弁護団ニュース 第14号 - 原子力損害賠償群馬弁護団

原子力損害賠償群馬弁護団ニュース(NO14)
2015年(平成27年)7月
故郷を・普通の生活を返せ!こどもの未来を奪うな!
群馬弁護団ニュース NO14
弁護団HP
原子力損害賠償群馬弁護団
6・26裁判報告
(原告本人尋問/3回目)
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【発行】原子力損害賠償群馬弁護団(団長)鈴木克昌
【連絡先】〒371-0844
前橋市古市町1-50-1吉野屋ビル303
新前橋法律事務所内
[TEL]027-251-7871 [FAX]027-251-7989
原告が提出求める東電の文書、
裁判所が提出を東電に求める判断下す
≪午前中に4人、午後7名の原告本人尋問が行われる≫
「突然の避難指示、避難先を転々として
原告証言
体調崩し、将来への不安募る毎日」
次回:7月31日(金)午前10時~12時/9時10分から傍聴券配布(予定)
6月26日、前回に引き続いて原告本人尋問が行われました。
前回まで17名の原告が証言しており、今回で28名の証言が
終了しました。この原告本人尋問は、前号のインタビュー記事
で舘山史明事務局次長が述べたように、昨年12月に提出した
詳細な原告の「陳述書」をベースに、ポイントを絞った短い主
尋問と反対尋問を行うもので、弁護団としては「陳述書」の中
身が「揺るぎないもの」として裁判官に理解してもらえている
と確信しています。
当日は、本人尋問に入る前に書面のやり取りがありましたが、
その中で「裁判所は文書の提出を求めます」という発言があり
ました。
裁判所が何を求めたのか、改めて関事務局長に聞きました。
東電が約15mの試算結果を得ていたにも関わらず対応を先
延ばしにしていたことを厳しく糾弾しているようです。
ところが、世界的に注目されている津波評価であるにも関わ
弁護団事務局長:関 夕三郎弁護士
らず、東電は「2008年の津波評価は仮に計算してみただ
6月26日の裁判の冒頭、原告本人尋問に入
けのもの。それに基づいて津波対策を講ずるようなものでは
る前に、裁判所から重要な判断が示されました
ない。」と主張しています。
ので、ご報告しておきたいと思います。
「仮の計算」というのであれば、ちょこちょこっと計算し
私たちは、裁判所に対して5月27日付けで
ただけなのでしょうから、東電は、自分から評価書類を裁判
「文書送付嘱託」という申立を行いました。こ
所に提出していかに簡略な計算であったかを明らかにすれば
関 弁護士
の手続きは、裁判所に証拠として提出したい証
良いはずです。ところが、全国各地の裁判でこの書類の提出
拠書類があるけれども、私たちの手元には無い場合に、裁判
が求められていますが、東電は、いずれの裁判でも頑なに提
所から証拠書類を持っている人に対して提出を求めてもらう
出を拒んでいます。それは何故か。「仮の計算」なんていう
手続です。
簡略なものではなく、きっちり試算しているからとしか考え
私たちが提出を望んでいる書類は、2008年1月~4月
ようがありません。
頃に東電が行った津波評価の評価書類です。この評価では、
裁判所は、6月26日の裁判の冒頭で、東電に対し、この
「15.7m」という数値が弾き出されていますが、その結
2008年津波評価を提出するよう指示したのです。提出期
果だけは国会事故調査報告書などで明らかにされていますが、 限は7月24日です。
評価の過程、つまり、どのようなデータに基づいてどのよう
果たして、東電は誠実に裁判所の指示に従うのか。万が一
な計算が行われたのかは、まだ闇の中です。
にも東電が裁判所の指示に抵抗するような
この2008年津波評価は、世界的に注目を集めています。 ことがあれば、私たち弁護団は、東電の不
IAEAは、本年6月に理事会で承認し、本年9月の総会で
誠実と隠蔽体質を厳しく世に問うていかな
採択を予定している福島第一原発事故の総括報告書の中で、
ければなりません。
裁判所、「2008年津波評価」
文書の提出を東電に指示
次回:7月31日(金)午前10時~12時 <前橋地裁 4号法廷>
※9時10分から傍聴券の抽選整理券発行(予定)
≪裁判の内容≫原告本人尋問/4人
■9月11日(金) 午前10時開廷 ≪佐藤証人反対・補充尋問≫
■9月14日(月) 午前10時開廷 ≪原告本人尋問(2人)≫
■10月16日(金)午前10時開廷 ≪原告本人尋問(4人)≫
※裁判終了後、弁護士会館3階で報告集会
を行いますので、ご参加願います。
【今後予定されている日程】11月20日(金)午前10時~ 、2016年1月8日(金)午後2時~ 、2月26日(金)午前10時30分~
【お詫び】前号(NO13)にて、一面の見出しが「6・22裁判報告」となっておりました。「5・22裁判報告」の誤りです。
お詫びして訂正いたします。
原子力損害賠償群馬弁護団ニュース(NO15)
今回、原告本人尋問を担当された松井大輔弁護士に投稿を
お願いしました。
故郷を失うことの心の喪失感を思う
弁護士
松井 大輔
2015年(平成27年)7月
まえば、私は本当の自分自身を再確認できるのだろうか、憂
い・悲しみ・怒りといった感情はどのような形で自分を傷つ
けることになるのだろうか、想像するに余りあるものだと実
感しました。
以上の経緯から,私は再び群馬弁護団で
奈良弁護士会所属の弁護士の松井大輔と申
活動ができるように、所属している事務所
します。私は,去年10月一杯まで群馬弁護
に掛け合いました。また,鈴木団長からも
士会に所属しており、原子力損害賠償群馬弁
活動を続けることにつき快諾をいただきま
護団の一員として、活動しておりましたが,
した。その結果、私は引き続き、群馬弁護団に協力すること
私の所属している事務所が、全国転勤を前提
ができるようになりました。そして先日6月26日、私は、
とする事務所であるため、群馬を離れること 松井弁護士
担当するご家族の世帯主様の尋問のため、再びこの訴訟の法
となってしまいました。
廷に立つことが出来ました。
しかし、この訴訟の持つ社会的意義の大きさは,強く感じて
遠方のため、対面での打合せは出来ませんでしたが、その
おりました。
分何度も何度も電話での打合せを重ね、無事尋問を終えるこ
また、私が担当するご家族の方々に,最後まで寄り添い続け
とが出来ました。世帯主様のご協力の下、十二分の尋問が出
たいという気持ちも強くありました。
来たものと自負しております。最後に世帯主様に「先生が担
さらに、私自身、奈良が出身県です。事務所を移り、懐かし
当で良かったです」と言っていただき、引き続き担当弁護士
い景色、変わらぬ家族・友人、独特の方言、すべての環境に
でいられたことを誇りに感じました。
触れ、それらが私自身を形作ってきたものであることを再認
遠く奈良の地からではございますが、これからも勝訴に向
識するとともに、そういったすべての環境に対し感謝の気持
けて出来る限りの協力をさせていただきたいと考えておりま
ちを抱きました。仮にこのようなすべての環境が奪われてし
す。皆様今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
とにかく緊張しました。のどが渇いて・・・裁判所で証言をす
ることなど考えてもみませんでしたから。陳述書を作る時に担当
ありのままを答えました。
他の原告の証言を聞いて、今の生活や気持ち、将来の不安など
改めて同じ悩みを抱えているんだなと思いました。お子さんがい
る方の悩みは深刻ですね。「安全宣言したから帰って来い」と言
する先生と何回もお話ししていましたので、今回はポイントを絞っ
た証言をするという事で、準備はしっかり出来ました。
われても、私たちは安全を確認する手段がない。
裁判を始めた時は不安でしたが、弁護士の先生がいろいろと話
反対尋問は「どうしてこんなこと聞くのだろう」と考えてしまう
様な内容もあり、どう答えてよいのか困る場面もありましたが、
しをして下さいました。今は、この様な場を与えていただき先生
方に感謝しています。
証言を終えたAさんの感想
( 松井弁護士が
担当された方ではありません )
<原発をめぐる最近の報道から>
■6月30日
・福島地裁。原発事故により、浪江町から避難していた五十崎喜一さんが自殺した原因は、原発事故による避難
生活のストレスと断定。総額2721万円の賠償を命じる。
⇒昨年8月、原発事故との因果関係を認めて東電に損害賠償を命じた訴訟に続いて2例目。
■7月10日
・千葉地裁で原告側証人として前原子力規制委員会委員長代理・島崎邦彦氏と元国会事故調委員・田中三彦氏
が証言。「大きな津波予測できた」(島崎氏)「全電源喪失対策を怠った」「福島第一原発事故は人災」(田
中氏)と証言。
■7月15日 ・原子力規制委員会は、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)について、新規制基準「適合」の決定。
⇒九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)に続いて3件目。
■7月16日 ・経産省有識者会議「長期エネルギー需給見通し」で、現在稼動ゼロの原発の割合を2030年に20~22%へ。
■ 同
日
・原子力規制委員会の有識者会議、北陸電力志賀原発(石川県)1号機原子炉建屋直下にある断層について、
「活断層の可能性は否定できない」とする報告書案をまとめる。
⇒新規制基準は、活断層の上に原発の重要施設を設置することを認めていない。
■ 同
日
・台風11号の影響で、福島第一原発の排水路の移送ポンプの容量を超える降雨のため、高い濃度の汚染水が
外洋に流出。
■7月17日
・福島第一原発の港湾内の海側遮水壁開口部近くの海水(6月1日採取分)から、国の放出基準の50倍のスト
ロンチウムを検出。海水汚染としては過去最高値を記録。
■7月21日 ・福島市渡利地区の1107世帯3107人が、原子力損害賠償紛争センター(ADR)に申立て。
東京五輪招致プレゼンでの安倍首相発言
「(福島第一原発の)状況はコントロールされている。東
京にダメージが与えられることは決してない」「汚染水は
港湾内で完全にブロックされている。抜本解決のプログラムを私が決定し、着手している」