ12 ξ 16 (t) g 11 (t) =Ξ11 (t)(−T (t)g u (t) − f η (t)) + Ξ12 ξ 15 (t) + ξ 13 (t) 88 (A.17) (A.2) に (A.17) を用いて表現すれば次式のように表現できる. ḃ z (t)ξ z (t) − ∆Θ b z (t)ξ̇ z1 (t) − ∆Θ b z (t)ξ̇ z2 (t) b z (t)ξ z (t) − ∆Θ ė = − αe µ(t) µ(t) + um (t) − α∆Θ ḃ z (t)ξ z (t) b z (t)ξ z (t) − ∆Θ = − αe µ(t) + um (t) − α∆Θ b z (t)(g 11 (t) + G12 (t)e b z (t)ξ̇ z2 (t) − ∆Θ u(t)) − ∆Θ b z (t)G12 (t)e = − αe µ(t) + um (t) − ∆Θ u(t) − g µe (t) (A.18) ḃ z (t)ξ z (t) + ∆Θ b z (t)g 11 (t) + ∆Θ b z (t)ξ̇z2 (t) + α∆Θ b z (t)ξ z (t) g µe (t) =∆Θ B (A.19) 付録 B 推定器 (3.2.21) と (3.2.22) の導出 速度信号を含む推定器 (3.2.24) と (3.2.25) から,速度信号を用いない推定器 (3.2.21) と (3.2.22) を導出する. 1. 速度信号を用いない推定器 (3.2.21) の導出 89 速度信号を含む推定器 (3.2.24) から ḃ = −(δ(α, t)e Θ(t) z e (t) + γz e (t))ξ u (t)T Γ be (t) + γ(z(t) − z d (t)))ξ u (t)T Γ = −(δ(α, t)(z e (t) − z be (t)) + γz d (t)]ξ u (t)T Γ = −(δ(α, t) + γ)z(t)ξ u (t)T Γ + [δ(α, t)(z d (t) + z be (t)) + γz d (t)]ξu (t)T Γ = −(δ(α, t) + γ)(ġ x (t) + g εx (t))ξ u (t)T Γ + [δ(α, t)(z d (t) + z d [(δ(α, t) + γ)g x (t)ξu (t)T Γ] + δ̇(α, t)g x (t)ξ u (t)T Γ + (δ(α, t) + γ)g x (t)ξ̇u (t)T Γ dt be (t)) + γz d (t)]ξ u (t)T Γ − (δ(α, t) + γ)g εx (t)ξu (t)T Γ + [δ(α, t)(z d (t) + z [ d T T = − [(δ(α, t) + γ)g x (t)ξu (t) Γ] + δ̇(α, t)g x (t)ξ u (t) Γ + (δ(α, t) + γ)g x (t) ξ̇z1 (t) dt ]T T T T T + [0, ξ̇ u2 (t) ] + ξ̇ z2 (t)c x(t) + ξ z2 (t)c ẋ(t) Γ − (δ(α, t) + γ)g εx (t)ξ u (t)T Γ =− be (t)) + γz d (t)]ξ u (t)T Γ + [δ(α, t)(z d (t) + z [ d T T = − [(δ(α, t) + γ)g x (t)ξu (t) Γ] + δ̇(α, t)g x (t)ξ u (t) Γ + (δ(α, t) + γ)g x (t) ξ̇z1 (t) dt ]T ]T [ T T T T + [0, ξ̇ u2 (t) ] Γ + (δ(α, t) + γ)g x (t) ξ̇ z2 (t)c x(t) + ξ z2 (t)c ẋ(t) Γ be (t)) + γz d (t)]ξ u (t)T Γ − (δ(α, t) + γ)g εx (t)ξ u (t)T Γ + [δ(α, t)(z d (t) + z 90 [ d T T = − [(δ(α, t) + γ)g x (t)ξ u (t) Γ] + δ̇(α, t)g x (t)ξ u (t) Γ + (δ(α, t) + γ)g x (t) ξ̇ z1 (t) dt ]T 1 1d T T T + [0, ξ̇u2 (t) ] Γ + (δ(α, t) + γ)g x (t)(ξ̇ z2 (t)cT [(δ(α, t) + γ)g x (t) x x(t)) Γ + 2 2 dt 1 T T T T × (ξ z2 (t)cT x x(t)) Γ] − δ̇(α, t)g x (t)(ξ z2 (t)cx x(t)) Γ − (δ(α, t) + γ)g εx (t)ξ u (t) Γ 2 be (t)) + γz d (t)]ξ u (t)T Γ + [δ(α, t)(z d (t) + z [ d T T = − [(δ(α, t) + γ)g x (t)ξ θ (t) Γ] + δ̇(α, t)g x (t)ξ u (t) Γ + (δ(α, t) + γ)g x (t) ξ̇ z1 (t) dt ]T 1 1 T T T T T + [0, ξ̇u2 (t) ] Γ + (δ(α, t) + γ)g x (t)(ξ̇ z2 (t)cT x x(t)) Γ − δ̇(α, t)g x (t)(ξ z2 (t)cx x(t)) Γ 2 2 be (t)) + γz d (t)]ξ u (t)T Γ − (δ(α, t) + γ)g εx (t)ξ u (t)T Γ + [δ(α, t)(z d (t) + z [ d T T = − [(δ(α, t) + γ)g x (t)ξ θ (t) Γ] + δ̇(α, t)g x (t)ξ θ (t) Γ + (δ(α, t) + γ)g x (t) ξ̇ z1 (t) dt ]T 1 T T T + [0, ξ̇u2 (t) ] Γ + (δ(α, t) + γ)g x (t)(ξ̇ z2 (t)cT x x(t)) Γ 2 be (t)) + γz d (t)]ξ u (t)T Γ − (δ(α, t) + γ)g εx (t)ξ u (t)T Γ + [δ(α, t)(z d (t) + z (B.1) 式 (B.1) を整理すれば,速度信号を用いない推定器 (3.2.21) を導出することができる.式 (B.1) の導出に,次の関係式が用いられる. ]T [ T T (δ(α, t) + γ)g x (t) ξ̇ z2 (t)c x(t) + ξ z2 (t)c ẋ(t) Γ 1 1d T = (δ(α, t) + γ)g x (t)(ξ̇ z2 (t)cT [(δ(α, t) + γ)g x (t) x x(t)) Γ + 2 2 dt 1 T T T × (ξz2 (t)cT x x(t)) Γ] − δ̇(α, t)g x (t)(ξ z2 (t)cx x(t)) Γ 2 (B.2) そして,関係式 ḃe (t) be (t) + vx (t)Az1 z ξ̇u2 (t) = ξ̇ u1 (t) + v̇x (t)Az1 z ḃa (t) be (t) + vx (t)Az1 z = ξ̇ u1 (t) + v̇x (t)Az1 z より,微分信号 ξ̇ u2 (t) は速度信号が用いない有用な信号である. 2. 速度信号を用いない推定器 (3.2.22) の導出 91 (B.3) 速度信号を含む推定器 (3.2.25) から ḃe (t) = −vx (t)−1 dz z be (t) + αe ee (t) z z e (t) − vx (t)Az1 z be (t) + α(z e (t) − z be (t)) − vx (t)Az1 (z e (t) − z be (t)) = −vx (t)−1 dz z be (t) + (αI2 − vx (t)Az1 )(z(t) − z d (t) − z be (t)) = −vx (t)−1 dz z be (t) + (αI2 − vx (t)Az1 )(ġ x (t) + g εx (t) − z d (t) − z be (t)) = −vx (t)−1 dz z (B.4) 式 (B.4) を整理すれば,速度信号を用いない推定器 (3.2.22) を導出することができる. C 付録 C 式 (3.3.6) の導出 式 (3.3.6) の導出には次の式を用いる. e ėe (t) = −αe z z e (t) − Q(K Θ(t)ξ u (t) + f z1 (t) + f z2 (t)) (C.1) f z1 (t) = vx (t)−1 (dz Q−1 + β(α, t)K)e z e (t) f z2 (t) = (1 − β(α, t))vx (t)−1 Kz e (t) したがって,状態量 ζ(t) に関する微分方程式は以下のようになる. ζ̇(t) = − ((α + dz vx (t)−1 )I2 + vx (t)−1 β(α, t)QK)ζ(t) − g ζ (t) − δ(α, t)QKe z e (t)ξ u (t)T Γξ u (t) − β̇(α, t)vx (t)−1 QKb z e (t) (C.2) e ξ̇ u (t) + Θ̇(t)ξ u (t)) − vx (t)−2 v̇x (t)(dz I2 g ζ (t) =QK(γz e (t)ξ u (t)T Γξ u (t) + Θ(t) + β(α, t)QK)e z e (t) + (1 − β(α, t))vx (t)−1 QK(ż e (t) − vx (t)−1 v̇x (t)z e (t)) (C.3) 定理 3.1 に示した正定値関数 V (t) に含まれた信号,ξ u (t) と ξ̇ u (t) が有界であるから,g ζ (t) が有界となり,そして ∥g ζ (t)∥ ≤ ρgζ を満たす. ρgζ は α と無関係な正の定数である. 式 (3.3.2),|e−αt δ(α, t)| ≤ 1 for t ≥ 0 と |β̇(α, t)| < ρβ̇ αe−αt for t ≥ 0,次の不等式を 92 得る. 1 − 2ζ(t)T Q−1 g ζ (t) ≤ αVζ (t) + ρζ3 α−1 3 1 (C.4) 2β̇(α, t)vx (t)−1 ζ(t)T Kb z e (t) ≤ αVζ (t) + ρζ4 αe−2αt 3 1 − 2δ(α, t)ζ(t)T Ke z e (t)ξ u (t)T Γξ u (t) ≤ αVζ (t) + ρζ5 α0.5 3 ただし,ρζi , i = 3...5 は α と無関係な正の定数である.式 (C.4) を用いれば,Vζ (t) = ζ(t)T Q−1 ζ(t) の微分式は次のようになる. V̇ζ (t) =2ζ(t)T Q−1 ζ̇(t) ( T −1 =2ζ(t) Q − ((α + dz vx (t)−1 )I2 + vx (t)−1 β(α, t)QK)ζ(t) − g ζ (t) ) T −1 − δ(α, t)QKe z e (t)ξ u (t) Γξ u (t) − β̇(α, t)vx (t) QKb z e (t) ≤ − αVζ (t) + ρζ4 αe−2αt + ρζ6 α0.5 (C.5) ただし,ρζ6 は α と無関係な正の定数である.式 (C.5) 両辺を積分すると,次の式を得る. −αt −0.5 ∫ t e−2αt e−α(τ −t) dτ 0 ∫ t −0.5 −αt −αt + ρζ4 αe e−ατ dτ ≤ e Vζ (0) + ρζ6 α Vζ (t) ≤ e Vζ (0) + ρζ6 α + ρζ4 α 0 2 −αt ≤α e ρζ7 + ρζ6 α −0.5 ただし,ρζ7 は α と無関係な正の定数である.式 (C.6) から,式 (3.3.6) を得る. 93 (C.6)
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