ボラティリティ投資とリスク 〜ボラティリティ・エクスポージャーのリス ク

NFIリサーチ・レビュー2015 年 3 ⽉
Research Report
ボラティリティ投資とリスク
2015 年 3 ⽉ 18 ⽇
〜ボラティリティ・エクスポージャーのリス
ク低減効果について〜
投資⼯学研究所
佐藤
要
史仁
約
2008 年 9 ⽉のリーマン・ブラザーズ破綻に始まり、世界的な⾦融危機へと発展したリーマンショックでは、
世界の株式市場が⼤きな下落に⾒舞われ、株式のダウンサイドリスク抑制への関⼼はより⼀層⾼まった。株式の
リスク抑制に関連する検証は以前から⾏われており、株価が上昇局⾯にある現在でもその傾向は変わらない。ま
た、市場のリスクの⼤きさを測る参考指標として、投資家が予想する将来の株式ボラティリティを⽰す CBOE
Volatility Index(以下、VIX)が広く利⽤されているが、リーマンショック以降は、VIX を指標として利⽤する
だけでなく、エクスポージャーを取るための投資対象として注⽬が集まっている。Hill[2013]では、⽶国を対象
とした分析を⾏い、VIX へのエクスポージャーが株式のリスクを低減させる⼿段として有⼒な候補の⼀つである
事を⽰した。
そこで本稿では、⽇本株式の場合にもリスクを低減させる⼿段として、VIX へのエクスポージャーを取ること
が有⽤であるかを検証した。まず、VIX の基本的な特徴を確認し、次に、バックテストを⾏ってリスク低減効果
を検証した。また、⽇本版 VIX である⽇経平均ボラティリティー・インデックス(以下、⽇経 VI)についても同
様の検証を⾏った。
その結果、VIX 先物指数を 5%程度保有するだけでも、⽇本株式のリスクの低減に効果があることが確認され
た。また、⽇本株式のリスク低減効果には VIX よりも⽇経 VI のエクスポージャーを取る⽅が、効果的である可
能性が⽰唆された。
⽬次
1. はじめに
2. VIX の特徴
3. ⽇本株式に対する VIX エクスポージャーのリスク低減効果
4. VIX と⽇経 VI エクスポージャーのリスク低減効果
5. まとめ
本資料は、信頼性の高いデータから作成されておりますが、当社はその正確性・確実性に関し、いかなる保証をするものではございません。本資料は、
情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではございません。証券投資に関する最終判断は、投資家ご自身の判断でなさるようにお願い
いたします。本資料の著作権は当社に帰属し、本資料の転用および販売は固く禁じられております。
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NFIリサーチ・レビュー2015 年 3 ⽉
1. はじめに
2008 年 9 ⽉のリーマン・ブラザーズ破綻に始まり、世界的な⾦融危機へと発展したリーマンショッ
クでは、世界の株式市場が⼤きな下落に⾒舞われ、株式のダウンサイドリスク抑制への関⼼はより⼀層
⾼まった。株式のリスク抑制に関連する検証は以前から⾏われており、株価が上昇局⾯にある現在でも
その傾向は変わらない。特に、株式のリスクに関係する指標であり、投資家が予想する将来の株式ボラ
ティリティを⽰す VIX は注⽬度が⾼い。VIX は、株価の急落時など投資家の不安⼼理や市場の不確実性
が増⼤した時に上昇する傾向があり、実際にリーマンショックの際には VIX が⼤きく上昇した。このよ
うな特徴的な傾向から、VIX は市場参加者の不安⼼理の状態を確認する指標として投資家に利⽤されて
おり、VIX の⽔準によって株式の実質保有ウェイトを調整するファンドも存在する。近年、このような
指標としての利⽤だけでなく、エクスポージャーを取るための投資対象としても VIX に注⽬が集まって
いる。実際に VIX のエクスポージャーを取る場合は、VIX の先物を売買することとなる。これは VIX
が TOPIX 配当込み株価指数のように取引可能な資産から構成されている指数ではないため、直接売買
しポジションをとることができないためである。
⽶国の株式市場における先⾏研究として、Hill[2013]では、VIX 先物の保有が株式のリスクに及ぼす
効果を調査している。具体的には、2007 年から 2011 年の間に株式を保有し続けた場合と、株式と VIX
先物を⼀定の保有⽐率で⽉次リバランスにより運⽤した場合とを⽐較検証している。図表 1 はその結果
である。VIX 先物は、VIX 先物指数である S&P 500 VIX Short-Term Futures Index(以下、VIX 短
期)と S&P 500 VIX Mid-Term Futures Index(以下、VIX 中期)を⽤いている1。これによると、株
式のみのポートフォリオに対して、5%〜10%程度の VIX 先物の保有でリスクが約 4%減少し、例えば
VIX 中期を 10%保有したときのリスクは、株式を 75%、キャッシュを 25%保有したポートフォリオ
のリスク⽔準とおおよそ同⽔準となることを⽰している。
図表 1
株式(100%)
VIX 先物の保有による株式のリスク低減効果
株式(90%)
株式(75%)
キャッシュ(10%) キャッシュ(25%)
株式(95%)
VIX短期(5%)
株式(90%)
VIX中期(10%)
リターン
-0.25%
0.06%
0.45%
0.45%
2.15%
リスク
18.88%
16.99%
14.16%
15.08%
14.47%
リスク
減少幅
-
1.89%
4.72%
3.80%
4.41%
注:括弧内は保有⽐率を表す。リターンとリスクは年率換算。リスク減少幅は株式(100%)のリスクからのリスク減
少幅を表す。株式は S&P 500 種指数、
キャッシュは 3 ヶ⽉物の⽶国財務省短期証券を利⽤。
VIX 短期は S&P 500 VIX
Short-Term Futures Index、VIX 中期は S&P 500 VIX Mid-Term Futures Index を⽰す。
(出所) Hill[2013]より NFI 作成
また、株式と債券の 2 資産を保有したポートフォリオに対して、ヘッジファンドの組み⼊れによるリ
1
VIX 短期と VIX 中期の説明は 2 章を参照。
本資料は、信頼性の高いデータから作成されておりますが、当社はその正確性・確実性に関し、いかなる保証をするものではございません。本資料は、
情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではございません。証券投資に関する最終判断は、投資家ご自身の判断でなさるようにお願い
いたします。本資料の著作権は当社に帰属し、本資料の転用および販売は固く禁じられております。
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スク減少幅と VIX 先物の組み⼊れによるリスク減少幅とを⽐較し、ヘッジファンドより VIX 先物の組
み⼊れによるリスク減少幅の⽅が⼤きいことも報告している。具体的には、2007 年から 2011 年の間
に⽉次リバランスでポートフォリオの各資産の組み⼊れ⽐率を⼀定として運⽤する前提で、株式 60%
(⽶国株 30%、外国株 30%)と債券 40%(⽶国債 40%)で運⽤したポートフォリオのリスクに対し
て、⽶国株の保有⽐率を 20%に減少させ、代わりにヘッジファンドを 10%組み⼊れたことによるリス
ク減少幅は約 1.1%となった。⼀⽅で、ヘッジファンドの代わりに VIX 短期を 10%組み⼊れたことに
よるリスク減少幅が約 5.7%となることを⽰した。
この先⾏研究から、VIX の保有が株式のリスクを低減する⼿段として有⼒な候補の⼀つであることが
⽰唆される。そこで本稿では、⽇本株式の場合にも、ボラティリティ指数の保有がリスク低減に有⽤で
あるかを検証するため、まず VIX について検討を⾏い、その後⽇本版 VIX について検討を⾏う2。以下、
第 2 章で VIX の特徴について確認し、第 3 章で⽇本株式と VIX エクスポージャーを取ったポートフォ
リオのバックテストを⾏ってリスク低減効果を検証した。ここでは、実際に投資可能な分析を⾏うため、
先⾏研究にならい、VIX 先物指数である VIX 短期と VIX 中期を⽤いた。第 4 章では、⽇本版 VIX であ
る⽇経 VI の⽇本株式に対するリスク低減効果を検証した。⽇経 VI の先物指数である⽇経平均ボラティ
リティー・インデックス先物指数は、指数値の利⽤可能な期間が短いため、簡易的に⽇経 VI 指数と VIX
指数を⽤いて⽇本株式のリスク低減効果を⽐較し、効果の違いを確認した。なお本稿では⽇本株式とし
て TOPIX 配当込み株価指数(以下、TOPIX)を、⽶国株式として S&P 500 種指数(以下、S&P500)
を⽤いた。
2. VIX の特徴
VIX とは CBOE Volatility Index の略で、シカゴオプション取引所(CBOE)によって算出されてい
る株式ボラティリティ指数である。この指数は、S&P500 を対象とするオプションの取引参加者が予測
する株価のボラティリティで、オプションの価格から逆算されたインプライド・ボラティリティである。
VIX を直接売買しポジションをとることはできないが、指数の先物取引が⾏われている。また、先物に
投資した際のパフォーマンスを⽰す指数も存在し S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスでは VIX 短期
と VIX 中期を算出している。VIX 短期は第 1 限⽉と第 2 限⽉のロングポジションを⽇々ロールする取
引のパフォーマンスを表す指数で、VIX 中期は第 4、5、6、7 限⽉のロングポジションを⽇々ロールす
る取引のパフォーマンスを表す指数となっている3。
VIX の特徴として、平均回帰する傾向があること、株式と強い逆相関を⽰すこと、ボラティリティが
⾮常に⾼いこと、株式のリターンに対する感応度に⾮対称性があることが知られている。図表 2 は 2005
年 12 ⽉末から 2014 年 12 ⽉末までの VIX の推移である。2005 年 12 ⽉末以降において、VIX はリー
2
VIX のリターンの分布はファットテールな分布で正規分布とは異なる傾向がある。そのため、標準偏差を⽤いたリスク計測では、
リスクを過⼩評価してしまう可能性がある。この点について注意が必要ではあるが、本稿では先⾏研究にならい標準偏差を⽤
いてリスクを計測した。
3
S&P Dow Jones Indices: S&P VIX 先物指数メソドロジーを参照。
本資料は、信頼性の高いデータから作成されておりますが、当社はその正確性・確実性に関し、いかなる保証をするものではございません。本資料は、
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マンショックのあった 2008 年後半に最も⼤きく上昇しており、次いで 2010 年の欧州債務危機や 2011
年の⽶国国債格下げ時期にも急伸していることが分かる。⼀⽅で VIX が⼤きく上昇した後は、おおよそ
20%前後の⽔準へ回帰する傾向が⾒て取れる。回帰する⽔準の概算として、図表 2 の期間での中央値を
算出すると、約 17.9%であった。図表 3 は 2006 年 1 ⽉から 2014 年 12 ⽉末までの VIX、VIX 短期、
VIX 中期及び S&P 500 のリターンの統計値である。まず VIX について統計値を確認すると、ボラティ
リティが約 117%で S&P 500 と⽐較して⾮常に⾼い。歪度については、S&P 500 がマイナスであるの
と反対にプラスの値を⽰している。S&P 500 との相関については-0.74 を⽰し、S&P 500 と強い逆相
関をもっていると⾔える。次に VIX 短期と VIX 中期について確認すると、VIX 短期のボラティリティ
が VIX のおおよそ半分の約 63%、VIX 中期はさらに半分程度の約 31%であるが、いずれも S&P 500
よりは⾼い⽔準である。歪度は VIX と同様にプラスの値を⽰し、相関係数は VIX とほぼ同じである。
ここで注意点として VIX 短期と VIX 中期のリターンがマイナスとなっていることが挙げられる。⼀般
的に先物のポジションをロールオーバーする際にコストが発⽣するケースがあり、⻑期間保有した場合
ロールコストにより、リターンがスポットのリターンと⽐較して、低い⽔準となる可能性があることに
注意が必要である。
図表 2
VIX の推移
注:VIX は CBOE Volatility Index を⽰す。
(出所) Bloomberg データより NFI 作成
本資料は、信頼性の高いデータから作成されておりますが、当社はその正確性・確実性に関し、いかなる保証をするものではございません。本資料は、
情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではございません。証券投資に関する最終判断は、投資家ご自身の判断でなさるようにお願い
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図表 3
VIX 及び VIX 先物指数と S&P 500 のリターンの統計値
リターン
ボラティリティ
歪度
尖度
S&P500
との相関
S&P500
5.68%
21.18%
-0.08
10.52
1.00
VIX
5.26%
116.73%
1.29
6.28
-0.74
VIX短期
-40.92%
62.70%
0.82
3.50
-0.76
VIX中期
-12.00%
31.33%
0.60
3.54
-0.75
注:⽇次リターンから算出。リターンは幾何平均リターン。検証期間は 2006 年 1 ⽉〜2014 年 12 ⽉末。S&P 500 は S&P
500 種指数、VIX は CBOE Volatility Index、VIX 短期は S&P 500 VIX Short-Term Futures Index、VIX 中期
は S&P 500 VIX Mid-Term Futures Index を⽰す。
(出所) Bloomberg データより NFI 作成
次に株式に対する VIX の感応度を確認する。図表 4 は 2006 年 1 ⽉〜2014 年 12 ⽉末までの S&P 500
の⽇次リターンに対する、VIX、VIX 短期、VIX 中期それぞれの⽇次リターンの感応度を⽰す。S&P 500
のリターンがプラスの時の感応度と、マイナスの時の感応度との⾮対称性を確認するため、プラスとマ
イナスの場合に分けて近似直線を当てはめた。S&P 500 のリターンがプラスの時の近似直線は右上の式、
マイナスの時の近似直線は左上の式が対応している。傾きの値は、符号がマイナスであれば、S&P 500
の⽇次リターンが 1%下落した場合に平均的に何%上昇するかを表す。例えば図表 4 左図の VIX の感応
度を⾒ると、S&P 500 の⽇次リターンが-1%であれば、VIX は平均的に約 4.1%のリターンを⽰すの
に対し、S&P 500 の⽇次リターンが1%の場合には VIX は平均的に約-2.5%のリターンとなることを
⽰している。このことから S&P 500 がマイナスリターンの場合の⽅が VIX の変動が⼤きいという⾮対
称性があるといえる。この⾮対称性は VIX 短期、VIX 中期でも確認できるが、感応度の⼤きさとともに
VIX 短期、VIX 中期の順で徐々に⼩さくなっている。
図表 4
S&P 500 のリターンに対する感応度(左図:VIX、中図:VIX 短期、右図:VIX 中期)
注: S&P 500 は S&P 500 種指数、VIX は CBOE Volatility Index、VIX 短期は VIX Short-Term Futures Index、
VIX 中期は VIX Mid-Term Futures Index を⽰す。
(出所) Bloomberg データより NFI 作成
以上のように、VIX と VIX 短期、VIX 中期とでは統計値に違いがあった。しかし強弱はあるものの⼤
きな特徴は概ね⼀致しており、株式との強い逆相関やプラスの歪度と感応度の⾮対称性は分散効果やテ
本資料は、信頼性の高いデータから作成されておりますが、当社はその正確性・確実性に関し、いかなる保証をするものではございません。本資料は、
情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではございません。証券投資に関する最終判断は、投資家ご自身の判断でなさるようにお願い
いたします。本資料の著作権は当社に帰属し、本資料の転用および販売は固く禁じられております。
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ールリスクの低減効果が期待できる。そこで次章では、VIX のエクスポージャーを取ることによる⽇本
株式のリスク低減効果について検証を⾏った。
3. ⽇本株式に対する VIX エクスポージャーのリスク低減効果
この章では、VIX のエクスポージャーを取ることによる⽇本株式のリスク低減効果について検証した。
実際に取引可能な分析を⾏うため、先⾏研究にならい、VIX 先物指数の VIX 短期及び VIX 中期を⽤い
た。VIX 先物を保有することによる株式のリスク低減効果を⽐較するため、同様に株式に対するリスク
低減効果が期待される他の資産として、⾦、コモディティ、ヘッジファンドについても検証した4。また、
⼀般的に⽶国株式市場の動向が翌⽇の⽇本市場に影響する場合が多いことから、VIX 短期、VIX 中期、
⾦、コモディティ、ヘッジファンドは⽇本⽇付の前⽇の値を⽤いた。ドル建て資産である VIX 短期、VIX
中期、コモディティ、ヘッジファンドについては、円換算5した値を⽤いた。まず、図表 5 の 2006 年 1
⽉から 2014 年 12 ⽉末までの各資産のリターンの統計値について確認する。図表5より VIX 先物は、
⾦、コモディティ、ヘッジファンドとは異なる特徴を持っていることが分かる。具体的には、VIX 短期
及び VIX 中期のボラティリティは他の資産より⾼く、歪度がプラスを⽰すのは VIX 短期と VIX 中期の
みであった。また、VIX 短期と VIX 中期のみが株式と逆相関となった。VIX 先物と株式の相関について、
S&P500 との相関係数と TOPIX との相関係数を⽐較すると、S&P500 との相関係数が VIX 短期、VIX
中期とも約-0.75 であったのに対し、TOPIX との相関係数は VIX 短期が-0.40、VIX 中期が-0.35 を⽰
し、逆相関が弱いことが確認された。
図表 5
各資産のリターンの統計値
リターン
ボラティリティ
歪度
尖度
TOPIX
との相関係数
TOPIX
0.11%
23.81%
-0.18
7.13
1.00
VIX短期
-42.20%
62.22%
0.92
4.36
-0.40
VIX中期
-12.48%
31.28%
0.50
4.36
-0.35
金
10.19%
21.82%
-0.39
6.82
0.17
コモディティ
0.19%
27.89%
-0.30
4.89
0.30
ヘッジファンド
0.76%
12.54%
-0.43
6.33
0.37
注:⽇次リターンから算出。VIX 短期、VIX 中期、コモディティ、ヘッジファンドは円換算した値を使⽤。リターンは
幾何平均リターン。検証期間は 2006 年 1 ⽉〜2014 年 12 ⽉末。TOPIX は TOPIX 配当込み株価指数、⾦は⾦スポ
ット価格/円、コモディティは S&P GSCI 商品指数、ヘッジファンドは HFRX グローバル・ヘッジファンド・イン
デックス、VIX 短期は S&P 500 VIX Short-Term Futures Index、VIX 中期は S&P 500 VIX Mid-Term Futures
Index を⽰す。
(出所) Bloomberg データより NFI 作成
4
ヘッジファンドのインデックスには、サバイバーシップバイアスにより過去のパフォーマンスが過⼤評価される可能性があるこ
5
円換算は Bloomberg のロンドンコンポジットレートを⽤いた。
とに注意が必要であるが、本稿では VIX と⽐較するための⽬安としての利⽤であるため、このバイアスの議論は⾏わない。
本資料は、信頼性の高いデータから作成されておりますが、当社はその正確性・確実性に関し、いかなる保証をするものではございません。本資料は、
情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではございません。証券投資に関する最終判断は、投資家ご自身の判断でなさるようにお願い
いたします。本資料の著作権は当社に帰属し、本資料の転用および販売は固く禁じられております。
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NFIリサーチ・レビュー2015 年 3 ⽉
次に、株式のリスク低減効果を確認するため、株式を 100%保有した場合のパフォーマンスと、⽉次
リバランスで株式 95%、追加資産を 5%保有した場合のパフォーマンスとを⽐較した6。図表6はその
結果を⽰す。最もリスクが減少した資産は VIX 短期であり、約 2.5%の減少幅となった。次に VIX 中期
が約 1.8%の減少幅となっている。その他資産は 0.8%~1%程度の減少幅となった。また、VIX 短期と
VIX 中期とも最⼤ドローダウン、⽇次最⼤損失率がその他の資産を保有した場合よりも改善しており、
歪度も 0 に近くなっていることが確認できる。ただし、リターンについては VIX 先物の平均リターンが
⼤きくマイナスとなっているため、株式のリターンより悪化している点には注意が必要である。
図表6 株式と各資産を 5%保有した場合のパフォーマンス
TOPIX(100%)
TOPIX(95%)
VIX短期(5%)
TOPIX(95%)
VIX中期(5%)
TOPIX(95%)
金(5%)
TOPIX(95%)
コモディティ(5%)
TOPIX(95%)
ヘッジファンド(5%)
リターン
リスク
リスク
減少幅
リスク・ 最大ドロー 日次最大
リターン比
ダウン
損失率
0.11%
23.81%
-
0.00
-60.15%
-1.24%
21.33%
2.48%
-0.06
-0.10%
22.00%
1.81%
0.74%
22.79%
0.25%
0.18%
歪度
尖度
-9.52%
-0.18
7.13
-55.80%
-8.87%
-0.11
7.30
0.00
-55.59%
-8.89%
-0.17
7.10
1.02%
0.03
-57.95%
-9.04%
-0.23
6.68
23.06%
0.75%
0.01
-59.16%
-9.33%
-0.23
6.68
22.84%
0.98%
0.01
-59.17%
-9.14%
-0.22
6.77
注:⽇次リターンから算出。VIX 短期、VIX 中期、コモディティ、ヘッジファンドは円換算した値を使⽤。リターンは
幾何平均リターン。リスク減少幅は TOPIX(100%)のリスクから各ポートフォリオのリスクを引いた値を表す。検証
期間は 2006 年 1 ⽉〜2014 年 12 ⽉末。括弧内は保有⽐率を表す。TOPIX は TOPIX 配当込み株価指数、⾦は⾦スポ
ット価格/円、コモディティは S&P GSCI 商品指数、ヘッジファンドは HFRX グローバル・ヘッジファンド・インデッ
クス、VIX 短期は S&P 500 VIX Short-Term Futures Index、VIX 中期は S&P 500 VIX Mid-Term Futures Index
を⽰す。
(出所) Bloomberg データより NFI 作成
株式のリスクの減少幅に注⽬した場合、リスクを最も減少させる最適な保有⽐率は各資産で異なると
考えられる。そこで株式と株式に追加する資産のポートフォリオについて、追加資産の保有⽐率とリス
クの減少幅の関係を検証した。図表 7 は、横軸は追加資産の保有⽐率を表し、縦軸は株式を 100%保有
した場合のリスクから減少したリスクの幅を⽰している。また、図表 8 ではリスク減少幅が最⼤となっ
た時の追加資産の保有⽐率とそのリスク減少幅を、また、リスク減少幅が 3%となるために必要な追加
資産の最⼩保有⽐率を⽰した。リスクの減少幅が最⼤となる保有⽐率を確認すると、VIX 短期は 19%、
⼀⽅、VIX 中期は 39%となった。これは、図表 5 にあるとおり、VIX 中期と VIX 短期の株式に対する
相関係数はほぼ同じではあるが、VIX 中期のボラティリティが VIX 短期の約半分であることによると考
6
2006 年 1 ⽉から 2014 年 12 ⽉末の全期間での検証の他に、VIX に⼤幅な変動があったリーマンショック時の 2008 年 9 ⽉か
ら 2009 年 8 ⽉の期間を除外した期間での検証と、TOPIX や S&P500 が上昇局⾯にあり VIX が⽐較的安定推移していた 2012
年 1 ⽉から 2014 年 12 ⽉のみの期間での検証も⾏った。その結果、どちらの場合も、株式に対して VIX が逆相関であること
は変わらず、リスク低減効果を確認できた。また、リーマンショックを含む全期間での検証と⽐較すると、どちらの場合もリ
スク低減効果は弱くなるが、他資産よりも VIX のリスク低減効果が優位であることに変わりはない結果となった。
本資料は、信頼性の高いデータから作成されておりますが、当社はその正確性・確実性に関し、いかなる保証をするものではございません。本資料は、
情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではございません。証券投資に関する最終判断は、投資家ご自身の判断でなさるようにお願い
いたします。本資料の著作権は当社に帰属し、本資料の転用および販売は固く禁じられております。
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NFIリサーチ・レビュー2015 年 3 ⽉
えられる。その他資産についてはコモディティが保有⽐率 39%でリスク減少幅が最⼤となったが、リ
スクの減少幅は⼩さく、⾦やヘッジファンドについては、リスク減少幅が最⼤になるには 50%以上の
保有⽐率が必要となった。リスクを 3%減少させるために必要な保有⽐率を確認すると、VIX 中期と VIX
短期では 10%以下となった⼀⽅、⾦やコモディティ、ヘッジファンドは 15%以上の保有⽐率が必要と
なった。VIX 先物はボラティリティが⾼く、株式と逆相関であるという特徴があるため、他資産と⽐較
して少ない保有⽐率で⼤きくリスクを減少させることがわかった。
この性質は特に VIX 短期で強く、VIX
中期ではこの性質はやや弱まるが、他資産と⽐較すると特徴的な性質であることに変わりはない。
図表 7
追加資産の保有⽐率変化に対する株式のリスク低減効果の関係
注:図表 6 と同様の条件で追加資産の保有⽐率を 1%刻みで変化させた場合のリスク変化量を表したもの。株式を 100
%保有していた場合のリスクを基準とし、縦軸の 0%とした。株式は TOPIX 配当込み株価指数、⾦は⾦スポット
価格/円、コモディティは S&P GSCI 商品指数、ヘッジファンドは HFRX グローバル・ヘッジファンド・インデック
ス、VIX 短期は S&P 500 VIX Short-Term Futures Index、VIX 中期は S&P 500 VIX Mid-Term Futures Index
を⽰す。
(出所) Bloomberg データより NFI 作成
図表 8
最⼤リスク減少幅と追加資産の保有⽐率及び、リスクが 3%減少する追加資産の保有⽐率
VIX短期
VIX中期
金
コモディティ
ヘッジファンド
リスク減少幅が最
大となる保有比率
19.0%
39.0%
55.0%
39.0%
91.0%
最大リスク減少幅
-5.85%
-8.56%
-6.49%
-3.28%
-11.44%
リスク減少幅が3%
となる保有比率
7.00%
9.00%
16.00%
28.00%
16.00%
注:図表 7 のリスクがもっとも減少するときの保有⽐率とその時のリスクを⽰している。また、リスク減少幅が
3%となる最⼩保有⽐率を最下段に⽰した。ただし、1%刻みで検証しているため、追加資産の保有⽐率を増やし
ていき、リスク減少幅が 3%を初めて超えたときの保有⽐率を最⼩保有⽐率とした。株式は TOPIX 配当込み株
価指数、⾦は⾦スポット価格/円、コモディティは S&P GSCI 商品指数、ヘッジファンドは HFRX グローバル・
ヘッジファンド・インデックス、VIX 短期は S&P 500 VIX Short-Term Futures Index、VIX 中期は S&P
500 VIX Mid-Term Futures Index を⽰す。
(出所) Bloomberg データより NFI 作成
本資料は、信頼性の高いデータから作成されておりますが、当社はその正確性・確実性に関し、いかなる保証をするものではございません。本資料は、
情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではございません。証券投資に関する最終判断は、投資家ご自身の判断でなさるようにお願い
いたします。本資料の著作権は当社に帰属し、本資料の転用および販売は固く禁じられております。
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NFIリサーチ・レビュー2015 年 3 ⽉
以上、VIX 先物の⽇本株式に対するリスク低減効果について検証した。VIX 短期を 5%保有すること
により、⽇本株式のリスクを約 2.5%減少させることができた。しかし、
⽶国の先⾏研究の場合は約 3.8%
の減少幅であった。また VIX 中期について、保有⽐率を 10%とした場合の⽇本株式のリスク減少幅を
算出すると約 3.5%となった。⼀⽅⽶国の先⾏研究の場合は約 4.4%であった。検証期間が異なるため
単純に⽐較はできないが、VIX 短期と VIX 中期を保有することによる⽇本株式のリスク低減効果は、⽶
国株式に対するリスク低減効果と⽐較して⼩さい可能性がある。
4. VIX と⽇経 VI エクスポージャーのリスク低減効果
第 3 章では、株式のリスク低減を⽬的として株式に追加して VIX 先物を保有することは、他資産を保
有する場合と⽐較して、⽇本株式のリスク抑制⼿段の⼀つとして有効であることが⽰唆された。しかし、
VIX はもともと⽶国株式のオプションから算出されたインプライド・ボラティリティであるため、⽇本
と無関係な⽶国特有のショックに反応する場合や、逆に⽇本特有のショックには反応しない場合が考え
られる。株価⾃体も⽶国株と⽇本株では相関性はあるものの、その国特有の値動きをすることも少なく
ない。例えば、東⽇本⼤震災時のような⽇本特有の要因で、⽇本株式のみが⼤きく下落する場合もある。
このようなケースを考慮すると、⽇本株式を保有する場合 VIX のエクスポージャーを取るのではなく、
⽇本株式のオプション価格から算出されたインプライド・ボラティリティであり⽇本版 VIX と⾔える⽇
経 VI のエクスポージャーを取った⽅が、より⾼いリスク低減効果を得ることが出来る可能性が考えら
れる。そこで、⽇経 VI の⽇本株式のリスク低減効果を検証する。この点、実際の運⽤を意識した検証
としては、投資可能な⽇経 VI 先物のパフォーマンスを表す⽇経 VI 先物指数を⽤いた分析が望ましい。
しかし、⽇経 VI 先物指数は指数値の利⽤可能な期間が 2012 年 12 ⽉ 3 ⽇からと短いため、本分析では
簡易的に⽇経 VI 指数を⽤いると同時に、VIX 指数と⽐較し、そのリスク低減効果を検証した。VIX 指
数は前章と同じく円換算を使⽤し⽇本⽇付の前⽇の値を⽤いた。ただし、図表 9 のみ S&P500 と VIX
指数を円換算せずに⽤いた。
図表 9 は⽇経 VI と VIX、
TOPIX と S&P500 の 2005 年 12 ⽉を 1 としたときの累積リターンを⽰す。
2011 年 3 ⽉の東⽇本⼤震災時の累積リターンを確認すると、⽇経 VI が VIX と⽐較して⼤きく急騰し
ている。株価も S&P500 と⽐較して TOPIX の下落が⼤きく、⽇本特有の株価ショックには VIX の反応
が⼩さい場合がある。図表 10 は 2006 年 1 ⽉から 2014 年 12 ⽉末までの⽇経 VI と VIX のリターンの
統計値である。これを⾒ると、VIX と⽐較して⽇経 VI は、歪度がプラスに⼤きく、TOPIX との逆相関
も強かった。
本資料は、信頼性の高いデータから作成されておりますが、当社はその正確性・確実性に関し、いかなる保証をするものではございません。本資料は、
情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではございません。証券投資に関する最終判断は、投資家ご自身の判断でなさるようにお願い
いたします。本資料の著作権は当社に帰属し、本資料の転用および販売は固く禁じられております。
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NFIリサーチ・レビュー2015 年 3 ⽉
図表 9
VIX と⽇経 VI の累積リターン(上図)と
TOPIX と S&P500 の累積リターン(下図)
注:⽇次リターンから算出。上図が VIX と⽇経 VI の累積リターンを表し、
右上図は 2011 年 1 ⽉末から 2011 年 4 ⽉ 20 ⽇までの拡⼤図。下図は
TOPIX と S&P500 の累積リターンを⽰している。TOPIX は TOPIX 配当
込み株価指数、S&P500 は S&P 500 種指数、VIX は CBOE Volatility
Index、⽇経 VI は⽇経平均ボラティリティー・インデックスを⽰す。
(出所) Bloomberg データより NFI 作成
図表 10
VIX 及び⽇経 VI と TOPIX のリターン統計値
リターン
ボラティリティ
歪度
尖度
TOPIX
との相関係数
日経VI
2.06%
105.88%
2.59
19.46
-0.60
VIX
3.27%
116.16%
1.29
6.16
-0.40
注:⽇次リターンから算出。リターンは幾何平均リターン。TOPIX は TOPIX 配当込み株価指数、VIX は CBOE Volatility
Index、⽇経 VI は⽇経平均ボラティリティー・インデックスを⽰す。
(出所) Bloomberg データより NFI 作成
さらに、図表 11 は TOPIX のリターンと⽇経 VI のリターン及び VIX のリターンとの感応度を⽰した
ものである。図表 4 と同様にここでも、TOPIX のリターンがプラスの時の感応度と、マイナスの時の感
応度との⾮対称性を確認するため、プラスとマイナスの場合に分けて近似直線を当てはめた。TOPIX の
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NFIリサーチ・レビュー2015 年 3 ⽉
リターンがプラスの時の近似直線は右上の式、マイナスの時の近似直線は左上の式が対応している。⽇
経 VI の TOPIX のリターンに対する感応度は TOPIX のリターンがプラスの場合は約-0.8、マイナスの
場合は約-4.5 となっており、VIX と⽐較し⾮対称性が⼤きいことが確認できた。
図表 11
TOPIX のリターンに対する感応度(左図:⽇経 VI のリターン、右図:VIX のリターン)
注:⽇次リターンで作成。TOPIX は TOPIX 配当込指数、VIX は CBOE Volatility Index、
⽇経 VI は⽇経平均ボラティリティー・インデックスを⽰す。
(出所) Bloomberg データより NFI 作成
次に、株式のリスク低減効果を確認するため、株式を 100%保有した場合のパフォーマンスと、⽉次
リバランスで株式 95%とそれぞれのインデックスを 5%保有した場合のパフォーマンスを⽐較した。図
表 12 は、各ポートフォリオについて 2005 年 12 ⽉末を 1 とした累積リターンで、図表 13 はそのパフ
ォーマンスである。まず、図表 12 を確認すると、東⽇本⼤震災時の 2011 年 3 ⽉ 11 ⽇から 3 ⽉ 16
⽇までに TOPIX が約 18%下落している。このとき VIX を組み⼊れたポートフォリオは約 17%下落し
ているのに対して、⽇経 VI を組み⼊れたポートフォリオの下落幅は約 4%と⼩さい。次に図表 13 を確
認すると、⽇経 VI を 5%保有した場合の⽅が、VIX を 5%保有した場合と⽐較して、株式のリスク減少
幅がさらに 1.6%程度改善し、約 19.2%となった。また、歪度がプラスを⽰し、最⼤ドローダウンや⽇
次最⼤損失額も VIX を保有した場合と⽐較して改善している。このように、リスクの減少幅や最⼤ドロ
ーダウンなどが改善している点や、⽇本特有のショックにも対応していることから、⽇経 VI の保有が
VIX の保有よりも、⽇本株のリスクをより効果的に低減できる可能性があると考えられる7。
7
この分析では、データの制約により、投資可能でないインデックス(⽇経 VI)に投資を⾏えると仮定し分析を⾏っているため、
注意が必要である。
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NFIリサーチ・レビュー2015 年 3 ⽉
図表 12 ⽇経 VI または VIX を 5%保有した場合の累積リターン
注:⽇次リターンから算出。TOPIX は TOPIX 配当込み株価指数、VIX は CBOE Volatility Index、
⽇経 VI は⽇経平均ボラティリティー・インデックスを⽰す。
(出所) Bloomberg データより NFI 作成
図表 13 ⽇経 VI または VIX を 5%保有した場合のパフォーマンス
TOPIX(100%)
TOPIX(95%)
日経VI(5%)
TOPIX(95%)
VIX(5%)
リターン
リスク
リスク
減少幅
リスク・ 最大ドロー 日次最大
リターン比
ダウン
損失率
0.11%
23.81%
-
0.00
-60.15%
2.07%
19.19%
4.63%
0.11
2.00%
20.83%
2.98%
0.10
歪度
尖度
-9.52%
-0.18
7.13
-52.03%
-6.38%
0.43
6.99
-53.55%
-8.64%
-0.22
7.33
注:⽇次リターンから算出。リターンは幾何平均リターン。検証期間は 2006 年 1 ⽉〜2014 年 12 ⽉末。TOPIX は TOPIX
配当込み株価指数、VIX は CBOE Volatility Index、⽇経 VI は⽇経平均ボラティリティー・インデックスを⽰す。
(出所) Bloomberg データより NFI 作成
5. まとめ
本稿では VIX の特徴を確認し、VIX 先物保有による⽇本株式に対するリスク低減効果を検証した。ま
た、⽇本版 VIX である⽇経 VI の保有による⽇本株式に対するリスク低減効果について検証した。これ
らの検証結果から、VIX 短期や VIX 中期の保有は⽇本株式に対するリスク低減に効果があることが⽰唆
された。特に、他資産を保有した場合と⽐較して少ない保有⽐率で⼤きくリスクを減少できることがわ
かった。また、⽇経 VI でも同様の効果が確認でき、VIX よりもリスクの減少幅や最⼤ドローダウンや
⽇次最⼤損失率が改善する可能性がある事が⽰唆された。ただし、VIX 先物によりボラティリティのエ
クスポージャーを取る際の注意点として、ロールオーバー時のコストでリターンが低くなる可能性があ
る点が挙げられる。改善策として、単純に先物をロングし続けるのではなく、例えば VIX には平均回帰
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NFIリサーチ・レビュー2015 年 3 ⽉
する傾向があるため VIX が⼤幅に上昇した後は VIX のポジションを減少させる運⽤⼿法や、平常時は
先物をショートし危機時には先物をロングするなどマーケット環境に応じて先物のポジションを機動
的に変化させる運⽤⼿法などにより、リターンの向上を⽬指すことが考えられる。実際に、マーケット
環境の変化に応じて先物のポジションを機動的に調整するファンドも存在している。
また、ボラティリティのエクスポージャーを取れる⾦融商品として、VIX の他にバリアンス・スワッ
プが知られているが、バリアンス・スワップは分散についてのフォワード契約であり相対取引となる。
これに対して VIX は先物指数が存在し、その指数に連動した ETF が⽇本で上場しているため、バリア
ンス・スワップと⽐較して VIX の⽅がボラティリティのエクスポージャーを簡便に取れる利点がある。
以上から、VIX や⽇経 VI は単に市場の不安⼼理を測る指標としてだけではなく、株式のリスクを低
減する⼿段として利⽤を検討する価値があることが⽰唆された。さらに、VIX を保有するよりも、⽇経
VI の保有が⽇本株式のリスク低減に効果的であることが⽰唆された。また、⽇経 VI には⽇経平均ボラ
ティリティー・インデックス先物指数が存在し、この先物指数を対象とした ETN(上場投資証券)も存
在する。しかし、ロングポジションのみのインデックス投資では、ロールコストの問題によりリターン
がマイナスになる可能性が⾼いため、投資家の選択肢を増やすという観点からも、ロングポジションだ
けでなくショートポジションも含めた多様な商品の開発が望まれる。
参考⽂献
Hill, J.M. “The Different Faces of Volatility Exposure in Portfolio Management,” The Journal of
Alternative Investments Vol. 15, No. 3 (2013), pp. 9-31.
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