平成 26 年度 金沢大学がん進展制御研究所 共同研究報告書 研究区分 一般共同研究 研究課題 Rb1 の関与する発ガンにおける p107 と IRSp53 の役割 研究代表者 所属・職名・氏名 受入担当教員 【研究目的】 職名・氏名 奈良先端科学技術大学院大学・教授・末次志郎 教授・高橋智聡 がん細胞は、多くの場合親株となる細胞とは異なり形態を呈することで認識される。がん 細胞は悪性化すると高増殖能と浸潤能を獲得し、その際にがん細胞は、多数の突起構造を獲 得する場合が多いと考えられる。細胞突起を形成する I-BAR ドメイン含有タンパク質であ る IRSp53 はがん細胞、その中でも特に網膜繊維芽種(retinoblastoma)において高発現す ることが認められるがその意義は明らかではない。I-BAR ドメインは、脂質膜に結合する以 外に病原性細菌の持つタンパク質の NPY モチーフと結合する。NPY モチーフを持つタンパ ク質は、がん抑制遺伝子(Rb1)のファミリーメンバーである p107 が含まれる。従って、 IRSp53 は Rb ファミリータンパク質と結合することで細胞周期の調節を行っている可能性 も考えられる。本研究では、IRSp53 のがん細胞における突起形成における役割を検討する。 【研究内容・成果】 IRSp53 のノックアウトマウスと、高頻度のがん発症により短命化するがん抑制遺伝子 p53 および Rb1 のノックアウトマウスを掛け合わせる事により、IRSp53 の減少により、がん抑 制遺伝子欠損によるがん発症のための短命化がどのようになるのか、生存曲線解析を行っ た。IRSp53 のヘテロ接合型ノックアウトマウス(+/—)は、野生型マウスの半分の IRSp53 タンパク質をもつ。IRSp53 遺伝子の欠損による IRSp53 タンパク質の減少により、p53 ホモ 接合型 (-/-)ノックアウトマウスの平均寿命が延びる事がわかった。しかし、形成されるが んの種類に顕著な違いは見られなかった。Rb1 ヘテロ接合型(+/-)に比べて IRSp53 と Rb1 の 両方の遺伝子をヘテロ接合型(+/-)に持つマウスは平均寿命が延びることがわかった。また 驚くべき事に、Rb1(+/-)マウスの多くが脳腫瘍を発症するが、IRSp53(+/-); Rb1(+/-)マウ スの脳組織ではがん細胞は認められず、すべて正常であった。従って IRSp53 の減少は Rb1 欠損により引き起こされる脳腫瘍を抑える事が示唆された。現在このような違いが、どのよ うな原因によっているのか、培養細胞を用いて増殖と浸潤の解析を行うとともに、がん組織 などでの血管新生の状態を調べる予定である。また、p107 についても引き続き検討する予 定である。 【成 果 等】 【主な論文発表】 なし 【学会発表】 がん化における IRSp53 の役割 塙京子 1、橋田光 1、松原大祐 2、北嶋俊輔 3、高橋智聡 3、末次志郎 1 1 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科、 2 東京大学医科学研究所人癌病因 遺伝子分野、3金沢大学がん進展制御研究所腫瘍分子生物学研究分野 日本癌学会シンポジウム / 共同利用・共同研究拠点シンポジウム がん幹細胞・微小環境・ 分子標的~がん進展制御への挑戦 平成 27 年 1 月 21 日~22 日 石川県立音楽堂交流ホール 【その他特筆事項】 なし
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