目次 Ⅰ.発見会では、どのようにして神経症が治るのでしょうか・・・1 ①森田理論を知識として知るだけでも、楽になれます ②知識から体得へ、知ることと体得は、まったくちがうもの・・2 Ⅱ.仲間と体験をわかちあうことから勇気が得られます・・・・・3 Ⅲ.知識を体得へ高めるために、発見会の援助が受けられます Ⅳ.森田理論学習のためのさまざまなシステムを用意しています・4 ①基準型学習会 ②オンライン基準型学習会 ③その他有志による学習グループ Ⅴ.どんな本を読んだらよいのでしょうか?・・・・・・・・・・5 Ⅵ.集談会に出席できない人は、どうしたらよいでしょうか?・・6 Ⅶ.森田理論は、症状を治すためだけのものですか? Ⅷ.うつ病の治療を受けている人へ・・・・・・・・・・・・・・7 Ⅸ.体験記について Ⅹ.体験記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8~13 『初心者のみなさんへ-森田理論の学び方-』 この冊子は、初心者のみなさんに、森田理論や生活の発見会のことを、よく知っていた だくために作成いたしました。この冊子を活用して、生活の発見会に参加し、森田理論を 体得されることを願っています。 生活の発見会において森田理論を学び、それを日常生活の中で体得していくことにより、 あなたの症状は軽減され、楽に生きられるようになります。 さらに、森田理論を学び続けることは、あなたがあなたらしい、よりよい人生を送る ための羅針盤になることでしょう。 Ⅰ.発見会では、どのようにして神経症が治るのでしょうか? 発見会の活動は、森田療法の理論(以下、森田理論)の学習活動を「たて軸」に、神経 症の仲間同士による相互援助活動を「よこ軸」に例えることができます。この、たて軸と よこ軸の織りなす活動を通して、神経質性格を活かす生き方に気づき、神経症のとらわれ から解放され、自分らしく生きることを目指しています。 ① 森田理論を知識として知るだけでも、楽になれます * 学びのスタートは、森田理論を知識として知ることです。これは、それほど難しいこと ではありません。森田関係の本を一冊、熟読するだけでも、森田理論の要点は、だいた い理解できると思います。 * 森田理論を知ることで、まず、あなたは自分の苦しみの原因や努力方向の誤りを知るこ とができます。私達は、自分が異常な人間で、このような症状で苦しんでいるのは自分 だけだと思いがちです。 このような思い込みが、あなたを孤独にし、将来を悲観させ、あなたの苦しみを大きく しているのだと思います。 * 森田理論は、症状のからくりを教えてくれます、そして、あなたが異常な人間ではない こと、森田理論の体得によって、現在の苦しい状態から抜け出せることを示してくれま す。これだけのことを知っただけでも、森田理論を知る前より、かなり楽になったと思 います。 1 ② 知識から体得へ、知ることと体得は、まったくちがうもの * ただ、森田理論を知識として知ることと、それを自分のものにして体得することは、ま ったくちがいます。いくら森田理論を知っても、体得しなければ、ある程度楽になった だけに過ぎません。今までの考え方、生き方を変えることはできませんし、抱えている 苦しみは、まだ、大きなままです。 * 例えば、私達は、自分が感じる不安や人に対する恐れ、妬みや嫌悪感などの自分の感情 によって、自分を否定してきたのではないでしょうか。 このような感情を持ってしまう自分はダメな人間だと、自分の感情を変えようと必死 に努力してきたのではないでしょうか。 森田理論では、感情は、自然現象であって、意志の力でコントロールできないと教え ています。意志の力で、コントロールできないのですから、私達は、自分の感情に責 任を持つ必要はありません。 どんな感情を持っても、そのことで、自分を責めたり、自分を否定しなくてもよいの です。 * この感情についての知識は、あなたを楽にしてくれると思います。しかし、長年の癖は、 知識を得たからといって、そう簡単になくなるものではありません。 日常生活の中で、自分にとっての好ましくない感情が湧いてきた時、いつものように、 このような感情を持つ自分はダメだと、自分を否定して落ち込み、感情を変えようと してしまうでしょう。 * 体得とはどのような状態を指すのかは、いろいろな表現ができると思います。 例えば、泳ぎ方を知識として知っていても泳げないと思います。実際、知識をもとに、 水に入って手足を動かして、こつをつかみ、泳げるようになっていきます。これが体得 だと思います。 自転車の練習も、初めは補助輪や親の支えが必要で、自分だけでは、前に進むことがで きません。しかし、支えてもらいながら、何度も転んでいるうちに、いつの間にか、自 分一人で乗れるようになります。これが体得の過程だと思います。 森田理論を学んで、それを基礎にして、日常生活で手足を動かしていくなかで、無理を しなくても森田理論に従って生きていくことができるようになると思います。これが 体得だと思います。 * この感情の例の場合の体得とは、自分にとっての好ましくない感情が湧いてきた時に、 それは人間にとって自然なことと受け取り、自分にとって嫌でも無理に変えようと 2 しない、また、そのような感情を持つ自分を否定しない状態と言えると思います。 人間にとっての自然とは何かを知り、それを受け入れ、自然に従って生きられるように なることを体得と言ってもよいと思います。 Ⅱ.仲間と体験をわかちあうことから勇気が得られます ① 生活の発見会では、全国で、月に 1 回、集談会という集まりを開催しています。集談会 には、あなたと同じように症状で苦しんだ体験を持つ人が大勢、参加しています。 あなたは、あなたの苦しみを、実感としてわかってもらえる仲間や先輩と、毎月、交 流することができます。 * 集談会では、誰にも話せなかった、誰にもわかってもらえなかった、あなたの苦しみを 思う存分、話すことができることが、癒しとなるでしょう。 * 自分の本音を語ることで、自分のことが客観視でき、自分のことが、よく見えるように なってきます。 * 先輩の体験談は、森田理論をより深く理解するヒントになるでしょう。また、先輩の元 気な姿を目にすることで、森田理論を学び続ける意欲が生まれてきます。 ②仲間がいれば、辛いことも乗り越えやすくなります * 集談会は、会員によって自主運営されていますので、世話役として集談会を運営する側 にまわることで、多くの体験ができ、自然と仲間になることができます。 仲間の存在 は、自分を映す鏡となり、同じ苦しみを背負いながら、精一杯、生きている仲間の姿 は、大きな励みになるでしょう。 Ⅲ.知識を体得へ高めるために、発見会の援助が受けられます ① 長年の考え方、感じ方の癖に対して、知識は、あまりにも無力です。この無力な知識を、 体得に高めることが、どうしても必要なのですが、一人で、それをすることは、非常に 困難です。 あなたは、生活の発見会から、森田理論の知識を体得に高めるために、さまざまな援助 を受けることができます。それが、あなたが、生活の発見会から得られる、一番、大き なメリットだと思います。 3 * 誰にも話せなかった、誰にもわかってもらえなかった、あなたの苦しみを、あなたは、 集談会で、思う存分、話すことができます。また、多くの先輩の体験や考え方を、あな たは知ることができます。このことが、実は、非常に大きな意味を持っています。 * 自分の本音を語ることで、自分のことが客観視でき、自分のことが、よく見えるよう に なります。話すことで癒される部分も多いです。先輩の体験や考え方を知ることで、森 田理論を、より深く理解することができます。 また、先輩の後ろ姿は、自分の進んでいく道を探す、大きな手がかりになりますし、森 田理論を学び続ける動機づけにもなります。 ② 一人ではできないことも仲間がいればできる * 仲間がいることで、孤独感が癒され、自分だけでは気づけなかったことに気づくことが でき、森田理論の学びが深まっていくと思います。 仲間の存在が、自分を映す鏡になると思いますし、同じ苦しみを背負いながら、精一杯、 生きている仲間の姿は、大きな励みになると思います。仲間がいるので、辛いことも乗 り越えられると思います。また、仲間の励ましが、背中を押してくれて、なかなか踏み 出せなかった、一歩を踏み出す力にもなると思います。 このように集談会への参加を続けることと、集談会で学んだことを日常生活で実践する ことで、あなたは、森田理論を知識から体得へと少しずつ高めていくことができます。 * 世話役をやってみましょう 集談会へ何回か続けて出席したら、世話役になることを、お勧めします。 世話役になると、集談会へ溶け込めますし、集談会の中で役割をすることは、自分の苦 しみにのみ向いていた目を外へ向けることにもなります。また、集談会へ出席する動機 づけにもなります。 多くの場合、先輩会員から、世話役への就任依頼がありますが、世話役は、すぐに、 あるいは必ずやらなければいけないものではありません。やりたい、やった方が良い と感じた時に、世話役になって下さい。 Ⅳ.森田理論学習のためのさまざまなシステムを用意しています 生活の発見会では、各種の学習会で森田理論を深めることができます。人、それぞれ、 状況がちがいますから、自分にできることを、できる範囲で、できる時期に、やってい けばよいと思いますが、可能でしたら、入会して早い時期(1 年以内)に、これらの学 習会などを体験することをお勧めします。 4 以下の①~③に、学習のための主なシステムをご紹介します。 ①基準型学習会 * 生活の発見会では、森田理論を集中的に、系統的に学ぶことができる、短期(三か月 程度)の基準型学習会を、定期的に開催しています。基準型学習会では、メンバーが 励まし合いながら森田理論を学び、講師の体験談や森田理論の捉え方を知ることがで きます。また、講師による日記指導もあります。 * この基準型学習会に参加することは、森田理論への理解を確かなものにするためにも、 自分を見つめ直すためにも、極めて大切と考えられています。 ②オンライン基準型学習会 * インターネットによって、森田理論を系統的に学べる三ヵ月間のオンライン基準型学習 会が、定期的に開催されています。会場に足を運ぶ必要がありませんので、全国どこ からでも参加することができます。受容と共感を大切にした安心できる環境の中で、 人によっては本音が言いやすく深い話ができるかもしれません。 * オンライン基準型学習会は、基準型学習会と同じく、生活の発見会の正規の学習会と なっています。 ③その他有志による学習グループ * その他、各種の学習会や、森田先生の原著を読む会、(パニ症、強迫神経症、中高年の 会、若者の会)などが開催されています。これらの会にも、可能でしたら出席すること を、お勧めします。顔見知りの仲間ができるかもしれません。 Ⅴ.どんな本を読んだらよいのでしょうか * 毎月の生活の発見誌と森田関係の本を読むことを、お勧めします。 生活の発見誌は、治った先輩の体験記や旬の情報が満載です。 * 森田関係の本を読むことも大切です。 たくさんの関係図書がありますが、ここで何冊か、お勧めの本を紹介いたします。 5 「森田式精神健康法」 三笠書房 長谷川洋三著 廃刊 「森田療法のすべてがわかる本」 講談社 北西憲二著 「現代に生きる森田正馬のことば」 生活の発見会編 「流れと動きの森田療法」 白揚社 岩田真理著 「よくわかる森田療法」 白揚社 森岡 洋著 「新版 森田理論学習の要点」 生活の発見会編 「のびのび森田」 生活の発見会編 Ⅵ.集談会に出席できない人は、どうしたらよいのですか? * いろいろな事情で、集談会に出席できない人がいると思います。集談会に出席しなけれ ば、自分一人で、毎月、送られてくる生活の発見誌や、森田関係の図書によって、森 田理論を学ぶことになります。これは、孤独な作業ですから、持続することだけでも 難しいですし、仲間から得られるたくさんの援助を受けることができません。しかし、 さしあたり発見誌を読むことは堅持し、できるだけ機会を見つけて、近くの集談会に 参加をしてみましょう。 * 先にご紹介したオンライン学習会を利用して仲間と交流しながら学習する方法があり ます。 * 現在、発見会では、多くの集談会がインターネットによって交流できる掲示板を持って います。 (生活の発見誌のホームページのリンク集に載っています)この掲示板に参加 することで、集談会に出席できない場合でも、生活の発見会の仲間と交流することが できます。 Ⅶ.森田理論は、症状を治すためだけのものですか? *『症状が治ったから人生観が変わったのではなく、人生観が変わったから症状が治っ た』ということが言われます。 私達の症状は、病気ではなく、考え方、生き方、人生観に問題があって、起こってき たものですから、それらを変えることで、症状が治ります。 そして、考え方、生き方、人生観が変われば、症状が治るだけでなく、生き生きとし た、豊かな人生を送れるようになります。 * 森田理論の、本当の目的は、この生き生きした豊かな人生を送れるようになることです。 6 自分が本来もっている良い資質を精一杯生かして、自分らしく生き生きと生きていける ようになることです。 そのために、発見会では、生涯学習として、森田理論を学び続けている会員が、たくさ んいます。 Ⅷ.うつ病の治療を受けている人へ * うつ病の人が森田理論を学ぶ時、注意してほしいことがあります。 ・医師の治療を受け、服薬など相談しながら、森田理論を学んでいってください。 ・森田理論を学んでいることを、必ず、医師に伝えて下さい。 ・調子が下がっている時は、発見会の集まりに無理に参加したり、行動しようと思わ ないでください。 参考図書 〇「うつはがんばらないで治す」 マガジンハウス 中村敬 〇「森田療法で読むうつ」 白揚社 北西憲二・中村敬編 ○「うつの理解と養生法」 生活の発見会編 中村敬 Ⅸ.体験記について この体験記には、症状を抱えて苦しんでいた先輩会員が、どのような行動をし、どのよ うな気づきがあったのか、そして、考え方、生き方が、どのように変わっていったのかが 綴られています。 先輩会員の体験は、きっと、みなさんの学びの参考になり、希望になることでしょう。 7 分 か っ て く れ る 仲 間 に 出 会 え て 不 安 神 経 症 ( パ ニ ッ ク 障 害 ) 5 5 才 女 性 発 見 会 歴 1 7 年 20年前、不安神経症と診断され、1日に何度も過呼吸や目眩のパニック発作 が 起 き 、 安 定 剤 な し で は 玄 関 か ら 出 ら れ な く な り ま し た 。 回りに理解されない苦しみの中、発見会に参加して、分かってくれる仲間に出 会えた安心感と、薬を飲みながらでも目的本位に行動しようという勇気をもら い ま し た 。 森田を勉強して、 「 ~ し な け れ ば な ら な い 」の 思 い 込 み で 行 動 す る の で は な く 、 自分はどうしたいのか、それは本当に必要な行動かどうかを考えるようになり ま し た 。 神経症の症状が落ち着いた現在も森田の勉強を続けているのは、信頼できる仲 間 と の 繋 が り を 大 切 に し た い の と 、「 自 分 の 人 生 は 、自 分 で 考 え 自 分 で 決 め る 」 という生き方を学ばせてもらい、不都合なことを他人のせいにしなくなり、少 し ず つ 生 き や す く な っ た こ と が 実 感 で き る か ら で す 。 8 背 水 の 陣 で 仕 事 に 取 り 組 ん で 視 線 恐 怖 ・ 対 人 恐 怖 ・ 吃 音 63 才 男 性 発 見 会 歴 23 年 私 は 1 8 歳 の 頃 か ら 特 定 の 人 と 視 線 を 合 わ せ ら れ な い 視 線 恐 怖 、 会 社 で 、 友 人 の 輪 の 中 に 入 っ て 行 け な い 対 人 恐 怖 、電 話 に 出 た 時 自 分 の 名 前 が ど も っ て 言 え な い 吃 音 と い う 「 ト リ プ ル 」 の 神 経 質 症 状 に 悩 ま さ れ ま し た 。 し か し 、こ う し た「 心 の バ リ ア 」を 外 側 か ら 壊 さ れ る よ う な 状 況 が 起 き ま し た 。2 5 歳 の 時 、正 社 員 と し て 家 電 販 売 会 社 に 就 職 し 、2 8 歳 の 頃 、内 勤 か ら 営 業 の 仕 事 へ の 異 動 を 命 じ ら れ た の で す 。得 意 先 の 販 売 店 を 回 る 仕 事 で す 。 当 時 は 死 ん で も 営 業 の 仕 事 は し た く あ り ま せ ん で し た 。「 背 水 の 陣 」 の 気 持 ち で 必 死 に な っ て 仕 事 に 取 り 組 み ま し た 。そ う し た ら 、人 の 輪 の 中 に 入 っ て い く の が 好 き に な り 、話 す こ と も 苦 で な く な っ て き ま し た 。そ し て 3 0 代 前 半 の 頃 慈 恵 医 大 病 院 の 精 神 科 に 通 院 し て 、 生 活 の 発 見 会 を 知 り ま し た 。 4 0 歳 の 時 に 入 会 し 、そ れ か ら 私 は 集 談 会 に ほ と ん ど 休 む こ と な く 通 う よ うにしました。集談会は私の神経質症状を忌憚なく聞いてもらえるところ、 ま た 症 状 を 克 服 し「 力 強 く 」人 生 を 生 き て い る 諸 先 輩 の 体 験 や 姿 も 私 を 大 き く 鼓 舞 し て く れ ま し た 。集 談 会 で 教 わ っ た 森 田 理 論 も 私 の「 神 経 症 人 生 」を 支 え て く れ ま し た 。 特 に 「 あ る が ま ま 」「 目 的 本 位 」 等 の 考 え 方 は 私 の 精 神 的支柱になりました。 こ の よ う に 継 続 的 な 集 談 会 へ の 通 所 、森 田 理 論 等 を 通 じ て の た ゆ ま な い 自 己 啓 発 と 日 々 の 真 剣 な 生 き 方 を 通 じ て 、5 5 歳 の 頃 ま で こ の「 ト リ プ ル 」の 神経質症状を完治することができました。 9 基 準 型 学 習 会 で 、 大 切 な こ と に 気 づ い て 対 人 恐 怖 53 才 男 性 発 見 会 歴 11 年 私 は 対 人 恐 怖 症 で 、 41 歳 の と き に 入 会 し ま し た 。 そ れ ま で は 、会 議 な ど 人 前 で 話 す と き に 緊 張 で 手 や 声 が 震 え 、と て も 惨 め に 思 っ て い ま し た 。ま た 、雑 談 が 苦 手 で 仕 事 の 会 話 以 外 の と き に は 一 人 ぽ つ ん と し て い る こ と が 多 く 、そ ん な と き は 、ふ さ ぎ こ む 感 情 が 湧 い て き て 気 持 ち が 内 に こ も り 、ひ ど い と き は 顔 が こ わ ば り 、う ま く 声 す ら 発 す る こ と が で きませんでした。 入 会 し て す ぐ に 参 加 し た「 基 準 型 学 習 会 」で 、人 前 で の 緊 張 感 や 人 な か で の 疎 外 感 な ど が 自 然 な 感 情 で あ る こ と 、そ の 自 然 な 感 情 を 排 除 し よ う と や っ き に な る か ら 逆 に 症 状 が 強 ま っ て し ま う の だ と い う こ と を 習 い ま し た 。そ し て 、同 じ よ う な 症 状 の 受 講 生 仲 間 と の 会 話 や 講 師 に よ る 日 記 指 導 の 中 で 、そ の こ と が 「あ あ そ う か 」と 自 然 と わ か っ て き ま し た 。日 常 生 活 で 、湧 い て く る 緊 張 や ふ さ ぎ こ む 感 情 は 感 じ た ま ま に し て お い て 、目 の 前 の 事 が ら( 会 議 で の 発 表 や 、雑 談 の 中 で 人 の 話 を 聞 く こ と を 含 め て )に 注 意 を 持 っ て い く 行 動 を繰り返すうちに、緊張や疎外感が気にならなくなりました。 何 よ り 嬉 し い の は 、以 前 は 症 状 の た め に 自 分 を 全 否 定 し て い た の が 、自 分 も そ れ な り に 頑 張 っ て お り 、「 緊 張 し い 」 で 「 人 見 知 り 」 か も し れ な い け れ ど 、自 分 に は 自 分 の 良 さ も あ る の だ と 思 え る よ う に な っ た こ と で す 。 長 い あいだ出口のない道をさ迷っていたのが、やっと明かりを見つけられたと、 心底ほっとしたのを覚えています。 11 神 経 症 の お 蔭 で 、 味 わ い 深 い 人 生 を 送 る こ と が で き て 症 状 : パ ニ ッ ク 障 害 65 才 男 性 発 見 会 歴 : 20 年 入 社 2 年 目 の こ と だ っ た 。当 時 は ま だ オ イ ル シ ョ ッ ク の 前 で 好 景 気 に 沸 き 、 勤 め て い た 会 社 も 多 忙 を 極 め て い た 。連 日 残 業 が 重 な り 、休 み も な か な か 取 れ な い 状 況 だ っ た 。そ ん な あ る 日 、仕 事 中 に 突 然 意 識 を 失 い 机 の 上 に 倒 れ 込 ん だ 。救 急 車 で 病 院 に 運 ば れ 1 週 間 検 査 入 院 し が 、単 な る 過 労 と 診 断 さ れ た 。 そ れ か ら 数 年 間 、何 か あ る た び に 、そ の 時 に 感 じ た「 死 の 恐 怖 」に 襲 わ れ 、 悶 々 と し た 日 々 を 過 ご し た 。飛 行 機 が 離 陸 す る 時 や 電 車 の ド ア が 閉 ま っ た 瞬 間 の 恐 怖 感 。そ の 他 、一 人 で 食 堂 に 入 っ た 時 や 、床 屋 で 散 髪 し て も ら っ て い る 間 の 時 間 や 、会 議 が 始 ま る 直 前 に 入 口 の ド ア が 閉 じ ら れ た 時 の 閉 塞 感 が た まらなく怖かった。 あ る 日 、近 所 の 本 屋 で 偶 然 森 田 の 本 に 出 会 い 、自 分 が 不 安 神 経 症( パ ニ ッ ク 障 害 ) で あ る こ と を 知 っ た 。「 不 安 を 感 じ て も よ い 」 と か 「 不 安 で あ っ て も動け」という言葉に背中を押されて、徐々に行動範囲が広がっていった。 そ し て 、多 く の 森 田 関 係 の 本 を む さ ぼ る よ う に 読 ん だ 。し か し 、独 学 で は 限 界があると思い、その後思い切って発見会に入会した。 毎 月 発 見 誌 を 読 み 、集 談 会 に 出 席 し 、世 話 活 動 を 続 け た こ と 、ま た 、集 談 会( 発 見 会 )で 多 く の 良 き 先 輩 や 仲 間 に 出 会 え た こ と が 、不 安 を 軽 減 さ せ て く れ た 。や が て 症 状 よ り も 、仕 事 や 趣 味 の 山 登 り に 意 識 と 関 心 が 移 っ て い っ た。 神 経 症( パ ニ ッ ク 障 害 )に な っ た の は 想 定 外 の こ と で あ っ た が 、今 は 、そ のお蔭で味わい深い人生を送ることができている。 12 大 先 輩 の 言 葉 は ず っ と 私 を 支 え て く れ ま し た 視 線 恐 怖 50 才 女 性 発 見 会 歴 20 年 そ の 頃 長 男 は 、 ま だ 目 も み え な い よ う な 赤 ち ゃ ん で し た 。 そ れ な の に 私 は 、 そ の 子 と の 視 線 に 格 闘 す る 日 々 だ っ た の で す 。 そ れ は 高 校 2 年 生 の 頃 か ら 、人 の 視 線 を 意 識 す る よ う に な り 、常 に ぎ こ ち な く 、苦 痛 で 、人 は 恐 怖 と な り 、困 難 な こ と か ら は 逃 げ 出 し た い 、気 持 ち で い っ ぱ い で し た け れ ど 、子 育 て か ら は 逃 げ 出 せ ま せ ん で し た 。お っ ぱ い を あ げ な が ら 目 を 見 て 、 お い し い ね と 言 っ て あ げ な け れ ば な ら な い 。 視 線 を 合 わ せ 常 に 優 し く 微 笑 か け 、笑 顔 の 私 で な け れ ば な ら な い 。と そ ん な 考 え に 縛 ら れ て い ま し た 。そ し て 、そ の こ と が で き な い 自 分 は ダ メ な 人 間 で あ る と 決 め つ け 、解 決 す る し か な い と い う 、ま さ に 、泥 沼 に 入 り 込 ん で し ま い ま し た 。 結 婚 前 か ら 発 見 会 へ は 出 席 し て い ま し た の で 、本 部 に 電 話 を し て 手 紙 相 談 を し て い た だ き ま し た 。そ の 時 の 大 先 輩 の 言 葉 は ず っ と 私 を 支 え て く れ ま し た 。 そ れ は 、人 は 総 合 的 に 人 を 判 断 す る と い う こ と で し た 。い ろ い ろ な こ と か ら 母 を 感 じ る と い う こ と で あ れ ば 、た と え 、視 線 が ダ メ で も そ の 他 の こ と を そ れなりにやっていれば、そんなにこどもに影響はないかもしれないと思い、 離 乳 食 の メ ニ ュ ー を 増 や す こ と に 頑 張 っ て い ま し た 。 私 の 1 つ の み に 集 中 し て い た も の が 他 へ も 注 意 が 行 き 、少 し づ つ よ く な っ て そ の 後 、お 子 様 連 れ で も ど う ぞ と い う フ ァ ミ リ ー 集 談 会 へ 前 抱 っ こ で 毎 回 出 席 す る よ う に な り ま し た 。 そ こ で 悩 み 、苦 し み を 話 し ま し た 。そ し て 真 剣 に ま る ご と 聞 い て く れ る 人 達 が い ま し た 。い つ も そ う で し た 。こ ど も の 面 倒 ま で 見 て く れ て 、み ん な 優 し か っ た の で す 。そ う い う 人 達 に 支 え ら れ 励 ま さ れ て 、よ う や く 今 の 自 分 に た ど り 着 き ま し た 。 そ れ で い い 、そ の ま ま で い い と い う 自 分 へ の 信 頼 が で き 、よ う や く 自 分 を 両 手 で 抱 き し め ら れ 愛 し く 思 い 、よ く や っ て き た な あ と 振 り 返 り 、苦 し み は 決 し て 無 駄 で は な く 、む し ろ 今 の 私 の 土 台 と な り 、財 産 と な っ て 、宝 物 に な っ た の で す 。 13
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