修士論文 D-braneworld – D-brane 上の重力理論 – 東京工業大学宇宙物理学理論研究室 M2 02M01050 恩田純忠 論文要旨 超弦理論などの最近の進展により、我々の住む 4 次元時空が高次元時空の中に埋め込まれた 4 次 元の薄膜 (ブレーン) とする新しい宇宙像が提出された。標準粒子はブレーン上に局在し、重力の みが高次元時空全体を伝播することができるのである。特に、1999 年に Randall と Sundrum が提 唱した単純なモデルは、ブレーンの自己重力を積極的に用いて成功したブレーンワールドモデルで ある。このモデルは時空の幾何学,動力学としても非常に興味深い側面を持っている。それゆえ、 このような時空の描像に基づいた重力理論や宇宙論の研究が活発に行われてきた。 ところがブレーンワールドモデルでは超弦理論で現れる D ブレーンの性質に動機付けされてい るにもかかわらず、これまでの研究では D ブレーンを含んだより現実的なモデルでの考察はされ ていない。そこで、本論文では自己重力を伴った D ブレーン上の重力理論を考察する。そのため に、従来の Randall-Sundrum モデルに変更を加える。すなわち、バルク時空は IIB 型超重力理論, ブレーンは Born-Infeld 作用と Chern-Simon 作用の和によって記述されるものとする。また、簡 単のためにブレーン上には U (1) ゲージ場のみがあるとする。以上の設定の下で、幾何学的射影 法によってブレーン上の重力場方程式の導出を行う。しかし、Randall-Sundrum モデルは従来の Kaluza-Klein 理論とは異なり、余剰次元の構造が一様ではない。ブレーン上の重力場方程式を得 るには、高次元時空全体についても解く必要がある。具体的には、摂動的に解くために、バルクの 曲率半径がブレーン上の典型的なスケールに比べて非常に小さいという長波長近似を用いた。 その結果、驚くべきことに、ブレーンが持つ張力と電荷が等しいという条件下では、D ブレーン 上の重力場方程式のソース項にゲージ場が現れない、つまりゲージ場とブレーン上の重力が結合し ないことが分かった。さらに、この結果から逆にブレーン上の正味の宇宙項の存在とゲージ場と重 力との結合にはなんらかの関係があると推測できる。D ブレーン上の重力理論に関する更なる基礎 研究が望まれる。
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