資料 - 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター

データで見る日本のクラウドコンピューティングの
現実・課題・今後
−クラウドビジネス研究会調査より−
2015年6月30日
国際大学
グローバル・コミュニケーション・センター
主幹研究員 新谷 隆
日本のクラウドコンピューティング
に関する3つの疑問
日本でクラウドは普及率しているか?
数年前からクラウドへの注目が大いに高まってきたが、そもそも日本
においてクラウドはどの程度利用されているのだろうか。この疑問に
対して数字で答えを示す。
日本のクラウドの市場規模は、どの程度の大きさなのであろうか?
いくつかのレポートにおいて公表されているが、算出式を明示して数
年先までの市場規模予測値を計算してみた。
「クラウドファースト」は浸透しているか?
日本の企業が新規に情報システムを構築・採用する際にクラウド型の
システムを優先的に検討する割合が増加している。そのことをクラウ
ド型サービスの種類別に数値で示す。
2
疑問1
日本の多くの企業でクラウドは
利用されているのか?
それを示す前に、
どのような種類のクラウド型サービス
が扱われていているかを整理する必要がある。
3
パブリッククラウド型のサービス
パブリッククラウドは、提供されているサービスの実態を整
理しやすい。多くのクラウド事業者は、パブリッククラウド
として主に以下の2つの種類のサービスを提供している。
SaaS(Soft ware as a Service):クラウド基盤上で稼働
するアプリケーションをマルチテナント(共有)型で
提供するサービス
IaaS/PaaS(Infrastructure as a Service/Platform as a
Service):仮想マシンやネットワークなどの基盤、あ
るいはアプリケーションの開発・実行環境をマルチテ
ナント(共有)型で提供するサービス
4
それに対してプライベートクラウド型のサービスは、事情が
複雑である。
クラウドへの注目が高まり始めた数年前は、プライベー
トクラウドとは、主にクラウド事業者がクラウド事業者
のデータセンターで提供するユーザ専有型のサービスを
意味するものとされていた。
ところが実際の日本の法人ユーザの認識はそれと違い、
自社で所有するIT資産によって自社のマシンルームにて
構築・管理されるシステムのことをプライベートクラウ
ドとして理解するケースが少なくない。
5
そこで、前者を「ホステッド・プライベートクラウド」、後
者を「オンプレミス・プライベートクラウド」と定義した。
さらに第3のケースとして、特定業種や共同体専用のクラウ
ドサービスを「コミュニティクラウド」とした。
コミュニティクラウド:特定業種や共同体専用のクラウ
ドサービス
ホステッド・プライベートクラウド:クラウドプロバイ
ダが提供するユーザ専有型のクラウドサービス
(利用型・ホスティング型)
オンプレミス・プライベートクラウド:ユーザが所有す
るIT資産によって構築・管理されるクラウド
(所有型)
6
パブリッククラウドの普及率
前述分類に従って、日本の法人によるクラウド型のサービス利用の実態を調
査したところ、利用が拡大していることがわかった。以下の図にあるように、
パブリッククラウドにおけるSaaS、IaaS/PaaSの利用率(及び検討率)が前
年と比較して拡大している。SaaSは利用および検討する日本の法人の割合が
約3割、IaaS/PaaSは2割を超えた。
パブリッククラウドの利用・検討状況(前年比)
7
プライベートクラウドの普及率
プライベートクラウドにおいては、ホステッド・プライベートクラウド、オ
ンプレミス・プライベートクラウドともに普及率は約1割である。検討率を
合わせると2割を超える。但し、コミュニティクラウドの利用・検討はまだ
限定的と言える。
プライベートクラウドの利用・検討状況(n=3,099)
8
疑問2
日本のクラウドは
本当に急成長しているのか?
そして今後も急成長を続けるのか?
9
順調な拡大を続けると予測できる。日本のクラウドの市場規
模は、2013年度の6,257億円から成長を続け、5年後の2018
年度には1兆8,081億円に達すると予測される。
クラウドサービス市場規模・予測市場規模
10
パブリックとプライベートクラウドに分けて詳細に計算すると、興味深い結
果が得られる。パブリッククラウドにおいては、2013年度においてはSaaS
の市場規模が1,059億円で、IaaS/PaaSの市場規模である810億円よりも大き
い。ところがIaaS/PaaSの成長率がより高いため、2015年度には両者が逆転
すると予測される。
パブリッククラウドの市場規模・予測
11
プライベートクラウドの市場規模の推移に関しても興味深い結果が得られた。
2013年度では、オンプレミス型(2,606億円)が最も大きな割合を占めてい
て、ホステッド型(1,495億円)がそれに続いており、コミュニティ型(287
億円)は少ない。ところが、今後オンプレミス型は、継続的に成長するもの
の成長率が鈍化し、ホステッド型に首位の座を奪われると予測される。加え
てコミュニティ型が急成長を遂げて、オンプレミスやホステッド型に猛追す
ることも予測される。
プライベートクラウドの市場規模・予測
12
疑問3
日本でクラウドが急成長するにせよ、
大企業や特定業種が先行するのでは?
さらに業種による違いもあるのではないかと
感じるかもしれない。
13
日本の法人における「クラウドファースト」の実態
クラウドを優先するかどうかは別として、パブリックないしプライベートク
ラウドを検討するという日本の法人は、7割に達していた。それが1年後に
は、8割に達している。日本の企業が新規に情報システムを構築・採用する
際にクラウド型のシステムを優先的に検討する割合(=クラウドファースト
の傾向)が増加していることを意味する。
新規システムの構築方法
14
さらに重要なことは、このクラウドファーストが、特定の種類の企業に偏っ
た傾向では無いということである。クラウドファーストは、大企業から中小
企業まで大差の無い、むしろ共通の傾向である。
クラウドファーストの浸透 企業規模別
15
同様のことを業種による違いに関して調べたデータがある。若干の凹凸があ
るもの、特定業種のみにクラウド利用の意向が偏重されているという傾向は
見受けられない。すなわちクラウドファーストの傾向は、日本の法人の規模
の大小に係わらず、全業種で受け入れられていると推定できる。
クラウドファーストの浸透 業種別
16
日本のクラウド事業者にとっての
3つの課題
クラウドサービスの「認知」問題
クラウドサービスへの移行が進む
と「何が減るか」問題
日本のクラウド事業者は、AWSは
じめ「海外事業者に負けてしまう
のではないか」問題
17
クラウドサービスの
認知問題
18
パブリッククラウドの認知(前年比)
19
プライベートクラウドその他の認知(前
年比)
よく知っている
ラウド
ラウド
10 %
2014年(n= 3,099)
2 2 .0 %
2013年(n= 4,599)
2 2 .7 %
2014年(n= 3,099)
ラウド
ハイブリッドク コミュニティク プライベートク
0%
ある程度知っている
1 0 .0 %
20 %
30 %
あまり知らない
40 %
50 %
全く知らない
60 %
70 %
4 5 .6 %
1 9 .4 %
4 2 .2 %
3 5 .1 %
80 %
2 1 .9 %
3 2 .8 %
90 %
1 3 .0 %
1 3 .2 %
2 2 .0 %
2013年(n= 4,599)
1 2 .3 %
2014年(n= 3,099)
1 0 .8 %
3 0 .0 %
3 4 .0 %
2 5 .1 %
2013年(n= 4,599)
1 1 .4 %
2 8 .5 %
3 6 .4 %
2 3 .8 %
3 8 .4 %
20
3 0 .7 %
10 0%
1 8 .6 %
従業員規模別 IaaSの認知
よく知っている
ある程度知っている
0%
10 %
1 ~4 人(n = 8 4 1 )
5 .5
5 ~9 人(n = 2 7 2 )
5 .9
1 0 ~1 9 人(n = 2 3 8 )
20 %
30 %
1 3 .1
1 8 .0
9 .2
90 %
3 7 .9
3 2 .4
9 .0
3 9 .9
3 2 .8
1 8 .1
2 6 .2
3 7 .3
3 3 .9
2 3 .8
3 4 .1
21
1 5 .6
2 5 .5
3 9 .1
3 3 .3
2 0 .1
2 2 .4
4 0 .3
2 7 .8
2 0 .9
2 8 .0
3 8 .2
2 1 .5
10 0%
5 0 .9
3 3 .3
2 8 .0
5 ,0 0 0 人以上(n = 2 4 9 )
80 %
3 1 .1
6 .0
2 ,0 0 0 ~4 ,9 9 9 人(n = 1 3 3 )
70 %
3 7 .0
3 0 ~4 9 人(n = 1 6 8 )
1 ,0 0 0 ~1 ,9 9 9 人(n = 1 4 9 )
60 %
2 2 .7
2 7 .9
3 0 0 ~9 9 9 人(n = 3 4 0 )
50 %
3 8 .2
6 .3
1 0 0 ~2 9 9 人(n = 3 5 4 )
40 %
全く知らない
3 0 .6
2 0 ~2 9 人(n = 1 1 1 )
5 0 ~9 9 人(n = 2 4 4 )
あまり知らない
2 5 .6
1 8 .1
1 2 .8
7 .5
1 4 .5
となれば、以下のような課題に直面する
(IaaSを例に)
中小企業のお客様に対して「当社が提供するIaaS
は...」と話しても、理解してもらえない。
「IaaS」と「他のサービス」との違いをうまく理解
してもらえない。
利用すべき最適なサービスがどれなのか、お客様自
身で見つけることが難しい。
お客様を訪問して、時間をかけて説明しないといけ
ない(人件費増)。
22
解決案=ブランド戦略の見直し
専門用語を使わずに、分かりやすいサービス名称を採
用する。
比較的認知の高い「パブリッククラウド」と「プライ
ベートクラウド」の2つの用語を中心に説明する。
他のサービスと比較しやすいように、「クラウド」を
傘にして、全てのサーバアウトソーシング型のサービ
ス(ホスティング、コロケーション等を含む)を分類
し直す。
23
クラウドサービスへの移行
が進むと
「何が減るか」問題
24
IaaS/PaaSへの移行パス
%
6
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ホステッド・プライベートクラウド
への移行パス
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26
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日本のクラウド事業者は、
AWSはじめ
「海外事業者に負けてしま
うのではないか」問題
27
ホステッド・プライベートクラウドの利用・検討
サービスランキング
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IaaS/PaaSの利用・検討サービスランキング
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