150324 大脳半球梗塞の管理GL.pptx

大脳半球梗塞の管理 ガイドライン
2015.03.24 久保 友貴子 瀧浪 將典 Large hemispheric infarc/on(LHI)
Large hemispheric infarc/on(LHI)
=malignant middle cerebral infarc/on 重篤な障害と高い死亡率 •  LHI患者の適切な集中治療学的管理
について、質の高い臨床データが 少ない。 •  近年の脳卒中ガイドラインでもLHI患者 管理の詳細について示されていない。 Stroke. 2010 ;41(9):2108-­‐29 Stroke. 2013;44(3):870-­‐947
AHAガイドライン 脳浮腫がある脳梗塞の管理について述べており、 特に集中治療医が日々対応する臨床上の問題点に ついて記載がある。 Stroke. 2014;45(4):1222-­‐38
今回Neurocri/cal Care Society (NCS) + the German Society for Neuro-­‐Intensive Care and Emergency Medicineが協力して、 文献を包括的に評価してLHI患者の集中治療管理について
まとめた。 【Neurocri/cal Care Society:NCS】 →ヨーロッパ、北米の集中治療医(脳神経専門)、 脳神経外科、神経内科、脳血管外科、麻酔科 (脳神経専門)を集めて国際会議開催 方法
•  22のサブトピックに分ける。 •  それぞれのメンバーが事前に各文献の批判的吟味を行って、 最終的にRecommenda/onを作る。会議にて内容をさらに吟味する。 •  臨床上の疑問を提示し、対処法の根拠となるデータ、論文を示して
評価する。 BMJ. 2004;328(7454):1490.
Grading of Recommenda/on Assessment Development and Evalua/on GRADE system
→Evidenceレベル:very low, low, moderate, high •  2012年10月 NCS annual mee/ng でそれぞれのトピックについて
recommenda/onsを作成した。 •  また2013年1月the German Society for Neuro-­‐Intensive Care and Emergency Medicine annual mee/ngで最終的に確認を行った。
このガイドラインでのLHIの定義
MCA領域の全てあるいはその領域に影響を 及ぼす虚血性脳梗塞 (部分的にでも基底核は含まれる。ACAもしくはPCA
領域を含むこともある。) 1. Airway management
① 挿管、抜管の指標は? ② 気管切開のタイミングは? ① 挿管、抜管の指標は? •  挿管について LHI患者に特化した前向き観察研究 GCS<10もしくは呼吸不全が挿管の指標 J Stroke Cerebrovasc Dis. 2004 ;13(4):183-­‐8
LHI患者の挿管検討が必要となる所見 臨床所見としてGCS<10、2型呼吸不全、ICP上昇の所見、梗塞巣が MCA領域の2/3以上、画像上midline shi[あり、肺水腫もしくは 肺炎像あり、切迫した外科処置必要時 Mayo Clin Proc. 1997;72(3):210-­‐3 Crit Care Med. 2000;28(8):2956-­‐61
•  抜管について 再挿管はICU死亡率を上げる。 後ろ向き研究の結果だが、GCS≧8(eye4)が抜管成功の
要素である。 Am J Respir Crit Care Med. 1997;156(2 Pt 1):459-­‐65
② 気管切開のタイミングは? 脳内出血については、後ろ向きで気切の予測因子に ついて調べられているが、LHIではなくevidenceが不十分 Cerebrovasc Dis. 2006;21(3):159-­‐65 Neurocrit Care. 2010;13(1):40-­‐6
→一般的なICU患者の気切のタイミングを採用する。 挿管後7~14日でweaningがうまくいかない場合は気切。
【Recommenda/ons】 •  LHI患者では呼吸不全、神経学的所見がある場合はすぐに挿管する。 (strong recommenda/on, very low quality of evidence) •  LHI患者では意志疎通が取れなくても、以下の条件を満たす場合は 抜管を試みる。(strong recommenda/on, very low quality of evidence) breathing trialsに成功。 唾液貯留がない。 頻回の吸痰がない。 咳反射がある。チューブの違和感がある。 鎮痛鎮静なし。 •  気管切開は抜管に失敗した患者、もしくは挿管から7~14日の患者で 検討する。(strong recommenda/on, low quality of evidence) 2.Hyperven/la/on
① ICP亢進したLHI患者で過換気は有効か? •  LHIでは過換気に伴う血管収縮により虚血障害が悪化すると考えられている。 Am J Neuroradiol. 1993;14(2):475-­‐84 Crit Care Clin. 1997;13(1):163-­‐84
Crit Care Med. 2002;30(12):2619-­‐25
•  またリバンドの血管拡張でICP亢進もある。 Stroke. 1998;29(7):1281-­‐92 J Neurosurg. 1991;75(5):731-­‐9
•  脳梗塞における過換気の効果は推奨されていない。 Trans Am Neurol Assoc. 1973;98:309-­‐10 Stroke. 1973;4(4):568-­‐631
【Recommenda/ons】 •  LHI患者における予防的過換気は推奨しない。 (strong recommenda/on, very low quality of evidence) •  脳ヘルニアの臨床所見がある場合は、レスキューとして短期間の過換気 にする。 (weak recommenda/on, very low quality of evidence) 3. Analgesia and Seda/on
① 鎮痛、鎮静は行うべきか?するならどのくらい? ② 日々のwake-­‐up trialは推奨される? 【Recommenda/ons】 •  鎮痛鎮静は不安、痛み、興奮があるときのみ使用する。 (strong recommenda/on, very low quality of evidence) •  早めの中止を推奨する。 (strong recommenda/on, very low quality of evidence ) •  日々のwake-­‐up trialは推奨しない。 特にICP亢進患者では注意が必要である。 ICP、CCPモニタリングが必要で、何か生理的によくない所見がある 場合には、鎮痛鎮静、wake-­‐up trialの延期や中止を検討する。 (strong recommenda/on, very low quality of evidence ) 4. Gastrointes/nal Tract
① LHI患者では嚥下障害をどう評価するか? ② いつ胃管チューブを留置するべき?PEGはいつから? 【Recommenda/ons】 •  LHI患者では早期の嚥下評価を推奨する。 (患者の協力が得られない場合は内視鏡検査での診断が有用) 嚥下評価は、一度鎮静と人工呼吸管理をweaningして行う。 (weak recommenda/on, very low quality of evidence) •  LHI患者で嚥下障害を伴う場合は、早急に胃管チューブを留置する。 (weak recommenda/on, very low quality of evidence) •  ICU滞在1~3週間の間に、NIHSS高スコアと内視鏡検査による 嚥下障害の診断によって、PEG造設について家族を含めて話し合う。 (weak recommenda/on, very low quality of evidence) 5. Glucose Control
① LHI患者の血糖コントロールは? •  LHIのデータはない。 •  厳密な血糖コントロールは有効ではない。高血糖、低血糖の両方とも
死亡率をあげるが、低血糖のほうが死亡率が高い。 Neurocrit Care. 2010;13(3):307-­‐12
•  虚血脳には低血糖が問題となる。 Crit Care. 2012;16(5):R203.
【Recommenda/ons】 •  LHI患者では高血糖、低血糖の両方とも避けるべきである。 インスリン療法で中等度の血糖コントロール(140-­‐180mg/dl)を推奨する。 (strong recommenda/on, very low quality of evidence) •  経静脈的糖負荷は推奨しない。 (strong recommenda/on, very low quality of evidence) 6. Hemoglobin Control
① LHI患者における理想のHb値とは? •  LHI患者に関する理想Hb値と輸血量に関しては 今後研究が必要。 それまではHb7g/dlで輸血とする。 【Recommenda/ons】 •  LHI患者にてHb7.0g/dl以上を維持するように推奨する。 (strong recommenda/on, very low quality of evidence) •  手術、血行動態が不安定な場合、心筋虚血、出血など特
別な場合は目標のHb値を再検討する必要がある。 (weak recommenda/on, very low quality of evidence) •  貧血のリスクを回避するため頻回の血液採取の回数を
減らす。 (weak recommenda/on, very low quality of evidence) 7. Deep Venous Thrombosis Prophylaxis
① LHI患者のDVT予防とは? J Stroke Cerebrovasc Dis. 2012
•  脳梗塞患者のDVT発生率は3%である。 •  CLOT1 trial 7~10日のDVT発生率11.4%、25~30日は3.1%であり、早期の予防が 大切である。最低4週間は継続するべき。 J Thromb Haemost. 2011;9(11):2193-­‐200
•  弾性ストッキングはDVT, PE予防に無効である。潰瘍、壊死、下肢虚血が
多い。 Lancet. 2009;373(9679):1958-­‐65
•  CLOT3 trial intermibent pneuma/c compression(IPC)はDVTのリスクを3.6%減らす。 Lancet. 2013;382(9891):516-­‐24
•  LMWHの方が未分画ヘパリンより有効であるが、LHIでは調べられて いない。 Acta Neurol Scand. 2002;106(2):84-­‐92 Stroke. 2006;37(1):139-­‐44
【Recommenda/ons】 •  LHI患者でICP上昇の所見がなく血行動態が安定して いる場合は、DVT予防のため早期の離床が重要である。 (strong recommenda/on, very low quality of evidence) •  ICUに入室して動けない間は常にDVT予防を行う。 (strong recommenda/on, very low quality of evidence) •  IPCの使用を推奨する。 (strong recommenda/on, moderate quality of evidence) •  弾性ストッキングの使用は推奨しない。 (strong recommenda/on, moderate quality of evidence)
8. An/coagula/on
① LHIの原因が心原性塞栓であったり、塞栓症リスクが高い場合はいつから 抗凝固 を始めるべき? •  LHI発症後抗凝固を始めるべきであるが、タイミングについてははっきりして いない。 【Recommenda/ons】 •  塞栓症リスクの高いLHI患者は2~4週間以内に経口抗凝固療法を開始する。 (weak recommenda/on, very low quality of evidence) •  経口抗凝固療法の再開は、臨床的リスクの再評価(人工弁など)と新たな
検査結果(DVT、PE、TEEによる心房内血栓など)による。 (weak recommenda/on, very low quality of evidence) •  心房細動合併のLHI患者や塞栓症リスクが高い場合は、手術の予定がなけ
れば抗凝固療法を行っていない期間でもアスピリンの使用を推奨する。 (weak recommenda/on, very low quality of evidence)
9. Blood Pressure Management
① LHI患者の理想血圧は? •  血圧のターゲットははっきりしていない。 •  一般的な脳梗塞の管理で出血なければmean85mmHg以上、 SBP220mmHg以下。 •  致死的な遅発性の脳梗塞がanterior, posterior領域におこる可能性があるため
LHI後の低血圧はさけるべきである。 Neurology. 2006;66(12):1878-­‐81
Stroke. 2013;44(3):870-­‐947
•  初期の血圧変動は梗塞の広がりにつながるので特に注意が必要。 Neurology. 2008;71(8):552-­‐8
【Recommenda/ons】 •  一般的な脳梗塞の管理にそろえて、 出血なければmean85mmHg以上、
SBP220mmHg以下。 (strong recommenda/on, low quality of evidence) •  LHI管理の特に初期の血圧変動に注意する。 (weak recommenda/on, low quality of evidence) 10. Steroid Therapy
① ステロイドはLHI患者の脳浮腫を減らす? •  1年死亡率は有意差なし。 Cohrane Database Syst Rev. 2011(9):CD000064
•  10%に消化管出血、高血糖、感染の有害が出現した。 •  112人 2日間placebo vs dexamethasone 21日死亡率と神経学的結果有意差なし Brit Med J. 1986;292(6512):21-­‐3
【Recommenda/on】 LHI患者で脳浮腫に対するステロイドの使用は推奨しない。 (strong recommenda/on, low quality of evidence) 11. Barbiturate Therapy
① LHIの脳浮腫に対してバルビツレ―トは有効か? •  難治性の脳梗塞に有効であると考えられているが、 LHIのRCTは存在しない。 •  前向き観察研究 LHIの脳浮腫に高用量のチオペンタール
を使用 →ICP管理に有効ではなく、著明な低血圧が認められた。 Neurology. 1997;48(6):1608-­‐13
【Recommenda/on】 LHI患者に対するバルビツレ―トの使用は推奨しない。 (strong recommenda/on, low quality of evidence) 12. Temperature Control
① LHIの脳浮腫管理に対して低体温もしくは平常温維持は必要? •  低体温はLHIでICPを減らすが、開頭減圧術による効果には劣る。 Stroke. 2002;33(6):1584-­‐8
•  復温期にはICP上昇のリスクがある。 Stroke. 2001;32(12):2833-­‐5
【Recommenda/ons】 •  LHI患者で手術適応ではない患者の場合、低体温療法は治療選択の1つ
である。 (weak recommenda/on, low quality of evidence) •  低体温療法はターゲットを33-­‐36℃、24-­‐72時間行う (weak recommenda/on, low quality of evidence) •  深部体温を平常温に保つことを推奨する (weak recommenda/on, very low quality of evidence)
13. Head Posi/on
① LHI患者の理想の頭部位置とは? •  ICP上昇予防のため頭部挙上を行うが、臨床的に有効性を示した ものはない。 •  頭部挙上の角度が重要で、45度以上ではCPPを抑制してしまう。 J Neurosurg. 1986;65(5):636-­‐41
Neurol Res. 1997;19(3):249-­‐53
•  30度でICPは下がったがMAPとCPPも低下した。水平でCPPは最大で
あったが、ICPも最大となった。 Stroke. 2002;33(2):497-­‐501
【Recommenda/on】 LHI患者では頭部を水平位置にすることを推奨するが、ICPが 上昇している場合は30度の挙上を推奨する。 (weak recommenda/on, very low quality of evidence) 14. Osmo/c Therapy
① 脳浮腫に対して浸透圧療法は有効か? ② 合併症は? 【Recommenda/ons】 •  脳浮腫の臨床的診断がついているときのみ、マンニトールと高張食塩水の使用を 推奨する。 (strong recommenda/on, moderate quality of evidence) •  マンニトール投与量と期間の決定において、血清浸透圧ではなく浸透圧差を使用する。 (weak recommenda/on, low quality of evidence) •  高張食塩水の投与量と期間に関しては、血清浸透圧と血清Na濃度で判断する。 (strong recommenda/on, moderate quality of evidence) •  AKIがある場合のマンニトール使用は慎重に行う。 (strong recommenda/on, moderate quality of evidence) •  ボリューム過剰の状態になりやすい病態の場合は高張食塩水の使用を慎重に行う。 (strong recommenda/on, high quality of evidence) 15. Neuroimaging by CT and MRI
① CTもしくはMRIの画像評価でLHIの神経学的悪化を予測することはできる? •  MCA領域が50%以上hypodensityの場合、85%致死的結果である。 Stroke. 2001;32(9):2117-­‐23
•  梗塞範囲が220ml以上は脳浮腫とヘルニアの予測になる。 Acta Neurochir (Wien). 2012;154(1):79-­‐85 Stroke. 2010;41(11):2539-­‐44
•  梗塞巣145ml以上だと開頭減圧術が必要となる脳浮腫になりやすい。 •  Midline shi[3.9㎜以上も悪性梗塞の予測となる。 Cerebrovasc Dis. 2003;16(3):230-­‐5
【Recommenda/on】 CTもしくはMRIの早期の変化はLHI後の悪性脳浮腫を予測することができる。 (strong recommenda/on, low quality of evidence) 16. Ultrasound
① Transcranial Doppler(TCD)もしくはtranscranial color-­‐coded duplex(TCCS)は LHIの経過予測に有用か? •  LHIの研究は少ない。 •  TCCSによるmidline shi[のアセスメントで、midline shi[4㎜以下は 死亡なしだが、4㎜以上だと脳ヘルニアの可能性が高くなる。 Neurology. 1999;52(1):45-­‐9
•  ベッドサイドで検査できることは安全である。移動しなくてよいので、 血行動態が安定していない患者に有用。 【Recommenda/on】 患者の状態が不安定で画像評価へ行けない場合に、TCCSを第一選択
として使用する。 (weak recommenda/on, low quality of evidence) 17. Evoked Poten/als
① 誘発電位検査は有用か? •  後ろ向き研究 Brainstem auditory evoked poten/als(BAEPs) :聴覚脳幹誘発電位 24時間以内の結果は臨床経過の悪化の予測として有用 であった。 Neurocrit Care.2008;9(1):13-­‐6
【Recommenda/on】 MCA梗塞後患者の状態が不安定で画像評価に行けない場合、
最初の24時間であればBAEPは今後の悪化の予測に有用である。 (weak recommenda/on, very low quality of evidence)
18. EEG
① EEGは経過予測に有用か? ② 持続EEGモニタリングは有用か? 持続EEGがLHIの診断や管理に有用かどうかデータが少ない。 【Recommenda/ons】 •  24時間以内のEEGは予後予測に有用である。 (weak recommenda/on, very low quality of evidence) •  持続EEGも有用であると考えられるが、更なる研究が必要
である。 (weak recommenda/on, very low quality of evidence) 19. Invasive Mul/modal Monitoring
① 侵襲的モニタリング(ICP, microdialysis, p/O2)は 予後予測に有用か? 【Recommenda/on】 十分な研究がなく、日々の管理に積極的に追加する
ことは推奨しない (weak recommenda/on, low quality of evidence) 20. Surgical Management
① Decompressive hemicraniectomy: DHC 開頭減圧術は有効であるか? ② DHCの適応基準は? ③ DHCのタイミングは? ④ 年齢と優位半球梗塞はDHCを選択するうえで 重要であるか? ⑤ 側頭葉切除術、硬膜形成術はDHCの代わり になるか?
① Decompressive hemicraniectomy: DHC 開頭減圧術は有効であるか? ※ DHC:開頭減圧術 →国際的には内減圧、外減圧の単語はない。 •  LHIにおけるDHCの有効性 60歳以下NIHSS16以上の重度脳梗塞患者で、48時間以内 にテント切痕ヘルニアになった患者 →DHCは救命処置として有効。生存率を2倍にする。 (29→78%) Lancet Neurol.2009;8(4):326-­‐33 Stroke. 2007;38(9):2506-­‐17
② DHCの適応基準は? ③ DHCのタイミングは? •  DHCのタイミングについてははっきりしていない。 神経学的所見が出るまで待つか、ヘルニアの症状やmidline shi[の症状があるか否かで手術をするか、はっきりしていない。 •  予防的DHCは必要ないが、症状が悪化する場合や回復が困難
な場合は必要になる。 •  ヘルニアの症状が出た24時間以内にDHCを行って死亡率が 著減した。また6~12か月後の神経学的結果も改善した。 →ヘルニアの症状が出たらDHCは行うべきである。 Stroke. 2007;38(9):2518-­‐25 Stroke. 2007;38(9):2506-­‐17
④ 年齢と優位半球梗塞はDHCを選択するうえで重要であるか? Stroke. 2007;38(9):2518-­‐25
•  60歳以下にはDHCが推奨されている。 •  75歳までの患者でDHCは生存率を上げているが、機能的結果は 特に60歳代で改善せず。 J Neurol Psychiatry.2001;70(2):226-­‐8
•  61歳以上の人のDHCに関してのRCT DHCは死亡率を70% →33%に下げるが、神経学的予後は悪い。 (mRS4:32% mRS5:28% mRS3:7%) Interna/onal journal of stroke: official journal of the Interna/onal Stroke Society. 2011;6(1):79-­‐86
•  優位半球のDHCは失語が出るため行わないことが多い。 しかし優位半球のDHCが機能的結果を悪くしたり、QOLを落とすこと はないとする研究あり。 Stroke. 2004;35(2):539-­‐43
Can J Neurol Sci.2011;38(3):434-­‐8
⑤ 側頭葉切除術+硬膜形成術はDHCの代わりになるか? Clinical course and surgical management of massive cerebral infarc4on. Neurosurgery. 2004;55(1):55-­‐61
Retrospec/ve review 側頭葉切除術+硬膜形成術を受けた12人の患者 →2人死亡 5人中等度障害 5人重度障害 →側頭葉切除術+硬膜形成術が治療選択の1つになる。 しかし機能的結果については議論されていない。 •  まだエビデンスが少なく、大半の研究ではDHCと一緒に 側頭葉切除を行うことは多くはない。
その他①: •  DHC後の頭蓋形成術+硬膜形成術について Rapid closure technique in decompressive craniectomy 1999年~2008年 196人 外傷性脳挫傷 SAH ICH Cerebral infarc/on 開頭減圧術後の頭蓋形成術。硬膜形成術はサージセルを使用。 開頭減圧術から118±40日 合併症:硬膜外血腫4.1% 膿瘍2.6% 創治癒遅延6.1% → 早期の頭蓋形成術は合併症少なく安全。 硬膜形成術にはサージセルを用いて行って特に合併症なし。 J Neurosurg. 2011;114(4):954-­‐60
•  ただし頭蓋形成術に関して骨flapの保存もしくは人工flapを用いる点について 大規模研究なし。 •  硬膜形成術に関してもまだエビデンスが少なく議論の余地が残るところで
controversial。 その他②: •  DHCのサイズも大切。12㎝以下だと合併症が増え、生存率が
下がる。12cm以上のDHCが薦められている。 J Neurosurg. 2001;94(5):693-­‐6
•  側頭筋切除も減圧効果を有効にする。 J neurosurg.2009;110(1):101-­‐5
【Recommenda/ons】 •  DHCは患者の年齢に関係なく救命に有効な手段の1つである。 (strong recommenda/on, high quality of evidence) •  患者が60歳以上の場合は、患者と家族の希望を確認する。 60歳以上の場合は、DHCで死亡率は下がるが障害が残る 可能性が高い。 (strong recommenda/on, moderate quality of evidence) •  現在のところ、優位半球のDHCに反対する十分な根拠がない。 (strong recommenda/on, low quality of evidence) •  最良の神経学的結果のため、脳梗塞症状出現から
24~48時間以内、ヘルニア症状が出る前にDHCを 行うべきである。 (strong recommenda/on, moderate quality of evidence) •  側頭葉切除術+硬膜形成術は治療選択の1つである。 (weak recommenda/on, low quality of evidence) •  側頭筋切除は減圧効果に有効で治療選択の1つで ある。 (weak recommenda/on, low quality of evidence) •  DHCは12㎝以上行うべきである。14-­‐16㎝で良い結果
が出ている。 (strong recommenda/on, moderate quality of evidence) 21. Ethical Considera/ons
① modified rankin scale(mRS)score 4がLHI後の理想の状態? DHC後は障害が残る可能性があるため、患者本人の意志を確認してから行う 必要がある。ほとんどの研究はmRSを障害の程度を表す指標として用いている。 mRS:国際的に用いられている日常生活指標 0:症状なし 1:生活レベルに支障のない身体症状あり 2:軽度ハンディキャップあり (生活レベルに幾分支障があるが自分の身の回りのことは不自由ない) 3:中等度ハンディキャップあり (生活レベルにかなり支障あり、生活の自立は困難) 4:重症ハンディキャップ (生活の自立は確実に困難だが常に見守りは要さない) 5:最重症ハンディキャップ (日常常に見守りを要する介護状態) 6:死亡 •  どこからがよくない結果と定義するかがポイント。 mRS4-­‐6をpoor outcomeとする研究が多い。 Lancet Neurol. 2009;8(4):326-­‐33
Stroke. 2007;38(9):2506-­‐17
•  mRS4が理想の結果と言えるのか?→患者と家族に聞き取り調査 機能的結果は関係なくDHCを行ってよかったとする患者、家族が多い。 J Neurol. 2009;256(7):1126-­‐33
•  12か月後の機能的結果を考えてもう1度DHCを受ける選択をするか? →28人82%がDHCを選択する。mRS5未満の患者のみであった。 mRS5の患者はDHCをよい選択肢とせず、QOLも低かった。 Neurocrit Care. 2010;13(3):380-­‐4
【Recommenda/on】 DHCの選択は、患者本人と家族の考え方が重要で、障害を伴う機能的 結果をどうとらえるかがポイントとなる。 (weak recommenda/on, low quality of evidence)
22. Quality of Life (QoL)
① LHI後のよい結果とはgood QOLに関連しているか? •  機能的結果とQOLは患者と家族の考え方に かかわってくる。 •  QOLについての研究は少ない。 【Recommenda/on】 LHI患者においてQOLを評価する研究が必要である。 (weak recommenda/on, low quality of evidence) まとめ
•  全体を通して、LHIの大規模研究が少なく検討が 難しかった。 •  このガイドラインがきっかけになると思われるが、
今回示したweak evidenceには注意が必要である。 •  今後研究がすすみ、evidenceが増えてきた際に またreviewが必要である。 感想
•  LHIに限定したガイドラインとしてはLHIの 大規模研究の数が少ない。 •  Weak recommenda/onは筆者らの意見であって、
evidenceはない。 •  Weak recommenda/onの中でも、議論されている
ものと、議論なしでrecommenda/onにのっている
ものがあり、解釈に注意が必要である。