ABL と国際私法

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ABL と国際私法
北澤研究会
はじめに
Ⅰ 実質法上の ABL
Ⅱ 従来の牴触法上の議論と ABL
₁ 融資の準拠法
₂ 担保設定の準拠法
Ⅲ ABL における準拠法の検討
₁ 担保設定の一体性
₂ 現行法下での検討
₃ 立法論的検討
結びにかえて
はじめに
ABL(Asset Based Lending 動産売掛金担保融資)1)とは、資金調達の際に企業が
有する在庫や売掛債権、生産設備といった事業有益資産を活用した融資手法であ
る。実質法上は、融資契約、担保設定(集合動産譲渡担保、集合債権譲渡担保、普
通預金債権質)といった手段をとる。この ABL という手法によれば、従来の不動
産担保や保証人に依存した融資を行うことが難しい企業に対しても、在庫や売掛
債権といった資産を担保に供することで融資を行うことが可能となる。また、従
2)
来の担保が清算回収のための「終わらせる担保」
であるのに対し、ABL は、事
業を継続させることを目的としている「生かす担保」3)であるため、主に中小企
業を中心に、今後日本国内でさらに活用されていくことが期待されている。上記
のような利便性から、同様の制度が諸外国にも存在するが、この点については、
394 法律学研究53号(2015)
Ⅰ章で述べる。
ビジネスのグローバル化が進み、海外に生産設備や在庫等の事業資産を保有す
る企業が増加する昨今では、ABL を利用する際、担保となる「事業のライフサ
イクル」の一部に外国に所在する物や、外国法を準拠法とする債権などが含まれ
ることが考えられる。そのため、ABL をめぐる法律関係は必然的に渉外性を有
することとなり、法の適用に関する通則法(以下、通則法という) により準拠法
を指定する必要が生じる。しかし、ABL は、融資や担保設定という法的手段を
取っており、日本の牴触法では、融資契約、動産の約定担保物権、債権譲渡、債
権担保(債権質)の準拠法についてそれぞれ個別に扱われているため、単に ABL
といっても、渉外事案においてはさまざまな問題が生じる可能性がある。ABL
4)
による担保権設定の法律構成と「事業のライフサイクル」
を一体として捉える
という経済実態にずれがあることは実質法上も指摘されるところであり、それが
牴触法上は ABL について準拠法が一貫しないという事態を引き起こし得ると考
えられる。そこで、ABL 制度が牴触法上どのように解釈されるのか、外国法と
比較しながら考察し、制度の利用促進を図るためには今後どのようにすればよい
のかという立法論について言及することを、本稿の趣旨としたい。
以下、本稿の構成について述べる。まず前提として、日本国内における ABL
の仕組みを概観する。次に、現状把握のため ABL を構成する個々の単位法律関
係について行われてきた従来の牴触法上の議論を紹介する。最後に、ABL にお
ける担保設定の一体性を踏まえたうえで、ABL の準拠法について検討する。
Ⅰ 実質法上の ABL
まず、ABL の具体的構造について概観していく。前述したとおり、ABL は、
融資契約や担保設定の法的手段をとっており、融資を受ける際には、企業が持つ
事業資産が担保としてどの程度の価値があるのか貸し手が調査する、「資産の評
価」5)が行われる。ここで、取引先との契約書類や受発注に関する書類等の資料
を分析する。それによって、金融機関は、企業が持っている在庫や売掛債権等の
管理、モニタリング6)を通じて、融資先の事業フローやキャッシュフローを把握
することができる。
以前は、バランスシート上の審査だけで資産の評価をしていたが、事業そのも
のの価値を正確に把握、評価することができるという点で、ABL は新しい融資
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モデルであるといえよう。そのために、借り手は貸し手に対してコベナンツ7)を
課し、貸し手はその情報に基づき事業活動のモニタリングを行う。そして、借り
手は担保にした資産の状況を共有することで、事業に対する深い理解が得られ、
安定的に資金を確保でき、さらには業績に合った経営のアドバイスを受けること
ができる。また、貸し手は、キャッシュフローの報告を受け、必要に応じて極度
枠の変更を行うことができる。このように借り手である企業と貸し手である金融
機関等が緊密な関係にあることで、業況が悪化した際は早期発見・早期再生が可
能となる8)。
次にこのような構造を踏まえたうえで、ABL の特徴について述べる。通常の
融資と比較して、主に二つの特徴を挙げることができる9)。第一に、事業の継続
や発展を支援する融資だということである。ABL では、企業の事業価値に注目し、
それを構成する原材料や商品、機械設備、売掛金等の事業に必要な資産を担保と
して提供するが、通常の企業活動の範囲内で、担保として提供したものを生産活
動や販売に利用することができる。つまり、不動産担保融資や社債発行等による
資金調達が不可能であるから、動産・債権まで担保に取られる、というような後
ろ向きのものではなく、企業の能動的な資金調達手段としての役割を担っている
と言える。第二に、ABL の実施や継続にあたって、コベナンツを課し、モニタ
リングを行うことで、借り手と貸し手の間に緊密なコミュニケーションや協力関
係が生まれる。
また、ABL を活用することには、当事者双方にメリットがある。まず、企業
側のメリットとして、資金調達手段の多様化が考えられる。担保に出す不動産を
有していない企業の資金繰りのために、金融機関が資金供給すれば、機動的な資
金調達の実現によって経営の自由度を確保し、適正な事業に資金を投入できる。
そして拡大した事業に伴って在庫や売掛金も増大すれば、それに応じて運転資金
も拡大するというメリットがある。ほかにも、ABL を行う際に金融機関のアド
バイスや資料に対応していくことで、結果として企業の内部管理体制の強化・整
備につながることが期待される。
一方、金融機関側のメリットは、担保価値を把握できるだけではなく、企業に
対する定期的なモニタリングにより事業の状況が透明化され、流動資産の動向の
把握、不良在庫や不良売掛債権の発見、融資先との関係強化につながることにあ
る。これにより、金融機関の事業評価能力が向上し、バランスシートだけでは見
えない企業価値を把握する機能を持つことになる。また、先述したとおり、担保
396 法律学研究53号(2015)
不動産を有しない等の理由により、従来の融資を受けられない企業にも融資する
ことができ、収益の増大につながる。
さらに、ABL の普及を支える法整備及び施策について述べる。2005年に「動
産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」(動産債権譲渡
特例法)が施行され、これにより従来の債権譲渡登記制度が一部改正されたと同
時に、新たに動産譲渡登記制度が創設された。本改正により、動産譲渡担保は動
産譲渡登記制度によって、それまで明確な公示手段が存在しなかった将来債権は
債権譲渡登記制度によって、それぞれ明確な公示手段を持つこととなった。また
2013年、金融庁は「ABL の積極的活用について」を公表し、運用マニュアルの
明確化を進め、政府は ABL の普及を積極的に促進している。
最後に、ABL のような制度は日本だけでなく、諸外国の実質法上においても
事業再生のための制度として整えられているので紹介する10)。
アメリカ合衆国では ABL は1970年代から普及している制度であり、1962年制
定のアメリカ統一商法典 UCC(Uniform Commercial Code)の第 ₉ 編においては制
定法上の約定担保権とされている。事業用資産全部を担保の対象とすることによ
る担保権実行の際の担保物の迅速な売却や、事業用資産をすべて売却することに
よる実質的な事業譲渡の実行によって、継続企業価値が担保権実行によっても実
現が可能となる。そのため、便利な登録制度であるファイリング・システムとと
もに実用的な制度として活用されている。
またイギリスにも1985年の英国倒産法(the Insolvency Act) や2002年の英国企
業法(the Enterprise Act) によって実質法として定められた浮動担保(floating
charge)の制度が存在する。この制度のもとでは銀行は事業が継続している間は
増減変動する動産、債権、不動産上の権利、知的財産権などすべての事業用資産
を担保にとる。また、銀行が選任した収益監査人となるレシーバー(receiver)は、
融資先企業が債務不履行に陥った際には、担保物(collateral)の内容をその時点
で確定させて、担保物の占有を取得することで換価処分し、担保債権の弁済に充
当させる。
II 従来の牴触法上の議論と ABL
₁ 融資の準拠法
ABL 融資は従来の融資と異なる性質を有するものの、融資それ自体は同様で
397
あり、金銭消費賃貸借契約と位置付けることができる。つまり、金銭消費賃貸借
契約における渉外事案が生じた場合に準拠法を選択する際には、単位法律関係を
契約として、通則法 ₇ 条により当事者合意の準拠法とするのが、当事者自治の原
則の観点から鑑みても相当であろう。また、当事者による明示または黙示の合意
をしていなかった場合には、特徴的給付の理論に基づいて、通則法 ₈ 条 ₂ 項が適
用されることが想定される。
₂ 担保設定の準拠法
( 1 ) 集合動産譲渡担保
集合動産譲渡担保の準拠法選択について、通則法では直接規定されていない。
しかし、集合動産譲渡担保は、目的物の範囲が特定される場合には絶えず構成部
分が変動する集合動産を一個の集合物とする、いわゆる動産譲渡担保に見なされ
る。そして、動産譲渡担保は非典型担保として法体系上、約定担保物権と類似の
性質を有しているため、集合動産譲渡担保は約定担保物権の議論、法制が相当し
得る11)。そこで、本節では日本国内及び諸外国の約定担保物権の準拠法を通して、
集合動産譲渡担保の準拠法について言及していく。
物を債権の担保とすることを目的とする担保物権は、基本的に債権が存在しな
ければ生じ得ない12)。すなわち、通則法では、担保物権の準拠法は、物権準拠法
だけではなく、債権準拠法も考慮しなくてはならないとされている。しかし、先
取特権や留置権のような法定担保物権は元の債権の付従性が強いのに対し、質権
や抵当権といった当事者によって設定される約定担保物権は付従性が弱い。した
がって、物権準拠法の連結点である目的物の所在地法に基づいても一般債権者を
害することはなく、また根抵当などは目的の債権が確定できず、債権準拠法によ
らないため、原則として目的物の所在地法を連結点とするのが通説である13)。つ
まり、物は所在地の公益(経済、取引、公信用)14)と密接に関連し、物権の直接性
及び排他性を鑑みるに、目的物の所在地法によるべきであるという説である15)。
これに対し、動産は所在地を容易に変更できるため、所在地との結びつきが強い
とはいえないし、物が国境を越えた際には新所在地の法に従うため、物権秩序が
混乱する恐れがあるといった反論がある16)。これらの反論に、物が所在地を変更
した場合において新所在地法によれば成立要件が充足されなくとも旧所在地法に
より物権の効果は保護されるから法的安定性は欠如していない、と反駁する学者
もいる17)。
398 法律学研究53号(2015)
また過去には、動産は所有者とともに変転するから所在地法によらしめると準
拠法を異にして法的安定性を欠くため、動産は所有者の人格に付着することを考
慮し、約定担保物権の成立は属人法である住所地法によるべきである、という説
もあった18)。しかし、この立場に対しては、同一の目的物について所有権につい
て争うとき、当該当事者の住所がそれぞれ異なれば準拠法指定が困難になる19)、
また、住所地は変更される可能性もあり、そのことは利害関係人が確認し得ない
可能性も高いため、取引の安全性、円滑性を損なう20)、といった批判がなされて
おり、現在では議論に相当しないとされている。
次に、諸外国における約定担保物権の準拠法について俯瞰する。
アメリカ合衆国では UCC9-301条により当事者間で準拠法に関する有効な合意
があると認められる場合には当事者の選択した地の法を適用し、当事者間におけ
る有効な合意が認められない場合には、債務者の所在地法によるとしている。こ
れにはメリットとして、債務者の所在地法によることで、債権のように担保物の
所在地法の確定が困難な無体物であっても苦労せずに準拠法の設定ができること、
また、動産は所在地が非常に変動しやすく、担保権者は担保物が所在する可能性
のあるすべての所在地法を具備せねばならない一方、債務者の所在地は動産の所
在地に比べ変わりにくく、対抗要件の具備も可能であることが挙げられている21)。
オ ー ス ト ラ リ ア で2009年 に 設 定 さ れ た 動 産 担 保 法 で あ る PPSA2009(The
Personal Property Securities Act 2009)でも物権準拠法は所在地法を採っており、例
外として移動することが予定されている物品に関しては目的地法、通常複数の法
域で用いられる物品は、個人用または家庭用の物を除き担保権設定時に債権者が
所在していた法域の法によるとしている22)。
一方フランスでは、動産の準拠法に関して所在地法主義を採っている。しかし
ながら、動産に対する権利の設定または移転が、約定担保権のように法律行為ま
たは法的事実から生じ、その法律行為または法的事実を規律する法と所在地法と
が一致しない場合には、契約の準拠法と所在地法とが競合する可能性があると示
唆している。物権の対象物の所在地法による場合、動産がある法域から別の法域
に移動するとき、旧所在地法と新所在地法の間に動的牴触(conflict mobile)が生
じるとし、このとき通説は、物権の設定に関しては旧所在地法に、物権の内容・
方式に関しては、新所在地法によるとする23)。すなわち、担保物権を契約上の問
題と物権問題に法性決定し、それぞれに準拠法を適用する通説と、契約上の問題
に一元化する契約準拠法説に分かれている。
399
以上のように、諸外国での約定担保物権の準拠法については、アメリカ合衆国
では債権者の住所地法、フランスでは日本と同じく目的物の所在地法、そして
オーストラリアではそれらの折衷という異なる準拠法が採用されている。
( 2 ) 集合債権譲渡担保
債権譲渡担保の法律関係の性質は、債権譲渡と同視することはできないものの、
準拠法はそれに準じて決定するとされている24)。そこで、以下に債権譲渡に関す
る牴触法上の議論を紹介する。
まず、日本における議論を紹介する。債権譲渡の準拠法決定の問題は、譲渡当
事者間の関係と第三者に対する効力に分けて検討されている。譲渡人・譲受人の
関係の準拠法は債権準拠法による見解が通説となっている。その見解は譲渡原因
たる債権行為と準物権行為たる譲渡行為を区別し、債権の運命に関する債務者の
予測が容易になり、通則法23条により債権準拠法が適用される第三者との関係と
も統一的な処理が可能となる25)ことを根拠としている。
もっとも、これに対しては次のような批判がなされる。譲渡当事者間の法律関
係を債権行為と準物権行為の二つに分けるべきなのかにつき、理論的に説得力の
ある説明はなされていない。また、原因行為が準拠法上は無因だが譲渡行為の準
拠法では有因というような場合には複雑な問題を生ぜしめる26)。
他方、当該債権契約の準拠法によるべきであるとする見解も存在する。この見
解は準物権行為としての債権譲渡はそれ自体としては債権行為ではないとしても、
一つの債権法上の法律行為であるため、債権行為に準じて考える27)。また利点と
して債権流通の円滑化を図ることができる28)。しかし、債務者の予測可能性を害
し、債務者保護に悖ることとなる29)。
ほかに、債権譲渡を一体的な関係と見て債権法上の法律行為とし、当該法律行
為の準拠法による説も存在する。その根拠は準物権行為の独自性を否定する日本
の実体法との整合性や、現代社会における債権譲渡の経済的機能の重要性にある
とされる30)。これに対しては、債権譲渡をめぐる法律関係を不必要に複雑化させ
る恐れがあるとの批判がなされる31)。
債権譲渡の第三者に対する効力については、通則法23条が、およそ第三者の地
位にあるすべてのものとの関係において統一的に判断することができるという利
点のある譲渡対象債権準拠法を明文で指定している。
次に、諸外国の債権譲渡に関する牴触法上の規定を概観する。
400 法律学研究53号(2015)
EU では、EEC 契約債務準拠法条約をもとに作られた、ローマⅠ規則(Rome
Ⅰ Regulation) が採択されている。ローマⅠ規則14条では、債権譲渡人と譲受人
32)
の関係(債権譲渡の成立要件、成立時期など)は、原因行為と準物権行為を区別せず、
債権譲渡契約の準拠法で処理される。債権譲渡可能性、債務者との関係などは、
譲渡対象となる債権の準拠法により処理される。また、これらの規定は債権譲渡
担保にも適用される。この規定は債権譲渡の第三者に対する効力の準拠法につい
て直接指定していない。そのため、第三者対抗要件に関しては EU 加盟国それぞ
れの処理に委ねられている。
そこで、イギリス法上の債権譲渡の規定について言及する。我が国の通説のと
る譲渡目的債権の準拠法という発想は、イギリス法も採用している。イギリスで
は、
「債権という無体系財産が現在誰に帰属しているのか、したがって誰が債務
者に履行を請求できるのかという問題は、債務者と直接契約関係に立つ者が現在
誰なのかという問題に過ぎず、債権を有することと対応する債務を負うことは表
裏一体の事柄であり区別しては論じることはできないので、この問題は契約上の
33)
問題そのものである」
とされている。つまり、イギリス法の考え方は契約と法
性決定するのである。ただ、譲渡目的債権の種類によっては債権所在地による場
合もある。
ローマ条約からローマⅠ規則への改正過程において、債務者以外の第三者に対
する効力の準拠法につき、活発に議論がなされた34)。だが、ローマⅠ規則の2008
年の最終案では債務者以外の第三者に対する効力に関する規定自体が削除された
ため、議論に決着はついていない。
現在も、第三者に対する効力の準拠法に関しては大きく分けて四つの見解に分
かれる35)。第一に、債権を生じさせる原因となった取引の有効性を規律する法、
すなわち、債権の準拠法によるとするべき見解(債権の準拠法説)。第二に、譲渡
人の所在地または常居所地法に従うべきとする見解(譲渡人の所在地または常居所
地法説)
。第三に、債務者の住所地法に従うべきとする見解、そして第四に、債
権譲渡の第三者に対する効力についても、譲渡当事者間の原因関係の準拠法によ
るべきとする見解である。
UCC 第 ₉ 編は、
「担保取引(Secured Transactions)」という表題を持ち、規定の
対象は担保取引であるが、その適用範囲には債権譲渡も含まれている。債権譲渡
までが対象に入っているのは、債権に対する担保と債権譲渡の区別が困難である
ため、とされている36)。ここでは、①譲渡当事者間の関係の問題、②第三者に対
401
する効力の問題、③債権の譲渡可能性の問題、④債務者に対する効力の問題のう
ち、②の第三者に対する効力の問題のみ、明示の牴触規則が UCC 第 ₉ 編により
規定されている。まず、譲渡当事者間の関係の問題は原則として当事者自治によ
る(UCC₁-301条)。次に、第三者に対する効力の準拠法は譲渡人の所在地法によ
る(UCC₉-301条)。また、債権の譲渡可能性の準拠法は、契約及び当事者に最も
重要な関係を有する州の法律(通常は、債権の準拠法)(リステイトメント208条)に
よる。最後に、債務者に対する効力の準拠法に関しては、
(a)債権の譲渡可能性
の準拠法(通常は、譲渡債権の準拠法)または(b)債権譲渡当事者間の譲渡の効
力の準拠法(リステイトメント210条)によることになるとされている37)。
UNCITRAL 債権譲渡条約は、債権譲渡に関する法制が国によって異なってい
るために国際的な取引において生ずる問題に対処することを目的としている38)。
₁ 条によれば、条約の適用範囲を画するのは、第一に国際性の要素、第二に条
約締約国との関連の要素である。第一の「国際性」の要素は、債権または譲渡に
関して要求される。すなわち、譲渡される債権が国際的であるか、または譲渡が
国際的であるかの一方が必要とされる。なお、債権譲渡が連鎖する場合には、そ
の連鎖のうちの一つの債権譲渡がこの国際性の要件を満たせば、その債権譲渡に
は条約が適用されその後の債権譲渡はそれ自身が国際性の要件を満たさなくても、
条約の適用を受ける。第二の「締約国との関連」の要素は二つの角度から規定さ
れている。まず、条約適用のための最も基本的な要件は、債権譲渡の契約時に譲
渡人が条約の締約国に所在することである。次に、債務者が原因契約の締結時に
締約国に所在していなかった場合、及び原因契約の準拠法が締約国の法律ではな
い場合には、条約は債務者の権利義務を左右しない39)。
譲渡契約の方式については、関連するいくつかの国の法律のいずれかによって
方式に関して有効であれば、有効である旨を、27条が定める。すなわち、譲渡人
と譲受人が同一国に所在する者である場合には、譲渡契約の準拠法または譲渡契
約締結地の法のいずれか(27条 ₁ 項)、譲渡人と譲受人が異なる国に所在する者で
ある場合には、譲渡契約の準拠法、譲渡人の所在地、または譲受人の所在地のい
ずれか(27条 ₂ 項)の方式に関する要件を満たせばよい。
譲渡人と譲受人との関係(合意から生じる権利義務関係)については、まずは当
事者の選択した準拠法により、選択がない場合には「譲渡契約が最も密接な関係
を有する国の法律」による(28条)。
譲渡人と譲受人との間の規律は、契約上の譲渡制限の譲受人と債務者間におけ
402 法律学研究53号(2015)
る効力、譲受人と債務者との関係、債務者に対して譲渡を主張するための要件、
債務者の免責などは、原因契約の準拠法による(29条)。
譲渡人と競合する権利者との優先関係については、譲渡人の所在地法を準拠法
とし、倒産手続上の優先権につき、例外を認める。
以上を踏まえたうえで、UNCITRAL 債権譲渡条約の特徴を 3 点述べる。一つ
目は、譲渡当事者間の関係と第三者関係を峻別することである。二つ目は債権譲
渡の対第三者関係において、譲受人と債務者との関係を譲受人と第三者との関係
と区別して取り扱う。三つ目は、譲受人対第三者の優先関係を規律する牴触法
ルールとして、UNCITRAL 債権譲渡条約は譲渡人の所在地法を連結点としている。
( 3 ) 債権質
普通預金債権質は、通則法に独立の単位法律関係として規定されていない。そ
のため、債権質当事者が異なる国にいた場合と、第三者が債権質当事者と異なる
国にいる場合の効力が問題となる。そこで、債権質の準拠法をどのように指定す
るかが問題となり、議論が重ねられてきた。まず判例は、最高裁判所第一小法廷
判決昭和53年 ₄ 月20日最高裁判所民事判例集32巻 ₃ 号616頁で、
「わが法例10条 ₁
項(通則法13条)は、動産及び不動産に関する物権その他登記すべき権利はその
目的物の所在地法によるものと定めているが、これは物権のように物の排他的な
支配を目的とする権利においては、その権利関係が目的物の利害と密接な関係を
有することによるものと解されるところ、権利質は物権に属するが、その目的物
が財産権そのものであつて有体物でないため、直接その目的物の所在を問うこと
が不可能であり、反面、権利質はその客体たる権利を支配し、その運命に直接影
響を与えるものであるから、これに適用すべき法律は、客体たる債権自体の準拠
法による」と示した。また、「民法364条 ₁ 項は、指名債権を目的とする質権の設
定を第三債務者その他の第三者に対抗するためには、同法467条の規定に従い確
定日付のある証書をもつて第三債務者に通知をし又はその承諾を得ることを要す
るものと定めているが、……この通知・承諾は、債権質の効力に関する要件であ
ると解すべきである」とした。通則法施行後に新たな判例は出ていないが、立場
は維持されているものと考えるべきだろう。
現在の学説40)で債権質の準拠法は、①物権と性質決定しつつ、目的債権の準
拠法による説41)、②物権と性質決定しつつ、目的債権の準拠法と通則法23条を適
用する説42)、③債権譲渡と類似の制度として、目的債権の準拠法と通則法23条を
403
準用する説43)に分かれている。①説は、物権として性質決定するが、通則法13
条は適用せず、成立及び当事者間効力、対債務者効力、対債務者以外の第三者効
力いずれにも、対象債権の準拠法を適用する説であり、先の判例の立場と法例が
施行されていた頃の通説の立場を維持している。この説に対しては、変則的な債
権担保の形態の場合に債権質と債権譲渡の区別が困難になる44)、黙示の意思によ
ることになり国際取引の安全が害される45)、といった批判がある。②説は、物権
として性質決定するが、通則法13条は適用せず、成立及び当事者間効力、対債務
者効力には対象債権の準拠法を適用、対債務者以外の第三者効力には通則法23条
を適用することで、結局すべての効力について対象債権の準拠法によるとする説
である。この説に対しては、債権譲渡において、当事者間の関係は目的債権の準
拠法によることになるのであるから、債権質も債権譲渡として統一的に扱う方が
首尾一貫する46)という批判がある。③説では、債権質を対象債権についての処
分行為として準物権行為と性質決定し、成立及び当事者間効力には条理により債
権自体の準拠法を、対債務者または債務者以外の第三者効力については通則法23
条を準用する。以上の ₃ 説があるが、いずれの説によっても債権質の準拠法は債
権自体の準拠法が適用され、理論づけが異なるだけである。ただし、複数種類の
担保が一体となって設定される場合に、条理によって債権自体の準拠法に基づく
か、通則法23条に基づくかによって、債権譲渡担保などとの優先劣後関係の決定
が問題となる。
次に債権質の第三者に対する対抗要件具備あるいはその方式が通則法10条にい
う法律行為の方式にあたるかという問題に対する学説の対立を整理する。通説・
判例である通則法 ₇ 条適用説によると、対抗要件具備は債権質の効力に関する要
件であって、目的債権自体の準拠法を定める通則法 ₇ 条を適用することになる。
根拠としては、方式とは外面的形式を指すから、取引保護のための公示方法であ
る債権質の対抗要件は方式ではないこと47)、日本法であれば、債権質を第三者に
対抗する要件は通知または承諾であるが、これ自体が法律行為といえるので、
「法
律行為の方式」ということは難しいこと48)、債権譲渡における対抗要件が方式で
はなく実質の問題とされているので、債権譲渡と同様の方式である債権質につい
ても実質の問題と解するべきであること49) が挙げられている。通説・判例は、
債権質の第三者に対する対抗要件具備とその方式を区別していないことに対して、
通知または承諾の方法は「法律行為の方式」の問題にあたる50)という批判がある。
さらに、前述の判例は根拠を示していないこと、通知または承諾によっても第三
404 法律学研究53号(2015)
者は外部から質権の設定を知り得ないので、取引保護のための公示方法と見るこ
とができるかどうかに疑問があるということも指摘されている51)。これらの通
説・判例に対して、債権質の準拠法と方式双方に通則法23条を適用する説もある
が、通説と同様に目的債権の準拠法によることになり、適用される準拠法は同じ
となる。なお、対抗要件自体とその方法を区別する立場では、通則法10条 ₁ 項を
適用する説と、通則法10条 ₂ 項の適用を可能とする説に分かれている。
前記のように、日本では債権質を独立の単位法律関係とした規定が存在しない。
しかし、諸外国の中には、担保付金融取引をより円滑にするため、債権質に関す
る実質的な規定やガイドラインを用いて取引を行う国もある。ここで、外国の債
権質に関する実質的な規定について、アメリカ合衆国を一例として挙げる。
地域的不統一国家であるアメリカ合衆国には、日本のような準拠法選択におけ
る通則法が存在しない。そのため、買主の債務不履行に備えて担保をとる場合に
は、アメリカ統一商法典 UCC52)の第 ₉ 編「担保取引」で処理しているのが現状
である。
UCC は、アメリカ合衆国国内での担保付与信市場拡大による、新たな金融手
法の登場や、州法事項である動産担保法により生じる準拠法の選択問題を背景と
して53)、1990年から研究委員会によって改正審議がなされた。改定前の UCC に
よると、不統一法国家であるアメリカ合衆国では、担保物が動産である場合、所
在地が変更されてしまうと準拠法の特定が困難になる。また、複数の州(法域)
に所在する動産を一括して担保に取る場合も、各々の動産の所在地法に従わなけ
ればならない。準拠法が異なるということは、対抗要件が異なることであるため、
担保の登録を行う者及び債務者の信用調査者に負担が大きかった。
そのため改正の結果、現在の UCC 第 ₉ 編牴触規則では、担保付取引における
第三者との関係について、原則が「担保物の所在地法」から、担保物の所在地よ
り一般的に変更が少ないと考えられる「債務者の所在地法」へと変更された。つ
まり、改正後の UCC 第 ₉ 編の原則は、それまでの担保物所在地法原則を離れ、
対抗要件の具備、対抗要件を具備した効果、対抗要件を具備していない効果、そ
して優先順位を、一律に債務者の所在地法に準拠させるとしたのである54)。
また、2007年に国際連合の国際商取引法委員会における、各国の企業による低
コストでの担保付与信の利用可能性を促進するための、動産担保の効率的な制度
構築に向けた「担保付取引に関する立法ガイド(UNCITRAL Legislative Guide on
Secured Transactions)
」の採択の際、改正後の UCC 第 ₉ 編は大きな影響力を持っ
405
た55)。そして現在、UCC 第 ₉ 編の改変や UNCITRAL の立法ガイドにより、国際
取引の増加や不動産担保への依存から脱却するため、債権を含む動産を担保にす
ることが増加している。
Ⅲ ABL における準拠法の検討
₁ 担保設定の一体性
Ⅱ章で紹介したとおり、現状において ABL の準拠法は、事業の部分ごとの法
律関係について指定され、一つだけに定まらない。このことは、グローバル化の
進む今日において、ABL のさらなる普及の妨げになっていると考えられる。また、
実質法上、我が国では一体型の担保権の設定ができないために、事務上あるいは
管理上も大変煩瑣な状態に陥っている56)との指摘もある。
そこで、現状では非統一的に指定される ABL の準拠法を統一的に指定できる
ように修正する要請の有無について、検討する。
まず、経済的実態及び当事者意思について見る。先述したとおり、ABL にお
いては、在庫等に対する動産譲渡担保、売掛代金債権を目的とする債権譲渡担保、
流動預金債権を目的とする債権質をそれぞれ利用して担保を取得する。しかし、
それらは事業全体の価値を把握する意図で、一体としてなされるものである57)。
そのような ABL の経済的実態及び当事者意思に鑑みれば、 ₃ 種類の担保設定が
一体として扱われるべき要請は存在する。もっとも、この要請は ABL に限らず、
債権及び物権等を目的とする複合型の担保設定一般に妥当するものである。
次に、ABL の果たし得る機能について見る。ABL には社会的に見て有益な側
面がある。これまでに述べたとおり、ABL において、金融機関は、企業と密に
コミュニケーションを取り合うことにより、通常の融資という価値を提供するだ
けでなく、企業に助言を与え経営の適正化を促す。また ABL は、担保の実行に
移るまでの過程が通常の融資とは異なる。不動産や保証人を担保とした通常の融
資の場合には、企業が債務不履行に陥ると、金融機関はただちに担保権を実行し、
その事業を「終わらせる」ことで、債権を回収することが一般的である。それに
対して、ABL は、事業サイクルを回すことにより得られる将来の収益から債権
を回収することが期待できるので、金融機関に担保権の実行を踏みとどまらせ、
事業をより長く継続させ、企業を「生かす」担保であるといえる58)。このような
企業の事業の発展継続を支援する担保形態が広く利用されるようになれば、多く
406 法律学研究53号(2015)
の企業が事業を継続するにつれて成長し、それを支援する金融機関はより一層日
本経済の発展に寄与することとなる。もっとも、これらの諸点のうち、ABL の
有益性を基礎づけるため重要なものであると考えられるのは、複合型の担保設定
による融資の促進であり、融資当事者間のコミュニケーションによる「生かす担
保」たる側面はそれに付随した融資実行方法の一部に過ぎない。そうすると、
ABL をはじめとする複合型の担保設定自体に社会的に見て有益な側面があると
いえ、その普及を促進すべきであるといえる。そして一体として扱うことによっ
てより普及が促進される。
以上のように、ABL のみならず、複合型の担保設定が一体として行われる要
請が認められるので、準拠法の検討でも一定の考慮が求められ得る。
₂ 現行法下での検討
それでは、ABL を構成する単位法律関係に関して今日までなされてきた牴触
法上の議論と、それを修正すべき要請を踏まえ、解釈の余地を検討する。
まず、現行法下での解釈を再度確認する。ABL や複合的な担保設定は通則法
に独立の単位法律関係として定められていない。したがって、通則法によって
ABL をはじめとする複合的な担保設定の準拠法を定める場合、複合的な担保設
定をそれぞれの単位法律関係に分断して準拠法を決定するのが通説に基づく理解
である。つまり、ABL について見れば、①融資、②集合動産譲渡担保、③集合
債権譲渡担保、④普通預金債権質のそれぞれに、①通則法 ₇ 条・当事者意思、②
通則法13条・目的物の所在地、③通則法23条・譲渡対象債権の準拠法、④債権質
の対象となる債権の準拠法を連結点として、準拠法を指定することとなるのであ
る。
次に、通則法下において複合型の担保設定の準拠法につき従来の議論を修正し、
準拠法を一つだけに定める必要があるかについて検討する。本章 ₁ で確認したよ
うに、事業サイクル等の複合型の担保目的物全体を捉えようとする経済的実態及
び当事者意思についてはこれを否定できない。しかし、もともと複合的に法律関
係が形成されることは、通則法の規定上明らかであるから、個々の規定が単位法
律関係ごとに準拠法を指定していることを解釈によって修正すべきとまでは言え
ない。よって、解釈論上は、現状のまま、複合型の担保設定の各部分について、
それぞれ準拠法を検討することが妥当と思われる。
407
₃ 立法論的検討
現行法下で複合型の担保設定を一体的に扱う要請は解釈を修正するほど大きく
ないとしても、やはり通常の不動産や保証人を担保に取った融資と比べて複合型
の担保設定が有用であることは否定できない。そこで、複合型の担保設定の普及
を促すことを目的とした特別法の是非を検討する余地があると考えられるので、
立法論を検討していく。
通則法13条は物権について目的物の所在地法を準拠法とするが、複合型の担保
設定の場合には、アメリカ合衆国の UCC に見られるように債務者の所在地法と
する特則を設けることが考えられる。さらに、通則法23条では債権譲渡の第三者
に対する効力について目的債権の準拠法によることとなっているが、こちらも特
則により複合型の担保設定の場合は債務者の住所地法とする。最後に、債権質に
ついても通則法23条を適用する説を採用すれば、複合型の担保設定全体について
準拠法が一致する。
しかし、この立法論には多くの問題点が残る。一つ目に、先述のとおり実質法
さえ一体的な担保設定を認めていないにもかかわらず牴触法においてのみ認める
ことに期待される利用促進効果は薄く、一国の法体系として矛盾してしまう。二
つ目に、約定担保物権について所在地法を準拠法として指定していた目的である
所在地の公益を損なう。三つ目に、通則法施行(平成19年)からあまり時間のたっ
ていない今、改正を急ぐことは通則法による社会制御を困難ならしめ、国民に負
担を強いることとなる点で妥当でない。このように、複数の単位法律関係にまた
がった融資手法については、その利用促進を牴触法の整備により行おうとするこ
とには問題が多く、各種の利益を適切に調整することが困難である。
以上より、あえて立法をすべき必要性は高くないと思われる。
結びにかえて
本稿では、近年日本において売掛債権や在庫動産等の流動資産を担保として融
資を行うスキームとして注目されている ABL について、国際私法上どのような
問題が生じる可能性があり、どのような法的処理がなされるのかを国内における
約定担保物権・債権譲渡担保・債権担保の準拠法ならびに比較法的な規定を概観
しながら論じてきた。前章でも述べたように、解釈論及び立法論の両側面から検
408 法律学研究53号(2015)
討を進めた結果、解釈上、個々の規定について単位法律関係ごとの準拠法指定に
修正する必要性はなく、また、利用促進を目的とする特別法規則の是非において
も、ABL の性質上、牴触法整備だけでは解決できない問題点が多いことから、
早急に新たな準拠法規則を立法する必要性は高くないという帰結に至った。しか
し、今後の国際的な担保制度の多様化という側面から見れば、日本と欧米諸国に
ある、動産担保と債権担保の概念の差異を埋めていく何らかの働きかけは将来的
にも必要となってくるのではないかと考える。世界的な法統一を進めるきっかけ
となるような立法案が今後、政府から打ち出されることに期待したい。
₁ ) 金融庁「ABL(動産・売掛金担保融資)の積極的活用について」(2013年)。
₂ ) 池田真朗「ABL 等に見る動産・債権担保の展開と課題―新しい担保概念の認知
に向けて―」池田真朗ほか編『担保制度の現代的展開―伊藤進先生古稀記念論文
集―』(日本評論社、2006年)289頁。
₃ ) 同書289頁。
₄ ) 商工組合中央金庫「流動資産一体担保型融資(アセット・ベースト・レンディ
ング)第 ₁ 号案件を実行―事業のライフサイクルを主眼とした中小企業の資金調
達の新展開―」NEWS RELEASE(2005年)。
₅ ) ABL の利用にあたり、在庫や売掛金等の資産について、担保としてどの程度の
価値があるかを調査すること。
₆ ) 金融機関が企業の在庫や売掛債権を評価・管理すること。
₇ ) 担保提供している在庫や売掛金等のキャッシュフローに関する情報を定期的に
報告する義務。
₈ ) 野村総合研究所「動産・債権等の活用による資金調達手段~ ABL(Asset Based
Lending)~テキスト金融実務編」(2006年) ₂ 頁以下、小野隆一「ABL 導入の
ポイントと定着化のための留意点」銀行実務36巻 ₉ 号(2006年)37頁。
₉ ) 経済産業省「ABL のご案内―在庫や売掛金を活用した新たな資金調達の方法―」
(2008年) ₆ 頁。
10) 高木新二郎「アセット・ベーストレンディング普及のために―米国での実態調
査を踏まえて―」NBL851号(2007年)81頁。
11) 日本の実質法上では、最高裁判所第三小法廷昭和62年11月10日判決によると、
集合動産は設定時における占有改定により対抗要件を具備でき、その効力は集合
物の構成部分が変動しても集合物としての同一性が失われなければ、新たにその
構成部分となった動産を含めた集合物についても及ぶとしている。
12) 三浦正人『二訂 国際私法』(青林書院、1990年)195頁。
13) 松岡博『現代国際私法講義』(法律文化社、2008年)151頁。
14) 国家が借り手または貸し手となる信用関係。
409
15) 櫻田嘉章『国際私法(第 ₆ 版)』(有斐閣、2012年)190頁。
16) 野村美明『ケースで学ぶ国際私法』(法律文化社、2008年)222頁。
17) 木棚照一ほか『国際私法概論( ₃ 版補訂版)』(有斐閣、2001年)138頁。
18) 山田鐐一『国際私法(新版)』(有斐閣、2003年)289頁。
19) 久保岩太郎『國際私法論』(三省堂、1935年)508頁。
20) 溜池良夫『国際私法講義(第 ₃ 版)』(有斐閣、2005年)330頁。
21) 藤澤尚江「豪州動産担保法と国際私法」筑波ロー・ジャーナル ₈ 号(2013年)
52頁。
22) 同書36頁。
23) 藤澤尚江「動産担保取引の発展と国際私法(上)」筑波ロー・ジャーナル ₈ 号
(2010年)63-64頁。
24) 岡本善八「債権譲渡」ジュリスト別冊133号(渉外判例百選 第 ₃ 版)(1995年)
110頁。
25) 横山潤『国際私法』(三省堂、2012年)227頁。
26) 河野俊行「債権譲渡」民商法雑誌136巻 ₂ 号(2007年)181頁。
27) 折茂豊『国際私法(各論)〔新版〕オンデマンド版』(有斐閣、2004年)199-202
頁。
28) 北澤安紀「債権譲渡」
『国際私法判例百選[新法対応補正版]』
(有斐閣、2007年)
86-87頁。
29) 溜池良夫前掲注20)410頁。
30) 野村美明『ケースで学ぶ国際私法』(法律文化社、2008年)192頁。
31) 木棚照一ほか前掲注17)158頁。
32) かつてヨーロッパにおいては、EEC 契約債務準拠法条約(1980年、ローマ条約
ともいう)があり、その12条に債権譲渡に関する規定が置かれていた。その内容
は、①債権譲渡における譲渡人と譲受人相互の義務は、この条約に基づき譲渡人
と譲受人との間の契約に適用される法に規律される、②譲渡される債権の準拠法
は、債権の譲渡可能性、譲受人と債務者との関係、債務者に対する譲渡の対抗要
件及び債務者による弁済の効果を決定する、というものである。この規定は債権
譲渡の第三者に対する効力の準拠法について直接指定していない。UNCITRAL
の債権譲渡条約も債権譲渡の第三者対抗要件について、所在地法主義を採用して
いる。詳しくは、北澤安紀「債権流動化と国際私法」国際私法年報 ₆ 号(2004年)
₆-21頁、同前掲注28)参照。
33) 河野俊行「債権譲渡」民法商雑誌136巻 2 号(2007年)185頁。
34) まず、2005年に欧州委員会が「条約」を「規則」へと改正することを提案した
際は、譲渡人の常居所(所在)地法によることが示されたが、イギリスとオラン
ダが反対を続け、2007年にはイギリスが、債権譲渡の物権的側面に関しても債権
の準拠法に従わせることを提案した。2007年 ₄ 月末には、ドイツとポルトガルが、
債権準拠法または譲渡人の常居所(所在)地法のいずれかを選択するという新た
410 法律学研究53号(2015)
な提案もあった(藤澤尚江『債権・動産を活用した金融取引と国際私法』
(同友館、
2013年)73-74頁)。
35) なお、ローマⅠ規則27条 ₂ 項は、欧州委員会に対し、債権譲渡の第三者に対す
る効力及び譲受人間の優先関係の問題について、2010年までにレポートの提出を
命じ、また、このレポートで適切と認められれば規則の改正を行うことを規定し
ている(藤澤尚江前掲注34)74-75頁)。
36) 同書16頁。
37) 池田真朗前掲注 2 )30頁。
38) 早川眞一郎「UNCITRAL 債権譲渡条約について」国際私法年報 ₃ 号(2001年)
₂ 頁。
39) 同書 ₄ 頁。
40) 通則法の施行以前は、法例が牴触法として用いられており、法例12条は債務者
の住所地法を連結点としていた。このため、現在とは異なった学説が展開してい
た。しかし、通則法の施行された現在では、通則法23条が譲渡対象債権の準拠法
を連結点として用いるようになり、本文のような学説の分類となっている。
41) 櫻田嘉章前掲注15)209-210頁。
42) 西谷祐子「物権準拠法をめぐる課題と展望」民商法雑誌136巻 2 号(2007年)
241-242頁、北澤安紀「債権質」櫻田嘉章=道垣内正人編『注釈国際私法 ₁ 巻法
の適用に関する通則法 §₁-23』(有斐閣、2011年)561-570頁。
43) 野村美明「債権質」『国際私法判例百選第 ₂ 版』(2012年)62-63頁。
44) 早田芳郎「債権質の対抗要件の準拠法」昭和53年重要判例解説(ジュリスト693
号)(1978年)270-272頁。
45) 野村美明「債権質」『国際私法判例百選』(2004年)89頁。
46) 野村美明「債権質」『国際私法判例百選新法対応補正版』(2007年)54-55頁。
47) 早田芳郎前掲注44)270-272頁。
48) 牧山市治「債権質の準拠法」『最高裁判所判例解説民事篇』(1978年)179-188頁。
49) 渋川満「金融判例研究会報告」金融法務事情895号(1979年)16-22頁。
50) 櫻田嘉章「債権質の準拠法」判例時報913号(判例評論241号)(1979年)144149頁。
51) 松岡博「債権質の準拠法」民商法雑誌80巻 ₅ 号(1979年)574-583頁。
52) アメリカ統一商事法典は、統一商事法典という名称にもかかわらず、アメリカ
合衆国の連邦法ではなく、各州にその採択を薦める単なる法案モデルに過ぎない。
しかし、UCC は、若干の修正を加えられつつも、ほとんどの州で州法として採
択されており、実質的にアメリカの商事法であるといえる。UCC 各編のうち、
第 ₁ 編「総則」は第 ₂ 編以下に含まれる用語の定義規定であり、第10編「施行期
日及び〔従来の法の〕廃止規定」・第11編「施行期日及び経過規定」は経過規定
であるため、実体的規定は、第 ₂ 編「売買」から第 ₉ 編「担保取引」までである。
53) 角紀代恵『統一商事法典第 ₉ 編の改正について』
(日本銀行金融研究所、1998年)。
411
54) 藤澤尚江前掲注23)38-52頁。
55) 田澤元章「アメリカ統一商事法典(UCC)の概要」Discussion Paper No. 2000J-26、36-60頁。
56) 林揚哲「『ABL 研究報告書』の概要」金融法務事情1770号(2006年)53頁。
57) 事業再生金融機構「ABL の理論と実践」商事法務(2007年)222頁。
58) 池田真朗「債権譲渡の発展と特例法」
『債権譲渡の研究 ₃ 巻』
(弘文堂、2010年)
344頁。
2014年度北澤研究会 16期
飯沼 肇 石本 晃一 井本 優 岩渕すみれ 鍵冨 淳史
加藤 将 金子 寛 河田健太郎 島袋 朝也 髙島 美紗
西田 智之 林 美貴 藤野 裕太 山形 将貴